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特許7180159超音波診断装置用カバー、及びカバー付き超音波診断装置
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  • 特許-超音波診断装置用カバー、及びカバー付き超音波診断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】超音波診断装置用カバー、及びカバー付き超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018134342
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020010801
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】衣川 雄規
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0043205(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシングの所定方向一端部に配置され且つ被検部位にて反射された超音波を受信するセンサを有するプローブと、前記ケーシングに設けられ且つ前記センサにて受信した超音波に応じた画像を映し出すモニターと、を備える超音波診断装置にその全体を覆うように被せられる超音波診断装置用カバーであって、
前記超音波診断装置を挿入可能な開口部を含む分離部分と、前記超音波診断装置全体を収めることができる本体部分と、前記分離部分と前記本体部分との間に形成されている分離部位と、前記分離部分に設けられている内筒部分とを有し、
前記分離部分は、前記分離部位で前記本体部分から分離可能に構成され
前記内筒部分は、前記分離部位を内側から覆うように前記分離部分から前記分離部位を超えて前記本体部分まで延在している、超音波診断装置用カバー。
【請求項2】
前記分離部位は、前記分離部分と前記本体部分との間において周方向全周にわたって形成されるミシン目である、請求項に記載の超音波診断装置用カバー。
【請求項3】
前記内筒部分は、前記分離部分の開口側部分に溶着されている、請求項又はに記載の超音波診断装置用カバー。
【請求項4】
前記開口部である第1開口部と、前記第1開口部と異なる第2開口部とを両端部に夫々有する筒状に形成され、前記第1開口部から前記超音波診断装置を挿入可能になっている筒状体と、
前記第2開口部を塞ぎ、且つ前記プローブが当たるように前記筒状体に設けられ、前記プローブが当たる部分が前記センサと前記被検部位との間の音響結合を可能にするゲル材から成るプローブカバー体とによって袋状を備えている、請求項1乃至の何れか1つに記載の超音波診断装置用カバー。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1つに記載の前記超音波診断装置用カバーと、
前記超音波診断装置とを備える、カバー付き超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置にその全体を覆うように被せられる超音波診断装置用カバー、及びそれを備えるカバー付き超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に針等を穿刺する穿刺作業を行う際、体内における穿刺状態(針の位置、方向、及び深さ等)を確認しながら穿刺作業を行うことが好ましく、穿刺状態を確認する装置として、例えば特許文献1の超音波診断装置が知られている。特許文献1の超音波診断装置は、1つのケーシングにプローブとモニターとが一体的に構成されており、プローブの近くにモニターが配置されている。それ故、プローブを被検部位に押し当てた際、被検部位の近くにモニターを位置させることができ、体内における穿刺状態及び針の両方を見ながら針を穿刺することができる。
【0003】
このような機能を有する超音波診断装置では、穿刺時等において血液等が付着することがある。それ故、特許文献1の超音波診断装置は、穿刺時においてそれ全体がカバーによって覆っており、このカバーによって超音波診断装置自体に血液等が付着することを防ぎ、また超音波診断装置に付着した血液等が飛散することも防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-011766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のカバーでは、前述の通りカバー本体の開口部から超音波診断装置を挿入しているが、その際、超音波診断装置が開口部の外表面に触れることによって開口部の外表面が汚染されることがある。また、開口部を閉じる作業を行う人がその手袋で不意に開口部の外周面に触れ、更に汚染された手袋等で開口部以外に触れることによって、汚染箇所が拡大する。それ故、開口部の外周面に超音波診断装置が触れないようにカバーに挿入することが好ましいが、触れずに挿入することは容易ではない。
【0006】
そこで本発明は、超音波診断装置をカバー本体に入れる際に開口部の外表面が汚染された場合であっても、開口部の外表面の汚染部位から開口部以外の部分へと汚染が拡大することを抑制することができる超音波診断装置用カバー、及びそれを備えるカバー付き超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波診断装置用カバーは、ケーシングと、前記ケーシングの所定方向一端部に配置され且つ被検部位にて反射された超音波を受信するセンサを有するプローブと、前記ケーシングに設けられ且つ前記センサにて受信した超音波に応じた画像を映し出すモニターと、を備える超音波診断装置にその全体を覆うように被せられる超音波診断装置用カバーであって、前記超音波診断装置を挿入可能な開口部を含む分離部分と、前記超音波診断装置全体を収めることができる本体部分とを有し、前記分離部分は、前記本体部分から切り離し可能に構成されているものである。
【0008】
本発明に従えば、超音波診断装置を挿入する際に開口部の外表面が汚染されても、分離部分を本体部分から切り離すことによって開口部の外表面の汚染部位から開口部以外の部分に汚染が拡大することを抑制することができる。例えば、把持者と挿入者とが以下のように役割分担することによって汚染の拡大を抑制することができる。即ち、把持者が開口部を開くようにして本体部分を把持し、挿入者がその開口部から超音波診断装置を挿入する。挿入した後、挿入者が開口部を含む分離部分を本体部分から切り離すことで、外表面に汚染部位を有する開口部をカバーから取り外すことができる。これにより、汚染部位から開口部以外の部分へと汚染が拡大することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開口部の外面が汚染された場合であっても汚染部位から開口部以外の部分へと汚染が拡大することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置用カバーと超音波診断装置とを示す正面図である。
図2図1の超音波診断装置用カバーに超音波診断装置を挿入したカバー付き超音波診断装置を示す正面図である。
図3図1の超音波診断装置用カバーに備わるガイド付きブラケットを示す平面図である。
図4図3のガイド付きブラケットを断面線IV-IVで切断して見た断面図である。
図5図2において超音波診断装置用カバーの本体部分から分離部分を切り離した状態を示す正面図である。
図6図5の超音波診断装置用カバーの本体部分の上側部分を折り返した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態のカバー付き超音波診断装置1について、前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するカバー付き超音波診断装置1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0012】
<カバー付き超音波診断装置>
図1に示すカバー付き超音波診断装置1は、皮下にある血管等を可視化しながら針等を穿刺する際に用いられるものであり、例えば透析治療においてカテーテルを血管に留置する際に用いられる。このような機能を有するカバー付き超音波診断装置1は、超音波診断装置2と、超音波診断装置用カバー3を備えており、超音波診断装置2に超音波診断装置用カバー3を被せて使用される。以下では、超音波診断装置2及び超音波診断装置用カバー3の構成の一例について説明する。
【0013】
<超音波診断装置>
超音波診断装置2は、体表に当てられた状態で被検部位(即ち、皮下組織)に超音波を発振すると共に被検部位にて反射された超音波(即ち、反射波)を受信する。また、超音波診断装置2は、受信した反射波に基づいて画像処理を行い、被検部位の断面を映し出すようになっている。このような機能を有する超音波診断装置2は、ケーシング11と、プローブ12と、モニター13とを有している。ケーシング11は、例えばポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、SAS(シリコン・アクリロニトリル・スチレン)、及びポリプロピレン等の合成樹脂から成り、正面視で大略矩形状且つ断面扁平状の箱体である。また、ケーシング11の所定方向一端部である先端側部分11aは、先端に向かって先細りの台形状に形成され、ケーシング11の先端部11bにはプローブ12が配置されている。即ち、超音波診断装置2は、その先端部2aにプローブ12を有している。また、ケーシング11の中間部分には、その前面11cにモニター13が配置され、モニター13には、画像が映し出される。以下では、プローブ12とモニター13について更に詳細に説明する。
【0014】
プローブ12は、超音波を送受信するように構成されており、センサ12aを有している。センサ12aは、例えば圧電素子等の振動子及び音響レンズによって構成されている。このように構成されているセンサ12aは、ケーシング11の先端部11bに埋め込むように取り付けられ、センサ12aの下端面がケーシング11の先端面と略面一となっている。このように配置されているセンサ12aは、ケーシング11内に収容される制御装置(図示せず)に接続され、制御装置からの指令に応じて超音波を発振する。また、センサ12aは、被検部位で反射される反射波を受信し、受信する超音波に応じた信号を制御装置に出力する。制御装置は、画像処理機能を有しており、その信号に基づいて画像処理を行って画像データをモニター13に出力する。モニター13は、例えば液晶型モニター及び有機EL型モニターであり、画像データに応じた画像を表示可能に構成され、モニター13では、センサ12aで受信した反射波に基づいて作成される画像、例えば被検部位の断面が映し出される。
【0015】
このように構成されている超音波診断装置2は、そのプローブ12を被検部位の体表に当て、その状態でセンサ12aから超音波を発振させる。発振させた超音波は被検部位にて反射され、センサ12aは被検部位にて反射される反射波を受信し、受信する超音波に応じた信号を制御装置に出力する。制御装置は、その信号に基づいて画像処理を行い、被検部位の断面をモニター13に映し出させる。これにより、使用者は、被検部位及び断面映像の両方を見ながら超音波診断装置2を走査させることができる。
【0016】
このような機能を有する超音波診断装置2では、穿刺時等において血液等が付着することがあり、穿刺する度に滅菌処理することが好ましい。しかし、超音波診断装置2では、モニター13に防水処理が施されておらず、超音波診断装置2に滅菌処理を施すと不具合を生じることが考えられる。それ故、超音波診断装置2に対して滅菌処理を行うことが容易ではない。それ故、超音波診断装置2に対して滅菌処理を行わずに使用することを可能にすべく超音波診断装置2には、超音波診断装置用カバー3が被せられる。以下では、超音波診断装置用カバー3について説明する。
【0017】
<超音波診断装置用カバー>
超音波診断装置用カバー3は、超音波診断装置2に血液等が付着しないように又はそこに付着した血液等が飛散しないようするべく、超音波診断装置2に対してその全体を覆うように被せられている。このような機能を有する超音波診断装置用カバー3は、筒状体21と、ガイド付きブラケット22と、プローブカバー体23(図2参照)とを備えた袋状を形成している。筒状体21は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリ塩化ビニル等の材料から成る高い透明性を有する軟質体であり、滅菌処理が施された無菌の軟質体である。このような材料から成る筒状体21は、図1及び2に示すように正面視で上下方向に長尺の大略矩形状に形成されている。また、筒状体21の外形形状は、正面から見た超音波診断装置2と類似しており、下端側部分21aが下端21bに向かって先細りの台形状に形成されている。また、筒状体21は、筒状に形成され、その中に超音波診断装置2を収めることができるようになっている。このように構成されている筒状体21は、その上下両端部に開口部21c,21dを夫々有しており、各開口部21c、21dは、以下のように構成されている。
【0018】
第1開口部である上側開口部21cは、前後方向に開くと、上から見た平面視で大略扁平状にすることができ、開いた際に外形形状が超音波診断装置2の外形形状より大きく形成されている。上側開口部21cは、そこから超音波診断装置2を挿入できるようになっている。また、筒状体21は、分離部分24と本体部分25とを有しており、その上側開口部21cを含む上端側部分が分離部分24を成し、残余の部分が本体部分25を成している。また、分離部分24は、残余の部分である本体部分25から切り離すことができるよう(即ち、分離可能)になっており、筒状体21には、切り離すべく分離部分24と本体部分25との間に分離部位26が形成されている。分離部位26は、筒状体21の周方向全周にわたって形成されており、例えば複数の孔が周方向に間隔をあけて形成されるミシン目である。なお、分離部位26は、筒状体21の下端21bから所定距離Lだけ上方に離して配置され、所定距離Lは、超音波診断装置2の上下方向の長さとその前後方向の厚みとの和以上となっている。
【0019】
また、筒状体21は、両端が開口する筒状部材28から成り、以下のようにして形成されている。即ち、筒状体21は、筒状部材28の一方の開口側部分28aを全周にわたって内側に折り返して形成されており、折り返した後の上端が上側開口部21cを成している。また、折り返すことによって一方の開口側部分28aが分離部分24の内側に配置され、内筒部分27を成している。このように形成されている内筒部分27は、上側開口部21cから分離部位26を超えて本体部分25まで延在しており、分離部位26を周方向全周にわたって内側から覆っている。このように構成されている上側開口部21cに対して下側開口部21dは、以下のように構成されている。
【0020】
即ち、第2開口部である下側開口部21dは、前述の通り下端側部分21aが逆台形状に形成されており、上側開口部21cに比して径が小さくなっている。それ故、超音波診断装置2を筒状体21の上側開口部21cから挿入した後、超音波診断装置2の先端部2aが自然と下側開口部21dに導かれるようになっている。また、下側開口部21dは、超音波診断装置2を筒状体21に挿入した状態で超音波診断装置2の先端部2aの外周縁形状より若干大きく形成されており、下側開口部21dから超音波診断装置2の先端部2aを突き出させることができる。このような形状を有する下側開口部21dには、後で詳述するプローブカバー体23を取り付けるべくガイド付きブラケット22が設けられている。
【0021】
ガイド付きブラケット22は、ブラケット本体31とガイド部32とを有している。ブラケット本体31は、後述するプローブカバー体23より硬質の材料、例えばポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、SAS(シリコン・アクリロニトリル・スチレン)、及びポリプロピレン等の合成樹脂から成る。このような材料から成るブラケット本体31は、正面視で図1及び2に示すように大略板状であって、平面視において図3に示すように左右横長の偏平状且つ環状に形成されている。なお、図3では、説明の便宜上、ガイド部32を図示していない。
【0022】
このような形状を有するブラケット本体31では、その内孔31aが下側に向かって先細りのテーパ状に形成されている(図4参照)。また、内孔31aは、超音波診断装置2の先端部2aの外形形状より若干大きく形成されており、超音波診断装置2の先端部2aを突き出させることができる。このように構成されているブラケット本体31には、先端部2aが突き出た状態で超音波診断装置2を保持すべく一対の係止片33,33が一体的に形成されている。
【0023】
一対の係止片33,33は、板状の部材であり、ブラケット本体31の上面から外側に拡がるように斜め上方に延在している。このように配置されている一対の係止片33,33は、その主面を互いに対向させるように左右に離して配置され、それらの主面の間にケーシング11の先端側部分11aが入れられるようになっている。また、一対の係止片33,33の各々の主面には、係止孔33aが形成されている。更に、ケーシング11の側面には、各係止孔33aに対応させて一対の嵌合凸部11d,11d(図1参照)の各々が形成されている。それ故、ブラケット本体31に対して超音波診断装置2を所定位置まで挿入すると、一対の嵌合凸部11d,11dの各々が対応する係止孔33aに嵌合し、嵌合することで超音波診断装置2がブラケット本体31に係止されて保持される。
【0024】
このように構成されているブラケット本体31の外周面の形状は、下側開口部21dの形状と略同じに形成されている。即ち、ブラケット本体31は、筒状体21の下側開口部21d内に入れられており、筒状体21の下側開口部21dは、全周にわたってブラケット本体31の外周面に固着、より具体的は溶着されている。このようにしてブラケット本体31は、筒状体21の下側開口部21dに設けられており、筒状体21にはこのブラケット本体31を介してプローブカバー体23が設けられている。
【0025】
プローブカバー体23は、音響結合が良好でかつ伸縮可能に構成され、例えばスチレン系、ウレタン系、及びシリコーン系のエラストマーゲル(本実施形態では、スチレン系エラストマーゲル)材から成る。このような材料から成るプローブカバー体23は、略平坦な板状であって平面視で横長の大略矩形に形成されている。より詳しく説明すると、プローブカバー体23は、平面視でブラケット本体31の内孔31aの形状に類似しており、内孔31aより若干大きく形成されている。このように構成されているプローブカバー体23はブラケット本体31に固定されおり、ブラケット本体31は、プローブカバー体23を固定すべく以下のように構成されている。
【0026】
即ち、ブラケット本体31は、図4に示すように上下2つの部材、即ち第1ブラケット部34及び第2ブラケット部35によって構成されている。第1ブラケット部34及び第2ブラケット部35は、共に平面視で左右横長の扁平状且つ環状であり、互いに略同形状にて形成されている。また、第1ブラケット部34は、その上面に一対の係止片33,33が設けられており、第2ブラケット部35の上に重ね合わせるように載せられて互いに係合されている。また、2つブラケット部34,35の間には、プローブカバー体23の外周縁部が介在されており、プローブカバー体23は、その外周縁部を周方向全周にわたって2つのブラケット部34,35によって挟持されている。このようにプローブカバー体23は、2つのブラケット部34,35によって挟持されることによってブラケット本体31に固定され、またブラケット本体31を介して筒状体21に設けられている。
【0027】
このように超音波診断装置用カバー3では、プローブカバー体23を筒状体21の下側開口部21dに設けることによって下側開口部21dが塞がれており、塞ぐことによって超音波診断装置用カバー3が袋状に形成されている。より詳細に説明すると、超音波診断装置用カバー3は、筒状部材28、ガイド付きブラケット22、及びプローブカバー体23によって構成される袋状部材20から成る。袋状部材20は、一方が開口しており、筒状体21を構成する場合と同じくその開口側部分20a(即ち、筒状部材28の一方の開口側部分28a)が内側に折り返されている。このように開口側部分20aが折り返されている袋状部材20によって、内筒部分27を有する超音波診断装置用カバー3が形成されている。このようにして形成されている超音波診断装置用カバー3では、ブラケット本体31に図1及び2に示すようにガイド部32が設けられている。
【0028】
ガイド部32は、留置針等の針装置の針41を穿刺する際に針41を案内して穿刺方向を決定づけるためのものであり、大略ブロック状に形成されている。このような形状を有するガイド部32は、第2ブラケット部35の前面に一体的に取り付けられている。なお、ガイド部32は、必ずしも第2ブラケット部35に設けられている必要はなく、第1ブラケット部34の前面に設けられてもよい。また、ガイド部32は、その前端面32aが第2ブラケット部35の前面に対して前方に所定の角度だけ倒すようにブラケット本体31に取り付けられている。また、ガイド部32には、上下方向に貫通するガイド孔32bが形成されており、ガイド孔32bは、前端面32aと同じく第2ブラケット部35の前面に対して前方に所定の角度を成している。またガイド孔32bは、針41を挿入可能に形成されており、その下から針先41aを突き出させて穿刺部位に穿刺可能に構成されている。また、ガイド部32の前端面32aには、取出し口32cが形成されており、取出し口32cは、ガイド孔32bに挿入した針41を前側に倒して抜けるように形成されている。
【0029】
<装着作業及び穿刺作業>
以下では、超音波診断装置2を使用すべくそれに超音波診断装置用カバー3を被せる装着作業について説明する。なお、装着作業は、超音波診断装置2を挿入する挿入者と、超音波診断装置用カバー3を把持する把持者との2人で行われる。超音波診断装置用カバー3は、無菌状態を保つべく図示しない無菌パック等の袋の中に入れられ、超音波診断装置用カバー3は、使用時に把持者によって無菌パックから取り出される。取り出した後、把持者が超音波診断装置用カバー3の筒状体21の上側開口部21cを前後に開け、次に挿入者が超音波診断装置2を先端部2aから上側開口部21cに挿入する。
【0030】
その後、超音波診断装置2全体を筒状体21内に収めるべく、把持者が筒状体21を立てる又は挿入者が超音波診断装置2を下側開口部21dに向かって押し込む。そうすると、やがて超音波診断装置2の先端部2a(即ち、プローブ12のセンサ12aの部分)がブラケット本体31の内孔31aに入り、更にプローブカバー体23に当たる。筒状体21では、前述の通り、その下端21bと分離部位26との距離、即ちプローブカバー体23と分離部位26との距離が所定距離Lとなっている。それ故、超音波診断装置2をその先端がプローブカバー体23に当たるまで進めることによって、超音波診断装置2全体を筒状体21の本体部分25の中に収めることができる。
【0031】
収めた後、把持者は本体部分25と分離部分24とを別々の手で把持し、分離部位26のミシン目に沿って本体部分25から分離部分24を切り離す(図5参照)。この際、把持者は超音波診断装置2が触れたであろう汚染部位に触れないようにして本体部分25から分離部分24を切り離す。切り離した後、把持者は、本体部分25越しに超音波診断装置2を下方に向かって押す。そうすることによって、把持者は、直接触れることなく超音波診断装置2を押し込むことができる。
【0032】
また、押し込むとプローブカバー体23は超音波診断装置2の先端形状に合わせて伸長し、超音波診断装置2の先端部2aがブラケット本体31から突出する。更に押し続けると、やがて一対の嵌合凸部11d,11dが対応する係止片33,33に当たり、係止片33,33が対応する嵌合凸部11d,11dによって外側に押し退けられる。その後も押し続けて超音波診断装置2を所定位置まで移動させると、一対の嵌合凸部11d,11dが係止孔33a,33aに嵌まり込む。そうすると、一対の係止片33,33が弾性復帰し、超音波診断装置2がブラケット本体31に係合して装着される(図2参照)。
【0033】
装着後、超音波診断装置2を超音波診断装置用カバー3の中に密封すべく、折り返した上側部分25aを粘着テープ又は面ファスナ等を使用して本体部分25の残余の部分に貼り付ける。これにより、超音波診断装置2が超音波診断装置用カバー3の中に収められて密封される(図6参照)。このようにカバー付き超音波診断装置1では、超音波診断装置2に超音波診断装置用カバー3を被せることによって使用可能な状態となり、穿刺作業が行われる。以下では、カバー付き超音波診断装置1を用いた穿刺作業について説明する。
【0034】
まず、使用者は、超音波診断装置2のプローブ12をプローブカバー体23を介して体表に押し当てる。そして、プローブ12から超音波を発振させ、被検部位(所望の穿刺部位付近)の断面をモニター13に映し出させる。なお、この際、音響結合の状態に応じて体表に液状ゲル等を塗布して、音響結合を更に良好にするようにしてもよい。被検部位の断面がモニター13に映し出されると、使用者は、モニター13を見ながら超音波診断装置2を走査し、血管の位置を探る。そして、血管の位置を確認するとガイド部32のガイド孔32bに針組立体の針41を挿入し、針41の針先41aを血管に穿刺する。なお、ガイド孔32bは、そこに挿入されて穿刺される針41とモニター13に映し出される映像との対応するように形成されている。例えば、挿入された針41とモニター13に映し出された針41とが正面視で重なり合うようになっている。これにより、穿刺後の針先41aの位置を事前(即ち、穿刺前)にモニター13によって確認することができる。
【0035】
そして、血管に針先41aが穿刺されたことが確認されると、針41から超音波診断装置2を取り外すべく、取出し口32cを介してガイド孔32bから針41を抜く。即ち、針41に対して超音波診断装置2を離すように後側に倒すことによって、取出し口32cを介してガイド孔32bから針41を抜く。こうすることで、針41をその位置に留置することができ、その後の処置(例えば、透析、投液及び採血等の処置)を施すことができる。
【0036】
このように構成されているカバー付き超音波診断装置1では、滅菌処理されていない超音波診断装置2を上側開口部21cから挿入するので、超音波診断装置2が上側開口部21cの外表面や開口端に触れた際に上側開口部21cの外表面や開口端が汚染されることがある。この状態では、挿入者でない者、例えば把持者等が上側開口部21cの汚染部位に触れたり、また上側開口部21cの汚染部位が本体部分25の外表面に触れたり、別の施術器具が汚染部位に触れたりすることで汚染箇所が各所に拡がる可能性がある。これに関してカバー付き超音波診断装置1では、筒状体21において汚染部位である上側開口部21cを含む分離部分24を本体部分25から切り離すことができるようになっている。これにより、把持者及び使用者が不意に上側開口部21cの外表面の汚染部位を触れ、その他の部位へと汚染が拡大することを抑制することができる。
【0037】
また、超音波診断装置用カバー3では、筒状体21内に超音波診断装置2を収めるので、筒状体21の内面が超音波診断装置2に触れることによって汚染されることがある。超音波診断装置用カバー3が内筒部分27を有していない場合、分離部位26周辺の内面もまた例外なく超音波診断装置2に触れることによって汚染される。それ故、分離部分24を本体部分25から切り離した場合、把持者等が本体部分25の内面であって分離部位26付近に触れることによって汚染されることがある。これに対して超音波診断装置用カバー3では、内筒部分27が分離部位26を超えて本体部分25まで達して分離部位26を覆うように配置されている。それ故、筒状体21に超音波診断装置2が挿入された際に、超音波診断装置2が本体部分25の内面であって分離部位26付近に触れることがなく、その付近が汚染されることを防ぐことができる。また、挿入時において内面が汚染される可能性のある内筒部分27は、分離部分24と一緒に本体部分25から切り離される。それ故、切り離し後において把持者が内筒部分27に触れることによってその触れた部位が汚染されることを防ぐことができる。それ故、切り離した後に本体部分25の上側部分25aを折り返すべく把持者が上側部分25aに触れた際にその触れた部位が汚染されることを抑制することができる。
【0038】
このような機能を有する内筒部分27は、袋状部材20の開口側部分20aを内側に折り返すだけで形成することができる。それ故、上記機能を有する超音波診断装置用カバー3を製造することが容易である。また、分離部分24と本体部分25とを切り離すべく形成される分離部位26もまた、ミシン目で形成されており、その製造が簡単であり且つ切り離し作業を容易にすることができる。なお、内筒部分27は、必ずしも袋状部材20の開口側部分20aを内側に折り返すことによって形成される必要はなく、内筒部分27を成す別の部材を分離部分24に取り付けることによって構成してもよい。分離部位26もまた、必ずしもミシン目に限定されず、ノッチを設けたり、素材や薄さ等を変えたりすることによって本体部分25から分離部分24を切り離しやすくしてもよい。また、分離部分24と本体部分25との固定を硬質部材同士の係合で実現してもよく、係合を解除することで分離部分24と本体部分25とを分離させてもよい。分離部分24と本体部分25とを同一部材で形成することなく別部材としてもよい。
【0039】
[その他の実施形態について]
本実施形態の超音波診断装置用カバー3では、プローブカバー体23がガイド付きブラケット22を介して筒状体21に取り付けられているが、必ずしもガイド付きブラケット22を介する必要はない。即ち、プローブカバー体23を筒状体21に直接設けてもよい。また、ガイド付きブラケット22もまた、その形状が前述するものに限定されず筒状であってもよい。更に、超音波診断装置用カバー3は、必ずしも筒状体21及びプローブカバー体23によって構成されている必要はなく、筒状体21と同じ材料から成る1つの袋状部材によって構成されていてもよい。
【0040】
また、カバー付き超音波診断装置1は、必ずしも穿刺作業に用いられるものに限定されず、被検部位の断面をモニター13に映すだけの場合に用いられてもよい。この場合、ガイド付きブラケット22は、必ずしもガイド部32を有する必要はなく、ガイド付きブラケット22を構成する部材がブラケット本体31だけであってもよい。
【0041】
プローブカバー体23は、その全体が被検部位とプローブ12との間の音響結合を良好なエラストマーゲル、即ちスチレン系、ウレタン系、及びシリコーン系のエラストマーゲルによって構成されているが、必ずしもこのように構成されている必要はない。例えば、プローブカバー体23において少なくとも被検部位とプローブ12との間に位置する部分だけが前述するエラストマーゲルによって構成されていればよい。
【0042】
筒状体21は、ブラケット本体31の外周面に沿わせるようにして固着されているが、必ずしもこのような固着方法である必要はない。ブラケット本体31の内周面に沿わせるようにして固着してもよい。また、固定する方法も固着に限定されず、例えば筒状体21の下側開口部21dをプローブカバー体23と共に2つのブラケット部34,35の間に挟み込んで固定するようにしてよい。
【0043】
また、本実施形態の超音波診断装置用カバー3では、筒状部材28の一方の開口側部分28aを折り返すことによって筒状体21が構成されているが、必ずしもこのように構成されている必要はない。例えば、他の実施形態の筒状体は、以下のように構成されていてもよい。即ち、他の実施形態の筒状体では、分離部分24と内筒部分27とが別々の部材によって構成されている。また、内筒部分27は、大略矩形状のシートを大略筒状に丸められ、その状態で分離部分24の中に配置されている。更に、内筒部分27は、その上側開口部分の外周面を分離部分24の上側開口部分の内周面に対向させて配置され、それらが互いに溶着されている。
【0044】
このように構成されている筒状体では、内筒部分27の上側開口部分の外周面及び分離部分24の上側開口部分の内周面にシーラント層が夫々形成されており、それらに熱を加えることによって内筒部分27の上側開口部分と分離部分24の上側開口部分とが溶着される。分離部分24は、溶着する際、その上側開口部分を閉じるように平たく畳まれた状態となっており、その状態で前記上側開口部及びその付近を外側から挟みつつそこに熱が加えられる。そうすることで内筒部分27の上側開口部分と分離部分24の上側開口部分とが溶着され、第1実施形態の筒状体21と同様の筒状体が構成される。
【0045】
このように、他の実施形態の筒状体では、一方の開口側部分28aを折り返す手順を必要としないので、第1実施形態の筒状体21よりも機械による製造に適している。また、他の実施形態の筒状体では、内筒部分27の上側開口部分の内周面には、シーラント層が形成されておらず、熱を加えても内周面同士が溶着されることがない。それ故、超音波診断装置2を挿入可能な筒状体の上側開口部を形成すべく新たな作業を必要とすることがなく、筒状体の形成が容易である。
【0046】
なお、分離部分24及び本体部分25によって構成される外筒部分は、予め筒状に形成されているものに限定されず、以下のように構成されていてもよい。即ち、2枚のシート状部材を互いに重ね合わせ、その所定方向の両側縁部分を互いに溶着することによって構成してもよく、また1枚のシートを折り返し、互いに重なり合わせた部分を溶着させることによって構成してもよい。第1実施形態の筒状部材28についても同様である。また、内筒部分27もまた1枚のシートを筒状に丸めたものに限定されず、予め筒状に形成されているものを用いてもよい。また、他の実施形態の筒状体において分離部分24に対して内筒部分27が夫々溶着される部位は、必ずしも上側開口部に限定されず、分離部分24の内周面及び内筒部分27の外周面であれば何れの部位であってもよい。また、例えば、内筒部分の上側開口部を外側に折り返してそこに分離部分24を溶着させるような構造であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 :カバー付き超音波診断装置
2 :超音波診断装置
3 :超音波診断装置用カバー
11 :ケーシング
11b :先端部
12 :プローブ
12a :センサ
13 :モニター
20 :袋部材
20a :開口側部分
21 :筒状体
21c :上側開口部(第1開口部)
21d :下側開口部(第2開口部)
23 :プローブカバー体
24 :分離部分
25 :本体部分
26 :分離部位
27 :内筒部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6