(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20221122BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221122BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221122BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221122BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221122BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B28B1/30 101
B32B27/00 L
B32B27/30 A
B32B27/36
B32B27/18 Z
H01G4/30 311F
(21)【出願番号】P 2017198379
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重野 健斗
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 充晴
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156662(WO,A1)
【文献】特開2015-033811(JP,A)
【文献】特開2011-212903(JP,A)
【文献】特開2016-193529(JP,A)
【文献】特開2004-188811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B32B 27/00
B32B 27/30
B32B 27/36
B32B 27/18
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を設けた離型フィルムであって、前記離型層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が少なくとも下記に示すバインダー成分(A)と離型剤(B)を含む組成物が硬化されてなり、
前記離型層表面のジヨードメタン接触角θ1と前記離型フィルムをトルエン浸漬した後の離型層表面のジヨードメタン接触角θ2の差(θ1-θ2)が絶対値として3.0°以下であ
り、
・バインダー成分(A):1分子中に(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する紫外線硬化性化合物として、ウレタンアクリレートを含
み;
・離型剤(B):1分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を少なくとも有する紫外線硬化型アクリル共重合ポリマー、および/または、1分子内に(メタ)アクリロリル基とフッ素原子を少なくとも含む化合物;
前記ポリエステルフィルムは、離型層を塗布する面を形成する表面層Aを有し、
前記表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下である、
セラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項2】
前記離型剤(B)の固形分含有量が、離型層全固形分に対して、0.2~5質量%である請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムが、無機粒子を実質的に含有していない表面層A及び無機粒子を含有する反対側の表面層Bを有し、表面層A上に離型層が設けられており、
前記表面層Bが含有する無機粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、無機粒子の合計が表面層B中に5000~15000ppm含有されている請求項1または2のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層の膜厚が0.2~2μmである請求項1~3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
【請求項5】
0.2μm~1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法であって、請求項1~4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものであり、セラミックシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤による離型層の浸食を抑制することで、剥離力の増大や剥離の均一性が損なわれるおそれがないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに関するものである
【背景技術】
【0002】
従来ポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ、セラミック基板等のセラミックグリーンシート成型用に使用されている。近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化に伴い、セラミックグリーンシートの厚みも薄膜化する傾向にある。セラミックグリーンシートは、離型フィルム上に、チタン酸バリウムなどのセラミック成分とバインダー樹脂を含有したスラリーを塗工し乾燥することで成型される。成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷し離型フィルムから剥離した後、セラミックグリーンシートを積層、プレスし、焼成、外部電極を塗布することで積層セラミックコンデンサが製造される。ポリエステルフィルムの離型層表面にセラミックグリーンシートを成型する場合、離型層表面の微小な突起が成型したセラミックグリーンシートに影響を与え、ハジキやピンホール等の欠点を生じやすくなるといった問題点があった。そのため、平坦性に優れた離型層表面を実現するための手法が開発されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら近年、さらなるセラミックグリーンシートの薄膜化が進み、1.0μm以下、より詳しくは0.2μm~1.0μmの厚みのセラミックグリーンシートが要求されるようになってきた。そのため、より平滑な離型層表面を持つ離型フィルムが望まれている。加えて、薄膜化に伴いセラミックグリーンシートの強度が低下するため、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離するときの剥離力を低くかつ均一に行うことも望まれている。すなわち、離型フィルムからセラミックグリーンシートを剥離するときにセラミックグリーンシートにかかる力を極力少なくし、セラミックグリーンシートにダメージを与えないようにすることがより重要になってきている。
【0004】
近年になって、紫外線硬化性樹脂を用いることで、離型層の表面が平滑になることが見出された。また、同時に離型層に含まれるシリコーン系成分、またはその硬化物によって、セラミックシートとの剥離性にも優れることが見出されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された方法によると、紫外線硬化性樹脂とシリコーン系成分の相溶性が悪いために、離型層加工時にシリコーン成分が離型層表面に過剰に偏析しやすかった。その結果、離型層表面に過剰に偏析したシリコーン成分は紫外線硬化性樹脂と反応しづらく、離型層に固定されにくくなるため、有機溶剤によって脱落しやすく、耐溶剤性の悪化を招くという問題があった。離型層の耐溶剤性が悪いと、セラミックグリーンシート加工や内部電極印刷時に用いる有機溶剤、例えばトルエンなどによって離型層が浸食され、セラミックグリーンシートを剥離する時の力の増大や剥離の均一性が損なわれるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-117899号公報
【文献】国際公開第2013/145864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、離型層表面の高い平滑性を維持し、かつ
セラミックシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤による離型層の浸食が抑制され、離型フィルムからセラミックグリーンシートを剥離する時にかかる力を低く、かつ均一にすることで、厚みが1μm以下の超薄層品でも剥離時にセラミックグリーンシートにダメージを与えるおそれのないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を設けた離型フィルムであって、前記離型層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下であり、前記離型層が少なくとも下記に示すバインダー成分(A)と離型剤(B)を含む組成物が硬化されてなり、前記離型層表面のジヨードメタン接触角θ1と前記離型フィルムをトルエン浸漬した後の離型層表面のジヨードメタン接触角θ2の差(θ1-θ2)が絶対値として3.0°以下であるセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
・バインダー成分(A):1分子中に(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する紫外線硬化性化合物
・離型剤(B):1分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を少なくとも有する紫外線硬化型アクリル共重合ポリマー、および/または、1分子内に(メタ)アクリロリル基とフッ素原子を少なくとも含む化合物
2. 前記離型剤(B)の固形分含有量が、離型層全固形分に対して、0.2~5質量%である上記第1に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
3. ポリエステルフィルムが、無機粒子を実質的に含有していない表面層A及び無機粒子を含有する反対側の表面層Bを有し、表面層A上に離型層が設けられており、前記表面層Bが含有する無機粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、無機粒子の合計が表面層B中に5000~15000ppm含有されている上記第1または第2のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
4. 前記離型層の膜厚が0.2~2μmである上記第1~第3のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルム。
5. 0.2μm~1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法であって、上記第1~第4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
6. 上記第5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用するセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セラミックシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤による離型層の浸食が抑制されるため、剥離力の増大や剥離の均一性が損なわれるおそれのないセラミックグリーンシート製造用離型フィルムの提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を設け、離型層表面のジヨードメタン接触角θ1と離型フィルムをトルエンに浸漬後の離型層表面の接触角θ2の差(θ1-θ2)の値が、絶対値として3.0°以下になる離型層の構成にすることで、離型層がセラミックグリーンシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤によって浸食されるおそれがなく、剥離性に優れたセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを提供できることを見出した。以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有しており、有機溶剤による離型層の浸食が少ないことが好ましい。離型層の浸食は離型フィルムを有機溶剤に浸漬させた前後の離型層の表面状態の差を評価することで確かめることができる。有機溶剤としては、セラミックグリーンシート製造工程や内部電極印刷工程を想定し、一般的なセラミックスラリーや導電性ペーストに用いられるトルエンを用いることが好ましい。離型層の表面状態を評価する方法の一例としては、接触角による評価が挙げられ、トルエン浸漬前後の離型層表面の接触角変化が小さいほど好ましい。
【0012】
接触角を測定する際に用いる液摘の種類は特に制限されないが、水、ブロモナフタレン、エチレングリコールなどをそれぞれ好適に用いることができるが、離型層の表面状態の差をより顕著に見ることのできるジヨードメタンを用いることが最も好ましい。
【0013】
接触角の測定に用いる液摘としてジヨードメタンを用いた際には、離型層表面のジヨードメタン接触角θ1と離型フィルムをトルエンに室温、5分間浸漬した後の離型層表面の接触角θ2の差(θ1-θ2)の値が小さいほど、離型層表面の耐溶剤性が良く好ましい。具体的には、絶対値として3.0°以下であることが好ましく、2.0°以下であることが更に好ましく、1.0°以下であることが最も好ましい。3.0°以下であると、セラミックグリーンシート加工や内部電極印刷時の有機溶剤による離型層の浸食が抑えられ、剥離力の増大や剥離の均一性が損なわれるおそれがないため好ましい。離型層表面のジヨードメタン接触角θ1と離型フィルムをトルエンに室温、5分間浸漬した後の離型層表面の接触角θ2の差(θ1-θ2)は0°が最も好ましいが、絶対値として0.05°以上であっても構わず、0.1°以上であっても構わない。
【0014】
(ポリエステルフィルム)
本発明の基材として用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム用基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム形成したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由から二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0015】
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの固有粘度は0.50~0.70dl/gが好ましく、0.52~0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が多く発生することがなく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生しないので好ましい。また、原料は十分に真空乾燥することが好ましい。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0017】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横おのおのの方向に1~8倍、特に2~6倍の延伸をすることが好ましい。
【0018】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12~50μmであることが好ましく、さらに好ましくは15~38μmであり、より好ましくは、19μm~33μmである。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましい。
【0019】
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であっても2層以上の多層であったも構わないが、少なくとも片面には実質的に無機粒子を含まない表面層Aを有することが好ましい。2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムの場合は、実質的に無機粒子を含有しない表面層Aの反対面には、無機粒子などを含有することができる表面層Bを有することが好ましい。積層構成としては、離型層を塗布する側の層をA層、その反対面の層をB層、これら以外の芯層をC層とすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B、あるいは離型層/A/C/B等の積層構造が挙げられる。当然ながらC層は複数の層構成であっても構わない。また、表面層Bには無機粒子を含まないこともできる。その場合、フィルムをロール状に巻き取るための滑り性付与するため、表面層B上には少なくとも無機粒子とバインダーを含んだコート層を設けることが好ましい。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面を形成する表面層Aは、実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。このとき、表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下が好ましい。Saが7nm以下であると、積層するセラミックグリーンシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であって構わない。ここで、表面層A上に後述のアンカーコート層などを設ける場合は、コート層に実質的に無機粒子を含まないことが好ましく、コート層積層後の領域表面平均粗さ(Sa)が前記範囲に入ることが好ましい。本発明において、「無機粒子を実質的に含有しない」とは、無機粒子が、蛍光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に無機粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0021】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面の反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、無機粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましい。含有される無機粒子含有量は、表面層B中に無機粒子の合計で5000~15000ppm含有することが好ましい。このとき、表面層Bのフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は、1~40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5~35nmの範囲である。シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが1nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層のセラミックグリーンシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックグリーンシート製造時に品質が安定し好ましい。
【0022】
上記B層に含有する粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子なども用いることができるが、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましいが、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ-シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
【0023】
上記表面層Bに添加する無機粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。無機粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型フィルムの滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面の粗大粒子によるセラミックグリーンシートにピンホールが発生するおそれがなく好ましい。
【0024】
上記表面層Bには素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
【0025】
なお、粒子の平均粒子径の測定方法は、加工後のフィルムの断面の粒子を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察を行い、凝集していない粒子100個を観察し、各粒子の最大径を粒子径とし、その平均値をもって平均粒子径とする方法で行う。
【0026】
表面層Bに粒子を含まない場合は、表面層B上に粒子を含んだコート層で易滑性を持たせることが好ましい。本コート層は、特に限定されないが、ポリエステルフィルムの製膜中に塗工するインラインコートで設けることが好ましい。表面層Bに粒子を含まず、表面層B上に粒子を含むコート層を有する場合、コート層の表面は、上述の表面層Bの領域表面平均粗さ(Sa)と同様の理由により、領域表面平均粗さ(Sa)が1~40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5~35nmの範囲である。
【0027】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aには、ピンホール低減の観点から、滑剤などの無機粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
【0028】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aの厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、表面層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、表面層Bにおける再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さく好ましい。
【0029】
また、経済性の観点から上記表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の中間層C)には、50~90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、B層に含まれる滑剤の種類や量、粒径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
【0030】
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させたり、帯電を防止するなどのために表面層A及び/または表面層Bの表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、コロナ処理などを施すこともできる。
【0031】
(離型層)
本発明における離型層は、本発明の効果を満たす範囲であれば特に限定されないが、少なくともバインダー成分(A)と離型剤(B)を含有する組成物を硬化させてなることが好ましい。
【0032】
(バインダー(A))
本発明において離型層に用いるバインダー(A)は、紫外線硬化性樹脂である(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物は反応速度が非常に早いため、光重合開始剤の開裂と同時に瞬時にラジカル重合反応が進行し、架橋密度の高く、高弾性率な塗膜を形成することができる。離型層の弾性率を高めることで、剥離する際に離型層が変形し追随することがなくなり、セラミックグリーンシートにダメージを与えるおそれがないため好ましい。なお、ここで示す(メタ)アクリロイル基を有する化合物とは、分子内に有するメタアクリロイル基およびアクリロイル基が架橋点となってラジカル硬化反応が進行する化合物群を指す。
【0033】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、アクリレート、メタクリレート、ウレタンアクリレートが例として挙げられる。それぞれ好適に用いることができるが、ウレタンアクリレートを用いることがより好ましい。ウレタンアクリレートを用いる場合、1分子内に含まれる(メタ)アクリロイル基の数を増やすことができるため、より架橋密度の高い塗膜を形成できるため好ましい。また、分子内のウレタン結合が水素結合を形成できるため、硬化した塗膜強度をさらに高めることができる。ウレタンアクリレートという用語はウレタンメタクリレートを含む意味で用いている。
【0034】
(メタ)アクリレート系化合物の1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数としては、3つ以上であることが好ましく、4つ以上であることがより好ましく、6つ以上であることがさらに好ましく、9つ以上であることが最も好ましい。官能基数に特に上限はないが、20以下であることが好ましい。20以下とすることで、分子間の架橋反応よりも分子内反応が進行しやすくなり、架橋密度向上の効果が得られなくなるおそれがなく好ましい。
【0035】
本発明の離型層を構成するバインダー成分は、離型層の全固形分の80質量%以上であることが好ましい。80質量%以上とすることで添加した離型剤がバインダー成分と反応することで離型層に固定され、セラミックシートへ移行しづらくなるため好ましい。
【0036】
用いる(メタ)アクリレート系化合物は、モノマーでもオリゴマーでもポリマーでも良いが、有機溶媒への溶解性や、取扱い性の観点からモノマーまたはオリゴマーを用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(メタ)アクリレート系化合物としてモノマーを用いる際は、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリレート系化合物としてオリゴマーを用いる際は、例えば、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ポリエーテルアクリレート系オリゴマー、ポリブタジエンアクリレート系オリゴマー、シリコーンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
【0039】
本発明で用いるウレタンアクリレートとは、分子鎖中にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有するものをいう。合成方法は特に限定されないが、例えば、多価アルコール及び有機ポリイソシアネートとヒドロキシアクリレートとの反応によって得ることができる。
【0040】
上記多価アルコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメチロール、ビス-[ヒドロキシメチル]-シクロヘキサン等;上記多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール;上記多価アルコールとε-カプロラクトンとの反応によって得られるポリカプロラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール(例えば、1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等);及び、ポリエーテルポリオールを挙げられる。上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA等を挙げられる。
【0041】
上記有機ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロペンタニルイソシアネート等のイソシアネート化合物、これらイソシアネート化合物の付加体、或いはこれらイソシアネートの多量体等が挙げられる。
【0042】
上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであることが架橋密度を高めるという観点から好ましい。
【0043】
本発明に使用するウレタンアクリレートは市販されているものを用いることもできる。市販品の例としては、日本合成化学工業社製:UV1700B(10官能)、UV7620EA(9官能)、UV7610B(9官能)、UV7600B(6官能)、UV7650B(5官能)、日本化薬社製:DPHA40H(10官能)、UX5003(6官能)、荒川化学工業社製:ビームセット577(6官能)、大成ファインケミカル社製:8UX-015A(15官能)及び、新中村化学工業社製:U15HA(15官能)等を挙げることができる。
【0044】
(離型剤(B))
本発明における離型層に用いる離型剤(B)としては、一分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を有する紫外線硬化型アクリル共重合ポリマー、および/または、一分子内に(メタ)アクリロイル基とフッ素原子を持つ化合物を用いることが好ましい。
【0045】
離型剤として、一分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を有する紫外線線硬化型アクリル共重合ポリマーを用いる場合、ポリジメチルシロキサンに代表されるシリコーン系オイルなどを用いる従来技術に比べて、アクリル部位を多く有するためバインダー成分との相溶性が向上し離型層加工工程にてバインダー成分と離型剤の硬化性が良くなり未反応の離型剤が少なくなるため好ましい。さらに、一分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を有する紫外線硬化型アクリル共重合ポリマーを用いることで、バインダー成分と離型剤の間で架橋構造が形成されるだけでなく、水素結合やファンデルワールス力などの分子間相互作用も形成されるため、有機溶剤によって離型層が浸食されるおそれがなく好ましい。
本明細書中では、一分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を有する紫外線線硬化型アクリル共重合ポリマーは、以下(メタ)アクリロイル基含有共重合アクリルシリコーンとも表記することがある。
【0046】
離型剤として、一分子内に(メタ)アクリロイル基とフッ素原子を持つ化合物を用いた場合でも、有機溶剤による離型層の浸食が抑えられ、セラミックグリーンシートの剥離性に優れる離型フィルムを提供することができる。分子内にフッ素原子を有することで、シリコーン系オイルなどと比べて、有機溶剤、例えばトルエンに対する親和性が低くなり、トルエン浸漬前後でも離型層の表面状態に差が生じづらくなるため好ましい。また、分子内に(メタ)アクリロイル基を有することでバインダー成分の架橋構造に取り込まれ固定されるため、さらに耐溶剤性が向上するため好ましい。
【0047】
本発明で用いる一分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を有する紫外線硬化型アクリル共重合ポリマーは、ヒドロキシル基やカルボキシル基、グリシジル基やエポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー類と、ポリオルガノシロキサン基を有する(メタ)アクリレートモノマー類を共重合し、次いで(メタ)アクリロイル基を有する反応性化合物と、ヒドロキシル基やカルボキシル基、グリシジル基やエポキシ基が反応させて得ることができる。
【0048】
本発明で用いる紫外線硬化型一分子内に(メタ)アクリロイル基とポリオルガノシロキサン基を有する紫外線硬化型アクリル共重合ポリマーは、市販のものを用いることもできる。市販されているものとしては、GL-02R、GL-04R(以上、共栄社化学社製)、8SS-723(大成ファインケミカル社製)などが例として挙げられる。
【0049】
本発明で用いる一分子内に(メタ)アクリロイル基とフッ素原子を持つ化合物の市販品の例としては、8FX-038EX(大成ファインケミカル社製)、オプツール(登録商標)(ダイキン工業社製)、メガファック(登録商標)RS-72-K、RS-75、RS-78(以上、DIC社製)、エフエスコート(登録商標)UT-UCH23(AGCセイミケミカル社製)、EBECRYL(登録商標)8110(ダイセル・オルネクス社製)、エフクリア(登録商標)(関東電化工業社製)などが挙げられる。
【0050】
離型層中における離型剤の固形分含有量としては、離型層の全固形分に対し0.2~5質量%であることが好ましく、0.5~4質量%であることがより好ましい。0.2質量%以上であると、剥離性が発現し、セラミックグリーンシートにダメージを与えることなく剥離することができるため好ましい。5質量%以下であると、離型剤の表面への偏析量が極端に大きくなることがなく、離型剤がバインダー成分に固定されずに耐溶剤性が悪化するおそれがないため好ましい。
【0051】
(その他の成分)
本発明における離型層は、バインダー成分(A)と離型剤(B)のラジカル重合反応を進行させるため、光重合開始剤を用いることが好ましい。具体的な例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート等が挙げられる。なかでも、表面硬化性に優れるとされる、α-ヒドロキシアルキルフェノンやα-アミノアルキルフェノンが、酸素阻害を抑制するために好適に用いることができる。α-ヒドロキシアルキルフェノンの例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等が挙げられる。α-アミノアルキルフェノンの例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0052】
光重合開始剤の添加量は特に制限されないが、例えば離型層中の全固形分に対して、0.1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上とすることで、発生するラジカルの量が不十分となり硬化不足となるおそれがなく好ましい。10質量部以下とすることで、離型層中に含まれる光重合開始剤の残渣の量が少なくなり、剥離性の低下や成型するセラミックグリーンシートへの移行を抑えることができるために好ましい。
【0053】
本発明における離型層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子など突起を形成するものは含有しないほうが好ましい。
【0054】
本発明における離型層には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
(離型層の特徴)
【0055】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層の厚みが0.2~2.0μmとなる範囲がよく、より好ましくは、0.2~1.5μmであり、0.2~1.0μmであればさらに好ましい。離型層の厚みが0.2μm以上であると十分な剥離性能が得られるため好ましい。2.0μm以下であると、離型フィルムにカールが発生しづらくなり、電極印刷時の精度が低下するおそれがなく好ましい。
【0056】
本発明の離型フィルムの離型層表面は、その上で塗布・成型するセラミックグリーンシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下であることが好ましい。また、前記Saを満足し、かつ離型層表面の最大突起高さ(P)が100nm以下であることが更に好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が80nm以下であれば特に好ましい。領域表面粗さが7nm以下であれば、セラミックグリーンシート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0057】
本発明の離型フィルムは、セラミックグリーンシートを剥離するときの剥離力が0.5mN/mm2以上、4.0mN/mm2以下であることが好ましい。より好ましくは、0.8mN/mm2以上、3.0mN/mm2以下である。剥離力が0.5mN/mm2以上であると、剥離力が軽すぎて搬送時にセラミックグリーンシートが浮いてしまうおそれがなく好ましい。剥離力が4.0mN/mm2以下であると剥離時にセラミックグリーンシートがダメージを受けるおそれがなく好ましい。
(離型層の形成方法)
【0058】
本発明において、離型層の形成方法は、特に限定されずバインダー成分(A)と離型剤(B)等を含む組成物を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去、加熱乾燥した後、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が用いられる。
【0059】
加熱温度は50℃以上、110℃以下であることが好ましく、60℃以上、100℃以下であることがより好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。110℃以下の場合、フィルムへの熱的な負荷が抑えれられ、フィルムの熱収縮等の外観不良が起きづらく、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。100℃以下であるとフィルムへの熱的な負荷が更に低下し、フィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。50℃よりも高いと塗布する際に用いた希釈溶媒の乾燥が不十分となり、工程汚染等が生じるおそれがなくなるため好ましい。
【0060】
バインダー成分(A)と離型剤(B)を含む組成物の硬化に用いる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線などが使用することができるが、紫外線が使用しやすく好ましい。照射する紫外線量としては積算光量で10~1000mJ/cm2が好ましく、より好ましくは、15~500mJ/cm2であり、15~100mJ/cm2がさらに好ましい。10mJ/cm2以上とすることで樹脂の硬化が十分に進行するため好ましい。1000mJ/cm2以下とすることで加工時の速度を向上させることができるため経済的に離型フィルムを作成することができ好ましい。
【0061】
本発明において、離型層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0062】
本発明において、離型塗布層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜をレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10~80質量%程度添加することが好ましい。
【0063】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【0064】
(セラミックグリーンシートとセラミックコンデンサ)
一般に、積層セラミックコンデンサは、直方体状のセラミック素体を有する。セラミック素体の内部には、第1の内部電極と第2の内部電極とが厚み方向に沿って交互に設けられている。第1の内部電極は、セラミック素体の第1の端面に露出している。第1の端面の上には第1の外部電極が設けられている。第1の内部電極は、第1の端面において第1の外部電極と電気的に接続されている。第2の内部電極は、セラミック素体の第2の端面に露出している。第2の端面の上には第2の外部電極が設けられている。第2の内部電極は、第2の端面において第2の外部電極と電気的に接続されている。
【0065】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、このような積層セラミックコンデンサを製造するために用いられる。例えば、以下のようにして製造される。まず、本発明の離型フィルムをキャリアフィルムとして用い、セラミック素体を構成するためのセラミックスラリーを塗布、乾燥させる。塗布、乾燥されたセラミックグリーンシートは0.2μm~1.0μmの厚みを有することが好ましい。塗布、乾燥したセラミックグリーンシートの上に、第1又は第2の内部電極を構成するための導電層を印刷する。セラミックグリーンシート、第1の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシートを適宜積層し、プレスすることにより、マザー積層体を得る。マザー積層体を複数に分断し、生のセラミック素体を作製する。生のセラミック素体を焼成することによりセラミック素体を得る。その後、第1及び第2の外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを完成させることができる。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例を用いて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。
【0067】
(ポリエステル樹脂の固有粘度(dl/g))
JIS K 7367-5に準拠し、溶媒としてフェノール(60質量%)と1,1,2,2-テトラクロロエタン(40質量%)の混合溶媒を用い、30℃で測定した。
【0068】
(基材フィルム厚み)
ミリトロン(電子マイクロインジケーター)を用い、測定すべきフィルムの任意の4箇所より5cm角サンプル4枚を切り取り、一枚あたり各5点(計20点)測定して平均値を厚みとした。
【0069】
(離型層厚み)
離型層の厚みは、光干渉式膜厚計(F20、フィルメトリクス社製)を用いて測定した。(離型層の屈折率は1.52として算出)
【0070】
(表面粗さ)
非接触表面形状計測システム(菱化システム社製、VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は7回測定し最大値と最小値を除いた5回の最大値を使用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:10倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 936μm×702μm
(解析条件)
・面補正: 4次補正
・補間処理: 完全補間
【0071】
(接触角)
25℃、50%RHの条件下で接触角計(協和界面科学社製、全自動接触角計 DM-701)を用いて、静置した離型フィルムの離型面上にジヨードメタン(液滴量0.9μL)の液滴を作成しその接触角を測定した。接触角は離型フィルム上に滴下後30秒後の接触角を採用し、5回測定した値の平均値を採用した。
【0072】
(トルエン浸漬後の接触角)
測定に用いる離型フィルムを5cm×5cmの大きさに切り取り、液温25℃のトルエン30mLが入ったガラス製のトレーの中に、離型面を下にして5分間浸漬させた。浸漬した離型フィルムを取り出し離型面を上にして15分間風乾した後、25℃で1晩真空乾燥させた。こうして得たトルエン浸漬後の離型フィルムを前記接触角の測定方法と同様の方法にて測定した。
【0073】
(接触角変化の評価)
前記方法にて測定したトルエン浸漬前の初期の離型層表面のジヨードメタン接触角をθ1、トルエン浸漬後の離型層表面のジヨードメタン接触角をθ2とした時の、θ1-θ2の絶対値の値をトルエン浸漬前後の接触角変化の値とした。以下の基準で接触角変化の評価を行った。
◎:|θ1―θ2| < 1.0°
○:1.0°≦ |θ1―θ2| < 2.0°
△:2.0°≦ |θ1―θ2| ≦ 3.0°
×:|θ1―θ2| > 3.0°
【0074】
(セラミックグリーンシートのピンホール評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを分散質とするビーズミルを用いて30分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 76.3質量部
エタノール 76.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 35.0質量部
ポリビニルブチラール
(積水化学社製 エスレック(登録商標)BM-S) 3.5質量部
DOP(フタル酸ジオクチル) 1.8質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが0.8μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥後、離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cm2の範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。測定は5回実施し、その平均値を採用した。
◎:ピンホールの発生なし
○:ピンホールの発生がほぼなし(目安:ピンホールが測定面積当たり2個以下)
△:ピンホールの発生があり(目安:ピンホールが測定面積当たり5個以下)
×:ピンホールの発生が多数あり
【0075】
(セラミックグリーンシートの剥離性評価)
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを分散質とするビーズミルを用いて60分間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 38.3質量部
エタノール 38.3質量部
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 64.8質量部
ポリビニルブチラール
(積水化学社製 エスレック(登録商標)BM-S) 6.5質量部
DOP(フタル酸ジオクチル) 3.3質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが10μmの厚みになるように塗布し90℃で2分乾燥しセラミックグリーンシートを離型フィルム上に成型した。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に、高速剥離試験機(テスター産業社製、TE-701)を用いて、30mmの幅で剥離角度90度、剥離速度10m/minで剥離した。剥離はセラミックグリーンシート面を固定し、離型フィルム面を引っ張る方向で剥離した。この時の剥離時にかかる応力を測定し剥離力とした。以下の基準でセラミックグリーンシートの剥離性の評価を行った。
◎:剥離力が2.0mN/mm2以下の非常に軽い力で剥離できた。
○:剥離力が2.0mN/mm2よりも大きく、3.0mN/mm2以下の比較的軽い力で剥離できた。
△:剥離力が3.0mN/mm2よりも大きく、4.0mN/mm2以下の軽い力で剥離できた。
×:剥離力が4.0mN/mm2よりも大きい力を必要であった。
【0076】
(積層フィルムX1)
無機粒子を実質的に含有していない表面層Aと無機粒子を含有する反対側の表面層Bを有する厚み31μmの二軸配向ポリエステルフィルムを使用した。表面層AのSaは2nm、最大突起高さ(P)は25nm、表面層BのSaは28nm、最大突起高さ(P)は750nmであった。
【0077】
(積層フィルムX2)
厚み25μmのポリエステルフィルム(東洋紡エステル(登録商標)フィルムE5101、東洋紡社製)を使用した。E5101は、フィルム中に無機粒子を含有した構成になっている。表面層AのSaは24nm、最大突起高さ(P)は770nm、表面層BのSaは24nm、最大突起高さ(P)は770nmであった。
【0078】
(実施例1)
積層フィルムX1の表面層A上に以下に示す組成の塗布液をワイヤーバーを用いて乾燥後の離型層膜厚が0.8μmになるように塗工し、90℃で15秒乾燥した後、積算光量が70mJ/cm2の紫外線を紫外線照射機(ヘレウス社製、LC6B、Hバルブ)を用いて照射することでセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムにセラミックスラリーを塗工し、離型層表面粗さ、剥離性、トルエン浸漬後の接触角変化、ピンホールなどを評価したところ、良好な評価結果が得られた。
イソプロピルアルコール 59.40質量部
メチルエチルケトン 19.80質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 19.00質量部
(製品名:A-DPH、新中村化学工業社製、固形分100質量%)
(メタ)アクリロイル基含有共重合アクリルシリコーン 1.00質量部
(製品名:GL-04R、共栄社化学社製、固形分20%)
α-アミノアルキルフェノン 0.80質量部
(製品名:IRGACURE907、BASF社製、有効成分100%)
【0079】
(実施例2)
実施例1の塗布液中のバインダー(A)を4官能アクリレート(製品名:A-TMMT、新中村化学工業社製)に変更し、離型層の厚みが2μmになるようにして、実施例1と同様にセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0080】
(実施例3)
実施例1の塗布液中のバインダー(A)を6官能ウレタンアクリレート(製品名:UV7600B、日本合成化学工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0081】
(実施例4)
実施例1の塗布液中のバインダー(A)を10官能ウレタンアクリレート(製品名:UV1700B、日本合成化学工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0082】
(実施例5)
実施例1の塗布液中のバインダー(A)を15官能ウレタンアクリレート(製品名:8UX-015A、大成ファインケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様にセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0083】
(実施例6)
実施例1の塗布液中の離型剤(B)を(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテルに変更した以外は、実施例1と同様にセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0084】
(実施例7)
下記に示した組成である塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
イソプロピルアルコール 59.78質量部
メチルエチルケトン 19.92質量部
10官能ウレタンアクリレート 19.00質量部
(製品名:UV1700B、日本合成化学工業社製、固形分100質量%)
(メタ)アクリロイル基含有パーフルオロポリエーテル 0.50質量部
(固形分25%)
α-アミノアルキルフェノン 0.80質量部
(製品名:IRGACURE907、BASF社製、有効成分100%)
【0085】
(実施例8)
実施例7の塗布液中の離型剤(B)を(メタ)アクリロイル基含有フッ素系ポリマー(製品名:8FX-038EX)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0086】
(実施例9)
実施例7の塗布液中の離型剤(B)をアクリロイル基を有するUV硬化型フッ素樹脂(製品名:メガファック(登録商標)RS-75、DIC社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0087】
(実施例10)
実施例7の塗布液中の離型剤(B)を(メタ)アクリロイル基含有共重合アクリルシリコーン(製品名:8SS-723、大成ファインケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0088】
(実施例11)
離型層の膜厚が0.5μmになるように塗工した以外は、実施例4と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0089】
(実施例12)
離型層の膜厚が0.2μmになるように塗工した以外は、実施例4と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0090】
(実施例13)
基材フィルムを積層フィルムX2に変更した以外は実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0091】
(比較例1)
表1に示すように、実施例1で用いた塗布液から離型剤(B)を除いた以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0092】
(比較例2)
表1に示すように、離型層の膜厚が0.1μmになるように塗工した以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0093】
(比較例3)
表1に示すように、実施例1で用いた塗布液中の離型剤(B)をフッ素系コーティング剤(製品名:エフクリア(登録商標)KD270R、関東電化工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0094】
(比較例4)
表1に示すように、実施例1で用いた塗布液中の離型剤(B)を片末端エポキシ変性ポリジメチルシロキサン(製品名:X-22-173DX、信越化学工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0095】
(比較例5)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと(メタ)アクリロイル基含有共重合シリコーンアクリルポリマーの質量割合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0096】
(比較例6)
熱硬化付加反応型シリコーン(製品名:KS-847H、信越化学工業社製,固形分濃度30%)100質量部をトルエンで希釈し、これに白金触媒(信越化学工業社製,CAT-PL-50T)2質量部を混合し、固形分が5.0質量%の塗布液を調製した。得られた塗布液を、形成される離型層の乾燥後の厚さが0.3μmとなるように、実施例1と同様の方法にて積層フィルムX1の表面層A上に均一に塗布し、140℃で1分間乾燥させて剥離剤層を形成し、セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
【0097】
(比較例7)
下記に示した組成である塗布液に変更し、離型剤をアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサンに変更した以外は、実施例1と同様にして超薄層セラミックグリーンシート製造用離型フィルムを得た。
イソプロピルアルコール 60.00質量部
メチルエチルケトン 20.00質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 19.00質量部
(製品名:A-DPH、新中村化学工業社製、固形分100質量%)
アクリロイル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン 0.20質量部
(製品名:BYK-UV3500、ビッグケミー・ジャパン社製、固形分100%)
α-アミノアルキルフェノン 0.80質量部
(製品名:IRGACURE907、BASF社製、有効成分100%)
【0098】
表1に示すように、バインダー成分脂(A)と離型剤(B)の組み合わせによって、トルエン浸漬前後のジヨードメタンの接触角変化|θ1-θ2|の値に違いが見られた。実施例1~13では、トルエン浸漬前後のジヨードメタンの接触角変化|θ1-θ2|は3.0°以下であり、セラミックグリーンシート加工時の有機溶剤による離型層の浸食がなく、低い力で剥離することができた。一方で離型剤を含まない比較例1は満足に剥離できず、また、比較例2~7は、トルエン浸漬前後のジヨードメタンの接触角変化|θ1-θ2|が3.0°よりも大きく、セラミックグリーンシート加工時の有機溶剤によって離型層が浸食され、剥離する力が増大した。
【0099】
セラミックグリーンシートの上に内部電極を印刷したところ、実施例1~13は、内部電極付きセラミックグリーンシートを剥離する力に変化は見られなかった。一方で、比較例2~7では、内部電極付きセラミックグリーンシートを剥離する力が増大した。
【0100】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、離型層表面が大変平滑であり、かつ有機溶剤によって離型層が浸食されるおそれがないため、厚みが1μm以下の超薄層のセラミックグリーンシートを成型する場合でも剥離力が低くピンホールなどの欠点が少ないセラミックグリーンシートを成型できる離型フィルムの提供が可能となる。