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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20221122BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20221122BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20221122BHJP
   F21S 43/13 20180101ALI20221122BHJP
   F21S 43/50 20180101ALI20221122BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20221122BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20221122BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20221122BHJP
   F21W 103/15 20180101ALN20221122BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20221122BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20221122BHJP
   F21W 103/45 20180101ALN20221122BHJP
   F21W 106/00 20180101ALN20221122BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221122BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20221122BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/00
F21S43/14
F21S43/13
F21S43/50
F21S45/10
F21V31/00 200
F21W103:00
F21W103:15
F21W103:20
F21W103:35
F21W103:45
F21W106:00
F21Y115:10
F21Y115:15
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018086926
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019192592
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 維
(72)【発明者】
【氏名】松本 和久
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩規
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186897(JP,A)
【文献】特開平11-219604(JP,A)
【文献】実開昭60-003506(JP,U)
【文献】特開2018-052536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/00
F21S 45/10
F21V 31/00
F21W 103/00
F21W 103/15
F21W 103/20
F21W 103/35
F21W 103/45
F21W 106/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ成型品から構成されていて、かつ、相互に加圧溶着されていて灯室を区画するランプハウジングおよびランプレンズを備え、
前記ランプハウジングは、立壁部を有し、
前記立壁部の端部には、溶着フランジ部が前記灯室に対して反対側に突設されていて、
前記溶着フランジ部は、
加圧方向に対して交差する方向に設けられていて、前記ランプレンズが溶着される溶着面と、
前記溶着面に対して反対側に設けられていて、加圧溶着時に受治具に当接していて加圧力を前記立壁が前記受治具側に傾く力に分解する当接面と、
を有し、
前記溶着フランジ部の断面形状は、前記溶着面と前記当接面との間の厚さが前記灯室側から前記灯室に対して反対側に徐々に厚くなる断面形状をなし、
前記溶着フランジ部のうち前記灯室に対して反対側の部分には、溶融樹脂の流れを制御する溝部が設けられていて、かつ、前記溝部が設けられている部位には、前記受治具に当接する前記当接面の面積を維持確保する複数のリブ部が間隔を置いて設けられている、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記リブ部における前記当接面の幅は、前記立壁部の外側面と前記溶着フランジ部の側面との間の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記溝部は、前記溶着フランジ部の前記溶着面と前記当接面との間の側面から前記当接面にかけての角部分に、設けられていて、
複数の前記リブ部は、前記溝部が設けられている前記溶着フランジ部の前記側面から前記当接面にかけての前記角部分に、間隔を置いて設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記溝部は、前記溶着フランジ部の前記溶着面と前記当接面との間の側面のうち前記当接面側の部分に、設けられていて、
複数の前記リブ部は、前記溝部が設けられている前記溶着フランジ部の前記側面のうち前記当接面側の部分に、間隔を置いて設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ランプハウジングとランプレンズとが相互に加圧溶着されている車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような車両用灯具としては、たとえば、特許文献1、特許文献2に示すものがある。特許文献1の車両用灯具は、ランプボディと前面レンズとを備え、前面レンズにはシール脚が形成されていて、ランプボディには周縁フランジ部が形成されていて、前面レンズのシール脚の先端面とランプボディの周縁フランジ部の先端面とが押圧力およびレーザー溶着により溶着されているものである。
【0003】
特許文献2の車両用灯具は、ランプハウジングとランプレンズとを備え、ランプハウジングの溶着面とランプレンズの溶着面とが加圧溶着されているものである。特許文献2の車両用灯具において、ランプハウジングは、溶着時には受治具に支持されていて、立壁部と、立壁部の端部にレーザー光照射方向に対して交差する方向に設けられていてランプレンズの溶着面と相互に溶着される溶着面と、立壁部の端部に設けられていて溶着時には受治具に当接していて溶着時の加圧の荷重により立壁部が受治具側に傾く力が作用する当接面と、を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-243812号公報
【文献】特開2016-186897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の車両用灯具は、溶着時にはレーザー光の照射と同時に前面レンズをランプボディへ向けて押圧するものであるから、溶着時にはランプボディの周縁フランジ部が内側に傾くことがある。ランプボディの周縁フランジ部が内側に傾くと、前面レンズのシール脚の先端面とランプボディの周縁フランジ部の先端面とが相互にずれて、確実に溶着されない場合がある。
【0006】
特許文献2の車両用灯具は、溶着時にはランプハウジングの当接面が受治具に当接していて、その当接面が溶着時の加圧力をランプハウジングの立壁部が受治具側に傾く力として作用させるものであるから、溶着時には立壁部が内側に傾くのを防ぐことができる。しかも、特許文献2の車両用灯具は、溶着時には立壁部が受治具に支持されているので、立壁部が外側に傾くのをも防ぐことができる。これにより、特許文献2の車両用灯具は、ランプハウジングの溶着面とランプレンズの溶着面とが相互にずれるのを防ぐことができるので、ランプハウジングの溶着面とランプレンズの溶着面とが相互に確実に溶着される。
【0007】
しかしながら、特許文献2の車両用灯具は、ランプハウジングの立壁部の端部の溶着面と当接面との間の厚さが外側に徐々に厚く変わっている(偏っている)肉厚徐変部を有するものである。このため、特許文献2の車両用灯具は、肉厚徐変部における厚みがある部分(駄肉部、肉厚部、厚肉部などであって、以下、「駄肉部」と称する)と、ランプハウジングの肉厚徐変部の駄肉部以外の部分であって、厚みが駄肉部よりも薄い部分(以下、「一般の厚み部」と称する)と、による不具合(例えば、ひけ、ガス焼け(エアトラップ))が発生する場合がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、ランプハウジングの溶着面とランプレンズの溶着面とを相互に確実に溶着することができ、しかも、肉厚徐変部における駄肉部と一般の厚み部とによる不具合の発生を確実に防ぐことができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両用灯具は、それぞれ成型品から構成されていて、かつ、相互に加圧溶着されていて灯室を区画するランプハウジングおよびランプレンズを備え、ランプハウジングが、立壁部を有し、立壁部の端部には、溶着フランジ部が灯室に対して反対側に突設されていて、溶着フランジ部が、加圧方向に対して交差する方向に設けられていて、ランプレンズが溶着される溶着面と、溶着面に対して反対側に設けられていて、加圧溶着時に受治具に当接していて加圧力を立壁が受治具側に傾く力に分解する当接面と、を有し、溶着フランジ部の断面形状が、溶着面と当接面との間の厚さが灯室側から灯室に対して反対側に徐々に厚くなる断面形状をなし、溶着フランジ部のうち灯室に対して反対側の部分には、溶融樹脂の流れを制御する溝部が設けられていて、かつ、溝部が設けられている部位には、当接面を維持確保する複数のリブ部が間隔を置いて設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明の車両用灯具は、溝部が、溶着フランジ部の溶着面と当接面との間の側面から当接面にかけての角部分に、設けられていて、複数のリブ部が、溝部が設けられている溶着フランジ部の側面から当接面にかけての角部分に、間隔を置いて設けられている、ことが好ましい。
【0011】
この発明の車両用灯具は、溝部が、溶着フランジ部の溶着面と当接面との間の側面のうち当接面側の部分に、設けられていて、複数のリブ部が、溝部が設けられている溶着フランジ部の側面のうち当接面側の部分に、間隔を置いて設けられている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の車両用灯具は、ランプハウジングの溶着面とランプレンズの溶着面とを相互に確実に溶着することができ、しかも、肉厚徐変部における駄肉部と一般の厚み部とによる不具合の発生を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態を示すランプハウジングの一部斜視図である。
図2図2は、車両用灯具を示す平面図である。
図3図3は、車両用灯具を示す正面図(図2におけるIII矢視図)である。
図4図4は、ランプレンズを取り除いたランプハウジングを示す正面図(図3に対応する正面図)である。
図5図5は、車両用灯具を示す一部縦断面図(図3におけるV-V線断面図)である。
図6図6は、ランプレンズを取り除いたランプハウジングを示す一部縦断面図(図4におけるVI-VI線断面図)である。
図7図7は、ランプレンズを取り除いたランプハウジングを示す一部縦断面図(図4におけるVII-VII線断面図)である。
図8図8は、ランプレンズを取り除いたランプハウジングを示す一部縦断面図(図4におけるVIII-VIII線断面図)である。
図9図9は、ランプハウジングとランプレンズとを加圧溶着する前の状態を示す一部縦断面図である。
図10図10は、ランプハウジングとランプレンズとを加圧溶着している状態を示す一部縦断面図である。
図11図11は、ランプハウジングの変形例を示す一部縦断面図である。
図12図12は、この発明を実施しなかった場合のランプハウジングを示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。また、この明細書において、部品の名称で、別名称を()の中に表示する。さらに、この明細書において、「同方向」、「直交する方向(直交方向)」、「同等」、「平行」、「面一」は、完全な同方向、直交する方向(直交方向)、同等、平行、面一ではなく、製造寸法誤差や公差なども含まれる。さらにまた、図面は、この発明にかかる車両用灯具を示す概略図であるから、この発明にかかる車両用灯具の詳細な部分は、図面においては省略されている。
【0015】
(実施形態の構成の説明)
図1図11は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態を示す。以下、この実施形態にかかる車両用灯具の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態にかかる車両用灯具である。
【0016】
(車両用灯具1の説明)
車両用灯具1は、この例では、リアコンビネーションランプである。車両用灯具1は、車両(図示せず)の後部の左右両側にそれぞれ装備される。この例の車両用灯具1は、車両の後部の左側に装備される。また、この例の車両用灯具1は、可動側のトランクドアーに対して固定側の車体に装備される。さらに、この例の車両用灯具1の平面形状は、車両の上方側から見た図である図2に示すように、車両の後部のトランクルームによる制約を受けて、車両の後部から側部(左側部)にかけて回り込んだ形状をなし、かつ、薄型形状をなす。
【0017】
車両用灯具1は、図2図3図5に示すように、ランプハウジング2と、ランプレンズ(たとえば、素通しのアウターカバー、アウターレンズなど)3と、光源4と、を備えるものである。ランプハウジング2とランプレンズ3とは、たとえば、赤外線レーザー溶着機など(図示せず)のレーザー溶着および加圧により溶着されている。
【0018】
赤外線レーザー溶着機は、図10に示すように、受治具5D(たとえば、下治具)と、押圧治具5U(たとえば、上治具)と、レーザー光L(たとえば、赤外線レーザー光などであって、図10中の白抜き矢印を参照)を照射するレーザー照射装置(図示せず)と、圧力F(図10中の実線矢印を参照)を加える加圧装置(図示せず)と、を備えるものである。レーザー照射装置から照射されるレーザー光Lの照射方向と、加圧装置により加えられる圧力Fの加圧方向とは、同方向である。
【0019】
受治具5Dは、図10に示すように、レーザー光Lの照射方向および圧力Fの加圧方向に対して交差する当接面50と、レーザー光Lの照射方向および圧力Fの加圧方向と同方向の支持面51と、を有する。
【0020】
この例の赤外線レーザー溶着機は、ランプハウジング2とランプレンズ3との全ての溶着ラインL1(図1を参照)に、レーザー光Lを一括に照射しながら圧力Fを一括に加えることにより、ランプハウジング2とランプレンズ3とを全ての溶着ラインL1において同時に溶着するものである。なお、赤外線レーザー溶着機としては、この例の一括照射方式の他に、スキャン方式(走査式)であっても良い。
【0021】
相互に加圧溶着されたランプハウジング2とランプレンズ3とにより、灯室10が区画される。灯室10内には、光源4が配置されている。なお、灯室10内には、光源4以外に、図示していないたとえばインナーレンズ、インナーパネル(インナーハウジング)、導光部材(ライトガイド、導光体)およびリフレクタ部材(インナーハウジング)などが配置されている場合がある。
【0022】
(ランプハウジング2の説明)
ランプハウジング2は、たとえば、光不透過性の部材(不透明な熱可塑性樹脂部材など)から構成されている。このために、ランプハウジング2は、レーザー光Lを透過させずに吸収するものである。ランプハウジング2は、溶着時には受治具5Dに支持されている。
【0023】
ランプハウジング2は、図1図2図4図10に示すように、主に車両の後部から側部(左側部)にかけて回り込んだ部分20が開口し、その他の部分21、22が閉塞した中空形状をなす。この結果、ランプハウジング2は、開口部20と、閉塞部21、22と、を有する。閉塞部は、開口部20と対向する底部21と、底部21の周囲に立設する立壁部22と、から構成されている。
【0024】
立壁部22の開口部20側の端部には、溶着フランジ部23がレーザー光Lの照射方向および圧力Fの加圧方向に対して交差する方向(この例では、直交する方向)に、立壁部22の内側(灯室10側)から外側(灯室10に対して反対側)にかけて一体に設けられている。
【0025】
溶着フランジ部23の端面(開口部20側の端面)には、溶着面24がレーザー光Lの照射方向および圧力Fの加圧方向に対して交差する方向(この例では、直交する方向)に設けられている。溶着面24の内側(灯室10側)の部分と外側(灯室10に対して反対側)の部分とには、ランプレンズ3の溶着面32との溶着位置を決める位置決めリブ25、26がそれぞれ一体に設けられている。
【0026】
溶着フランジ部23の溶着面24に対して反対側の端面(底部21側の端面)には、当接面27がレーザー光Lの照射方向に対して交差する方向に設けられている。当接面27は、溶着面24に対して、内側から外側にかけて角度θ°(図9参照)で開口部20から底部21側に傾斜している。
【0027】
図10に示すように、溶着面24は、圧力Fの加圧方向に対して直交している。一方、当接面27は、溶着面24に対して角度θ°分傾斜している。また、受治具5Dの当接面50も、当接面27と同様に、圧力Fの加圧方向の直交方向に対して角度θ°分傾斜している。このために、相互に当接するランプハウジング2の当接面27と受治具5Dの当接面50とにおいて、圧力Fと同等の大きさの力すなわち加圧力F0は、第1分力F1と第2分力F2とに分解される。
【0028】
第1分力F1は、当接面27、50に対して直交する方向に、ランプハウジング2側から受治具5D側に作用する。この結果、第1分力F1は、ランプハウジング2の溶着フランジ部23を受治具5D側に押し付ける力として作用する。これにより、溶着フランジ部23の当接面27は、受治具5Dの当接面50に当たって支持され、受治具5Dの当接面50は、溶着フランジ部23の当接面27を介して圧力Fを第1分力F1として受ける。
【0029】
第2分力F2は、当接面27、50の傾斜に沿って内側から外側に作用する。この結果、第2分力F2は、立壁部22を受治具5D側に傾ける力として作用する。これにより、立壁部22の外側面(灯室10に対して反対側の側面)28は、受治具5Dの支持面51に当たって支持され、受治具5Dの支持面51は、立壁部22の外側面28を介して圧力Fを第2分力F2として受ける。
【0030】
このように、溶着フランジ部23の当接面27は、加圧溶着時に受治具5Dの当接面50に当接していて、加圧力F0を立壁部22が受治具5D側に傾く力F2に分解するものである。なお、受治具5Dの当接面50と支持面51とは、ランプハウジング2の溶着フランジ部23の当接面27と立壁部22の外側面28とを当接支持するように、当接面27と外側面28とに合わせて形成されている。
【0031】
(溝部61、62およびリブ部71、72の説明)
ランプハウジング2の立壁部22の溶着フランジ部23の断面形状は、図1図5図10に示すように、溶着面24と当接面27との間の厚さが内側(灯室10側)から外側(灯室10に対して反対側)に徐々に厚くなる断面形状をなす。すなわち、溶着フランジ部23は、溶着面24と当接面27との間の厚さが外側に徐々に厚く変わっている(偏っている)肉厚徐変部を有するものである。
【0032】
図1図2図5図10に示すように、肉厚徐変部を有する溶着フランジ部23のうち灯室10に対して反対側の部分の駄肉部には、溶融樹脂の流れを制御する溝部61、62が設けられている。また、溝部61、62が設けられている部位には、当接面27を維持確保する複数のリブ部71、72が間隔を置いて設けられている。この間隔は、ランプハウジング2の当接面27が受治具5Dの当接面50に当接する面積を十分維持確保することができる程度の間隔であって、任意である。
【0033】
溝部のうち第1溝部61は、溶着フランジ部23の溶着面24と当接面27との間の側面29から当接面27にかけての角部分に、溶着ラインL1に沿ってかつ溶着ラインL1と平行に設けられている。第1溝部61の断面形状は、四角形形状をなす。第1溝部61における当接面27の幅W1は、図7に示すように、立壁部22の外側面28と第1溝部61の底面との間の寸法を有する。
【0034】
複数のリブ部のうち第1リブ部71は、第1溝部61が設けられている溶着フランジ部23の側面29から当接面27にかけての角部分に、溶着ラインL1の方向において間隔を置いて一体に設けられている。第1リブ部71の外側面は、側面29と面一である。第1リブ部71における当接面27の幅Wは、図6に示すように、立壁部22の外側面28と溶着フランジ部23の側面29との間の寸法を有する。
【0035】
溝部のうち第2溝部62は、溶着フランジ部23の溶着面24と当接面27との間の側面29のうち当接面27側の部分に、溶着ラインL1に沿ってかつ溶着ラインL1と平行に設けられている。第2溝部62は、側面29の中間部分が側面29に対して内側に凹んだ溝である。第2溝部62の断面形状は、三角形形状をなす。第2溝部62における当接面27の幅W2は、図8に示すように、図6に示す第1リブ部71における当接面27の幅Wと同等であり、立壁部22の外側面28と溶着フランジ部23の側面29との間の寸法を有する。
【0036】
複数のリブ部のうち第2リブ部72は、第2溝部62が設けられている溶着フランジ部23の側面29のうち当接面27側の部分に、溶着ラインL1の方向において間隔を置いて一体に設けられている。第2リブ部72の外側面は、上下の側面29と面一である。第2リブ部72における当接面27の幅Wは、図6に示すように、第1リブ部71における当接面27の幅Wと同等であり、立壁部22の外側面28と溶着フランジ部23の側面29との間の寸法を有する。
【0037】
(ランプレンズ3の説明)
ランプレンズ3は、たとえば、光透過性の部材(透明な熱可塑性樹脂部材など)から構成されている。このために、ランプレンズ3は、レーザー光Lを透過させるものである。ランプレンズ3は、溶着時にはレーザー光Lが照射されかつレーザー光Lの照射方向と同方向に圧力Fが加えられている。
【0038】
ランプレンズ3は、図2図3図5図9図10に示すように、ランプハウジング2の開口部20および溶着フランジ部23を覆う大きさを有するレンズ部30から構成されている。レンズ部30の外面(灯室10に対して反対側の面)の意匠面は、車両の後部の意匠面に沿う。
【0039】
レンズ部30の内面(灯室10側の面)には、溶着凸部31がレーザー光Lの照射方向および圧力Fの加圧方向と同方向に、ランプハウジング2の溶着フランジ部23に対応して一体に設けられている。溶着凸部31の幅(肉厚)は、ランプハウジング2の内側の位置決めリブ25と外側の位置決めリブ26との間の空間の幅と同等であるかもしくは小さい。
【0040】
溶着凸部31の端面(レンズ部30に対して反対側の端面)には、溶着面32がレーザー光Lの照射方向および圧力Fの加圧方向に対して交差する方向(この例では、直交する方向)に設けられている。溶着面32の幅は、ランプハウジング2の内側の位置決めリブ25と外側の位置決めリブ26との間の溶着面24の幅と同等かもしくは小さい。
【0041】
(ランプハウジング2とランプレンズ3との溶着の説明)
まず、ランプハウジング2を受治具5Dにセットする。すなわち、ランプハウジング2の当接面27を受治具5Dの当接面50に当接させる。かつ、ランプハウジング2の外側面28を受治具5Dの支持面51に当接させる。
【0042】
つぎに、ランプレンズ3の溶着面32をランプハウジング2の溶着面24に載置させる。このとき、ランプレンズ3の溶着面32とランプハウジング2の溶着面24とは、図9中の一点鎖線にて示すように、平行である。このために、ランプレンズ3の溶着面32とランプハウジング2の溶着面24とは、面一もしくはほぼ面一に当たっている。それから、レーザー照射装置からレーザー光Lを溶着面24、32に全ての溶着ラインL1に亘って一括照射しながら、加圧装置で押圧治具5Uを介して圧力Fを溶着面24、32に全ての溶着ラインL1に亘って一括に加える。
【0043】
すると、レーザー光Lは、ランプレンズ3のレンズ部30の外面からランプレンズ3中に入射する。ランプレンズ3中に入射したレーザー光Lは、ランプレンズ3のレンズ部30および溶着凸部31を透過して、ランプレンズ3の溶着面32からランプハウジング2の溶着面24に達する。ランプハウジング2の溶着面24に達したレーザー光Lは、ランプハウジング2の溶着面24において吸収される。
【0044】
これにより、ランプハウジング2の溶着面24は、加熱されて溶融する。ランプハウジング2の溶着面24の溶融熱により、ランプレンズ3の溶着面32も溶融する。ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とは、相互に溶融状態となる。この状態において、圧力Fにより、ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とは、相互に溶着する。相互に加圧溶着されるランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とは、図1に示す溶着ラインL1を形成する。
【0045】
(光源4の説明)
光源4は、図3図4に示すように、この例では、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型発光素子(半導体発光素子)を1個もしくは複数個有する。光源4は、発光部40と、取付部41と、から構成されている。取付部41は、ランプハウジング2の底部21に取り付けられている。この結果、光源4は、灯室10内に配置される。
【0046】
光源4は、リアコンビネーションランプのストップランプ、テールランプ、サイドマーカーランプ、バックアップランプ、ターンシグナルランプ、クリアランスランプ、ライセンスプレートランプなどのランプユニットを構成する。リアコンビネーションランプ内には、複数のランプユニットが配置されている。なお、ランプ内に1個のランプユニットが配置されている場合もある。
【0047】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0048】
光源4の発光部40を点灯発光させる。すると、発光部40から放射された光(図示せず)は、ランプレンズ3のレンズ部30を透過して外部に所定のランプ機能の配光パターン(図示せず)で照射される。
【0049】
ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とは、相互に溶着されているので、灯室10内は、気密もしくは水密に保たれている。
【0050】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0051】
この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とを相互に確実に溶着することができ、しかも、肉厚徐変部における駄肉部と一般の厚み部とによる不具合の発生を確実に防ぐことができる。
【0052】
すなわち、この実施形態にかかる車両用灯具1は、溶着時にはランプハウジング2の当接面27が受治具5Dの当接面50に当接していて、その当接面27、50が、図10に示すように、溶着時の加圧力F0をランプハウジング2の立壁部22が受治具5D側に傾く第2分力F2に分解し、その第2分力F2が立壁部22に作用する。このために、この実施形態にかかる車両用灯具1は、溶着時にはランプハウジング2の立壁部22が内側に傾くのを防ぐことができる。
【0053】
しかも、この実施形態にかかる車両用灯具1は、溶着時にはランプハウジング2の立壁部22の外側面28が受治具5Dの支持面51に当接されているので、ランプハウジング2の立壁部22が外側に傾くのをも防ぐことができる。これにより、この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とが相互にずれるのを防ぐことができるので、ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とが相互に確実に溶着される。この結果、この実施形態にかかる車両用灯具1は、溶着不良の発生を防ぐことができる。
【0054】
この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプレンズ3に溶着凸部31をレーザー光Lの照射方向と同方向に設け、ランプレンズ3の溶着凸部31の端面に溶着面32を設け、一方、ランプハウジング2の立壁部22の端部に溶着フランジ部23をレーザー光Lの照射方向に対して交差する方向に設け、ランプハウジング2の溶着フランジ部23の端面に溶着面24を設け、ランプハウジング2の溶着フランジ部23の溶着面24と反対側の端面に当接面27を設けるものである。この結果、この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とをさらに確実に溶着させることができ、溶着不良の発生をさらに確実に防ぐことができる。
【0055】
この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプハウジング2の溶着面24にランプレンズ3の溶着面32との溶着位置を決める位置決めリブ27、28を設けるものである。この結果、この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とを所定の位置において確実に溶着させることができ、溶着不良の発生をさらに確実に防ぐことができる。
【0056】
特に、この実施形態にかかる車両用灯具1は、肉厚徐変部を有する溶着フランジ部23のうち灯室10に対して反対側の部分の駄肉部に、溶融樹脂の流れを制御する溝部61、62を設けたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用灯具1は、溶着フランジ部23の駄肉部において、溶融樹脂の流れを制御することができるので、溶着フランジ部23の駄肉部と一般の厚み部とによる不具合、例えば、ひけ8やガス焼け80の発生を確実に防ぐことができる。
【0057】
ここで、駄肉部に溝部61、62を設けなかった場合、すなわち、この発明を実施しなかった場合のランプハウジング2Aについて、図12を参照して説明する。このランプハウジング2Aは、肉厚徐変部を有する溶着フランジ部23のうち灯室10に対して反対側の部分に駄肉部を有するものである。このため、このランプハウジング2Aは、射出成型時において、駄肉部の溶融樹脂の流速が一般の厚み部の溶融樹脂の流速よりも速くなるので、図12中の破線に示すように、溶着面24にひけ8が発生したり、溶着フランジ部23中にガス焼け80が発生したりする場合がある。なお、図12中の破線で示すひけ8、ガス焼け80は、必ずしも発生するものではない。ひけ8、ガス焼け80が発生する場合であっても、ひけ8、ガス焼け80は、図12中の破線に示す箇所に発生するものではなく、図12中の破線に示す箇所以外にも発生する場合がある。
【0058】
これに対して、この実施形態にかかる車両用灯具1は、駄肉部に溝部61、62を設けたので、駄肉部の溶融樹脂の流速を一般の厚み部の溶融樹脂の流速と同等に制御することができ、ひけ8やガス焼け80の発生を確実に防ぐことができる。
【0059】
しかも、この実施形態にかかる車両用灯具1は、溝部61、62が設けられている部位に、当接面27を維持確保する複数のリブ部71、72を、間隔を置いて設けたものである。この結果、この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプハウジング2の当接面27が受治具5Dの当接面50に当接する面積を十分維持確保することができるので、圧力Fおよび加圧力F0をランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32との溶着に十分に寄与させることができる。これにより、この実施形態にかかる車両用灯具1は、ランプハウジング2の溶着面24とランプレンズ3の溶着面32とをさらに確実に溶着させることができ、溶着不良の発生をさらに確実に防ぐことができる。
【0060】
(実施形態以外の例の説明)
なお、この実施形態においては、リアコンビネーションランプについて説明するものである。ところが、この発明においては、リアコンビネーションランプ以外の車両用灯具、たとえば、フロントコンビネーションランプ、単独のランプ、室内灯などに使用しても良い。
【0061】
また、この実施形態においては、ランプハウジング2の溶着面24の内側の部分と外側の部分とに位置決めリブ27、28を設けるものである。ところが、この発明においては、図11に示す変形例のランプハウジング200のように、位置決めリブ27、28を設けなくても良い。あるいは、内側の位置決めリブ27、外側の位置決めリブ28のいずれか一方を設けても良い。
【0062】
さらに、この実施形態においては、ランプハウジング2とランプレンズ3とを、赤外線レーザー溶着機などのレーザー溶着および加圧により溶着するものである。ところが、この発明においては、レーザー溶着以外に、超音波溶着や熱板溶着などの溶着および加圧により、ランプハウジング2とランプレンズ3とを溶着するものであっても良い。
【0063】
さらにまた、この実施形態においては、第1溝部61の断面形状が四角形形状をなし、第2溝部62の断面形状が三角形形状をなすものである。ところが、この発明においては、溝部の断面形状や大きさや寸法およびリブ部の寸法などを特に限定しない。すなわち、溝部の断面形状や大きさ、また、溝部の溶着ラインL1方向の長さ等の寸法、および、リブ部の溶着ラインL1方向の長さ(幅)などの寸法は、駄肉部の厚さに対応して調節する。これにより、駄肉部のいかなる厚さにも対応して、駄肉部の溶融樹脂の流速を一般の厚み部の溶融樹脂の流速と同等に制御して、ひけ8やガス焼け80の発生を確実に防ぐことができる。
【0064】
なお、この発明は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 車両用灯具
10 灯室
2 ランプハウジング
20 開口部
21 底部(閉塞部)
22 立壁部(閉塞部)
23 溶着フランジ部
24 溶着面
25 内側の位置決めリブ
26 外側の位置決めリブ
27 当接面
28 外側面
29 側面
3 ランプレンズ
30 レンズ部
31 溶着凸部
32 溶着面
4 光源
40 発光部
41 取付部
5D 受治具
5U 押圧治具
50 当接面
51 支持面
61 第1溝部
62 第2溝部
71 第1リブ部
72 第2リブ部
8 ひけ
80 ガス焼け
F 圧力
F0 加圧力
F1 第1分力
F2 第2分力
L レーザー光
L1 溶着ライン
W、W1、W2 幅
θ° 角度


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12