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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ロボット、制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
B25J19/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018137653
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020015100
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 勉
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊幸
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-139769(JP,A)
【文献】特開2001-051721(JP,A)
【文献】特開2016-064474(JP,A)
【文献】特開2012-051042(JP,A)
【文献】特開2017-042835(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073052(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0001638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台に対して変位するロボットアームと、を有するロボット本体と、
前記ロボット本体に配置され、前記ロボット本体の振動を検出する振動センサーと、
前記振動センサーからの出力に基づいて、前記ロボット本体と物体との衝突を検出する衝突検出部と、を有し、
前記衝突検出部は、前記振動センサーから出力される振動信号に基づいて前記衝突を検出する第1検出部と、
前記振動信号から第1周波数帯域の振動成分を抽出した第1抽出振動信号に基づいて前記衝突を検出する第2検出部と、
前記振動信号から前記第1周波数帯域と異なる第2周波数帯域の振動成分を抽出した第2抽出振動信号に基づいて前記衝突を検出する第3検出部と、を備えることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記第1検出部は、前記振動信号が第1閾値よりも大きければ前記衝突と判定し、
前記第2検出部は、前記第1抽出振動信号が第2閾値よりも大きければ前記衝突と判定し、
前記第3検出部は、前記第2抽出振動信号が第3閾値よりも大きければ前記衝突と判定する請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記振動センサーの検出レートは、10kHz以上である請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記ロボット本体は、骨格と、前記骨格を覆うカバー部材と、を有し、
前記第2検出部は、前記第1抽出振動信号として、前記振動信号から所定値L1以上でかつ前記所定値L1よりも大きい所定値H1以下の周波数の振動成分を抽出し、
前記第3検出部は、前記第2抽出振動信号として、前記振動信号から所定値L2以上でかつ前記所定値L2よりも大きい所定値H2以下の周波数の振動成分を抽出し、
前記所定値L1は、前記ロボット本体の正常な駆動に起因して生じる周波数fαよりも高く、所定のヤング率よりも大きいヤング率を有する前記物体との衝突により前記骨格に生じる振動の周波数fγよりも低く、前記所定値H1は、前記周波数fγよりも高く、
前記所定値L2は、前記周波数fαよりも高く、前記所定のヤング率よりも大きいヤング率を有する前記物体との衝突により前記カバー部材に生じる振動の周波数fδよりも低く、前記所定値H2は、前記周波数fδよりも高い請求項1ないしのいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
基台と、前記基台に対して変位するロボットアームと、を有するロボット本体と、
前記ロボット本体に配置され、前記ロボット本体の振動を検出する振動センサーと、
前記振動センサーからの出力に基づいて、前記ロボット本体と物体との衝突を検出する衝突検出部と、を備えるロボットの駆動を制御する制御装置であって、
前記衝突検出部は、前記振動センサーから出力される振動信号に基づいて前記衝突を検出する第1検出部と、
前記振動信号から第1周波数帯域の振動成分を抽出した第1抽出振動信号に基づいて前記衝突を検出する第2検出部と、
前記振動信号から前記第1周波数帯域と異なる第2周波数帯域の振動成分を抽出した第2抽出振動信号に基づいて前記衝突を検出する第3検出部と、を備え、
前記第1検出部、前記第2検出部および前記第3検出部での検出結果に基づいて前記ロボット本体の駆動を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
基台と、前記基台に対して変位するロボットアームと、を有するロボット本体と、
前記ロボット本体に配置され、前記ロボット本体の振動を検出する振動センサーと、を備えるロボットの駆動を制御する制御方法であって、
前記振動センサーから出力される振動信号に基づいて前記衝突を検出する第1衝突検出と、
前記振動信号から第1周波数帯域の振動成分を抽出した第1抽出振動信号に基づいて前記衝突を検出する第2衝突検出と、
前記振動信号から前記第1周波数帯域と異なる第2周波数帯域の振動成分を抽出した第2抽出振動信号に基づいて前記衝突を検出する第3衝突検出と、を行い、
前記第1衝突検出、前記第2衝突検出および前記第3衝突検出の結果に基づいて前記ロボット本体の駆動を制御することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット、制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているロボットは、床面に固定されているベース台と、ベース台に回動可能に連結されている基端アームと、基端アームに回動可能に連結されている第1手首要素と、第1手首要素に回動可能に連結されている第1中間アームと、第1中間アームに回動可能に連結されている第2手首要素と、第2手首要素に回動可能に連結されている第2中間アームと、第2中間アームに回動可能に連結されている第3手首要素と、第3手首要素に回動可能に連結されている先端アームと、を有する。また、このロボットは、ベース台と基端アームとの間に配置された第1力センサーおよび第2力センサーを有し、第1力センサーおよび第2力センサーによってロボットと異物との衝突等を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-218094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットの表面やロボットに衝突する異物の硬さ、異物との衝突時間等によっては、特許文献1に記載されているロボットでは、異物との接触を検出できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のロボットは、基台と、前記基台に対して変位するロボットアームと、を有するロボット本体と、
前記ロボット本体に配置され、前記ロボット本体の振動を検出する振動センサーと、
前記振動センサーからの出力に基づいて、前記ロボット本体と物体との衝突を検出する衝突検出部と、を有し、
前記衝突検出部は、前記振動センサーから出力される振動信号に基づいて前記衝突を検出する第1検出部と、
前記振動信号から第1所定値以上の周波数の振動成分を抽出した抽出振動信号に基づいて前記衝突を検出する第2検出部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1実施形態に係るロボットを示す斜視図である。
図2図1に示すロボットのブロック図である。
図3図1に示すロボットが有する振動センサーの斜視図である。
図4図3に示す振動センサーの縦断面図である。
図5図3に示す振動センサーの横断面図である。
図6図3に示す振動センサーが有するセンサーデバイスの断面図である。
図7図6に示すセンサーデバイスが有する力検出素子の断面図である。
図8図1に示すロボットが有する衝突検出部のブロック図である。
図9】振動センサーから出力される振動信号の一例を示すグラフである。
図10図1に示すロボットの制御方法を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2実施形態に係るロボットが有する衝突検出部のブロック図である。
図12】本発明の第3実施形態に係るロボットが有する衝突検出部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明のロボット、制御装置および制御方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットを示す斜視図である。図2は、図1に示すロボットのブロック図である。図3は、図1に示すロボットが有する振動センサーの斜視図である。図4は、図3に示す振動センサーの縦断面図である。図5は、図3に示す振動センサーの横断面図である。図6は、図3に示す振動センサーが有するセンサーデバイスの断面図である。図7は、図6に示すセンサーデバイスが有する力検出素子の断面図である。図8は、図1に示すロボットが有する衝突検出部のブロック図である。図9は、振動センサーから出力される振動信号の一例を示すグラフである。図10は、図1に示すロボットの制御方法を示すフローチャートである。
【0009】
図1および図2に示すロボット100は、ロボット本体1と、ロボット本体1に配置され、ロボット本体1に生じる振動を検出する振動センサー2と、振動センサー2から出力される振動信号Svに基づいてロボット本体1と異物(物体)との衝突を検出する衝突検出部5と、衝突検出部5による検出結果に基づいてロボット本体1の駆動を制御する制御装置6と、を有する。このようなロボット100では、衝突検出部5がロボット本体1と異物との衝突を検出すると、制御装置6は、ロボット本体1の駆動を通常駆動モードから安全駆動モードに切り替えて、ロボット本体1の駆動を通常駆動モードと比べて制限する。これにより、より安全なロボット100となる。
【0010】
<ロボット本体>
ロボット本体1は、エンドエフェクター17が装着されたロボットアーム10を用いて、例えば、精密機器やこれを構成する部品の給材、除材、搬送および組立等の作業を行うシステムである。ロボット本体1は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。図1に示すように、ロボット本体1は、基台110と、基台110に回動可能に連結されているロボットアーム10と、を備える。
【0011】
基台110は、例えば、床、壁、天井、移動可能な台車上等に固定される。また、ロボットアーム10は、基台110に対して回動可能に連結されている第1アーム11と、第1アーム11に対して回動可能に連結されている第2アーム12と、第2アーム12に対して回動可能に連結されている第3アーム13と、第3アーム13に対して回動可能に連結されている第4アーム14と、第4アーム14に対して回動可能に連結されている第5アーム15と、第5アーム15に対して回動可能に連結されている第6アーム16と、第6アーム16に着脱自在に接続されたエンドエフェクター17と、を有する。なお、基台110および第1アーム11~第6アーム16のうちの互いに連結された2つの部材同士を屈曲または回動させる部分が「関節部」を構成している。
【0012】
また、図2に示すように、ロボット本体1は、ロボットアーム10の各関節部を駆動する駆動部130と、ロボットアーム10の各関節部の駆動状態を検出する角度センサー131と、を有する。駆動部130は、例えば、モーターおよび減速機を含んで構成されている。角度センサー131は、例えば、磁気式または光学式のロータリーエンコーダーを含んで構成されている。
【0013】
<振動センサー>
図1に示すように、振動センサー2は、第1アーム11と基台110との間に設けられている。振動センサー2は、ロボットアーム10に付与される外力に起因したロボットアーム10の振動を検知するセンサーである。このような振動センサー2を設けることにより、ロボットアーム10やエンドエフェクター17に外力が付与されたとき、その外力が振動としてロボットアーム10を経て振動センサー2に伝達され、振動センサー2においてその振動の大きさを検知することができる。そのため、振動センサー2が検出する振動に基づいて、ロボットアーム10やエンドエフェクター17と異物との衝突検出が可能となる。
【0014】
本実施形態では、振動センサー2として、振動センサー2に加えられた外力の6軸成分を検出可能な6軸力覚センサーを用いている。なお、6軸成分は、互いに直交する3軸であるα軸、β軸およびγ軸のそれぞれの方向の並進力成分と、これら3軸のそれぞれの軸まわりの回転力成分と、からなる。
【0015】
図3に示すように、振動センサー2は、その中心軸Oまわりに等間隔に配置された4つのセンサーデバイス3と、これらセンサーデバイス3を収納しているケース4と、を有する。このような振動センサー2では、各センサーデバイス3が受けた外力に応じた検出信号を出力し、それらの検出信号を処理することにより、振動センサー2に加えられた外力の6軸成分を検出することができ、検出した6軸成分から振動を検出することができる。
【0016】
ケース4は、第1ケース部材41と、第1ケース部材41に対して間隔を隔てて配置されている第2ケース部材42と、第1ケース部材41および第2ケース部材42の外周部に設けられた側壁部43と、を有する。第1ケース部材41、第2ケース部材42および側壁部43の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料、セラミックス等を用いることができる。
【0017】
図4および図5に示すように、4つのセンサーデバイス3は、それぞれ、第1ケース部材41に設けられた壁部411と、第2ケース部材42に設けられた壁部421とによって挟持されている。また、壁部411と壁部421とを貫通して与圧ボルト49が締結されており、これにより、第1ケース部材41と第2ケース部材42とが固定されると共に、センサーデバイス3が与圧されている。
【0018】
図6に示すように、各センサーデバイス3は、パッケージ31と、パッケージ31に収納された力検出素子32と、を有する。パッケージ31は、基体311と、基体311に接合された蓋体312と、を有する。パッケージ31の内側には気密な収納空間が形成され、収納空間に力検出素子32が収納されている。
【0019】
力検出素子32は、力検出素子32に加えられた外力のA軸方向の成分に応じた電荷Qaおよび力検出素子32に加えられた外力のA軸方向および与圧方向に直交するB軸方向の成分に応じた電荷Qbを出力する機能を有する。力検出素子32は、図7に示すように、A軸方向のせん断力に応じて電荷Qaを出力する第1圧電素子321と、B軸方向のせん断力に応じて電荷Qbを出力する第2圧電素子322と、一対の支持基板323、324と、を有する。
【0020】
また、第1圧電素子321は、図中の右側から、グランド電極層321a、圧電体層321b、出力電極層321c、圧電体層321d、グランド電極層321e、圧電体層321f、出力電極層321g、圧電体層321h、グランド電極層321iが順に積層した構成となっている。このような構成の第1圧電素子321は、出力電極層321c、321gからA軸方向のせん断力に応じた電荷Qaを出力する。一方、第2圧電素子322は、第1圧電素子321に積層されており、図中の右側から、グランド電極層322a、圧電体層322b、出力電極層322c、圧電体層322d、グランド電極層322e、圧電体層322f、出力電極層322g、圧電体層322h、グランド電極層322iが順に積層した構成となっている。このような構成の第2圧電素子322は、出力電極層322c、322gからB軸方向のせん断力に応じた電荷Qbを出力する。なお、本実施形態では、グランド電極層321i、322aが共通化されている。
【0021】
また、圧電体層321b、321d、321f、321h、322b、322d、322f、322hは、それぞれ、水晶で構成されている。これにより、高感度、広いダイナミックレンジ、高い剛性等の優れた特性を有する力検出素子32となる。また、圧電体層321b、321d、321f、321h、322b、322d、322f、322hは、それぞれ、水晶の機械軸であるY軸を厚さ方向とするYカット水晶板で構成され、電気軸であるX軸が矢印の方向を向いている。なお、圧電体層321b、321d、321f、321h、322b、322d、322f、322hは、水晶以外の圧電材料を用いた構成であってもよい。水晶以外の圧電材料としては、例えば、トパーズ、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等が挙げられる。
【0022】
以上のような振動センサー2は、図示しない外力検出回路を有し、外力検出回路は、各センサーデバイス3から出力される電荷Qa、Qbに基づいて、α軸方向の並進力成分Fα、β軸方向の並進力成分Fβ、γ軸方向の並進力成分Fγ、α軸周りの回転力成分Mα、β軸周りの回転力成分Mβ、γ軸周りの回転力成分Mγを演算することができる。
【0023】
なお、前述したように、本実施形態では、振動センサー2が第1アーム11と基台110との間に設けられているが、振動センサー2の配置としては、ロボット本体1に生じる振動を検出することができれば特に限定されず、例えば、ロボットアーム10やエンドエフェクター17に配置されていてもよいし、基台110と床面との間に配置されていてもよい。また、振動センサー2としては、ロボット本体1に生じる振動を検出することができれば、特に限定されず、例えば、加速度センサー、角速度センサー、3軸加速度センサーと3軸角速度センサーとを組み合わせた慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)、トルクセンサー等、いかなるセンサーを用いてもよい。
【0024】
<衝突検出部>
衝突検出部5は、振動センサー2から出力される振動信号Svに基づいて、ロボットアーム10やエンドエフェクター17と異物との衝突を検出する機能を有する。なお、衝突検出部5が衝突検知に用いる振動信号Svとしては、振動センサー2から出力される信号であれば特に限定されない。例えば、本実施形態の振動センサー2は、並進力成分Fα、Fβ、Fγおよび回転力成分Mα、Mβ、Mγに関する信号を出力するため、これらのうちのいずれか1つの信号を振動信号Svとして用いてもよいし、2つ以上の信号を組み合わせた信号を振動信号Svとして用いてもよい。なお、2つ以上の信号を組み合わせるとは、2つ以上の信号を合成した合成信号に基づいて衝突を検出してもよいし、各信号に基づいて別々に衝突を検出してもよい意味である。また、異物としては、特に限定されず、例えば、人間、人間以外の動物、他のロボット、壁、柱、天井等の構造物、落下、投下された飛散物等いかなるものであってもよい。
【0025】
以下では、説明の便宜上、ロボットアーム10と異物との衝突について代表して説明するが、例えば、異物の硬さによっては、衝突時に生じる振動の周波数が大きく異なる。具体的には、衝突の条件が同じであれば、異物が柔らかい程、衝突時に生じる振動の周波数が低くなり、異物が硬い程、衝突時に生じる振動の周波数が高くなる。そのため、衝突検出部5は、異物の硬さに影響を受けることなく精度よく衝突を検知できるように、異物が柔らかい場合用の検出回路と、異物が硬い場合用の検出回路と、を備えている。以下、衝突検出部5の構成について具体的に説明する。
【0026】
図8に示すように、衝突検出部5は、振動センサー2から出力される振動信号Svに基づいてロボットアーム10と異物との衝突を検出する第1検出部51と、振動信号Svから第1所定値L以上の周波数の振動成分を抽出した抽出振動信号Sv’に基づいてロボットアーム10と異物との衝突を検出する第2検出部52と、第1検出部51および第2検出部52の少なくとも一方においてロボットアーム10と異物との衝突が検出されれば、当該衝突が生じたと判断する衝突判断部53と、を有する。このような構成では、第1検出部51によってロボットアーム10と柔らかい異物との衝突が検出され、第2検出部52によってロボットアーム10と硬い異物との衝突が検出される。なお、第1検出部51、第2検出部52および衝突判断部53は、それぞれ、その機能を発揮することができれば、特に限定されず、アナログ回路で構成されていてもよいし、デジタル回路で構成されていてもよい。
【0027】
ここで、「柔らかい異物」とは、所定のヤング率Eよりも小さいヤング率を有する物体を言い、「硬い異物」とは、所定のヤング率Eよりも大きいヤング率を有する物体を言う。また、所定のヤング率Eは、ロボット100の作業内容や周囲の構造物等を考慮して適宜設定することができる。
【0028】
第1検出部51は、振動センサー2から出力された振動信号Svと第1閾値A1とを比較し、その結果を出力するコンパレータ511を有する。例えば、第1閾値A1よりも振動信号Svが高いとコンパレータ511から「1」の信号が出力され、第1閾値A1よりも振動信号Svが低いとコンパレータ511から「0」の信号が出力される。第1閾値A1は、ロボットアーム10の通常の駆動では生じ得ず、かつ、異物との衝突によっては生じ得る電圧値として設定する。これにより、コンパレータ511から「1」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じたと判定でき、反対に、コンパレータ511から「0」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じていないと判定できる。この衝突判定を第1衝突検出とも言う。なお、第1閾値A1の決定方法としては、特に限定されず、例えば、ロボットアーム10を正常な状態で駆動してその際に生じる振動の大きさを計測し、ロボットアーム10を実際に異物に衝突させその際に生じる振動の大きさを計測し、これらの間の値となるように決定すればよい。また、第1閾値A1は、例えば、ロボットアーム10の姿勢や移動側等に応じて変化してもよい。
【0029】
ここで、例えば、異物が樹脂材料、特に軟質樹脂材料で構成されたものや人間のような比較的柔らかい物体の場合、衝突時に生じる振動の周波数が数十~数百Hz程度と比較的低く、ロボットアーム10の駆動に起因して生じる振動と周波数域も近くなり易い。また、衝突時の振動の振幅も比較的大きい。そのため、図9に示す振動の領域Q1のように、ロボットアーム10の駆動に起因する振動と衝突に起因する振動とが重畳した振動信号Svからでも、第1閾値A1と比較することにより、ロボットアーム10と異物との衝突を検出することができる。一方で、例えば、異物が金属材料で構成されたような比較的硬い物体の場合、衝突時に生じる振動の周波数が数kHz程度と比較的高く、ロボットアーム10の駆動に起因して生じる振動と周波数域も大きく異なり易い。また、異物が柔らかい場合と比べて、衝突時の振動の振幅が比較的小さくなり易い。そのため、図9に示す振動の領域Q2のように、衝突により生じる振動が、ロボットアーム10の駆動に起因する振動に隠れてしまい、振動信号Svからでは衝突を検出することが困難である。
【0030】
そこで、衝突検出部5は、硬い異物との衝突を検出するための第2検出部52を有している。図8に示すように、第2検出部52は、振動センサー2からの振動信号Svから硬い異物との衝突に起因する高周波成分を抽出して抽出振動信号Sv’を得るハイパスフィルター521と、抽出振動信号Sv’と第2閾値A2とを比較して、その結果を出力するコンパレータ522と、を有する。このように、ハイパスフィルター521を用いることにより、簡単な回路構成で、振動信号Svから硬い異物との衝突時に生じる高周波成分を抽出して抽出振動信号Sv’を生成することができる。ハイパスフィルター521に設定された第1所定値Lすなわち遮断周波数は、ロボットアーム10の正常な駆動に起因して生じる周波数fαよりも高く、硬い異物との衝突により生じる振動の周波数fβよりも低い。すなわち、fα<L<fβの関係を満足している。なお、ロボットアーム10の正常な駆動とは、決められた作業を何の異常もなく行っている状態を意味する。また、fαは、ロボットアーム10を正常に駆動することにより予め決定することができ、fβは、ロボット100の作業内容や周囲の構造物等から衝突し得る異物を特定することにより決定することができる。
【0031】
コンパレータ522は、抽出振動信号Sv’と第2閾値A2とを比較し、その結果を出力する。例えば、第2閾値A2よりも抽出振動信号Sv’が高いとコンパレータ522から「1」の信号が出力され、第2閾値A2よりも抽出振動信号Sv’が低いとコンパレータ522から「0」の信号が出力される。第2閾値A2は、ロボットアーム10の通常の駆動では生じ得ず、かつ、異物との衝突によっては生じ得る電圧値として設定する。これにより、コンパレータ522から「1」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じたと判定でき、反対に、コンパレータ522から「0」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じていないと判定できる。この衝突判定を第2衝突検出とも言う。なお、第2閾値A2の決定方法としては、特に限定されず、例えば、ロボットアーム10を駆動してその際に生じる振動の大きさを計測し、ロボットアーム10を実際に異物に衝突させその際に生じる振動の大きさを計測し、これらの間の値となるように決定すればよい。また、第2閾値A2は、例えば、ロボットアーム10の姿勢や移動側等に応じて変化してもよい。
【0032】
ここで、振動センサー2のサンプリングスピード、特に検出レート(検出信号を出力する周期)としては、特に限定されないが、10kHz以上であることが好ましく、12kHz以上であることがより好ましい。前述したように、ロボットアーム10と硬い物体とが衝突した場合に生じる振動の周波数が数kHz程度であるため、これよりも振動センサー2のサンプリングスピードを高めることにより、振動センサー2によって、ロボットアーム10と硬い物体とが衝突した場合に生じる振動をより確実に検出することができる。特に、振動センサー2は、前述したように、力検出素子32として水晶を用いている。この水晶は、十分に硬く、ロボットアーム10に加わる力によってはほとんど変形せず、復帰に要する時間を実質的に必要としない。したがって、振動センサー2は、高いサンプリングスピードを実現することができ、ロボット100に特に適したセンサーとなる。
【0033】
衝突判断部53は、第1検出部51および第2検出部52の少なくとも一方においてロボットアーム10と異物との衝突が検出されれば、当該衝突が生じたと判断する機能を有する。図8に示すように、このような衝突判断部53は、OR回路531を有する。OR回路531には、コンパレータ511、522からの信号が入力されるようになっており、コンパレータ511、522の少なくとも一方から「1」の信号が入力された場合には、ロボットアーム10と異物とが衝突したとして「1」の信号を出力し、コンパレータ511、522のそれぞれから「0」の信号が入力された場合には、ロボットアーム10と異物とが衝突していないとして「0」の信号を出力する。このような衝突判断部53を有することにより、異物の硬さに影響されることなく、ロボットアーム10と異物との衝突を検出することができる。なお、本実施形態では、衝突判断部53の構成としては、特に限定されない。
【0034】
以上、衝突検出部5について説明した。上述では、第2検出部52は、ロボットアーム10と硬い異物との衝突を検出する機能を有するとしていたが、ロボット本体1の構成等によっては、ロボットアーム10と柔らかい異物とが衝突した際に、低周波の振動と共に高周波数の振動が生じる場合もある。このような場合には、第2検出部52によって、この高周波の振動を検出することができる。すなわち、第2検出部52は、ロボットアーム10と硬い異物との衝突を検出するたけでなく、ロボットアーム10と柔らかい異物との衝突を検出する機能を有する。
【0035】
<制御装置6>
制御装置6は、衝突検出部5の検出結果に基づいて、ロボットアーム10の駆動を制御する機能を有する。図2に示すように、制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリーと、I/F(インターフェース回路)と、を有する。そして、制御装置6は、メモリーに記憶されているプログラムをプロセッサーが適宜読み込んで実行することにより、ロボットアーム10およびエンドエフェクター17の動作の制御、各種演算および判断等の処理を実現する。また、I/Fは、ロボット本体1、エンドエフェクター17および衝突検出部5のそれぞれと通信可能に構成されている。
【0036】
なお、制御装置6は、図示の構成では、ロボット本体1の基台110内に配置されているが、これに限定されず、例えば、基台110の外部やロボットアーム10内に配置されていてもよい。また、制御装置6には、ディスプレイ等のモニターを備える表示装置、例えばマウスやキーボード等を備える入力装置等が接続されていてもよい。
【0037】
また、制御装置6は、通常動作でロボットアーム10およびエンドエフェクター17を駆動する通常駆動モードと、安全動作でロボットアーム10およびエンドエフェクター17を駆動する安全駆動モードと、を有し、これらを選択することができる。なお、安全駆動モードとしては、特に限定されず、通常駆動モードに対して何らかの制限が加えられているモードとすることができる。具体的には、各アーム11~16の角速度を通常動作よりも低く設定する、各アーム11~16の加速度を通常動作よりも低く設定する、各アーム11~16の回動範囲を通常動作よりも小さく設定する、ロボットアーム10の駆動を停止する等が挙げられる。
【0038】
制御装置6は、衝突検出部5での衝突検出の結果に基づいて通常駆動モードと安全駆動モードとを切り換える。具体的には、制御装置6は、衝突判断部53がロボットアーム10と異物とが衝突していることを示す「1」の信号を出力しているときは、安全駆動モードでロボットアーム10を駆動し、衝突判断部53がロボットアーム10と異物とが衝突していないことを示す「0」の信号を出力しているときは、通常駆動モードでロボットアーム10を駆動する。これにより、異物との衝突が生じているときのロボットアーム10の過度な駆動(高負荷な駆動)が抑制され、ロボットアーム10の故障の可能性を低減することができる。特に、衝突した異物が人間である場合には、人間の安全性を高めることができる。
【0039】
なお、制御装置6は、第1検出部51がロボットアーム10と異物との衝突を検出した場合と、第2検出部52がロボットアーム10と異物との衝突を検出した場合と、でロボットアーム10の駆動制限を異ならせてもよい。この場合、制御装置6は、安全駆動モードとして、第1安全駆動モードと、この第1安全駆動モードとは駆動制限の異なる第2安全駆動モードと、を有し、第1検出部51がロボットアーム10と異物との衝突を検出した場合には第1安全駆動モードでロボットアーム10を駆動し、第2検出部52がロボットアーム10と異物との衝突を検出した場合には第2安全駆動モードでロボットアーム10を駆動すればよい。第1安全駆動モードと第2安全駆動モードとの制限の異なりは、特に限定されず、ロボット100の使用条件によって適宜設定すればよい。例えば、柔らかい異物として人間が想定され、硬い異物としてロボット100の周囲に位置する壁が想定される場合、人間と接触した場合の方がより安全を確保する必要がある。このような場合には、第1安全駆動モードの駆動制限を第2安全駆動モードの駆動制限よりも厳しいものとすればよい。具体的には、各アーム11~16の角速度を第2安全駆動モードよりも低く設定する、各アーム11~16の加速度を第2安全駆動モードよりも低く設定する、各アーム11~16の回動範囲を第2安全駆動モードよりも小さく設定する、ロボットアーム10の駆動を停止する等が挙げられる。
【0040】
以上のように、第1検出部51がロボットアーム10と異物との衝突を検出した場合と、第2検出部52がロボットアーム10と異物との衝突を検出した場合と、でロボットアーム10の駆動制限を異ならせる場合、衝突検出部5は、衝突判断部53を省略してもよい。
【0041】
以上、ロボット100の構成について詳細に説明した。次に、ロボット100の制御方法について、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップS1として、衝突検出部5は、振動センサー2から振動信号Svを取得する。次に、ステップS2として、衝突検出部5は、第1検出部51のコンパレータ511において振動信号Svと第1閾値A1とを比較してロボットアーム10と異物との衝突の有無を検出する。第1検出部51によってロボットアーム10と異物との衝突が検出された場合は、ステップS4として、ロボットアーム10と異物とが衝突したと判断する。一方、第1検出部51によってロボットアーム10と異物との衝突が検出されない場合は、ステップS3として、衝突検出部5は、第2検出部52のコンパレータ522において抽出振動信号Sv’と第2閾値A2とを比較してロボットアーム10と異物との衝突の有無を検出する。第2検出部52によってロボットアーム10と異物との衝突が検出された場合は、ロボットアーム10と異物とが衝突したと判断する。一方、第2検出部52によってロボットアーム10と異物との衝突が検出されない場合は、ステップS1に戻って、ステップS1~S3を繰り返す。このような制御方法によれば、異物が柔らかい場合でも硬い場合でも、すなわち、異物の硬さによらずロボットアーム10と異物との衝突をより精度よく検出することができる。なお、図10では、第1検出部51での衝突検出を第2検出部52での衝突検出よりも先に行っているが、これに限定されず、衝突検出の順番は、逆であってもよいし、第1検出部51での衝突検出と第2検出部52での衝突検出とを並列処理してもよい。
【0042】
このようなロボット100は、前述したように、基台110と、基台110に対して変位するロボットアーム10と、を有するロボット本体1と、ロボット本体1に配置され、ロボット本体1の振動を検出する振動センサー2と、振動センサー2からの出力に基づいて、ロボット本体1と物体としての異物との衝突を検出する衝突検出部5と、を備える。ここで、検出する衝突とは接触も含むものであるので、衝突検出部は、接触検出部とも言える。そして、衝突検出部5は、振動センサー2から出力される振動信号Svに基づいて衝突を検出する第1検出部51と、振動信号Svから第1所定値L以上の周波数の振動成分を抽出した抽出振動信号Sv’に基づいて衝突を検出する第2検出部52と、を有する。このような構成によれば、第1検出部51において、柔らかい異物との衝突を検出することができ、第2検出部52において、硬い異物との衝突を検出することができる。そのため、異物の硬さによらず、ロボット本体1と異物との衝突を精度よく検出することができる。
【0043】
また、制御装置6は、第1検出部51および第2検出部52での検出結果に基づいてロボット本体1の駆動を制御する。これにより、異物と衝突していない状態と、異物と衝突した状態とで、ロボット本体1の駆動をそれぞれより適切に制御することができる。
【0044】
また、前述したように、第1検出部51は、振動信号Svが第1閾値A1よりも大きければ異物と衝突したと判定し、第2検出部52は、抽出振動信号Sv’が第2閾値A2よりも大きければ異物と衝突したと判定する。これにより、より簡単な構成で、異物との衝突を検出することができる。
【0045】
また、前述したように、衝突検出部5は、第1検出部51および第2検出部52の少なくとも一方において異物との衝突が検出されれば、異物との衝突が生じたと判断する衝突判断部53を有する。これにより、異物の硬さによらず、ロボット本体1と異物との衝突を精度よく検出することができる。
【0046】
また、ロボット100は、ロボット本体1の駆動を制御する制御部としての制御装置6を有する。そして、制御装置6は、第1検出部51が異物との衝突を検出した場合と、第2検出部52が異物との衝突を検出した場合と、でロボット本体1に与える駆動制限を互いに異ならせることができる。これにより、状況により適した駆動が可能なロボット100となる。
【0047】
また、前述したように、振動センサー2のサンプリングスピード(検出レート)は、10kHz以上である。これにより、より詳細な振動信号Svを取得することができ、特に、硬い異物との接触をより確実に検出することができる。
【0048】
また、前述したように、ロボット100の制御方法は、振動センサー2から出力される振動信号Svに基づいて異物との衝突を検出する第1衝突検出と、振動信号Svから第1所定値L以上の周波数の振動成分を抽出した抽出振動信号Sv’に基づいて異物との衝突を検出する第2衝突検出と、を行い、第1衝突検出および第2衝突検出の結果に基づいてロボット本体1の駆動を制御する。このような制御方法によれば、第1衝突検出において、柔らかい異物との衝突を検出することができ、第2衝突検出において、硬い異物との衝突を検出することができる。そのため、異物の硬さによらず、ロボット本体1と異物との衝突を精度よく検出することができる。
【0049】
<第2実施形態>
図11は、本発明の第2実施形態に係るロボットが有する衝突検出部のブロック図である。
【0050】
本実施形態に係るロボット100は、衝突検出部5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態のロボット100と同様である。なお、以下の説明では、第2実施形態のロボット100に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図11では、前述した第1実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0051】
図11に示すように、本実施形態の第2検出部52は、振動センサー2からの振動信号Svから高周波成分を抽出して抽出振動信号Sv’を得るバンドパスフィルター523と、抽出振動信号Sv’と第2閾値A2とを比較して、その結果を出力するコンパレータ522と、を有する。このように、バンドパスフィルター523を用いることにより、簡単な回路構成で、振動信号Svから高周波成分を抽出して抽出振動信号Sv’を生成することができる。なお、バンドパスフィルター523のパス領域は、振動信号Svから第1所定値L以上でかつ第1所定値Lよりも大きい第2所定値H以下の周波数の振動成分を抽出する。第1所定値L(パス領域の下限周波数)は、ロボットアーム10の正常な駆動に起因して生じる周波数fαよりも高く、硬い異物との衝突により生じる振動の周波数fβよりも低い。一方、第2所定値H(パス領域の上限周波数)は、周波数fβよりも高い。すなわち、fα<L<fβ<Hの関係を満足している。なお、第1所定値Lから第2所定値Hまでの幅は、なるべく小さく設定することが好ましい。これにより、よりノイズの少ない抽出振動信号Sv’を抽出することができる。
【0052】
以上のように、第2検出部52は、抽出振動信号Sv’として、振動信号Svから第1所定値L以上でかつ第1所定値Lよりも大きい第2所定値H以下の周波数の振動成分を抽出するように構成されている。これにより、例えば、前述した第1実施形態のハイパスフィルター521と比べて、パス領域を狭めることができるため、よりノイズの少ない抽出振動信号Sv’を抽出することができる。
【0053】
以上のような第2実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0054】
<第3実施形態>
図12は、本発明の第3実施形態に係るロボットが有する衝突検出部のブロック図である。
【0055】
本実施形態に係るロボット100は、衝突検出部5の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態のロボット100と同様である。なお、以下の説明では、第3実施形態のロボット100に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図12では、前述した第1実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0056】
図12に示すように、本実施形態の衝突検出部5は、振動センサー2から出力される振動信号Svに基づいてロボットアーム10と異物との衝突を検出する第1検出部51と、振動信号Svから第1周波数域の振動成分を抽出した第1抽出振動信号Sv1に基づいてロボットアーム10と異物との衝突を検出する第2検出部52と、振動信号Svから第2周波数域の振動成分を抽出した第2抽出振動信号Sv2に基づいてロボットアーム10と異物との衝突を検出する第3検出部54と、第1検出部51、第2検出部52および第3検出部54の少なくとも1つにおいてロボットアーム10と異物との衝突が検出されれば、当該衝突が生じたと判断する衝突判断部53と、を有する。
【0057】
このような構成では、第1検出部51によってロボットアーム10と柔らかい異物との衝突が検出され、第2検出部52および第3検出部54によってロボットアーム10と硬い異物との衝突が検出される。ここで、ロボットアーム10と硬い異物との衝突であっても、ロボットアーム10のどの部分と異物とが衝突するかにより、ロボットアーム10に生じる振動の周波数が異なる場合がある。例えば、隣り合うアームとの接続を担う骨格の部分は、十分な剛性を持つ金属材料で構成されるのに対して、この骨格を覆うカバー部材は、軽量化等の目的から金属材料よりも柔らかい樹脂材料が用いられることが多い。このような材料の異なりも一因となり、例えば、骨格と異物とが衝突し、骨格を介して振動センサー2に伝わった振動と、カバー部材と異物とが衝突し、カバー部材を介して振動センサー2に伝わった振動とでは、振動の周波数が異なる場合がある。
【0058】
そこで、本実施形態では、第2検出部52によって骨格を伝わる振動を検出し、第3検出部54によってカバー部材を伝わる振動を検出するように構成されている。第2検出部52は、振動信号Svから高周波成分を抽出して第1抽出振動信号Sv1を得る第1バンドパスフィルター524と、第1抽出振動信号Sv1と第2閾値A2とを比較して、その結果を出力するコンパレータ522と、を有する。なお、第1バンドパスフィルター524のパス領域は、振動信号Svから所定値L1以上でかつ所定値L1よりも大きい所定値H1以下の周波数の振動成分を抽出する。所定値L1(パス領域の下限周波数)は、ロボットアーム10の正常な駆動に起因して生じる周波数fαよりも高く、硬い異物との衝突により骨格に生じる振動の周波数fγよりも低い。一方、所定値H1(パス領域の上限周波数)は、周波数fγよりも高い。すなわち、fα<L1<fγ<H1の関係を満足している。なお、所定値L1~H1までの幅は、なるべく小さく設定することが好ましい。これにより、衝突に起因する振動以外の振動成分を効果的に除去でき、よりノイズの少ない第1抽出振動信号Sv1を生成することができる。
【0059】
コンパレータ522は、第1抽出振動信号Sv1と第2閾値A2とを比較し、その結果を出力する。例えば、第2閾値A2よりも第1抽出振動信号Sv1が高いとコンパレータ522から「1」の信号が出力され、第2閾値A2よりも第1抽出振動信号Sv1が低いとコンパレータ522から「0」の信号が出力される。第2閾値A2は、ロボットアーム10の通常の駆動では生じ得ず、かつ、異物との衝突によっては生じ得る電圧値として設定する。これにより、コンパレータ522から「1」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じたと判定でき、反対に、コンパレータ522から「0」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じていないと判定できる。
【0060】
第3検出部54は、振動信号Svから高周波成分を抽出して第2抽出振動信号Sv2を得る第2バンドパスフィルター543と、第2抽出振動信号Sv2と第3閾値A3とを比較して、その結果を出力するコンパレータ542と、を有する。なお、第2バンドパスフィルター543のパス領域は、振動信号Svから所定値L2以上でかつ所定値L2よりも大きい所定値H2以下の周波数の振動成分を抽出する。所定値L2(パス領域の下限周波数)は、ロボットアーム10の正常な駆動に起因して生じる周波数fαよりも高く、硬い異物との衝突によりカバー部材に生じる振動の周波数fδよりも低い。一方、所定値H2(パス領域の上限周波数)は、周波数fδよりも高い。すなわち、fα<L2<fδ<H2の関係を満足している。なお、所定値L2~H2までの幅は、なるべく小さく設定することが好ましい。これにより、衝突に起因する振動以外の振動成分を効果的に除去でき、よりノイズの少ない第2抽出振動信号Sv2を生成することができる。
【0061】
コンパレータ542は、第2抽出振動信号Sv2と第3閾値A3とを比較し、その結果を出力する。例えば、第3閾値A3よりも第2抽出振動信号Sv2が高いとコンパレータ542から「1」の信号が出力され、第3閾値A3よりも第2抽出振動信号Sv2が低いとコンパレータ542から「0」の信号が出力される。第3閾値A3は、ロボットアーム10の通常の駆動では生じ得ず、かつ、異物との衝突によっては生じ得る電圧値として設定する。これにより、コンパレータ542から「1」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じたと判定でき、反対に、コンパレータ542から「0」の信号が出力されれば、ロボットアーム10と異物との衝突が生じていないと判定できる。
【0062】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0063】
以上、本発明のロボット、制御装置および制御方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前述した実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【0064】
また、本発明のロボットは、単腕ロボットに限定されず、例えば、双腕ロボット、スカラーロボット等の他のロボットであってもよい。また、ロボットアームが有するアームの数(関節の数)は、前述した実施形態の数に限定されず、1つ以上5つ以下または7つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…ロボット本体、10…ロボットアーム、11…第1アーム、12…第2アーム、13…第3アーム、14…第4アーム、15…第5アーム、16…第6アーム、17…エンドエフェクター、100…ロボット、110…基台、130…駆動部、131…角度センサー、2…振動センサー、3…センサーデバイス、31…パッケージ、311…基体、312…蓋体、32…力検出素子、321…第1圧電素子、321a…グランド電極層、321b…圧電体層、321c…出力電極層、321d…圧電体層、321e…グランド電極層、321f…圧電体層、321g…出力電極層、321h…圧電体層、321i…グランド電極層、322…第2圧電素子、322a…グランド電極層、322b…圧電体層、322c…出力電極層、322d…圧電体層、322e…グランド電極層、322f…圧電体層、322g…出力電極層、322h…圧電体層、322i…グランド電極層、323…支持基板、324…支持基板、4…ケース、41…第1ケース部材、411…壁部、42…第2ケース部材、421…壁部、43…側壁部、49…与圧ボルト、5…衝突検出部、51…第1検出部、511…コンパレータ、52…第2検出部、521…ハイパスフィルター、522…コンパレータ、523…バンドパスフィルター、524…第1バンドパスフィルター、53…衝突判断部、531…OR回路、54…第3検出部、542…コンパレータ、543…第2バンドパスフィルター、6…制御装置、A1…第1閾値、A2…第2閾値、A3…第3閾値、O…中心軸、Q1…領域、Q2…領域、Qa…電荷、Qb…電荷、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、Sv…振動信号、Sv’…抽出振動信号、Sv1…第1抽出振動信号、Sv2…第2抽出振動信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12