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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】モータユニット支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20221122BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B60K1/00
B62D21/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018163258
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020032957
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】畑村 潤二
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114785(JP,A)
【文献】特開2012-140055(JP,A)
【文献】米国特許第08727063(US,B1)
【文献】特開平07-277005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ及び減速機によって構成されるモータユニットを支持するためのモータユニット支持構造であって、
車両幅方向に延びるサブフレームと、
乗員が乗り込む車室よりも前側に位置する収容室内において、弾性体を介して前記モータユニットを前記サブフレームの下側に支持するマウントと、
前記減速機に取り付けられ、かつ前記車両幅方向に延びる軸を有するドライブシャフトと、を備え、
前記マウントは、
車両前後方向において、前記モータユニットの最後端よりも前側に配置される前記弾性体としての後弾性体を有する後マウントと、
前記車両前後方向において、前記後マウントよりも前側に配置される前記弾性体としての前弾性体を有する前マウントと、を有し、
前記モータユニットを支持するトルクロッドをさらに備え、
前記トルクロッドは、トルクロッド弾性体を介して前記モータユニットを前記収容室内の車体部材と連結し、
前記トルクロッドは、前記モータユニットの後部において、前記ドライブシャフトの前記軸よりも下側で取り付けられ、
前記後マウントの数は、前記前マウントの数よりも少ない、モータユニット支持構造。
【請求項2】
前記トルクロッドは、前記トルクロッドが前記モータユニットへ取り付けられた位置から車両後方へ延びており、
前記トルクロッドの後端部は、前記トルクロッド弾性体を介して前記車体部材としてのサスペンションフレームに取付けられている後端マウントである請求項1に記載のモータユニット支持構造。
【請求項3】
前記トルクロッドの前端部は、前記トルクロッド弾性体を介してモータユニットに取り付けられている前端マウントであり、
前記前端マウントの静ばね定数と前記後端マウントの静ばね定数とが異なる請求項2に記載のモータユニット支持構造。
【請求項4】
前記後端マウントの静ばね定数は、前記前端マウントの静ばね定数よりも小さい請求項3に記載のモータユニット支持構造。
【請求項5】
前記モータユニットのトルクロール軸から前記前弾性体の中心までの距離は、前記トルクロール軸から前記後弾性体の中心までの距離よりも長い請求項1から4のいずれか1項に記載のモータユニット支持構造。
【請求項6】
前記トルクロッドは、前記トルクロッドが前記モータユニットへ取り付けられた位置から車両後方へ延びており、
前記トルクロッド弾性体は、前記トルクロッドの後端部に配置されるトルクロッド後弾性体を有し、
前記モータユニットのトルクロール軸から前記トルクロッド後弾性体の中心までの距離は、前記トルクロール軸から前記後弾性体の中心までの距離よりも長い請求項1から5のいずれか1項に記載のモータユニット支持構造。
【請求項7】
前記トルクロッドは、前記トルクロッドが前記モータユニットへ取り付けられた位置から車両後方へ延びており、
前記トルクロッド弾性体は、前記トルクロッドの後端部に配置されるトルクロッド後弾性体を有し、
複数の前記前弾性体の中心及び前記トルクロッド後弾性体の中心を通る仮想平面を境界として、前記トルクロール軸が位置する領域と反対側の領域に前記後弾性体の中心が位置する請求項5又は6に記載のモータユニット支持構造。
【請求項8】
モータ及び減速機によって構成されるモータユニットを支持するためのモータユニット支持構造であって、
車両幅方向に延びるサブフレームと、
乗員が乗り込む車室よりも前側に位置する収容室内において、弾性体を介して前記モータユニットを前記サブフレームの下側に支持するマウントと、
前記減速機に取り付けられ、かつ前記車両幅方向に延びる軸を有するドライブシャフトと、を備え、
前記マウントは、
車両前後方向において、前記モータユニットの最後端よりも前側に配置される前記弾性体としての後弾性体を有する後マウントと、
前記車両前後方向において、前記後マウントよりも前側に配置される前記弾性体としての前弾性体を有する前マウントと、を有し、
前記モータユニットを支持するトルクロッドをさらに備え、
前記トルクロッドは、トルクロッド弾性体を介して前記モータユニットを前記収容室内の車体部材と連結し、
前記トルクロッドは、前記モータユニットの後部において、前記ドライブシャフトの前記軸よりも下側で取り付けられ、
前記トルクロッドは、前記トルクロッドが前記モータユニットへ取り付けられた位置から車両後方へ延びており、
前記トルクロッドの後端部は、前記トルクロッド弾性体を介して前記車体部材としてのサスペンションフレームに取付けられている後端マウントであり、
前記トルクロッドの前端部は、前記トルクロッド弾性体を介してモータユニットに取り付けられている前端マウントであり、
前記前端マウントの静ばね定数と前記後端マウントの静ばね定数とが異なる、モータユニット支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるモータユニット支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のモータユニット支持構造は、弾性体を介してモータユニットをサブフレームの下側に支持するマウントを備えている。マウントは、モータユニットの前側左右に配置されている左右一対の前マウントと、モータユニットから車両後方へ延びるブラケットの後端部に配置されている後マウントと、を有している。
【0003】
ここで、車両が加速する際に、モータユニットへトルクが働き、弾性ロール軸を中心としてモータユニットが回動する。なお、弾性ロール軸は、モータユニットがマウントにより弾性支持された場合におけるモータユニットの回転軸である。
【0004】
上述の支持構造では、後マウントをモータユニットの車両後方へ配置することで、後マウントが弾性ロール軸から離れるため、トルクにより後マウントへ掛かる力を低減できる。これにより、後マウントにおける弾性体が、トルクによる力を十分に受け止めることができ、モータユニットの回動を抑制できる。従って、モータユニットに起因した車両の振動を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-81010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の支持構造では、後マウントをモータユニットの車両後方へ配置するため、モータユニットから後側の空間を広く確保する必要がある。上述の支持構造は、車両の前部(すなわち、乗員が乗り込む車室よりも前側に位置する収容室)にモータユニットを配置した場合、収容室と車室とを隔てるダッシュボードをモータユニットから車両後方へ離して配置しなければならず、収容室として車両前後方向に広い空間を確保する必要があった。このため、車両前後方向において収容室が狭い車両には、上述の支持構造を採用できなかったり、収容室を広くする代わりに車室が狭くなったりするなどの車両レイアウト上の問題が発生する。
【0007】
そこで、収容室として車両前後方向に広い空間を確保しなくても、モータユニットに起因した車両の振動を抑制するモータユニットの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様に係るモータユニット支持構造は、モータ及び減速機によって構成されるモータユニットを支持するためのモータユニット支持構造である。モータユニット支持構造は、車両幅方向に延びるサブフレームと、乗員が乗り込む車室よりも前側に位置する収容室内において、弾性体を介して前記モータユニットを前記サブフレームの下側に支持するマウントと、前記減速機に取り付けられ、かつ前記車両幅方向に延びる軸を有するドライブシャフトと、を備える。前記マウントは、車両前後方向において、前記モータユニットの最後端よりも前側に配置される前記弾性体としての後弾性体を有する後マウントと、前記車両前後方向において、前記後マウントよりも前側に配置される前記弾性体としての前弾性体を有する前マウントと、を有する。モータユニット支持構造は、前記モータユニットを支持するトルクロッドをさらに備える。前記トルクロッドは、トルクロッド弾性体を介して前記モータユニットを前記収容室内の車体部材と連結する。前記トルクロッドは、前記モータユニットの後部において、前記ドライブシャフトの前記軸よりも下側で取り付けられる。
【0009】
モータユニットを支持する後マウントは、モータユニットの最後端よりも前側に配置される後弾性体を有する。これにより、モータユニットの後側には後弾性体が配置されないため、モータユニットから後側へ十分な距離を取らなくても、ダッシュボードを配置可能である。従って、収容室として車両前後方向に広い空間を確保しなくても、モータユニットを支持することができる。
【0010】
ここで、一般的に、サブフレームに取り付けられるマウントにより、モータユニットを吊り下げて支持する場合には、モータユニットの重心よりも上側にマウントが配置される。このため、弾性ロール軸がトルクロール軸よりも上側に離れた位置になり易い。ここで、トルクロール軸は、モータユニットがマウントにより弾性支持されずに空間上に配置されている状態でトルクが掛けられた場合におけるモータユニットの回転軸である。従って、弾性ロール軸がトルクロール軸から離れることで、車両の加速/減速によってモータユニットへトルクが掛かった場合に、モータユニットの動きが大きくなり、その振動や衝撃が車体に伝播されて車両の静粛性が損なわれる恐れがある。また、モータユニットの動きが大きくなるので、一部のマウントにトルクによる過大な力が作用し易くなる。当該マウントは、集中したトルクによる過大な力を吸収しきないことがある。また、マウントが、トルクによる力を一時的に吸収できていたとしても、過負荷によりマウントの弾性体がすぐに劣化し、トルクによる力を吸収しきれないことがある。その結果、モータユニットの回動を抑制できず、モータユニットに起因した車両の振動を抑制できないおそれがある。
【0011】
そこで、トルクロッドをドライブシャフトの軸よりも下側で取り付けることで、弾性ロール軸が下側へ下がり、弾性ロール軸をトルクロール軸に近づけることができる。これにより、モータユニットの動きが小さくなり、各マウントが効率よくモータユニットの動きを受け止めることで、一部のマウントにトルクによる力が集中することを低減できる。
【0012】
加えて、トルクロッドが、モータユニットの後部において取り付けられ、かつトルクロッド弾性体を介してモータユニットを車体部材と連結するため、マウントだけでなく、トルクロッドでもモータユニットの回動力を受け止めることができる。これにより、マウントへ掛かるトルクによる力(負荷)を低減することができ、後マウントへ掛かるトルクによる力(負荷)を軽減させて、モータユニットの最後端よりも前側で後マウントを取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の前左上側から視た斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の前右上側から視た斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の前側から視た図である。
図4図4は、実施形態に係るサブフレーム30を車両の前左上側から視た斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るサブフレーム30を車両の前左下側から視た斜視図である。
図6図6は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の前右上側から視た斜視図である。
図7図7は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の前側から視た図である。
図8図8は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の上側から視た図である。
図9図9は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の上側から視た図である。
図10図10は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の右側から視た断面図である。
図11図11は、実施形態に係る第1マウント40及び第2マウント50を説明するための説明図(分解斜視図)である。
図12図12は、実施形態に係る右側の第1マウント40を説明するための説明図(分解斜視図)である。
図13図13は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の後側から視た図である。
図14図14は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の左側から視た図である。
図15図15は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の右側から視た図である。
図16図16は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の上側から視た図である。
図17図17は、実施形態に係るトルクロッドを説明するための図である。
図18図18は、第2マウント及びトルクロッドに作用する力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(1)モータユニット支持構造1の概略構成
モータユニット支持構造1の概略構成について、図1から図3を中心に用いて説明する。図1は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の前左上側から視た斜視図である。図2は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の前右上側から視た斜視図である。図3は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の前側から視た図である。
【0016】
図面に示す矢印Xは、車両幅方向を示し、矢印Yは、車両前後方向を示し、矢印Zは、車両上下方向を示す。矢印X1は、車両右方向を示し、矢印X2は、車両左方向を示す。矢印Y1は、車両前方向を示し、矢印Y2は、車両後方向を示す。矢印Z1は、車両上方向を示し、矢印Z2は、車両下方向を示す。
【0017】
図1から図3に示すように、モータユニット支持構造1は、車両(特に、電気自動車)における構造である。モータユニット支持構造1は、モータユニット20、サブフレーム30、第1マウント40、第2マウント50、電力供給部60及び取り付け部70、ドライブシャフトDSを備える。
【0018】
車両は、モータユニット20を収容する収容室2を有する。収容室2は、パワートレインルーム、モータルーム、又はエンジンルーム等と称されてもよい。収容室2の内部には、車両前後方向Yに延びる一対のサイドメンバ5が配置されている。サイドメンバ5は、収容室の側面を構成する左右の側壁のそれぞれに沿って延びる。収容室2は、乗員が乗り込む車室よりも前側に位置する。
【0019】
モータユニット20は、後述する第2マウント50を介してサブフレーム30に取付けられており、車両の収容室2内に収容される。モータユニット20は、モータ22及び減速機24によって構成される。モータ22は、駆動力源となり、回転軸(出力軸)の軸心が車両幅方向Xに沿っている。減速機24は、モータ22の回転を減速してドライブシャフトDSに出力する。モータ22と減速機24とは結合されている。
【0020】
サブフレーム30は、車両幅方向Xに延びる部材である。サブフレーム30は、後述する第1マウント40を介して、左右のサイドメンバ5に架設状態で取り付けられる。つまり、サブフレーム30は、左右のサイドメンバ5を連結している。サブフレーム30の構成の詳細は、後述する。
【0021】
第1マウント40は、後述する第1弾性体426を介してサブフレーム30をサイドメンバ5に支持する。従って、第1マウント40は、サイドメンバ5へサブフレーム30を取り付けるために用いられる。第1マウント40は、後述する第1弾性体426を有する。第1マウント40は、右側のサイドメンバ5の上側に配置される右側の第1マウント40と、左側のサイドメンバ5の上側に配置される左側の第1マウント40と、を有する。右側の第1マウント40と左側の第1マウント40とには、それぞれ第1弾性体426が車両前後方向Yに並んで2個ずつ配置されている。
【0022】
第2マウント50は、後述する第2弾性体56を介してモータユニット20をサブフレーム30の下側に支持する。従って、第2マウント50は、モータユニット20をサブフレーム30へ吊り下げるために用いられる。第2マウント50は、第2弾性体56を有する。
【0023】
第2マウント50は、前マウント50Aと後マウント50Bとを有する(図11参照)。前マウント50Aは、左右に一対配置されてモータユニット20を支持する。後マウント50Bは、左右の前マウント50Aに対して車両幅方向Xで中央付近に配置される。後マウント50Bは、前マウント50Aよりも車両前後方向Yの後側でモータユニット20を支持する。前マウント50Aと後マウント50Bとは、車両前後方向Yにおいて離れて配置されている。
【0024】
モータ22の駆動により、モータ22の回転が出力されるドライブシャフトDSを中心にモータユニットを回転させる力が発生する(図14の矢印参照)。第2マウント50(前マウント50A及び後マウント50B)は、車両前後方向Yにおいて距離の離れた箇所に配置されているため、モータ22の回転によるモータユニット20の大きな動きを効果的に規制できるとともに、モータ22の回転による振動を効果的に吸収でき、サブフレーム30へ伝搬する振動を抑制することができる。
【0025】
電力供給部(電気機器)60は、モータ22に電力を供給するためのものである。電力供給部60は、インバータ62、ジャンクションボックス64、及びDCDCコンバータ66により構成される。電力供給部60は、サブフレーム30の上面に配置されている。インバータ62は、モータ22に電力を供給する。ジャンクションボックス64は、インバータ62、DCDCコンバータ66等に繋がれている配線を連結する。DCDCコンバータ66は、高電圧を作る。
【0026】
取り付け部70は、電力供給部60をサブフレーム30上へ取り付けるための部材である。取り付け部70は、車両前後方向Y及び車両上方向Z1のそれぞれから電力供給部60を固定するものである。取り付け部70は、ボルト等の締結部材によりサブフレーム30と固定される。これにより、電力供給部60がサブフレーム30へ固定される(取り付けられる)。
【0027】
ドライブシャフトDSは、減速機24に取り付けられ、かつ車両幅方向Xに延びる軸を有する。
【0028】
(2)各部材の詳細構成
各部材の詳細構成を、図1から図3に加えて、図4から図16を用いて説明する。図4は、実施形態に係るサブフレーム30を車両の前左上側から視た斜視図である。図5は、実施形態に係るサブフレーム30を車両の前左下側から視た斜視図である。図6は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の前右上側から視た斜視図である。図7は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の前側から視た図である。図8は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の上側から視た図である。図9は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の上側から視た図である。なお、図9は、図8と比較して後述するアッパブラケット45が省略されている。図10は、実施形態に係る左側の第1マウント40を車両の右側から視た断面図である。具体的には、図10は、車両前後方向Yに沿った鉛直断面であって、左側の第1マウント40を車両の右側から視た断面図(図8におけるA-A断面図)である。図11は、実施形態に係る第1マウント40及び第2マウント50を説明するための説明図である(分解斜視図)。図12は、実施形態に係る右側の第1マウント40を説明するための説明図(分解斜視図)である。図13は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の後側から視た図である。図14は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の左側から視た図である。図15は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の右側から視た図である。図16は、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の上側から視た図である。図17は、実施形態に係るトルクロッドを説明するための図である。具体的には、図17Aは、トルクロッドの側面図であり、図17Bは、トルクロッドの上面図である。
【0029】
(2.1)サブフレーム30
図4及び図5に示すように、サブフレーム30は、前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33、左側メンバ34、右側マウントメンバ35、左側マウントメンバ36、中央マウントメンバ37、及び補助メンバ38を有する。
【0030】
前側メンバ31は、車両の前側で車両幅方向Xに沿って延びる。後側メンバ32は、前側メンバ31よりも後側で車両幅方向Xに沿って延びる。前側メンバ31及び後側メンバ32は、それぞれ矩形断面を有する中空の部材である。前側メンバ31及び後側メンバ32は、それぞれ断面U字状の上側部材と下側部材とを溶接により閉断面に形成されている。これにより、前側メンバ31及び後側メンバ32は、軽量化と剛性の確保がなされている。前側メンバ31及び後側メンバ32は、電力供給部60を取り付けるための上面31u及び上面32uを有する。上面31u及び上面32uには、電力供給部60が載置される。これにより、モータユニット20及びサブフレーム30が収容室2に収容される前に、サブフレーム30に電力供給部60を取り付けることができる。従って、サブフレーム30に支持されたモータユニット20とともに電力供給部60を車体へ搭載することが可能である。これにより、モータユニット20を収容室2へ収容した後に、電力供給部60を取り付ける必要がなくなるため、生産効率を向上できる。特に、図1に示すように、空きスペースがあまりない収容室2となっている車両では、モータユニット20を収容室2へ収容した後に、電力供給部60を収容できても、電力配線の実行が難しい。これに対して、本願発明の実施形態では、既に配線が完了した電力供給部60及びモータユニット20が取り付けられたサブフレーム30を車体へ搭載することが可能であるため、車両の生産効率を向上できる。
【0031】
右側メンバ33は、車両の右側で車両前後方向Yに沿って延びる。左側メンバ34は、車両の左側で車両前後方向Yに沿って延びる。右側メンバ33及び左側メンバ34は、それぞれ矩形断面を有する中空の部材である。右側メンバ33及び左側メンバ34は、それぞれ上側部材と下側部材とを溶接により閉じることで形成されている。これにより、右側メンバ33及び左側メンバ34は、軽量化と剛性の確保がなされている。
【0032】
右側メンバ33は、前側メンバ31の右側端部と後側メンバ32の右側端部とを連結する。詳細には、右側メンバ33は、前側メンバ31と後側メンバ32との間に配置されている。右側メンバ33の前端は、前側メンバ31の右側端部の後面に接合されている。右側メンバ33の後端は、後側メンバ32の右側端部の前面に接合されている。左側メンバ34は、前側メンバ31の左側端部と後側メンバ32の左側端部とを連結する。詳細には、右側メンバ33と同様に、左側メンバ34は前側メンバ31と後側メンバ32の間に配置されている。左側メンバ34の前端は、前側メンバ31の左側端部の後面に接合されている。左側メンバ34の後端は、後側メンバ32の左側端部の前面に接合されている。前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33及び左側メンバ34により枠状に形成された構造部材を構成する。また、前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33及び左側メンバ34のそれぞれの上面および下面は、車両上下方向Zにおいて、ほぼ同じ位置(同じ高さ)となっている。特に、前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33及び左側メンバ34のそれぞれの上面には、第1マウント40が取り付けられるため、車両上下方向Zにおいて同じ高さであることが好ましい。図4に示すように、前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33及び左側メンバ34の上面には、後述する締結部39が挿入される(円筒状の)スペーサが配置されてもよい。各スペーサの上面の高さをそろえることで、第1マウント40(後述のサイドブラケット41)の高さを一定にできる。また、前側メンバ31及び後側メンバ32の上面31u及び32uには、電力供給部60が載置されるため、車両上下方向Zにおいて同じ高さであることが好ましい。
【0033】
前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33、左側メンバ34は、サイドブラケット41を取り付けるために用いられる締結部39(例えば、ボルト等の締結部材)を有する。締結部39は、前側メンバ31の左右の端部に1箇所ずつ形成され、後側メンバ32の左右の端部に1箇所ずつ形成される。また、締結部39は、右側メンバ33及び左側メンバ34の車両前後方向Yの中央部に1箇所ずつ形成される。締結部39として、各メンバ(前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33及び左側メンバ34)の矩形断面を貫通するボルト等の締結部材が取付けられる。右側メンバ33及び左側メンバ34の締結部39は、前側メンバ31及び後側メンバ32の締結部39よりも車両幅方向Xにおける内側(車両の中心側)に配置されている。これにより、右側および左側の各締結部39が車両前後方向Yに沿って直線上に並ばずに、車両幅方向Xに分散した配置とすることができるため、サブフレーム30とサイドブラケット41との結合剛性を高めることができる。
【0034】
右側マウントメンバ35は、前側メンバ31及び後側メンバ32の右側端部で、右側メンバ33よりも車両の左側に配置されている。右側マウントメンバ35は、車両前後方向Yに沿って延びる。右側マウントメンバ35は、上方が開口した断面U字状の部材である。右側マウントメンバ35は、前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33に溶接により接合されている。右側マウントメンバ35の下面は、前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33のそれぞれの下面よりも低い位置となっている。右側マウントメンバ35は、車両前後方向Yにおいて、前側メンバ31の下方を通過して前側メンバ31よりも前側に延びる延出部35aを有する。右側マウントメンバ35は、前側メンバ31の前後面と下面、後側メンバ32の前面と下面、右側メンバ33の左側側面に溶接により接合されている。
【0035】
右側マウントメンバ35には、第2マウント50(右側の前マウント50A)が取り付けられる。右側マウントメンバ35は、第2マウント50を取り付けるための締結部35b(例えば、締結用の穴)を有する。右側マウントメンバ35は、複数の締結部35bを有してもよい。締結部35bは、延出部35aに配置されてもよい。締結部35bは、延出部35aだけでなく、前側メンバ31と後側メンバ32との間に配置されてもよい。また、締結部35bは、前側メンバ31の前後両側に配置されていてもよい(図5参照)。締結部35bを前側メンバ31の前後両側に配置することで、第2マウント50(前マウント50A)を前側メンバ31の真下に配置することができ、荷重を効率良く前側メンバ31へ伝えることができる。
【0036】
左側マウントメンバ36は、前側メンバ31および後側メンバ32の左側端部で、左側メンバ34よりも車両の右側に配置されて車両前後方向Yに沿って延びる。左側マウントメンバ36は上方が開口した断面U字状の部材である。左側マウントメンバ36は、前側メンバ31、後側メンバ32、左側メンバ34に溶接により接合されている。左側マウントメンバ36の下面は、前側メンバ31、後側メンバ32、左側メンバ34のそれぞれの下面よりも低い位置となっている。左側マウントメンバ36は、車両前後方向Yにおいて、前側メンバ31の下方を通過して前側メンバ31よりも前側に延びる延出部36aを有する。左側マウントメンバ36は、前側メンバ31の前後面と下面、後側メンバ32の前面と下面、左側メンバ34の右側側面に溶接により接合されている。
【0037】
左側マウントメンバ36には、第2マウント50(左側の前マウント50A)が取り付けられる。左側マウントメンバ36は、第2マウント50を取り付けるための締結部36b(例えば、締結用の穴)を有する。左側マウントメンバ36は、複数の締結部36bを有してもよい。締結部36bは、延出部36aに配置されてもよい。締結部36bは、延出部36aだけでなく、前側メンバ31と後側メンバ32との間に配置されてもよい。また、締結部36bは、前側メンバ31の前後両側に配置されていてもよい(図5参照)。締結部36bを前側メンバ31の前後両側に配置することで、第2マウント50(前マウント50A)を前側メンバ31の真下に配置することができ、荷重を効率良く前側メンバ31へ伝えることができる。
【0038】
中央マウントメンバ37は、車両幅方向Xにおける右側マウントメンバ35と左側マウントメンバ36との間において、車両前後方向Yに延びる。中央マウントメンバ37は、前側メンバ31(の中央部)と後側メンバ32(の中央部)とを連結する。中央マウントメンバ37は、電力供給部60を取り付けるための上面37uを有してもよい。上面37uには、電力供給部60が載置されてもよい。中央マウントメンバ37は、車両前後方向Yにおいて、後側メンバ32よりも後側に延びる延出部37aを有する。
【0039】
中央マウントメンバ37は、矩形断面を有する中空の部材である。中央マウントメンバ37は、断面U字状の上側部材と下側部材とを溶接により閉断面に形成されている。これにより、中央マウントメンバ37は、軽量化と剛性の確保がなされている。中央マウントメンバ37の上面37uは、前側メンバ31、後側メンバ32のそれぞれの上面よりも高い位置となっている。中央マウントメンバ37の下面は、前側メンバ31、後側メンバ32のそれぞれの下面よりも低い位置となっている。つまり、後側メンバ32が中央マウントメンバ37を車両幅方向Xに貫通するように、中央マウントメンバ37は、後側メンバ32の周囲を取り囲んでいる。そして、中央マウントメンバ37の前端部は、前側メンバ31の上下面と後面とに溶接により接合されている。車両前後方向Yにおける中央マウントメンバ37の中間部は、後側メンバ32の上下面と前後面とに溶接により接合されている。さらに、中央マウントメンバ37の後端部は、後述する補助メンバ38の前面と下面に溶接により接合されている。
【0040】
中央マウントメンバ37には、第2マウント50(後マウント50B)が取り付けられる。中央マウントメンバ37は、第2マウント50を取り付けるための締結部37b(例えば、締結用の孔)を有する。中央マウントメンバ37は、複数の締結部37bを有してもよい。締結部37bは、延出部37aに配置されてもよい。締結部37bは、延出部37aだけでなく、前側メンバ31と後側メンバ32との間に配置されてもよい。また、締結部37bを、中央マウントメンバ37の後端部で、後述する補助メンバ38と中央マウントメンバ37との接合箇所(具体的には、車両上下方向Zにおいて補助メンバ38と中央マウントメンバ37とが重なる領域)に設けてもよい。補助メンバ38と中央マウントメンバ37との接合箇所を締結部37bとすることで、剛性のある箇所に第2マウント50(後マウント50B)を取り付けることができる。
【0041】
補助メンバ38は、中央マウントメンバ37を補強するための部材である。補助メンバ38は、中央マウントメンバ37の延出部37a(後側の端部)と後側メンバ32とを連結する。補助メンバ38は、中央部38aと左右の端部38bとを有する。補助メンバ38は、矩形断面を有する中空の部材である。補助メンバ38は、断面U字上の上側部材と下側部材とを溶接により閉断面に形成されている。これにより、補助メンバ38は、軽量化と剛性の確保がなされている。中央部38aは、中央マウントメンバ37の後端部が溶接により接合される部位であって、車両幅方向Xに沿って延びる。端部38bは、後側メンバ32と中央部38aとを連結する。右側の端部38bの前端は、中央マウントメンバ37と右側マウントメンバ35との間にて後側メンバ32に接合され、後側メンバ32の上下面と後面に溶接により接合される。左側の端部38bの前端は、中央マウントメンバ37と左側マウントメンバ36との間にて後側メンバ32に接合され、後側メンバ32の上下面と後面に溶接により接合される。端部38bは、中央部38aの車両幅方向Xの両側にて湾曲し、後側メンバ32に向かって車両前方向Y1へ延びる。なお、端部38bは、中央部38aから屈曲して車両前方向Y1に延びていてもよい。端部38bは、後側メンバ32に対して斜めに接合されていてもよい。車両上面視において、補助メンバ38は、車両後方向Y2に向かって凸形状(U字状)であってもよい。
【0042】
補助メンバ38は、電力供給部60を取り付けるための上面38uを有してもよい。上面38uには、電力供給部60が載置されてもよい。
【0043】
(2.2)第1マウント40
次に、第1マウント40について、説明する。第1マウント40は、サイドブラケット41、ブッシュ42、ロアブラケット44、アッパブラケット45、締結部46、中間ブラケット47を有する(図6-12参照)。ブッシュ42は、第1カラー422、外筒424、第1弾性体426を有する。
【0044】
サイドブラケット41は、サブフレーム30の上方からサイドメンバ5の上方へ延びる。具体的には、サイドブラケット41は、サブフレーム30の車両幅方向Xの両端部に連結されるとともにその外端部が左右のサイドメンバ5の上方に延びる部材である。
サイドブラケット41の車両幅方向Wの一方の端部(後述する本体部412の一部)は、サイドメンバ5よりも車両幅方向Xにおける車両中央側に突出しており、サブフレーム30の上面に重ねられ、締結部39によりサブフレーム30と締結される。サイドブラケット41の車両幅方向Wの他方の端部(後述する延出部414)は、サイドメンバ5の上方に配置され、第1弾性体426を介して、サイドブラケット41よりも下方の車体部材に取付けられる。詳細には、サイドブラケット41の他方の端部には、第1弾性体426を有するブッシュ42が配置され、ブッシュ42の外筒424が、サイドブラケット41に取り付けられる。第1弾性体426は、外筒424の内側に配置され、その中央部に車両上下方向Zに延びる貫通孔を有する。貫通孔に第1カラー422と締結部46が挿入される。サイドメンバ5の上面にはロアブラケット44が配置され、第1カラー422が締結部46によってロアブラケット44固定される。これにより、サイドブラケット41は、ブッシュ42、第1カラー422、締結部46及びロアブラケット44を介してサイドメンバ5と締結される(特に、図11及び図12参照)。なお、外筒424は、サイドブラケット41と一体化されてもよいし、サイドブラケット41に設けられる孔であってもよい。第1カラー422は、締結部46と一体化されてもよい。部4部4部4さらに、第1マウント40は、締結部46の上部がアッパブラケット45を介して収容室2の内壁面2sと締結されて、補強されている(特に、図12参照)。なお、内壁面2sは、車体パネルにより構成されている。このように、ロアブラケット44が締結部46の下部に連結され、アッパブラケット45が締結部46の上部に連結されているため、ブッシュ42をより強固に車体に固定することができ、サブフレーム30の車両上下方向Zの振動を抑制できる。
【0045】
図9に示すように、サイドブラケット41は、本体部412と延出部414とを有する。
【0046】
本体部412は、サイドメンバ5より車両幅方向Xの内側に配置されており、かつサブフレーム30の上面に締結される。従って、本体部412は、車両上下方向Zにおいてサブフレーム30の上側に固定される。本体部412は、サイドメンバ5より車両幅方向Xでサブフレーム30側に延びており車両上下方向Zにおいてサイドメンバ5と重ならない。
【0047】
本体部412は、車両前後方向Yにおいて、前側に位置する前側部分412Fと、中央側に位置する中央部分412Cと、後側に位置する後側部分412Rとを有する。
【0048】
中央部分412Cの幅方向外側は、車両幅方向Xの内側に凹んでおり、中央部分412Cの幅方向内側は、車両幅方向Xの内側へ突出している。当該突出部分には、サブフレーム30とサイドブラケット41とを締結する締結部39が配置されている。
【0049】
前側部分412Fと後側部分412Rとは、車両幅方向Xの外側に延びており、延出部414と連なっている。前側部分412Fの車両幅方向Xの内側縁部は、車両前方向Y1へ向かうにつれ、車両外側(図9では、車両左方向X2)に位置する。前側部分412Fの内側縁部には、締結部39が配置されている。同様に、後側部分412Rの車両幅方向Xの内側縁部は、車両後方向Y2へ向かうにつれ、車両外側(図9では、車両左方向X2)に位置する。後側部分412Rの内側縁部には、締結部39が配置されている。前側部分412F及び後側部分412Rにおける各締結部39は、中央部分412Cにおける締結部39に対して、車両幅方向Xにずれているため、サブフレーム30とサイドブラケット41との結合剛性を高めることができる。
【0050】
延出部414は、本体部412から車両幅方向Xの外側に延出し、かつサブフレーム30の上方に配置されている。延出部414は、車両上下方向Zにおいてサイドメンバ5と重なる。延出部414には、ブッシュ42が配置され、取り付けられる。
【0051】
本体部412は、車両上下方向Zにおいてサイドメンバ5と重ならない位置にある。従って、収容室2においてサブフレーム30を車両の下側から上側へ移動させて本体部412と固定することができる。予めサイドブラケット41をサイドメンバ5に取り付け、モータユニット20を搭載したサブフレーム30を車両の下側からサイドブラケット41に固定すればモータユニット20の搭載性能を向上できる(図11参照)。
【0052】
本体部412は、締結部39により、前側メンバ31、後側メンバ32、右側メンバ33(又は左側メンバ34)のそれぞれと固定されるため、サブフレーム30に対する結合剛性を高めることができる。
【0053】
サイドブラケット41は、車両前後方向Yに離間して配置される2つの延出部414を有する。従って、サイドブラケット41は、上面視において2つの延出部414を連絡する縁部が車両幅方向Xの内側へ凹んでいる。車両前後方向Yにおける2つの延出部414の間の空間は、車両幅方向Xの内側(車両の中心側)に向かうにつれ、小さくなる。これにより、本体部412と延出部414との連結剛性を高めることができる。
【0054】
2つの延出部414には、それぞれブッシュ42が配置されている。ブッシュ42が、各延出部414に取り付けられている。ブッシュ42は、第1カラー422、外筒424、及びこれら両者を連結する第1弾性体426を有する。本実施形態において、ブッシュ42の外筒424は、サイドブラケット41と一体的に結合されている。第1弾性体426は、車両上下方向Zに貫通する貫通孔を有し、貫通孔には、第1カラー422が挿入される。締結部46は、第1弾性体426を車両上下方向Zに貫通する。締結部46は、ブッシュ42の内側に配置されており、第1カラー422を通るボルトにより構成されている。締結部46は、アッパブラケット45と第1弾性体426とを貫通し、下端がロアブラケット44に締結される。従って、第1カラー422および第1弾性体426は、車両上下方向Zにおいてロアブラケット44とアッパブラケット45との間に配置され、ロアブラケットに44とアッパブラケット45とにより車体に支持される。よって、サイドブラケット41は、第1弾性体426を介してその下方の車体(ロアブラケット44)に取付けられ、かつその上方の車体(アッパブラケット45)にも取付けられる。
【0055】
ブッシュ42は、車両前後方向Yに離間して配置される2つのブッシュ(第1ブッシュ42A及び第2ブッシュ42B)により構成されている。第1ブッシュ42Aは、前側の延出部414に取り付けられており、第2ブッシュ42Bは、後側の延出部414に取り付けられている。なお、ブッシュ42は、延出部414だけでなく、本体部412(の車両幅方向Xの外側部分)にも取り付けられてよい。
【0056】
ブッシュ42は、車両上下方向Zに貫通孔を有する筒状の部材である。図10に示すように、ブッシュ42は、第1弾性体426が挿入される外筒424を有する。第1弾性体426の貫通孔には第1カラー422が挿入される。第1カラー422は、車両上下方向Zに延びる筒状の部材である。第1カラー422の内側には、締結部46が挿入されている。これにより、第1カラー422をロアブラケット44とアッパブラケット45とに固定できる。
【0057】
外筒424は、ブッシュ42の外側を構成し、サイドブラケット41と固定されている。外筒424の内側には、第1弾性体426と第1カラー422とが配置されている。
【0058】
第1弾性体426は、サブフレーム30と車体との間(詳細には、サブフレーム30に固定されるサイドブラケット41と、サイドメンバ5に固定されているロアブラケット44との間)に配置されている。第1弾性体426は、サブフレーム30の振動を吸収し、車体への振動の伝搬を抑制するためのものである。
【0059】
第1弾性体426は、筒状の弾性体である。第1弾性体426の下側の直径は、第1弾性体426の上側の直径よりも大きい。これにより、第1弾性体426の体積を低減してコストを低減しつつも、水平方向(車両幅方向X及び車両前後方向Y)における振動を効率的に吸収できる。
【0060】
第1弾性体426は、車両上下方向Zの方向に貫通する貫通孔を有する。第1弾性体426は、貫通孔に挿入された第1カラー422および締結部46によって車両上下方向Zに位置決めされ、車体に取り付けられている。第1弾性体426の上側と第1弾性体426の下側とで貫通孔の内径の大きさが異なってもよい。
【0061】
図6-12に示すように、第1弾性体426は、左右一対のサイドメンバ5の上方に、車両前後方向Yに並んでそれぞれ2個ずつ配置されている。車両前後方向Yにおいて、前側の第1弾性体426Aはその中心が前側メンバ31の後面の近傍に配置され、後側の第1弾性体426Bは後側メンバ32の後面の近傍に配置されている。従って、車両側面視において、前側の第1弾性体426Aは前側メンバ31と重なり、後側の第1弾性体426Bは後側メンバ32と重なっている。これにより、サブフレーム30からの振動を各第1弾性体426に効率よく分散することができ、車体へ伝搬する振動を抑制できる。
【0062】
ロアブラケット44は、サイドメンバ5の上面に配置され、サイドメンバ5へ載置されるブラケットである。ロアブラケット44は、サイドメンバ5に固定されている。ロアブラケット44は、さらに、サイドメンバ5の外側に連結される収容室2の内壁面2sと固定されている。つまり、ロアブラケット44は、サイドメンバ5の上面と、サイドメンバ5の車両幅方向Xの外方側から斜め上側に延びる収容室2の内壁面2sと隅角部に配置される。ロアブラケット44は、内壁面2sとサイドメンバ5の上面に溶接固定されている。ロアブラケット44は、車両上下方向Zに貫通する第1弾性体426に挿入される第1カラー422を有する。ロアブラケット44は、貫通孔を通る締結部材(ボルト等)により、その上方に配置された第1弾性体426をサイドメンバ5に取り付けるブラケットである。
【0063】
図6,8,9,10に示すように、ロアブラケット44は、前部壁441、後部壁442、上部壁443、側部壁444により構成され、台座状である。具体的には、前部壁441は、車両上下方向Zに沿って延びる。後部壁442は、車両上下方向Zに沿って延び、前部壁441よりも後側に配置される。上部壁443は、車両の水平方向(車両幅方向X及び車両前後方向Y)に沿って延び、前部壁441の上端、後部壁442の上端、側部壁444の上端と連なっている。上部壁443は、締結部46が通る貫通孔を有する。側部壁444は、車両上下方向Zに沿って延び、前部壁441、後部壁442及び上部壁443よりも車両の中心側に配置される。側部壁444は、前部壁441の側端、後部壁442の側端、上部壁443の側端と連なっている。前部壁441、後部壁442、上部壁443は、収容室2の内壁面2sと溶接固定され、前部壁441、後部壁442、側部壁444は、サイドメンバ5と溶接固定されている。ロアブラケット44は、台座状であり、内部が中空である。従って、ロアブラケット44の軽量化が図れ、かつ生産コストを低減できる。
【0064】
ロアブラケット44は、車両前後方向Yに離間して配置される2つのロアブラケット44(前側ブラケット44A及び後側ブラケット44B)を有する。前側ブラケット44Aはサイドメンバ5が水平に延びる部分に配置され、後側ブラケット44Bはサイドメンバ5が斜め下に湾曲する部分に配置されている。前側ブラケット44Aの上部壁443の上方に前側の第1弾性体426A(第1ブッシュ42A)が配置されている。後側ブラケット44Bの上部壁443の上方に後側の第1弾性体426B(第2ブッシュ42B)が配置されている。前側ブラケット44Aの上部壁443と後側ブラケット44Bの上部壁443とは、車両上下方向Zにおいて同じ位置(同じ高さ)に配置されている(図10参照)。従って、前側ブラケット44Aと後側ブラケット44Bとで、車両上下方向Zにおける前部壁441、後部壁442、側部壁444の長さが異なっている。具体的には、車両上下方向Zにおいて、後側ブラケット44Bの前部壁441、後部壁442、側部壁444の長さは、それぞれが対応する前側ブラケット44Aの前部壁441、後部壁442、側部壁444のそれぞれの長さよりも長い。これにより、複数の第1弾性体426を同じ高さで固定することができ、サブフレーム30を安定して支持できる。
【0065】
アッパブラケット45は、収容室2の内壁面2sから締結部46に延びており、第1弾性体426に挿入された第1カラー422の車両の上側を車体に連結するブラケットである。アッパブラケット45は、車両幅方向Xにおける内側端部が、第1カラー422をロアブラケット44に固定する締結部46(具体的には、ボルト)にて第1カラー422と共締めされ、車両幅方向Xにおける外側端部がボルト等の締結部材により、収容室2の内壁面2sと締結される(図6、12参照)。つまり、アッパブラケット45は、第1カラー422をロアブラケット44に固定する締結部46の上部と収容室2の内壁面2sとを連結して、第1弾性体426に挿入された第1カラー422の車体部材に対する取付剛性を向上させている。これにより、第1カラー422がサブフレーム30から受ける荷重をロアブラケット44とアッパブラケット45とによって支持できる。これにより、第1弾性体426に挿入された第1カラー422が振動することが抑制できる。
【0066】
中間ブラケット47は、アッパブラケット45の下方でサブフレーム30及び内壁面2sの少なくとも一方に固定されている。中間ブラケット47は、前側の第1弾性体426Aと後側の第1弾性体426Bとの間にてアッパブラケット45をロアブラケット44に連結するブラケットである。従って、アッパブラケット45は、中間ブラケット47と固定されている。これにより、アッパブラケット45の振動を抑制することができる。また、中間ブラケット47は、車両前後方向Yにおいて第1ブッシュ42Aと第2ブッシュ42Bとの間に配置されている。これにより、第1ブッシュ42Aと第2ブッシュ42Bとの両方の近傍で中間ブラケット47にアッパブラケット45が固定されるため、アッパブラケット45を通じて、第1ブッシュ42Aの第2ブッシュ42Bの振動を抑制できる。
【0067】
中間ブラケット47は、前部壁471、後部壁472、上部壁473、側部壁474、ベース部475により構成され、台座状である。具体的には、前部壁471は、車両上下方向Zに沿って延びる。後部壁472は、車両上下方向Zに沿って延び、前部壁471よりも後側に配置される。上部壁473は、車両の水平方向(車両幅方向X及び車両前後方向Y)に沿って延び、前部壁471の上端、後部壁472の上端、側部壁474の上端と連なっている。上部壁473(中間ブラケット47)は、アッパブラケット45と中間ブラケット47とを締結するための締結部材(ボルト等)が挿入される貫通孔473hを有する(図12参照)。側部壁474は、車両上下方向Zに沿って延び、前部壁471、後部壁472及び上部壁473よりも車両の中心側に配置される。側部壁474は、前部壁471の側端、後部壁442の側端、上部壁443の側端と連なっている。
【0068】
車両上面視において、車両前後方向Yにおける前部壁471と後部壁472との距離は、車両幅方向Xに向かうにつれ、短くなる。従って、前部壁471の車両幅方向Xにおける内側端と後部壁472の車両幅方向Xにおける内側端との車両前後方向Yにおける第1距離は、前部壁471の車両幅方向Xにおける外側端と後部壁472の車両幅方向Xにおける外側端との第2距離よりも短い。これにより、中間ブラケット47は車両幅方向Xの中央側に尖った形状に形成され、車両前後方向Yに並ぶ2つの延出部414に挟まれる空間に配置しやすい構造にすることができる。
【0069】
ベース部475は、前部壁471の下端及び外側端、後部壁472の下端及び外側端、上部壁473の外側端、側部壁474の下端に連結されている。ベース部475の外側端は、溶接により内壁面2sと固定されている。ベース部475の下端は、ロアブラケット44を介してサイドメンバ5と固定されている。ベース部475(中間ブラケット47)の下端は、締結部46が挿入される貫通孔475hを有し、ロアブラケット44の上部壁473に溶接にて固定されている。なお、ベース部475は、締結部46によりロアブラケット44と固定されていてもよい。
【0070】
中間ブラケット47は、ロアブラケット44上に固定される。詳細には、中間ブラケット47は、2つのロアブラケット44(前側ブラケット44Aと後側ブラケット44B)の両方に固定されている。従って、中間ブラケット47は、2つのロアブラケット44を連結する。これにより、ロアブラケット44が振動することを抑制でき、結果的に、モータユニット20から車体へ伝搬する振動を抑制できる。
【0071】
加えて、中間ブラケット47は、ロアブラケット44を介してサブフレーム30と固定されている。これにより、ロアブラケット44の高さの分だけ、中間ブラケット47の車両上下方向Zにおける高さを低くすることができる。これにより、中間ブラケット47の小型化を図ることができる。中間ブラケット47の高さを低くすることで、中間ブラケット47の剛性も高めることができ、中間ブラケット47が振動することを抑制できる。その結果、モータユニット20から車体へ伝搬する振動を抑制できる。
【0072】
(2.3)第2マウント50
次に、第2マウント50について、説明する。第2マウント50は、第2カラー51、外筒ブラケット52、内筒ブラケット54、第2弾性体56を有する。
【0073】
第2カラー51は、車両幅方向Xに延びる筒状の部材であり、モータユニット20側に連結される。第2カラー51の内側には、内筒ブラケット54(詳細には、内筒ブラケット54の車両幅方向Xの外側に延びるマウント軸542)が挿入固定されている(図11参照)。第2カラー51の外側には、第2弾性体56が配置されている。
【0074】
外筒ブラケット52は、第2弾性体56が挿入される外筒522と、外筒522をサブフレーム30に支持する固定部523を有する。外筒522の内周に第2弾性体56を介して第2カラー51が支持されている。固定部523は、第2マウント50をサブフレーム30(詳細には、右側マウントメンバ35、左側マウントメンバ36、中央マウントメンバ37)に固定するためのものである。固定部523は、外筒522の上部に接合されて、サブフレーム30の下面と外筒522との間に配置されている。固定部523は、外筒522よりも前後に拡張された締結面(上面)を有し、ボルト等の締結部材によりサブフレーム30の締結部35b、36b、37bに締結されている。つまり、外筒ブラケット52は、車両前後方向Yにおいて、第2弾性体56の前後でサブフレーム30に固定されている。
【0075】
内筒ブラケット54は、モータユニット20と第2カラー51を連結するためのブラケットである。内筒ブラケット54は、マウント軸542と本体部544とを有する。内筒ブラケット54の上端部には、第2カラー51の内側に挿入固定されるマウント軸542が配置されている。本体部544は、本体部544の下部がモータユニット20に水平方向から締め付け固定される、本体部544は、モータユニット20と締結される部分から車両上下方向Zに延びる。
【0076】
内筒ブラケット54(本体部544)は、締結されるモータユニット20(モータ22/減速機24)の位置に応じた形状である。車両右側に配置される前マウント50Aの内筒ブラケット54(本体部544)は、図11図13図15に示すように、モータ22の右端面に右側から重ねられて締結固定され、マウント軸542は、車両右方向にX1延びている。車両左側に配置される前マウント50Aの内筒ブラケット54は、図11及び図13図14に示すように、減速機24の前上部となる左端面に左側から重ねられて締結固定され、マウント軸542は左方向に延びている。車両後側に配置される後マウント50Bの内筒ブラケット54は、図11図13図15に示すように、減速機24の後上部となる差動装置の上方(ドライブシャフトDSが挿入される孔の上方)に右側から重ねられて締結固定され、マウント軸542は左方向に延びている。図11図13に示すように、前マウント50Aのマウント軸542は、モータユニット20よりも左右に突出して配置されており、左右の前マウント50Aは、モータユニット20の長さよりも長い間隔で配置され、モータユニット20を支持している。
【0077】
図11及び図13に示すように、車両右側に配置される前マウント50Aのマウント軸542は、車両前後方向Yにおいて、前側メンバ31の前面と同じ位置に配置され、前側の第1弾性体426よりも前方に配置されている。図16に示すように、車両左側に配置される前マウント50Aのマウント軸542は、車両前後方向Yにおいて、車両右側に配置される前マウント50Aのマウント軸542よりも後方に配置され、かつ前側メンバ31と同じ位置に配置されている。図15に示すように、車両左側に配置される前マウント50Aのマウント軸542は、前側の第1弾性体426(第1ブッシュ42A)よりも前方に飛び出すように配置されている。図16に示すように、車両後側に配置される後マウント50Bのマウント軸542は、車両前後方向Yにおいて、後側メンバ32よりも後方に配置され、かつ後側の第1弾性体426(第2ブッシュ42B)よりも後方に配置されている。
【0078】
第2弾性体56は、モータユニット20の振動を吸収し、サブフレーム30への振動の伝搬を抑制するためのものである。図11図14等に示すように、第2弾性体56により、車両上下方向Zに配置される2つのスグリが形成されている。2つのスグリは、車両幅方向Xに貫通するように形成されている。上側のスグリは、第2カラー51の前方から第2カラー51の上方を通過して第2カラー51の後方にまで形成されている。下側のスグリは、第2カラー51の下方に形成されている。
【0079】
第2弾性体56は、第1弾性部分561、第2弾性部分562、第3弾性部分563により構成されている。第1弾性部分561は、外筒522の内壁で車両前側、車両後側及び車両上側の内壁に配置される。
【0080】
第2弾性部分562は、第2カラー51を取り巻くように第2カラー51の外壁に配置され、外筒522の車両前下側の内壁、及び、車両後下側の内壁に配置される。つまり、第2弾性部分562は、第2カラー51から車両前下側、及び、車両後下側に延びる部分を有する。第2弾性部分562は、第2カラー51と外筒522の車両前下側、及び、車両後下側を連結して、第2カラー51を支えている。
【0081】
第3弾性部分563は、外筒522の車両下側の内壁に配置される。第3弾性部分563は、車両前後方向Yにおいて、第2弾性部分562の間に配置されている。つまり、第3弾性部分563は、第2弾性部分562の第2カラー51から車両前下側、及び、車両後下側に延びる部分の間に配置され、その上部に、第2カラー51(第2弾性部分562)が当接する当接面を有している。
【0082】
従って、第2マウント50は、スグリにより、車両幅方向Xの硬さを基準に、車両前後方向Yにおいて軟らかく、車両上下方向Zにおいて硬い特性を有する。
【0083】
第2弾性体56は、第1弾性体426よりも大きな体積を有する。第2マウント50の静ばね定数(N/mm)は、第1マウント40の静ばね定数よりも小さい値である。従って、第2マウント50は、第1マウント40よりも軟らかい特性を有する。これにより、第2マウント50は、第1マウント40と比較して、モータユニット20の大きな揺動や振動を吸収することができる。また、第1マウント40は、第2マウント50と比較して、減速機24のギアのかみ合いによる高周波の振動等の小さい振動を吸収することができる。第1マウント40は、高周波の振動がサブフレーム30へ伝搬することを抑制できるので、高周波の振動により車体が振動することを抑制できる。一方で、第2マウント50は、第1マウント40が吸収しきれないモータユニット20の動きによる大きな振動を吸収することができる。このように、モータユニット20の動き量を規制しつつ、モータユニット20から車体へ伝搬する振動を抑制できる。
【0084】
なお、本明細書において、静ばね定数は、マウント単体が車体へ取り付けられた状態(搭載状態)の姿勢における3軸方向(車両幅方向/車両前後方向/車両上下方向)への変位荷重の測定により規定される。従って、弾性体の物性値で規定される静ばね定数でないことに留意すべきである。
【0085】
各静ばね定数の一例を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
なお、KXは、車両幅方向Xにおける静ばね定数(ゴム特性)を示し、KYは、車両前後方向Yにおける静ばね定数(ゴム特性)を示し、KZは、車両上下方向Zにおける静ばね定数(ゴム特性)を示す。
【0088】
第2マウント50には、モータユニット20の重力が常に作用するため、モータユニット20を安定して支持できるように、第2マウント50の静ばね定数KZは、静ばね定数KX及びKYよりも大きい値であってよい。また、車両の加速/減速により、車両前後方向Y及び車両上下方向Zに成分を主に有するトルクモーメントが第2マウント50に対して作用する。第2マウント50の静ばね定数KY及びKZは、静ばね定数KXよりも大きい値であってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、後マウント50Bの数は、前マウント50Aの数よりも少ないため、モータユニット20に対して車両幅方向Xへの力が働いた場合、モータユニット20の後部が大きく揺れ動くことを抑制するために、後マウント50Bの静ばね定数KXは、前マウント50Aの静ばね定数KXよりも大きい値であってよい。また、後マウント50Bが、モータユニット20の重力による負荷が、前マウント50Aよりも大きくなるため、モータユニット20を安定して支持できるように、後マウント50Bの静ばね定数KZは、前マウント50Aの静ばね定数KZよりも大きい値であってよい。
【0090】
第1マウント40の静ばね定数は、第2マウント50の静ばね定数の2倍以上であってよく、より好ましくは3倍以上であってよい。これにより、第1マウント40が吸収する振動と第2マウント50が吸収する振動と明確に分けることで、広い範囲の振動を吸収し、モータユニット20から車体へ伝搬する振動を抑制できる。
【0091】
第1マウント40の静ばね定数は、小さい振動をより吸収するために、500N/mm以上であってよく、好ましくは、800N/mm以上であってよい。第2マウント50の静ばね定数は、大きな振動をより吸収するために、500以下であってよく、好ましくは、300N/mm以下であってよい。
【0092】
上述したように、第2マウント50は、前マウント50Aと後マウント50Bとを有する。ここで、前マウント50Aの第2弾性体56の車両前方向Y1における前端部(具体的には、第1弾性部分561の前端部)は、第1弾性体426の車両前方向Y1における前端部よりも車両前側に位置する。また、後マウントの第2弾性体56の車両後方向Y2における後端部(具体的には、第1弾性部分561の後端部)は、第1弾性体426の車両後方向Y2における後端部よりも車両後側に位置する。これにより、車両前後方向Yにおいて、第1マウント40の第1弾性体426は、前マウント50Aの第2弾性体56(の前端部)と後マウント50Bの第2弾性体(の後端部)との間に配置される。ここで、第1マウント40が、車両幅方向Xから見てモータユニット20の重心位置の上方に配置され、第1マウント40の前後に第2マウント50が配置されている。つまり、車両幅方向Xから見た図13に示すように、車両前後方向Yにおいて、前マウント50Aと後マウント50Bの間に前側の弾性体43と後側の弾性体43が配置され、前側の弾性体43と後側の弾性体43の間にモータユニット20の重心が配置されている。このため、モータユニット20を自然な状態で吊り下げ支持することができ、車両前側及び車両後側の一方側に荷重が偏った状態でサブフレーム30を支持することを抑制できる。第1マウント40に対して局所的に負荷が掛かることを抑制でき、第1マウント40の耐久性能を向上できる。
【0093】
図11,14に示すように、車両後側に配置される後マウント50Bのマウント軸542を、車両前後方向Yにおいて、減速機24のドライブシャフトDSが挿入される孔よりも後方に配置することもできる。これにより、より安定的にモータユニット20をサブフレーム30に吊り下げることができる。つまり、車両前後方向Yにおいて、前マウント50Aの第2弾性体56の車両前方向Y1における前端部(具体的には、第1弾性部分561の前端部)と、後マウント50Bの第2弾性体56の車両後方向Y2における後端部(具体的には、第1弾性部分561の後端部)と、の間にドライブシャフトDSの軸が位置することで、取付け間隔を長く確保してモータユニット20の動き量を規制してもよい。
【0094】
(2.4)サスペンションフレーム80
サスペンションフレーム80について、説明する。サスペンションフレーム80は、収容室2の車両後下側に配置され、図13-16に示すように、モータユニット20の下部の車両後側に配置される。サスペンションフレーム80は、トルクロッド90を介してモータユニット20と連結される。サスペンションフレーム80は、車両右側及び車両左側のそれぞれに配置されているサイドメンバ5を連結して、車体の剛性を高めるための部材である。また、サスペンションフレーム80は、車両右側及び車両左側のそれぞれに配置されているサスペンションアームを車両上下方向Zに揺動可能に支持する。サスペンションフレーム80は、弾性体(不図示)を介して車体に取り付けられている。これにより、後述するように、トルクロッド90を介して伝搬した振動が車体へ伝搬することを抑制できる。
【0095】
サスペンションフレーム80は、車両幅方向の右側及び左側のそれぞれにおいて車両前方向に延びる2つの延長部82を有する。延長部82は、サスペンションアームを支持するための部分である。つまり、サスペンションフレーム80は、図16に示すように、左右が前方に延びて中央が後方に位置する凹形状を成す前縁部を有している。
【0096】
図16に示すように、車両の上方から見て、サブフレーム30は、サスペンションフレーム80と重ならない。つまり、サブフレーム30の後部の中央マウントメンバ37、及び補助メンバ38は、サスペンションフレーム80の前縁部の凹形状の内側に配置される。これにより、サブフレーム30を車両上下方向Zに移動させても、サブフレーム30がサスペンションフレーム80に当たらない。このため、整備等でモータユニット20を取り外して車体から降ろす際に、モータユニット20をサブフレーム30に取り付けられた状態で、サブフレーム30とともに、モータユニット20を車両下方向Z2へ下げてサスペンションフレーム80の前方を通過させることができる。つまり、モータユニット20を取り外す際に、サスペンションフレーム80を外したり、モータユニット20を車両前方向Y1へ移動させたりする必要がなくなるため、効率的に整備を行うことができる。そして、サブフレーム30とともにモータユニット20を取り外す際には、電力供給部60及びその配線が接続された状態で作業ができ、整備性を向上できる。なお、サブフレーム30を車体から取り外すには、締結部39にてサイドブラケット41との締結を解いて行う。また、前側メンバ31と後側メンバ32の車両幅方向Xの長さは、左右のサイドメンバ5間の距離よりも短い。
【0097】
また、後マウント50Bの第2弾性体56の車両後方向Y2における後端部(第1弾性部分561の後端部)は、延長部82の車両前側の前端部821よりも車両後側に位置する。つまり、車両の上方から見て、後マウント50Bの一部は、サスペンションフレーム80の前縁部の凹形状の内側に入り込んでいる。このため、後マウント50Bの第2弾性体56の後端部が、延長部82の前端部821よりも車両前側に位置する場合と比べると、車両前後方向Yにおける前マウント50A(の第2弾性体56)と後マウント50B(の第2弾性体56)との間隔が広くなる。これにより、間隔が広がるほど、車両前後方向Yにおけるモータユニット20の動き(揺動)により第2マウント50(前マウント50A及び後マウント50B)が受ける荷重に関し、車両上下方向Zの力成分が減少させることができ、第2弾性体56を軟らかくすることが可能となって、容易に車両前後方向Yの静ばね定数小さくすることができる。モータユニット20が第2マウント50によりサブフレーム30へ吊り下げられているため、モータユニット20は前後に揺動するが、第2マウント50(前マウント50Aと後マウント50Bと)は、前後の間隔が広く配置されているので車両上下方向Zの力をより効果的に受け止めることができ、さらに、車両前後方向Yの力もより吸収することができる。従って、第2マウント50が、車両前後方向Yの力成分を吸収することで振動を吸収し、車体への振動の伝搬を抑制するとともに、モータユニット20の動き量(揺動角度)をより規制することができる。
【0098】
(2.5)トルクロッド90
トルクロッド90について、説明する。モータユニット支持構造1は、モータユニット20を支持するトルクロッド90をさらに備える。トルクロッド90は、トルクロッド弾性体96を介してモータユニット20を収容室2内の車体部材と連結する。具体的には、トルクロッド90は、モータユニット20とサスペンションフレーム80とを連結してモータユニット20の揺動を抑制する(図14図16参照)。
【0099】
トルクロッド90は、モータユニット20の後部において、ドライブシャフトDSの軸よりも下側で取り付けられている(図18参照)。ここで、モータユニット20の後部は、モータユニット20の前後方向Lの中心よりも後ろ側の部分である。トルクロッド90は、トルクロール軸TRよりも後ろ側で取り付けられてもよい。トルクロッド90は、トルクロッド90がモータユニット20へ取り付けられた位置から車両後方へ延びている。具体的には、トルクロッド90は、減速機24の最下部と同程度の高さで車両前後方向Yに沿って水平に配置されている。
【0100】
図11及び図17に示すように、トルクロッド90は、前端部90Fと、後端部90Rと、前端部90F及び後端部90Rを繋ぐ本体パイプ90Pと、を有する。また、トルクロッド90は、トルクロッド弾性体96を有する。トルクロッド弾性体96は、後述する前弾性体(トルクロッド前弾性体)96Fと後弾性体(トルクロッド後弾性体)96Fとを有する。
【0101】
前端部90Fは、モータユニット20に取り付けられる部分である。具体的には、前端部90Fは、減速機24の右側面に(詳細には、ドライブシャフトDSが挿入される孔の下方)に、車両幅方向Xに締め付ける取付ボルト98により締結されている。なお、取付ボルト98は、前端部90Fと共に、トルクロッド90をモータユニット20へ取り付ける取付ブラケット99をモータユニット20へ締結している。取付ブラケット99は、取付ボルト98だけでなく、他の締結部(ボルト)によりモータユニット20へ締結されている。
【0102】
前端部90Fは、前カラー92F、前外筒94F、前弾性体96Fを有する。前カラー92Fは、筒状の部材であり、内筒と称されてもよい。前カラー92Fは、取付ボルト98にてモータユニット20に締め付け固定されている。具体的には、前カラー92Fの内側に取付ボルト98が挿入されて、モータユニット20と締結される。前外筒94Fは、本体パイプ90Pの前端に溶接固定されている。前外筒94Fの内側には、前カラー92F及び前弾性体96Fが配置されている。
【0103】
前弾性体96Fは、前カラー92Fと前外筒94Fとの間に配置され、前カラー92F及び前外筒94Fと固定されている。前弾性体96Fは、後弾性体96Rと異なり、スグリが形成されていない。
【0104】
後端部90Rは、車体部材へ取り付けられる部分である。具体的には、後端部90Rは、サスペンションフレーム80の内部に挿入されており、サスペンションフレーム80と後端部90Rとを上下に貫通するボルトにて、サスペンションフレーム80に取り付けられている(固定されている)。
【0105】
後端部90Rは、後カラー92R、後外筒94R、後弾性体96Rを有する。後カラー92Rは、筒状の部材であり、内筒と称されてもよい。後カラー92Rは、サスペンションフレーム80を貫通するボルトにてサスペンションフレーム80に固定されている。後外筒94Rは、本体パイプ90Pの後端に溶接固定されている。後外筒94Rの内側は、後カラー92R及び後弾性体96Rが配置されている。
【0106】
後弾性体96Rは、後弾性体96Rの軸(後端マウント90Rの軸)が車両上下方向Zに沿うように配置されており、車両前後方向Yに2つのスグリSGが形成されている。2つのスグリSGは、後端マウント90Rの軸の前後に車両前後方向Yに並んで配置されている。2つのスグリSGは、車両上下方向Zに貫通するように形成されている。
【0107】
後弾性体96Rは、第1弾性部分961、第2弾性部分962、第3弾性部分963により構成されている。
【0108】
第1弾性部分961は、外筒94の前側の内壁に配置されている。第1弾性部分961は、第2弾性部分962よりも前側に配置されている。また、第1弾性部分961は、前側のスグリSGよりも前側に配置されている。
【0109】
第2弾性部分962は、後カラー92Rを取り巻くように後カラー92Rの外壁に配置されており、外筒94の中央側の内壁に配置されている。つまり、第2弾性部分562は、車両幅方向Xの外側(詳細には、車両幅方向Xの右後側及び左後側)に延びる部分を有する。第2弾性部分962は、第1弾性部分961よりも後側に配置され、第3弾性部分963よりも前側に配置されている。また、第2弾性部分962は、前側のスグリSGよりも前側に配置され、後側のスグリSGよりも後側に配置されている。
【0110】
第3弾性部分963は、外筒94の後側の内壁に配置されている。第3弾性部分963は、第2弾性部分962よりも後側に配置されている。また、第3弾性部分963は、後側のスグリSGよりも後側に配置されている。
【0111】
本実施形態では、前端部90Fは、前弾性体96Fを有する前端マウント90Fである。後端部90Rは、後弾性体96Rを有する後端マウント90Rである。
【0112】
前端マウント90Fには、スグリSGが形成されていないため、前端マウント90Fは、後端マウント90Rに比べて硬い特性を有する。従って、前端マウント90Fは、後端マウント90Rに比べて、高周波の振動がトルクロッド90を介して車体へ伝搬することを抑制できる。なお、前端マウント90Fは、第2マウント50に比べて硬い特性を有してよい。また、前端マウント90Fは、第1マウント40に比べて硬い特性を有してよい。
【0113】
一方、後端マウント90Rは、車両前後方向Yに並ぶ2つのスグリSGによって、車両前後方向Y及び車両上下方向Zにおいて軟らかい特性を有する。従って、表2に示すように、前端マウント90Fの静ばね定数と後端マウント90Rの静ばね定数とが異なる。静ばね定数の一例を表2に示す。なお、各静ばね定数(KX、KY、KZ)は、表1と同様である。
【0114】
【表2】
【0115】
前端マウント90Fの静ばね定数と後端マウント90Rの静ばね定数とが異なる。従って、静ばね定数が小さい(すなわち、軟らかい)後端マウント90Rは、モータユニット20の動き及び振動を軟らかく受け止め、サブフレーム30車体へ振動が伝搬することを抑制できる。一方、静ばね定数が大きい(すなわち、硬い)前端マウント90Fは、減速機24のギアのかみ合いによる高周波の振動等の小さい振動を吸収することができる。従って、モータユニット20の動き量を規制しつつ、モータユニット20から車体へ伝搬する振動を抑制できる。
【0116】
また、後端マウント90Rの静ばね定数は、前端マウント90Fの静ばね定数よりも小さい。これにより、後端マウント90Rは、前端マウント90Fよりもモータユニット20から離れているため、後端マウント90Rでは、前端マウント90Fよりもモータユニット20の回動力が低減されている。従って、後端マウント90Rにおいて、モータユニット20の回動を軟らかく受け止めることで、効率良くモータユニット20の動き量を規制することができる。
【0117】
また、後マウント50Bの数は、1であり、前マウント50Aの数は、2である。従って、後マウント50Bの数は、前マウント50Aの数よりも少ない。これにより、トルクロッド90により後マウント50Bへの負荷を軽減しつつ、後マウント50Bの数を前マウントの数50Aよりも少なくすることで、収容室2の後方の空間を確保し、車両レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0118】
(3)第2マウント50及びトルクロッド90に作用する力
第2マウント50及びトルクロッド90に作用する力について、図18を用いて説明する。図18は、第2マウント50及びトルクロッド90に作用する力を説明するための図である。具体的には、図18Aは、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の右側から視た図であり、減速時における状態を示す。図18Bは、実施形態に係るモータユニット支持構造1を車両の右側から視た図であり、加速時における状態を示す。
【0119】
図18に示すように、前マウント50Aの第2弾性体56である第2前弾性体56Fは、車両前後方向Yにおいて、後マウント50Bよりも前側に配置されている。また、後マウント50Bの第2弾性体56である第2後弾性体56Rは、車両前後方向Yにおいて、モータユニット20の最後端20Rよりも前側に配置されている。モータユニット20の最後端20Rは、モータユニット20をカバーするカバーブラケットの最後端である。第2後弾性体56Rは、当該カバーケースを外した状態でのモータユニット20(図18では、減速機24)の最後端よりも前側に配置されてよい。
【0120】
上述の構成により、モータユニット20の後側には第2後弾性体56Rが配置されないため、モータユニット20から後側へ十分な距離を取らなくても、ダッシュボードを配置可能である。従って、収容室2として車両前後方向Yに広い空間を確保しなくても、モータユニット20を支持することができる。
【0121】
図18Aに示すように、減速時には、トルクロール軸TRを回転中心として時計回りにトルクロールモーメント(モータユニットを回転させる力)がモータユニット20に作用する。トルクロールモーメントは、減速機24に連結されたドライブシャフトDS(タイヤ)からの回転力と、モータ22の回転軸であるロータの回転を減少させる反力(回生制動制御等)に起因して発生する。
【0122】
一方で、図18Bに示すように、加速時には、トルクロール軸TRを回転中心として反時計回りにトルクロールモーメントがモータユニット20に作用する。トルクロールモーメントは、減速機24に連結されたドライブシャフトDS(タイヤ)からの反力と、モータ22の回転軸であるロータの回転を増速させる反力に起因して発生する。
【0123】
上述のトルクロールモーメントにより、前マウント50A、後マウント50B、トルクロッド90の前端マウント90Fには、トルクロールモーメントが作用する。各マウントにおいて、トルクロールモーメントは、トルクロール軸TRを中心とした円の接線方向に作用する。
【0124】
トルクロッド90の前端マウント90F(前弾性体96F)は、取付ボルト98の軸心回りに関するトルクロッド90の揺動を許容する。このため、トルクロッド90の後端マウント90Rにもトルクロールモーメントに起因する力が作用する。
【0125】
ここで、一般的に、モータユニット20を吊り下げて支持する場合には、モータユニット20の重心よりも上側にマウントが配置される。このため、弾性ロール軸がトルクロール軸TRよりも上側に離れた位置になり易い。従って、弾性ロール軸がトルクロール軸TRから離れることで、車両の加速/減速によってモータユニット20へトルクが掛かった場合に、モータユニット20の動きが大きくなり、その振動や衝撃が車体に伝播されて車両の静粛性が損なわれる恐れがある。また、モータユニット20の動きが大きくなるので、一部のマウントにトルクによる過大な力が作用し易くなる。当該マウントは、集中したトルクによる過大な力を吸収しきないことがある。また、マウントが、トルクによる力を一時的に吸収できていたとしても、過負荷によりマウントの弾性体がすぐに劣化し、トルクによる力を吸収しきれないことがある。
【0126】
本実施形態では、トルクロッド90は、ドライブシャフトDSの軸よりも下側で取り付けられているため、弾性ロール軸が下側へ下がり、弾性ロール軸をトルクロール軸TRに近づけることができる。これにより、モータユニット20の動きが小さくなり、各マウント(前マウント50A、後マウント50B、前端マウント90F、後端マウント90R)が効率よくモータユニット20の動きを受け止めることで、一部のマウントにトルクによる力が集中することを低減できる。
【0127】
加えて、トルクロッド90が、モータユニット20の後部において取り付けられ、かつトルクロッド弾性体96を介してモータユニット20を車体部材と連結するため、第2マウント50だけでなく、トルクロッド90でもモータユニット20の回動力を受け止めることができる。これにより、第2マウント50へ掛かるトルクによる力(負荷)を低減することができ、後マウント50Bへ掛かるトルクによる力(負荷)を軽減させて、モータユニット20の最後端20Rよりも前側で後マウント50Bを取り付けることが可能となる。
【0128】
トルクロッド90の後端部90Rは、トルクロッド弾性体96を介してサスペンションフレーム80に取付けられている後端マウント90Rである。トルクロッド90の後端部90Rは、車両後方へ延びているため、トルクロッド弾性体96、具体的には、後弾性体96Rをトルクロール軸TRから離すことができ、トルクロッド90の揺動角度を小さくして後弾性体96Rに掛かる負荷を低減することができる。これにより、後弾性体96Rを適切な特性とすることができる。加えて、振動を軽減するサスペンションフレーム80に取り付けられているため、トルクロッド90及びサスペンションフレーム80がトルクによる力を効果的に受け止めてモータユニット20の回動を抑制できるとともに、トルクロッド90を介して車室内に浸入する振動を効果的に抑制することができる。
【0129】
図18A及び図18Bに示すように、モータユニット20のトルクロール軸TRから第2マウント50(前マウント50A)の第2前弾性体56Fの中心C1までの距離L1は、トルクロール軸TRから第2マウント50(後マウント50B)の第2後弾性体56Rの中心C2までの距離L2よりも長い。トルクロール軸TRからの距離が遠いほど、モータユニットの回動力(負荷)を受けやすくなる。従って、距離L1を距離L2よりも長くすることで、第2後弾性体56Rに掛かるトルクによる力を低減できる。これにより、後マウント50Bの数を減らして車両レイアウトの自由度を向上させつつ、数の多い第2前弾性体56Fにおいてモータユニット20の回動を効率的に抑制できる。
【0130】
また、モータユニット20のトルクロール軸TRからトルクロッド後弾性体96Rの中心C3までの距離L3は、トルクロール軸TRから第2マウント50(後マウント50B)の第2後弾性体56Rの中心C2までの距離L2よりも長い。トルクロール軸TRからの距離が遠いほど、モータユニットの回動力(負荷)を受けやすくなる。距離L3を距離L2よりも長くすることで、第2後弾性体56Rに掛かるトルクによる力を低減できる。後弾性体に掛かるトルクによる力を低減できる。これにより、後マウントの数を減らして車両レイアウトの自由度を向上させつつ、トルクロッド後弾性体96Rにおいてモータユニット20の回動を効率的に抑制できる。
【0131】
また、第2前弾性体56Fの中心C1及びトルクロッド後弾性体96Rの中心C3を通る仮想平面Vを境界として、トルクロール軸TRが位置する領域VR1と反対側の領域VR2に第2後弾性体56Rの中心C2が位置する。トルクロール軸TRが位置する領域VR1に第2後弾性体56Rが位置する場合と比較して、第2前弾性体56F及びトルクロッド後弾性体96Rが、モータユニットの回動力(負荷)を受けやすくなり、第2後弾性体56Rに掛かるトルクによる力を低減できる。これにより、車両レイアウトの自由度を向上させつつ、数の多い第2前弾性体56F及びトルクロッド後弾性体96Rにおいてモータユニット20の回動を効率的に抑制できる。
【0132】
なお、図18Aに示すように、減速時には、後マウント50Bにおいて、車両上方向Z1への分力及び車両前方向Y1への分力が掛かる。車両上方向Z1への分力は、後マウント50Bが支持するモータユニット20の重力に対して逆方向への負荷となるため、車両上方向Z1への分力の一部が、モータユニット20の重力と相殺されて、後マウント50Bへの負荷を軽減することができる。
【0133】
なお、図18において、境界B1は、収容室2の車両後方の境界を概略的に示すものであり、境界B2は、収容室2の車両前方の境界を概略的に示すものである。境界B1は、ダッシュボードにより規定されている。ダッシュボードは、車室の前席のトーボードとして機能するため、所定の高さよりも低い位置では、下側に向かうにつれ、車両後方へ延びている。トルクロッド90の一部がダッシュボードと車両上下方向Zに重なるように配置することで、収容室2をさらにコンパクトにすることができる。従って、収容室2として車両前後方向に広い空間を確保しなくても、モータユニット20に起因した車両の振動を抑制できる。
【0134】
(4)その他実施形態
上述において、車両前後方向Yにおける2つの前マウント50Aの位置は、同じであってもよく、一方の前マウント50A(右前マウント)が、他方の前マウント50A(左前マウント)よりも車両後方向に位置してもよい。例えば、収容室2に収容される他の部品(例えば、ラジエター等の冷却系の部品)と干渉しないように、左前マウントが車両後方向Y2に配置されてもよい。
【0135】
上述において、中間ブラケット47は、サブフレーム30及び収容室2の内壁面2sの両方に固定されていたが、これに限られない。中間ブラケット47は、(ロアブラケット44を介して)サブフレーム30のみに固定されていてもよい。中間ブラケット47は、内壁面2sのみに固定されていてもよい。
【0136】
上述において、後マウント50は、中央マウントメンバ37に取り付けられていたがこれに限られない。後マウント50Bは、補助メンバ38に取り付けられてもよい。
【0137】
上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本態様は、収容室として車両前後方向に広い空間を確保しなくても、モータユニットに起因した車両の振動を抑制するモータユニットの支持構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0139】
1 :モータユニット支持構造
2 :収容室
2s :内壁面
4 :部
5 :サイドメンバ
20 :モータユニット
20R :最後端
22 :モータ
24 :減速機
30 :サブフレーム
31 :前側メンバ
31u :上面
32 :後側メンバ
32u :上面
33 :右側メンバ
34 :左側メンバ
35 :右側マウントメンバ
35a :延出部
35b :締結部
36 :左側マウントメンバ
36a :延出部
36b :締結部
37 :中央マウントメンバ
37a :延出部
37b :締結部
37u :上面
38 :補助メンバ
38a :中央部
38b :端部
38u :上面
39 :締結部
40 :第1マウント
41 :サイドブラケット
42 :ブッシュ
42A :第1ブッシュ
42B :第2ブッシュ
43 :弾性体
44 :ロアブラケット
44A :前側ブラケット
44B :後側ブラケット
45 :アッパブラケット
46 :締結部
47 :中間ブラケット
50 :第2マウント
50A :前マウント
50B :後マウント
51 :第2カラー
52 :外筒ブラケット
54 :内筒ブラケット
56 :第2弾性体
56F :第2前弾性体
56R :第2後弾性体
60 :電力供給部
62 :インバータ
64 :ジャンクションボックス
66 :DCDCコンバータ
70 :取り付け部
80 :サスペンションフレーム
82 :延長部
90 :トルクロッド
90F :前端部(前端マウント)
90P :本体パイプ
90R :後端部(後端マウント)
92F :前カラー
92R :後カラー
94 :外筒
94F :前外筒
94R :後外筒
96 :トルクロッド弾性体
96F :前弾性体
96R :後弾性体(トルクロッド後弾性体)
98 :取付ボルト
99 :取付ブラケット
412 :本体部
412C :中央部分
412F :前側部分
412R :後側部分
414 :延出部
422 :第1カラー
424 :外筒
426 :第1弾性体
473h :貫通孔
474 :側部壁
475 :ベース部
475h :貫通孔
522 :外筒
523 :固定部
542 :マウント軸
544 :本体部
DS :ドライブシャフト
SG :スグリ
TR :トルクロール軸
V :仮想平面
図1
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