(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】マグナス式推力発生装置、前記マグナス式推力発生装置を用いた風力回転装置、水力回転装置、潮力回転装置、ならびに前記マグナス式推力発生装置を用いた風力発電機、水力発電機、潮力発電機
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
F03D3/06 H
(21)【出願番号】P 2018138429
(22)【出願日】2018-07-24
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】515043772
【氏名又は名称】株式会社チャレナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 敦史
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002757(WO,A1)
【文献】特開2019-085895(JP,A)
【文献】特開2008-175070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0171969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持筺体と、
前記支持筺体に対して第1の回転軸を中心として回転可能な支持部と、
前記支持部に対して前記第1の回転軸を中心とする円周上の第2の回転軸を中心として各々を軸支され、前記第1の回転軸を中心として公転可能であって、前記第1の回転軸に対して平行な第2の回転軸を中心として自転可能な複数の円筒翼と、
前記支持部に支持され、前記円筒翼に対して進行方向とは反対側に配置された整流板と、
を備え、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に垂直な平面上において、前記整流板の後端縁の少なくとも一部は、以下の条件(1)及び条件(2)を満たす領域に存在する
ことを特徴とするマグナス式推力発生装置。
0.45D ≦ L ≦ 0.65D (1)
20° ≦ θ ≦ 60° (2)
ただし、
Dは円筒翼の公転軌跡の外端円の直径、
Lは本体中心から後端縁までの距離、
θは本体中心と円筒翼中心を結ぶ線と本体中心と後端縁を結ぶ線の角度、
である。
【請求項2】
前記整流板の後端縁の少なくとも一部は、以下の条件(1’)及び条件(2’)を満たす領域に存在する
請求項1に記載のマグナス式推力発生装置。
0.5D ≦ L ≦ 0.55D (1’)
30° ≦ θ ≦ 40° (2’)
【請求項3】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に垂直な平面上において、
前記整流板の第1縁は、前記円筒翼の公転軌跡の外端円上に位置し、
前記第1縁と前記後端縁を含む第1平面は、前記円筒翼の公転軌跡の外端円の前記第1縁での接線に含まれる
請求項1又は2に記載のマグナス式推力発生装置。
【請求項4】
前記第1縁と前記後端縁を結ぶ前記整流板の第1表面は、前記第1平面に含まれる
請求項3に記載のマグナス式推力発生装置。
【請求項5】
前記整流板の第2縁は、前記第2の回転軸と前記後端縁を結ぶ線上に位置し、
前記第2縁と前記後端縁を含む第2平面は、前記第2の回転軸と前記後端縁を結ぶ線に含まれる
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のマグナス式推力発生装置。
【請求項6】
前記第2縁と前記後端縁を結ぶ前記整流板の第2表面は、前記第2平面に含まれる
請求項5に記載のマグナス式推力発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のマグナス式推力発生装置を用いた風力回転装置、水力回転装置または潮力回転装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のマグナス式推力発生装置を用いた風力発電機、水力発電機または潮力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中で回転する略円筒形状の円筒翼が発生するマグナス力を用いたマグナス式推力発生装置、前記マグナス式推力発生装置を用いた風力回転装置、水力回転装置、潮力回転装置、ならびに前記マグナス式推力発生装置を用いた風力発電機、水力発電機、潮力発電機などの流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体中で回転する円筒翼が発生するマグナス力を利用する装置が存在する(特許文献1)。特許文献1に示した推力発生装置は、円筒翼に発生するマグナス力によって効率的に回転力を得るための部材を円筒翼の進行方向の背面側に設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、整流板を用いた円筒翼に発生するマグナス力によって効率的に回転力を得ることが可能なマグナス式推力発生装置、前記マグナス式推力発生装置を用いた風力回転装置、水力回転装置、潮力回転装置、ならびに前記マグナス式推力発生装置を用いた風力発電機、水力発電機、潮力発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係るマグナス式推力発生装置は、
支持筺体と、
前記支持筺体に対して第1の回転軸を中心として回転可能な支持部と、
前記支持部に対して前記第1の回転軸を中心とする円周上の第2の回転軸を中心として各々を軸支され、前記第1の回転軸を中心として公転可能であって、前記第1の回転軸に対して平行な第2の回転軸を中心として自転可能な複数の円筒翼と、
前記支持部に支持され、前記円筒翼に対して進行方向とは反対側に配置された整流板と、
を備え、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に垂直な平面上において、前記整流板の後端縁の少なくとも一部は、以下の条件(1)及び条件(2)を満たす領域に存在する
ことを特徴とする。
0.45D ≦ L ≦ 0.65D (1)
20° ≦ θ ≦ 60° (2)
ただし、
Dは円筒翼の公転軌跡の外端円の直径、
Lは本体中心から後端縁までの距離、
θは本体中心と円筒翼中心を結ぶ線と本体中心と後端縁を結ぶ線の角度、
である。
【0006】
また、本発明の一実施形態に係るマグナス式推力発生装置は、
前記整流板の後端縁の少なくとも一部は、以下の条件(1’)及び条件(2’)を満たす領域に存在する。
0.5D ≦ L ≦ 0.55D (1’)
30° ≦ θ ≦ 40° (2’)
【0007】
また、本発明の一実施形態に係るマグナス式推力発生装置は、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に垂直な平面上において、
前記整流板の第1縁は、前記円筒翼の公転軌跡の外端円上に位置し、
前記第1縁と前記後端縁を含む第1平面は、前記円筒翼の公転軌跡の外端円の前記第1縁での接線に含まれる。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係るマグナス式推力発生装置は、
前記第1縁と前記後端縁を結ぶ前記整流板の第1表面は、前記第1平面に含まれる。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係るマグナス式推力発生装置は、
前記整流板の第2縁は、前記第2の回転軸と前記後端縁を結ぶ線上に位置し、
前記第2縁と前記後端縁を含む第2平面は、前記第2の回転軸と前記後端縁を結ぶ線に含まれる。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係るマグナス式推力発生装置は、
前記第2縁と前記後端縁を結ぶ前記整流板の第2表面は、前記第2平面に含まれる。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る風力回転装置、水力回転装置または潮力回転装置は、前記マグナス式推力発生装置を用いる。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る風力発電機、水力発電機または潮力発電機は、前記マグナス式推力発生装置を用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態に係るマグナス式推力発生装置は、整流板の後端縁の位置が的確に配置され、回転部を円滑に回転させることができる。すなわち、円筒翼に発生するマグナス力による回転力によって回転部を効率的に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の概略構成を示す概略正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の概略構成を示す概略平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の断面の一部を示す。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の翼端板を示す。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の整流板の配置を示す。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の円筒翼の直径d=D/4を満たす整流板の後端の配置に対する出力係数を示す。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の円筒翼の直径d=D/6を満たす整流板の後端の配置に対する出力係数を示す。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の円筒翼の直径d=D/8を満たす整流板の後端の配置に対する出力係数を示す。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の整流板の形状を示す。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の整流板の形状を示す。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機の整流板の形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の具体的な実施の形態を示す。実施の形態はあくまで一例であり、この例に限定されるものではない。なお、以下の実施形態では、マグナス式推力発生装置の適用例の1つとして、マグナス式推力発生装置を用いた垂直軸型マグナス式風力発電機1について説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の概略構成を示す概略正面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の概略構成を示す概略平面図である。
【0017】
垂直軸型マグナス式風力発電機1は、設置面Sに対して設置される支持筐体10と、支持筐体10の内部に配置される発電機11及び増速機12と、増速機12を介して発電機11に連結されるとともに、設置面Sに対して垂直な第1の回転軸O1を有する回転部13と、第1の回転軸O1に対して平行な第2の回転軸O2を中心として自転可能な3つの円筒翼2と、回転部13に固定されることで第1の回転軸O1を中心として回転可能であって、第1の回転軸O1を中心とする円周C上に3つの円筒翼2の各々を軸支する支持部3と、を備える。
【0018】
支持筐体10は、第1の回転軸O1と同軸状に配置される円筒状の筐体である。支持筐体10は、支持筐体10の上面100から回転部13の上端部130を突出させるとともに、第1の回転軸O1が設置面Sに対して垂直となるように、回転部13を軸支する。
【0019】
発電機11は、増速機12を介して回転部13に連結されており、回転部13が回転する際の回転エネルギーを電気エネルギーに変換することで発電するように構成されている。
【0020】
3つの円筒翼2は、
図3に示すように、垂直軸型マグナス式風力発電機1を上方から見たときに、第1の回転軸O1を中心した円周C上で等間隔となるように、すなわち、正三角形の各頂点に配置される。
【0021】
また、3つの円筒翼2の各々は、第2の回転軸O2を中心として円筒翼2を時計回りに回転(自転)させる円筒翼モーター20と、円筒翼2から所定の距離だけ離間した位置に、第2の回転軸O2に対して平行となるように配置される整流板5と、を備える。
【0022】
垂直軸型マグナス式風力発電機1は、円筒翼モーター20により第2の回転軸O2を中心として円筒翼2を時計回りに回転(自転)させた状態において、所定の方向から風(空気流)を受けると、円筒翼2にマグナス力が発生する。そして、円筒翼2に発生したマグナス力が、円筒翼2を円周Cに沿って時計回りに移動させる方向に作用する。それにより、回転部13が時計回りに回転することで、回転部13に連結された発電機11で発電する。
【0023】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の断面の一部を示す。
【0024】
垂直軸型マグナス式風力発電機1の円筒翼2は、回転部13の第1の回転軸O1を中心として等距離及び等角度に配置される。本実施形態の垂直軸型マグナス式風力発電機1は、3つの円筒翼2を設けるので、120°離間して配置される。
【0025】
図4に示す垂直軸型マグナス式風力発電機1の円筒翼2は、それぞれの第2の回転軸O2を中心として矢印Aのように時計方向に回転可能である。気流中で各円筒翼2を回転させることで、各円筒翼2にマグナス力が発生し、
図3に示した支持部3及び回転部13が第1の回転軸O1を中心として矢印Bのように時計方向に回転する。すなわち、円筒翼2は、第2の回転軸O2を中心として自転し、第1の回転軸O1を中心として公転する。
【0026】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るマグナス式推力発生装置の翼端板6を示す。
【0027】
翼端板6は、上方から見て整流板5の第1表面51及び第2表面52から水平方向に突出するように設置される。なお、第1表面51は第1縁51aと後端縁5aを結ぶ整流板5の表面であり、第2表面52は第2縁52aと後端縁5aを結ぶ整流板5の表面である。
【0028】
このように、翼端板6を設けることによって、翼表面を流れる空気の流れと翼周辺を流れる空気の流れを仕切り、気流の乱れを抑制することによって、効率を向上させることができる。
【0029】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板
の配置を示す。
【0030】
整流板5は、
図6に示すように、第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2に垂直な平面上において、断面が略三角形状に形成され、各円筒翼2の進行方向とは反対側に取り付けられる。第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2に垂直な平面上において、整流板5の後端縁5aは、以下の条件(1)及び条件(2)の領域に存在するように配置される。
0.45D ≦ L ≦ 0.65D (1)
20° ≦ θ ≦ 60° (2)
ただし、
Dは円筒翼2の公転軌跡の外端円21の直径、
Lは第1の回転軸O1から後端縁5aまでの距離、
θは第1の回転軸O1と第2の回転軸O2を結ぶ線と第1の回転軸O1と後端縁5aを結ぶ線の角度、
である。
【0031】
また、整流板5の後端縁5aは、以下の条件(1’)及び条件(2’)の領域に存在するように配置されると、より好ましい。
0.5D ≦ L ≦ 0.55D (1’)
30° ≦ θ ≦ 40° (2’)
【0032】
なお、後端縁5a、第1縁51a及び第2縁52aは、第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2に垂直な平面上において、1点である必要は無く、所定の範囲の領域でもよい。例えば、各縁を面取りして形成した場合、面取りした領域又は面取り後の表面部分を縁としてもよい。そして、第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2に垂直な平面上において、後端縁5aの少なくとも一部が上述の領域に存在すればよい。
【0033】
第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2に垂直な平面上において、整流板5の第1縁51aは、円筒翼2の公転軌跡の外端円21の近傍に位置すると好ましい。すなわち、第1縁51aと後端縁5aを含む第1平面51’は、円筒翼2の公転軌跡の外端円21の第1縁51aでの接線に含まれると好ましい。また、第1縁51aと後端縁5aを結ぶ整流板5の第1表面51は、第1平面51’に含まれるとより好ましい。
【0034】
また、第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2に垂直な平面上において、整流板5の第2縁52aは、第2の回転軸O2と後端縁5aを結ぶ線の近傍に位置すると好ましい。すなわち、第2縁52aと後端縁5aを含む第2平面52’は、第2の回転軸O2と後端縁5aを結ぶ線に含まれると好ましい。また、第2縁52aと後端縁5aを結ぶ整流板5の第2表面52は、第2平面52’に含まれるとより好ましい。
【0035】
図7乃至
図9は、本発明の第1の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板5の後端5aの配置に対する出力係数Cpを示す。
図7乃至
図9において、色の濃い部分に整流板5の後端5aが位置すると出力係数Cpが大きく、色の薄い部分に整流板5の後端5aが位置すると出力係数Cpが小さい。
【0036】
出力係数は、以下のように定義する。
Cp=P/(0.5ρU3D)
ただし、
Pは垂直軸型マグナス式風力発電機1の高さ方向の単位幅あたりの出力、
ρは空気密度、
Uは風速、
Dは円筒翼2の公転軌跡の外端円21の直径、
である。
【0037】
図7は円筒翼2の直径d=D/4、
図8は円筒翼2の直径d=D/6、
図9は円筒翼2の直径d=D/8の場合をそれぞれ示す。
図7乃至
図9に示した出力係数Cpの計算では、P=4200W、ρ=1.2kg/m
3、U=10m/s、D=7m、とする。
【0038】
図7乃至
図9に示すように、円筒翼2の直径に関係なく、整流板5の後端5aが条件(1)及び条件(2)の領域に存在すると、出力係数Cpが大きい。さらに、整流板5の後端5aが条件(1’)及び条件(2’)の領域に存在すると、出力係数Cpがより大きい。
【0039】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板5の形状を示す。
【0040】
第2実施形態の垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板5は、第1縁51aを円筒翼2の公転軌跡の外端円21の接線上に配置し、第2縁52aを第2の回転軸O2と後端縁5aを結ぶ線上に配置する。第1縁51aと第2縁52aを結ぶ第3表面53は大きく凹状に形成される。このように形成されることによって、整流板5を軽量に形成することができる。
【0041】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板5の形状を示す。
【0042】
第3実施形態の垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板5は、第1縁51aを円筒翼2の公転軌跡の外端円21の接線上に配置し、第2縁52aを円筒翼2の外周と後端縁5aを結ぶ線上に配置する。このように形成されることによって、整流板5の断面積が大きくなり、強度を向上させることができる。
【0043】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板5の形状を示す。
【0044】
第4実施形態の垂直軸型マグナス式風力発電機1の整流板5では、第1表面51が後端縁5aと第1縁51aを結ぶ第1平面51’と重ならず、第2表面52が後端縁5aと第2縁52aを結ぶ第2平面52’と重ならない。
図12に示す例では、第1表面51は第1平面51’及び第2平面52’の間の領域の内側の曲面から形成され、第2表面52は第1平面51’及び第2平面52’の間の領域の外側の曲面から形成されている。
【0045】
しかしながら、これに限らず、第1表面51は第1平面51’及び第2平面52’の間の領域の外側の曲面から形成され、第2表面52は第1平面51’及び第2平面52’の間の領域の内側の曲面から形成されてもよい。また、第1表面51と第2表面52は両面とも第1平面51’及び第2平面52’の間の領域の内側の曲面から形成されてもよいし、両面とも第1平面51’及び第2平面52’の間の領域の外側の曲面から形成されてもよい。
【0046】
上記のように、本発明の一実施形態として、第1乃至第4の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
例えば、上記各実施形態では、回転部13は時計回りに回転するものとして説明したが、半時計回りに回転するようにしてもよい。その場合には、円筒翼2の回転方向を反時計回りとするとともに、円筒翼2の進行方向とは反対側に整流板21を設ければよい。
【0048】
また、上記各実施形態では、3つの円筒翼2を円周C上に配置するものとして説明したが、円筒翼2の数は適宜変更してもよく、2つ、又は、4つ以上の円筒翼2を円周C上に配置するようにしてもよい。また、上記各実施形態では、支持筺体10は円筒状の筺体として説明したが、トラス状の筺体としてもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、マグナス式推力発生装置の適用例の1つとして、マグナス式推力発生装置を用いた垂直軸型マグナス式風力発電機1について説明したが、回転部13を発電機11に連結することに代えて、回転部13をポンプ等の回転機械に連結することにより、マグナス式推力発生装置を用いた風力回転装置としてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、マグナス式推力発生装置の適用例の1つとして、マグナス式推力発生装置を用いた垂直軸型マグナス式風力発電機1について説明したが、エネルギー源として、風(空気流)を用いることに代えて、水流、波、潮流等を用いることにより、マグナス式推力発生装置を用いた水力発電機又は潮力発電機としてもよいし、さらに回転部13を発電機11に連結することに代えて、回転部13をポンプ等の回転機械に連結することにより、マグナス式推力発生装置を用いた水力回転装置又は潮力回転装置としてもよい。
【0051】
また、上記各実施形態では、第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2を、設置面Sに対して垂直に配置した、すなわち、鉛直方向に対して平行に配置したものとして説明したが、鉛直方向に対して斜めに配置してもよいし、鉛直方向に対して直角に、すなわち、水平方向に配置してもよい。
【0052】
以上、本実施形態のマグナス式推力発生装置1は、支持筺体10と、支持筺体10に対して第1の回転軸O1を中心として回転可能な支持部3と、支持部3に対して第1の回転軸O1を中心とする円周上の第2の回転軸O2を中心として各々を軸支され、第1の回転軸O1を中心として公転可能であって、第1の回転軸O1に対して平行な第2の回転軸O2を中心として自転可能な複数の円筒翼2と、支持部3に支持され、円筒翼2に対して進行方向とは反対側に配置された整流板5と、を備え、第1の回転軸O1及び第2の回転軸O2に垂直な平面上において、整流板5の後端縁5aの少なくとも一部は、以下の条件(1)及び条件(2)を満たす領域に存在する。
0.45D ≦ L ≦ 0.65D (1)
20° ≦ θ ≦ 60° (2)
ただし、
Dは円筒翼の公転軌跡の外端円の直径、
Lは本体中心から後端縁までの距離、
θは本体中心と円筒翼中心を結ぶ線と本体中心と後端縁を結ぶ線の角度、
である。
したがって、整流板5の後端縁5aの位置が的確に配置され、回転部13を円滑に回転させることができる。すなわち、円筒翼2に発生するマグナス力による回転力によって回転部13を効率的に回転させることができる。
【0053】
また、本実施形態のマグナス式推力発生装置1は、整流板5の後端縁5aは、以下の条件(1’)及び条件(2’)を満たす領域に存在する。
0.5D ≦ L ≦ 0.55D (1’)
30° ≦ θ ≦ 40° (2’)
したがって、整流板5の後端縁5aの位置がさらに的確に配置され、回転部13をさらに円滑に回転させることができる。すなわち、円筒翼2に発生するマグナス力による回転力によって回転部13をさらに効率的に回転させることができる。
【0054】
また、本実施形態のマグナス式推力発生装置1は、第1の回転軸及び第2の回転軸に垂直な平面上において、整流板5の第1縁51aは、円筒翼2の公転軌跡の外端円21上に位置し、第1縁51aと後端縁5aを含む第1平面51’は、円筒翼2の公転軌跡の外端円21の第1縁51aでの接線に含まれる。したがって、回転時の空気抵抗を減少させ回転部13を円滑に回転させることができる。すなわち、円筒翼2に発生するマグナス力による回転力によって回転部13をより効率的に回転させることができる。
【0055】
また、本実施形態のマグナス式推力発生装置1は、第1縁51aと後端縁5aを結ぶ整流板5の第1表面51は、第1平面51’に含まれる。したがって、回転時の空気抵抗をより減少させ回転部13をより円滑に回転させることができる。
【0056】
また、本実施形態のマグナス式推力発生装置1は、整流板5の第2縁52aは、第2の回転軸O2と後端縁5aを結ぶ線上に位置し、第2縁52aと後端縁5aを含む第2平面52’は、第2の回転軸O2と後端縁5aを結ぶ線に含まれる。したがって、軽量且つ高剛性で効率的に回転させる整流板5を形成することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態のマグナス式推力発生装置1は、第2縁52aと後端縁5aを結ぶ整流板5の第2表面52は、第2平面52’に含まれる。したがって、軽量且つ高剛性でより効率的に回転させる整流板5を形成することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態の風力回転装置、水力回転装置または潮力回転装置は、マグナス式推力発生装置を用いる。したがって、より効率の良い回転装置を形成することが可能となる。
【0059】
また、本発明の一実施形態に係る風力発電機、水力発電機または潮力発電機は、前記マグナス式推力発生装置を用いる。したがって、より効率の良い発電機を形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のマグナス式推力発生装置は、後端縁の位置を的確に配置した整流板を用いた円筒翼に発生するマグナス力によって、さらに効率的に回転力を得ることを可能とし、風力回転装置、水力回転装置、潮力回転装置、ならびに風力発電機、水力発電機、潮力発電機としても利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1…垂直軸型マグナス式風力発電機(マグナス式推力発生装置)
2…円筒翼
3…支持部
10…支持筐体
11…発電機
12…増速機
13…回転部
20…円筒翼モーター
5…整流板
6…翼端板