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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/06 20060101AFI20221122BHJP
   F16D 3/26 20060101ALI20221122BHJP
   B62D 1/20 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
F16D1/06 210
F16D3/26 X
B62D1/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018140263
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020016299
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】狩野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小池 康男
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/008754(WO,A1)
【文献】特開2009-234542(JP,A)
【文献】特開2003-136907(JP,A)
【文献】特開2012-021594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/06
F16D 3/26
B62D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1歯を内周面に有する環状の基部を含むヨークと、
複数の前記第1歯と噛み合う複数の第2歯を外周面に有するシャフトと、
を備え、
前記シャフトは、
前記第2歯を有する第1大径部と、
前記シャフトの軸方向において前記第1大径部とは異なる位置に配置され、且つ前記第2歯を有する第2大径部と、
前記第1大径部と前記第2大径部との間に配置され、且つ前記第1大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、
を備え
前記小径部は、前記第2歯の歯丈よりも小さい歯丈を有し、且つ複数の前記第1歯と噛み合う複数の第3歯を備え、
前記第2歯および前記第3歯は、前記第1歯と噛み合う位置で、前記第1歯に当接する
ジョイント。
【請求項2】
前記シャフトは、先端に配置される第1テーパー部を備え、
前記第1テーパー部の外径は、前記シャフトの先端に向かって小さくなる
請求項に記載のジョイント。
【請求項3】
前記第1大径部は、前記小径部に対して前記シャフトの先端側に配置され、
前記シャフトは、前記小径部と前記第2大径部との間に配置される第2テーパー部を備え、
前記第2テーパー部の外径は、前記小径部に向かって小さくなる
請求項1または2に記載のジョイント。
【請求項4】
前記ヨークは、2つのヨークアームと、2つの前記ヨークアームを連結する前記基部と、を備え、
前記基部は、円筒状の円筒部と、前記円筒部及び2つの前記ヨークアームを連結する環状の拡大部と、を備え、
前記拡大部の外径は、前記ヨークアームに向かって大きくなっており、
前記円筒部の前記拡大部側の端部は、前記軸方向に対して直交する径方向において前記小径部と重なる
請求項1からのいずれか1項に記載のジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、操作者(運転者)のステアリングホイールに対する操作を車輪に伝えるための装置としてステアリング装置が設けられている。ステアリング装置は、ユニバーサルジョイントを介してステアリングシャフトに接続される中間シャフトを備える。特許文献1には、中間シャフトの一例が記載される。特許文献1において、中間シャフトは、ユニバーサルジョイントのヨークに圧入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-145945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中間シャフトをヨークに圧入する時の圧入力は小さい方が望ましい。圧入力のバラツキも、小さい方が望ましい。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、圧入力を小さくでき且つ圧入力のバラツキを抑制できるジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の第1態様のジョイントは、複数の第1歯を内周面に有するヨークと、複数の前記第1歯と噛み合う複数の第2歯を外周面に有するシャフトと、を備え、前記シャフトは、前記第2歯を有する第1大径部と、前記シャフトの軸方向において前記第1大径部とは異なる位置に配置され、且つ前記第2歯を有する第2大径部と、前記第1大径部と前記第2大径部との間に配置され、且つ前記第1大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、を備える。
【0007】
これにより、シャフトがヨークに圧入される時の有効圧入長さ(又は圧入に関する面積)が低減する。ヨークの内径の変化(シャフトとヨークとの間の締め代の変化)が抑制される。したがって、ジョイントは、圧入力を小さくでき且つ圧入力のバラツキを抑制できる。
【0008】
上記のジョイントの望ましい態様として、前記小径部は、前記第2歯の歯丈よりも小さい歯丈を有する複数の第3歯を備える。
【0009】
これにより、シャフトがヨークに圧入される時に、ヨークの第1歯が第3歯に案内される。第3歯によって、シャフト及びヨークの相対的な回転が規制される。シャフトに対するヨークの周方向の位置ずれが抑制される。このため、ジョイントは、圧入力をより小さくでき且つ圧入力のバラツキをより抑制できる。
【0010】
上記のジョイントの望ましい態様として、前記シャフトは、先端に配置される第1テーパー部を備え、前記第1テーパー部の外径は、前記シャフトの先端に向かって小さくなる。
【0011】
これにより、シャフトがヨークに圧入される時に、シャフトがヨークの縁に引っ掛かりにくくなる。したがって、シャフト及びヨークの組み立てが容易になる。
【0012】
上記のジョイントの望ましい態様として、前記第1大径部は、前記小径部に対して前記シャフトの先端側に配置され、前記シャフトは、前記小径部と前記第2大径部との間に配置される第2テーパー部を備え、前記第2テーパー部の外径は、前記小径部に向かって小さくなる。
【0013】
これにより、シャフトがヨークに圧入される途中において、シャフトがヨークの縁に引っ掛かりにくくなる。したがって、シャフト及びヨークの組み立てが容易になる。
【0014】
上記の目的を達成するため、本開示の第2態様のジョイントは、複数の第1歯を内周面に有するヨークと、複数の前記第1歯と噛み合う複数の第2歯を外周面に有するシャフトと、を備え、前記ヨークは、前記第1歯を有する第1小径部と、前記シャフトの軸方向において前記第1小径部とは異なる位置に配置され、且つ前記第1歯を有する第2小径部と、前記第1小径部と前記第2小径部との間に配置され、且つ前記第1小径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、を備える。
【0015】
これにより、シャフトがヨークに圧入される時の有効圧入長さ(又は圧入に関する面積)が低減する。ヨークの内径の変化(シャフトとヨークとの間の締め代の変化)が抑制される。したがって、ジョイントは、圧入力を小さくでき且つ圧入力のバラツキを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、圧入力を小さくでき且つ圧入力のバラツキを抑制できるジョイントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態のステアリング装置の模式図である。
図2図2は、本実施形態のステアリング装置の斜視図である。
図3図3は、本実施形態の中間シャフトの断面図である。
図4図4は、本実施形態のジョイントの断面図である。
図5図5は、本実施形態のヨークの断面図である。
図6図6は、本実施形態のシャフトの側面図である。
図7図7は、図4のA-A断面図である。
図8図8は、第1変形例のシャフトの側面図である。
図9図9は、第2変形例のシャフトの側面図である。
図10図10は、第3変形例のジョイントの断面図である。
図11図11は、第3変形例のヨークの断面図である。
図12図12は、第3変形例のシャフトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
(実施形態)
図1は、本実施形態のステアリング装置の模式図である。図2は、本実施形態のステアリング装置の斜視図である。図3は、本実施形態の中間シャフトの断面図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、第1ユニバーサルジョイント84と、中間シャフト85と、第2ユニバーサルジョイント86と、を備え、ピニオンシャフト87に接合されている。以下の説明においては、ステアリング装置80が搭載された車両における前方は単に前方と記載され、車両における後方は単に後方と記載される。
【0020】
図1に示すように、ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一端は、ステアリングホイール81に連結される。入力軸82aの他端は、出力軸82bに連結される。出力軸82bの一端は、入力軸82aに連結される。出力軸82bの他端は、第1ユニバーサルジョイント84に連結される。
【0021】
図1に示すように、中間シャフト85の一端は、第1ユニバーサルジョイント84に連結される。中間シャフト85の他端は、第2ユニバーサルジョイント86に連結される。中間シャフト85は、第1ユニバーサルジョイント84と第2ユニバーサルジョイント86とを連結している。ピニオンシャフト87の一端は、第2ユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87の他端は、ステアリングギヤ88に連結される。第1ユニバーサルジョイント84及び第2ユニバーサルジョイント86は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト82の回転は、中間シャフト85を介してピニオンシャフト87に伝わる。中間シャフト85は、ステアリングシャフト82に伴って回転する。
【0022】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0023】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80はコラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置である。
【0024】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94と、車速センサ95と、を備える。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ94は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0025】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0026】
図4は、本実施形態のジョイントの断面図である。図5は、本実施形態のヨークの断面図である。図6は、本実施形態のシャフトの側面図である。図7は、図4のA-A断面図である。
【0027】
図4に示すように、本実施形態のジョイント1は、ヨーク4と、シャフト2と、を備える。なお、図4において、シャフト2は、側面図として描かれている。図2に示すように、ジョイント1は、第1ユニバーサルジョイント84と中間シャフト85とを連結する。
【0028】
図3に示すように、第1ユニバーサルジョイント84は、ヨーク4を備える。図5に示すように、ヨーク4は、ヨークアーム48と、ヨークアーム49と、基部47と、を備える。ヨークアーム48及びヨークアーム49は、互いに平行な板状の部材である。ヨークアーム48及びヨークアーム49は、十字軸(スパイダ)を挟んで対向する。基部47は、ヨークアーム48とヨークアーム49を連結する。基部47は、複数の第1歯T1を内周面に備える。第1歯T1は、例えばセレーションである。基部47は、円筒部471と、拡大部472と、を備える。円筒部471は、ヨーク4の端部に配置される。円筒部471は、円筒状の部材であって、一定の外径を有する。拡大部472は、円筒部471とヨークアーム48との間に配置される。拡大部472は、円筒部471とヨークアーム48とを接続する。拡大部472は、円筒部471とヨークアーム49との間に配置される。拡大部472は、円筒部471とヨークアーム49とを接続する。拡大部472は、環状の部材である。拡大部472の外径は、円筒部471からヨークアーム48及びヨークアーム49に向かって大きくなる。拡大部472の外周面は、曲面状である。
【0029】
図3に示すように、中間シャフト85は、アッパーシャフト851と、ロアシャフト852と、を備える。アッパーシャフト851は、中実部材である。ロアシャフト852は、中空部材である。アッパーシャフト851の一部は、ロアシャフト852の内側に配置される。
【0030】
図4に示すように、アッパーシャフト851は、シャフト2を備える。シャフト2は、アッパーシャフト851の後方端部に配置される。シャフト2は、複数の第2歯T2を外周面に備える。シャフト2は、第1大径部21と、第2大径部22と、小径部23と、第1テーパー部24と、を備える。
【0031】
以下の説明において、シャフト2の軸方向は単に軸方向と記載される。軸方向に対して直交する方向は径方向と記載される。シャフト2の回転軸を中心とした円に沿う方向は周方向と記載される。
【0032】
図6に示すように、第1大径部21は、複数の第2歯T2を備える。第2歯T2は、例えばセレーションである。複数の第2歯T2は、ヨーク4の複数の第1歯T1と噛み合う。第1大径部21の外径D21は、軸方向の位置によらずに一定である。外径D21は、複数の第2歯T2の歯先を通る円の直径を意味する。
【0033】
図6に示すように、第2大径部22は、小径部23に対して第1大径部21とは反対側に配置される。第2大径部22は、複数の第2歯T2を備える。複数の第2歯T2は、ヨーク4の複数の第1歯T1と噛み合う。第2大径部22の外径D22は、軸方向の位置によらずに一定である。外径D22は、複数の第2歯T2の歯先を通る円の直径を意味する。第2大径部22の外径D22は、第1大径部21の外径D21と等しい。
【0034】
図6に示すように、小径部23は、第1大径部21と第2大径部22との間に配置される。小径部23の軸方向の長さL23は、圧入部分の軸方向の一端から他端までの距離L1(図4参照)の1/4以上1/2以下であることが望ましい。小径部23は、複数の第3歯T3を外周面に備える。小径部23の外径D23は、第1大径部21の外径D21よりも小さい。外径D23は、複数の第3歯T3の歯先を通る円の直径を意味する。図7に示すように、第3歯T3の歯丈H3は、第2歯T2の歯丈H2よりも小さい。第3歯T3の少なくとも一部は、第1歯T1に接する。
【0035】
例えば、第2歯T2及び第3歯T3は、転造又はプレス加工によって形成される。まず、転造又はプレス加工の前に、シャフト2の一部(小径部23に対応する部分)に環状の凹部が形成される。その後、シャフト2に対して転造又はプレス加工が行われると、凹部に第3歯T3が形成されると共に、凹部でない部分に第2歯T2が形成される。
【0036】
図4に示すように、ヨーク4の円筒部471の拡大部472側の端部Pは、径方向において小径部23と重なる。端部Pは、第1平面Z1と第2平面Z2との間に配置される。第1平面Z1は、小径部23の軸方向における一端(第1大径部21側の端部)を通り且つ軸方向に対して直交する平面である。第2平面Z2は、小径部23の軸方向における他端(第2大径部22側の端部)を通り且つ軸方向に対して直交する平面である。
【0037】
第1テーパー部24は、シャフト2の後方端部に配置される。第1テーパー部24は、第1大径部21に隣接する。第1テーパー部24は、複数の第2歯T2を備える。第1テーパー部24の外径は、後方端部側(第1大径部21とは反対側)に向かって小さくなっている。例えば、第1テーパー部24は、シャフト2の先端部が面取りされることによって形成される。
【0038】
ジョイント1は、シャフト2がヨーク4に圧入されることによって形成される。シャフト2がヨーク4に挿入された後、第1大径部21の一部は、図4に示すようにヨーク4から後方側に突出する。ヨーク4から突出する第1大径部21の一部には、塑性加工(加締め)が施される。図4に示す状態から、第1大径部21の先端が拡げられる。これにより、シャフト2がヨーク4から抜けなくなる。さらに、シャフト2及びヨーク4は、溶接によって接合される。
【0039】
シャフト2がヨーク4に圧入された時、円筒部471がシャフト2を締め付ける力は、拡大部472がシャフト2を締め付ける力よりも小さくなる。圧入の初期において、第1大径部21が円筒部471に圧入されるので、圧入力は小さくなる。その後、第1大径部21が拡大部472に至ると、小径部23が円筒部471に面する。圧入力は、少し増加するものの、小さく保たれる。そして、第1大径部21の先端が拡大部472から抜けると、第2大径部22が円筒部471に圧入され、小径部23が円筒部471の端部Pに重なり始める。第1大径部21のみが拡大部472に接するので、シャフト2のうち拡大部472に接する部分の軸方向における長さは一定となる。その後、シャフト2が所定の位置に至ると、圧入が完了する。圧入が完了した時、円筒部471の端部Pは、径方向において小径部23と重なる。拡大部472は、径方向において小径部23の一端と重なる。第1大径部21の先端は、拡大部472から抜けている。圧入の工程において、比較的高い剛性を有する拡大部472の圧入長さが一定になるので、圧入力の上昇が抑制される。シャフト2とヨーク4との間の締め代の変化に対する圧入力の上昇が小さくなるので、圧入力のバラツキが抑制される。
【0040】
第1大径部21と第2大径部22とは、軸方向に離れている。第1大径部21は、ヨーク4の基部47に設けられた孔の一端に配置される。第2大径部22は、ヨーク4の基部47に設けられた孔の他端に配置される。これにより、ジョイント1は、捩りに対して強くなる。なお、小径部23が軸方向に長いほど圧入力が小さくなる。一方、シャフト2とヨーク4との間の結合強度は、所定の大きさ以上である必要がある。小径部23の軸方向の長さは、シャフト2とヨーク4との間の所定の結合強度に応じて、適切に決められる。
【0041】
なお、ジョイント1は、必ずしも第1ユニバーサルジョイント84とアッパーシャフト851との連結に用いられなくてもよい。例えば、ジョイント1は、ロアシャフト852と第2ユニバーサルジョイント86との連結に用いられてもよい。ジョイント1は、2つの部材の連結のために、広く用いることができる。
【0042】
シャフト2は、上述したような中実部材でなくてもよく、中空部材であってもよい。すなわち、シャフト2は、略円柱状の部材であってもよい。また、シャフト2は、上述した構成を全て備えていなくてもよい。シャフト2は、少なくとも第1大径部21と、第2大径部22と、小径部23を備えていればよい。
【0043】
以上で説明したように、ジョイント1は、複数の第1歯T1を内周面に有するヨーク4と、複数の第1歯T1と噛み合う複数の第2歯T2を外周面に有するシャフト2と、を備える。シャフト2は、第2歯T2を有する第1大径部21と、シャフト2の軸方向において第1大径部21とは異なる位置に配置され且つ第2歯T2を有する第2大径部22と、第1大径部21と第2大径部22との間に配置され且つ第1大径部21の外径D21よりも小さい外径D23を有する小径部23と、を備える。
【0044】
シャフト2をヨーク4に圧入する時の圧入力が大きくなると、圧入不良(シャフト2又はヨーク4の変形、又はシャフト2とヨーク4との引っ掛かり)が生じやすい。圧入不良を生じにくくするためには、圧入力のバラツキが小さい方が望ましい。また、圧入力が大きくなると、部材の寸法の管理を厳しくする必要がある。このため、圧入力は小さい方が望ましい。
【0045】
これに対して、本実施形態のジョイント1においては、シャフト2が小径部23を備えることによって、シャフト2がヨーク4に圧入される時の有効圧入長さ(又は圧入に関する面積)が低減する。ヨーク4の内径の変化(シャフト2とヨーク4との間の締め代の変化)が抑制される。したがって、ジョイント1は、圧入力を小さくでき且つ圧入力のバラツキを抑制できる。
【0046】
さらに、シャフト2が小径部23を備えることによって、シャフト2がヨーク4に圧入される時の圧入力を小さくすることが可能である。また、第1大径部21と第2大径部22の間に小径部23が配置されるので、圧入部分の軸方向の一端から他端までの距離L1(ヨーク4に対するシャフト2の傾きを規制するために有効な長さ)をある程度以上に保つことができる。また、圧入力が小さくなることによって、圧入時にシャフト2又はヨーク4に作用する軸方向に対して傾斜した方向の分力が小さくなる。このため、圧入時におけるヨーク4に対するシャフト2の傾きが抑制される。ヨーク4に対するシャフト2の傾きは、倒れとも呼ばれる。
【0047】
また、ジョイント1において、小径部23は、第2歯T2の歯丈H2よりも小さい歯丈H3を有する複数の第3歯T3を備える。
【0048】
これにより、シャフト2がヨーク4に圧入される時に、ヨーク4の第1歯T1が第3歯T3に案内される。第3歯T3によって、シャフト2及びヨーク4の相対的な回転が規制される。シャフト2に対するヨーク4の周方向の位置ずれが抑制される。このため、ジョイント1は、圧入力をより小さくでき且つ圧入力のバラツキをより抑制できる。また、第3歯T3が設けられることによって、ジョイント1は、より大きいトルクを伝達できる。ジョイント1は、比較的大きなトルクが作用する中間シャフト85及びユニバーサルジョイントの接合構造として好適である。例えば、ジョイント1は、コラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置等に好適である。
【0049】
また、ジョイント1において、シャフト2は、先端に配置される第1テーパー部24を備え、第1テーパー部24の外径は、シャフト2の先端に向かって小さくなる。
【0050】
これにより、シャフト2がヨーク4に圧入される時に、シャフト2がヨーク4の縁に引っ掛かりにくくなる。したがって、シャフト2及びヨーク4の組み立てが容易になる。
【0051】
また、ジョイント1において、ヨーク4は、2つのヨークアーム(ヨークアーム48及びヨークアーム49)と、2つのヨークアームを連結する基部47と、を備える。基部47は、円筒状の円筒部471と、円筒部471及び2つのヨークアームを連結する環状の拡大部472と、を備える。拡大部472の外径は、ヨークアームに向かって大きくなっている。円筒部471の拡大部472側の端部Pは、軸方向に対して直交する径方向において小径部23と重なる。
【0052】
これにより、円筒部471よりも高い剛性を有する拡大部472の圧入長さが一定になる。このため、圧入力の上昇が抑制される。シャフト2とヨーク4との間の締め代の変化に対する圧入力の上昇が小さくなるので、ジョイント1は、圧入力をより小さくでき且つ圧入力のバラツキをより抑制できる。
【0053】
(第1変形例)
図8は、第1変形例のシャフトの側面図である。図8に示すように、第1変形例のジョイント1Aのシャフト2Aは、小径部23Aと、第2テーパー部25と、を備える。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0054】
図8に示すように、小径部23Aは、第1大径部21と第2大径部22との間に配置される。小径部23Aの外径D23Aは、第1大径部21の外径D21よりも小さい。小径部23Aは、円柱状である。
【0055】
例えば、第2歯T2は、転造又はプレス加工によって形成される。まず、転造又はプレス加工の前に、シャフト2Aの一部(小径部23Aに対応する部分)に環状の凹部が形成される。この凹部の直径は、複数の第2歯T2の歯底を通る円の直径以下である。これにより、シャフト2Aに転造又はプレス加工が施されると、第1大径部21及び第2大径部22に第2歯T2が形成される一方で、小径部23Aに歯が形成されない。
【0056】
第2テーパー部25は、小径部23Aと第2大径部22との間に配置される。第2テーパー部25は、小径部23A及び第2大径部22に隣接する。第2テーパー部25は、複数の第2歯T2を備える。第2テーパー部25の外径は、小径部23A側に向かって小さくなっている。例えば、第2テーパー部25は、シャフト2において第2大径部22と小径部23Aとの間の部分が面取りされることで形成される。
【0057】
以上で説明したように、第1変形例において、第1大径部21は、小径部23Aに対してシャフト2Aの先端側に配置される。シャフト2Aは、小径部23Aと第2大径部22との間に配置される第2テーパー部25を備える。第2テーパー部25の外径は、小径部23Aに向かって小さくなる。
【0058】
これにより、シャフト2Aがヨーク4に圧入される途中において、シャフト2Aがヨーク4の縁に引っ掛かりにくくなる。したがって、シャフト2A及びヨーク4の組み立てが容易になる。
【0059】
ジョイント1Aは、比較的小さいトルクが作用する中間シャフト及びユニバーサルジョイントの接合構造として好適である。例えば、ジョイント1Aは、油圧式のパワーステアリング装置、ラックアシスト方式の電動パワーステアリング装置、ピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置等に好適である。
【0060】
(第2変形例)
図9は、第2変形例のシャフトの側面図である。図9に示すように、第2変形例のジョイント1Bのシャフト2Bは、小径部23と、第2テーパー部25と、を備える。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0061】
第2変形例においては、小径部23の第3歯T3によって、ヨーク4の第1歯T1が第3歯T3に案内される。第3歯T3によって、シャフト2及びヨーク4の相対的な回転が規制される。シャフト2に対するヨーク4の周方向の位置ずれが抑制される。さらに、第2テーパー部25によって、シャフト2Bがヨーク4に圧入される途中において、シャフト2Bがヨーク4の縁に引っ掛かりにくくなる。したがって、ジョイント1Bは、圧入力をより小さくでき且つ圧入力のバラツキをより抑制できる。
【0062】
(第3変形例)
図10は、第3変形例のジョイントの断面図である。図11は、第3変形例のヨークの断面図である。図12は、第3変形例のシャフトの側面図である。図10に示すように、第3変形例のジョイント1Cは、ヨーク4Cと、シャフト2Cと、を備える。なお、図10において、シャフト2Cは、側面図として描かれている。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0063】
図11に示すように、ヨーク4Cは、基部47Cを備える。基部47Cは、ヨークアーム48とヨークアーム49を連結する。基部47Cは、複数の第1歯T1を内周面に備える。基部47Cは、円筒部471Cと、拡大部472Cと、第1小径部41と、第2小径部42と、大径部43と、を備える。
【0064】
円筒部471Cは、ヨーク4Cの端部に配置される。円筒部471Cは、円筒状の部材であって、一定の外径を有する。拡大部472Cは、円筒部471Cとヨークアーム48との間に配置される。拡大部472Cは、円筒部471Cとヨークアーム48とを接続する。拡大部472Cは、円筒部471Cとヨークアーム49との間に配置される。拡大部472Cは、円筒部471Cとヨークアーム49とを接続する。拡大部472Cは、環状の部材である。拡大部472Cの外径は、円筒部471Cからヨークアーム48及びヨークアーム49に向かって大きくなる。拡大部472Cの外周面は、曲面状である。
【0065】
図11に示すように、第1小径部41は、円筒部471Cの径方向内側に配置される。第1小径部41は、複数の第1歯T1を備える。複数の第1歯T1は、シャフト2Cの複数の第2歯T2と噛み合う。第1小径部41の内径D41は、軸方向の位置によらずに一定である。内径D41は、複数の第1歯T1の歯底を通る円の直径を意味する。
【0066】
図11に示すように、第2小径部42は、大径部43に対して第1大径部21とは反対側に配置される。第2小径部42は、拡大部472Cの径方向内側に配置される。第2小径部42は、複数の第1歯T1を備える。第2小径部42の内径D42は、軸方向の位置によらずに一定である。内径D42は、複数の第1歯T1の歯底を通る円の直径を意味する。第2小径部42の内径D42は、第1小径部41の内径と等しい。
【0067】
図11に示すように、大径部43は、第1小径部41と第2小径部42との間に配置される。大径部43は、円筒部471Cの径方向内側であり且つ拡大部472Cの径方向内側である位置に配置される。大径部43は、円筒状に形成される。大径部43の内径D43は、第1小径部41の内径D41よりも大きい。大径部43の軸方向の長さL43は、圧入部分の軸方向の一端から他端までの距離L1(図10参照)の1/4以上1/2以下であることが望ましい。
【0068】
例えば、第1歯T1及び第3歯T3は、プレス加工又はブローチ加工によって形成される。まず、転造又はプレス加工の前に、基部47Cの一部(大径部43に対応する部分)に、溝加工によって環状の凹部が形成される。この凹部の内径は、複数の第1歯T1の歯底を通る円の直径以上である。これにより、基部47Cの内周面にプレス加工又はブローチ加工が施されると、第1小径部41及び第2小径部42に第1歯T1が形成される一方で、大径部43には歯が形成されない。
【0069】
図10に示すように、ヨーク4Cの円筒部471Cの拡大部472C側の端部PCは、径方向において大径部43と重なる。端部PCは、第1平面Z1Cと第2平面Z2Cとの間に配置される。第1平面Z1Cは、大径部43の軸方向における一端(第2小径部42側の端部)を通り且つ軸方向に対して直交する平面である。第2平面Z2Cは、大径部43の軸方向における他端(第1小径部41側の端部)を通り且つ軸方向に対して直交する平面である。
【0070】
図12に示すように、シャフト2Cは、本体部28を備える。本体部28は、複数の第2歯T2を備える。複数の第2歯T2は、第1小径部41及び第2小径部42の複数の第1歯T1と噛み合う。本体部28の外径D28は、軸方向の位置によらずに一定である。外径D28は、複数の第2歯T2の歯先を通る円の直径を意味する。
【0071】
なお、大径部43は、複数の歯(第4歯)を備えていてもよい。第4歯の少なくとも一部は、第2歯T2と噛み合う。この場合の大径部43の内径は、複数の第4歯の歯底を通る円の直径を意味する。
【0072】
以上で説明したように、第3変形例のジョイント1Cは、複数の第1歯T1を内周面に有するヨーク4Cと、複数の第1歯T1と噛み合う複数の第2歯T2を外周面に有するシャフト2Cと、を備える。ヨーク4Cは、第1歯T1を有する第1小径部41と、シャフト2Cの軸方向において第1小径部41とは異なる位置に配置され且つ第1歯T1を有する第2小径部42と、第1小径部41と第2小径部42との間に配置され且つ第1小径部41の内径D41よりも大きい内径D43を有する大径部43と、を備える。
【0073】
これにより、シャフト2Cがヨーク4Cに圧入される時の有効圧入長さ(又は圧入に関する面積)が低減する。ヨーク4Cの内径の変化(シャフト2Cとヨーク4Cとの間の締め代の変化)が抑制される。したがって、ジョイント1Cは、圧入力を小さくでき且つ圧入力のバラツキを抑制できる。
【符号の説明】
【0074】
1、1A、1B、1C ジョイント
2、2A、2B、2C シャフト
21 第1大径部
22 第2大径部
23、23A 小径部
24 第1テーパー部
25 第2テーパー部
28 本体部
4、4C ヨーク
41 第1小径部
42 第2小径部
43 大径部
47、47C 基部
471、471C 円筒部
472、472C 拡大部
48、49 ヨークアーム
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
83 操舵力アシスト機構
85 中間シャフト
851 アッパーシャフト
852 ロアシャフト
87 ピニオンシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
92 減速装置
93 電動モータ
94 トルクセンサ
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
P、PC 端部
Z1、Z1C 第1平面
Z2、Z2C 第2平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12