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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】積層フィルム及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20221122BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D30/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017520820
(86)(22)【出願日】2016-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2016065800
(87)【国際公開番号】W WO2016190431
(87)【国際公開日】2016-12-01
【審査請求日】2019-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2015108610
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015108612
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 友和
(72)【発明者】
【氏名】林 純平
(72)【発明者】
【氏名】安武 重和
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍吉
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-316381(JP,A)
【文献】特開2005-349582(JP,A)
【文献】特開2015-044627(JP,A)
【文献】特開2008-044202(JP,A)
【文献】特開2009-078860(JP,A)
【文献】特開平11-321885(JP,A)
【文献】実公平03-043185(JP,Y2)
【文献】特表2009-526672(JP,A)
【文献】特開2014-055004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合掌袋又はガゼット袋用の積層フィルムであって、
当該積層フィルムの一方の最外面を構成するヒートシール面を有し且つエルメンドルフ引裂法による引き裂き強度が10~100mNである樹脂基材と、
非金属材料からなる被覆層と、
エルメンドルフ引裂法による引き裂き強度が10~100mNである基材と、
を備え、これらがこの順序で積層されており、
エルメンドルフ引裂法による引き裂き強度が20~200mNであり、
前記樹脂基材は、
オレフィン系共重合体からなり且つ前記ヒートシール面を構成する第1の層と、
ポリプロピレンからなる第2の層と、
を有し、前記第1の層の厚さが0.5~5μmであり且つ前記第1及び第2の層が積層されて二軸方向に延伸されており、
前記基材は紙である、積層フィルム。
【請求項2】
前記樹脂基材と前記被覆層との間に下地層を更に備える、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記下地層は主成分として有機高分子を含む、請求項に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記有機高分子は、ポリオール類、有機シラン化合物、水系ポリウレタン樹脂、及び、前記ポリオール類と前記有機シラン化合物との反応生成物の少なくとも一つを含む、請求項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記下地層と前記被覆層との間に蒸着層を更に備える、請求項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記被覆層は可視光に対して透明性を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記被覆層は、水溶性高分子、シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方、金属アルコキシド及びその加水分解物の少なくとも一方、並びに無機層状化合物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
ラミネート強度が1.0~4.0N/15mmである、請求項1~のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
フィルムを貼り合わせて形成され且つヒートシールされた部分を引き剥がして開封される包装袋であって、
前記フィルムが請求項1~のいずれか一項に記載された積層フィルムを備える包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は包装用の積層フィルム及びこれを用いて製造された包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋の製造に用いられるフィルムとしてヒートシール性を有する樹脂フィルムが知られている(特許文献1,2)。食品などの内容物を収容する包装袋は、内容物の品質劣化を防ぐために大気中の酸素及び水蒸気の透過を抑制するガスバリア性を有することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3002339号公報
【文献】特許第4120227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、包装袋の製造に用いられる樹脂フィルムは、常に高度な密封性を有していなければならないわけではなく、内容物に応じた密封性を有していればよい。例えば、さほど劣化が進行しない飴玉などを包装するためのフィルムは、劣化しやすい食品の包装袋用フィルムと比較して密封性が低くてもよい。その反面、使用者が比較的容易に開封できるなどの利便性に重点が置かれる場合もある。
【0005】
そこで、本発明は指の力で容易に開封でき且つガスバリア性を備える包装袋を効率的に製造するのに有用な積層フィルム及びこれを用いて製造された包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る包装用の積層フィルムは、当該積層フィルムの一方の最外面を構成するヒートシール面を有する樹脂基材と、非金属材料からなる被覆層とを少なくとも備える。積層フィルムの樹脂基材自体がヒートシール性を有しているため、樹脂基材にシーラントフィルムを貼り合わせたりシーラント層を設けたりすることなく、包装袋を製造することができる。
【0007】
被覆層は、上述のとおり、非金属材料からなる。被覆層として非金属材料を採用することで、使用済みの包装袋を焼却処理しやすいという利点がある。被覆層を構成する非金属材料の具体例として、水溶性高分子、シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方、金属アルコキシド及びその加水分解物の少なくとも一方、並びに無機層状化合物が挙げられる。これらの成分を含む被覆層は優れた酸素バリア性を有しつつ、所定の成分を含む下地層との接着性が良好であるという利点がある。例えば、主成分として有機高分子を含む下地層を樹脂基材と被覆層との間に設けた場合、下地層の組成が変わっても、良好な接着性を維持することができる。したがって、上記積層フィルムは、下地層の組成の変化に起因するラミネート強度のばらつきを低減することができる。ここでいう「主成分」とはその層を構成する組成物の全質量100質量部に対して50質量部以上を占める成分をいう。下地層の主成分をなす有機高分子の具体例として、ポリオール類、有機シラン化合物、水系ポリウレタン樹脂、及び、ポリオール類と有機シラン化合物との反応生成物などが挙げられる。
【0008】
被覆層は可視光に対して透明性を有するものであってもよい。なお、ここでいう「可視光に対して透明性を有する」(以下、場合により単に「透明」という。)とは、全光線透過率(JIS K7375:2008参照)が、60%以上であることを意味する。被覆層が透明であるか否か(全光線透過率が60%以上であるか否か)は、例えば透明のフィルム又はガラス板に被覆層と同様の組成及び厚さからなる層を形成し、この積層体の全光線透過率を測定することによって把握することができる。
【0009】
本開示の第一の態様に係る包装用の積層フィルムは、当該積層フィルムの一方の最外面を構成するヒートシール面を有する樹脂基材と、非金属材料からなる被覆層と、樹脂基材と被覆層との間に設けられた下地層とを備える。そして、上記樹脂基材は、オレフィン系共重合体からなり且つ上記ヒートシール面を構成する第1の層と、二軸方向に延伸されたポリプロピレンからなる第2の層とを有し、第1及び第2の層が直接接するように積層されている。
【0010】
この積層フィルムが備える樹脂基材は、オレフィン系共重合体からなり且つヒートシール面を構成する第1の層と、ポリプロピレンからなる第2の層とを有し、第1及び第2の層が積層されて二軸方向に延伸されている。例えば、包装袋の態様によっては包装袋のヒートシールされた部分(シール部)を引き剥がして開封される場合がある。この積層フィルムによれば、第1の層の強度や厚さを調整することによって指の力で容易に開封できる包装袋を製造できる。この積層フィルムに遮光性を付与したければ、被覆層の外側にインキ層を更に設けたり、樹脂基材の第2の層を構成する樹脂として白色のポリプロピレンを採用したりすればよい。なお、樹脂基材の第2の層として白色のポリプロピレン層を採用し且つ透明の被覆層を採用した場合、被覆層の外側に設けるインキ層が鮮やかに発色しやすく、見栄えのよい包装袋を製造しやすいという利点がある。なお、積層フィルム全体が透明であってもよい。
【0011】
本開示の第二の態様に係る包装用の積層フィルムは、当該積層フィルムの一方の最外面を構成するヒートシール面を有し且つエルメンドルフ引裂法による引き裂き強度が10~100mNである樹脂基材と、非金属材料からなる被覆層と、エルメンドルフ引裂法による引き裂き強度が10~100mNである基材とを備え、これらがこの順序で積層されており、エルメンドルフ引裂法による引き裂き強度が20~200mNである。
【0012】
この積層フィルムの引き裂き性を主に支配する樹脂基材と基材がそれぞれ所定の引き裂き強度を有している。このため、積層フィルムの引き裂き強度が十分に小さい(エルメンドルフ引裂法による引き裂き強度20~200mN)。このため、この積層フィルムを用いて製造された包装袋は指の力で容易に開封することができる。なお、ここでいう「引き裂き強度」は、特に記載がない限り、エルメンドルフ引裂法によって測定されたものを意味し、その値はJIS K-7128に準拠して測定することができる。
【0013】
第二の態様に係る積層フィルムの樹脂基材として、共重合体からなり且つヒートシール面を構成する第1の層と、二軸方向に延伸されたポリプロピレン(OPP)からなる第2の層とを有し、第1及び第2の層が直接接するように積層されたフィルムを使用できる。包装袋に収容する内容物や包装袋の使用感などに応じて第1及び第2の層が満たすべき条件を設定し、これに基づいて共重合体及びポリプロピレン(OPP)の物性を決定すればよい。例えば、包装袋の態様によっては積層フィルムを引き裂いて開封するのではなく、ヒートシールされた部分(シール部)を引き剥がして開封する場合もある。このような場合、第1の層の強度や厚さを調整することによってシール強度を0.5~20.0N/15mmの範囲としてもよい。基材は、上述のとおり、引き裂き強度の範囲が10~100mNである限り、その材質に制限はなく、具体例として二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、紙などが挙げられる。
【0014】
本開示は、別の側面において、フィルムを貼り合わせてなる包装袋であって、上記フィルムが上述の積層フィルムを備える包装袋を提供する。この包装袋は、指の力で容易に開封でき且つガスバリア性を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、指の力で容易に開封でき且つガスバリア性を備える包装袋を効率的に製造するのに有用な積層フィルム及びこれを用いて製造された包装袋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る積層フィルムを示す模式断面図である。
図2図2は、包装袋の一実施形態を示す模式断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る積層フィルムの変形例を示す模式断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る積層フィルムの変形例を示す模式断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る積層フィルムを示す模式断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る積層フィルムの変形例を示す模式断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る積層フィルムの変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の積層フィルムの模式断面図である。積層フィルム100は、フィルム状の樹脂基材10、並びに、樹脂基材10の一方面上に、樹脂基材10側から下地層20及び被覆層30をこの順に有する。積層フィルム100全体が透明であってもよい。
【0019】
樹脂基材10は、積層フィルム100の一方の最外面(図1における下面)を構成するヒートシール面10sを有する。つまり、樹脂基材10自体がヒートシール性を有する。このため、樹脂基材10にシーラントフィルムを貼り合わせたりシーラント層を設けたりすることなく、包装袋を製造することができる。樹脂基材10は、図1に示すように、ヒートシール面10sを構成する第1の層10aと、二軸方向に延伸されたポリプロピレンからなる第2の層10bとを有し、第1の層10aと第2の層10bとが直接接するように積層された多層構造を有する。
【0020】
樹脂基材10のエルメンドルフ引裂法による引き裂き強度は10~100mNであることが好ましく、20~60mNであることがより好ましい。樹脂基材10の引き裂き強度が10mN以上であれば、意図しないときに積層フィルム100が裂けてしまうことを抑制しやすく、他方、100mN以下であれば、積層フィルム100を用いて製造された包装袋の引き裂き伝播性が良く、開封時に爽快感が得られる。なお、本発明における「引き裂き強度」は、特に記載がない限り、エルメンドルフ引裂法によって測定されたものを意味し、その値はJIS K-7128に準拠して測定することができる。
【0021】
第1の層10aは樹脂基材10にヒートシール性を付与するためのものである。第1の層10aを構成する樹脂の融点は例えば60~140℃であり、80~120℃であってもよい。樹脂の融点(溶解温度)は、JIS K7121:2012に示される方法に準拠し、示差走査熱量計を用いて30℃から180℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定することにより算出することができる。第1の層10aの厚さは0.5~5μmであることが好ましい。第1の層10aの厚さを調整することによって第1の層10aによるヒートシールの強度を適度な範囲としてもよい。第1の層10aの厚さが0.5μm以上であればヒートシール効果を発揮しやすく、他方、5μm以下であれば樹脂基材10の機械的特性への影響を十分に抑制できる。
【0022】
第1の層10aを構成する樹脂材料は、オレフィン系共重合体(コポリマー)であり、特にポリプロピレンからなる第2の層との密着性を考慮してプロピレン共重合体であることが好ましい。すなわち、かかる樹脂材料として、主モノマーであるプロピレン等のオレフィンと、主モノマーとは異なる少量のコモノマーとがランダムに共重合し均質的な相をなすランダムコポリマー、又は、主モノマーであるプロピレン等のオレフィンと上記コモノマーがブロック的に共重合したりゴム状に重合したりすることによって不均質な相をなすブロックコポリマー等が挙げられる。その具体例としては、例えば、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-エチレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-エチレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体等が挙げられ、好ましくは(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体である。なお、プロピレン共重合体以外のオレフィン系共重合体を第1の層10aに用いる場合には、第2の層10bとの間に密着性を向上させる中間層としてプロピレン共重合体からなる層を設けてもよい。
【0023】
第2の層10bはポリプロピレンからなる。第2の層10bのエルメンドルフ引裂法による引き裂き強度は10~100mNであることが好ましく、20~60mNであることがより好ましい。第2の層10bが二軸延伸フィルムによって構成される場合、上記引き裂き強度は縦方向(MD)及び横方向(TD)ともに上記範囲であることが好ましい。第2の層10bの厚さは、特に制限されず、例えば、2~200μmであり、10~100μmであってもよく、15~50μmであってもよい。この厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
【0024】
樹脂基材10は、例えばエキストルージョンラミネート法、共押し出し、インフレーション法等の公知の樹脂積層法によって、第1の層10aと第2の層10bとを積層した後、同時また順次、縦方向(MD)及び横方向(TD)に延伸する工程を経て得ることができる。
【0025】
なお、樹脂基材10が積層フィルム100の一方の最外面を構成するヒートシール面10sを有し且つ引き裂き強度が上記範囲である限り、樹脂基材10は、上記樹脂フィルムの二種以上を組み合わせて構成されてもよく、同種のものを複数積層することによって構成されてもよい。更に、第2の層10bと下地層20との間にヒートシール性を有する第3の層(図示せず)を更に設けてもよい。第3の層を構成する樹脂としては第1の層を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。第3の層についても第1の層10aと同様に、0.5~5μmの厚さとしてもよい。
【0026】
樹脂基材10の厚さは、特に制限されず、例えば、3~200μmであり、10~100μmであってもよく、15~50μmであってもよい。この厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。包装袋のシール部の周辺を両手でつかんで引っ張ることによって包装袋を開封できるようにするには、シール部の強度(シール強度)を0.5~4.0N/15mmの範囲とすればよい。シール強度は熱傾斜試験機を使用し、プレス圧0.2MPa、プレス時間1秒間の条件で測定することができる。
【0027】
樹脂基材10は、フィラー、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、及び酸化防止剤等から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有してもよい。樹脂基材10の表面は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理、及びオゾン処理から選ばれる少なくとも一つの処理が施されていてもよい。
【0028】
下地層20は、樹脂基材10と被覆層30との間に設けられる。下地層20を設けることによって、樹脂基材10と被覆層30との密着性が向上し、積層フィルム100のラミネート強度を高くすることができる。下地層20は、有機高分子を主成分として含有する層であり、プライマー層と呼ばれることもある。
【0029】
下地層20における有機高分子の含有量は、例えば70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。有機高分子としては、高分子末端に二つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類、シランカップリング剤又はその加水分解物のような有機シラン化合物、上記ポリオール類と、イソシアネート化合物との2液反応によって得られる反応生成物(水系ポリウレタン樹脂)、及び、上記ポリオール類とシランカップリング剤との反応生成物等が挙げられる。これらのうちの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせてもよい。
【0030】
ポリオール類としては、例えば、アクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリスチルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択される少なくとも一種が挙げられる。アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるものであってもよく、アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られるものであってもよい。アクリル酸誘導体モノマーとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。アクリル酸誘導体モノマーと共重合させるモノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
【0031】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。有機シラン化合物は、これらのシランカップリング剤の加水分解物であってもよい。有機シラン化合物は、上述のシランカップリング剤及びその加水分解物の一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。下地層20がシランカップリング剤又はその加水分解物を含有する場合、これらは、被覆層30に含まれるものと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応して生じるウレタン結合により樹脂基材10と被覆層30との密着性を高める作用を有する。すなわち、イソシアネート化合物は、架橋剤又は硬化剤として機能する。イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、及びこれらの誘導体が挙げられる。上述のイソシアネート化合物は一種を単独で、又は二種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
下地層20は、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール、及び有機変性コロイダルシリカのような無機シリカから選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。下地層20の厚さは、特に制限されず、例えば、0.005~5μmであり、0.01~1μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
【0034】
下地層20は、有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、樹脂基材10の一方面上に調製した混合液を用いて形成することができる。混合液は、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤;フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤;レベリング剤;流動調整剤;触媒;架橋反応促進剤;充填剤等を含有してもよい。
【0035】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて樹脂基材10の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば50~200℃に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、下地層20を形成することができる。
【0036】
被覆層30は、非金属材料からなる。被覆層30として非金属材料を採用することで、使用済みの包装袋を焼却処理しやすいという利点がある。被覆層を構成する非金属材料の具体例として、水溶性高分子、シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方、金属アルコキシド及びその加水分解物の少なくとも一方、並びに無機層状化合物を含む。被覆層30は、無機層状化合物を含有することから、酸素バリア性に優れる。
【0037】
水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等のアルコール系、及びアクリルポリオール系等の高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000~180000である。下地層20がポリオール類を含有する場合、当該ポリオール類と、被覆層30に含まれる水溶性高分子は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
ポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0039】
被覆層30における水溶性高分子の含有量は、例えば、15~50質量%である。被覆層30における水溶性高分子の含有量の下限は、酸素透過度を一層低減する観点から20質量%であってもよい。被覆層30における水溶性高分子の含有量の上限は、酸素透過度を一層低減する観点から45質量%であってもよい。
【0040】
被覆層30に含まれる金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC]等の一般式M(OR)で表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。金属アルコキシドは、これらのうちの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0041】
被覆層30における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量は、例えば、40~70質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層30における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量の下限は50質量%であってもよい。同様の観点から、被覆層30における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量の上限は65質量%であってもよい。
【0042】
被覆層30に含まれるシランカップリング剤としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン及び、これらのその加水分解物が挙げられる。これらのうちの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0043】
シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方は、有機官能基として、エポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。
【0044】
有機官能基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、被覆層30の酸素バリア性と、下地層20との接着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤及びその加水分解物のエポキシ基とポリビニルアルコールの水酸基とは、相互作用によって、酸素バリア性と下地層20との接着性に特に優れる被覆層30を形成することができる。
【0045】
被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量は、例えば、1~15質量%である。ラミネート強度を一層高くするとともに酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の下限は2質量%であってもよい。被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の上限は12質量%であってもよい。
【0046】
被覆層30に含まれる無機層状化合物は、層状構造を有する結晶性の無機化合物である。無機層状化合物としては、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、又はマイカ族等に代表される粘土鉱物が挙げられる。被覆層30は、これらの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。無機層状化合物の粒径は、例えば0.1~10μmである。無機層状化合物のアスペスト比は、例えば50~5000である。
【0047】
無機層状化合物のうち、層状構造の層間に水溶性高分子又は金属アルコキシドが入り込むことによって、層間が拡大した複合被膜とする観点から、スメクタイト族の粘土鉱物が好ましい。スメクタイト族の粘土鉱物の具体例としては、モンモリトロナイト、ヘクトライト、及びサポナイト等が挙げられる。これらの中でも、混合液の安定性及び塗工性等の観点から、モンモリロナイトであることがより好ましい。
【0048】
被覆層30における無機層状化合物の含有量は、優れた酸素バリア性と高いラミネート強度を両立させる観点から、例えば2~10質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層30における無機層状化合物の含有量の下限は2.5質量%であってもよい。ラミネート強度を一層高くする観点から、被覆層30における無機層状化合物の含有量の上限は8質量%であってもよく、5質量%であってもよい。
【0049】
被覆層30の厚さは、特に制限されず、例えば、0.01~50μmであり、0.05~5μmであってもよく、0.1~1μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。上述の成分を含有する被覆層30は、下地層20の組成が変わっても、積層フィルム100のラミネート強度のばらつきを低減することができる。このため、下地層20の材料選択の自由度が高くなり、積層フィルムの仕様選定を容易に行うことができる。また、積層フィルム100のラミネート強度を安定的に高くすることができるため、金属酸化物からなる蒸着層を備えなくても、優れた密封性が要求される包装袋に好適に用いることができる。これらの観点から、下地層20と被覆層30とは直接接触していることが好ましい。
【0050】
被覆層30は、有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、下地層20の表面上に調製した混合液を塗布して乾燥し、硬化させて形成することができる。混合液は、被覆層30の物性を大きく損なわない範囲で、その他の成分を含有してよい。そのような成分としては、分散剤、安定化剤、粘度調整剤及び着色剤等が挙げられる。
【0051】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて下地層20の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば100℃程度に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、被覆層30を形成することができる。
【0052】
積層フィルム100のエルメンドルフ引裂法による引き裂き強度は好ましくは10~200mNである。積層フィルム100の引き裂き強度が10mN以上であれば、意図しないときに積層フィルム100が裂けてしまうことを抑制でき、他方、200mN以下であれば積層フィルム100を用いて製造された包装袋を指の力で開封しやすい。積層フィルム100の引き裂き強度は、積層フィルム100を構成するフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)ともに上記範囲であることが好ましい。
【0053】
積層フィルム100は、酸素バリア性に優れる。すなわち、無機酸化物等からなる蒸着層を有していなくても、優れた酸素バリア性を確保することができる。このため、積層フィルム100は、無機酸化物等からなる蒸着層を有するものに比べて、低い製造コストで製造することができる。このような積層フィルム100は、それほど高い水蒸気バリア性を必要としない用途に特に有用である。例えば、水分を含有する内容物を保管する包装袋を構成する積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。
【0054】
積層フィルム100の酸素バリア性は、JIS K7126-2:2006に準拠して、mocon法(等圧法)によって測定される酸素透過度によって評価できる。この評価方法による酸素透過度は、例えば、3ml/m/日以下であってもよく、2.5ml/m/日以下であってもよい。なお、本明細書における酸素透過度は、大気圧下、30℃、70%RHの条件で測定される値である。
【0055】
積層フィルム100のラミネート強度は、JIS Z 0238:1998に準拠して、テンシロン型引張試験機を用いてT型剥離法(クロスヘッドスピード:300mm/分)で測定することができる。積層フィルム100のラミネート強度は、好ましくは1.0~4.0N/15mmであり、より好ましくは2.0~4.0N/15mmである。
【0056】
図2は、積層フィルムを用いて形成される包装袋の一実施形態を示す平面図である。包装袋200は、略矩形の一対の積層フィルム100,100の周縁を貼り合わせてなるシール部211と、シール部211によって一対の積層フィルム100,100の間に形成される収容部218とを備える。すなわち、包装袋200は、側端部214、下端部216及び上端部217がシール部211によってシールされている。包装袋200は、シール部211に包囲された非シール部(シート部)215に、食料品等の被包装物が収容される収容部218を備える。収容部218には、食料品等の被包装物が封入される。なお、下端部216のシール部211は、被包装物を収容部218に充填した後にシールしてもよい。
【0057】
一対の積層フィルム100,100は、樹脂基材10,10同士が対面するように重ね合わせられている。積層フィルム100の第2の層10bがヒートシール性を有しているため、樹脂基材10,10にシーラントフィルムを貼り合わせたりシーラント層を設けたりすることなく、シール部211を構成することができる。
【0058】
積層フィルム100,100は、酸素ガスバリア性に優れるため、収容部218に収容される被包装物が酸素によって劣化することを十分に抑制することができる。包装袋200は、積層フィルム100に変えて、積層フィルム101又は積層フィルム102を備えていてもよい。この場合も、収容部218に収容される被包装物が酸素によって劣化することを十分に抑制することができる。積層フィルム100の樹脂基材10及び被覆層30の上には、任意の層を設けてもよい。
【0059】
積層フィルム100を用いて包装袋200を製造する手順を以下に説明する。一対の積層フィルム100,100を準備する。積層フィルム100,100の樹脂基材10,10同士を対面させ、再封止手段230となる例えばファスナーテープを挟んだ状態で、樹脂基材10,10の第2の層10b,10b同士を接着する。これによって、上端部217及び側端部214,214に対応する位置にシール部211を形成して、三辺のシール部211で包囲された非シール部215を形成する。
【0060】
シール部211を形成した後、開封手段220を形成してもよい。例えば、側端部214,214には、傷痕群からなる易開封加工部224,224を形成する。易開封加工部224は、傷痕群に限定されず、V字状、U字状又はI字状等のノッチであってもよい。シール部に傷痕群又はノッチを設けることで、その位置から人が指で包装袋を開封しやすいという利点がある。上端部217と再封止手段230との間の積層フィルム100の表面部には、易開封加工部224からの切り開きの軌道となるハーフカット線221を形成してもよい。ハーフカット線221は、レーザーを用いて形成することができる。開封手段220の形成後に、シール部211を切断すると共に化粧裁ちをして個々の包装袋に分割する。
【0061】
次に、未シール状態にある下端部216から被包装物を充填する。その後、下端部216において積層フィルム100同士を接着して、下端部216にもシール部211を形成する。このようにして、包装袋200を製造することができる。ハーフカット線は貼り合わせた一対の積層フィルム100,100を所定の幅にスリットする前に形成してもよい。
【0062】
包装袋200は、非シール部215の上端側に、包装袋200の側端部214,214及びその間を横断するように切り開いて開封するための開封手段220と、開封手段220よりも下側に、開封手段220によって開封した後に収容部218を再封止する再封止手段230とを備える。再封止手段230は、開封と密封とを繰り返して行うことが可能な公知の構造を適宜採用することができる。例えば、帯状の突起部と帯状の溝部が嵌合することによって繰り返し密封することが可能な合成樹脂製のファスナーであってもよく、粘着シールであってもよい。
【0063】
第1実施形態の変形例について説明する。積層フィルム100は、樹脂基材10と下地層20との間に、積層フィルム100の機能を大きく損なわない範囲で、任意の層又は薄膜を備えていてもよい。また、積層フィルムは、被覆層30上に直接積層されたインキ層40及び/又は他の基材を備えていてもよい(図3参照)。
【0064】
積層フィルム100は蒸着層を更に備えてもよい。例えば、図4に示すように、下地層20と被覆層30との間に蒸着層50を介在させてもよい。この場合、下地層20は樹脂基材10に対する蒸着層50の密着性向上に寄与する。蒸着層50は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、あるいはそれらの混合物などの無機化合物からなり、透明性を有し且つ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する。
【0065】
蒸着層50の厚さは、用いられる無機化合物の種類又は構成に応じて適宜設定すればよく、例えば5~300nmとすればよい。蒸着層50の厚さが5nm以上であれば、均一な蒸着層を形成しやすく、また、蒸着層がガスバリア材としての機能を十分に果たしやすい。他方、蒸着層50の厚さが300nm以下であれば、蒸着層50が十分なフレキシビリティを有し、蒸着層50の形成後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因が積層体に加わっても、蒸着層50に亀裂を生じることを十分に抑制することができる。上記理由及び生産性の観点から、蒸着層50の厚さはより好ましくは10~200nmである。
【0066】
蒸着層50を下地層20上に形成する方法としては種々あり、例えば、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法又はプラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。
【0067】
包装袋200の形状は、四方袋に限定されるものではなく、三方シール袋でもよいし、底テープを付加したスタンディングパウチ形状であってもよい。積層フィルム100を用いて製造される包装袋は、使用者が比較的容易に開封できることから、易開封が求められる製品に好適である。また被覆層や、蒸着層によってガスバリア性を備えているため、酸素や水蒸気による劣化の防止が適度に求められる製品(飴玉、チョコレート、乾物等の食品、インクなどの揮発成分を有する文房具など)を包装するのに有用である。これらの製品の包装袋の態様としては、合掌袋、ガゼット袋などが挙げられる。
【0068】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の積層フィルムの模式断面図である。積層フィルム120は、フィルム状の樹脂基材10、並びに、樹脂基材10の一方面上に、樹脂基材10側から下地層20、被覆層30及び基材60をこの順に有する。積層フィルム120は、基材60を備える点において、第1実施形態に係る積層フィルム100と相違する。以下、主に相違点について説明する。
【0069】
基材60は、包装袋の最外層(図5における上面)を構成する層である。基材60のエルメンドルフ引裂法による引き裂き強度は10~100mNであり、好ましくは20~60mNである。基材60の引き裂き強度が10mN以上であれば意図しないときに積層フィルム120が裂けてしまうことを抑制でき、他方、100mN以下であれば積層フィルム120を用いて製造された包装袋を指の力で開封しやすい。基材60は引き裂き強度の範囲が上記範囲である限り、その材質に制限はない。基材60を構成する材料の具体例としては、樹脂基材10の第2の層10bと同様の樹脂材料を挙げることができる。基材60は樹脂材料に限定されず、例えば紙であってもよい。
【0070】
樹脂基材10と下地層20と被覆層30との積層体の被覆層30の形成面と、基材60とを接着剤を介して貼り合わせることで積層フィルム120とすることができる。貼り合わせ方法としては、公知のドライラミネート法、ノンソルラミネート法などを用いることができる。接着剤としては、各種ラミネート加工方法に応じて、様々な接着剤を選択でき、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系などの公知の接着剤を用いることができる。また、エクストルージョンラミネート法のように上記積層体(樹脂基材10、下地層20及び被覆層30)上に基材60を直接貼り合わせてもよい。
【0071】
積層フィルム120のエルメンドルフ引裂法による引き裂き強度は20~200mNである。積層フィルム120の引き裂き強度が20mN以上であれば、意図しないときに積層フィルム120が裂けてしまうことを抑制でき、他方、200mN以下であれば積層フィルム120を用いて製造された包装袋を指の力で開封しやすい。引き裂き強度は縦方向(MD)及び横方向(TD)ともに上記範囲であることが好ましい。
【0072】
一般的に包材として用いられる積層フィルムには、印刷が施されることから、積層フィルム120に印刷層や遮光層などのインキ層を更に設けてもよい。遮光性を付与したければ、例えば図6に示すように、被覆層30と基材60との間にインキ層40を設けてもよい。被覆層30と基材60との間にインキ層40を設ける代わりに、基材60の外側にインキ層や印刷層を設けたり、あるいは、樹脂基材10の第2の層10bを構成する樹脂として白色のポリプロピレンを採用してもよい。第2の層10bとして白色のポリプロピレン層を採用し且つ透明の被覆層30及び下地層20を採用した場合、被覆層30よりも外側に設けるインキ層(又は印刷層)が鮮やかに発色しやすく、見栄えのよい包装袋を製造しやすいという利点がある。また被覆層30よりも外側であり且つ基材60よりも内側、あるいは、透明な基材60の被覆層30との貼り合わせ面に印刷層を設けておけば、包装袋として使用した際に印刷層が露出しないため、印刷層が損傷することがないという利点がある。
【0073】
積層フィルム120は、酸素バリア性に優れる。すなわち、無機酸化物等からなる蒸着層を有していなくても、優れた酸素バリア性を確保することができる。このため、積層フィルム120は、無機酸化物等からなる蒸着層を有するものに比べて、低い製造コストで製造することができる。このような積層フィルム120は、それほど高い水蒸気バリア性を必要としない用途に特に有用である。例えば、水分を含有する内容物を保管する包装袋を構成する積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。
【0074】
なお、ここでは蒸着層を有しない積層フィルム120を例示したが、積層フィルム120は蒸着層を更に備えてもよい。例えば、図7に示すように、第1実施形態と同様、下地層20と被覆層30との間に蒸着層50を介在させてもよい。
【0075】
積層フィルム120を用いて製造される包装袋の形状は、図2に示すものと同様であってもよく、三方シール袋でもよいし、底テープを付加したスタンディングパウチ形状であってもよい。積層フィルム120を用いて製造される包装袋は、使用者が比較的容易に開封できることから、易開封が求められる製品に好適である。また被覆層や、蒸着層によってガスバリア性を備えているため、酸素や水蒸気による劣化の防止が適度に求められる製品(飴玉、チョコレート、乾物等の食品、インクなどの揮発成分を有する文房具など)を包装するのに有用である。これらの製品の包装袋の態様としては、合掌袋、ガゼット袋などが挙げられる。
【実施例
【0076】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
<被覆層の評価>
(参考例1)
下地層形成用の混合液として、希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ-イソシアネートプロピルトリメチルシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、混合液A(固形分:2質量%)を調製した。樹脂基材として準備した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:20μm)の一方面上に、混合液Aをグラビアコート法によって塗布した。塗布後、乾燥して二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に下地層を形成した。なお、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマータイプのポリプロピレンフィルムと、コポリマータイプのポリプロピレンフィルムとから構成される市販品(AJプラスト製、商品名PJ201、厚さ:20μm)を用いた。
【0078】
水に、ポリビニルアルコール(PVA,数平均分子量:75000)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、及び、モンモリロナイト(Mon.)の4成分を、表1に示す質量比で配合して、混合液Bを調製した。下地層の上に、グラビアコート法によって、混合液Bを塗布した。塗布後、加熱して乾燥し、下地層の上に被覆層を形成した。このようにして、参考例1の積層フィルムを作製した。積層フィルムの下地層の厚みは約60~70nmであり、被覆層の厚みは約0.4~0.6μmであった。
【0079】
被覆層と基材との密着性を評価するため、積層フィルムの被覆層に、未延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:20μm)を、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせて、評価用フィルムを作製した。得られた評価用フィルムの酸素透過率を、酸素透過率測定装置(MOCON社製、装置名:OXTRAN 2/21)を用いて測定した。測定雰囲気は、30℃、70%RHとした。測定結果は表1に示すとおりであった。
【0080】
上述の評価用フィルムのラミネート強度を測定した。具体的には、JIS Z 0238:1998に準拠して、引張試験機(株式会社 エー・アンド・デイ製、商品名:テンシロン万能材料試験機)を用いてT型剥離法(クロスヘッドスピード:300mm/分)で未延伸ポリプロピレンフィルムと積層フィルムとのラミネート強度を測定した。測定結果は表1に示すとおりであった。
【0081】
(参考例2~5、比較例1)
混合液Bにおける、ポリビニルアルコール、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及び、モンモリロナイトの質量割合を表1に示すように変更したこと以外は、参考例1と同様にして積層フィルムを形成した。そして、参考例1と同様にして積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表1に示すとおりであった。
【0082】
(参考例6)
下地層形成用の混合液として、水系ポリウレタン樹脂エマルション(三井武田ケミカル社製、商品名:WS5000)を準備した。これを混合液Aの代わりに用いたこと以外は、参考例3と同様にして積層フィルムを形成した。そして、参考例3と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表1に示すとおりであった。
【0083】
(参考例7)
樹脂基材として、二軸延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ株式会社製、商品名:U1、厚さ:20μm)を準備した。樹脂基材としてこれを用いたこと以外は、参考例6と同様にして積層フィルムを形成した。そして、参考例6と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表1に示すとおりであった。
【0084】
(比較例2)
下地層形成用の混合液として、水系ポリウレタン樹脂エマルション(三井武田ケミカル社製、商品名:WS5000)を準備した。これを混合液Aの代わりに用いたこと以外は、比較例1と同様にして積層フィルムを形成した。そして、比較例1と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表1に示すとおりであった。
【0085】
(比較例3)
樹脂基材として、二軸延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ株式会社製、商品名:U1、厚さ:20μm)を準備した。これを用いたこと以外は、比較例2と同様にして積層フィルムを形成した。そして、比較例2と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表1に示すとおりであった。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すとおり、参考例1~7の積層フィルムは、安定的に高いラミネート強度を有していた。被覆層の組成が同一であり、下地層の組成が異なる参考例3と参考例6,7とを対比すると、ラミネート強度の差異は0.5N/15mmであった。このことから、参考例の積層フィルムは、ラミネート強度が下地層の組成に殆ど依存せず、ラミネート強度のばらつきを低減できることが確認された。したがって、下地層の材料選択の自由度を高くすることができる。
【0088】
これに対し、被覆層がシランカップリング剤を含有していない比較例1~3の場合、被覆層の組成が同一であり、下地層の組成が異なる比較例1と比較例2,3とを対比すると、ラミネート強度の差異は1.4~1.7N/15mmであった。このことから、比較例の積層フィルムは、下地層の組成が変わるとラミネート強度が大きくばらつくことが確認された。すなわち、積層フィルムのラミネート強度が下地層の組成に大きく依存することが確認された。なお、参考例2~7の積層フィルムは、酸素バリア性にも十分に優れることが確認された。
【0089】
(実施例1)
図1に示す構成の積層フィルムの引き裂き強度、シール強度及び酸素透過度を評価するため、以下のようにして図1の積層フィルム100と同様の構成の積層フィルムBを作製した。まず、ヒートシール性を有する樹脂基材Aを準備した。この樹脂基材Aは、片側に約3μmのヒートシール層(第1の層)を備えた厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(第2の層)であり、プロピレンとエチレンとを含むコモノマーの共重合体からなる最外層のヒートシール層とポリプロピレン樹脂の主基材を含む多層積層体を二軸延伸し、所定の厚みとしたものである。樹脂基材Aのエルメンドルフ引き裂き法による引き裂き強度はMD:48.7mNであり、TD:24.5mNであった。
【0090】
上記樹脂基材Aのヒートシール層が形成されていない側の表面に下地層を形成した。下地層形成用の混合液として、希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ-イソシアネートプロピルトリメチルシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、混合液A(固形分:2質量%)を調製した。上記樹脂基材Aのヒートシール層が形成されていない側の表面に、混合液Aをグラビアコート法によって塗布した。塗布後、乾燥して樹脂基材Aの上記表面上に下地層を形成した。
【0091】
次いで、上記樹脂基材Aの下地層の表面に被覆層を積層した。被覆層形成用の混合液として、水に、ポリビニルアルコール(PVA,数平均分子量:75000)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、及び、モンモリロナイト(Mon.)の4成分を、表1の参考例3と同じ質量比で配合して、混合液Bを調製した。下地層の上に、グラビアコート法によって、混合液Bを塗布した。塗布後、加熱して乾燥し、下地層の上に被覆層を形成した。このようにして、積層フィルムBを作製した。積層フィルムBの下地層の厚みは約60~70nmであり、被覆層の厚みは約0.4~0.6μmであった。
【0092】
(実施例2)
図5に示す構成の積層フィルムの引き裂き強度、シール強度及び酸素透過度を評価するため、以下のようにして図5の積層フィルム120と同様の構成の積層フィルムDを作製した。上記積層フィルムBと貼り合わせて積層フィルムDを作製するための基材C(図5における基材60)として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製、商品名:U1、厚さ:20μm)を準備した。基材Cのエルメンドルフ引き裂き法による引き裂き強度はMD:51.6mNであり、TD:26.1mNであった。積層フィルムBの被覆層と基材Cとを二液硬化型ウレタン系接着剤を介して貼り合わせることによって積層フィルムDを得た。
【0093】
積層フィルムB,Dの評価結果は表2に示すとおりであった。なお、表2におけるシール強度は、積層フィルムのヒートシール面同士をシール条件140℃、0.2MPa/1秒でシールして得た試料に対して実施した値である。
【0094】
(比較例4)
ヒートシール性を有する樹脂基材Aの代わりに、以下の積層基材を使用したことの他は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。すなわち、本比較例においては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製、商品名:U1、厚さ:20μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ製、商品名:GLC#30、厚さ:30μm)とからなる積層基材を使用した。本比較例に係る積層フィルムの評価結果は表2に示すとおりであった。
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示すとおり、実施例1,2の積層フィルムは、比較例4の積層フィルムと比較してシール強度及び引き裂き強度が十分に低かった。実施例1,2の積層フィルムは、酸素バリア性にも十分に優れる。実施例1,2の積層フィルムは、指の力で容易に開封でき且つガスバリア性を備える包装袋を効率的に製造するのに有用であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示は、指の力で容易に開封でき且つガスバリア性を備える包装袋を効率的に製造するのに有用な積層フィルム及びこれを用いて製造された包装袋を提供する。
【符号の説明】
【0098】
10…樹脂基材、10a…第1の層、10b…第2の層、10s…ヒートシール面、20…下地層、30…被覆層、40…インキ層、50…蒸着層、60…基材、100,120…積層フィルム、200…包装袋、211…シール部、214…側端部、215…非シール部、216…下端部、217…上端部、218…収容部、220…開封手段、221…ハーフカット線、224…易開封加工部、230…再封止手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7