IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特許7180226調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム
<>
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図1
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図2
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図3
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図4
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図5
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図6
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図7
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図8
  • 特許-調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
G02F1/133 505
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018176099
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020046571
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大久保 航
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正則
(72)【発明者】
【氏名】角 忍
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-265813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0153208(US,A1)
【文献】特開2012-053308(JP,A)
【文献】特開2018-017938(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101363998(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133
G02F 1/13
G02F 1/15-1/19
G09F 9/00
G09F 9/30
G09G 3/12
G09G 3/18
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動装置であって、
複数のスイッチを有し、直流電圧が入力されるフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御して、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させて電圧パルスを印加する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記調光層の透過率をパルス幅の変更で多階調化すると共に、前記調光層の充電電荷を各電圧パルスの印加期間が経過した直後に放電させ
一方の前記透明電極層と他方の前記透明電極層とに接続された抵抗回路をさらに備え、
前記制御部は、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチを各電圧パルスの印加期間が経過した直後にオフし、前記抵抗回路を通じて前記充電電荷を放電させる
調光シートの駆動装置。
【請求項2】
液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動装置であって、
複数のスイッチを有し、直流電圧が入力されるフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御して、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させて電圧パルスを印加する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記調光層の透過率をパルス幅の変更で多階調化すると共に、前記調光層の充電電荷を各電圧パルスの印加期間が経過した直後に放電させ
各透明電極層を接地電圧に接続するか否かを切り替えるスイッチ回路をさらに備え、
前記制御部は、各電圧パルスの印加期間に前記スイッチ回路をオフし、各電圧パルスの印加期間が経過した直後には、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチをオフし、かつ、前記スイッチ回路をオンし、前記スイッチ回路を通じて前記充電電荷を放電させる
調光シートの駆動装置。
【請求項3】
前記フルブリッジ回路は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチを備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第2スイッチと、直列接続された前記第3スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、
前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部、および、前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部に前記直流電圧が入力され、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部に一方の前記透明電極層が接続され、
前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部に他方の前記透明電極層が接続され、
前記抵抗回路は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部と、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部と、を接続する抵抗素子から構成され、
前記制御部は、
前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオフする第1パルス期間と、
前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンする第2パルス期間と、を交互に繰り返して設定し、
前記第1パルス期間と前記第2パルス期間との間を、全てのスイッチのオフ期間とする
請求項に記載の調光シートの駆動装置。
【請求項4】
前記フルブリッジ回路は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチを備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第2スイッチと、直列接続された前記第3スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、
前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部、および、前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部に前記直流電圧が入力され、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部に一方の前記透明電極層が接続され、
前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部に他方の前記透明電極層が接続され、
前記スイッチ回路は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部と、前記接地電圧とを接続する第5スイッチ、および、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部と、前記接地電圧とを接続する第6スイッチから構成され、
前記制御部は、
前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオフする第1パルス期間と、
前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンする第2パルス期間と、を交互に繰り返して設定し、
前記第1パルス期間と前記第2パルス期間との間を、前記第5スイッチおよび前記第6スイッチのみのオン期間とする
請求項に記載の調光シートの駆動装置。
【請求項5】
液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動方法であって、
直流電圧が入力されるフルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御して、前記調光層の透過率が予め設定された階調値となるパルス幅で、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させて電圧パルスを印加することと、
前記調光層の充電電荷を各電圧パルスの印加期間が経過した直後に放電させることと、を含み、
前記調光層の充電電荷を放電させることは、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチを各電圧パルスの印加期間が経過した直後にオフし、一方の前記透明電極層と他方の前記透明電極層とに接続された抵抗回路を通じて前記充電電荷を放電させることを含む
調光シートの駆動方法。
【請求項6】
液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動方法であって、
直流電圧が入力されるフルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御して、前記調光層の透過率が予め設定された階調値となるパルス幅で、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させて電圧パルスを印加することと、
前記調光層の充電電荷を各電圧パルスの印加期間が経過した直後に放電させることと、を含み、
前記調光層の充電電荷を放電させることは、
各透明電極層を接地電圧に接続するか否かを切り替えるスイッチ回路を各電圧パルスの印加期間にオフし、各電圧パルスの印加期間が経過した直後には、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチをオフし、かつ、前記スイッチ回路をオンし、前記スイッチ回路を通じて前記充電電荷を放電させることを含む
調光シートの駆動方法。
【請求項7】
液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動プログラムであって、
駆動装置に、
直流電圧が入力されるフルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御させて、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させた電圧パルスの印加と、パルス幅の変更による前記調光層の透過率の多階調化と、各電圧パルスの印加期間が経過した直後における前記調光層での充電電荷の放電と、を実行させ
前記調光層での前記充電電荷の放電では、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチを各電圧パルスの印加期間が経過した直後にオフし、一方の前記透明電極層と他方の前記透明電極層とに接続された抵抗回路を通じて前記充電電荷を放電させることを含む
調光シートの駆動プログラム。
【請求項8】
液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動プログラムであって、
駆動装置に、
直流電圧が入力されるフルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御させて、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させた電圧パルスの印加と、パルス幅の変更による前記調光層の透過率の多階調化と、各電圧パルスの印加期間が経過した直後における前記調光層での充電電荷の放電と、を実行させ
前記調光層での前記充電電荷の放電では、各透明電極層を接地電圧に接続するか否かを切り替えるスイッチ回路を各電圧パルスの印加期間にオフし、各電圧パルスの印加期間が経過した直後には、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチをオフし、かつ、前記スイッチ回路をオンし、前記スイッチ回路を通じて前記充電電荷を放電させることを含む
調光シートの駆動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シートを駆動する調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、一対の透明電極層に挟まれた液晶組成物を含む調光層を備える。調光層は、透明電極間の電圧の変化に応じて透明と不透明とに変わる。調光シートの駆動装置は、不純物イオンなどの偏析を抑えるために、透明電極間に交流電圧を印加し、それによって、調光層の長寿命化を図る(例えば、特許文献1を参照)。調光シートの型式は、ノーマル型とリバース型とに分類される。ノーマル型では、非通電時の調光層が不透明であり、通電時の調光層が透明である。ノーマル型は、光の遮蔽性を頻繁に必要とするスクリーン等への適用に好適である。リバース型では、非通電時の調光層が透明であり、通電時の調光層が不透明である(例えば、特許文献2を参照)。リバース型は、透明による安全性を非常時に必要とする建材等への適用に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-091986号公報
【文献】特開2000-321562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、調光シートの駆動装置では、透明と不透明との2つの状態に加えて、一対の透明電極層間での電圧レベルを変更して、透明と不透明との間で調光シートの透過率を変更可能にすることが望まれている。
【0005】
本発明は、調光シートの透過率を多階調で制御可能にした調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための調光シートの駆動装置は、液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動装置である。この調光シートの駆動装置は、複数のスイッチを有し、直流電圧が入力されるフルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御して、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させて電圧パルスを印加する制御部と、を備え、前記制御部は、前記調光層の透過率をパルス幅の変更で多階調化すると共に、前記調光層の充電電荷を各電圧パルスの印加期間が経過した直後に放電させる。
【0007】
上記課題を解決するための調光シートの駆動方法は、液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動方法である。この調光シートの駆動方法は、直流電圧が入力されるフルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御して、前記調光層の透過率が予め設定された階調値となるパルス幅で、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させて電圧パルスを印加することと、前記調光層の充電電荷を各電圧パルスの印加期間が経過した直後に放電させることと、を含む。
【0008】
上記課題を解決するための調光シートの駆動プログラムは、液晶組成物を含む調光層を一対の透明電極層が挟む調光シートの駆動プログラムである。この調光シートの駆動プログラムは、駆動装置に、直流電圧が入力されるフルブリッジ回路が備えたスイッチのオン期間を制御させて、前記フルブリッジ回路から前記一対の透明電極層に対し極性を交互に反転させた電圧パルスの印加と、パルス幅の変更による前記調光層の透過率の多階調化と、各電圧パルスの印加期間が経過した直後における前記調光層での充電電荷の放電と、を実行させる。
【0009】
電圧パルスが有するパルス幅の変更は、調光層に印加される電圧の実効値を変えて、調光シートの透過率を多階調化する。一方、電圧パルスの印加は、調光層に充電電荷を蓄積させて、パルス幅の変更による透過率の細かい調整を妨げる。この点、上記各構成であれば、調光層の充電電荷が各電圧パルスの印加期間が経過した直後に放電されるため、透過率の細かい調整が調光シートで実現可能ともなる。
【0010】
上記調光シートの駆動装置は、一方の前記透明電極層と他方の前記透明電極層とに接続された抵抗回路をさらに備え、前記制御部は、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチを各電圧パルスの印加期間が経過した直後にオフし、前記抵抗回路を通じて前記充電電荷を放電させてもよい。
【0011】
上記構成によれば、各透明電極層に蓄積された充電電荷の極性に関わらず、調光シートに蓄積された充電電荷が放電可能である。また、調光層に蓄積された充電電荷が透明電極層間で放電されるため、放電に要する時間の長期化が抑制可能でもある。そして、透明電極層間に接続された抵抗回路を別途追加する簡便な構成によって、充電電荷が放電可能でもある。
【0012】
上記調光シートの駆動装置は、各透明電極層を接地電圧に接続するか否かを切り替えるスイッチ回路をさらに備え、前記制御部は、各電圧パルスの印加期間に前記スイッチ回路をオフし、各電圧パルスの印加期間が経過した直後には、前記フルブリッジ回路が備える全てのスイッチをオフし、かつ、前記スイッチ回路をオンし、前記スイッチ回路を通じて前記充電電荷を放電させてもよい。
【0013】
上記構成によれば、各透明電極層に蓄積された充電電荷の極性に関わらず、充電電荷が放電可能である。また、各透明電極層と接地電圧との接続を通じて充電電荷が放電されるため、放電に要する時間の長期化が抑制可能でもある。そして、各電圧パルスの印加期間にスイッチ回路がオフされるため、一方の透明電極層と他方の透明電極層とに接続された抵抗回路をさらに備える構成と比べて、スイッチ回路を通じて電力が消費されることを、各電圧パルスの印加に抑えることが可能でもある。
【0014】
上記調光シートの駆動装置において、前記制御部は、前記フルブリッジ回路が備える各スイッチの制御によって、各電圧パルスの印加期間が経過した直後に各透明電極層を接地電圧に接続して前記充電電荷を放電させてもよい。
【0015】
上記構成によれば、各透明電極層に蓄積された充電電荷の極性に関わらず、充電電荷が放電可能である。また、各透明電極層と接地電圧との接続を通じて充電電荷が放電されるため、放電に要する時間の長期化が抑制可能でもある。そして、電圧パルスの印加に要するフルブリッジ回路に対し各スイッチのオン期間を制御する簡便な構成によって、充電電荷が放電可能でもある。
【0016】
上記調光シートの駆動装置において、前記フルブリッジ回路は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチを備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第2スイッチと、直列接続された前記第3スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部、および、前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部に前記直流電圧が入力され、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部に一方の前記透明電極層が接続され、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部に他方の前記透明電極層が接続され、前記抵抗回路は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部と、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部と、を接続する抵抗素子から構成される。そして、前記制御部は、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオフする第1パルス期間と、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンする第2パルス期間と、を交互に繰り返して設定し、前記第1パルス期間と前記第2パルス期間との間を、全てのスイッチのオフ期間としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、第1スイッチと第2スイッチとの接続部と、第3スイッチと第4スイッチとの接続部と、を接続する抵抗素子を別途追加する簡便な構成によって、充電電荷が放電可能である。また、第1スイッチおよび第4スイッチのオン期間と、第2スイッチおよび第3スイッチのオン期間との間の全てが、充電電荷の放電期間として設定されるため、充電電荷の放電がより効果的に行われる。
【0018】
上記調光シートの駆動装置において、前記フルブリッジ回路は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチを備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第2スイッチと、直列接続された前記第3スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部、および、前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部に前記直流電圧が入力され、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部に一方の前記透明電極層が接続され、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部に他方の前記透明電極層が接続され、前記スイッチ回路は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部と、前記接地電圧とを接続する第5スイッチ、および、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部と、前記接地電圧とを接続する第6スイッチから構成される。そして、前記制御部は、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオフする第1パルス期間と、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンする第2パルス期間と、を交互に繰り返して設定し、前記第1パルス期間と前記第2パルス期間との間を、前記第5スイッチおよび前記第6スイッチのみのオン期間としてもよい。
【0019】
上記構成によれば、第1スイッチと第2スイッチとの接続部と、接地電圧との接続を通じて、一方の透明電極層から電荷が放電可能である。また、第3スイッチと第4スイッチとの接続部と、接地電圧との接続を通じて、他方の透明電極層から電荷が放電可能である。そして、第1パルス期間と第2パルス期間との間の全てが、充電電荷の放電期間として設定されるため、充電電荷の放電がより効果的に行われる。さらに、各電圧パルスの印加期間に第5スイッチおよび第6スイッチがオフされるため、一方の透明電極層と他方の透明電極層とに接続された抵抗回路をさらに備える構成と比べて、各電圧パルスの印加期間では、スイッチ回路での電力消費が抑制可能でもある。
【0020】
上記調光シートの駆動装置において、前記フルブリッジ回路は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチを備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第2スイッチと、直列接続された前記第3スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部、および、前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部に前記直流電圧が入力され、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部に一方の前記透明電極層が接続され、かつ、前記第2スイッチが前記一方の透明電極層と接地電圧とに接続され、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部に他方の前記透明電極層が接続され、かつ、前記第4スイッチが前記一方の透明電極層と接地電圧とに接続される。そして、前記制御部は、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオフする第1パルス期間と、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチをオンする第2パルス期間と、を交互に繰り返して設定し、前記第1パルス期間の終了から前記第2パルス期間の開始まで、前記第2スイッチおよび前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第1スイッチおよび前記第3スイッチをオフし、それによって、前記充電電荷を放電させて、前記第2パルス期間の終了から前記第1パルス期間の開始まで、前記第2スイッチおよび前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第1スイッチおよび前記第3スイッチをオンし、それによって、前記充電電荷を放電させてもよい。
【0021】
上記構成によれば、第1パルス期間の終了から第2パルス期間の開始まで、第2スイッチおよび第4スイッチがオンし、それによって、充電電荷が放電可能である。また、第2パルス期間の終了から第1パルス期間の開始まで、第1スイッチおよび第3スイッチがオンし、それによって、充電電荷が放電可能である。すなわち、第1パルス期間と第2パルス期間との間の全てが、充電電荷の放電期間として設定されるため、充電電荷の放電がより効果的に行われる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、調光シートの透過率を多階調で制御可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態における調光シートの駆動装置の構成を示す回路図。
図2】フルブリッジ回路が備えるスイッチの状態遷移を示す図。
図3】第1実施形態における調光シートに印加される電圧パルスを示すグラフ。
図4】(a)~(e)は第1実施形態における調光シートの駆動状態を示す図。
図5】(a)~(e)は参考例における調光シートの駆動状態を示す図。
図6】第2実施形態における調光シートの駆動装置の構成を示す回路図。
図7】フルブリッジ回路が備えるスイッチの状態遷移を示す図。
図8】第3実施形態における調光シートの駆動装置の構成を示す回路図。
図9】フルブリッジ回路が備えるスイッチの状態遷移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
図1から図5を参照して、調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラムの第1実施形態を説明する。以下、駆動対象である調光シートと、調光シートの駆動装置とを順に説明し、次いで、調光シートの駆動装置が実行する駆動方法を説明する。
【0025】
[調光シート]
図1が示すように、調光シートの駆動装置10(以下、単に駆動装置10とも称する)は、調光シート20に電気的に接続されている。調光シート20は、調光層21、第1透明電極層22、および、第2透明電極層23を備える。調光層21は、第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に位置する。第1透明電極層22と第2透明電極層23とは、別々の配線を通じて駆動装置10に接続されている。
【0026】
調光層21は、液晶組成物を含む。液晶組成物に含まれる液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される一種である。
【0027】
液晶組成物の保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、カプセル型からなる群から選択されるいずれか一種である。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備えて、高分子ネットワークが有する空隙に液晶組成物を保持する。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を高分子層のなかに備えて、高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を高分子層のなかに保持する。
【0028】
各透明電極層22,23は、可視光透過性と電気伝導性とを備える。各透明電極層22,23を構成する材料は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0029】
調光層21は、容量成分と抵抗成分との並列回路として見なされる。調光層21は、電圧パルスの印加を受けて、液晶分子の配向方向を変える。配向方向の変更は、調光層21に入射する可視光の散乱度合い、吸収度合い、および、透過度合いを変える。調光層21は、電圧パルスの印加を受けて、調光層21に充電電荷を蓄積する。
【0030】
調光シート20の型式は、ノーマル型とリバース型とのいずれか一種である。ノーマル型は、電圧パルスの印加によって、高透過率を実現する。また、ノーマル型は、電圧パルスの印加停止によって、低透過率を実現する。これに対して、リバース型は、電圧パルスの印加によって、低透過率を実現する。また、リバース型は、電圧パルスの印加停止によって、低透過率を実現する。
【0031】
[駆動装置]
駆動装置10は、制御部30、第1ブリッジ駆動部31、第2ブリッジ駆動部32、フルブリッジ回路40、および、抵抗素子25を備える。抵抗素子25が有する抵抗値は、例えば1kΩである。制御部30、および、フルブリッジ回路40は、直流定電圧電源11に対し並列接続されている。
【0032】
調光シート20は、車両や航空機などの移動体が備える窓に取り付けられる。あるいは、調光シート20は、住宅、駅、空港などの各種の建物が備える窓、オフィスに設置されたパーティション、店舗に設置されたショーウインドウに取り付けられる。直流定電圧電源11は、移動体が搭載する電源、あるいは、建物が備える電源である。直流定電圧電源11は、直流電圧である駆動電圧Vccを出力する。駆動電圧Vccは、例えば、20Vである。
【0033】
制御部30は、直流定電圧電源11の出力電圧を制御レベルの電圧に変換する電源回路30Aを含む。制御部30は、制御レベルの電圧で動作する中央演算処理装置、および、メモリを備える。
【0034】
制御部30は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、制御部30は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。制御部30は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(マイクロコンピュータ)、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路として構成される。なお、以下では、制御部30が、読み取り可能な可読媒体に調光シートの駆動プログラムを記憶し、可読媒体が記憶する駆動プログラムを読み出して実行し、電圧パルスの印加処理や放電処理を行う例を説明する。
【0035】
フルブリッジ回路40は、第1スイッチQ1、第2スイッチQ2、第3スイッチQ3、第4スイッチQ4を備える。第1スイッチQ1は、pチャンネル型トランジスタである。第2スイッチQ2は、nチャンネル型トランジスタである。第1スイッチQ1と第2スイッチQ2とが、CMOSトランジスタを構成する。また、第3スイッチQ3は、pチャンネル型トランジスタである。第4スイッチQ4は、nチャンネル型トランジスタである。第3スイッチQ3と第4スイッチQ4とが、CMOSトランジスタを構成する。
【0036】
第1スイッチQ1と第2スイッチQ2とは、直列接続されている。第3スイッチQ3と第4スイッチQ4とは、直列接続されている。直列接続された第1スイッチQ1、および、第2スイッチQ2と、直列接続された第3スイッチQ3、および、第4スイッチQ4とは、並列接続されている。
【0037】
第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続部は、第1透明電極層22に接続されている。第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続部は、第2透明電極層23に接続されている。
【0038】
第1スイッチQ1と第3スイッチQ3との接続部は、駆動電圧Vccに接続されている。第2スイッチQ2と第4スイッチQ4との接続部は、基準電圧Vrefに接続されている。基準電圧Vrefは、例えば、接地電圧である。
【0039】
抵抗素子25は、第1スイッチQ1と第2スイッチQ2との接続部と、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続部とに接続されている。抵抗素子25は、調光シート20に対し並列に接続された抵抗回路25Cを構成している。
【0040】
制御部30は、フルブリッジ回路40が備える各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオン期間を制御する。制御部30は、第1制御信号SIG1を生成し、第1制御信号SIG1を第1ブリッジ駆動部31に出力する。第1制御信号SIG1は、第1スイッチQ1のオン期間、および、第4スイッチQ4のオン期間を定めるための信号であって、第1スイッチQ1と第4スイッチQ4とに共通する信号である。制御部30は、第2制御信号SIG2を生成し、第2制御信号SIG2を第2ブリッジ駆動部32に出力する。第2制御信号SIG2は、第2スイッチQ2のオン期間、および、第3スイッチQ3のオン期間を定めるための信号であって、第2スイッチQ2と第3スイッチQ3とに共通する信号である。
【0041】
第1ブリッジ駆動部31は、基準電圧Vrefと駆動電圧Vccとに接続されている。第1ブリッジ駆動部31は、第1制御信号SIG1の電圧レベルに基づいて、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオンするための電圧を出力する。第1ブリッジ駆動部31は、第1制御信号SIG1の電圧レベルに基づいて、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧を出力する。
【0042】
すなわち、制御部30が、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオンするための第1制御信号SIG1を出力するとき、第1ブリッジ駆動部31は、第1スイッチQ1をオンするための電圧と、第4スイッチQ4をオンするための電圧とを、同時に出力する。また、制御部30が、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための第1制御信号SIG1を出力するとき、第1ブリッジ駆動部31は、第1スイッチQ1をオフするための電圧と、第4スイッチQ4をオフするための電圧とを、同時に出力する。
【0043】
第2ブリッジ駆動部32は、基準電圧Vrefと駆動電圧Vccとに接続されている。第2ブリッジ駆動部32は、第2制御信号SIG2の電圧レベルに基づいて、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3を駆動するための電圧を出力する。第2ブリッジ駆動部32は、第2制御信号SIG2の電圧レベルに基づいて、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧を出力する。
【0044】
すなわち、制御部30が、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンするための第2制御信号SIG2を出力するとき、第2ブリッジ駆動部32は、第2スイッチQ2をオンするための電圧と、第3スイッチQ3をオンするための電圧とを、同時に出力する。また、制御部30が、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための第2制御信号SIG2を出力するとき、第2ブリッジ駆動部32は、第2スイッチQ2をオフするための電圧と、第3スイッチQ3をオフするための電圧とを、同時に出力する。
【0045】
制御部30は、各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオン期間を制御して、フルブリッジ回路40が出力する電圧パルスのパルス幅を変更する。パルス幅の変更は、調光層21に印加される電圧の実効値を変えて、調光層21の透過率を多階調化する。制御部30は、調光シート20が備える透過率の階調値を外部から入力される操作信号に基づいて決定する。外部から入力される操作信号は、透過率を1段階ずつ上げたり下げたりするための操作ボタンの押下によって生成されたり、調光シート20を透明にしたり不透明にしたりする操作ボタンの押下によって生成される。
【0046】
制御部30が決定する調光シート20の透過率は、例えば、8階調である。制御部30は、不透明にするための操作信号を受けて、階調値を0に決定する(デューティ比を0%に決定する)。また、制御部30は、透明にするための操作信号を受けて、階調値を8に決定する(デューティ比を45%に決定する)。また、制御部30は、調光シート20が不透明である状態から、透過率を1段階ずつ上げるための操作信号を受けて、階調値を2、3、…、7の順に上げる(デューティ比を8%、14%、…、39%の順に上げる)。また、制御部30は、調光シート20が透明である状態から、透過率を1段階ずつ下げるための操作信号を受けて、階調値を7、6、…、2の順に下げる(デューティ比を39%、32%、…、8%の順に下げる)。そして、制御部30は、電圧パルスのパルス幅を、決定された階調値(デューティ比)に対応付けられた大きさとする。
【0047】
[駆動方法]
図2が示すように、制御部30は、調光シートの駆動プログラムを読み出し、第1期間T1での第1印加処理、第2期間T2での放電処理、第3期間T3での第2印加処理、および、第4期間での放電処理を、この順に繰り返して行う。
【0048】
制御部30は、第1期間T1(第1印加処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオンするための電圧レベルVoutで、第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第1期間T1の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第2制御信号SIG2を出力する。
【0049】
制御部30は、第1期間T1に続く第2期間T2(放電処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧レベルVoutで、第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第2期間T2の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第2制御信号SIG2を出力する。
【0050】
制御部30は、第2期間T2に続く第3期間T3(第2印加処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧レベルVoutで、第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第3期間T3の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンするための電圧レベルVoutで、第2制御信号SIG2を出力する。
【0051】
制御部30は、第3期間T3に続く第4期間T4(放電処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧レベルVoutで第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第4期間T4の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで第2制御信号SIG2を出力する。
【0052】
すなわち、制御部30は、第1印加期間(パルス期間)と、第2印加期間(パルス期間)とを交互に繰り返して設定し、第1印加期間と第2印加期間との間を、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオフ期間とする。
【0053】
制御部30は、第1期間T1と第3期間T3とを、相互に等しい長さに設定する(T1=T3)。制御部30は、第2期間T2と第4期間T4とを、相互に等しい長さに設定する(T2=T4)。第1期間T1、第2期間T2、第3期間T3、および、第4期間T4の長さの合計は、1周期であり、制御部30は、例えば、1周期を20msecに設定する。
【0054】
第1期間T1が1周期に対して占める割合は、デューティ比であり、制御部30は、1%以上45%以下の中からデューティ比を設定する。調光シート20の型式がノーマル型であれば、デューティ比が大きいほど、調光シート20の透過率は高い。調光シート20がリバース型であれば、デューティ比が大きいほど、調光シート20の透過率は低い。制御部30は、デューティ比を45%以下に設定して、フルブリッジ回路40に貫通電流が流れることを抑える。
【0055】
図3は、調光シートの駆動装置10が調光シート20を駆動するときに、フルブリッジ回路40が出力する電圧パルスSIGの推移、および、調光層21に印加されている電圧Vdimの推移の一例を示す。また、図3は、抵抗回路25Cが省略された駆動装置10が調光シート20を駆動するときに、調光層21に印加されている電圧VdimRの推移の一例を示す。
【0056】
図3が示すように、フルブリッジ回路40が出力する電圧パルスSIGは、第1期間T1の開始タイミングtaに立ち上がり、第1期間T1の終了タイミングtbに立ち下がる。次いで、フルブリッジ回路40が出力する電圧パルスSIGは、第2期間T2の開始タイミングtcに立ち上がり、第2期間T2の終了タイミングtdに立ち下がる。開始タイミングtaから終了タイミングtbまでの期間、および、開始タイミングtcから終了タイミングtdまでの期間は、相互に等しいパルス幅であって、調光シート20に印加される電圧の実効値を定める。
【0057】
ここで、抵抗回路25Cが省略された駆動装置10による駆動では、終了タイミングtbから開始タイミングtcまで、調光シート20は電気的な浮遊状態に設定される。そして、調光シート20に蓄積された充電電荷は、電圧VdimRが示すように、浮遊状態に設定された調光シート20で、微小な漏れ電流によって自己放電される。この際、デューティ比が高いほど、自己放電に使用される時間は短く、調光シート20に充電電荷が残存する。そして、パルス幅が所定値まで拡大されているように、言い換えれば、デューティ比が設定値よりも高い所定値まで高められているように、調光シート20は駆動されてしまう。
【0058】
一方、抵抗回路25Cを備えた駆動装置10による駆動では、終了タイミングtbから開始タイミングtcまで、第1透明電極層22と第2透明電極層23とが、抵抗回路25Cで接続される。そして、調光シート20に蓄積された充電電荷は、電圧Vdimが示すように、抵抗素子25の抵抗値に反比例した時間で、急峻に放電される。充電電荷の放電速度は、抵抗素子25の抵抗値と、調光シート20が有する容量値とによって、ほぼ定められる。結果として、調光シート20の充電電荷が、デューティ比の設定値に関わらず、各電圧パルスSIGの印加期間が経過した直後に放電されるため、デューティ比の設定値に準じた駆動が調光シート20で実現可能となる。
【0059】
なお、電圧パルスSIGの印加中には、電圧パルスSIGの極性に準じた電流が、抵抗回路25Cに流れ続ける。この際、抵抗素子25の抵抗値が低いほど、抵抗回路25Cでの消費電力は大きく、よって、抵抗素子25での発熱量も大きい。そのため、抵抗素子25の抵抗値は、抵抗回路25Cでの発熱を抑える観点から、調光シート20が有する抵抗値よりも小さく、かつ、充電電荷の放電速度が確保されるなかで最大の抵抗値であることが好ましい。また、抵抗回路25Cでの発熱を抑える冷却構造などを別途搭載する構成であっても、抵抗素子25の抵抗値は、駆動装置10での消費電力を抑える観点から、調光シート20が有する抵抗値よりも小さく、かつ、充電電荷の放電速度が確保されるなかで最大の抵抗値であることが好ましい。
【0060】
例えば、調光シート20が0.35μFの容量を有するとき、抵抗素子25の抵抗値は、1kΩ以上10kΩ未満であることが好ましい。また、調光シートの駆動装置10は、抵抗回路25Cでの過度な昇温を抑えられる観点から、抵抗素子25を冷却するための冷却部を別途備えることが好ましい。
【0061】
図4(a)から(e)は、調光シートの駆動装置10がデューティ比を変更してノーマル型の調光シート20を駆動するときの、調光シート20における透過率の変化を示す。また、図5(a)から(e)は、抵抗回路25Cが省略された駆動装置10がデューティ比を変更してノーマル型の調光シート20を駆動するときの、調光シート20における透過率の変化を示す。
【0062】
なお、図4、および、図5は、黒色の縞模様Pの上方に調光シート20が配置されて、調光シート20を通して観測される縞模様Pを模式的に示す図である。また、図4(a),図5(a)は、デューティ比が45%であり、図4(b),図5(b)は、デューティ比が32%であり、図4(c),図5(c)は、デューティ比が20%の水準を示す。図4(d),図5(d)は、デューティ比が8%であり、図4(e),図5(e)は、デューティ比が0%の水準を示す。
【0063】
図4(a)から(e)が示すように、調光シート20は、デューティ比が45%から0%に低下するほど、可視光の散乱度合いを高めて、調光シート20を通した縞模様Pの鮮明度を順に下げる。また、調光シート20は、デューティ比が45%から0%に低下するほど、可視光の透過合いを順に下げて、調光シート20を通した縞模様Pの透過度を下げる。すなわち、抵抗回路25Cを備え得た上記駆動装置10は、今回の電圧パルスの印加で蓄積された充電電荷を瞬時に放電して、各デューティ比に準じた鮮明度や透過度で縞模様Pを観察可能とする。
【0064】
一方、図5(b)(c)が示すように、抵抗回路25Cが割愛された駆動装置では、抵抗回路25Cを備えた駆動装置10と比べて、縞模様Pの鮮明度が低く、また、縞模様Pの透過度が低い。また、図5(c)(d)が示すように、抵抗回路25Cが割愛された駆動装置では、抵抗回路25Cを備えた駆動装置10と比べて、縞模様Pの鮮明度の変化が小さく、また、縞模様Pの透過度の変化が小さい。すなわち、抵抗回路25Cが割愛された駆動装置では、今回の電圧パルスの印加で蓄積された充電電荷が、次回の印加までに徐々に自己放電されるため、調光シート20に印加される実効的な電圧が、設定値よりも高まってしまう。また、充電電荷が実効的な電圧に寄与する度合いは、デューティ比が小さいほど大きい。結果として、抵抗回路25Cを備えた駆動装置10であれば、制御部30が制御し得る階調値の増大、すなわち、細かい透過率の調整が可能である。
【0065】
以上、第1実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1-1)電圧パルスSIGが有するパルス幅の変更は、調光層21に印加される電圧の実効値を変えて、調光シート20の透過率を多階調化可能にする。パルス幅変調による実効的な電圧レベルの変更は、トランスを用いた変更と比べて、駆動装置10を小型化可能であり、また、DC/DCコンバータを用いた変更と比べて、消費電力を低減可能でもある。
【0066】
(1-2)電圧パルスSIGの印加は、調光層21に充電電荷を蓄積させるが、調光層21の充電電荷が各電圧パルスSIGの印加期間が経過した直後に放電されるため、透過率の細かい調整が調光シート20で実現可能ともなる。
【0067】
(1-3)調光シート20に印加される実効値が高い電圧パルスSIGでは、調光層21に蓄積される充電電荷が高まるため、充電電荷の自己放電に要する時間が特に長く、それゆえに、細かな階調制御に大きな妨げとなる。この点、上記第1実施形態に記載の構成によれば、実効値が高い範囲での階調表現も、実効値が低い範囲での階調表現と同じく、実現可能ともなる。
【0068】
(1-4)調光層21に蓄積される充電電荷そのものは、調光シート20の大型化が進むほど高まる。そのため、上記(3)に準じた効果は、調光シート20の大型化が進むほど顕著となる。
【0069】
(1-5)調光シート20が置かれる空間は、交流電源が供給される屋内空間に限らず、直流定電圧電源11が供給される屋外空間に拡大しようとしている。調光シート20を駆動する駆動装置10もまた、調光シート20が屋外空間で駆動するために、直流定電圧電源11での駆動を望まれている。直流定電圧電源11から生成される電圧パルスSIGは、正弦波と比べて極性を急峻に変える矩形波であり、電圧パルスSIGの印加終了時に充電電荷を残しやすい。そのため、直流定電圧電源11を用いた構成であれば、上記(1-1)に準じた効果が、さらに顕著となる。
【0070】
(1-6)調光層21に蓄積される充電電荷の放電は、調光シート20の駆動停止時にも機能する。そのため、駆動停止時における調光シート20の応答性が向上可能でもある。
【0071】
(1-7)特に、直流定電圧電源11から生成される電圧パルスSIGは、調光シート20の駆動停止時にも充電電荷を残しやすいため、直流定電圧電源11を用いた構成であれば、上記(1-6)に準じた効果が、さらに顕著となる。
(1-9)第1印加期間と第2印加期間との間の全てが、充電電荷の放電期間として設定されるため、充電電荷の放電がより効果的に行われる。
【0072】
(1-10)抵抗回路25Cは、各透明電極層22,23に蓄積された充電電荷の極性に関わらず、調光シートに蓄積された充電電荷を放電可能である。また、放電に要する時間の長期化は、抵抗素子25の低抵抗化によって抑制可能でもある。そして、透明電極層22,23間に接続された抵抗回路25Cを別途追加する簡便な構成によって、調光シート20に蓄積された充電電荷が放電可能でもある。
【0073】
(1-11)第1スイッチQ1をオンするための信号、および、第4スイッチQ4をオンするための信号を、第1スイッチQ1と第4スイッチQ4とに共通する第1ブリッジ駆動部31が生成する。また、第2スイッチQ2をオンするための信号、および、第3スイッチQ3をオンするための信号を、第2スイッチQ2と第3スイッチQ3とに共通する第2ブリッジ駆動部32が生成する。そのため、第1スイッチQ1のオン期間と、第4スイッチQ4のオン期間との同期が、容易に実現可能である。また、そのため、第2スイッチQ2のオン期間と、第3スイッチQ3のオン期間との同期が、容易に実現可能である。
【0074】
(1-12)第1ブリッジ駆動部31に対する制御信号、および、第2ブリッジ駆動部32に対する制御信号を、第1ブリッジ駆動部31と、第2ブリッジ駆動部32とに共通する制御部30が生成する。そのため、第1パルス期間と第2パルス期間とに挟まれた各放電期間を相互に整合させることが、容易に実現可能である。
【0075】
(第2実施形態)
図6図7とを参照して、調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラムの第2実施形態を説明する。
第2実施形態で説明する駆動装置10は、第1実施形態で説明した抵抗回路25Cを備えず、第3ブリッジ駆動部33、および、第4ブリッジ駆動部34をさらに備える。第2実施形態で説明する第1ブリッジ駆動部31が駆動するスイッチ、および、第2ブリッジ駆動部32が駆動するスイッチは、第1実施形態で説明したスイッチと異なる。そして、第2実施形態で説明する駆動装置10は、第1実施形態での半分の周期で、各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオン期間を制御する。以下、第1実施形態の構成と異なる点を主に説明し、第1実施形態の構成と同じ構成に関しては、その説明を割愛する。
【0076】
[駆動装置]
図6が示すように、駆動装置10は、制御部30、第1ブリッジ駆動部31、第2ブリッジ駆動部32、第3ブリッジ駆動部33、および、第4ブリッジ駆動部34を備える。制御部30は、フルブリッジ回路40が備える各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオン期間を制御する。
【0077】
制御部30は、第1スイッチ制御信号SIG11を生成し、第1スイッチ制御信号SIG11を第1ブリッジ駆動部31に出力する。第1スイッチ制御信号SIG11は、第1スイッチQ1のオン期間を制御するための信号であって、第1スイッチQ1に固有の信号である。制御部30は、第2スイッチ制御信号SIG22を生成し、第2スイッチ制御信号SIG22を第2ブリッジ駆動部32に出力する。第2スイッチ制御信号SIG22は、第2スイッチQ2のオン期間を制御するための信号であって、第2スイッチQ2に固有の信号である。
【0078】
制御部30は、第3スイッチ制御信号SIG23を生成し、第3スイッチ制御信号SIG23を第3ブリッジ駆動部33に出力する。第3スイッチ制御信号SIG23は、第3スイッチQ3のオン期間を制御するための信号であって、第3スイッチQ3に固有の信号である。制御部30は、第4スイッチ制御信号SIG14を生成し、第4スイッチ制御信号SIG14を第4ブリッジ駆動部34に出力する。第4スイッチ制御信号SIG14は、第4スイッチQ4のオン期間のオン期間を制御するための信号であって、第4スイッチQ4に固有の信号である。
【0079】
制御部30が、第1スイッチQ1をオンするための第1スイッチ制御信号SIG11を出力するとき、第1ブリッジ駆動部31は、第1スイッチQ1をオンするための電圧を出力する。また、制御部30が、第1スイッチQ1をオフするための第1スイッチ制御信号SIG11を出力するとき、第1ブリッジ駆動部31は、第1スイッチQ1をオフするための電圧を出力する。
【0080】
制御部30が、第2スイッチQ2をオンするための第2スイッチ制御信号SIG22を出力するとき、第2ブリッジ駆動部32は、第2スイッチQ2をオンするための電圧を出力する。また、制御部30が、第2スイッチQ2をオフするための第2スイッチ制御信号SIG22を出力するとき、第2ブリッジ駆動部32は、第2スイッチQ2をオフするための電圧を出力する。
【0081】
制御部30が、第3スイッチQ3をオンするための第3スイッチ制御信号SIG23を出力するとき、第3ブリッジ駆動部33は、第3スイッチQ3をオンするための電圧を出力する。また、制御部30が、第3スイッチQ3をオフするための第3スイッチ制御信号SIG23を出力するとき、第3ブリッジ駆動部33は、第3スイッチQ3をオフするための電圧を出力する。
【0082】
制御部30が、第4スイッチQ4をオンするための第4スイッチ制御信号SIG14を出力するとき、第4ブリッジ駆動部34は、第4スイッチQ4をオンするための電圧を出力する。また、制御部30が、第4スイッチQ4をオフするための第4スイッチ制御信号SIG14を出力するとき、第4ブリッジ駆動部34は、第4スイッチQ4をオフするための電圧を出力する。
【0083】
[駆動方法]
図7が示すように、制御部30は、調光シートの駆動プログラムを読み出し、第1期間T1での第1印加処理、第2期間T2での放電処理、第3期間T3での第2印加処理、および、第4期間での放電処理を、この順に繰り返して行う。
【0084】
制御部30は、第1期間T1(第1印加処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオンするための電圧レベルVoutで、第1スイッチ制御信号SIG11、および、第4スイッチ制御信号SIG14を出力する。また、制御部30は、第1期間T1の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第2スイッチ制御信号SIG22、および、第3スイッチ制御信号SIG23を出力する。
【0085】
制御部30は、第2期間T2(放電処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第1スイッチ制御信号SIG11、および、第3スイッチ制御信号SIG23を出力する。また、制御部30は、第2期間T2の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第4スイッチQ4をオンするための電圧レベルVoutで、第2スイッチ制御信号SIG22、および、第4スイッチ制御信号SIG14を出力する。
【0086】
制御部30は、第3期間T3(第2印加処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧レベルVoutで、第1スイッチ制御信号SIG11、および、第4スイッチ制御信号SIG14を出力する。また、制御部30は、第3期間T3の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンするための電圧レベルVoutで、第2スイッチ制御信号SIG22、および、第3スイッチ制御信号SIG23を出力する。
【0087】
制御部30は、第4期間T4(放電処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第1スイッチ制御信号SIG11、および、第3スイッチ制御信号SIG23を出力する。また、制御部30は、第4期間T4の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第4スイッチQ4をオンするための電圧レベルVoutで、第2スイッチ制御信号SIG22、および、第4スイッチ制御信号SIG14を出力する。
【0088】
すなわち、制御部30は、第1印加期間(パルス期間)と、第2印加期間(パルス期間)とを交互に繰り返して設定し、第1印加期間と第2印加期間との間を、基準電圧Vrefに接続された各スイッチQ2,Q4のオン期間とする。
【0089】
上述したように、制御部30が各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4を別々に制御する構成であれば、今回の電圧パルスSIGの印加が終了するタイミングから、次回の電圧パルスSIGの印加が開始するタイミングまで、第1透明電極層22と第2透明電極層23とが、基準電圧Vrefに接続される。そして、第1透明電極層22と第2透明電極層23とが、基準電圧Vrefに接続されると、調光シート20に蓄積された充電電荷が、急峻に放電される。結果として、調光シート20の充電電荷が、デューティ比の設定値に関わらず、各電圧パルスSIGの印加期間が経過した直後に放電されるため、デューティ比の設定値に準じた駆動が調光シート20で実現可能となる。
【0090】
なお、電圧パルスSIGの印加終了直後には、基準電圧Vrefに接続された各スイッチQ2,Q4を通じて、蓄積電荷が放電される。この際、駆動電圧Vccが印加された透明電極層22は、基準電圧Vrefに接続された第2スイッチQ2に接続される。また、駆動電圧Vccが印加された透明電極層23は、基準電圧Vrefに接続された第4スイッチQ4に接続される。そのため、各スイッチQ2,Q4は、駆動電圧Vccと基準電圧Vrefとの接続に耐えうる高耐圧であることが好ましい。
【0091】
以上、第2実施形態によれば、上記(1-1)から(1-9)に準じた効果に加えて、以下の効果が得られる。
(2-1)各透明電極層22,23と基準電圧Vrefとの接続を通じて充電電荷が放電されるため、放電に要する時間の長期化が抑制可能でもある。
(2-2)電圧パルスSIGの印加に要するフルブリッジ回路40に対しオン期間を制御する簡便な構成によって、充電電荷が放電可能でもある。
【0092】
(第3実施形態)
図8図9とを参照して、調光シートの駆動装置、調光シートの駆動方法、および、調光シートの駆動プログラムの第3実施形態を説明する。第3実施形態で説明する駆動装置10は、第1実施形態で説明した抵抗回路25Cを備えず、スイッチ回路の一例である第1放電回路51、および、第2放電回路52をさらに備えることが、第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態の構成と異なる点を主に説明し、第1実施形態の構成と同じ構成に関しては、その説明を割愛する。
【0093】
[駆動装置]
図8が示すように、駆動装置10は、制御部30、第1ブリッジ駆動部31、第2ブリッジ駆動部32、第1放電回路51、および、第2放電回路52を備える。制御部30は、フルブリッジ回路40が備える各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4のオン期間を制御する。また、制御部30は、第1放電回路51が備えるスイッチ、および、第2放電回路52が備えるスイッチのオン期間を制御する。
【0094】
制御部30は、第1放電制御信号SIG5を生成し、第1放電制御信号SIG5を第1放電回路51に出力する。第1放電制御信号SIG5は、第1放電回路51の駆動期間を制御するための信号であって、第1放電回路51に固有の信号である。制御部30は、第2放電制御信号SIG6を生成し、第2放電制御信号SIG6を第2放電回路52に出力する。第2放電制御信号SIG6は、第2放電回路52の駆動期間を制御するための信号であって、第2放電回路52に固有の信号である。
【0095】
第1放電回路51は、駆動電圧Vccと基準電圧Vrefとに接続されている。第1放電回路51は、第1透明電極層22と基準電圧Vrefとを接続する抵抗回路を備える。第1放電回路51が備える抵抗回路は、抵抗素子とスイッチとの直列回路である。
【0096】
第1放電回路51は、第1放電回路51を駆動するための第1放電制御信号SIG5を受けて、抵抗回路のスイッチをオンするための電圧を駆動電圧Vccから生成する。そして、第1放電回路51は、第1透明電極層22と基準電圧Vrefとを接続する。また、第1放電回路51は、第1放電回路51の駆動を停止するための第1放電制御信号SIG5を受けて、抵抗回路のスイッチをオフする。そして、第1放電回路51は、第1透明電極層22を基準電圧Vrefから切り離す。
【0097】
第2放電回路52は、駆動電圧Vccと基準電圧Vrefとに接続されている。第2放電回路52は、第2透明電極層23と基準電圧Vrefとを接続する抵抗回路を備える。第2放電回路52が備える抵抗回路は、抵抗素子とスイッチとの直列回路である。
【0098】
第2放電回路52は、第2放電回路52を駆動するための第2放電制御信号SIG6を受けて、抵抗回路のスイッチをオンするための電圧を駆動電圧Vccから生成する。そして、第2放電回路52は、第2透明電極層23と基準電圧Vrefとを接続する。また、第2放電回路52は、第2放電回路52の駆動を停止するための第2放電制御信号SIG6を受けて、抵抗回路のスイッチをオフする。そして、第2放電回路52は、第2透明電極層23を基準電圧Vrefから切り離す。
【0099】
[駆動方法]
図9が示すように、制御部30は、調光シートの駆動プログラムを読み出し、第1期間T1での第1印加処理、第2期間T2での放電処理、第3期間T3での第2印加処理、および、第4期間での放電処理を、この順に繰り返して行う。
【0100】
制御部30は、第1実施形態と同じく、第1期間T1(第1印加処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオンするための電圧レベルVoutで、第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第1期間T1の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第2制御信号SIG2を出力する。さらに、制御部30は、第1期間T1の開始から終了まで、第1放電回路51、および、第2放電回路52の駆動を停止するための電圧レベルVoutで、第1放電制御信号SIG5、および、第2放電制御信号SIG6を出力する。
【0101】
制御部30は、第1実施形態と同じく、第2期間T2(放電処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧レベルVoutで、第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第2期間T2の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第2制御信号SIG2を出力する。さらに、制御部30は、第2期間T2の開始から終了まで、第1放電回路51、および、第2放電回路52を駆動するための電圧レベルVoutで、第1放電制御信号SIG5、および、第2放電制御信号SIG6を出力する。
【0102】
制御部30は、第1実施形態と同じく、第3期間T3(第2印加処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧レベルVoutで、第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第3期間T3の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンするための電圧レベルVoutで、第2制御信号SIG2を出力する。さらに、制御部30は、第3期間T3の開始から終了まで、第1放電回路51、および、第2放電回路52の駆動を停止するための電圧レベルVoutで、第1放電制御信号SIG5、および、第2放電制御信号SIG6を出力する。
【0103】
制御部30は、第1実施形態と同じく、第4期間T4(放電処理)の開始から終了まで、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフするための電圧レベルVoutで、第1制御信号SIG1を出力する。また、制御部30は、第4期間T4の開始から終了まで、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフするための電圧レベルVoutで、第2制御信号SIG2を出力する。さらに、制御部30は、第4期間T4の開始から終了まで、第1放電回路51、および、第2放電回路52を駆動するための電圧レベルVoutで、第1放電制御信号SIG5、および、第2放電制御信号SIG6を出力する。
【0104】
すなわち、制御部30は、第1印加期間(パルス期間)と、第2印加期間(パルス期間)とを交互に繰り返して設定し、第1印加期間と第2印加期間との間を、各透明電極層22,23と基準電圧Vrefとが接続されるように、各放電回路51,52の駆動期間とする。
【0105】
上述したように、制御部30が各放電回路51,52を放電期間に駆動する構成であれば、今回の電圧パルスSIGの印加が終了するタイミングから、次回の電圧パルスSIGの印加が開始するタイミングまで、第1透明電極層22と第2透明電極層23とが、基準電圧Vrefに接続される。そして、第1透明電極層22と第2透明電極層23とが、基準電圧Vrefに接続されると、調光シート20に蓄積された充電電荷が、各放電回路51,52が備える抵抗素子とスイッチとを通じて、急峻に放電される。結果として、調光シート20の充電電荷が、デューティ比の設定値に関わらず、各電圧パルスSIGの印加期間が経過した直後に放電されるため、デューティ比の設定値に準じた駆動が調光シート20で実現可能となる。
【0106】
なお、各放電回路51,52が備える抵抗素子は、第1実施形態で説明した抵抗素子25と同じく、各放電回路51,52での発熱を抑える観点から、調光シート20が有する抵抗値よりも小さく、かつ、充電電荷の放電速度が確保されるなかで最大の抵抗値であることが好ましい。
【0107】
以上、第3実施形態によれば、上記(1-1)から(1-9)に準じた効果に加えて、以下の効果が得られる。
(3-1)各透明電極層22,23と基準電圧Vrefとの接続を通じて充電電荷が放電されるため、放電に要する時間の長期化が抑制可能でもある。
(3-2)各電圧パルスSIGの印加期間に各放電回路51,52のスイッチがオフされるため、各放電回路51,52を通じて電力が消費されることを、各電圧パルスSIGの印加期間に抑えることが可能でもある。
【0108】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・調光シート20は、調光層21、および、各透明電極層22,23に加えて、他の機能層を備えることが可能である。他の機能層は、紫外線バリア機能を有する層のように、調光層21や各透明電極層22,23を保護するための機能層、調光層21での光の透過性の制御に寄与する機能層、調光シート20の強度や耐熱性を高める機能層が挙げられる。
【0109】
・調光シート20は、調光層21と各透明電極層22,23との間に、調光層21を挟む一対の配向層を備えることが可能である。配向層は、調光層21が含む液晶分子の配向を制御する機能層である。配向層は、電圧パルスSIGが印加されていないとき、液晶分子の配向方向を所定方向に定める。
【0110】
・調光層21は、所定の色を有する色素であって、液晶分子の運動を妨げない色素を含むことが可能である。この構成によれば、所定の色を有する調光シート20を多階調で制御可能である。
【0111】
・フルブリッジ回路40を構成する各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4は、フォトMOSリレーなどのリレーに具体化することも可能である。
【符号の説明】
【0112】
10…調光シートの駆動装置、20…調光シート、21…調光層、22…第1透明電極層、23…第2透明電極層、25…抵抗素子、25C…抵抗回路、30…制御部、31…第1ブリッジ駆動部、32…第2ブリッジ駆動部、33…第3ブリッジ駆動部、34…第4ブリッジ駆動部、40…フルブリッジ回路、51…第1放電回路、52…第2放電回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9