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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20221122BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20221122BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20221122BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221122BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20221122BHJP
   H01M 10/38 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0565
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/133
H01M10/38
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018109993
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019212572
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 広幸
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540339(JP,A)
【文献】特開2019-212571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00- 10/39
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極活物質を含み所定方向に配列された複数の柱状の第1電極と、
第2電極活物質を含み前記第1電極に対向して配設された第2電極と、
イオン伝導性を有し前記第1電極を被覆しており前記第1電極と前記第2電極との間に介在する電解質と、
少なくとも前記電解質により構成され前記第1電極と前記第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部と、
を備え
前記第1電極は、該第1電極の軸方向に垂直な方向に間隔を空けて配列され、前記繋ぎ部は、前記間隔に配置されている、
二次電池。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極と前記電解質と前記繋ぎ部とを有する柱状電極連結体を1層だけ備えている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記繋ぎ部は、前記第1電極が揺動する柔軟性を有する、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
下記(1)、(2)の1以上を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
(1)前記第1電極の直径をD(μm)とし、前記第1電極間の距離をL(μm)としたとき、0.33≦D/(D+L)を満たす。
(2)前記第1電極の直径をD(μm)とし、前記第1電極間の距離をL(μm)としたとき、D/(D+L)<1を満たす。
【請求項5】
前記第1電極は、その直径D(μm)が20μm以上800μm以下の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記電解質は、その厚さt(μm)が2μm以上15μm以下の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電解質は、前記第1電極上に層状で形成されており、
前記第2電極は、前記電解質上に層状で形成されており、
前記第1電極と前記電解質と前記第2電極とを有する電極本体が前記繋ぎ部により繋がれた柱状電極連結体の構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1電極は、炭素質材料を前記第1電極活物質として含む負極であり、
前記第2電極は、前記電解質の表面に形成された合材層の正極である、請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
第1電極活物質を含む複数の柱状の第1電極を、該第1電極と該第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部を形成する間隔を空けて所定方向に配列し、第2電極活物質を含む第2電極とイオン伝導性を有する電解質とを該電解質が前記第1電極上及び前記第1電極と前記第2電極との間に介在され且つ前記繋ぎ部を構成するよう配置して加熱押圧する連結体形成工程、を含む二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記連結体形成工程では、前記第1電極と前記第2電極と前記電解質と前記繋ぎ部とを有する柱状電極連結体を1層だけ形成する、請求項9に記載の二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記連結体形成工程では、下記(1)、(2)の1以上を満たす処理を行う、請求項9又は10に記載の二次電池の製造方法。
(1)前記第1電極の直径をD(μm)とし、前記第1電極間の距離をL(μm)としたとき、0.33≦D/(D+L)を満たす。
(2)前記第1電極の直径をD(μm)とし、前記第1電極間の距離をL(μm)としたとき、D/(D+L)<1を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の二次電池としては、集電部材と活物質含有層とから構成される正極と、集電部材と活物質含有層とから構成される負極と、セパレータを兼ねる電解質層からなる単位セルを複数積層し、所定のケース内に密閉した状態で保持させパッケージ化したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この二次電池では、電極活物質が、その表面に導電助剤と結着剤とを被覆させることで導電処理され、且つこの電極活物質が乾式法で集電体表面に担持されている構成を有し、高エネルギー密度化および高出力密度化を可能とする、としている。また、このような二次電池としては、電解質を含むリチウムイオン供給コア部と、このコア部の外面を囲んで形成され内部電極活物質が外面にコーティングされた3次元網状構造の集電体を含む内部電極と、内部電極の外面を囲んで形成され外部電極活物質層を含む外部電極を含むケーブル型二次電池が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この二次電池では、コア部の電解質が電極の活物質に浸透しやすく、電池の容量特性及びサイクル特性に優れる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-6285号公報
【文献】特表2014-532277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、リチウム二次電池は、その高容量化、単位体積あたりの高エネルギー密度化が望まれている。例えば、上述した特許文献1に記載の二次電池の電池容量を増加させるには、活物質層の存在量をより増加させる必要がある。例えば、活物質層をより厚くした場合は、より多くのセルを積層するものに比してセパレータや集電体など充放電に関係しない部材の占める体積を抑制可能であるが、厚さ方向のイオンの伝導距離が長くなり、出力が低下することがあった。一方、比較的薄い活物質層を有するセルをより多く積層した場合は、イオンの伝導距離は短く高出力に対応できるものの、充放電に関係しない部材の占める体積が多くなるため、エネルギー密度を高めることは困難であった。また、特許文献2のリチウム二次電池では、容量特性やサイクル特性を向上することができるとしているが、例えば、出入力特性を高めるなど、まだ十分でなかった。このように、従来の構造ではない、新規な構造の二次電池が求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、新規な構造を有する二次電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、柱状電極を配列させて、電解質でつなぎ合わせた構造とすると、出入力特性を向上させることなどができる新規な構造の二次電池とすることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本明細書で開示する二次電池は、
第1電極活物質を含み所定方向に配列された複数の柱状の第1電極と、
第2電極活物質を含み前記第1電極に対向して配設された第2電極と、
イオン伝導性を有し前記第1電極を被覆しており前記第1電極と前記第2電極との間に介在する電解質と、
少なくとも前記電解質により構成され前記第1電極と前記第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部と、
を備えたものである。
【0008】
本明細書で開示する二次電池の製造方法は、
第1電極活物質を含む複数の柱状の第1電極を、該第1電極と該第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部を形成する間隔を空けて所定方向に配列し、第2電極活物質を含む第2電極とイオン伝導性を有する電解質とを該電解質が前記第1電極上及び前記第1電極と前記第2電極との間に介在され且つ前記繋ぎ部を構成するよう配置して加熱押圧する連結体形成工程、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、新規な構造を有する二次電池を提供することができる。また、このような二次電池では、出入力特性を向上させることなどができる。このような効果が得られる理由は、例えば、第1電極が柱状であり、平面状(層状)の電極に比して第1電極と第2電極との対向面積が増加するためであると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】二次電池20の一例を示す模式図。
図2】二次電池20の一例を示す模式図。
図3】二次電池20の製造工程の一例を示す説明図。
図4】二次電池20Bの一例を示す説明図。
図5】二次電池20Cの一例を示す説明図。
図6】積層構造の二次電池30の製造工程の一例を示す説明図。
図7】柱状電極と積層電極のイオン移動の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(二次電池)
本実施形態で説明する二次電池は、第1電極活物質を含み所定方向に配列された複数の柱状の第1電極と、第2電極活物質を含み第1電極に対向して配設された第2電極と、イオン伝導性を有し第1電極を被覆しており第1電極と第2電極との間に介在する電解質と、少なくとも電解質により構成され第1電極と第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部と、を備えている。この二次電池は、第1電極と第2電極と電解質と繋ぎ部とを有する柱状電極連結体を備えているものとしてもよい。また、二次電池は、柱状電極連結体を1層だけ備えているものとしてもよい。更に、二次電池は、電解質が第1電極上に層状で形成されており、第2電極が電解質上に層状で形成されており、第1電極と電解質と第2電極とを有する電極本体が繋ぎ部により繋がれた柱状電極連結体の構造を有するものとしてもよい。この第1電極は、負極としてもよいし、正極としてもよいが負極であることが好ましい。また、第2電極は、正極としてもよいし、負極としてもよいが、正極であることが好ましい。説明の便宜のため、ここでは、第1電極を負極とし、第2電極を正極とし、リチウムイオンをキャリアとするリチウム二次電池をその主たる一例として以下説明する。
【0012】
第1電極は、第1電極活物質(負極活物質)を含む柱状体である負極としてもよい。この第1電極は、柱状であればよく、その断面は円形や楕円形であってもよいし、四角形や六角形などの多角形であってもよい。また、二次電池では、複数の柱状の第1電極が所定の間隔を空けて所定方向に配列されている。この第1電極は、第1電極活物質としての炭素質材料を含むものとしてもよい。炭素質材料としては、例えば、コークス類や、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のうち1以上などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が好ましい。また、グラファイト構造を有する炭素繊維としてもよい。このような炭素質材料は、例えば、柱状の軸方向(長手方向)に結晶が配向したものが好ましい。また、柱状の軸方向に直交する方向に断面視したときに結晶が中心から外周面側に放射状に配向したものであることが好ましい。あるいは、柱状の負極は、キャリアのイオンを吸蔵放出可能な複合酸化物を柱状に形成したものとしてもよい。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。この負極は、その表面の少なくとも一部に導電成分が形成されているものとしてもよい。この導電成分により、導電性をより高めることができる。この導電成分は、導電性の高い材料であれば特に限定されないが、例えば、炭素質材料や金属としてもよい。また、第1電極は、集電線などの集電部材が埋設されているものとしてもよいし、この集電部材を備えないものとしてもよい。
【0013】
この第1電極は、その直径をD(μm)とし、第1電極間の距離をL(μm)としたとき、0.33≦D/(D+L)を満たすものとしてもよい。D/(D+L)がこの関係を満たすと、第2電極との対向面積を、より大きくすることができ好ましい。このD/(D+L)は、対向面積の観点からは、より大きいことが好ましく、0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。また、第1電極は、D/(D+L)<1を満たすものとしてもよい。D/(D+L)がこの関係を満たすと、第1電極間の距離Lがより大きくなるため、例えば、繋ぎ部が柔軟性を有する場合、柱状電極連結体がたわむことができ、形状の自由度がより向上する。このD/(D+L)は、形状の自由度の観点からは、より小さいことが好ましく、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。第1電極は、その直径D(μm)が20μm以上800μm以下の範囲であるものとしてもよい。直径Dが20μm以上では連結体の形成プロセスを容易にすることができ、800μm以下では電極中のイオン拡散抵抗の増加をより抑制でき、好ましい。この直径Dは、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、直径Dは、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。また、第1電極間の距離L(μm)は、5μm以上1500μm以下の範囲であるものとしてもよく、10μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましい。
【0014】
第2電極は、第2電極活物質(正極活物質)を含み第1電極に対向して配設されている正極としてもよい。この第2電極は、電解質上に層状で形成されているものとしてもよい。また、第2電極は、電解質の表面に形成された合材層としてもよい。第2電極は、その厚さが5μm以上200μm以下の範囲であるものとしてもよく、10μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。第2電極の厚さは、正負極容量比に応じて適宜定めるものとしてもよい。第2電極は、例えば、正極活物質と、必要に応じて導電材と、結着剤とを混合し成形したものとしてもよい。正極活物質は、例えば、キャリアであるリチウムを吸蔵放出可能な材料が挙げられる。正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属とを有する化合物、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。具体的には、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoaNibMnc2(a>0、b>0、c>0、a+b+c=1)、Li(1-x)CoaNibMnc4(0<a<1、0<b<1、1≦c<2、a+b+c=2)などとするリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLiFePO4とするリン酸鉄リチウム化合物などを正極活物質として用いることができる。これらのうち、リチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、例えば、LiCo1/3Ni1/3Mn1/32やLiNi0.4Co0.3Mn0.32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素、例えば、AlやMgなどの成分を含んでもよい趣旨である。
【0015】
第2電極に含まれる導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。結着材は、活物質粒子や導電材粒子を繋ぎ止めて所定の形状を保つ役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
【0016】
第2電極において、正極活物質の含有量は、より多いことが好ましく、第2電極の質量全体に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。導電材の含有量は、第2電極の全体の質量に対して0質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。このような範囲では、電池容量の低下を抑制し、導電性を十分に付与することができる。また、結着材の含有量は、第2電極の質量全体に対して0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0017】
電解質は、キャリアであるイオン(例えばリチウムイオン)のイオン伝導性を有し第1電極を被覆しており第1電極と第2電極との間に介在するものである。この電解質は、第1電極と第2電極とを絶縁するものである。電解質は、第1電極の外周面の全体に形成されており、第1電極上に層状で形成されているものとしてもよい。この電解質は、その厚さt(μm)が2μm以上15μm以下の範囲であることが好ましい。厚さtが2μm以上では、機械的強度を確保することができ、第1電極及び第2電極の短絡をより防止することができる。また、厚さtが15μm以下では、電解質の占める体積を低減することができ、エネルギー密度を向上することができる。また、イオン伝導する距離をより短縮可能であり、出入力性能をより向上することができる。この厚さtは、機械的強度の観点からは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、厚さtは、エネルギー密度の観点からは12μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0018】
電解質は、イオン伝導性と絶縁性とを有するポリマーが好適である。この電解質は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)や、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体や、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びPMMAとアクリルポリマーとの共重合体などが挙げられる。例えば、PVdFとHFPとの共重合体では、電解液の一部がこの膜を膨潤ゲル化し、イオン伝導膜となる。また、電解質は、キャリアであるイオンを伝導する電解液を含むものとしてもよい。この電解液は、例えば、非水系溶媒などが挙げられる。電解液の溶媒としては、例えば、非水電解液の溶媒などが挙げられる。この溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。この電解液には、二次電池のキャリアであるイオンを含む支持塩を溶解したものとしてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
【0019】
あるいは、電解質は、固体電解質であるものとしてもよい。固体電解質としては、例えば、無機固体電解質、あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質との混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを膜状にしたものを利用することができる。無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LISICONと呼ばれるLi14Zn(GeO44、硫化物のLi3.25Ge0.250.754、ペロブスカイト型のLa0.5Li0.5TiO3、(La2/3Li3x1/3-2x)TiO3(□:原子空孔)、ガーネット型のLi7La3Zr212、NASICON型と呼ばれるLiTi2(PO43、Li1.30.3Ti1.7(PO34(M=Sc,Al)などが挙げられる。また、ガラスセラミックスである80Li2S・20P25(mol%)組成のガラスから得られたLi7311、さらに硫化物系で高い導電率を持つ物質であるLi10Ge2PS2なども挙げられる。ガラス系無機固体電解質ではLi2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-Li4SiO4、Li2S-P25、Li3PO4-Li4SiO4、Li3BO4-Li4SiO4、そしてSiO2、GeO2、B23、P25をガラス系物質としてLi2Oを網目修飾物質とするものなどが挙げられる。また、チオリシコン固体電解質としてLi2S-GeS2系、Li2S-GeS2-ZnS系、Li2S-Ga22系、Li2S-GeS2-Ga23系、Li2S-GeS2-P25系、Li2S-GeS2-SbS5系、Li2S-GeS2-Al23系、Li2S-SiS2系、Li2S-P25系、Li2S-Al23系、LiS-SiS2-Al23系、Li2S-SiS2-P25系などの固体電解質が挙げられる。
【0020】
繋ぎ部は、少なくとも電解質により構成され第1電極と第1電極とをつなぎ合わせる部位である。この繋ぎ部は、第1電極が揺動可能な程度に柔軟性を有することが好ましい。繋ぎ部が柔軟性を有し、柱状電極連結体が1層だけである場合、連結体を曲げることなどができるため、形状の自由度がより向上する。この繋ぎ部上に第2電極が形成されていてもよい。即ち、第2電極は、複数の第1電極に亘って形成されているものとしてもよい。この二次電池は、第1電極と電解質と第2電極とを有する電極本体が繋ぎ部により繋がれた柱状電極連結体の構造を有するものとしてもよい。この繋ぎ部は、その厚さが5μm以上200μm以下の範囲であるものとしてもよく、10μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。
【0021】
第1電極や第2電極には、集電部が接続されているものとしてもよい。集電部は、導電性を有する部材であり、第1電極の端部か、第2電極の表面又は端部に電気的に接続されている。この集電部は、例えば、カーボンペーパー、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、白金、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化(還元)性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀、白金、金などで処理したものも用いることができる。集電部の形状は、複数の第1電極や第2電極が接続できるものであれば特に限定されず、例えば、板状、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0022】
この二次電池において、第2電極活物質(正極活物質)の容量に対する第1電極活物質(負極活物質)の容量の比である電極容量比(負極容量/正極容量)は、1.0以上1.5以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.2以下の範囲である。第2電極の厚さは、第1電極の直径及び電極容量比に応じて適宜設定されるものとしてもよい。この第2電極の厚さは、例えば、第1電極上に形成された部分のうち最大の厚さをいうものとしてもよい。
【0023】
図1、2は、二次電池20の一例を示す模式図である。この二次電池20は、図1、2に示すように、所定方向に所定間隔で配列された複数の柱状の第1電極21と、第1電極21に対向して配設された第2電極22と、第1電極21を被覆しており第1電極21と第2電極22との間に介在する電解質24と、第1電極21と第1電極21とをつなぎ合わせる繋ぎ部26と、を備えている。また、二次電池20は、第1電極21と第2電極22と電解質24とを有する電極本体25が繋ぎ部26により繋がれた柱状電極連結体10の構造を有するものとしてもよい。繋ぎ部26が柔軟性を有し、柱状電極連結体10を1層だけ備えた二次電池20では、図2に示すように、柱状電極連結体10を曲げることができる。
【0024】
(二次電池の製造方法)
本開示の二次電池の製造方法は、柱状電極連結体を形成する連結体形成工程と、各電極に集電部を形成する集電部形成工程とを含むものとしてもよい。各工程では、上述した二次電池の部材や組成、形状、構造などを適宜用いるものとする。なお、集電部形成工程は適宜省略してもよい。連結体形成工程では、第1電極活物質を含む複数の柱状の第1電極を、第1電極と第1電極とをつなぎ合わせる繋ぎ部を形成する間隔を空けて所定方向に配列し、第2電極活物質を含む第2電極とイオン伝導性を有する電解質とを電解質が第1電極上及び第1電極と第2電極との間に介在され且つ繋ぎ部を構成するよう配置して加熱押圧する処理を行う。この工程では、第1電極と第2電極と電解質と繋ぎ部とを有する柱状電極連結体を1層だけ形成するものとしてもよい。また、この工程では、第1電極の直径をD(μm)とし、第1電極間の距離をL(μm)としたとき、0.33≦D/(D+L)を満たすよう処理するものとしてもよい。また、この工程では、D/(D+L)<1を満たすよう処理するものとしてもよい。この工程で得られた柱状電極連結体は、密閉部材に密閉され、電解液が注入されるものとしてもよい。集電部形成工程では、第1電極に集電部(集電タブ)を形成したり、第2電極の外面に集電体を形成する処理を行う。
【0025】
図3は、柱状の第1電極21を連結した柱状電極連結体を有する二次電池20の製造工程の一例を示す説明図である。この製造方法において、まず、支持体13上に形成した第2電極活物質を含む第2電極層12と、電解質層14とを用意する(図3(a))。支持体13は、例えばAl箔などの金属箔を用いることができる。次に、支持体13に形成した第2電極層12と電解質層14とを貼り合せ、プレスする(図3(b))。続いて、支持体13を第2電極層12から剥離することで、正極合材を電解質層に転写させ、第2電極層12/電解質層14の接合体を得る(図3(c))。この接合体は、2枚作製する。次に、柱状の第1電極11を所定間隔で整列させ、その上下を接合体で挟み(図3(d))、熱融着などにより電解質層14を接合し、柱状電極連結体を得る(図3(e))。柱状電極連結体の上面と下面の第2電極22に集電体28を貼り合わせる。集電体28に集電タブ29を接続し、第1電極21に集電タブ27を接続し、密封容器に入れ、電解液を注液して封止し、柱状電極連結体を有する二次電池20を得ることができる(図3(f))。
【0026】
以上詳述した二次電池及びその製造方法では、新規な構造を有する二次電池を提供することができる。また、このような二次電池では、出入力特性を向上させることなどができる。このような効果が得られる理由は、例えば、第1電極が柱状であり、平面状(層状)の電極に比して第1電極と第2電極との対向面積が増加するためである。また、繋ぎ部が柔軟性を有し、柱状電極連結体を1層だけ有するものであれば、繋ぎ部26で曲げることができるため、形状の自由度をより高めることができ、例えば、曲面を有する部材などに配設することができる。
【0027】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
例えば、上述した実施形態では、二次電池において、柱状の第1電極を負極とし、第1電極を覆う第2電極を正極として説明したが、特にこれに限定されず、柱状の第1電極を正極とし、第1電極を覆う第2電極を負極としてもよい。
【0029】
また、上述した実施形態では、二次電池のキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、柱状の負極は、円柱形状である例を説明したが、特にこれに限定されず、四角柱や六角柱などの形状としてもよい。図4は、四角柱状の第1電極21Bを有する二次電池20Bの一例を示す説明図である。図5は、六角柱状の第1電極21Cを有する二次電池20Cの一例を示す説明図である。このような形状の柱状の第1電極を用いても、二次電池を作製することができる。
【実施例
【0031】
以下には、上述した二次電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。まず、二次電池の構造について考察した結果を説明する。なお、実験例4~11、13が本開示の実施例であり、実験例1~3、12、14が比較例に相当する。
【0032】
(実験例1~12)
まず、図1に示した二次電池20の構造について検討した。円柱状の電極(負極)の直径D(μm)と電極間の距離L(μm)との関係であるD/(D+L)を求め、電極及び第2電極(正極)の対向面積の関係を求めた。表1に、D/(D+L)と正負極の対向面積との関係をまとめた(実験例1~11)。また、平面の正負極と電解質とを積層した平板積層体(図6参照)を実験例12とした。
【0033】
図1に示すように、直径Dの円柱状電極を間隔Lを介して複数本配列させ、全体の幅がXになったセルを考える。なお、二次電池の奥行、すなわち円柱状電極の長さをYとする。幅Xに整列する柱状電極の本数は、X/(D+L)で表される。円柱状電極の表面積を正負極対向面積と考えると、対向面積=πD×Y×X/(D+L)(=円柱状電極側面積×本数)であり、対向面積=π(D/(D+L))×XYである。一方、幅X、奥行Yの平板積層体セル(図6)を考えると、対向面積=XYである。理解を容易にするため、X=Y=1で考えると、平板積層体セルの対向面積が1のとき、柱状電極配列セルの対向面積はπ(D/(D+L))である。D/(D+L)を変数として、柱状電極配列セルの対向面積を計算すると、0.33≦D/(D+L)<1、即ち、0<L≦2Dを満たすとき、円柱状電極配列セルの対向面積が平板積層セルのそれと比較して大きくなることがわかった(表1参照)。なお、表1の対向面積比は、外周XYの大きさが同じ柱状電極連結体と平板積層体とを比較したときに、平板積層体を1としたときの柱状電極連結体の面積の比率を表すものである。
【0034】
【表1】
【0035】
(実験例13)
次に、上記計算結果の妥当性について、柱状電極連結体と平板積層体のセルを作製して検証した。実験例13の柱状電極連結体のセルは、図3に示す作製順に作製した。まず、N-メチルピロリドン(NMP)に溶解させたポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)溶液をガラス基板に塗布・乾燥後、剥離することで、5μmの厚さのPVdF-HFP単離膜(電解質層)を得た。正極活物質をLiNi1/3Co1/3Mn1/32(NCM)とし、導電材をカーボンブラックとし、結着材をPVdFとし、それぞれを質量比で92:5:3で混合し、溶媒としてのNMP中で分散させて正極合材とした。この正極合材のペーストを15μmの厚さのAl箔に塗布し乾燥させることで正極合材層を作製した(図3(a))。Al箔に形成した正極合材層と電解質層とを貼り合せ、プレス後(図3(b))、Al箔を剥離することで、正極合材を電解質層に転写させ(図3(c))、正極合材層/電解質層の接合体を得た。この接合体を2枚作製した。次に、直径500μmの円柱状炭素電極5本を500μm間隔で整列させ、その上下を接合体で挟み(図3(d))、熱融着によりPVdF-HFP膜を接合し、柱状電極連結体を得た(図3(e))。柱状電極連結体の上面と下面の正極合材層に集電体としてのAl箔(厚さ10μm)を貼り合せた。正負極タブを接合し電解液を注液後、密封容器に封入し、柱状電極配列セルとした(図3(f))。電解液としては、1MのLiPF6を含むエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で3:4:3で混合したものを用いた。作製した実験例13のセルを用い、電池出力を算出した。電池出力は、25℃で、4.1Vまで充電したセルを、0.05Cで放電させたときの2秒後の電圧と電流値から算出した。
【0036】
(実験例14)
上述した実験例13と同様の部材を用いて平板積層体のセルを作製した。実験例14の平板積層体のセルは、図6に示す作製順に作製した。図6は、積層構造の二次電池30の製造工程の一例を示す説明図である。まず、5μmの厚さのPVdF-HFP単離膜(電解質層)を作製した。集電体36としてのAl箔上に、正極合材を含む第2電極層12を形成し(図6(a))、これと電解質層14とを貼り合せ、プレスした(図6(b))。次に、負極活物質を人造黒鉛とし、結着材をPVdFとし、それぞれを質量比で95:5で混合し、溶媒としてのNMP中で分散させて負極合材とした。この負極合材のペーストを10μmの厚さの集電体38としてのCu箔に塗布し乾燥させることで集電体38に支持された負極合材を含む第1電極層15を作製した(図6(c))。この集電体38に形成した第1電極層15と上記電解質層14とを貼り合わせ、プレス後(図6(d))、集電タブ37,39を集電体36,38に接合し、密封容器に電解液を注液して封止し、平板積層体セルとした(図6(e))。作製した実験例14のセルを用い、実験例13と同様に電池出力を算出した。
【0037】
(結果と考察)
実験例13、14の構造と電池出力(mW)を表2に示した。実験例13、14の正負極の対向面積はそれぞれ、1.96cm2、1.25cm2であり、柱状電極配列セルは平板積層体セルに比べて対向面積が1.54倍大きかった。このセルの出力は柱状電極配列セルが0.613mWであり、平板積層セルで0.123mWであった。出力の差を比較すると、柱状電極配列セルは平板積層セルよりも4.98倍の出力を示した。通常の平板積層体セルにおいては、対向面積を1.54倍にすると、出力も1.54倍増加するものと見積もられる。これに対して、電極構造を柱状電極配列構造にすることで、対向面積を1.54倍にするだけで、出力が4.98倍になることがわかった。この要因は、例えば、負極構造の違いによるものと推察された。図7は、柱状電極(a)と積層電極(b)のイオン移動の模式図である。図7(a)に示す通り、柱状電極を用いた場合、リチウムイオンは電解質部から電極の中心に向かって全方向から拡散することができる(球面拡散)。一方、平板電極を用いた場合、リチウムイオンは図7(b)に示す通り、1方向からの拡散となる。よって、柱状電極を用いたセルでは、平板電極を用いたセルと比べて、負極内のリチウムイオン拡散性が向上すると推察された。このような拡散性の違いにより、柱状電極整列セルでは対向面積の増加以上の出力向上が達成できたものと考えられた。
【0038】
【表2】
【0039】
また、柱状電極配列セルでは、電解質により形成される繋ぎ部を有するため、単一層においては、図2に示すように柔軟性を有し、セルの形状の自由度を高めることができるものと推察された。
【0040】
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
10 柱状電極連結体、11 第1電極、12 第2電極層、13 支持体、14 電解質層、15 第1電極層、20,20B,20C 二次電池、21,21B,21C 第1電極、22 第2電極、24 電解質、25 電極本体、26 繋ぎ部、27 集電タブ、28 集電体、29 集電タブ、36 集電体、37 集電タブ、38 集電体、39 集電タブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7