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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20221122BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221122BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221122BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221122BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20221122BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221122BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20221122BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221122BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B60W30/00
B60L3/00 S
B60L15/20 J
B60L50/60
B60W50/08
B60W50/14
G01C21/34
G08G1/09 V
G08G1/0968 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017203201
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019077211
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】武田 敏彦
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-197311(JP,A)
【文献】特開2014-199213(JP,A)
【文献】特開2008-247318(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170635(WO,A1)
【文献】特開2007-212421(JP,A)
【文献】特開2008-309798(JP,A)
【文献】特表2013-524221(JP,A)
【文献】特開2014-151718(JP,A)
【文献】特開2001-069605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
B60K 6/20 - 6/547
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
G01C 21/00 - 21/36
G08G 1/00 - 99/00
G09B 29/00 - 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において、電気エネルギーを発生する発電部(25、26)と、
出発地から目的地に達するルートを決定するルート決定部(21)と、
前記ルート決定部によって決定されたルートに沿って前記車両を走行させる際に、ルート全体で、動作予定の車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積るとともに、ルートを細分化した各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を見積る見積部(S210、S230)と、
前記車載装備が動作する際に、その動作に必要な電気エネルギーを供給するとともに、前記発電部によって発電された電気エネルギーによって充電可能な車載バッテリ(30)と、
前記見積部によって見積られた全消費電気エネルギー量に見合うように、前記発電部が発生すべき全発生電気エネルギー量を定め、さらに、各区間で発生する区間発生電気エネルギー量の合計が全発生電気エネルギー量となり、かつ前記見積部によって見積られた各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、前記車載バッテリの充電レベルが、所定の上下限値によって定義される許容範囲を超えないように、各区間の区間発生電気エネルギー量を定め、この定めた各区間の区間発生電気エネルギー量に基づいて、ルートに沿った前記車両の走行に伴う、各区間における前記発電部における電気エネルギーの発生計画を立案する発生計画立案部(S220、S240、S250)と、
前記車両がルートの走行を開始すると、前記発生計画立案部によって立案された電気エネルギーの発生計画に基づき、前記発電部を制御する発電制御部(14,15)と、を備える車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両が、ルートを細分化した各区間の少なくとも1つの区間において、当該区間における走行を完了する前に、その区間における最新の状況に関する情報に基づき、その区間における最新区間消費電気エネルギー量を見積る最新エネルギー量見積部(S330)と、
前記最新エネルギー量見積部によって見積られた最新区間消費電気エネルギー量と、事前に算出されている区間消費電気エネルギー量との差異に応じて、該当する区間及び/又は該当する区間以降の区間における電気エネルギーの発生計画を修正する第1修正部(S360、S390)と、を備える請求項に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両が、ルートを細分化した各区間の少なくとも1つの区間において、該当区間における走行を完了する前に、その区間における最新の状況に関する情報に基づき、当該区間での電気エネルギーの発生計画通りに電気エネルギーを発生可能か否かを判定する判定部(S350)と、
前記判定部によって、当初の発生計画通りに電気エネルギーを発生できないと判定された場合に、該当する区間及び/又は該当する区間以降の区間における電気エネルギーの発生計画を修正する第2修正部(S360、S390)と、を備える請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
車両において、電気エネルギーを発生する発電部(25、26)と、
出発地から目的地に達するルートを決定するルート決定部(21)と、
前記ルート決定部によって決定されたルートに沿って前記車両を走行させる際に、ルート全体で、動作予定の車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積るとともに、ルートを細分化した各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を見積る見積部(S210、S230)と、
前記車載装備が動作する際に、その動作に必要な電気エネルギーを供給するとともに、前記発電部によって発電された電気エネルギーによって充電可能な車載バッテリ(30)と、
前記見積部によって見積られた全消費電気エネルギー量に見合うように、前記発電部が発生すべき全発生電気エネルギー量を定め、さらに、各区間で発生する区間発生電気エネルギー量の合計が全発生電気エネルギー量となり、かつ前記見積部によって見積られた各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、前記車載バッテリの充電レベルが、所定の上下限値によって定義される許容範囲を超えないように、各区間の区間発生電気エネルギー量を定め、この定めた各区間の区間発生電気エネルギー量に基づいて、ルートに沿った前記車両の走行に伴う、各区間における前記発電部における電気エネルギーの発生計画を立案する発生計画立案部(S220、S240、S250)と、
前記車両がルートの走行を開始すると、前記発生計画立案部によって立案された電気エネルギーの発生計画に基づき、前記発電部を制御する発電制御部(14,15)と、
前記車両が、ルートを細分化した各区間の少なくとも1つの区間において、当該区間における走行を完了する前に、その区間における最新の状況に関する情報に基づき、その区間における最新区間消費電気エネルギー量を見積る最新エネルギー量見積部(S330)と、
前記最新エネルギー量見積部によって見積られた最新区間消費電気エネルギー量と、事前に算出されている区間消費電気エネルギー量との差異に応じて、該当する区間及び/又は該当する区間以降の区間における電気エネルギーの発生計画を修正する第1修正部(S360、S390)と、を備える車両用制御装置。
【請求項5】
車両において、電気エネルギーを発生する発電部(25、26)と、
出発地から目的地に達するルートを決定するルート決定部(21)と、
前記ルート決定部によって決定されたルートに沿って前記車両を走行させる際に、ルート全体で、動作予定の車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積るとともに、ルートを細分化した各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を見積る見積部(S210、S230)と、
前記車載装備が動作する際に、その動作に必要な電気エネルギーを供給するとともに、前記発電部によって発電された電気エネルギーによって充電可能な車載バッテリ(30)と、
前記見積部によって見積られた全消費電気エネルギー量に見合うように、前記発電部が発生すべき全発生電気エネルギー量を定め、さらに、各区間で発生する区間発生電気エネルギー量の合計が全発生電気エネルギー量となり、かつ前記見積部によって見積られた各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、前記車載バッテリの充電レベルが、所定の上下限値によって定義される許容範囲を超えないように、各区間の区間発生電気エネルギー量を定め、この定めた各区間の区間発生電気エネルギー量に基づいて、ルートに沿った前記車両の走行に伴う、各区間における前記発電部における電気エネルギーの発生計画を立案する発生計画立案部(S220、S240、S250)と、
前記車両がルートの走行を開始すると、前記発生計画立案部によって立案された電気エネルギーの発生計画に基づき、前記発電部を制御する発電制御部(14,15)と、
前記車両が、ルートを細分化した各区間の少なくとも1つの区間において、該当区間における走行を完了する前に、その区間における最新の状況に関する情報に基づき、当該区間での電気エネルギーの発生計画通りに電気エネルギーを発生可能か否かを判定する判定部(S350)と、
前記判定部によって、当初の発生計画通りに電気エネルギーを発生できないと判定された場合に、該当する区間及び/又は該当する区間以降の区間における電気エネルギーの発生計画を修正する第2修正部(S360、S390)と、を備える車両用制御装置。
【請求項6】
前記車両を利用するユーザが、前記車両を用いて実現したいことを推定する推定部(S100)と、
前記推定部によって推定されたユーザの実現したいことに基づき、その実現したいことに対応するように、前記車載装備を制御する際の指針となる制御目的を設定する制御目的設定部(S110、S120)と、
前記制御目的設定部によって設定された制御目的に従った制御内容にて、前記車載装備を制御する制御部(10~25)と、を備え、
前記見積部は、設定された制御目的に従った制御内容にて前記車載装備が制御されることを前提として、前記車載装備によって消費される消費電気エネルギー量を見積る請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記制御目的設定部は、前記推定部によって推定されたユーザの実現したいことを、車両側にて提供可能な提供価値に置き換え、その置き換えた提供価値に応じた制御目的を設定する請求項に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
提供価値は、移動価値と空間価値との少なくとも一方を含む請求項に記載の車両用制御装置。
【請求項9】
提供価値及び/又は制御目的をユーザに報知する報知部(S130)を備え、
前記報知部によって報知された提供価値及び/又は制御目的に対して、ユーザからの同意が得られた場合に、前記制御部は、設定された制御目的に従った制御内容にて、前記車載装備の制御を実行する請求項7又は8に記載の車両用制御装置。
【請求項10】
前記発電制御部は、前記ルート決定部によって決定されたルートが途中で変更された場合、新たなルートにおける電気エネルギーの発生計画が立案されるまでの経過措置として、元のルート全体で消費される全消費電気エネルギー量と新たなルート全体で消費される全消費電気エネルギー量との比率に応じて、元のルートに対応した電気エネルギーの発生計画を修正することにより算出した電気エネルギーの発生計画を、前記発電部を制御するための電気エネルギーの発生計画として用いる請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用制御装置。
【請求項11】
車両において、電気エネルギーを発生する発電部(25、26)と、
出発地から目的地に達するルートを決定するルート決定部(21)と、
前記ルート決定部によって決定されたルートに沿って前記車両を走行させる際に、ルート全体で、動作予定の車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積るとともに、ルートを細分化した各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を見積る見積部(S210、S230)と、
前記車載装備が動作する際に、その動作に必要な電気エネルギーを供給するとともに、前記発電部によって発電された電気エネルギーによって充電可能な車載バッテリ(30)と、
前記見積部によって見積られた全消費電気エネルギー量に見合うように、前記発電部が発生すべき全発生電気エネルギー量を定め、さらに、各区間で発生する区間発生電気エネルギー量の合計が全発生電気エネルギー量となり、かつ前記見積部によって見積られた各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、前記車載バッテリの充電レベルが、所定の上下限値によって定義される許容範囲を超えないように、各区間の区間発生電気エネルギー量を定め、この定めた各区間の区間発生電気エネルギー量に基づいて、ルートに沿った前記車両の走行に伴う、各区間における前記発電部における電気エネルギーの発生計画を立案する発生計画立案部(S220、S240、S250)と、
前記車両がルートの走行を開始すると、前記発生計画立案部によって立案された電気エネルギーの発生計画に基づき、前記発電部を制御する発電制御部(14,15)と、
前記発電制御部は、前記ルート決定部によって決定されたルートが途中で変更された場合、新たなルートにおける電気エネルギーの発生計画が立案されるまでの経過措置として、元のルート全体で消費される全消費電気エネルギー量と新たなルート全体で消費される全消費電気エネルギー量との比率に応じて、元のルートに対応した電気エネルギーの発生計画を修正することにより算出した電気エネルギーの発生計画を、前記発電部を制御するための電気エネルギーの発生計画として用いる車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が使用される使用予定内容が決定されたときに、車両が使用される前に、その使用予定内容に基づいて車載装置の制御計画を立案し、その立案した制御計画に基づき車載装備を制御する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両の使用予定内容として、走行予定経路が決定されると、走行予定経路での走行のために消費する消費電力量を推定した上で、車両バッテリの充電量に基づく供給電力量と対比し、供給電力量にて走行予定経路を走行可能か否か推定する車両の目的地到達推定装置が開示されている。消費電力量の推定精度を高めるために、特許文献1の装置では、車速ごとに当該車速に達した際の加速度を順次取得し、速度・加速度ヒストグラムとして路面状況(坂道やカーブ)に応じてそれぞれ区分けして蓄積する。さらに、平坦路における各速度域とその速度域に達した際の加速度情報と関連つけて、実績値に基づく単位距離あたりの平坦路走行消費電力量を走行消費電力マップとして保存する。
【0003】
そして、特許文献1の装置では、走行予定経路が決定されると、まず、走行予定経路全域を平坦路と見做して、平坦路用の速度・加速度ヒストグラムと走行消費電力マップとを用いて、単位距離あたりの平坦路走行相当分消費電力値を算出する。さらに、算出した単位距離あたりの平坦路走行相当分消費電力値に走行予定経路の走行距離を乗算することにより、平坦路と見做した走行予定経路の走行に必要な消費電力予測値を算出する。その上で、平坦路と見做した場合の消費電力予測値に、上り勾配情報に基づく、加算補整係数により補正した上り路消費電力量と、下り勾配情報に基づく、回生補正係数により補正した下り路回生電力量を加えて、全走行路での走行消費電力予測値を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-202643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の目的地到達推定装置では、結局のところ、目的地までの走行予定経路を走行するために消費される走行消費電力量の予測値と、車両バッテリの充電レベル情報から算出される供給可能電力量の予測値とを対比して、目的地まで到達可能であるかどうかを判断しているものにすぎない。
【0006】
そして、従来、車両が走行予定経路を走行するとき、エンジン、走行駆動用モータ、エアコン、ナビゲーションなどの各種の車載装備は、ユーザの操作に基づき、制御されていた。このため、それら各種の車載装備は、走行予定経路の高低差、形状、気候、温度、渋滞などの状況に適した態様で制御されるとは限られず、さらに、それら車載装備を作動させるために、ユーザは個別の操作が必要となっていた。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、車両の使用予定内容が決定されたときに、極力、ユーザの手間をかけずに、使用予定内容に適した態様で車載装備を制御することが可能な車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による車両用制御装置は、
車両において、電気エネルギーを発生する発電部(25、26)と、
出発地から目的地に達するルートを決定するルート決定部(21)と、
ルート決定部によって決定されたルートに沿って車両を走行させる際に、ルート全体で、動作予定の車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積るとともに、ルートを細分化した各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を見積る見積部(S210、S230)と、
車載装備が動作する際に、その動作に必要な電気エネルギーを供給するとともに、発電部によって発電された電気エネルギーによって充電可能な車載バッテリ(30)と、
見積部によって見積られた全消費電気エネルギー量に見合うように、発電部が発生すべき全発生電気エネルギー量を定め、さらに、各区間で発生する区間発生電気エネルギー量の合計が全発生電気エネルギー量となり、かつ見積部によって見積られた各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、車載バッテリの充電レベルが、所定の上下限値によって定義される許容範囲を超えないように、各区間の区間発生電気エネルギー量を定め、この定めた各区間の区間発生電気エネルギー量に基づいて、ルートに沿った車両の走行に伴う、各区間における発電部における電気エネルギーの発生計画を立案する発生計画立案部(S220、S240、S250)と、
車両がルートの走行を開始すると、発生計画立案部によって立案された電気エネルギーの発生計画に基づき、発電部を制御する発電制御部(14,15)と、を備えるように構成される。
【0009】
上述したように、本発明の車両用制御装置によれば、ルートが決定されると、見積部が、ルート全体で、動作予定の車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積るとともに、ルートを細分化した各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を見積る。そして、発生計画立案部が、見積られた全消費電気エネルギー量に見合うように、発電部が発生すべき全発生電気エネルギー量を定め、さらに、各区間で発生する区間発生電気エネルギー量の合計が全発生電気エネルギー量となり、かつ見積部によって見積られた各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、車載バッテリの充電レベルが、所定の上下限値によって定義される許容範囲を超えないように、各区間の区間発生電気エネルギー量を定める。さらに、発生計画立案部は、定めた各区間の区間発生電気エネルギー量に基づいて、ルートに沿った車両の走行に伴う、各区間における発電部における電気エネルギーの発生計画を立案する。発電制御部は、車両がルートの走行を開始すると、発生計画立案部によって立案された電気エネルギーの発生計画に基づき、発電部を制御する。このため、極力、ユーザの手間をかけずに、車載装備の制御を実行させることが可能となる。
【0010】
上記括弧内の参照番号は、本発明の理解を容易にすべく、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、なんら本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0011】
また、上述した特徴以外の、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術的特徴に関しては、後述する実施形態の説明及び添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両に搭載された各種の車載装備を制御するために、車両用制御装置が有する各種機能の一例を示した機能ブロック図である。
図2】ユーザが車両を用いて実現したいことと、車両側にて提供可能な提供価値である移動価値と空間価値との対応付けの一例を示す図である。
図3】個々の移動価値と、各移動価値を実現するための各車載装備の制御目標との関連付けの一例を示す図である。
図4】個々の空間価値と、各空間価値を実現するための各車載装備の制御目標との関連付けの一例を示す図である。
図5】統合制御部において実行される、ユーザの実現したいことを、車側にて提供可能な提供価値を通じて、各車載装備の制御目的に変換して、その制御目的に従う制御指示を各制御部に与える処理を示すフローチャートである。
図6】車両において、電気エネルギー需給を管理するための処理内容を示すフローチャートである。
図7】予定ルートを細分化した複数の区間において、電気エネルギーを消費する主要な車載装備、その消費の主な要因。消費エネルギー量、及び発生エネルギー量を示す図である。
図8】予定ルートを細分化した各区間での、車載バッテリの充電レベル(SOC)の変化の一例を示す図である。
図9】車両が予定ルートを細分化した1つの区間の走行前あるいは走行中に、該当区間における最新の状況に関する情報に基づいて、立案した電気エネルギーの発生計画の修正の必要性を判定し、修正が必要と判定した場合に、電気エネルギーの発生計画の修正を行う処理を示すフローチャートである。
図10】車両が設定された予定ルートを走行中に、その予定ルートから逸れて、新たな予定ルートを走行する場合の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両用制御装置の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下においては、車両用制御装置が、車両の使用予定内容として車両の予定ルートが決定され、車両がその予定ルートを走行する際に、車載装備としての発電部による発電量を最適に制御する実施形態について説明する。本実施形態では、発電部として、エンジンの動力によって駆動されて発電する発電用モータと、車両の加速時等に車両を走行させる駆動トルクを発生するとともに車両の減速時に車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する、いわゆる電力回生機能を備えた駆動用モータとの2つのモータが設けられた例を説明する。しかしながら、車両には、発電部として、電力回生機能を備えた駆動用モータだけを設けるようにしても良い。さらに、以下に説明する実施形態では、車両が、通常の手動運転機能に加えて、高度運転支援機能、さらには、自動運転機能を実行可能である例について説明する。ただし、この点に関しても、車両は、手動運転機能と高度運転支援機能だけを実行可能なものであっても良いし、手動運転機能と自動運転機能だけを実行可能なものであっても良い。
【0014】
図1は、上述した車両における各種の車載装備25~35を制御するために、車両用制御装置100が有する各種機能の一例を機能ブロック図として表したものである。ただし、図1には、車両用制御装置100が有する機能の全てが示されている訳ではない。これは、説明の便宜のため、図1には、本実施形態に係る車両用制御装置100の特徴を説明するために必要な構成の一例しか示していないためである。
【0015】
図1の例に示すように、車両用制御装置100は、制御機能に応じて予め複数の論理ブロック(機能ブロック)10~24に区分けされ、それら複数の論理ブロック10~24間の連結関係を規定することによって構成されている。すなわち、車両用制御装置100は、各種の車載装備25~35を制御するための論理構造が、論理ブロック10~24と、論理ブロック10~24間の連結関係によって規定されている。そして、車両用制御装置100は、複数の論理ブロック10~24が、規定された連結関係に従って連携して動作することにより、各種の車載装備25~35を制御する。
【0016】
なお、図1には示していないが、各論理ブロック10~24は、少なくとも1つ、通常は多数の制御ブロックを有している。各論理ブロック10~24は、それら多数の制御ブロックにおける演算処理を適宜組み合わせることにより、それぞれの機能(役割)を発揮する。
【0017】
例えば、論理ブロックとしてのエンジン制御部16は、エンジン27の運転状態を検出すべく、各種のセンサからのセンサ信号を入力して、エンジン制御部16内で取り扱うことができる信号に変換する制御ブロックを有する。あるいは、この制御ブロックは、必要なセンサ信号を他の論理ブロックから通信により取得するための制御ブロックであっても良い。また、エンジン制御部16は、センサ信号から把握されるエンジン27の運転状態から現状の発生トルクを算出するとともに、上位の論理ブロック(パワートレイン制御部11)から指示された指令トルクと差異がある場合に、その差異をなくすための目標とするエンジン運転状態を算出する制御ブロックを有する。さらに、目標エンジン運転状態を達成するための燃料噴射量と燃料噴射時期、及び点火時期を算出する制御ブロックを有する。その他にも、例えば、エンジン27の発熱温度に応じて、エンジン27の温度調節を実行する制御ブロックなども有する。ただし、これらは単なる例示であって、エンジン制御部16は、その機能を発揮するために必要な、その他の演算処理を行う制御ブロックを有する場合もあり得る。また、例示された制御ブロックを含め、エンジン制御部16内の制御ブロックは、適宜、統合されたり、逆に、細分化されたりすることが可能なものである。
【0018】
車両用制御装置100は、実際には、各論理ブロック10~24を、プログラムやデータベースとして、電子制御装置(ECU)に実装することにより具現化される。この際、論理ブロック間の連結関係が維持できる限り、各論理ブロック10~24を実装する電子制御装置の数は任意である。すなわち、複数の論理ブロック10~24の一部もしくは全部を共通の電子制御装置に実装しても良い。一方、各論理ブロック10~24を複数の電子制御装置に振り分けて実装する場合には、それら複数の電子制御装置は、論理ブロック10~24の連結関係を維持できるように、個別の通信線を介して接続されたり、各電子制御装置が共通のネットワークに接続され、連結関係に従う所望の電子制御装置同士が通信可能に構成されたりする必要がある。
【0019】
次に、図1に例示した車両用制御装置100が制御対象とする各種の車載装備25~35、及び、それらの車載装備25~35を制御するために、車両用制御装置100が有する各種の機能としての論理ブロック10~24と各論理ブロック10~24の連結関係とについて詳しく説明する。
【0020】
図1に示すように、車両はハイブリッド車両であり、走行駆動源として、駆動用モータ26とエンジン27とを有する。さらに、この車両は、駆動用モータ26を駆動するための電気エネルギー(電力)を発電する発電用モータ25を有する。発電用モータ25、駆動用モータ26、及びエンジン27は、例えば、遊星歯車を介して接続される。エンジン27が発生する動力は、遊星歯車により、駆動輪に伝達される動力と発電用モータ25を駆動する動力とに分割されたり、駆動輪だけに伝達されたり、或いは、発電用モータ25の駆動のためだけに使用されたりする。
【0021】
発電用モータ25は、遊星歯車を介して、停止しているエンジン27を回転させて、エンジン27を始動させる機能を有する。さらに、発電用モータ25は、エンジン27の動力によって駆動されたときに、電気エネルギー(電力)を発電する。発電用モータ25によって発電された電力は、発電用モータ25の駆動に使用されたり、車載バッテリ28の充電に使用されたりする。駆動用モータ26は、駆動輪を駆動するための動力を発生する。さらに、駆動用モータ26は、減速時に車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する。駆動用モータ26によって発電された電力は、車載バッテリ28の充電に使用される。
【0022】
このような、発電用モータ25、駆動用モータ26、及びエンジン27を備えるハイブリッド車両では、車両を駆動するためのエネルギー効率を高めるために、例えば、車両の発進時や低速走行時には、エンジン27を停止したまま、駆動用モータ26だけが車載バッテリ28からの電力供給を受けて、車両を走行させるための動力を発生する。車両の速度が高くなると、エンジン27が始動されるが、エンジン27は、極力、効率の良い回転数で回転される。このため、エンジン27が発生する動力が、車両を走行させるために必要な動力よりも大きいと、その余剰分の動力によって発電用モータ25が駆動される。一方、エンジン27が発生する動力が、車両を走行させるために必要な動力に満たない場合には、駆動用モータ26によってアシストされる。なお、後述するように、車両として、電力の発電量を増やす必要がある場合には、エンジン27の動力が発電用モータ25の駆動のためだけに使用されたり、エンジン27の回転数が発電量の増加分だけ上乗せされたりする。
【0023】
車載バッテリ28は、高圧バッテリと低圧バッテリとを含む。高圧バッテリは、低圧バッテリよりも高電圧の電力を充放電可能なものであり、発電用モータ25及び駆動用モータ26への電力供給や、それらのモータ25、26によって発電された電力の蓄積のために用いられる。また、高圧バッテリは、エアコン33の電動コンプレッサを駆動するための電力供給も行う。低圧バッテリは、発電用モータ25、駆動用モータ26、及び電動コンプレッサ以外の、低電圧(例えば12V)で動作する車載装備へ動作電力を供給するものである。なお、図示していないが、高圧バッテリと低圧バッテリとは、DC-DCコンバータを介して接続され、低圧バッテリは、高圧バッテリに蓄積された高電圧電力を用いて充電可能に構成されている。
【0024】
サスペンション29は、車両の各車輪と車体との間に設けられ、減衰力を複数段に切替可能なものである。ブレーキ30は、運転者のブレーキペダル操作に応じた制動力を発生することに加え、例えばブレーキフルードを吐出する電動ポンプなどを用いて、運転者によるブレーキペダルの操作に係らず、制動力を発生可能なものである。電動パワーステアリング(EPS)31は、運転者がステアリングホイールを操舵する際の操舵力を、電動モータによってアシストする。さらに、EPS31は、運転者による操舵操作に係わらず、ステアリングシャフトを回転駆動することにより車両の操舵輪の操舵角を制御可能なものである。
【0025】
ナビゲーション32は、現在位置検出部が検出する車両の現在位置と、格納された地図データベースとに基づき、地図上における車両の位置をディスプレイに表示する。さらに、ナビゲーション32は、目的地が設定された場合に、目的地までの予定ルートを決定し、車両が決定された予定ルートを走行するように案内する。エアコン33は、公知の冷凍サイクルと、エンジン27の冷却水を利用したヒータやPTCヒータなどを用いて、車室内の空調を行うものである。シート空調34は、シート表面に設けられた複数の通風孔から冷風を吹出したり、シート内部に埋設されたヒータで加熱したりすることにより、シートに着座したユーザに対し直接的に冷暖房効果を提供するものである。AV機器35は、CD、DVD、音楽プレーヤ、TV、ラジオなどである。
【0026】
車両用制御装置100は、上述した車載装備25~35を制御するための論理ブロック10~24の一つとして、統合制御部10を有する。統合制御部10は、例えば、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、ステアリングセンサなど、運転者による運転操作に関する情報を検出する各種の操作センサからの信号を入力する。操作センサには、ナビゲーション32やエアコン33などを操作するための操作スイッチも含まれ、統合制御部10は、それらの操作スイッチからの信号も入力する。
【0027】
さらに、統合制御部10は、例えば、ユーザの音声を入力するマイクを備えている。その他にも、統合制御部10は、車両が置かれた外部環境に関する情報を取得する環境センサ(例えば、先行車両や障害物などを検出するレーダ装置や、車両の周囲の画像を取得するカメラなど)からの信号を入力するとともに、地図データベースから車両が属するエリアの地図を入力する。
【0028】
統合制御部10は、マイクから入力されたユーザの音声に基づき、ユーザが車両を用いて実現したいことを推定する。例えば、統合制御部10は、スピーカから幾つかの質問をユーザに投げかけ、質問に対するユーザの返答をマイクで検出するといった、ユーザとの対話を通じて、ユーザから種々の情報を得ることができる。そして、統合制御部10は、得られた情報に基づいて、ユーザが車両を用いて実現したいことを推定することができる。あるいは、統合制御部10は、単にユーザが発話する音声をマイクにて検出し、マイクに入力された音声に含まれるキーワードから、ユーザが車両を用いて実現したいことを推定するようにしても良い。
【0029】
ユーザが車を用いて実現したいこととしては、例えば図2に示すように、「運転を楽しみたい」、「予定通りに目的地に到着したい」、「安全に走行したい」、「できるだけ早く到着したい」、「リラックスしたい」、「同乗者との会話を楽しみたい」、「景色を楽しみたい」などが考えられる。なお、ユーザが車を用いて実現したいことは、図2に示す例に限定されるものではない。
【0030】
ユーザが車を用いて実現したいことの候補は、予め、統合制御部10の記憶部に記憶されている。統合制御部10は、その候補の中から、対話を通じてユーザから得られた情報や、ユーザの音声に含まれるキーワードなどに基づき、最も確からしいユーザの実現したいことを推定することができる。あるいは、統合制御部10が、ディスプレイ上にユーザの実現したいことの候補をメニューとして提示し、提示されたメニューから、いずれかの候補がユーザに選択された場合に、その選択された候補をユーザが車両を用いて実現したいことと推定しても良い。
【0031】
統合制御部10は、ユーザの実現したいことを、車側にて提供可能な提供価値に置き換えるために、上述したユーザの実現したいことの各候補に対応付けて、置換すべき提供価値も記憶している。車側にて提供可能な提供価値には、移動価値と空間価値との少なくとも一方が含まれる。
【0032】
例えば、図2に示す例では、「運転を楽しみたい」とのユーザのニーズに対して、移動価値として、「意のままの走り」及び「走って楽しいルート案内」が対応付けて記憶され、空間価値として、「エグゾーストノートの聴取」が対応付けて記憶される。また、「予定通りに目的地に到着したい」とのユーザのニーズに対しては、「計画通りの運行」及び「柔軟なルート修正」との移動価値が対応付けて記憶され、「快適な室内環境」との空間価値が対応付けて記憶される。「安全に走行したい」とのユーザのニーズに対しては、「安全性優先」との移動価値が対応付けて記憶され、「快適な室内環境」との空間価値が対応付けて記憶される。「できるだけ早く到着したい」とのユーザのニーズに対しては、「俊敏な走り」及び「時間優先ルート案内」との移動価値が対応付けて記憶され、「快適な室内環境」との空間価値が対応付けて記憶される。「リラックスしたい」とのユーザのニーズに対しては、「乗り心地優先」との移動価値が対応付けて記憶され、「体感温度を快適に保つ」及び「新鮮な外気を取り入れ」との空間価値が対応付けて記憶される。「同乗者との会話を楽しみたい」とのユーザのニーズに対しては、「自動運転」との移動価値が対応付けて記憶され、「快適かつ静かな室内環境」との空間価値が対応付けて記憶される。「景色を楽しみたい」とのユーザのニーズに対しては、「景色の良いルート案内」との移動価値が対応付けて記憶され、「快適な室内環境」との空間価値が対応付けて記憶される。
【0033】
このように、車側にて提供可能な提供価値は抽象的であるため、ユーザのニーズが抽象的であっても、その抽象的なユーザのニーズを、車側で実現できる範囲の抽象的な提供価値に置き換えることができる。なお、図2に示す、車側にて提供可能な提供価値の具体例は単なる例示であって、ユーザのニーズに対応していれば、他の提供価値が対応づけられていても良い。
【0034】
さらに、車側で提供可能な提供価値は、移動価値と空間価値別に、それら移動価値又は空間価値を実現するための各車載装備の制御目的に変換される。すなわち、統合制御部10の記憶部には、図3に示すように、個々の移動価値を実現するための各車載装備の制御目的が、個々の移動価値に関連づけて記憶されている。
【0035】
なお、本実施形態では、個別の車載装備に加え、複数の車載装備によって実現される機能も1つの車載装備と位置付けている。具体的には、駆動用モータ26及びエンジン27によって実現される駆動力や、運転支援機能、自動運転機能も、それぞれ1つの車載装備と位置付けている。運転支援機能は、例えば、駆動用モータ26、エンジン27、ブレーキ30、及びEPS31と、それらの制御部によって実現される。例えば、運転支援機能は、環境センサによって検出される前方車両との距離及び相対速度に基づき、前方車両と衝突する危険が生じたと判断した場合に、エンジン27の出力を低下させるとともに、駆動用モータ26による回生ブレーキやブレーキ30を作動させて前方車両との衝突の回避を支援する。また、運転支援機能は、環境センサとしてのカメラによって車両と白線との相対的な位置関係を把握し、車両が走行している車線をはみ出さないようにEPS31を作動させる。さらに、運転支援機能は、いわゆるABS、TRC、VDCなどの機能を含んでも良いし、その他の運転支援に繋がる機能を含んでも良い。
【0036】
自動運転機能は、例えば、少なくとも車両の走行に係る車載装備である、発電用モータ25、駆動用モータ26、エンジン27、サスペンション29、ブレーキ30及びEPS31に加えて、ナビゲーション32と、それらの制御部によって実現される。例えば、自動運転機能は、環境センサによって検出される周囲の交通環境や地図データベースから取得される地図データに基づいて、設定された目的地に到達する予定ルートを、他車両やガードレール等の障害物との接触を避けつつ、適切な速度にて車両を自動で走行させる。
【0037】
次に、それぞれの移動価値に関連付けて記憶される各車載装備の制御目的の例について、図3を参照して説明する。図3に示す例では、「意のままの走り」及び「走って楽しいルート案内」との移動価値に対して、ナビゲーション32の制御目的として「高速及びワインディングを含むルート提案・案内」が関連付けて記憶されている。従って、ユーザは、ナビゲーション32が上記制御目的の下で動作することにより、走りを楽しむのに適したルート案内の提供を受けることができる。また、駆動力の制御目的として「アクセル操作に対する高応答性」が記憶されている。この制御目的の下で、駆動用モータ26及びエンジン27が制御されると、例えば、低速時には、駆動用モータ26が、アクセル操作に対応する動力を良好な応答性で発生するとともに、エンジン27の始動回転数が通常よりも低下される。これにより、ユーザは、低速領域から高速領域に渡って、アクセル操作に素早く応答する駆動力が得られて、思い通りに車両の走行速度を変化させることができるとともに、強力な加速感を得ることができる。さらに、サスペンション29の制御目的として「減衰力硬め」が記憶されている。従って、サスペンション29が上記制御目的の下で制御されることにより、サスペンション29の減衰力が相対的に硬めに制御される。その結果、ユーザが車両の速度変化を繰り返しても、車両の姿勢を安定化させることができる。さらに、運転支援機能の制御目的として「介入タイミング遅め」が記憶され、自動運転機能の制御目的として「停止」が記憶されている。従って、運転支援機能が上記制御目的の下で制御されることにより、ユーザが意図しない操作が行われにくくなる。これにより、ユーザは、自らの運転操作通りに車両を走行させることができる。
【0038】
以上のような、個々の車載装備の動作や制御により、ユーザは、車両の運転を十分に楽しむことが可能となる。なお、図3には示していないが、さらに、EPS31の制御目的として、操舵補助力減少や、操舵角に対するタイヤの切れ角増加を定めても良い。
【0039】
また、図3に示す例では、「計画通りの運行」及び「柔軟なルート修正」との移動価値に対し、ナビゲーション32の制御目的として「目的地への運行スケジュール提示」及び「渋滞発生に応じルート修正」が関連付けて記憶されている。従って、ナビゲーション32が、上記制御目的の下で動作することにより、目的地への到達予定時間に加え、ルート上の主要な通過地点の通過予定時間を含む運行スケジュールをユーザに提示することができる。このため、ユーザは、車両が予定通りに目的地に向かって進行していることを確認することができ、ユーザに安心感を与えることができる。さらに、ルート上に相対的に短めの渋滞が発生した場合であっても、ナビゲーション32は、柔軟にルート修正を行うため、極力、予定した運行スケジュールから遅延することを抑制することができる。また、自動運転機能の制御目的として「作動OR停止(ユーザ選択)」が記憶されている。従って、ユーザは、手動運転と自動運転とのいずれも選択することができる。
【0040】
また、図3に示す例では、「安全性優先」との移動価値に対し、ナビゲーション32の制御目的として「幹線道路を通るルート提案・案内」が関連付けて記憶されている。このため、狭小道路や住宅密集地の道路を含むルートが案内されることがなく、車両は、事故の発生の可能性の低いルートを走行することができる。そして、駆動力の制御目的として「アクセル操作に対する低応答性」が関連付けて記憶されている。従って、ユーザのアクセル操作に対して、駆動用モータ26が過敏に反応して発生する動力を大きく変化したり、エンジン27の回転数が大きく上昇したりすることを抑制することができ、車両走行時の安全性の向上を図ることができる。さらに、運転支援機能の制御目的として「介入タイミング早め」が記憶され、自動運転機能の制御目的として「作動OR停止(ユーザ選択)」が記憶されている。従って、ユーザが手動運転する場合、早いタイミングで運転支援機能による警告やアシストを受けることができる。もしくは、ユーザは、自動運転を選択することも可能である。
【0041】
また、図3に示す例では、「俊敏な走り」及び「時間優先ルート案内」との移動価値に対し、ナビゲーション32の制御目的として「時間優先ルート提案・案内」が関連付けて記憶されている。このため、ユーザは、最も短い時間で目的地に到達可能なルートの提案及びその案内を受けられる。そして、駆動力の制御目的として「アクセル操作に対する高応答性」が記憶され、サスペンション29の制御目的として「減衰力硬め」が記憶されている。従って、ユーザは、車両の速度を機敏に増速させることができ、そのような場合でも、車両の姿勢の安定化を図ることができる。
【0042】
また、図3に示す例では、「乗り心地優先」との移動価値に対し、ナビゲーション32の制御目的として「カーブの少ないルート提案・案内」が関連付けて記憶されている。従って、案内されたルートに従って走行することにより、車両の横揺れを抑制することができる。そして、駆動力の制御目的として「アクセル操作に対する低応答性」が記憶され、サスペンション29の制御目的として「減衰力柔らかめ」が記憶されている。従って、車両の速度変化が抑制されるとともに、路面の凹凸による振動が車体に伝わりにくくすることができる。
【0043】
また、図3に示す例では、「自動運転」との移動価値に対し、自動運転機能の制御目的として「作動」が関連付けて記憶されている。このため、ユーザは、車の運転を自動運転機能に任せ、同乗者との会話を心置きなく楽しむことができる。
【0044】
さらに、図3に示す例では、「景色の良いルート案内」との移動価値に対し、ナビゲーション32の制御目的として「景色の良いルート提案・案内」が関連付けて記憶されている。このため、ユーザは、景色の良いルートの提案及びその案内を受けることができる。さらに、自動運転システムの制御目的として「作動OR停止(ユーザ選択)」が記憶されている。従って、ユーザは、自動運転を選択することも可能である。
【0045】
次に、それぞれの空間価値に関連付けて記憶される各車載装備の制御目標の例について、図4を参照して説明する。図4に示す例では、「エグゾーストノート聴取」との空間価値に対し、エアコン33の制御目的として「風量抑制」が関連付けて記憶され、シート空調34の制御目的として「通風抑制」が関連付けて記憶され、AV機器35の制御目的として「停止」が関連付けて記憶されている。従って、ユーザは、エンジン回転数の変化に伴う排気音(エグゾーストノート)の変化を聴き取りやすくなる。
【0046】
また、図4に示す例では、「快適な室内環境」との空間価値に対し、エアコン33の制御目的として「通常」が関連付けて記憶され、シート空調34の制御目的として「通常」が関連付けて記憶されている。従って、例えば、車室内の温度が設定した目標温度となるように、エアコン33などが制御され、車室内は快適な環境に保たれる。さらに、AV機器35の制御目的として「作動OR停止(ユーザ選択)」が記憶されている。従って、ユーザは、好みに応じてAV機器を作動させたり、停止させたりすることができる。
【0047】
また、図4に示す例では、「体感温度を快適に保つ」及び「新鮮な外気を取り入れ」との空間価値に対し、エアコン33の制御目的として「ユーザ表面温度に基づく空調制御」及び「外気導入優先」が関連付けて記憶されている。従って、ユーザは、日光の照射などの外部環境要因によらず、リラックス可能な室内環境の提供を受けることができる。さらに、清浄な外気を取り入れられる環境である場合には、室内に外気が導入されるので、ユーザは新鮮な空気の提供を受けることができる。
【0048】
さらに、図4に示す例では、「快適かつ静かな室内環境」との空間価値に対し、エアコン33の制御目的として「各ユーザの表面温度に基づく個別空調制御」及び「風量抑制」が関連付けて記憶され、シート空調34の制御目的として「通風抑制」が関連付けて記憶されている。従って、車両に複数人が乗車しても、各ユーザは、外部環境要因によらず、それぞれ快適な室内環境の提供を受けることができる。また、エアコン33の風量が抑制され、かつシート空調34の通風も抑制されるので、相対的に静かな室内環境が得られる。さらに、AV機器35の制御目的として「停止OR音量低下」が関連付けて記憶されているので、より静かな室内環境の実現に寄与することができる。
【0049】
なお、図3および図4に示した移動価値および空間価値に関連付けられる各車載装備の制御目的は、単なる一例に過ぎず、それぞれの価値の実現に貢献するものであれば、他の制御目的を関連づけても良い。
【0050】
統合制御部10は、上述したような手法で、ユーザが車両を用いて実現したいことを推定し、その推定したユーザの実現したいことを、車側にて提供可能な提供価値を通じて、各車載装備の制御目的に置き換える。そして、統合制御部10は、各車載装備の制御目的を考慮した上で、パワートレイン制御部11、シャシ制御部12、あるいは車室内制御部13へ出力する制御目標を算出する。
【0051】
例えば、統合制御部10は、操作センサからの入力信号によって把握される運転者による運転操作に基づき、目標とする車両挙動を算出する。この目標車両挙動には、前後方向の目標加速度(減速度)と左右方向の目標加速度とが含まれる。目標車両挙動の算出に際して、アクセル操作に対する応答性を高めたり、低めたりする制御目的を設定した場合には、アクセルペダルの開度を検出するセンサの検出信号のサンプリング間隔を変化させたり、アクセルペダルの開度の変化加速度から、アクセルペダル開度を予測し、その予測アクセルペダル開度を利用したりすることにより、実際のアクセルペダル開度に対する検出値の応答性を変化させることができる。このような検出値に基づいて目標車両挙動を算出することにより、駆動力に関する制御目的を考慮した上で、制御目標を算出することができる。
【0052】
このようにして目標車両挙動を算出すると、統合制御部10は、算出した目標車両挙動に含まれる前後方向の目標加速度(減速度)をパワートレイン制御部11およびシャシ制御部12に出力し、左右方向の目標加速度をシャシ制御部12に出力する。
【0053】
また、運転支援機能に関して、統合制御部10は、環境センサによる検出結果に基づき、運転支援機能の実行の要否を判断する。この際、運転支援機能について、介入タイミングが遅めもしくは早めとの制御目的が設定されていると、統合制御部10は、その介入タイミングに応じて、運転支援機能の実行の要否の判断基準を変更する。統合制御部10が、運転支援機能の実行が必要と判断した場合、パワートレイン制御部11およびシャシ制御部12に対して、必要な運転支援機能が発揮されるように指示する。
【0054】
さらに、自動運転機能についても、統合制御部10において、その作動もしくは停止のいずれの制御目的が設定されているかを判断する。自動運転機能の作動との制御目的が設定されている場合には、統合制御部10は、環境センサからの外部環境に関する情報と、地図データベースからの地図情報とに基づいて、目標とする走行ラインを定めるとともに、その走行ラインを走行する際の目標速度などの自動運転のための制御目標を定める。そして、自動運転のための制御目標に基づいて、前後方向の目標加速度(減速度)を算出するとともに、左右方向の目標加速度及び目標操舵角を算出する。このようにして定めた前後方向の目標加速度、左右方向の目標加速度、及び目標操舵角が、パワートレイン制御部11及びシャシ制御部12に出力される。
【0055】
また、統合制御部10は、操作スイッチからの信号及び設定された制御目的に基づいて、エアコン33の制御モードや目標車室内温度、シート空調34の目標温度、AV機器35の動作に関する目標状態などの制御目標を定め、車室内制御部13へ出力する。統合制御部10は、上述した運転支援機能や自動運転機能を作動させる場合、その制御状況をディスプレイに表示するための表示データを車室内制御部13へ出力しても良い。
【0056】
なお、少なくとも一部の車載装備に関して、統合制御部10が制御目的を考慮した上で、制御目標を算出するのではなく、統合制御部10が、制御目的とともに必要な操作信号情報などを出力することにより、パワートレイン制御部11、シャシ制御部12、あるいは車室内制御部13にて、該当する車載装備の制御目標を算出するようにしても良い。例えば、ナビゲーション32に対してルート提案・案内の制御目的が設定された場合、車室内制御部13が、その制御目的に適うルートの探索を制御目標としてナビゲーション制御部21に指示することができる。同様に、エアコン33、シート空調34、AV機器35の制御目的が設定された場合にも、車室内制御部13が、その制御目的に適う制御目標を定めて、それぞれの制御部22~24に指示することができる。
【0057】
さらに、上記以外の車載装備に対しても、統合制御部10が、設定された制御目的とともに制御目標を設定するための情報(センサ信号や、各種機能の作動又は停止の情報)をパワートレイン制御部11やシャシ制御部12に与えることにより、パワートレイン制御部11やシャシ制御部12において、制御目的を考慮しつつ目標加速度などの制御目標の算出を行うことも可能である。
【0058】
また、パワートレイン制御部11、シャシ制御部12、及び車室内制御部13が、制御目的とともに必要な操作信号情報などを出力することにより、各車載装備の制御部にて、制御目的に適う制御を実行するようにしても良い。
【0059】
パワートレイン制御部11は、統合制御部10から前後方向の目標加速度として、正の加速度が与えられると、その目標加速度を実現するための目標駆動トルクを定める。そして、パワートレイン制御部11は、目標駆動トルクを最も効率良く実現するために、駆動用モータ26が発生可能な最大モータトルクや、センサ信号に基づく車両の走行状態を考慮しつつ、エンジン27が発生すべき目標エンジントルク、駆動用モータ26が発生すべき目標モータトルク、発電用モータによる目標発電量等の目標値を算出する。算出された目標エンジントルク、目標モータトルク、及び目標発電量は、それぞれ、制御目標値として、エンジン制御部16,駆動用モータ制御部15、及び発電用モータ制御部14に与えられる。また、上述したように、電力の発電量を増やす必要がある場合には、パワートレイン制御部11は、その分だけ上乗せした目標エンジントルクを定める。
【0060】
一方、パワートレイン制御部11は、前後方向の目標加速度として負の加速度(すなわち、減速度)が与えられた場合、その負の加速度と統合制御部10にて立案された電気エネルギーの発生計画とに基づき、駆動用モータ26による目標回生電力量を設定する。例えば、目標回生電力量は、電気エネルギーの発生計画にて電気エネルギーを発生すべき区間となっており、当該区間における発生量がまだ目標量に達していないときに、対応する回生制動トルクによる減速度が、目標とする負の加速度以下の範囲で設定される。さらに、パワートレイン制御部11は、エンジン制御部16に対して燃料カットを指示したり、発電用モータ制御部14に対して発電量を指示したりしても良い。電気エネルギーの発生計画については、後に詳細に説明する。
【0061】
発電用モータ制御部14は、パワートレイン制御部11から目標発電量が指示されると、目標発電量に相当する電力を発電するように、発電用モータ25を制御する。駆動用モータ制御部15は、パワートレイン制御部11から目標モータトルクが与えられた場合、目標モータトルクに相当するモータトルクを発生するように駆動用モータ26を制御する。一方、駆動用モータ制御部15は、パワートレイン制御部11から目標回生電力量が与えられたとき、目標回生電力量に相当する電力を発電するように、駆動用モータ26を制御する。エンジン制御部16は、目標エンジントルクが与えられると、エンジン回転数などの情報に基づき、エンジン27が目標エンジントルクを発生するように、スロットルバルブ開度、燃料供給量、点火時期などを調節してエンジン27の運転状態を制御する。
【0062】
バッテリ制御部17は、車載バッテリ28の電圧や電流に基づいて充電レベル(SOC)を算出したり、高圧バッテリを構成する各電池セルの電圧を均等化する均等化処理を実施したり、車載バッテリ28を過充電や過放電から保護したりする。さらに、バッテリ制御部17は、車載バッテリ28の低圧バッテリの充電状態や低電圧にて動作する各種の車載装備による電力の使用予定に応じて、DC‐DCコンバータを作動させ、高圧バッテリに蓄積された電力を用いて低圧バッテリを充電する。
【0063】
シャシ制御部12は、サスペンション制御部18に対して、目標とする減衰力の硬さを指示する。この際、シャシ制御部12は、統合制御部10から与えられたサスペンション29の制御目的に従い、サスペンション制御部18に対して、減衰力の調整範囲を指示しても良い。
【0064】
また、シャシ制御部12は、前後方向の目標加速度として負の加速度が与えられると、その負の加速度を実現するための目標ブレーキトルクを算出して、ブレーキ制御部19に出力する。この目標ブレーキトルクは、駆動用モータ26などにより回生制動が行われる場合、回生制動トルクとブレーキトルクとによって実現される減速度が、目標とする負の加速度に一致するように算出される。さらに、シャシ制御部12は、左右方向の目標加速度が与えられると、その左右方向の目標加速度に応じた目標アシストトルクを算出して、EPS制御部20に与える。また、シャシ制御部12は、自動運転を実行する場合には、左右方向の目標加速度に応じた目標操舵角にステアリングの操舵角を一致させるための目標トルクを算出して、EPS制御部20に与える。
【0065】
サスペンション制御部18は、目標とする減衰力の硬さが指示された場合、サスペンション29の減衰力の硬さを、指示された硬さに制御する。また、サスペンション制御部18は、減衰力の調整範囲を指示された場合、車両に作用する前後方向加速度や左右方向加速度、さらには、上下方向加速度に応じて、指示された調整範囲で、サスペンション29の減衰力を制御する。
【0066】
ブレーキ制御部19は、目標ブレーキトルクが与えられたとき、4輪の各車輪速や4輪の各ブレーキの液圧などの情報に基づき、ブレーキ30が目標ブレーキトルクを発生するように、ブレーキフルード圧を制御する。EPS制御部20は、電動モータの駆動電流などの情報に基づき、EPS31が発生するトルクが目標アシストトルク又は目標トルクとなるようにEPS31を制御する。
【0067】
車室内制御部13は、統合制御部10などから与えたれた目的地をナビゲーション制御部21に出力する。この際、探索するルートを特徴づける制御目的などが設定されている場合、その制御目的に対応する指示も併せてナビゲーション制御部21に出力する。また、車室内制御部13は、統合制御部10から与えられた制御モードや目標車室内温度などの制御目標と、各種のセンサによって検出される実際の車室内の環境(例えば、乗員検出信号、車室内外の温度検出信号、日射量の検出信号、各ユーザの表面温度を検出する赤外線センサの検出信号などによって検出される環境)とをエアコン制御部22及びシート空調制御部23に出力する。この際、風量抑制等の制御目的が設定されている場合には、その制御目的に対応する指示も、該当する制御部22、23に出力する。さらに、車室内制御部13は、統合制御部10から与えられた、ユーザによるAV機器35の操作信号をAV機器制御部24へ出力する。この際、停止や音量低下などの制御目的が設定されている場合には、その制御目的に対応する指示が、AV機器制御部24へ出力される。
【0068】
ナビゲーション制御部21は、与えられた目的地及び制御目的に対応する指示に従い、適切なルートを探索して、ディスプレイに表示する。ユーザによって案内開始が指示されると、その探索したルートを予定ルートとして決定し、予定ルートに基づく経路案内を開始する。また、ナビゲーション制御部21は、外部から渋滞情報を取得すると、制御目的に対応する指示などに基づき予定ルートの再設定の要否を判定し、必要と判断したときには予定ルートの再設定を行う。
【0069】
エアコン制御部22は、制御モードや目標車室内温度などの制御目標と、各種のセンサによって検出される実際の車室内の環境とに基づき、車室内環境を制御目標に一致させるべく、エアコン33のファンの回転数や、エアミックスドアの開度を制御することにより、目標状態に近づくように、車室内の温度や湿度を調節する。制御目的に対応する指示が与えられている場合には、その指示に従って、風量の抑制を行ったり、ユーザの表面温度に基づく空調制御を実行したりする。同様に、シート空調制御部23も、目標車室内温度などの制御目標と、車室内環境とに基づき、車室内環境を制御目標に一致させるべく、通風量やヒータによる加熱量を制御する。制御目的に対応する指示が与えられている場合には、シート空調制御部23は、その指示に従い、通風量を抑制したりする。
【0070】
AV機器制御部24は、入力された操作信号に応じて、ソースの切り替え、チャンネルの切り替え、音量調節、音質調節などを実行する。停止や音量の低下などの制御目的が設定されている場合には、AV機器制御部24は、その制御目的に対応する指示に従い、AV機器35の作動を停止したり、音量を低下させたりする。
【0071】
次に、統合制御部10において実行される、ユーザの実現したいことを、車側にて提供可能な提供価値を通じて、各車載装備の制御目的に変換して、その制御目的に従う制御指示を各制御部に与える具体的な処理の流れについて、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0072】
まず、最初のステップS100において、統合制御部10は、ユーザとの対話などの手法によって、ユーザから得た情報に基づき、ユーザが車両を用いて実現したいことを推定する。上述したように、ユーザの実現したいことの候補は、予め統合制御部10の記憶部に記憶されている。統合制御部10は、ユーザから得た情報に基づき、記憶された候補の中から最も確からしい候補を推定する。
【0073】
ステップS110では、推定されたユーザの実現したいことを、車両側で提供可能な移動価値及び空間価値に置き換える。上述したように、統合制御部10の記憶部に、ユーザが実現したいことの各候補に対応付けて、置換すべき移動価値及び空間価値が記憶されている。ステップS110では、推定されたユーザの実現したいことに対応付けられた移動価値及び空間価値を記憶部から読み出すことにより、移動価値及び空間価値への置き換えを行う。
【0074】
ステップS120では、置き換えられた移動価値及び空間価値に基づき、それら移動価値及び空間価値を提供するための、各車載装備の制御目的を決定する。この各車載装備の制御目的も、上述したように、統合制御部10の記憶部に、各移動価値及び各空間価値に関連付けられて記憶されている。従って、置き換えられた移動価値及び空間価値に関連付けて記憶部に記憶されている各車載装備の制御目的を抽出することで、各車載装備の制御目的を決定することができる。
【0075】
続くステップS130では、ステップS110にて置き換えられた、車両側にて提供する予定の移動価値及び空間価値をユーザに報知する。このとき、移動価値及び空間価値の報知に加えて、もしくは代えて、各車載装備の制御目的をユーザに報知しても良い。その報知に対して、ユーザが音声やスイッチ操作などにて同意の意思表示をすることにより、ステップS140においてユーザの同意が得られたと判定すると、ステップS150の処理に進む。ステップS150では、決定された制御目的に従って、各車載装備が制御されるように、統合制御部10は、制御目標を算出して該当する制御部へ指示する。このように、本実施形態では、ユーザの実現したいことの推定結果に基づき決定される、各車載装備の制御目的に従った制御を実行する前に、ユーザに確認を行っているので、ユーザのニーズに合致しない各車載装備の制御が行われることを予防することができる。
【0076】
一方、ステップS140においてユーザの同意が得られなかったと判定すると、ステップS100からの処理をやり直す。この場合には、ステップS100において、ユーザが実現したいこととして、以前の候補とは異なる候補が推定されるようにする。また、所定回数繰り返してもユーザの同意が得られなかった場合には、ユーザが実現したいことの推定を中止し、すべての車載装備を通常通りに制御するようにしても良い。
【0077】
ステップS160では、例えばステップS100と同様の手法によってユーザから種々の情報を取得し、その取得した情報に基づいて、ユーザの実現したいことが変化したか否かを判定する。ユーザの実現したいことが変化していないと判定した場合には、ステップS150の処理に戻る。一方、ユーザの実現したいことが変化したと判定した場合には、ステップS100からの処理を再度実行する。
【0078】
以下に、車両用制御装置100が、エネルギー管理装置として、車両が決定された予定ルートを走行する際に、各種の車載装備によって消費される電気エネルギー量と、車両の発電部によって発生される電気エネルギー量とによる電気エネルギーの需給を適切に管理するための処理について説明する。
【0079】
従来の特許文献1の目的地到達推定装置は、目的地までの走行予定経路を走行するために消費される走行消費電力量の予測値と、車両バッテリの充電レベル情報から算出される供給可能電力量の予測値とを対比するのみで、走行消費電力量の予測値及び供給可能電力量の予測値の経時的な変動を考慮していない。このため、例えば、走行予定経路に長い上り坂と下り坂とが含まれ、先に上り坂を走行し、その後、下り坂を走行するような場合、下り坂の走行によって電力が回生される前に、上り坂の走行によって車両バッテリの充電レベルが大きく低下してしまう可能性がある。逆に、先に長い下り坂を走行する場合には、車両バッテリの充電レベルが過剰に高められてしまう可能性がある。
【0080】
このように車両バッテリの充電レベルが大きく変動すると、車両バッテリの寿命に影響を及ぼすだけでなく、車両全体として見たとき、エネルギー不足や、過剰なエネルギーの発生が生じていることになり、適切なエネルギーの需給管理ができていないことになる。
【0081】
それに対して、本実施形態の車両用制御装置100は、車両において、出発地から目的地までの予定ルートが設定されると、発電部(発電用モータ25、駆動用モータ26)による電気エネルギーの発電計画を立案する。その発電計画は、上述のように設定された制御目的にて各種の車載装備が制御されたときに、それら各種の車載装備によって消費される電気エネルギー量の経時的な変化を予測し、その予測結果に基づき、車載バッテリ28の充電レベル(SOC)が所定の上下限値によって定義される許容範囲を超えないように、立案される。このため、車両全体として、エネルギー不足に陥ったり、逆に過剰なエネルギーが発生されたりすることを抑制しつつ、必要となる電気エネルギーを発生可能な電気エネルギーの発生計画を立案することができる。以下に、図6のフローチャートを用いて、車両における電気エネルギー需給を管理するための具体的な処理内容を説明する。
【0082】
まず、ステップS200では、ナビゲーション32において、出発地から目的地へ達する予定ルートが設定されると、設定された予定ルートに関する情報を取得する。予定ルートに関する情報は、予定ルートそのものを示す情報に加え、予定ルートに含まれる各道路の走行速度、距離、交差点位置、横断歩道位置、一時停止位置、カーブ位置、トンネル位置、予定ルート上の各地点の高度、道路勾配、道路種別などを含む。さらに、予定ルートに関する情報として、渋滞が発生している区間又は発生し易い区間に関する情報や、予定ルート上の気温及び天候に関する情報を含むことが好ましい。渋滞が発生している区間に関する情報は、外部サーバとの通信により取得することができる。また、予定ルート上の気温及び天候に関する情報は、例えば、予定ルートを外部サーバに送信し、外部サーバにおいて、予定ルートを複数の区間に分割し、その分割した区間毎に気温及び天候情報を関連づけて、車両用制御装置100に返送することにより取得することができる。
【0083】
ステップS210では、各車載装備の制御目的を考慮して、車両が設定された予定ルートの走行を完了するまでに各車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積もる。以下に、全消費電気エネルギー量の見積り方法の一例を説明する。
【0084】
まず、予定ルート全体における交差点位置、横断歩道位置、一時停止位置などで車両が一旦停止した後に発進するものとして、車両の停止発進回数を算出する。この車両の停止発進回数は、所定の割引率で割り引いた回数としても良い。信号機が青の場合、車両は交差点で停止することなく通過するので、交差点を停止せずに通過できる平均的な確率を割引率とすることで、より実態に近い停止発進回数を算出することができる。さらに、予定ルートに渋滞が発生し易い区間が含まれていれば、その渋滞し易い区間の距離に応じた停止発進回数を加算しても良い。また、カーブ位置を含め、予定ルートが曲折している地点で車両が曲進するものとして、曲進回数を算出する。さらに、予定ルートにおいて、道路勾配が上り坂を示している箇所において車両が高負荷走行を行うものとして、高負荷走行回数及び距離を算出する。
【0085】
そして、算出した停止発進回数に基づき、停止時にブレーキ30などの車載装備によって消費される電力を算出するとともに、発進時に、駆動用モータ26,エンジン27などの車載装備によって消費される電力を算出する。この際、車載装備の制御目的が考慮され、例えば、駆動力に関してアクセル操作に対する応答性を高めるとの制御目的が設定されている場合には、発進時に消費される電力を多めに算出することができる。逆に、アクセル操作に対する応答性を低下させるとの制御目的が設定されている場合には、発進時に消費される電力を少なめに算出することができる。1回の停止のために各車載装備によって消費される電力、及び1回の発進のために各車載装備によって消費される電力は、実験的に測定した値を記憶しておくことも可能であるし、車両の実際の走行時に学習しても良い。
【0086】
また、算出した曲進回数に基づき、曲進時にEPS31やウインカー等の車載装備によって消費される電力を算出する。この場合、各曲折地点の曲率度合を考慮して、消費電力を算出しても良い。曲率度合に応じてEPS31などによって消費される電力が変動するためである。さらに、この曲進時の消費電力の算出に、車載装備の制御目的が考慮されても良い。例えば、移動価値が「意のままの走り」である場合に、EPS31の制御目的が「操舵補助力減少」に設定されているとき、EPS31により消費される電力を少なめに算出することができる。逆に、例えば、移動価値が「乗り心地優先」である場合に、EPS31の制御目的が「操舵補助力増加」に設定されているとき、EPS31により消費される電力を多めに算出することができる。
【0087】
さらに、高負荷走行回数及び距離に基づいて、駆動用モータ26,エンジン27などの車載装備によって消費される電力を算出する。この場合、高負荷走行を行う各道路の勾配を考慮することで、より精度の高い予測消費電力を算出することができる。また、発進時の場合と同様にして、車載装備の制御目的も考慮することが望ましい。
【0088】
その他にも、車両用制御装置100は、予定ルート上の温度や天候に関する情報に基づき、エアコン33、シート空調34、ワイパーなどの車載装備の動作の要否を判断し、動作させる車載装備による消費電力を算出する。例えば、外気温が低い場合には、エアコン33及びシート空調34による暖房が必要と判断することができる。逆に、外気温が高い場合には、エアコン33及びシート空調34による冷房が必要と判断することができる。また、天候が雨である場合には、ワイパーの動作が必要と判断したり、エアコン33による除湿が必要と判断したりすることができる。さらに、この場合にも、車載装備の制御目的が考慮されることが好ましい。例えば、エアコン33の制御目的が風量抑制、シート空調34の制御目的が通風抑制に設定されている場合には、エアコン33やシート空調34による消費電力は少なめに算出することができる。
【0089】
また、車両用制御装置100は、予定ルート上にトンネルがあったり、予定ルートの走行を完了する前に日暮れを迎えたりして、灯火が必要となるかどうかも判断する。そして、灯火が必要と判断した場合には、その灯火時間に応じて、灯火のために消費される電力を算出する。
【0090】
上述したようにして算出された各車載装備の消費電力を積算することにより、各車載装備の制御目的を考慮しつつ、車両が設定された予定ルートの走行を完了するまでに各車載装備によって消費される全消費電気エネルギー量を見積もることができる。
【0091】
続くステップS220では、ステップS210にて見積もった全消費電気エネルギー量に見合う電気エネルギー量を、全発生電気エネルギー量として算出する。全消費電気エネルギー量に見合う電気エネルギー量としては、全消費電気エネルギー量に一致する電気エネルギー量であっても良いし、全消費電気エネルギー量と異なる電気エネルギー量であっても良い。但し、全消費電気エネルギー量とは異なる電気エネルギー量を全発生電気エネルギー量として算出する場合、その差分を車載バッテリ28にて吸収できることが必要である。例えば、全消費電気エネルギー量よりも少ない全発生電気エネルギー量を算出する場合、その差分に相当する電力を、車載バッテリ28(主に高圧バッテリ)が提供できることが必要となる。逆に、全消費電気エネルギー量よりも多い全発生電気エネルギー量を算出する場合、その差分に相当する電力を、車載バッテリ28が保存できることが必要となる。
【0092】
全消費電気エネルギー量と全発生電気エネルギー量との差分に相当する電力を車載バッテリ28が吸収できるか否かは、その差分による車載バッテリ28の充電レベルの変化が、例えば、図8に示すように、所定の上下限値Ulim、Llimによって定義される許容範囲に収まるか否かにより判定することができる。なお、上下限値Ulim、Llimは、車載バッテリ28の性能や寿命を考慮して適切な値に設定される。
【0093】
次に、ステップS230では、予定ルートをいくつかの区間に細分化する。この細分化は、例えば、図7に示すように、車両の走行シーン(走行環境)が大きく変化するポイントで行うことが好ましい。ただし、走行距離や走行時間によって予定ルートを幾つかの区間に細分化しても良い。そして、車両用制御装置100は、細分化された各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を算出する。この区間消費電気エネルギーは、各区間に含まれる道路での停止発進回数、曲進回数、高負荷走行回数及び距離、気温及び天候情報、灯火の要否などに基づき想定される、各車載装備の動作態様や動作時間から算出することができる。このように、予定ルートを幾つかの区間に細分化して、各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を算出することで、電気エネルギーの消費量の経時的な変化を予測することができる。
【0094】
例えば、図7に示す例では、細分化された最初の区間である市街地において、車内空調、シート空調、発進停止、曲進などが主な電力消費要因となっている。従って、その際に使用される主な車載装備は、エアコン33、シート空調34、駆動用モータ26、エンジン27、ブレーキ30、及びEPS31である。そして、図7に示す例では、車両が市街地区間にて、上述した車載装備を動作させた結果、それらの車載装備によって消費される区間消費電気エネルギー量が、車載バッテリ(高圧バッテリ)28のSOC換算で、-A1%と算出されている。車両用制御装置100は、他の区間における区間消費電気エネルギー量も、同様に算出する。なお、図7の例では、高速区間の消費電気エネルギー量が-B1%、山道上り区間の消費電気エネルギー量が‐C1%、山道下り区間の消費電気エネルギー量が‐D1%、郊外区間の消費電気エネルギー量が‐E1%と算出されている。これらすべての区間消費エネルギー量の合計は、上述した全消費電気エネルギー量に等しくなる。
【0095】
続くステップS240では、細分化された各区間で発生すべき区間発生電気エネルギー量を算出する。この区間発生電気エネルギー量の算出においては、各区間で発生する区間発生電気エネルギー量の合計が全発生電気エネルギー量となり、かつ各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、それぞれの区間において、車載バッテリ28の充電レベルが、上述した上下限値Ulim、Llimによって定義される許容範囲を超えないように算出される。
【0096】
例えば、図7に示す例では、市街地区間、高速区間、山道上り区間、山道下り区間、及び郊外区間のそれぞれの区間での区間発生エネルギー量が、+A2%、+B2%、+C2%、+D2%、+E2%と算出されている。これらすべての区間発生エネルギー量の合計は、上述した全発生電気エネルギー量に等しくなる。
【0097】
また、各区間発生エネルギー量は、上述した通り、各区間で消費される区間消費電気エネルギー量を考慮して、それぞれの区間において、車載バッテリ28の充電レベルが、上述した上下限値Ulim、Llimによって定義される許容範囲を超えないように算出される。例えば、図7に示す例では、山道上り区間で駆動用モータ26によって大電力が消費されるため、山道上り区間における区間消費電気エネルギー量が大きい。そのため、車両が山道上り区間の走行を開始する前に、車載バッテリ28の充電レベルができるだけ高いレベルを維持できるように、市街地区間及び高速区間において相対的に高い区間発生電気エネルギー量が算出される。さらに、山道上り区間においても、車載バッテリ28の充電レベルが過度に低下しないように、山道上り区間における区間消費電気エネルギー量を考慮して、山道上り区間の区間発生エネルギー量が算出される。これにより、山道上り区間において、駆動用モータ26の駆動に係わらず、車載バッテリ28の充電レベルが、下限値Llimまで低下することを防止することができる。一方、山道下り区間では、駆動用モータ26による回生制動によって大きな電力が発電されるので、車載バッテリ28の充電レベルが上限値ULimまで上昇しないように、山道下り区間の区間発生エネルギー量が算出される。
【0098】
このように、本実施形態では、予定ルートを複数の区間に細分化し、各区間における区間消費電気エネルギー量を考慮して、各区間での発生電気エネルギー量を定めている。すなわち、車両の各区間の走行に伴う、消費電気エネルギー量の経時的な変動を踏まえて、区間発生電気エネルギー量を定めている。このため、図8に示すように、車両が予定ルートを走行する際に、電気エネルギー不足や、過剰な電気エネルギーの発生を防止して、車両における電気エネルギーの需給を適切に管理することが可能な、各区間での発生電気エネルギー量を算出することができる。なお、図8には、車両が各区間を走行したときの車載バッテリ28の瞬間的な充電レベルの変動ではなく、各区間における全体的な変動の傾向を示している。
【0099】
続くステップS250では、ステップS240にて算出した各区間発生電気エネルギー量に基づいて、各区間における電気エネルギーの発生計画を立案する。電気エネルギーの発生計画は、発電用モータ25の発電計画と、駆動用モータ26の回生電力による発電計画とを含む。例えば、まず、停止発進回数に基づく車両の減速回数や下り勾配の走行回数から、駆動用モータ26による発電量を算出して、その算出した発電量の経時的な変化を駆動用モータ26の発電計画とする。駆動用モータ26による発電量では、該当区間において発生すべき区間発生電気エネルギー量が賄えない場合、その不足分の電気エネルギー量を発電するように、発電用モータ25の発電計画を立案する。例えば、発電用モータ25の発電計画は、発電が必要な電力を、駆動用モータ26による電力回生が行われる期間を避けつつ、区間全体に渡って平準化し、その平準化した電力を発生するように立案することができる。あるいは、発電用モータ25が、区間の一部の走行時に発電を行えば不足分の電気エネルギー量を発電できる場合、発電用モータ25の発電すべき時期を定めてもよい。これにより、例えば発電用モータ25による電気エネルギーの生成と、駆動用モータ26の回生制動による電気エネルギーの回生とが同時に行われて、一度に過大な電気エネルギーが生成されるような計画となることを避けることができる。なお、発電用モータ25の発電計画及び駆動用モータ26の発電計画が立案されるときには、車載バッテリ28の電池容量、単位時間当りの充電可能量、発電用モータ25の発電能力、駆動用モータ26の最大発電量などが考慮される。
【0100】
次に、車両が、予定ルートを細分化した1つの区間の走行前あるいは走行中に、該当区間における最新の状況に関する情報に基づいて、立案した電気エネルギーの発生計画の修正の必要性を判定し、修正が必要と判定した場合に、電気エネルギーの発生計画の修正を行う処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。なお、図9のフローチャートに示す処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0101】
最初のステップS300では、車両が出発地から走行を開始したか否かを判定する。車両が走行を開始したと判定すると、ステップS310の処理に進む。ステップS310では、該当区間の電気エネルギーの発電計画に従って発電されるように、発電用モータ25及び駆動用モータ26を制御する。すなわち、駆動用モータ26は、車両の減速時に回生制動による発電を行い、発電用モータ25は、発電すべき時期に発電を行うように、それぞれのモータ25,26を制御する。なお、発電用モータ25により発電させる場合には、エンジン27は、車両を走行させるためのトルクに加え、発電用モータ25による電気エネルギーの発生分だけ高いトルクを発生するように制御される。
【0102】
続くステップS320では、走行中又は次に走行予定の区間の、交通情報や天候情報などの最新の状況に関する情報を外部サーバから取得する。次のステップS330では、取得した最新の状況に関する情報に基づいて、上述した区間消費電気エネルギー量の算出と同様の手法によって、該当区間での最新区間消費電気エネルギー量を見積もる。
【0103】
ステップS340では、事前に算出した区間消費電気エネルギー量と最新区間消費電気エネルギー量とを比較し、両者に所定値以上の相違が生じているか否かを判定する。この判定処理において、所定値以上の相違が生じていると判定した場合、ステップS360の処理に進む。一方、所定値以上の相違は生じていないと判定した場合、ステップS350の処理に進む。
【0104】
ステップS350では、ステップS320にて取得した最新の状況に関する情報に基づき、該当区間の電気エネルギーの発生計画を遂行可能か否か判定する。例えば、該当区間において、混雑度合が相対的に高く、その混雑度合の高い区間部分において車両の十分な減速ができないことが予測されたり、下り勾配の道路で渋滞が発生したりしていて、回生電力の発生が困難であると推測される場合、電気エネルギーの発生計画の遂行が不可能と判定される。この判定処理において、該当区間の電気エネルギーの発生計画が遂行可能と判定されると、図9のフローチャートに示す処理を終了する。一方、該当区間の電気エネルギーの発生計画が遂行不可能と判定されると、ステップS360の処理に進む。
【0105】
このように、ステップS360の処理は、最新区間消費電気エネルギー量が事前に算出した区間消費電気エネルギー量と相違していると判定されるか、もしくは該当区間の電気エネルギーの発生計画の遂行不可能と判定されたときに実行される。そのため、ステップS360では、該当区間の電気エネルギーの発生計画を修正する。例えば、最新区間消費電気エネルギー量が事前に算出した区間消費電気エネルギー量よりも少ない場合には、その差分だけ発生電気エネルギー量が減少するように、発電用モータ25の発電計画と駆動用モータ26の発電計画との少なくとも一方を修正する。また、最新区間消費電気エネルギー量が事前に算出した区間消費電気エネルギー量よりも多い場合には、その差分だけ発生電気エネルギー量が増加するように、発電用モータ25の発電計画と駆動用モータ26の発電計画との少なくとも一方を修正する。なお、該当区間の電気エネルギーの発生計画が遂行不可能と判定された場合には、最新の状況に基づき、遂行可能な電気エネルギーの発生計画に修正する。
【0106】
ただし、例えば、差分に相当する電気エネルギー量を増やすように発電用モータ25の発電計画の修正を行うと、エンジン27の効率が極端に悪化する場合や、差分に相当する電気エネルギー量分の駆動用モータ26による回生電力の増加が困難である場合には、電気エネルギーの発生計画を修正しなくとも良い。また、差分に相当する全電気エネルギー量ではなく、その内の一部の電気エネルギー量分だけ発生電気エネルギー量が増加するように、電気エネルギーの発生計画を修正しても良い。遂行可能な電気エネルギーの発生計画への修正についても同様である。
【0107】
続くステップS370では、ステップS360において該当区間の電気エネルギーの発生計画が修正されると、その修正された電気エネルギーの発電計画に従って発電されるように、発電用モータ25及び駆動用モータ26を制御する。そして、ステップS380において、他の区間の電気エネルギーの発生計画を変更する必要があるか否かを判定する。上述したように、ステップS360において、最新区間消費電気エネルギー量と事前に算出した区間消費電気エネルギー量との差分に相当する電気エネルギー量に対応するように、該当区間における電気エネルギーの発生計画を修正できない場合や、発生すべき区間発生電気エネルギー量を発生するように電気エネルギーの発生計画を修正できない場合には、ステップS380の判定処理において、他の区間の電気エネルギーの発生計画の変更が必要と判断される。この場合、ステップS390の処理に進み、該当区間の電気エネルギーの発生計画では対応できなかった分の電気エネルギー量を、他の区間において追加的に発生するように、車両がこれから走行する予定の他の区間の電気エネルギーの発生計画を変更する。この場合も、車載バッテリ28の充電レベルが、上述した上下限値Ulim、Llimによって定義される許容範囲を超えないように、電気エネルギーの発生計画を変更する区間が選定される。
【0108】
一方、最新区間消費電気エネルギー量と事前に算出した区間消費電気エネルギー量との差分に相当する電気エネルギー量に対応するように、該当区間における電気エネルギーの発生計画が修正できた場合には、ステップS380の判定処理において、他の区間の電気エネルギーの発生計画の変更は不要と判断される。この場合、図9のフローチャートに示す処理が終了する。
【0109】
次に、車両が設定された予定ルートを走行中に、その予定ルートから逸れて、新たな予定ルートを走行する場合の処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。なお、図10のフローチャートに示す処理も、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0110】
ステップS400では、車両の現在位置及び地図データに基づき、車両が予定ルートを変更したか否かを判定する。この判定処理において、予定ルートが変更されたと判定するとステップS410の処理に進む。一方、予定ルートは変更されていないと判定すると図10のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS410では、新たな予定ルートにおいて、各種の車載装備により消費される全消費電気エネルギー量を見積もる。なお、全消費電気エネルギー量を見積る対象となる予定ルートは、事前に見積られている全消費電気エネルギー量と条件を揃えるため、車両の元の出発値から、既に走行済みのルートと、新たに設定されたルートとを通って目的地に達する予定ルートとする。或いは、全消費電気エネルギー量を見積もる対象となる予定ルートは、元の予定ルートからの逸脱地点から目的地までの予定ルートとしても良い。但し、この場合、新たな予定ルートの全消費電気エネルギー量との条件を揃えるため、元の予定ルートの全消費電気エネルギー量から、走行済みのルートでの消費電気エネルギー量を減じることが必要となる。
【0111】
続くステップS420では、元の予定ルートに対して算出された全消費電気エネルギー量と、新たな予定ルートに対して算出された全消費電気エネルギー量との比率を算出する。そして、算出した比率によって、元の予定ルートの各区間に対して算出されている電気エネルギーの発生計画の内、車両が現在走行している該当区間の電気エネルギーの発生計画を修正する。例えば、発電用モータ25の発電計画と、駆動用モータ26の回生電力による発電計画とに対し、算出した比率を乗算することにより、電気エネルギーの発生計画を修正することができる。
【0112】
元の予定ルートの全消費電気エネルギー量と、新たな予定ルートの全消費電気エネルギー量との比率を算出することにより、新たな予定ルートにて発生することが必要な電気エネルギー量は、元の予定ルートでの発生電気エネルギー量に対してどの程度の割合で増減すれば良いかを把握することができる。そして、元の予定ルートに対して算出されている該当区間の電気エネルギーの発生計画に、算出した比率を乗じることによって修正し、新たな予定ルートの電気エネルギーの発生計画として利用する。これにより、極めて短時間の内に、新たな予定ルートの電気エネルギーの発生計画を準備することができる。なお、元の予定ルートから逸れて、新たな予定ルートの走行を開始した場合であっても、車両が走行する区間の特徴に変化が生じることは少ない。そのため、元の予定ルートにおける該当区間の電気エネルギーの発生計画を修正して利用しても、それほど不適切な電気エネルギーの発生計画となることはない。
【0113】
ステップS440では、ステップS430にて修正した電気エネルギーの発生計画に従って発電が行われるように、発電用モータ25及び駆動用モータ26を制御する。ただし、修正したエネルギーの発生計画は、暫定的なものであり、新たな予定ルートの各区間での電気エネルギーの発生計画が立案されるまでの経過措置として利用されるにすぎない。そのため、次のステップS450では、新たな予定ルートに対応する電気エネルギーの発生計画の立案を行う。ステップS460では、新たな予定ルートに対応する電気エネルギーの発生計画の立案が完了したか否かが判定される。この判定処理において、完了していないと判定されるとステップS440の処理に戻り、完了したと判定されるとステップS470の処理に進む。ステップS470では、新たな予定ルートに対応するように立案された電気エネルギーの発生計画に従って発電が行われるように、発電用モータ25及び駆動用モータ26を制御する。
【0114】
上述した実施形態は本発明の好ましい実施形態ではあるが、本発明は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0115】
例えば、上述した実施形態では、車両用制御装置100が、エネルギー管理装置として、車両が予定ルートを走行するときの、発電部による発電計画を立案し、その立案した発電計画に従って、発電部の発電量を制御する例について説明した。しかしながら、車両用制御装置100は、発電部以外の車載装備を対象として制御計画を立案し、その制御計画に従って車載装備を制御しても良い。
【0116】
例えば、車両が自動運転される場合、車両用制御装置100は、予定ルートに基づき、エンジン及び駆動用モータを含む駆動部を対象として、駆動部が発生する駆動力に関する制御計画を立案し、その立案した制御計画に従って、駆動部による駆動力を制御しても良い。これにより、車両用制御装置100は、駆動部により、予定ルートの形状、勾配、制限速度等に見合った駆動力を効率良く発生させることができるようになる。なお、駆動部の制御計画を立案する際、ユーザニーズに基づいて駆動部の制御に影響する制御目的が設定されている場合、上述した実施形態と同様に、制御目的を考慮して制御計画を立案する。
【0117】
また、車両用制御装置100は、エアコンを対象として、エアコンの制御に関する制御計画を立案し、その立案した制御計画に従って、エアコンを制御しても良い。予定ルート全体に渡る気温や天候に関する情報を外部サーバなどから入手することで、エアコンの制御状態が、走行する予定ルートの状況に適した状態となるように制御計画を立案することができる。そして、立案した制御計画に従ってエアコンを制御することにより、予定ルート上で温度や天候の変化があっても、ユーザの手を煩わせることなく、ユーザに快適な車室環境を提供することができる。また、エアコンの制御計画に関しても、ユーザニーズに基づいてエアコンの制御に影響する制御目的が設定されている場合、その制御目的を考慮して制御計画を立案する。
【0118】
そして、車両用制御装置100は、発電部以外の車載装備を対象として制御計画を立案した場合も、予定ルートにおいて車載装備の制御内容に影響を及ぼす状況が変化した場合に、最新の変化後の状況に適合するように車載装備の制御計画を修正することが好ましい。例えば、渋滞が発生した場合、車両は計画通りの速度で走行することができないため、駆動部が発生する駆動力に関する制御計画を修正する。例えば、渋滞中で低速での走行を余儀なくされることが予測される場合、エンジンは停止したままとし、駆動用モータの駆動力のみで車両を走行させるように、制御計画を修正する。また、予定ルート上の天候や気温が、制御計画を立案したときの天候や気温から変化した場合には、車両用制御装置100は、その変化後の天候や気温に適合するように、エアコンの制御計画を修正する。
【0119】
さらに、車両用制御装置100は、目的地への到着予定時間が設定されている場合など、ナビゲーションを制御対象の車載装備として、予定ルート上の状況に応じて、制御計画に相当する予定ルートや予定速度を修正するようにしても良い。例えば、到着予定時刻にちょうど間に合うペースで車両が予定ルートを走行しているとき、路側機との通信によって前方にある信号機が青信号である時間帯を取得したとする。この場合、前方の交差点を青信号の内に通過することができないと判定すると、車両用制御装置100は、その信号を回避でき、かつ目的地へ予定時刻通りに到着可能な迂回ルートを探索する。そして、迂回ルートが見つかった場合、車両用制御装置100は、その迂回ルートにより予定ルートを修正する。逆に、到着予定時刻よりも早い時間に到着できるペースで車両が予定ルートを走行しているとき、そのルートに自動車専用道路が含まれており、自車両の近傍に、自動車専用道路を隊列走行している車群が存在していることを外部サーバから取得したとする。この場合、車両用制御装置100は、隊列走行している車群に参加できるように、予定速度を修正しても良い。なお、隊列走行に参加する際には、車両は自動運転され、隊列を構成する車群と車車間通信を行って、相互の間隔を維持しつつ走行する。
【0120】
なお、車両用制御装置100が、エアコンやナビゲーションの制御計画を修正する場合には、制御計画の修正をユーザに報知し、ユーザから承認された場合に、修正された制御計画に基づいて該当する車載装備を制御することが好ましい。
【0121】
なお、上述した実施形態や変形例では、予定ルートの状況に適した態様で車載装備を制御するように制御計画を立案する例について説明したが、その制御計画には、車載装備の動作禁止(例えば、走行中のドア開閉の実行禁止など)や、動作量の制約(例えば、交差点進入時の前車への追従速度制限など)が含まれても良い。
【0122】
さらに、上述した実施形態では、車両の使用予定内容として予定ルートが決定された場合に、その予定ルートの状況に応じて車載装備の制御計画を立案する例について説明した。しかしながら、車両の使用予定内容は予定ルートだけに限定されない。例えば、車中泊を行うことや、車両のバッテリを非常用電源として使用することを使用予定内容として決定することも可能である。そして、車中泊が使用予定内容として決定された場合には、例えば、車中泊を行う時間帯に渡って車室内の環境を車中泊に適した環境となるように、エアコンの制御計画を立案するとともに、そのエアコンの動作電源の確保のため、エンジン及び発電用モータの制御計画を立案する。また、車両のバッテリを非常用電源として用いることが使用予定内容として決定された場合には、非常用電源の使用期間に渡って、バッテリから電源が供給できるように、エンジン及び発電用モータの制御計画を立案する。
【0123】
また、例えば、上述した実施形態では、ユーザが実現したいことを推定し、その推定結果を移動価値及び空間価値に置き換え、さらに、置き換えた移動価値、空間価値を提供するための各車載装備の制御目的を決定する、との手順で、各車載装備の制御目的を決定するものであった。しかしながら、移動価値及び空間価値は、単に、ユーザが実現したいことから各車載装備の制御目的の決定する上で、その間に介在するものに過ぎないため、省略しても良い。すなわち、統合制御部10の記憶部には、ユーザの実現したいことの各候補に関連付けて、各車載装備の制御目的を記憶するようにしても良い。
【0124】
また、上述した実施形態では、車両側にて提供可能な提供価値として、移動価値と空間価値とを用いる例について説明した。しかしながら、車両側にて提供可能な提供価値として、移動価値と空間価値とのいずれか一方のみを用いても良い。
【0125】
さらに、上述した実施形態では、ユーザとの対話等の手法により、ユーザから種々の情報を取得して、ユーザが実現したいことを推定した。その他の手法として、例えば、統合制御部10が、ユーザの保持する携帯端末と通信する通信部を有し、通信部が取得した携帯端末に格納された情報(スケジュール情報など)に基づいて、ユーザが車両を用いて実現したいことを推定することも可能である。
【0126】
また、車両が、エネルギーを継続的に生成可能な車両装備、例えばソーラーパネルや、排気熱等で発電する熱電モジュールを備えている場合には、回生電気エネルギーの場合と同様に、その車両装備が生成するエネルギーを優先的に利用するようにして、電気エネルギーの発生計画を立案するようにしても良い。
【符号の説明】
【0127】
10:統合制御部、11:パワートレイン制御部、12:シャシ制御部、13:車室内制御部、14:発電用モータ制御部、15:駆動用モータ制御部、16:エンジン制御部、17:バッテリ制御部、18:サスペンション制御部、19:ブレーキ制御部、20:EPS制御部、21:ナビゲーション制御部、22:エアコン制御部、23:シート空調制御部、24:AV機器制御部、25:発電用モータ、26:駆動用モータ、27:エンジン、28:車載バッテリ、29:サスペンション、30:ブレーキ、31:電動パワーステアリング、32:ナビゲーション、33:エアコン、34:シート空調、35:AV機器、100:車両用制御装置
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