(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化膜、表示素子及び硬化膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20221122BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20221122BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20221122BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20221122BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20221122BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221122BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20221122BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221122BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221122BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20221122BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20221122BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20221122BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20221122BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G03F7/004 507
G03F7/027 515
G03F7/038 501
G03F7/004 503Z
G03F7/029
G03F7/031
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05B33/10
H01L27/32
C08F2/50
C08G59/20
C08F299/02
C08F290/00
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2018155015
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗山 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】一戸 大吾
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-206425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/027
G03F 7/038
G03F 7/029
G03F 7/031
H01L 51/50
H05B 33/22
H05B 33/10
H01L 27/32
C08F 2/50
C08G 59/20
C08F 299/02
C08F 290/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性基を有する化合物
(B)感光剤
(C)熱活性型遅延蛍光化合物を含有する硬化性組成物であって、
前記(B)感光剤が、
1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-アセタート、
1-[9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル]-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、
1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、
1-[9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、
エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、
エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、
エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、
エタノン,1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、
エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)
の群から選ばれる縮合環を含むラジカル重合開始剤であり、
前記(C)熱活性型遅延蛍光化合物が、下記式(1)または式(2)で示される化合物である硬化性組成物。
【化1】
(式(1)、式(2)において、R
1からR
7の少なくとも1つは水素原子、炭素数1から12のアルキル、フェニル基、トリル基、ナフチル基、シアノ基、式(X)で表される基を表す。式(X)において、R
21からR
28は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、<A>か<B>の少なくとも一方を満たす。
<A> R
25とR
26は一緒になって単結合を形成する。
<B>R
27とR
28は、一緒になって置換もしくは無置換のベンゼン環を形成する。)
【請求項2】
上記式(X)が、9-カルバゾリル基、3,6-ジ(t-ブチル)-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基を表すことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A)重合性基を有する化合物の重合性基が、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれる少なくとも一種である請求項1または請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、(D)バインダー樹脂を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(B)感光剤の全含有量に対して、前記(C)熱活性型遅延蛍光化合物の含有量比が、0.01から5の範囲にある請求項1からは請求項4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
以下の工程を含む硬化膜の形成方法
(1)請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の硬化性組成物の塗膜を基板上に形成する工程
(2)前記塗膜を露光する工程又は、80℃以上150℃以下で加熱する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、表示素子及び硬化膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、電子ペーパー素子等の表示素子には、タッチパネルを始めとする電子部品の劣化や損傷を防止するための保護膜、層状に配置される配線間の絶縁性を保つための層間絶縁膜、開口率を上げるための平坦化膜等の硬化膜が設けられている。このような硬化膜の形成には、感放射線性の硬化性組成物が使用されており、例えば基板上に硬化性組成物の塗膜を形成し、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光し、現像液で現像して不要部分を除去し、その後、加熱(ポストベーク)することにより硬化膜が得られる。
【0003】
上記硬化性組成物には、長期間保存しても粘度が過剰に高くならないこと(保存安定性)、及び放射線感度が良好であることが求められる。また、上記硬化性組成物により得られる硬化膜には、硬度が高いこと、及び硬化膜形成の後工程において使用される溶剤に対する耐性(耐溶剤性)に優れることが求められる。
【0004】
さらに、このような硬化膜形成において、通常200℃以上の硬化焼成プロセスから、環境負荷低減、プラスチック基板への対応や耐熱性に乏しい染料や有機発光体の熱劣化を防ぐ観点から、200℃以下による硬化焼成プロセスが検討されている(特開2013-237750号公報、特開2013-237750号公報)。
【0005】
しかし、上記公報に記載の硬化性組成物では、保存安定性及び放射線感度を向上させつつ、低温焼成プロセスにおいても硬度が高く、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-126068号公報
【文献】特開2011-257537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたものであり、その目的は、保存安定性及び放射線感度を向上させつつ、200℃以下による硬化焼成プロセスで得られた膜であっても、硬度が高く、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成できる硬化性組成物、当該硬化性組成物により得られる硬化膜、当該硬化膜を用いた表示素子、並びに当該硬化膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する
硬化性組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(1)[A]重合性基を有する化合物、[B]感光剤、[C]熱活性型遅延蛍光化合物を含有する硬化性組成物である。
【0010】
(2)前記(C)熱活性型遅延蛍光化合物が、下記式(1)で示される化合物である硬化性組成物である。
【0011】
【0012】
式(1)、式(2)において、R1からR7の少なくとも1つは水素原子、炭素数1から12のアルキル、フェニル基、トリル基、ナフチル基、シアノ基、式(X)で表される基を表す。
式(X)において、R21からR28は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、<A>か<B>の少なくとも一方を満たす
<A> R25とR26は一緒になって単結合を形成する。
<B>R27とR28は、一緒になって置換もしくは無置換のベンゼン環を形成する。)
(3)上記式(X)が、9-カルバゾリル基、3,6-ジ(t-ブチル)-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基を表すことを特徴とする硬化性組成物である。
(4)前記(A)重合性基を有する化合物の重合性基が、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれる少なくとも一種である硬化性組成物である。
(5)さらに、(D)バインダー樹脂を含む硬化性組成物である。
(6)前記(B)感光剤が、酸発生剤、塩基発生剤、ラジカル重合開始剤から選ばれる硬化性組成物である。
(7)さらに前記感光剤が縮合環を含むラジカル重合開始剤である硬化性組成物である、
(8)(B)感光剤の全含有量に対して、(C)熱活性型遅延蛍光化合物の含有量比が、0.1から3の範囲にある硬化性組成物である。
(9)以下の工程を含む硬化膜の形成方法
上記硬化性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、前記塗膜を露光又は80℃以上150℃以下で加熱する工程
(10)上記硬化膜の形成方法で得られた硬化膜を有する表示素子
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に述べるが、これに限られることはない。
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、(A)重合性基を有する化合物、(B)感光剤、(C)熱活性型遅延蛍光化合物を含有する硬化性組成物であることを特徴とする。
【0014】
当該硬化性組成物は、[A]重合性基を有する化合物、[B]感光剤、[C]熱活性型遅延蛍光化合物を含有することにより、保存安定性及び放射線感度を向上させつつ、低温焼成プロセスで形成された硬化膜は、硬度が高く、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成することが可能となる。
熱活性型遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADFとも言う)は、通常起こらない三重項励起子から一重項励起子への変換を経由して発光する現象をいい、熱により活性化され、また通常の蛍光材料よりも長い蛍光寿命を示す。光変換効率を向上できる次世代有機EL発光材料として注目されている。本願発明では、TADFを起こす化合物と類似構造を有する感光剤と組み合わせて用いることで、TADFが発生する温度領域で硬化反応が進行し、硬化膜を形成することを見出した。
通常の硬化膜の形成は、硬化性組成物で塗布膜を形成し、露光により[B]感光剤が感光し重合開始剤種を生成し、[A]重合性基を有する化合物の架橋反応を開始させ硬化膜を形成する。さらに、通常の硬化プロセスでは形成した架橋構造をさらに強固な架橋構造とするため200℃以上に加熱する。通常は光硬化、熱硬化により硬化膜を形成する。
しかし、本発明においては、上記200℃以上の高温加熱焼成プロセスに代わりにTADF効果を用いて硬化反応を行う。室温よりも高い温度(50から100℃)でTADF効果が起こるような一重項励起状態のエネルギー順位が近い感光剤を組み合わせて用いる。
TADF効果が起こる材料から 感光剤に電子移動が起こり、感光剤が励起されることで重合開始剤種が発生し、重合開始剤種の発生により再度硬化反応が進行したと考えられる。これにより、(C)熱活性型遅延蛍光化合物を使用することで、高温プロセスなしで硬化膜を形成できると推察される。
【0015】
まず、本発明の硬化性組成物に含まれる[A]重合性基を有する化合物について発明する。
<[A]重合性基を有する化合物>
本発明の[A]重合性基を有する化合物は、1分子中に1以上の重合性基を有する化合物であり、重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選ばれる少なくとも一種である。[A]重合性基を有する化合物は、単量体化合物であってもよく、重合体であってもよい。
【0016】
[A]重合性基を有する化合物の単量体化合物の重合性基としては、ラジカル重合性の観点から、(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有する重合性化合物が好ましい。これらの化合物を含むことで、得られる硬化膜の硬度を増加することが可能であり、硬化膜の基板への密着性を向上させることができる。
【0017】
このような化合物の具体例として、以下に示す化合物を挙げることができる。
例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが、重合性と形成される硬化膜の強度が向上する点から好ましい。また、ビニルスルフィド誘導体、(メタ)アクリレート誘導体ビニルスルホキシド誘導体もしくはビニルスルホン誘導体でビニル基を有する化合物を使用することも可能である。これらの化合物は、感度向上や硬化性組成物の保存安定性を良好に保つことができる点において好ましい。
【0018】
上記単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)(2-ヒドロキシプロピル)フタレート、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの市販品としては、商品名で、例えば、アロニックス(登録商標)M-101、同M-111、同M-114、同M-5300(以上、東亞合成(株)製);KAYARAD(登録商標)TC-110S、同TC-120S(以上、日本化薬(株)製);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0019】
上記2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、フルオレン系ジアクリレート等を挙げることができる。これらの市販品としては、商品名で、例えば、アロニックス(登録商標)M-210、同M-240、同M-6200(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)HDDA、同HX-220、同R-604(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)、ライトアクリレート1,9-NDA(共栄社化学(株)製、OGSOL(EA-0200 大阪ガスケミカル社製)等を挙げることができる。
【0020】
上記3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとの混合物;
エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートとイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとの混合物;
直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し且つ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有し且つ3個、4個または5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等を挙げることができる。
【0021】
上述した3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルの市販品としては、商品名で、例えば、アロニックス(登録商標)M-309、同M-400、同M-405、同M-450、同M-7100、同M-8030、同M-8060、同TO-1450(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)TMPTA、同DPHA、同DPCA-20、同DPCA-30、同DPCA-60、同DPCA-120、同DPEA-12(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)や、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品として、ニューフロンティア(登録商標)R-1150(第一工業製薬(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA-40H(日本化薬(株)製)等を挙げることができる。
【0022】
これらのうち、特に、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物;
トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートとトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートとの混合物;
エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを含有する市販品等が好ましい。
ビニル基を有する化合物としては、スチレン、ビニルナフタレン、1,3-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、1、6-ジビニルナフタレン、1、7-ジビニルナフタレン、2、3-ジビニルナフタレン、2、6-ジビニルナフタレン、2、7-ジビニルナフタレン、1,2,4-トリビニルナフタレン、1,2,6-トリビニルナフタレン、1,3,6-トリビニルナフタレン、1,3-ジビニル-6-メトキシ-ナフタレン、1,3-ジビニル-6-メチル-ナフタレン、1,3-ジビニル-6-クロロ-ナフタレン、1,2-ジビニル-6-エトキシ-ナフタレン、1-ビニル-5-メトキシ-ナフタレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0023】
ビニルスルフィド誘導体、(メタ)アクリレート誘導体ビニルスルホキシド誘導体もしくはビニルスルホン誘導体でビニル基を有する化合物を使用することも可能である。このような化合物の具体例としては、ビニルスフィド、フェニルビニルスルホキシド、ジビニルスルホキシド、ジビニルスルホン、フェニルビニルスルホン、ビス(ビニルスルホニル)メタン等が挙げられる。
【0024】
上記のような単量体化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。 本発明の硬化性組成物における単量体化合物の使用割合は、単量体化合物の下限としては特に限定されないが、固形分換算で例えば50質量%であり、60質量%が好ましい。一方、この上限としては99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。
[A]重合性基を有する化合物が重合体である場合、重合体中に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構成単位を有する重合体を使用することができる(以下、[a]重合体とも言う)。このような重合体は、単量体化合物と併用することができ、この場合重合体はバインダー樹脂としても用いることができる。
【0025】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構成単位は、例えば、重合体中のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させる方法、重合体中のカルボキシル基にエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法、重合体中の水酸基にイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法、重合体中の酸無水物部位に(メタ)アクリル酸を反応させる方法等により形成することができる。
【0026】
[a]重合体は、例えば、溶媒中で重合開始剤の存在下、カルボキシル基含有構成単位を与える(a1)化合物と、その他の構成単位を与える化合物と共重合をすることで得られる。カルボキシル基含有構成単位に(メタ)アクリロイル基含有構成単位を与える(a2)化合物反応させることによって製造できる。
[(a1)化合物]
(a1)化合物としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の無水物としては、例えば、上記ジカルボン酸として例示した化合物の無水物等が挙げられる。多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステルとしては、例えば、コハク酸モノ〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等が挙げられる。
【0027】
これらの(a1)化合物のうち、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性および入手の容易性からより好ましい。これらの(a1)化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
(a1)化合物の使用割合は、(a)重合体の構成モノマーの使用量の合計に基づいて、5質量%~30質量%が好ましく、10質量%~25質量%がより好ましい。(a1)化合物の使用割合を5質量%~30質量%とすることによって、重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性を最適化することができる。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルはエポキシ基含有不飽和化合物であり、エポキシ基としては、オキシラニル基(1,2-エポキシ構造)またはオキセタニル基(1,3-エポキシ構造)等が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸グリシジル、3-(メタ)アクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02.6]デシル(メタ)アクリレート、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0029】
本実施形態の重合体は、公知の方法により製造することができるが、例えば、特開2003-222717号公報、特開2006-259680号公報、国際公開第07/029871号パンフレット、特開平5-19467号公報、特開平6-230212号公報、特開平7-207211号公報、特開平09-325494号公報、特開平11-140144号公報、特開2008-181095号公報等に開示されている方法により合成することができる。
[a]重合体の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位は、共重合体中のカルボキシル基にエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られ、反応後の(メタ)アクリル基を有する構成単位は、下記式(3a)で表される。
【0030】
【0031】
上記式(3a)中、R30及びR31は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基である。aは、1~6の整数である。R32は、下記式(3a-1)または(3a-2)で表される2価の基である。
【0032】
【0033】
上記式(3a-1)中、R33は、水素原子またはメチル基である。上記式(3a-1)および式(3a-2)中、*は、酸素原子と結合する部位を示す。上記式(3a)で表される構造単位について、例えば、カルボキシル基を有する共重合体に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-メチルグリシジル等の化合物を反応させた場合、式(3a)中のR22は、式(3a-1)となる。一方、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル等の化合物を反応させた場合、式(3a)中のR32は、式(3a-2)となる。
【0034】
上記、[a]重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常は1,000~100,000、好ましくは3,000~50,000である。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
[a]重合体として、エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂が下記式(3b)で示される構造部位を有する樹脂であることがさらに好ましい。エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有することで、エチレン性不飽和基の重合性とカルボキシル基おアルカリ現像性を高いレベルで両立できることで、感度と現像性を高いレベルで両立することが可能となる。
【0035】
【0036】
(式(3b)中、R40は、2価の炭化水素基を示し、R41は、水素原子、メチル基を示す。*は結合位を示す。)
エチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂が上記式(3b)で示される構造部位を有する樹脂の具体例を以下に示す。
【0037】
式(3b)で示される構造部位を有する樹脂としては、酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましく用いられる。酸変性された、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。
酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、下記式(1)で示される重合体が挙げられる。酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂に、アルカリ溶解性のための無水フタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物等の酸無水物を反応させることで得られる。
【0038】
酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の剛直な主鎖骨格と、エチレン性不飽和基と、カルボキシ基とを併せ持つことで、低温での硬化焼成にもかかわらず、膜硬度に優れ、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化膜を形成することが可能となる。
【0039】
【0040】
式(3c)中、bおよびcは、それぞれ独立に1~30の整数を示す。
【0041】
酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、CCR-1171H、CCR-1291H、CCR-1307H、CCR-1309H(日本化薬社製)を用いることができる。
【0042】
[a]重合体の酸価は、例えば10~200mgKOH/g、好ましくは30~270mgKOH/g、より好ましくは50~250mgKOH/gである。酸価とは、アルカリ可溶性樹脂の固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg数を表す。
【0043】
[a]重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常は1,000~100,000、好ましくは3,000~50,000である。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0044】
重合性基としてエポキシ基を有する重合体も使用することができる。このような[a]重合体は、エポキシ基含有不飽和化合物を単量体として用いて、適宜他のメタクリル酸、アクリル酸等の単量体等と共にラジカル重合することにより得られる。エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えばオキシラニル基(1,2-エポキシ構造)、オキセタニル基(1,3-エポキシ構造)等を含有する不飽和化合物などが挙げられる。
【0045】
上記オキシラニル基を有する不飽和化合物としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-メチルグリシジル、アクリル酸3,4-エポキシブチル、メタクリル酸3,4-エポキシブチル、アクリル酸6,7-エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7-エポキシヘプチル、α-エチルアクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロへキシル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0046】
上記オキセタニル基を有する不飽和化合物としては、例えば 3-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-フェニルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-エチルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-3-エチルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2-フェニルオキセタン、3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-2,2-ジフルオロオキセタン等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0047】
これらのエポキシ基含有不飽和化合物のうち、重合性の観点から、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル及び3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタンが好ましい。
【0048】
感放射線性樹脂組成物における[a]重合体の含有量は、当該組成物の固形分100質量%中、通常は30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、[a]重合体の含有量の上限値は、当該組成物の固形分100質量%中、通常は90質量%であり、一実施態様において、70質量%または60質量%である。
【0049】
このような態様とすることで、輝度のより一層の向上に加え、アルカリ現像性、組成物の保存安定性、パターン形状、色度特性を高めることができる。なお、固形分は溶媒以外の全成分である。
<[B]感光剤>
当該硬化性組成物は、[B]感光剤を含む。当該硬化性組成物の放射線感度をより高めることができる。[B]感光剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
[B]感光剤としては、例えば感放射線性ラジカル重合開始剤、感放射線性酸発生剤、感放射線性塩基発生剤及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
上記感放射線性ラジカル重合開始剤は、例えば[A]重合性基を有する化合物が(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基を有している場合、当該硬化性組成物の放射線による硬化反応を促進させることができる。
【0052】
上記感放射線性ラジカル重合開始剤としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、[A]重合性基を有する化合物のラジカル重合反応を開始し得る活性種を発生することができる化合物等が挙げられる。
【0053】
上記感放射線性ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えばO-アシルオキシム化合物、α-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0054】
上記O-アシルオキシム化合物としては、例えば1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル]-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-[9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等が挙げられる。
【0055】
上記α-アミノケトン化合物としては、例えば2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0056】
上記α-ヒドロキシケトン化合物としては、例えば1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0057】
上記アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0058】
上記感放射線性ラジカル重合開始剤としては、TADFとの相互作用を強め、放射線による硬化反応をより促進させる観点から、縮合環を含むラジカル重合開始剤が好ましい。縮合環の具体例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、インドール、カルバゾール、ベンゾイミダソール等である。これらのうち特にカルバゾール由来のカルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基が好ましい。このような縮合環を含むラジカル重合開始剤としては、O-アシルオキシム化合物及びα-アミノケトン化合物が好ましく、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-アセタートが好ましい。
【0059】
当該硬化性組成物が感放射線性ラジカル重合開始剤を含有する場合、感放射線性ラジカル重合開始剤の含有量の下限としては、[A]重合性基を有する化合物100質量部に対して0.5質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、1.5質量部がさらに好ましい。また、上記含有量の上限としては、[A]重合性基を有する化合物100質量部に対して20質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。上記含有量を上記範囲とすることにより、放射線による硬化反応をより促進させることができる。
【0060】
上記感放射線性酸発生剤の具体例としては、例えばヨードニウム塩系感放射線性酸発生剤、スルホニウム塩系感放射線性酸発生剤、テトラヒドロチオフェニウム塩系感放射線性酸発生剤、イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤、オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤、キノンジアジド化合物等が挙げられる。
【0061】
上記ヨードニウム塩系感放射線性酸発生剤としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロn-ブタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0062】
上記スルホニウム塩系感放射線性酸発生剤としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンゼンメチルスルホニウムトルエンスルホネート、シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、(4-ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、1-ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-ヒドロキシ-1-ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0063】
上記テトラヒドロチオフェニウム塩系感放射線性酸発生剤としては、例えば4-ヒドロキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-メトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-エトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-メトキシメトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-エトキシメトキシ-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-(1-メトキシエトキシ)-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-(2-メトキシエトキシ)-1-ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、等が挙げられる。
【0064】
上記イミドスルホネート系感放射線性酸発生剤としては、例えばトリフルオロメチルスルホニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エンジカルボキシイミド、スクシンイミドトリフルオロメチルスルホネート、フタルイミドトリフルオロメチルスルホネート、N-ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホネート、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドプロパンスルホネート等が挙げられる。
【0065】
上記オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤としては、例えば(5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-オクチルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(カンファースルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-p-トルエンスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-オクチルスルホニルオキシイミノ)-(4-メトキシフェニル)アセトニトリル等が挙げられる。
【0066】
上記キノンジアジド化合物としては、例えばトリヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、ペンタヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、ヘキサヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、(ポリヒドロキシフェニル)アルカンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0067】
上記トリヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンアジド-4-スルホン酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0068】
上記テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、2,3,4,3’-テトラヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル2,3,4,4’-テトラヒドロキシ-3’-メトキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0069】
上記ペンタヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,3,4,2’,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、2,3,4,2’,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0070】
上記ヘキサヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば2,4,6,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0071】
上記(ポリヒドロキシフェニル)アルカンの1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えばビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン-1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、等が挙げられる。
【0072】
上記感放射線性酸発生剤としては、オキシムスルホネート系感放射線性酸発生剤、及びキノンジアジド化合物が好ましく、(5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、及び1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステルがより好ましい。
【0073】
感放射線性塩基発生剤の具体例としては、例えば
4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、1-(アントラキノン-2-イル)エチルイミダゾールカルボキシレート等の複素環基含有感放射線性塩基発生剤;
2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン-1,6-ジアミン、トリフェニルメタノール、o-カルバモイルヒドロキシルアミド、o-カルバモイルオキシム、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウムn-ブチルトリフェニルボラートなどが挙げられ、[B]化合物のチオール化反応をより促進させる観点から、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウムn-ブチルトリフェニルボラートが好ましい。
【0074】
当該硬化性組成物が[B]感光剤を含有する場合、[B]感光剤の含有量の下限としては、[A]重合性基を有する化合物100質量部に対して0.5質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましい。また、上記含有量の上限としては、[A]重合性基を有する化合物100質量部に対して30質量部が好ましく、25質量部がより好ましい。上記含有量を上記範囲とすることにより、当該硬化性組成物の放射線感度をより高めることができる。
[C]熱活性型遅延蛍光化合物
熱活性型遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADFとも言う)は、通常の蛍光と同じスペクトルをもつものでありながら、通常の蛍光よりも寿命が長い蛍光である。遅延蛍光材料は、このような遅延蛍光を放射する材料を意味する。遅延蛍光材料が放射する遅延蛍光の寿命は、例えば1μs以上であるものや、5μs以上であるものや、10μs以上であるものなど、遅延蛍光材料の種類によって異なる。
本発明では、このような性質を有する遅延蛍光材料を発光材料として選択して用いる。本発明で用いる遅延蛍光材料の遅延蛍光放射のメカニズムについては特に制限されない。遅延蛍光は、励起三重項状態から励起一重項状態へ逆項間交差されて放射される蛍光を包含するものであるが、このときの逆項間交差は三重項-三重項消滅によるものであっても、熱エネルギーの吸収によるものであってよい。また遅延蛍光は、エキサイプレックスが関与するものであってもよい。また、本発明で用いる遅延蛍光材料は、熱によって活性化する熱活性型遅延蛍光材料であることが好ましい。
【0075】
本発明では、発光材料として遅延蛍光材料のみを用いてもよいし、遅延蛍光材料と遅延蛍光を放射しない発光材料を組み合わせて使用してもよい。好ましいのは、遅延蛍光材料のみを用いる態様である。本発明の発光材料として使用する遅延蛍光材料は、1種のみであってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0076】
本発明で用いることができる遅延蛍光材料として、例えば下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を好ましい具体例として挙げることができる。
【0077】
一般式(1)、(2)において、R1からR7の少なくとも1つはシアノ基を表す。いずれか1つがシアノ基である場合は、R1からR3のいずれであってもよい。いずれか2つがシアノ基である場合は、R1とR3の組み合わせや、R2とR4の組み合わせを例示することができる。いずれか3つがシアノ基である場合は、R1とR3とR4の組み合わせを例示することができる。
【0078】
一般式(1)、(2)において、R1からR7の少なくとも1つは下記一般式(X)で表される基を表す。2つ以上が一般式(X)で表される基を表すとき、それらは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることがより好ましい。
【0079】
【0080】
一般式(X)において、R21からR28は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、下記<A>か<B>の少なくとも一方を満たす。両方とも満たしている場合がより好ましい。
<A> R25およびR26は一緒になって単結合を形成する。
<B> R27およびR28は一緒になって置換もしくは無置換のベンゼン環を形成するのに必要な原子団を表す。
【0081】
一般式(X)で表される基は、置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、3,6-ジ(t-ブチル)-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることが好ましい。すなわち、一般式(1)、(2)の、R1からR7のいずれか1つは、置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることが好ましい。一般式(1)の、R1からR5のいずれか2つ以上が、置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることがより好ましい。
【0082】
一般式(X)で表される基は、特に置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、3,6-ジ(t-ブチル)-9-カルバゾリル基が好ましい。
【0083】
一般式(X)のR21からR28としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数12~40のジアリールアミノ基、炭素数12~40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルスルホニル基、炭素数1~10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2~10のアルキルアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12~40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12~40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6~15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0084】
本明細書でいうアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1~6であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる。アリール基は、単環でも融合環でもよく、具体例としてフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。アルコキシ基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1~6であり、具体例としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソプロピポキシ基を挙げることができる。ジアルキルアミノ基の2つのアルキル基は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。ジアルキルアミノ基の2つのアルキル基は、各々独立に直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1~6であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる。アリール基は、単環でも融合環でもよく、具体例としてフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。ヘテロアリール基も、単環でも融合環でもよく、具体例としてピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、トリアジル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基を挙げることができる。これらのヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して結合する基であっても、ヘテロアリール環を構成する炭素原子を介して結合する基であってもよい。
【0085】
一般式(1)、(2)において、R1からR7のいずれか1つが一般式(X)で表される基である場合は、R1からR3のいずれであってもよい。いずれか2つが一般式(X)で表される基である場合は、R1とR3の組み合わせや、R2とR4の組み合わせを例示することができる。いずれか3つが一般式(X)で表される基である場合は、R1とR3とR4の組み合わせを例示することができる。
【0086】
一般式(X)で表される基が結合しているベンゼン環の2つのオルト位のうちのいずれか一方はシアノ基であることが好ましい。2つのオルト位の両方がシアノ基であってもよい。また、ベンゼン環に一般式(X)で表される基が2つ以上結合している場合は、それらのうちの少なくとも2つが、一般式(X)で表される基が結合しているベンゼン環の2つのオルト位のうちのいずれか一方はシアノ基であるという条件を満たしていることが好ましい。
【0087】
一般式(1)、(2)において、R1からR7の少なくとも1つはシアノ基を表し、R1からR7の少なくとも1つは上記一般式(X)で表される基を表すが、残りのR1からR7は水素原子または置換基を表すことができる。
【0088】
R1からR7がとりうる好ましい置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルスルホニル基、アミド基、炭素数2~10のアルキルアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1~20の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらに好ましい置換基は、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6~15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらになお好ましくは、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0089】
一般式(1)、(2)において、R1からR7のうち水素原子であるものは3つ以下であることが好ましく、2つ以下であることがより好ましく、1つ以下であることがさらに好ましく、0であることも好ましい。
【0090】
好ましい具体的な化合物の例としては、下記式(4)、(5)、(6)、(7)で示される化合物が挙げられる。式(7)中、tBUは、t-ブチル基を示す。
【0091】
【0092】
当該硬化性組成物において[C]熱活性型遅延蛍光化合物の含有量は、[B]感光剤の全含有量に対して、0.01から5の範囲、さらに好ましくは0.05から1の範囲である。この範囲にあることで、硬化膜形成の放射線感度を高めつつ、耐溶剤溶剤性に優れた硬化膜を形成できる。
【0093】
当該硬化性組成物は上記成分以外に溶媒を含んでもよい。当該硬化性組成物が溶媒を含むと、塗布性が向上する。溶媒としては、上記各成分を溶解又は分散させることができる限り特に限定されないが、例えば上述した[a]重合体を合成する際に使用する溶媒等が挙げられる。なお、溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[その他の成分]
当該硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で他の重合体や添加剤等のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば界面活性剤、無機粒子等の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ポリイミド等の重合体などが挙げられる。これら添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜選択することができる。
【0094】
当該硬化性組成物は、適宜の方法により調製することが可能であるが、例えば溶媒中で、[A]重合性基を有する化合物、[B]化合物及び必要に応じて任意成分を混合することにより調製できる。混合する際の組成物中の固形分の濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。また、上記濃度の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。固形分濃度を上記範囲とすることにより、塗布性を向上させることができる。なお、本明細書において「固形分」とは、試料を175℃のホットプレートで1時間乾燥して揮発物質を除いた残分をいう。
<硬化膜>
当該硬化膜は、当該硬化性組成物により得られる。当該硬化膜としては、例えば保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等が挙げられる。当該硬化膜は、当該硬化性組成物により得られるため、硬度が高く、耐溶剤性に優れる。当該硬化膜の形成方法は、特に限定されないが、後述する硬化膜の形成方法を適用することが好ましい。
<表示素子>
当該表示素子は当該硬化膜を有する。すなわち、当該硬化膜は表示素子に好適に使用できる。当該表示素子としては、例えば液晶表示素子、有機EL素子、電子ペーパー素子等が挙げられる。当該表示素子は、硬度が高く、耐溶剤性に優れる当該硬化膜を有するため、例えば歩留まりを高めることができると共に、耐久性を向上させることができる。
<硬化膜の形成方法>
当該硬化膜の形成方法は、当該硬化性組成物により塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう。)、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射(露光)する工程(以下、「放射線照射工程」ともいう。)、上記放射線が照射された塗膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)、及び上記現像された塗膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう。)を備える。また、当該硬化膜の形成方法は、任意工程として、放射線照射工程と現像工程との間に、上記放射線が照射された塗膜を加熱する工程(以下、「PEB工程」ともいう。)を備えていてもよい。
【0095】
当該硬化膜の形成方法によれば、上述した当該硬化性組成物を用いているため、硬度が高く、耐溶剤性に優れる硬化膜を容易かつ効率よく形成できる。以下、各工程について説明する。
[塗膜形成工程]
本工程では、基板表面等の硬化膜を形成する面に当該硬化性組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶媒等を除去して、塗膜を形成する。上記基板の材質としては、例えばガラス、石英、シリコン、樹脂等が挙げられる。上記樹脂の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンの開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0096】
当該硬化性組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法及びスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、例えば70℃以上130℃以下の温度で1分以上10分以下の加熱時間とすればよい。
[放射線照射工程]
本工程では、塗膜形成工程で形成された塗膜の一部に放射線を照射する。通常、塗膜の一部に放射線を照射する際には、所定のパターンを有するフォトマスクを介して照射する。上記放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm以上450nm以下の範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
【0097】
本工程における露光量の下限としては、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI Optical Associates Inc.社の「OAI model356」)により測定した値として、10mJ/cm2が好ましく、20mJ/cm2がより好ましい。また、上記露光量の上限としては、上記照度計により測定した値として、2,000mJ/cm2が好ましく、1,000mJ/cm2がより好ましい。
[現像工程]
本工程では、放射線照射後の塗膜を現像液で現像することにより所定のパターンを形成する。上記現像液としてはアルカリ現像液が好ましい。アルカリ現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液などが挙げられる。また、アルカリ現像液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0098】
現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、スプレー法等の適宜の方法を採用することができる。現像時間は、硬化性組成物の組成によって異なるが、例えば10秒以上180秒以下である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒以上90秒以下の処理時間で行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
[加熱工程]
本工程では、現像してパターニングされた塗膜を、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて加熱(ポストベーク)することにより、所望のパターンを有する硬化膜を得る。加熱温度の下限としては、80℃が好ましく、120℃がより好ましく、150℃がさらに好ましい。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えばホットプレート上で加熱する場合には5分以上30分以下、オーブン中で加熱する場合には10分以上90分以下とすればよい。なお、加熱は、空気中で行っても、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法を用いることも可能である。このように形成された硬化膜の平均厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下である。露光または加熱工程の順が異なってもよい。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)]
下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりMw及びMnを測定した。また、分子量分布(Mw/Mn)は得られたMw及びMnより算出した。
【0100】
装置:昭和電工社の「GPC-101」
カラム:昭和電工社の「GPC-KF-801」、「GPC-KF-802」、「GPC-KF-803」及び「GPC-KF-804」を連結したものである。
【0101】
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
[1H-NMR分析]
1H-NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「ECX400P」)を使用した。
<重合体の合成>
[合成例1]重合体(A-1)の合成
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)11質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル300質量部を仕込んだ。次いで、メタクリル酸75質量部及びメタクリル酸ベンジル25質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合した。その後、溶液温度を100℃にして、1時間撹拌した後、室温へ戻した。次にメタクリル酸グリシジル50重量部及びテトラブチルアンモニウムブロミド2重量部を入れ、溶液の温度を90℃に上昇させ、この温度を9時間保持して反応させた。これにより側鎖にメタクリロイル基を有する重合体(A-1)を含有する重合体溶液を得た。この重合体溶液の固形分濃度は、23.0質量%であり、重合体(A-1)のMwは11,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。
[合成例2]重合体(A-2)の合成
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EOCN-1020」(日本化薬製、エポキシ当量200) 200部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート245部を仕込み、110℃まで加熱して均一に溶解させた。続いて、アクリル酸76部(1.07モル部)、トリフェニルホスフィン2部、およびp-メトキシフェノール0.2部を仕込み、110℃にて10時間反応させた。反応物にさらにテトラヒドロ無水フタル酸91部(0.60モル部)を仕込み、さらに90℃5時間反応させ、冷却後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて固形分含有量を調整し、カルボキシル基およびアクリロイル基を有する重合体(A-2)(Mn:2,200)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(固形分含有量は25%)
[合成例4]重合体(A-6)の合成
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)7質量部およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸16質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルメタクリレート16質量部、メチルメタクリレート38質量部、スチレン10質量部、メタクリル酸グリシジル20質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇し、この温度を4時間保持して重合することにより、重合体(A-6)を含有する溶液を得た(固形分濃度=34.4質量%、Mw=8,000、Mw/Mn=2.3)。
<硬化性組成物の調製、硬化膜の形成、及び物性評価>
各硬化性組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
[[A]成分]
A-1:重合体(A-1)
A-2:重合体(A-2)
A-3:フルオレン系ジアクリレート(大阪ガスケミカル社の「OGSOL EA-0200」)
A-4:トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタントリグリシジルエーテル
A-5:ジペンタエリストールヘキサアクリレート(日本化薬社の「KAYARAD DPHA」)
A-6:重合体(A-6)
[B][感放射線性ラジカル重合開始剤]
B1-1:1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-アセタート(BASF社の「IRGACURE OX02」)
B1-2:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名 「Irgacure 819」,BASF社製)
B1-3:2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール10質量部、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン10質量部、2-メルカプトベンゾチアゾール5質量部の混合物
B1-4:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン(商品名 「Irgacure 907」,BASF社製)
[感放射線性酸発生剤]
B2-1:(5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル(BASF社の「IRGACURE PAG 103」)
[感放射線性塩基発生剤]
B3-1:1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウムn-ブチルトリフェニルボラート(和光純薬工業社の「WPBG-300」)
[[C]成分]
C-1:化合物(4)
C-2:化合物(5)
C-3:化合物(6)
C-4:化合物(7)
【0102】
【0103】
[実施例1]
[A]成分としての重合体(A-1)をプロピレングリコールモノジメチルエーテルアセテート(PGMEA)(固形分換算で100質量部)に、[B]成分としての(B1-1)10質量部、[C]成分としての(C-1)を1質量部加え、界面活性剤としてSH 190(東レ・ダウコーニング・シリコーン製)0.1質量部を加え、混合攪拌した後、0.2μmのフィルターを用いてろ過を行い、硬化性組成物を調整した。
[実施例2~9及び比較例1~2]
各配合成分の種類及び配合量を下記表1に記載の通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして各硬化性組成物を調製した。なお、表1中の「-」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0104】
得られた各硬化性組成物について、下記の方法に従い評価した。評価結果を表1に示す。
[保存安定性]
保存安定性の評価は、硬化性組成物を25℃で保存した際の粘度が、調製直後の粘度の10倍に達するまでの時間を測定することにより行った。粘度の測定は、東京計器社の「ELD型粘度計」を用い、25℃、回転数20rpmの条件で行った。調製直後の粘度の10倍に達するまでの時間が長いほど保存安定性が良好であり、例えば800時間以上の場合、保存安定性が良好と評価できる。結果を表1に示す。
[硬度]
硬度は、下記形成方法により硬化性組成物から形成した硬化膜について、JIS K 5600-5-4(1999年)に準拠する鉛筆硬度計により評価した。硬度は、H以上の場合、良好と評価できる。結果を表1に示す。
(硬化膜の形成方法)
無アルカリガラス基板上に、硬化性組成物をスピンナーにより塗布した後、90℃のホットプレート上で3分間プレベークすることで平均厚み3μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に、フォトマスクを介さずに、高圧水銀ランプを用いて365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を300mJ/cm2の積算照射量で露光した。次いでオーブン中、150℃で30分間加熱し、硬化膜を得た。
[耐溶剤性]
耐溶剤性は、硬化性組成物から形成した硬化膜について、下記方法に従いアセトンに浸漬する前後の平均厚みの変化率を測定することにより評価した。硬化膜の形成は硬度の評価と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
(平均厚みの変化率の測定方法)
形成後の硬化膜の平均厚み(T1)、及びアセトン中に20分間浸漬させた後の平均厚み(T2)をそれぞれ測定し、下記式により変化率を算出した。なお、平均厚みの変化率が5%以下の場合、耐溶剤性が良好と評価できる。
【0105】
平均厚みの変化率(%)={(T1-T2)/T1}×100
[放射線感度]
放射線感度は、硬化性組成物から形成した硬化膜について、上記硬度の評価と同様に鉛筆硬度計を用いて測定した硬度がHになる時の露光量により評価した。硬化膜の形成方法は露光量を任意に変更すること以外は上記硬度の評価と同様の方法で行った。なお、放射線感度が100mJ/cm2以下であれば良好と評価できる。結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
表中「-」は、添加しなかったことを示す。
以上の通り、本発明の硬化性組成物は、表1の結果が示すように、(A)重合性基を有する化合物、(B)感光剤、(C)熱活性型遅延蛍光化合物を含有する硬化性組成物により、保存安定性及び放射線感度を向上させつつ、200℃以下による硬化焼成プロセスで得られた膜であっても、硬度が高く、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成できることが示された。