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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】超音波装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20221122BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
A61B8/00
H04R17/00 332A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018108366
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019213075
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博則
(72)【発明者】
【氏名】小島 力
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-070473(JP,A)
【文献】特開平11-205899(JP,A)
【文献】特開2005-162423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0143919(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に超音波を送信する複数の超音波素子が配列する基板を備え、
前記複数の超音波素子は互いに離間して配列され、
隣り合う前記超音波素子の間には配線が設けられ、
前記超音波素子の前記第1方向側には前記基板の残響振動を低減する残響低減膜が配置
され、
前記残響低減膜には隣り合う前記超音波素子の間に溝部が配置され
前記溝部が前記配線上に位置していることを特徴とする超音波装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波装置であって、
前記残響低減膜の材質はシリコーンゴムを含むことを特徴とする超音波装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波装置であって、
前記残響低減膜には前記超音波素子と対向する場所に凹部が配置されていることを特徴
とする超音波装置。
【請求項4】
媒体の搬送路に設置され、前記媒体が2枚以上重なっているか否かを検出する重送検出
装置を備え、
前記重送検出装置は請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波装置を有することを特
徴とする電子機器。
【請求項5】
超音波を送信する超音波送信器と、
前記超音波送信器が送信した超音波を受信する超音波受信器と、を備え、
前記超音波送信器は請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波装置を有することを特
徴とする電子機器。
【請求項6】
第1方向側から進行する超音波を受信する複数の超音波素子が配列する基板を備え、
前記複数の超音波素子は互いに離間して配列され、
隣り合う前記超音波素子の間には配線が設けられ、
前記超音波素子の前記第1方向側には前記基板の残響振動を低減する残響低減膜が配置
され、
前記残響低減膜には隣り合う前記超音波素子の間に溝部が配置され
前記溝部が前記配線上に位置していることを特徴とする超音波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被測定物までの距離を測定する超音波装置が活用されている。超音波装置は超音波を送信して反射波を受信する。他にも、超音波装置から超音波を射出してシート状の媒体を通過した超音波の強度を用いて媒体の枚数を測定する装置が活用されている。これらの装置に用いられる超音波装置が特許文献1に開示されている。それによると、超音波装置にはSOI基板(Silicon on Insulator)が用いられている。そして、SOI基板の一部に凹部が形成され、凹部ではSOI基板が薄くなっている。この薄い部分の上に超音波素子が配置されている。この薄い部分を振動膜やメンブレンという。
【0003】
超音波素子は圧電薄膜を電極で挟んだ構造をしている。この構造の超音波素子は超音波の送信と受信とに用いることができる。超音波を送信するとき、電極間に電圧を印加すると圧電薄膜が撓む。電極間に所定の電圧波形を印加する。このとき、メンブレンが振動する。電極間への電圧の印加を停止するとき、メンブレンの振動が減衰して停止する。メンブレンの振動の減衰にともなって送信される超音波が減衰する。超音波素子を覆って薄い減衰吸収膜が設置されている。この減衰吸収膜はメンブレンの振動吸収を得ることができ残響振動を抑制する。このため、メンブレンの振動が短時間で減衰するので、送信される超音波が短時間に減衰する。
【0004】
超音波素子が超音波を受信するときには、超音波によりメンブレンが振動する。そして、圧電薄膜が撓む。このとき、電極間に電圧が発生する。電極間の電圧を検出することにより、超音波素子が超音波を受信したことを認識できる。このとき、減衰吸収膜が残響振動を抑制するので、超音波を超音波装置は応答性良く電気信号に変換できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-37006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の超音波装置では超音波素子を覆って減衰吸収膜としての残響低減膜が設置されている。超音波素子を複数配置した構造のとき減衰吸収膜を伝わって超音波が伝播する。このとき、超音波素子は減衰吸収膜を伝播する超音波の影響を受ける。超音波素子が超音波を送信する。このとき、超音波素子が送信する超音波と減衰吸収膜内を伝播する超音波とが干渉する。超音波の干渉により超音波素子から送信される超音波の強度が低下する。また、超音波素子が超音波を受信する。このとき、超音波素子が受信する超音波と減衰吸収膜内を伝播する超音波とが干渉する。超音波の干渉により超音波素子が受信する超音波の強度が低下する。そこで、メンブレンの振動を吸収する減衰吸収膜に沿う超音波の伝播を低減し、超音波素子が配列しても品質よく超音波を送信または受信することができる超音波装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の超音波装置は、第1方向に超音波を送信する超音波素子が配列する基板を備え、前記超音波素子の前記第1方向側には前記基板の残響振動を低減する残響低減膜が配置され、前記残響低減膜には隣り合う前記超音波素子の間に溝部が配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記の超音波装置では、前記残響低減膜の材質はシリコーンゴムを含むことが好ましい。
【0009】
上記の超音波装置では前記残響低減膜には前記超音波素子と対向する場所に凹部が配置されていることが好ましい。
【0010】
本願の電子機器は、媒体の搬送路に設置され、前記媒体が2枚以上重なっているか否かを検出する重送検出装置を備え、前記重送検出装置は上記に記載の超音波装置を有することを特徴とする。
【0011】
本願の電子機器は、超音波を送信する超音波送信器と、前記超音波送信器が送信した超音波を受信する超音波受信器と、を備え、前記超音波送信器は上記に記載の超音波装置を有することを特徴とする。
【0012】
本願の超音波装置は、第1方向側から進行する超音波を受信する超音波素子が配列する基板を備え、前記超音波素子の前記第1方向側には前記基板の残響振動を低減する残響低減膜が配置され、前記残響低減膜には隣り合う前記超音波素子の間に溝部が配置されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態にかかわる超音波装置の構造示す模式平面図。
図2】超音波素子の構成を示す要部模式平面図。
図3】超音波素子の構成を示す要部模式側断面図。
図4】超音波素子の構成を示す要部模式側断面図。
図5】残響低減膜内を伝播する超音波を説明するための模式図。
図6】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図7】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図8】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図9】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図10】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図11】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図12】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図13】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図14】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図15】超音波装置の製造方法を説明するための模式図。
図16】第2の実施形態にかかわる超音波素子の構成を示す要部模式平面図。
図17】超音波素子の構成を示す要部模式側断面図。
図18】超音波素子の構成を示す要部模式側断面図。
図19】残響低減膜内を伝播する超音波を説明するための模式図。
図20】超音波素子の動作を説明するための模式側断面図。
図21】超音波素子の動作を説明するための模式側断面図。
図22】第3の実施形態にかかわるスキャナーの構造を示す模式側断面図。
図23】第4の実施形態にかかわる印刷装置の構造を示す模式側断面図。
図24】第5の実施形態にかかわる距離測定装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態では、特徴的な超音波装置の例とこの超音波装置の製造方法の例とについて、図に従って説明する。第1の実施形態にかかわる超音波装置について図1図5に従って説明する。超音波装置は超音波トランスデューサーデバイスともいわれる装置である。
【0016】
図1は、超音波装置の構造示す模式平面図である。図1に示すように、超音波装置1は基板2を備えている。基板2は矩形であり隣り合う2辺が直交する。1辺が延びている方向をX方向とし、X方向の辺の隣の1辺が延びている方向をY方向とする。基板2の厚み方向をZ方向とする。基板2の-Y方向側には外部端子3がX方向に配列して設置されている。
【0017】
外部端子3の+Y方向側には基板2上にマトリックス状に配列する複数の超音波素子4が配置されている。超音波素子4の行数及び列数は特に限定されない。超音波装置1をセンサーとして利用するときには行数を10行~100行、列数を10列~100列にするのが好ましい。感度良く検出可能な超音波の強度にすることができる。本実施形態では説明を分り易くするために、例えば、15行15列の超音波素子4が配置されている設定とする。
【0018】
外部端子3の内-X方向から数えて1個目から15個目までが信号端子3aである。そして、各列の超音波素子4と信号端子3aとが信号配線5により電気的に接続されている。外部端子3の内最も+X方向側の端子が共通端子3bである。各超音波素子4の+X方向には共通端子3bから+Y方向に長い第1共通配線6が設置され、第1共通配線6は超音波素子4の+Y方向側において、X方向に長い配線になっている。そして、第1共通配線6は超音波素子4の+Y方向側の部分が分岐し各超音波素子4と電気的に接続している。第1共通配線6により各超音波素子4は共通端子3bと接続されている。
【0019】
図2は超音波素子の構成を示す要部模式平面図である。図3及び図4は超音波素子の構成を示す要部模式側断面図である。図3図2のAA線に沿う断面側から見た図であり、図4図2のBB線に沿う断面側から見た図である。図2図3及び図4に示すように、基板2には超音波素子4と対向する場所に凹部2aが形成されている。凹部2aは超音波素子4と同じくマトリックス状に配置されている。凹部2aの大きさは特に限定されないが、本実施形態では例えば、1辺の長さが150μmから250μmの正方形になっている。X方向及びY方向で隣り合う凹部2aの間の部分を梁部2bとする。梁部2bはX方向に長い部分とY方向に長い部分とが直交している。基板2の材質は特に限定されず強度があり微細な加工ができれば良い。本実施形態では、例えば、基板2にシリコン基板が用いられている。
【0020】
基板2の+Z方向側には基板2に接して振動膜7が設置され、振動膜7は基板2の一部になっている。凹部2aでは振動膜7が振動しやすくなっている。振動膜7の材質は振動特性の良い材質であれば良く特に限定されない。他にも、振動膜7は絶縁性があると好ましい。本実施形態では、例えば、振動膜7の材質に2酸化シリコンや2酸化ジルコニウムを用いている。振動膜7に絶縁性がないときには振動膜7上に絶縁膜を設置しても良い。振動膜7はメンブレンともいう。
【0021】
振動膜7上には下電極8、圧電体9及び上電極10が重ねて設置されている。下電極8、圧電体9及び上電極10により超音波素子4が構成されている。下電極8と上電極10との間に駆動電圧を印加する。駆動電圧により圧電体9が撓む。超音波素子4は図中Z方向に超音波12を送信する。超音波素子4が超音波12を送信するZ方向を第1方向13とする。基板2には第1方向13に超音波12を送信する超音波素子4が配列されている。基板2に配列された超音波素子4は第1方向13側から進行する超音波12aを受信することもできる。下電極8は圧電体9に覆われており、Y方向に並ぶ下電極8は図2に示す配線11により接続されている。配線11は信号配線5を介して信号端子3aと電気的に接続されている。
【0022】
圧電体9の種類は特に限定されないがPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)素子やPDVF(ポリフッ化ビニリデン)素子等の圧電体を用いることができる。本実施形態では圧電体9にPZT素子を用いている。下電極8、上電極10の材質は導電性があり安定性のある材質であれば良く本実施形態では、例えば、イリジウムの膜とプラチナの膜とが積層された膜を用いている。プラチナの膜上にPZT素子を安定して形成することができる。
【0023】
超音波素子4における上電極10の+Z方向側には保護膜14が配置されている。保護膜14は圧電体9、下電極8、上電極10の一部を覆う。保護膜14は圧電体9に水分が進入することを防止し、塵による配線間のリークを防止する。保護膜14の材質には酸化シリコンや酸化アルミニウム等の無機物の絶縁膜を用いる。本実施形態では、例えば、保護膜14である無機絶縁膜の材質に酸化アルミニウムを採用している。
【0024】
超音波素子4の第1方向13側には基板2の残響振動を低減する残響低減膜15が配置されている。残響低減膜15は保護膜14に重ねて設置されている。残響低減膜15は振動膜7を含む基板2の振動の残響を低減する。残響低減膜15の材質はシリコーンゴムを含む。シリコーンゴムはヤング率が小さいので、残響低減膜15は振動膜7を含む基板2及び超音波素子4の動きを阻害せずに残響振動を低減することができる。
【0025】
駆動電圧にはバースト波形が用いられる。バースト波形では矩形波形が反復する区間と直流波形の区間とが交互に組み合わされる。矩形波形が反復する区間では超音波素子4が振動する。直流波形の区間では超音波素子4の振動が減衰される。直流波形の区間で超音波素子4の振動が残留するとき、残留した振動と次に矩形波形が反復する駆動波形で生じる振動とが合成させる。残留した振動の位相と反復する矩形波形で駆動される振動の位相が異なるとき、振動の強度が低下する。
【0026】
残響低減膜15が直流波形の区間で超音波素子4の振動を低減する。従って、残留した振動が矩形波形で駆動される振動の強度を低下させることを低減することができる。
【0027】
超音波素子4は超音波12aを受信して振動する。このときにも、超音波12aを受信して振動した後で振動が減衰しないと、所定の時間経た後に受信して生ずる振動と合成される。このときにも、残留した振動の位相と受信して生ずる振動の位相が異なるとき、振動の強度が低下する。そして、超音波12aを受信しない区間で残響低減膜15が超音波素子4の振動を低減する。従って、残留した振動が受信する超音波12aによる振動の強度を低下させることを残響低減膜15が抑制することができる。
【0028】
図3に示すように、超音波素子4の+X方向側及び-X方向側の梁部2bの+Z方向側では、振動膜7に重ねて配線16が配置されている。配線16はY方向に長い配線である。配線16の材質は下電極8の材質と同じである。配線16は下電極8と同じ工程で形成されるが、下電極8とは電気的に分離されている。
【0029】
配線16と重ねて配線10aが配置されている。配線10aはX方向に隣り合う上電極10を電気的に接続する。さらに、配線10aと重ねて第2共通配線17が配置されている。第2共通配線17はY方向に長い配線である。配線16と第2共通配線17との間に配線10aが配置されている。配線10aは配線16及び第2共通配線17と上電極10とを電気的に接続する。配線10aの材料は上電極10と同じ材料が用いられている。配線16及び第2共通配線17は第1共通配線6を介して共通端子3bと電気的に接続されている。配線16は第2共通配線17と共に電気信号を送信するので、第2共通配線17だけが配置されたときより配線16は電気抵抗を低減する。
【0030】
第2共通配線17の+Z方向側には残響低減膜15が配置されている。残響低減膜15は超音波素子4から続いている。そして、残響低減膜15には隣り合う超音波素子4間に溝部18が配置されている。溝部18のある場所では残響低減膜15の厚みが薄くなっている。または、溝部18のある場所には残響低減膜15が無い状態になっている。
【0031】
図4に示すように、超音波素子4の+Y方向側及び-Y方向側の梁部2bの+Z方向側では、振動膜7に重ねて配線16が配置されている。配線16はX方向に長い配線である。梁部2bと同様に、配線16はX方向に長い部分とY方向に長い部分とが直交している。
【0032】
配線16と重ねて第2共通配線17が配置されている。第2共通配線17はX方向に長い配線である。配線16と同様に、第2共通配線17はX方向に長い部分とY方向に長い部分とが直交している。Y方向においても配線16は第2共通配線17と共に電気信号を送信するので、第2共通配線17だけが配置されたときより配線16は電気抵抗を低減する。
【0033】
Y方向においても残響低減膜15は超音波素子4から続いている。そして、残響低減膜15には隣り合う超音波素子4間に溝部18が配置されている。溝部18のある場所では残響低減膜15の厚みが薄くなっている。または、溝部18のある場所には残響低減膜15が無い状態になっている。
【0034】
図2に示すように、Z方向から見た平面視で残響低減膜15は四角形である。そして、X方向においてもY方向においても残響低減膜15には隣り合う超音波素子4間に溝部18が配置されている。
【0035】
図5は残響低減膜内を伝播する超音波を説明するための模式図である。図5に示すように、超音波素子4から第1方向13に超音波12が送信される。超音波素子4から送信された超音波12の一部は第1方向13と交差する方向に進行する。このとき、超音波12の一部が残響低減膜15の内部を伝播して進行する。そして、超音波12は溝部18に到達する。溝部18には空気が入っており、溝部18では残響低減膜15と屈折率が大きく異なる。つまり、残響低減膜15と空気とでは超音波12の伝播速度が異なる。
【0036】
このため、一部の超音波12は溝部18で反射して方向をかえる。一部の超音波12は残響低減膜15から空気中にでるが、空気中の進行方向は多方向に亘る。従って、送信した超音波素子4の隣りの超音波素子4へは超音波12が到達し難い。このため、超音波素子4は隣の超音波素子4が送信した超音波12の影響を受け難い。従って、超音波素子4は配列しても品質よく超音波12を送信することができる。
【0037】
図中、残響低減膜15のX方向に進行する超音波12の挙動を説明した。残響低減膜15のY方向に進行する超音波12においても、一部の超音波12は溝部18で反射する。一部の超音波12は残響低減膜15から空気中にでるが、空気中の進行方向は多方向に亘る。従って、送信した超音波素子4の隣りの超音波素子4へは超音波12が到達し難い。このため、超音波素子4は隣の超音波素子4が送信した超音波12の影響を受け難い。従って、超音波素子4は配列しても品質よく超音波12を送信することができる。
【0038】
超音波素子4が超音波12aを受信するときにも残響低減膜15に到達した超音波12aの一部が残響低減膜15の内部を進行する。このとき、一部の超音波12aは溝部18で反射して方向をかえる。一部の超音波12aは残響低減膜15から空気中にでるが、空気中の進行方向は多方向に亘る。従って、受信した超音波素子4の隣りの超音波素子4へは超音波12aが到達し難い。このため、超音波素子4は隣の超音波素子4が受信した超音波12aの影響を受け難い。従って、超音波素子4は配列しても品質よく超音波12aを受信することができる。
【0039】
溝部18の幅は特に限定されないが本実施形態では、例えば、30μm以上40μm以下になっている。このとき、超音波12が残響低減膜15を伝播して隣りの超音波素子4へは超音波12が到達することが抑制される。そして、溝部18の幅が狭いので超音波装置1の面積が広くなることを低減できる。
【0040】
図6図15は超音波装置の製造方法を説明するための模式図である。次に、図6~15を用いて、超音波装置1の製造方法について説明する。図6は振動板設置工程を説明するための模式図である。図6に示すように、ベース板21を用意する。ベース板21はシリコン基板である。そして、ベース板21上に振動膜7にする層を設置する。まず、ベース板21の表面に酸化シリコン層(SiO2)を積層し、酸化シリコン層の表面に2酸化ジルコニウム層(ZrO2)を積層する。材料を積層する方法にはスパッタ法やCVD(chemical vapor deposition)法等を用いる。
【0041】
振動膜7上に下電極8及び配線16を設置する。まず、振動膜7上に金属膜を設置する。本実施形態では、例えば、金属膜は酸化イリジウム上にプラチナが積層された層である。プラチナは白金とも称される。金属膜の設置方法は特に限定されないが本実施形態では、例えば、スパッタ法を用いて設置される。
【0042】
次に、金属膜上に感光性のレジストを設置し、下電極8及び配線16の形状のマスクを重ねて露光する。次に、感光性のレジストをエッチングして除去し、さらに、レジストをマスクにして金属膜をエッチングした後でレジストを除去する。その結果、振動膜7上に下電極8及び配線16が設置される。
【0043】
図7図9は圧電体設置工程を説明するための模式図である。図7に示すように、焦電体材料層22を設置する。焦電体材料層22は圧電体9の材料になる層であり、PZT膜の層である。焦電体材料層22はスパッタ法やゾルゲル法を用いて設置される。スパッタ法では特定成分のPZT焼結体をスパッタリングのターゲットとして用い、振動膜7上にスパッタリングによりアモルファス状の圧電体膜前駆体膜を形成する。
【0044】
次に、このアモルファス状の圧電体膜前駆体膜を加熱し結晶化し、焼結させる。この加熱は例えば、酸素または酸素とアルゴン等の不活性ガスとの混合ガス等の酸素雰囲気中において行われる。加熱工程では酸素雰囲気中で圧電体膜前駆体膜を500~700℃の温度で加熱する。加熱によって圧電体膜前駆体膜を結晶化する。
【0045】
ゾルゲル法では焦電体材料層22の材料となるチタン、ジルコニウム、鉛等の水酸化物の水和錯体であるゾルを作成する。このゾルを脱水処理してゲルとする。このゲルを加熱焼成して無機酸化物である焦電体材料層22を調製する。チタン、ジルコニウム、鉛、さらには他の金属成分のそれぞれのアルコキシドまたはアセテートを出発原料とする。この出発原料がゾルになっている。このゾルは有機高分子化合物と混合された組成物として用いられる。この有機高分子化合物は、乾燥及び焼成時に焦電体材料層22の残留応力を吸収し、焦電体材料層22にクラックが生ずる虞を低減する。
【0046】
次に、振動膜7上にゾル組成物を塗布する。塗布方法には各種のコート法や印刷法が用いられる。塗布後ゾル組成物の膜を乾燥する。乾燥は自然乾燥、または80℃以上200℃以下の温度に加熱して乾燥する。次に、ゾル組成物の膜を焼成する。焼成温度は300~450℃の範囲で10~120分程度焼成する。焼成によりゾル組成物の膜がゲル化する。
【0047】
次に温度を変えて再焼成する。焼成温度としては400~800℃の範囲で、0.1~5時間程度焼成する。再焼成では400~600℃の範囲の温度の第一段階を行い。次に、600~800℃以下の範囲の温度で第二段階を行う。これにより、多孔質ゲル薄膜が結晶質の金属酸化物からなる膜に変換される。この膜を積層膜にするときには出発原料の塗布から焼成までの工程を繰り返す。その後でプレアニールする。
【0048】
図8に示すように、上金属膜23を設置する。本実施形態では、例えば、上金属膜23はイリジウム膜、チタン膜、イリジウム膜がこの順に積層される。上金属膜23の設置方法は特に限定されないが本実施形態では、例えば、スパッタ法を用いて設置される。
【0049】
図9に示すように、焦電体材料層22及び上金属膜23をパターニングする。上金属膜23の上にマスク膜の材料からなる膜を設置する。そして、フォトリソグラフィー法を用いて露光及び現像しマスク膜の材料からなる膜をパターニングしてマスク膜を形成する。詳しくは、まず、感光性のレジスト膜を設置し、圧電体9の形状のマスクを重ねて露光する。次に、レジスト膜をエッチングして除去し、マスク膜を設置する。マスク膜の形状は圧電体9の形状にする。
【0050】
マスク膜をマスクにしたドライエッチング法を用いて焦電体材料層22の一部を除去する。ドライエッチングにより、焦電体材料層22及び上金属膜23がエッチングされて四角形になる。次に、剥離液を用いてマスク膜を剥離する。
【0051】
さらに、上金属膜23をパターニングする。上金属膜23の上にマスク膜の材料からなる膜を設置する。そして、フォトリソグラフィー法を用いて露光及び現像しマスク膜の材料からなる膜をパターニングしてマスク膜を形成する。次に、レジスト膜をエッチングして除去し、マスク膜を設置する。マスク膜の形状は上電極10の形状にする。
【0052】
マスク膜をマスクにしたドライエッチング法を用いて上電極10の一部を除去する。ドライエッチングにより、上金属膜23がエッチングされて上電極10の形状になる。次に、剥離液を用いてマスク膜を剥離する。その結果、振動膜7上に下電極8、圧電体9及び上電極10が積層されて設置される。
【0053】
図10は配線設置工程を説明するための模式図である。図10に示すように、配線10aを設置する。まず、金属膜を成膜する。金属膜は配線10aの材料となる膜である。金属膜の成膜方法は特に限定されないが本実施形態では、例えば、スパッタ法を用いている。
【0054】
次に、金属膜の上に感光性の材料からなる樹脂膜を成膜する。続いて、フォトリソグラフィー法を用いて露光及び現像し樹脂膜をパターニングしてマスク膜を形成する。マスク膜の形状を配線10aの形状にする。次に、マスク膜をマスクにして金属膜をドライエッチングする。その結果、金属膜から配線10aが形成される。ドライエッチングはウエットエッチングに比べて平面方向のオーバーエッチング量が少ないので微細なパターンを精度良く形成することができる。
【0055】
図11及び図12は共通配線設置工程を説明するための模式図である。図11に示すように、感光性樹脂層24を設置する。このとき、配線10a上における感光性樹脂層24の厚み寸法が、第2共通配線17の厚み寸法となるように、感光性樹脂層24の厚みを調整する。本実施形態では例えば、感光性樹脂層24にポジ型のフォトレジストを用いる。感光性樹脂層24の厚みは例えば10μmにしている。この感光性樹脂層24を露光して現像し、第2共通配線17を形成する場所の感光性樹脂層24を除去する。そして、第2共通配線17を形成する場所に開口24aを形成するマスクパターンを形成する。次に、例えば、電気めっき法により開口24a内の配線10a上にCuを析出させて第2共通配線17を形成する。その後、図12に示すように、感光性樹脂層24を除去する。例えば、無電解めっき法により第2共通配線17の表面にNi層やAu層を形成しても良い。
【0056】
図13は保護膜設置工程を説明するための模式図である。図13に示すように、保護膜14を設置する。まず、上電極10、配線10a及び第2共通配線17に重ねて無機膜を設置する。無機膜は酸化アルミニウム(Al23)の膜であり、CVD法を用いて成膜する。次に、感光性の材料からなる樹脂膜を成膜する。続いて、フォトリソグラフィー法を用いて露光及び現像し樹脂膜をパターニングしてマスク膜を形成する。次に、マスク膜をマスクにして無機膜をドライエッチングする。続いて、マスク膜を除去する。その結果、無機膜が保護膜14の形状に形成される。
【0057】
図14は凹部設置工程を説明するための模式図である。図14に示すように、ベース板21がパターニングされて、凹部2aが形成される。詳しくは、ベース板21の-Z方向側の面にマスク膜の材料からなる膜を設置する。そして、フォトリソグラフィー法を用いて露光及び現像しマスク膜の材料からなる膜をパターニングしてマスク膜を形成する。マスク膜の形状は凹部2aが開口した平面形状にする。次に、マスク膜をマスクにしてベース板21をエッチングする。エッチング方法としては、例えば、湿式の異方性エッチング、平行平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いた異方性エッチングを用いて、ベース板21のエッチングを行う。振動膜7がエッチングストップ層として機能する。次に、マスク膜を除去する。その結果、ベース板21に凹部2aが形成される。以上の工程で基板2が完成する。
【0058】
図15は残響低減膜設置工程を説明するための模式図である。図15に示すように、次に、保護膜14に重ねて残響低減膜15を設置する。まず、残響低減膜15に重ねてシリコーンゴムのベタ膜を設置する。ベタ膜は平坦に塗布された膜を示す。シリコーンゴムのベタ膜は感光性膜である。感光性のシリコーンゴム材料を溶解した溶液を基板2の保護膜14上に塗布する。塗布方法は溶液が所定の量が均等に塗布されれば良く特に限定されない。本実施形態では、例えば、スピンコーターを用いて溶液を塗布した。次に、溶液を乾燥して溶媒を除去する。
【0059】
次に、シリコーンゴムのベタ膜を所定のパターンでマスクして露光する。このマスクのパターンは溝部18が形成されるパターンにする。さらに、シリコーンゴムのベタ膜をエッチングしてパターニングする。その結果、保護膜14上にシリコーンゴムの残響低減膜15が設置される。尚、残響低減膜15の設置方法には精密なスクリーン印刷を用いても良い。以上の工程により超音波素子4が完成する。さらに、基板2上に外部端子3、信号配線5及び第1共通配線6を形成して超音波装置1が完成する。外部端子3、信号配線5及び第1共通配線6は金属膜の成膜、マスク膜の設置、マスク膜のパターニング、マスク膜のエッチング、金属膜のエッチング、マスク膜の除去の順に行って形成される。以上の工程により図1に示す超音波装置1が完成する。
【0060】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、超音波装置1は基板2を備え、基板2には超音波素子4が配列して設置されている。各超音波素子4は第1方向13に超音波12を送信する。そして、超音波素子4の第1方向13側には残響低減膜15が配置され、残響低減膜15は基板2の残響振動を低減する。残響低減膜15があることにより超音波素子4は応答性良く超音波12を送信できる。この残響低減膜15には隣り合う超音波素子4の間に溝部18が配置されている。
【0061】
超音波素子4から送信された超音波12の一部は第1方向13と交差する方向に進行する。そして、残響低減膜15内を進行して溝部18に到達する。溝部18には空気が入っており、残響低減膜15と空気とでは超音波12の伝播速度が異なる。超音波12は溝部18で反射するので、送信した超音波素子4の隣りの超音波素子4へは到達し難い。このため、超音波素子4は隣の超音波素子4が送信した超音波12の影響を受け難い。従って、超音波素子4が配列しても超音波装置1は品質よく超音波12を送信することができる。
【0062】
(2)本実施形態によれば、残響低減膜15の材質はシリコーンゴムを含んでいる。シリコーンゴムはヤング率が小さいので、残響低減膜15は基板2の動きを阻害せずに残響振動を低減することができる。
【0063】
(3)本実施形態によれば、超音波素子4が受信した超音波12aの一部は第1方向13と交差する方向に進行する。そして、残響低減膜15内を進行して溝部18に到達する。溝部18には空気が入っており、残響低減膜15と空気とでは超音波12aの伝播速度が異なる。超音波12aは溝部18で反射するので、受信した超音波素子4の隣りの超音波素子4へは到達し難い。このため、超音波素子4は隣の超音波素子4が受信した超音波12aの影響を受け難い。従って、超音波素子4は配列しても品質よく超音波12aを受信することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、超音波装置1の一実施形態について図16図21を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、超音波素子4と対向する場所の残響低減膜32に凹部がある点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。図16は超音波素子の構成を示す要部模式平面図である。図17及び図18は超音波素子の構成を示す要部模式側断面図である。図17図16のCC線に沿う断面側から見た図であり、図18図16のDD線に沿う断面側から見た図である。
【0065】
すなわち、本実施形態では、図16図17及び図18に示すように、超音波装置31は基板2を備えている。基板2上には超音波素子4がマトリックス状に配置されている。そして、超音波素子4の第1方向13側には基板2の残響振動を低減する残響低減膜32が配置されている。残響低減膜32は保護膜14に重ねて設置されている。残響低減膜32は振動膜7を含む基板2及び超音波素子4の振動の残響を低減する。残響低減膜32の材質はシリコーンゴムを含む。シリコーンゴムはヤング率が小さいので、残響低減膜32は振動膜7を含む基板2及び超音波素子4の動きを阻害せずに残響振動を低減することができる。残響低減膜32には超音波素子4と対向する場所に凹部33が配置されている。凹部33では残響低減膜32が薄いまたは残響低減膜32がない。従って、超音波12に凹部33を通過させている為、残響低減膜32によって超音波12の音圧が低下することを低減させることができる。
【0066】
図19は残響低減膜内を伝播する超音波を説明するための模式図である。図19に示すように、超音波素子4から第1方向13に超音波12が送信される。超音波素子4から送信された超音波12の一部は第1方向13と交差する方向に進行する。残響低減膜32に凹部33があるときにも超音波12の一部が残響低減膜32の内部を伝播して進行する。そして、超音波12は溝部18に到達する。溝部18には空気が入っており、溝部18では残響低減膜32と屈折率が大きく異なる。つまり、残響低減膜32と空気とでは超音波12の伝播速度が異なる。
【0067】
このため、一部の超音波12は溝部18で反射して方向を変える。一部の超音波12は残響低減膜32から空気中にでるが、空気中の進行方向は多方向に亘る。従って、送信した超音波素子4の隣りの超音波素子4へは超音波12が到達し難い。このため、超音波素子4は隣の超音波素子4が送信した超音波12の影響を受け難い。従って、残響低減膜32に凹部33があるときにも超音波素子4は配列しても品質よく超音波12を送信することができる。
【0068】
図中、残響低減膜32のX方向に進行する超音波12の挙動を説明した。残響低減膜32のY方向に進行する超音波12においても同様に、隣りの超音波素子4へは超音波12が到達し難い。従って、Y方向においても超音波素子4は隣の超音波素子4が送信した超音波12の影響を受け難い。
【0069】
残響低減膜32に凹部33があるときにも超音波素子4が超音波12aを受信するときには残響低減膜32に到達した超音波12aの一部が残響低減膜32の内部を進行する。このとき、一部の超音波12aは溝部18で反射して方向を変える。一部の超音波12aは残響低減膜32から空気中にでるが、空気中の進行方向は多方向に亘る。従って、受信した超音波素子4の隣りの超音波素子4へは超音波12aが到達し難い。このため、超音波素子4は隣の超音波素子4が受信した超音波12aの影響を受け難い。従って、残響低減膜32に凹部33があるときにも超音波素子4は配列しても品質よく超音波12aを受信することができる。
【0070】
図20及び図21は超音波素子の動作を説明するための模式側断面図である。図20は第1方向13に超音波素子4が移動したときの状態を示す。図21は第1方向13の逆方向に超音波素子4が移動したときの状態を示す。図20及び図21に示すように、圧電体9が位置する場所と梁部2bが位置する場所では振動膜7の撓みが小さい。そして、圧電体9が位置する場所と梁部2bが位置する場所との間では振動膜7の撓みが大きい。
【0071】
残響低減膜32は圧電体9の第1方向13側で対向する面から梁部2bの第1方向13側で対向する面まで配置されている。このとき、圧電体9の側面側の面から第2共通配線17の側面側の面まで確実に残響低減膜32が配置される。従って、振動膜7の撓みが大きい範囲を覆って残響低減膜32が配置されている。このため、残響低減膜32は振動膜7の残響を確実に低減することができる。
【0072】
図中、残響低減膜32のX方向側の構造を説明した。残響低減膜32のY方向側の構造はX方向側の構造と同じになっている。従って、Y方向側においても振動膜7の撓みが大きい範囲を覆って残響低減膜32が配置されている。このため、残響低減膜32は振動膜7の残響を確実に低減することができる。
【0073】
超音波素子4が超音波12aを受信するときも振動膜7が撓む。このとき、振動膜7の撓みが大きい範囲を覆って残響低減膜32が配置されている。このため、残響低減膜32は振動膜7の残響を確実に低減することができる。
【0074】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、残響低減膜32には超音波素子4と対向する場所に凹部33が配置されている。凹部33では残響低減膜32が薄いまたは残響低減膜32がない。従って、超音波12に凹部33を通過させて残響低減膜32によって超音波12の音圧が低下することを低減させることができる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、超音波装置1または超音波装置31を備えたスキャナーの一実施形態について図22のスキャナーの構造を示す模式側断面図を用いて説明する。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0076】
すなわち、本実施形態では、図22に示すように、電子機器としてのスキャナー41は紙等の媒体に描画された画像を読み取る装置であり画像読取装置ともいう。スキャナー41は下ケース42及び上ケース43を備えている。下ケース42と上ケース43とは蝶番44により開閉可能に連結されている。
【0077】
下ケース42の図中右上側には、カバー部45が下ケース42に対して回動可能に取り付けられている。カバー部45の上ケース43側の面が用紙載置面45aになっている。用紙載置面45aには媒体としての用紙46が複数載置される。用紙46は四角形であり複数の用紙46は同じ形状になっている。用紙載置面45aと上ケース43との間には開口する給送口47が配置されている。用紙46は給送口47からスキャナー41の内部に搬送される。
【0078】
用紙46の進行方向を-Y方向とする。用紙46の幅方向をX方向とする。用紙46が重ねられた方向をZ方向とする。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する方向になっている。
【0079】
下ケース42の-Y方向側には排紙トレイ48が設置されている。排紙トレイ48と上ケース43との間には開口する排出口49が下ケース42に配置されている。用紙46は給送口47からスキャナー41の内部に進入し、排出口49から排出される。排出口49から排出された用紙46は排紙トレイ48上に重ねられる。用紙載置面45aから排紙トレイ48まで用紙46が移動する経路が用紙46の搬送路50である。尚、搬送路50においてカバー部45側を上流側とし、排紙トレイ48側を下流側とする。
【0080】
給送口47の下流側には給送ローラー51及び分離ローラー52が設置されている。用紙載置面45a上に載置された用紙46には重力が作用して下流側に移動する。そして、用紙46の端が分離ローラー52に接触する。給送ローラー51が図中反時計回りに回転するとき、用紙46は給送ローラー51と分離ローラー52との間に進入する。
【0081】
給送ローラー51と分離ローラー52との間に用紙46が1枚だけ挟まれるとき、給送ローラー51及び分離ローラー52が共に回転して用紙46を搬送する。給送ローラー51と分離ローラー52との間に用紙46が2枚挟まれるとき、分離ローラー52は給送ローラー51と異なる方向に所定の角度だけ回転する。給送ローラー51と分離ローラー52との間に用紙46が3枚以上挟まれるとき、給送ローラー51は用紙46を2枚以上搬送することがある。
【0082】
給送ローラー51及び分離ローラー52の下流には用紙46の搬送路50に重送検出装置53が設置されている。重送検出装置53は用紙46が2枚以上重なっているか否かを検出する装置である。重送検出装置53は超音波送信器54及び超音波受信器55を備えている。超音波送信器54が超音波12を送信する。超音波送信器54が送信した超音波12を超音波受信器55が受信する。
【0083】
用紙46の枚数が多い程、用紙46を通過するする超音波12の強度が減少する。超音波受信器55が受信する超音波12の強度を判定値と比較して重送検出装置53は用紙46の枚数が1枚か2枚以上かを検出する。そして、重送検出装置53は超音波装置1または超音波装置31を有している。超音波装置1及び超音波装置31は超音波素子4が配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる装置である。従って、スキャナー41は、配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる超音波素子4が配置された重送検出装置53を備えた機器とすることができる。
【0084】
重送検出装置53の下流には搬送ローラー対56が配置されている。搬送ローラー対56は搬送駆動ローラー57及び搬送従動ローラー58を備えている。搬送駆動ローラー57及び搬送従動ローラー58が用紙46を挟んで回転する。そして、搬送ローラー対56は用紙46を下流に搬送する。
【0085】
搬送ローラー対56の下流には画像読取装置61が配置されている。画像読取装置61は下部読み取りユニット62及び上部読み取りユニット63を備えている。下部読み取りユニット62は用紙46の-Z方向側の面に記載されたイメージを読み取る。上部読み取りユニット63は+Z方向側の面に記載されたイメージを読み取る。下部読み取りユニット62及び上部読み取りユニット63には、例えば、密着型イメージセンサーモジュール(CISM:Contact Image Sensor Module)が設置されている。
【0086】
画像読取装置61の下流には排出ローラー対64が配置されている。排出ローラー対64は排出駆動ローラー65及び排出従動ローラー66を備えている。排出駆動ローラー65及び排出従動ローラー66が用紙46を挟んで回転する。そして、排出ローラー対64は用紙46を排出口49に搬送する。
【0087】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、スキャナー41は搬送路50を備えている。搬送路50には重送検出装置53が設置され、重送検出装置53は用紙46が2枚以上重なっているか否かを検出する。そして、重送検出装置53には超音波装置1及び超音波装置31が用いられている。超音波装置1及び超音波装置31は超音波素子4が配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる装置である。従って、スキャナー41は、配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる超音波素子4が配置された重送検出装置53を備えた機器とすることができる。
【0088】
(第4の実施形態)
次に、超音波装置1または超音波装置31を備えた印刷装置の一実施形態について図23の印刷装置の構造を示す模式側断面図を用いて説明する。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0089】
すなわち、本実施形態では、図23に示すように、電子機器としてのプリンター71はフロント給紙トレイ72とリア給紙トレイ73とを有する。フロント給紙トレイ72はプリンター71の底部に略水平に設置される。リア給紙トレイ73はプリンター71の背面部71aに図中右上方へ突出するように配設される。フロント給紙トレイ72及びリア給紙トレイ73には、各種の用紙46が載置される。
【0090】
フロント給紙トレイ72及びリア給紙トレイ73に載置された用紙46は所定の搬送経路に供給される。そして、用紙46は搬送経路に沿って搬送されプリンター71の前面部71b側に配設される排紙トレイ74へ排出される。搬送経路においてフロント給紙トレイ72及びリア給紙トレイ73を上流側とし、排紙トレイ74側を下流側とする。
【0091】
プリンター71においては、フロント給紙トレイ72を搬送経路の上流位置とする用紙46の第1搬送路75と、リア給紙トレイ73を搬送経路の上流位置とする用紙46の第2搬送路76とが存在する。そして、第1搬送路75及び第2搬送路76により搬送路77が構成されている。
【0092】
まず、第1搬送路75からの用紙46の搬送について説明する。フロント給紙トレイ72に載置された用紙46のうち図中最も上に載置された用紙46に対して、ピックアップローラー78がその外周を用紙46に接するように備えられている。ピックアップローラー78は図中反時計回りに回転し、外周にて接する用紙46を背面部71a側に送り出す。
【0093】
用紙46は図中右側の端部が搬送ガイド79に誘導される。搬送ガイド79の一部は略半円を描くように湾曲した搬送経路を形成している。用紙46は、搬送ガイド79に誘導されて排紙トレイ74側へ進行する。用紙46は搬送ガイド79に沿って湾曲しつつ図中上方側に誘導される。
【0094】
搬送ガイド79の湾曲する経路の中程には、中間ローラー80及び中間従動ローラー80aが設けられている。中間ローラー80及び中間従動ローラー80aは用紙46を挟んで回転する。中間ローラー80は図中の時計回りに回転する。中間ローラー80の回転駆動により用紙46は搬送ガイド79に沿ってさらに搬送される。
【0095】
用紙46の第1搬送路75において搬送ガイド79の下流には重送検出装置81が設置されている。重送検出装置81は用紙46が2枚以上重なっているか否かを検出する。重送検出装置81は超音波送信器81a及び超音波受信器81bを備える。超音波送信器81aが送信した超音波12を超音波受信器81bが受信する。重送検出装置81は超音波装置1または超音波装置31を有する。超音波装置1及び超音波装置31は超音波素子4が配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる装置である。従って、プリンター71は、配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる超音波素子4が配置された重送検出装置81を備えた機器とすることができる。
【0096】
第1搬送路75において重送検出装置81の下流には紙端センサー82が配置されている。紙端センサー82は図示しない発光部と受光部を有しており、発光部と受光部の間の光路を用紙46が遮るか否かを判定することにより用紙先端を検出する。
【0097】
第1搬送路75において紙端センサー82の下流には搬送ローラー83及び搬送従動ローラー83aが配置されている。搬送ローラー83及び搬送従動ローラー83aは用紙46を挟んで下流側へ搬送する。
【0098】
第1搬送路75において搬送ローラー83の下流にはプラテン84及びキャリッジ85が配置されている。プラテン84は搬送される用紙46を図中下方から支持する。キャリッジ85は用紙46を挟んでプラテン84の図中上方に位置する。キャリッジ85は図中下側に印字ヘッド85aを備えている。印字ヘッド85aの図中下側の面には多数のノズルが配列して設置され、各ノズルからインクを吐出する。キャリッジ85は、図の紙面に対して垂直な方向に移動する。この方向へキャリッジ85が移動することを主走査という。キャリッジ85が主走査を行いながら印字ヘッド85aは用紙46にインクを吐出する。そして、印字ヘッド85aはノズルに対向する領域に対して、主走査方向に沿ったラスタラインを描画することができる。
【0099】
主走査を行った後で用紙46を搬送することにより、用紙46の印字位置をずらすことができる。描画するために用紙46を搬送することを副走査という。用紙46を副走査することにより用紙46の異なる位置にラスタラインを描画することができる。そして、主走査と副走査を順次繰り返して実行することにより、プリンター71は用紙46上に印刷画像を形成する。印刷画像が形成された用紙46は排紙トレイ74に排出される。
【0100】
次に、第2搬送路76における用紙46の搬送について説明する。リア給紙トレイ73にはホッパー88が設置されている。そして、第2搬送路76においてホッパー88の下流にはロードローラー86及びロード従動ローラー87が配置されている。
【0101】
ホッパー88は、リア給紙トレイ73の下流側がロードローラー86へ接近する方向とロードローラー86から離間する方向とへ揺動する。ホッパー88がロードローラー86に接近することで、リア給紙トレイ73の最も上にある用紙46の先端がロードローラー86に当り、この用紙46がホッパー88とロードローラー86との間に挟まれる。この状況でロードローラー86を回転させることで、用紙46はロードローラー86及びロード従動ローラー87に挟まれて、下流側へ搬送される。
【0102】
ロードローラー86の回転により搬送された用紙46は重送検出装置81を通過する。重送検出装置81は用紙46の第2搬送路76に設置され、用紙46が2枚以上重なっているか否かを検出する。
【0103】
次に、用紙46の先端が紙端センサー82に到達する。そして、ロードローラー86の回転によりさらに前面部71b側に搬送された用紙46の先端が紙端センサー82を通過し、搬送ローラー83に到達する。用紙46は搬送ローラー83によってプラテン84上に搬送される。そして、キャリッジ85の主走査と用紙46の副走査とが繰り返し行われて印刷画像の形成が行なわれる。リア給紙トレイ73から排紙トレイ74まで用紙46が搬送される経路が第2搬送路76である。そして、第1搬送路75及び第2搬送路76により搬送路77が構成されている。
【0104】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、プリンター71は搬送路77を備えている。搬送路77には重送検出装置81が設置され、重送検出装置81は用紙46が2枚以上重なっているか否かを検出する。そして、重送検出装置81には超音波装置1及び超音波装置31が用いられている。超音波装置1及び超音波装置31は超音波素子4が配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる装置である。従って、プリンター71は、配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる超音波素子4が配置された重送検出装置81を備えた機器とすることができる。
【0105】
(第5の実施形態)
次に、超音波装置1または超音波装置31を備えた距離測定装置の一実施形態について図24の距離測定装置の構成を示すブロック図を用いて説明する。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0106】
すなわち、本実施形態では、図24に示すように、電子機器としての距離測定装置91は制御部92を備えている。制御部92はCPU(Central Processing Unit)やメモリーを備え、メモリーにはプログラムや各種のデーターが記憶されている。そして、制御部92はプログラムに従って動作する。制御部92には通信装置93、入力装置94、表示装置95が接続されている。
【0107】
通信装置93は外部機器と接続され、外部機器が出力する信号を入力する。そして、入力した信号に従って制御部92は作動する。また、測定結果を通信装置93は外部機器に出力する。入力装置94は各種のスイッチ等により構成され操作者の指示を入力する装置である。制御部92は入力装置94から信号を入力し、入力した信号に従って作動する。表示装置95は測定条件や測定結果を表示する。表示装置95には、例えば、液晶表示装置が用いられる。
【0108】
制御部92には他にも波形形成回路96及び時間計測回路97が接続されている。波形形成回路96は送信駆動回路98及び時間計測回路97と接続されている。送信駆動回路98には超音波送信器99が接続されている。時間計測回路97は受信駆動回路100と接続されている。受信駆動回路100は超音波受信器101と接続されている。
【0109】
波形形成回路96は超音波送信器99を駆動する駆動波形を形成する回路である。駆動波形の波形は特に限定されないが、本実施形態では例えば、波形形成回路96が形成する駆動波形は600kHzの矩形波を有するバースト波形になっている。送信駆動回路98は駆動波形を増幅する。超音波送信器99は増幅された駆動波形を入力して超音波12を測定対象102に向けて送信する。超音波送信器99から送信された超音波12は測定対象102で反射する。反射した超音波12aの一部が超音波受信器101に向かって進行する。そして、超音波送信器99が送信した超音波12aを超音波受信器101が受信する。
【0110】
超音波受信器101は超音波12aを受信して超音波12aに対応する電圧信号を受信駆動回路100に出力する。超音波12aに対応する電圧信号を超音波信号とする。受信駆動回路100は超音波信号を入力して増幅し時間計測回路97に出力する。時間計測回路97は波形形成回路96が駆動波形を出力してから超音波信号を入力するまでの間の時間を計測する。時間計測回路97は計測した時間の計測値を制御部92に出力する。
【0111】
制御部92ではCPUがメモリー内に記憶されたプログラムに従って距離測定装置91の動作を制御する。制御部92は機能を実現するための各種の機能部を有する。具体的な機能部として距離測定装置91は距離変換部103及び表示制御部104を有する。距離変換部103は時間計測回路97から時間の計測値を入力する。そして、距離変換部103は時間の計測値に超音波12の速度を乗算する。そして、超音波12が超音波送信器99から測定対象102を経由して超音波受信器101に到達するまでの距離である進行距離を距離変換部103が演算する。さらに、距離変換部103は進行距離を2で除算して超音波送信器99及び超音波受信器101から測定対象102までの距離である離間距離を演算する。
【0112】
表示制御部104は離間距離の値を表示装置95に表示させる。さらに、表示制御部104は通信装置93に離間距離の値を外部機器に出力させる。超音波送信器99及び超音波受信器101は超音波装置1または超音波装置31を有している。超音波装置1及び超音波装置31は超音波素子4が配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる装置である。従って、距離測定装置91は、配列しても品質よく超音波12を送信し受信することができる超音波素子4を有する超音波装置1または超音波装置31が配置された機器とすることができる。
【0113】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第5の実施形態では、超音波送信器99及び超音波受信器101は超音波装置1または超音波装置31を有していた。超音波送信器99及び超音波受信器101のいずれか一方が超音波装置1または超音波装置31を有していても良い。超音波送信器99が超音波装置1または超音波装置31を有しているとき、超音波送信器99は損傷を受け難く性能良く超音波12を送信することができる。超音波受信器101が超音波装置1または超音波装置31を有しているとき、超音波受信器101は損傷を受け難く性能良く超音波12aを受信することができる。この内容は前記第3の実施形態及び前記第4の実施形態にも適用できる。
【0114】
(変形例2)
前記第5の実施形態では、超音波装置1または超音波装置31を有している距離測定装置91の例を示した。他にも、近くに物体があるか否かを検出する近接センサーに超音波装置1または超音波装置31を用いても良い。このときにも、近接センサーは品質良く物体を検出することができる。
【0115】
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
【0116】
超音波装置は、第1方向に超音波を送信する超音波素子が配列する基板を備え、前記超音波素子の前記第1方向側には前記基板の残響振動を低減する残響低減膜が配置され、前記残響低減膜には隣り合う前記超音波素子の間に溝部が配置されていることを特徴とする。
【0117】
この構成によれば、超音波装置は基板を備え、基板には超音波素子が配列して設置されている。各超音波素子は第1方向に超音波を送信する。そして、超音波素子の第1方向側には残響低減膜が配置され、残響低減膜は基板の残響振動を低減する。残響低減膜があることにより超音波素子は応答性良く超音波を送信できる。この残響低減膜には隣り合う超音波素子の間に溝部が配置されている。
【0118】
超音波素子から送信された超音波の一部は第1方向と交差する方向に進行する。そして、残響低減膜内を進行して溝部に到達する。溝部には空気が入っており、残響低減膜と空気とでは超音波の伝播速度が異なる。超音波は溝部で反射するので、送信した超音波素子の隣りの超音波素子へは到達し難い。このため、超音波素子は隣の超音波素子が送信した超音波の影響を受け難い。従って、超音波素子は配列しても品質よく超音波を送信することができる。
【0119】
上記の超音波装置は、前記残響低減膜の材質はシリコーンゴムを含むことが好ましい。
【0120】
この構成によれば、残響低減膜の材質はシリコーンゴムを含んでいる。シリコーンゴムはヤング率が小さいので、残響低減膜は基板の動きを阻害せずに残響振動を低減することができる。
【0121】
上記の超音波装置では前記残響低減膜には前記超音波素子と対向する場所に凹部が配置されていることが好ましい。
【0122】
この構成によれば、残響低減膜には超音波素子と対向する場所に凹部が配置されている。凹部では残響低減膜が薄いまたは残響低減膜がない。従って、超音波に凹部を通過させて残響低減膜によって超音波の音圧が低下することを低減させることができる。
【0123】
電子機器は、媒体の搬送路に設置され、前記媒体が2枚以上重なっているか否かを検出する重送検出装置を備え、前記重送検出装置は上記に記載の超音波装置を有することを特徴とする。
【0124】
この構成によれば、電子機器は搬送路を備えている。搬送路には重送検出装置が設置され、重送検出装置は媒体が2枚以上重なっているか否かを検出する。そして、重送検出装置には上記の超音波装置が用いられている。上記の超音波装置は超音波素子が配列しても品質よく超音波を送信し受信することができる装置である。従って、電子機器は、配列しても品質よく超音波を送信し受信することができる超音波素子が配置された超音波装置を有する重送検出装置を備えた機器とすることができる。
【0125】
電子機器は、超音波を送信する超音波送信器と、前記超音波送信器が送信した超音波を受信する超音波受信器と、を備え、前記超音波送信器は上記に記載の超音波装置を有することを特徴とする。
【0126】
この構成によれば、電子機器は超音波送信器及び超音波受信器を備えている。そして、超音波送信器には上記の超音波装置が用いられている。上記の超音波装置は超音波素子が配列しても品質よく超音波を送信し受信することができる装置である。従って、電子機器は、配列しても品質よく超音波を送信することができる超音波送信器が配置された超音波装置を備えた機器とすることができる。
【0127】
超音波装置は、第1方向側から進行する超音波を受信する超音波素子が配列する基板を備え、前記超音波素子の前記第1方向側には前記基板の残響振動を低減する残響低減膜が配置され、前記残響低減膜には隣り合う前記超音波素子の間に溝部が配置されていることを特徴とする。
【0128】
この構成によれば、超音波素子が受信した超音波の一部は第1方向と交差する方向に進行する。そして、残響低減膜内を進行して溝部に到達する。溝部には空気が入っており、残響低減膜と空気とでは超音波の伝播速度が異なる。超音波は溝部で反射するので、受信した超音波素子の隣りの超音波素子へは到達し難い。このため、超音波素子は隣の超音波素子が受信した超音波の影響を受け難い。従って、超音波素子は配列しても品質よく超音波を受信することができる。
【符号の説明】
【0129】
1,31…超音波装置、2…基板、4…超音波素子、12…超音波、13…第1方向、15,32…残響低減膜、18…溝部、33…凹部、41…電子機器としてのスキャナー、46…媒体としての用紙、50…搬送路、53,81…重送検出装置、71…電子機器としてのプリンター、91…電子機器としての距離測定装置、99…超音波送信器、101…超音波受信器。
図1
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