(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】加飾フィルムおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 13/04 20060101AFI20221122BHJP
B32B 3/00 20060101ALI20221122BHJP
G09F 13/08 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G09F13/04 K
B32B3/00
G09F13/08
(21)【出願番号】P 2018200347
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】森戸 秀
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163341(JP,A)
【文献】特開2002-207445(JP,A)
【文献】特開2016-069573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/04
B32B 3/00
G09F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する加飾層と、
前記加飾層の前記開口部に配置されたパターン状の透光部と
を備え、
前記透明基材側の面側から投射された光を前記透明基材側の面とは反対の面側に透過して情報を表示する加飾フィルムであって、
前記透光部の前記透明基材からの高さが、前記加飾層の前記透明基材からの高さよりも高く、
前記加飾層の前記透明基材側の面とは反対の面に、前記加飾層および前記透光部を覆うように配置された表面機能層を備える、加飾フィルム。
【請求項2】
前記透明基材および前記加飾層の間に配置され、前記加飾層の前記開口部と同一のパターン状の開口部を有する遮光層をさらに備え、
前記透光部が、前記遮光層の前記開口部および前記加飾層の前記開口部に配置されている、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記加飾層および前記遮光層の間に配置され、前記加飾層の前記開口部および前記遮光層の前記開口部と同一のパターン状の開口部を有する中間層をさらに備え、
前記透光部が、前記遮光層の前記開口部、前記中間層の前記開口部および前記加飾層の前記開口部に配置されている、請求項2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
透明基材と、
前記透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する加飾層と、
前記加飾層の前記開口部に配置されたパターン状の透光部と
を備え、
前記透明基材側の面とは反対の面側から投射された光を前記透明基材側の面側に透過して情報を表示する加飾フィルムであって、
前記透光部の前記透明基材からの高さが、前記加飾層の前記透明基材からの高さよりも高く、
前記加飾層の前記透明基材側の面とは反対の面に配置され、前記加飾層の前記開口部と同一のパターン状の開口部を有する遮光層
を備える、加飾フィルム。
【請求項5】
前記加飾層および前記遮光層の間に配置され、前記加飾層の前記開口部および前記遮光層の前記開口部と同一のパターン状の開口部を有する中間層をさらに備える、
請求項4に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
前記遮光層の前記透明基材側の面とは反対の面に、前記遮光層および前記透光部を覆うように配置された表面機能層をさらに備える、
請求項4または請求項5に記載の加飾フィルム。
【請求項7】
前記透光部の前記透明基材側の面とは反対の面が、微細凹凸を有する、請求項1から
請求項6までのいずれかの請求項に記載の加飾フィルム。
【請求項8】
表示パネルと、
前記表示パネルの前面に配置された、請求項1から
請求項7までのいずれかの請求項に記載の加飾フィルムと
を備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一方の面側から投射された光を他方の面側に透過して情報を表示することができる加飾フィルム、および上記加飾フィルムを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置の非表示時に、所定の絵柄や文字等の意匠を表示するという技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、被取付部に嵌め込まれ、点灯時に外部に表示光を放つディスプレイを有した表示装置において、上記ディスプレイの前面が、上記表示光を透過し得る多数の微細孔を有したスクリーンで覆われており、該スクリーンの表面が、上記ディスプレイの周囲の被取付部と同一の色・模様に設定されている、表示装置が開示されている。また、例えば特許文献2には、発光体を制御することにより情報の提示を行う発光部と、該発光部の前方に配置され、着色が施された面を有するフロントパネル部と、を備えた電子機器において、上記フロントパネル部の着色が施された面は、少なくとも上記発光部の光が投影される範囲に、上記着色が施された着色部と当該着色部中に設けた複数の孔からなる上記光を透過させる透光部とを所定のパターンで形成する、電子機器が開示されている。
【0004】
このような表示装置においては、表示装置の前面に配置されるフィルムは所定の意匠を表示するものであり、上記フィルムに多数の孔が形成されていることにより、表示装置の表示時に、上記フィルムの上記孔から光を透過して表示装置の情報を表示することができる。また、表示装置の非表示時に、上記フィルムの意匠を視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-331132号公報
【文献】特開2012-83589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような表示装置の前面に配置されるフィルムにおいて、通常、多数の孔はレーザ加工により形成される。しかしながら、レーザ加工では多数の孔の形成に長時間を要し、タクトタイムが長くなるという問題がある。また、コストがかかるという問題もある。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、表示装置に用いた場合に、表示装置の表示時には表示装置の情報を表示することができ、表示装置の非表示時には所定の意匠を視認することができる加飾フィルムであって、短時間で安価に製造することができる加飾フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一方の面側から投射された光を他方の面側に透過して情報を表示する加飾フィルムであって、透明基材と、上記透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する加飾層と、上記加飾層の上記開口部に配置されたパターン状の透光部とを備え、上記透光部の上記透明基材からの高さが、上記加飾層の上記透明基材からの高さよりも高い、加飾フィルムを提供する。
【0009】
本開示によれば、加飾層の開口部に透光部が配置されており、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、透光部を利用して、容易に多数の開口部を有する加飾層を形成することができる。したがって、レーザ加工による開口部の形成が不要であり、短時間で安価に加飾フィルムを製造することができる。さらに、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、簡便な工程で加飾層を形成することができる。
【0010】
本開示においては、上記透明基材側の面側から投射された光を上記透明基材側の面とは反対の面側に透過して情報を表示する加飾フィルムであって、上記透明基材および上記加飾層の間に配置され、上記加飾層の上記開口部と同一のパターン状の開口部を有する遮光層をさらに備え、上記透光部が、上記遮光層の上記開口部および上記加飾層の上記開口部に配置されていてもよい。透明基材および加飾層の間に遮光層が配置されていることにより、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射したときに、上記光が加飾層を透過するのを抑制することができ、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側からの情報の視認性の低下を抑制することができる。
【0011】
本開示においては、上記加飾層および上記遮光層の間に配置され、上記加飾層の上記開口部および上記遮光層の上記開口部と同一のパターン状の開口部を有する中間層をさらに備え、上記透光部が、上記遮光層の上記開口部、上記中間層の上記開口部および上記加飾層の上記開口部に配置されていてもよい。加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることにより、加飾フィルムの透明基材側の面側から光が投射されていないときに、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性を高めることができる。
【0012】
本開示においては、上記加飾層の上記透明基材側の面とは反対の面に、上記加飾層および上記透光部を覆うように配置された表面機能層をさらに備えていてもよい。表面機能層により、加飾フィルムの表面を保護することができる。また、表面機能層が配置されていることにより、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射したときに、透光部が加飾層から突出している部分における透光部の側面での全反射を起こりにくくすることができ、視野角特性を良くすることができる。
【0013】
本開示においては、上記透明基材側の面とは反対の面側から投射された光を上記透明基材側の面側に透過して情報を表示する加飾フィルムであって、上記加飾層の上記透明基材側の面とは反対の面に配置され、上記加飾層の上記開口部と同一のパターン状の開口部を有する遮光層をさらに備えていてもよい。加飾層の透明基材側の面とは反対の面に遮光層が配置されていることにより、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側から光を投射したときに、上記光が加飾層を透過するのを抑制することができ、加飾フィルムの透明基材側の面側からの情報の視認性の低下を抑制することができる。
【0014】
本開示においては、上記加飾層および上記遮光層の間に配置され、上記加飾層の上記開口部および上記遮光層の上記開口部と同一のパターン状の開口部を有する中間層をさらに備えていてもよい。加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることにより、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側から光が投射されていないときに、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性を高めることができる。
【0015】
本開示においては、上記遮光層の上記透明基材側の面とは反対の面に、上記遮光層および上記透光部を覆うように配置された表面機能層をさらに備えていてもよい。表面機能層により、加飾フィルムの表面を保護することができる。
【0016】
本開示においては、上記透光部の上記透明基材側の面とは反対の面が、微細凹凸を有していてもよい。透光部が透明基材側の面とは反対の面に微細凹凸を有することにより、加飾フィルムの一方の面側から光を投射したときに、微細凹凸によって透光部を透過した光を拡散させることができ、加飾フィルムの視野角特性を向上させることができる。
【0017】
本開示は、表示パネルと、上記表示パネルの前面に配置された上述の加飾フィルムとを備える、表示装置を提供する。
【0018】
本開示によれば、上述した加飾フィルムを有することにより、表示時には表示パネルの情報を表示することができ、非表示時には加飾フィルムの意匠を視認することができる表示装置とすることができる。また、このような表示装置を安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示は、表示装置に用いた場合に、表示装置の表示時には表示装置の情報を表示することができ、表示装置の非表示時には所定の意匠を視認することができる加飾フィルムであって、短時間で安価に製造することができる加飾フィルムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の加飾フィルムを例示する概略平面図および断面図である。
【
図2】本開示の加飾フィルムを例示する概略平面図および断面図である。
【
図3】本開示の表示装置を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示の加飾フィルムの製造方法を例示する工程図である。
【
図5】本開示の加飾フィルムを例示する概略断面図である。
【
図6】本開示の加飾フィルムを例示する概略断面図である。
【
図7】本開示の加飾フィルムを例示する概略断面図である。
【
図8】本開示の加飾フィルムの製造方法を例示する工程図である。
【
図9】本開示の加飾フィルムを例示する概略平面図および断面図である。
【
図10】本開示の表示装置を例示する概略断面図である。
【
図11】本開示の加飾フィルムの製造方法を例示する工程図である。
【
図12】本開示の加飾フィルムを例示する概略断面図である。
【
図13】本開示の加飾フィルムを例示する概略断面図である。
【
図14】本開示の加飾フィルムを例示する概略断面図である。
【
図15】本開示の加飾フィルムの製造方法を例示する工程図である。
【
図16】従来の加飾フィルムの製造方法を例示する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の加飾フィルムおよび表示装置について説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部材の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0022】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0023】
また、本明細書において、「フィルム」には、「シート」等と呼ばれる部材も含まれる。
【0024】
A.加飾フィルム
本開示の加飾フィルムは、一方の面側から投射された光を他方の面側に透過して情報を表示する部材であって、透明基材と、上記透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する加飾層と、上記加飾層の上記開口部に配置されたパターン状の透光部とを備え、上記透光部の上記透明基材からの高さが、上記加飾層の上記透明基材からの高さよりも高い、部材である。
【0025】
本開示の加飾フィルムは2つの実施態様を有する。本開示の加飾フィルムの第1実施態様は、透明基材側の面側から投射された光を透明基材側の面とは反対の面側に透過して情報を表示する加飾フィルムである。また、本開示の加飾フィルムの第2実施態様は、透明基材側の面とは反対の面側から投射された光を透明基材側の面側に透過して情報を表示する加飾フィルムである。以下、各実施態様について説明する。
【0026】
I.第1実施態様
本開示の加飾フィルムの第1実施態様は、透明基材側の面側から投射された光を透明基材側の面とは反対の面側に透過して情報を表示する部材であって、透明基材と、上記透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する加飾層と、上記加飾層の上記開口部に配置されたパターン状の透光部とを備え、上記透光部の上記透明基材からの高さが、上記加飾層の上記透明基材からの高さよりも高い、部材である。
【0027】
以下、本実施態様の加飾フィルムについて図面を参照して説明する。
図1(a)は、本実施態様の加飾フィルムの一例を示す概略平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
図1(a)、(b)に例示するように、加飾フィルム1は、透明基材2と、透明基材2の一方の面に配置され、パターン状の開口部13を有する加飾層3と、加飾層3の開口部13に配置されたパターン状の透光部4とを備える。透光部4の透明基材2からの高さh1は、加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高くなっている。具体的には、
図1(b)においては、透光部4の厚みが、加飾層3の厚みよりも大きくなっている。
【0028】
図2(a)は、本実施態様の加飾フィルムの他の例を示す概略平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA-A線断面図である。
図2(a)、(b)に例示するように、加飾フィルム1は、透明基材2と、透明基材2の一方の面に配置され、パターン状の開口部13を有する加飾層3と、加飾層3の開口部13に配置されたパターン状の透光部4とを備える。
【0029】
本実施態様の加飾フィルムは、例えば
図2(b)に示すように、透明基材2および加飾層3の間に配置され、加飾層3の開口部13と同一のパターン状の開口部15を有する遮光層5をさらに備えていてもよい。この場合、透光部4は、遮光層5の開口部15および加飾層3の開口部13に配置される。
【0030】
また、本実施態様の加飾フィルムは、例えば
図2(b)に示すように、加飾層3および遮光層5の間に配置され、加飾層3の開口部13および遮光層5の開口部15と同一のパターン状の開口部16を有する中間層6をさらに備えていてもよい。この場合、透光部4は、遮光層5の開口部15、中間層6の開口部16および加飾層3の開口部13に配置される。
【0031】
透光部4の透明基材2からの高さh1は、加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高くなっている。具体的には、
図2(b)においては、透光部4の厚みが、遮光層5、中間層6および加飾層3の合計厚みよりも大きくなっている。
【0032】
図3は、本開示の加飾フィルムを備える表示装置の一例を示す概略断面図であり、
図2(a)、(b)に示す加飾フィルムを備える例である。
図3に例示するように、表示装置20は、表示パネル21と、表示パネル21の前面に接着層22を介して配置された加飾フィルム1とを備える。
【0033】
なお、加飾フィルムと表示パネルとは、このように接着層で接着されたものであってもよいが、例えば、加飾フィルムを支持する支持枠が設けられ、この支持枠により加飾フィルムが表示パネル上に配置されたものであってもよい。この場合は、表示パネルと加飾フィルムとの間には空気層が形成されることになる。
このように接着層を用いずに加飾フィルムを表示パネル上に配置するためには、加飾フィルムが自己支持性を有することが好ましく、このような場合は、後述する支持部材が加飾フィルムの一方の表面側に配置されていることが好ましい。
【0034】
本実施態様の加飾フィルムは、
図2(b)に示すように、加飾フィルム1の透明基材2側の面側から投射された光L
1を加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側に透過して情報を表示することができる。具体的には、加飾フィルム1の透明基材2側の面側から投射された光L
1が、透光部4から加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側に透過することにより、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側に情報を表示することができる。そのため、
図3に示すように、加飾フィルム1を備える表示装置20においては、表示パネル21の表示時に、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から、観察者は、加飾フィルム1の透光部4を通して、表示パネル21の画像情報を視認することができる。
【0035】
また、本実施態様の加飾フィルムにおいては、
図2(b)に示すように、加飾フィルム1の透明基材2側の面側から光L
1を投射していないときには、透明基材2側の面とは反対の面側から加飾層3の絵柄や文字等の意匠を視認することができる。そのため、
図3に示すように、加飾フィルム1を備える表示装置20において、表示パネル21の非表示時には、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から、観察者は、加飾層3の意匠を視認することができる。
【0036】
図4(a)~(d)は、本実施態様の加飾フィルムの製造方法の一例を示す工程図であり、
図2(a)、(b)に示す加飾フィルムの製造方法の例である。まず、
図4(a)に示すように、透明基材2の一方の面に印刷法等により遮光層5をパターン状に形成する。これにより、パターン状の開口部15を有する遮光層5が得られる。続いて、
図4(b)に示すように、遮光層5上に印刷法等により中間層6を遮光層5と同一のパターン状に形成する。これにより、遮光層5の開口部15と同一のパターン状の開口部16を有する中間層6が得られる。次いで、
図4(c)に示すように、遮光層5の開口部15および中間層6の開口部16に印刷法等により透光部4を形成する。この際、後の工程にて加飾層を形成したときに、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高くなるように、透光部4の厚みが設定される。次に、
図4(d)に示すように、中間層6上に印刷法等により加飾層3をパターン状に形成する。これにより、遮光層5の開口部15および中間層6の開口部16と同一のパターン状の開口部13を有する加飾層3が得られる。
【0037】
このような加飾フィルムの製造方法においては、
図4(d)に示すように、加飾層3を形成する際、透光部4の透明基材2からの高さh1が加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高いため、透光部4を利用して、透光部4が配置されていない領域に加飾層3を容易に形成することができる。したがって、加飾層3の位置合わせを要することなく、透光部4が配置されていない領域のみに確実に加飾層3を形成することができる。そのため、例えば
図5に示すように、加飾層3が複数色の加飾部3a、3bを有する場合(
図5においては、加飾層3は2色の加飾部3a、3bを有する。)には、加飾層3の開口部13に対して各加飾部3a、3bの位置合わせを要しない。また、
図4(d)に示すように、加飾フィルム1が遮光層5および中間層6を有する場合には、遮光層5の開口部15および中間層6の開口部16に対して加飾層3の位置合わせを要しない。
【0038】
なお、従来では、通常、開口部はレーザ加工により形成されており、例えば
図16(a)~(b)に示すように、透明基材2上に遮光層5、中間層6および加飾層3を順に積層した後、レーザ加工により開口部を形成する。通常、遮光層、中間層および加飾層は多数の開口部を有するため、レーザ加工では開口部の形成に長時間を要し、タクトタイムが長くなる。また、コストがかかる。
【0039】
また、開口部を有する加飾層の形成方法としては、印刷法を用いることができる。印刷法では、レーザ加工による開口部の形成が不要であり、短時間で安価に多数の開口部を有する加飾層を形成することができる。ここで、例えば加飾層が複数色の加飾部を有する場合には、加飾層の開口部に対して各加飾部の位置合わせを行う必要がある。また、例えば加飾フィルムが遮光層および中間層を有する場合には、遮光層に開口部および中間層の開口部に対して加飾層の位置合わせを行う必要がある。しかし、印刷法では、位置合わせが困難である。
【0040】
これに対し、本実施態様においては、加飾層の開口部に透光部が配置されていることにより、レーザ加工による開口部の形成が不要であり、容易に多数の開口部を有する加飾層を形成することができる。したがって、短時間で安価に加飾フィルムを製造することが可能である。また、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、簡便な工程で加飾層を形成することができる。
【0041】
また、従来では、上述したように、通常、開口部はレーザ加工により形成されており、レーザ加工では開口部の形成の容易さや精度等から、遮光層、中間層および加飾層の厚みは比較的薄くする必要がある。しかし、遮光層、中間層および加飾層がそれぞれ有する機能は、各層の厚みに起因するため、各層の厚みを薄くするには限界がある。
【0042】
これに対し、本実施態様においては、加飾層の開口部に透光部が配置されていることにより、レーザ加工による開口部の形成が不要であるため、遮光層、中間層および加飾層の厚みを厚くすることが可能である。したがって、遮光層、中間層および加飾層がそれぞれの機能を十分に発揮させることができる。
【0043】
以下、本実施態様の加飾フィルムについて詳細に説明する。
【0044】
1.透光部
本実施態様における透光部は、後述する加飾層の開口部に配置されるパターン状の部材である。また、後述するように、本実施態様の加飾フィルムが、透明基材および加飾層の間に遮光層を有する場合には、透光部は、遮光層の開口部および加飾層の開口部に配置される。さらに、後述するように、本実施態様の加飾フィルムが、加飾層および遮光層の間に中間層を有する場合には、透光部は、遮光層の開口部、中間層の開口部および加飾層の開口部に配置される。
【0045】
透光部の透明基材からの高さは、加飾層の透明基材からの高さよりも高い。具体的には、透光部の透明基材からの高さと、加飾層の透明基材からの高さとの差は、0.04μm以上とすることができ、中でも0.1μm以上40μm以下であることが好ましく、特に0.2μm以上20μm以下であることが好ましい。上記高さの差が上記範囲であることにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層を形成することができる。
【0046】
ここで、透光部の透明基材からの高さとは、透明基材の一方の面からの透光部の高さをいい、透光部の厚みをいう。例えば、
図1(b)および
図2(b)において、符号h1で示される高さである。
【0047】
また、加飾層の透明基材からの高さとは、透明基材の一方の面からの加飾層の高さをいう。例えば、透明基材の直上に加飾層が配置されている場合には、加飾層の透明基材からの高さとは、加飾層の厚みをいう。また、例えば、透明基材および加飾層の間に遮光層および中間層が配置されている場合には、加飾層の透明基材からの高さとは、遮光層、中間層および加飾層の合計厚みをいう。具体的には、
図1(b)および
図2(b)において、符号h2で示される高さである。
【0048】
透光部の厚み、すなわち透光部の透明基材からの高さは、加飾層の透明基材からの高さよりも高ければよく、加飾層の透明基材からの高さ、すなわち加飾層、遮光層および中間層の厚み等に応じて適宜調整される。具体的には、透光部の厚みは、0.05μm以上100μm以下とすることができ、中でも0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、特に0.2μm以上25μm以下であることが好ましい。透光部の厚みが上記範囲内であることにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層を形成することができる。
【0049】
透光部のパターン形状は、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射したときに、光を加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側へと十分に透過するという機能を発揮できるようなパターン形状であれば、特に限定されない。透光部のパターン形状としては、例えば、ドット状、ストライプ状、格子状、市松模様状等が挙げられる。
【0050】
透光部の平面視形状は、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射したときに、光を加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側へと十分に透過するという機能を発揮できるような形状であれば、特に限定されない。透光部の平面視形状としては、例えば、円形状、楕円形状、矩形状等が挙げられる。また、加飾フィルムは、通常、多数の透光部を有する。多数の透光部の平面視形状は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
透光部の平面視の大きさは、後述する加飾層の開口率を満たす程度の大きさであることが好ましい。また、隣接する透光部の間隔は、透光部の大きさ等に応じて適宜調整することができるが、加飾層の開口率を満たすように設定することが好ましい。なお、隣接する透光部の間隔とは、例えば
図1(a)および
図2(a)において、符号dで示される距離を指す。
【0052】
例えば、透光部のパターン形状がドット状であり、透光部の平面視形状が円形状である場合、透光部の大きさとしては、具体的には、透光部の直径を5μm以上500μm以下とすることができ、中でも20μm以上400μm以下であることが好ましく、特に50μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0053】
また、この場合、隣接する透光部の間隔は、具体的には、5μm以上1000μm以下とすることができ、中でも20μm以上600μm以下であることが好ましく、特に50μm以上500μm以下であることが好ましい。透光部の直径および隣接する透光部の間隔が上記範囲内であることにより、透光部が観察者によって視認され、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性が低下するのを抑制することができる。さらに、この場合、透光部の直径に対する透光部の厚みの比(厚み/直径)は、例えば、0.05/500以上100/5以下とすることができ、中でも0.1/500以上100/40以下であることが好ましく、特に0.2/500以上100/100以下であることが好ましい。上記の比が上記範囲内であることにより、透光部の強度を高くすることができ、透光部を利用して開口部を有する加飾層を安定的に形成することができる。
【0054】
また、例えば、透光部のパターン形状が格子状である場合、透光部の大きさとしては、具体的には、透光部の幅を5μm以上500μm以下とすることができ、中でも20μm以上400μm以下であることが好ましく、特に50μm以上300μm以下であることが好ましい。また、この場合、隣接する透光部の間隔は、具体的には、5μm以上1000μm以下とすることができ、中でも20μm以上600μm以下であることが好ましく、特に50μm以上500μm以下であることが好ましい。透光部の幅および隣接する透光部の間隔が上記範囲内であることにより、透光部が観察者によって視認され、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性が低下するのを抑制することができる。
【0055】
さらに、この場合、透光部の幅に対する透光部の厚みの比(厚み/幅)は、例えば0.05/500以上40/5以下とすることができ、中でも0.1/500以上100/40以下であることが好ましく、特に10/500以上100/100であることが好ましい。上記の比が上記範囲内であることにより、透光部の強度を高くすることができ、透光部を利用して開口部を有する加飾層を安定的に形成することができる。
【0056】
また、例えば、透光部のパターン形状がストライプ状である場合、透光部の大きさとしては、具体的には、透光部の幅を5μm以上500μm以下とすることができ、中でも20μm以上400μm以下であることが好ましく、特に50μm以上300μm以下であることが好ましい。また、この場合、隣接する透光部の間隔は、具体的には、5μm以上1000μm以下とすることができ、中でも20μm以上600μm以下であることが好ましく、特に50μm以上500μm以下であることが好ましい。透光部の幅および隣接する透光部の間隔が上記範囲内であることにより、透光部が観察者によって視認され、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性が低下するのを抑制することができる。
さらに、この場合、透光部の幅に対する透光部の厚みの比(厚み/幅)は、例えば0.05/500以上100/5以下とすることができ、中でも0.1/500以上100/40以下であることが好ましく、特に0.2/500以上100/100以下であることが好ましい。上記の比が上記範囲内であることにより、透光部の強度を高くすることができ、透光部を利用して開口部を有する加飾層を安定的に形成することができる。
【0057】
透光部は、透明性を有する。透光部が有する透明性は、本実施態様の加飾フィルムに光を投射した際に、光が透光部を透過することができる程度の透明性であることが好ましい。具体的には、透光部の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。透光部の全光線透過率が上記範囲内であることにより、加飾フィルムに一方の面側から光を投射した際に、より多くの光を他方の面側に出射することができるため、光により表示される情報の視認性が向上する。
【0058】
なお、透光部の全光線透過率は、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定することができる。
【0059】
また、透光部は、透明性を有するものであればよく、無色であってもよく、有色であってもよい。中でも、透光部は、無色であることが好ましい。加飾フィルムの透明基材側の面側から投射された光が、加飾層によって着色されるのを抑制することができるからである。
【0060】
透光部は、例えば
図6に示すように、透光部4の透明基材2側の面とは反対の面が、微細凹凸4cを有していてもよい。透光部4が表面に微細凹凸4cを有することにより、加飾フィルム1の透明基材2側の面側から光L
1を投射したときに、微細凹凸4cによって透光部4を透過した光L
1を拡散させることができ、加飾フィルムの視野角特性を向上させることができるからである。
【0061】
透光部が表面に微細凹凸を有する場合、透光部の透明基材側の面とは反対側の面における表面粗さとしては、透過部を透過する光を拡散させることができる程度であればよい。具体的には、透光部の透明基材側の面とは反対側の面における算術平均粗さRaが、10nm以上20000nm以下であることが好ましく、中でも200nm以上10000nm以下であることが好ましく、特に500nm以上800nm以下であることが好ましい。上記算術平均粗さRaが上記範囲内であることにより、透光部が所望の光拡散機能を発揮することができ、加飾フィルムの視野角特性を向上させることができるからである。
【0062】
なお、算術平均粗さRaは、例えば、JIS B0601に準拠する方法により測定することができる。
【0063】
透光部は、光拡散機能を有していてもよく、有さなくてもよいが、中でも光拡散機能を有さないことが好ましい。透光部が光拡散機能を有さないことにより、透光部の透明性、例えば透光部の全光線透過率を高めることができる。これにより、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射したときに、画像情報を鮮明に表示することができるとともに、加飾層の絵柄や文字等の意匠をより視認され難くすることができる。
【0064】
また、透光部は、実質的に粒子状の光拡散材を含有しないことが好ましい。透光部が実質的に粒子状の光拡散材を含有しないことにより、透光部を光拡散機能を有さないものとすることができる。
【0065】
なお、粒子状の光拡散材とは、例えば、球状、扁平状、不定形状、星型形状、金平糖形状等の形状の光拡散材を包含する。
【0066】
また、透光部が実質的に粒子状の光拡散材を含有しないとは、透光部中の粒子状の光拡散材の含有量が、5質量%以下であることをいう。透光部中の粒子状の光拡散材の含有量は、中でも1質量%以下であることが好ましく、特に0質量%であることが好ましい。
【0067】
また、透光部のヘイズ値は、例えば10%以下であることが好ましく、中でも8%以下であることが好ましく、特に5%以下であることが好ましい。透光部のヘイズ値が上記範囲であることにより、透光部を光拡散機能を有さないものとすることができる。
【0068】
なお、透過部のヘイズ値は、例えば、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。
【0069】
透光部の材料としては、上述したような所定の全光線透過率を有する材料であればよく、例えば、透明樹脂が挙げられる。透明樹脂としては、光学的な透明性を有する樹脂であればよく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート・スチレン樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等が挙げられる。
【0070】
また、透光部は、必要に応じて、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤等の各種添加剤を1種または2種以上含有していてもよい。
【0071】
2.加飾層
本実施態様における加飾層は、透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する部材である。本実施態様においては、上述したように、加飾フィルムの透明基材側の面側から光が投射されていないときには、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側から加飾層の絵柄や文字等の意匠を視認することができる。
【0072】
加飾層は、通常、例えば
図1(a)および
図2(a)に示すように、平面視上、多数の開口部を有する。加飾層が多数の開口部を有することにより、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射した際に、上記開口部から加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側へと光を透過することが可能となる。これにより、観察者は、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側に透過された光により所定の情報を視認することが可能となる。
【0073】
加飾層の開口率としては、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射したときに、光を加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側へと透過し、観察者が情報を十分に視認することができる程度の開口率であって、かつ、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射していないときには、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側から加飾層の絵柄や文字等に意匠を、観察者が十分に視認することができる程度の開口率であることが好ましい。そのため、加飾層の開口率は、加飾フィルムの用途等に応じて適宜調整することができる。加飾層の開口率としては、具体的には、5%以上であることが好ましく、中でも10%以上40%以下であることが好ましく、特に20%以上30%以下であることが好ましい。なお、加飾層の開口率は、加飾層における開口部の領域と開口部以外の領域との総面積に対する、加飾層の開口部の領域の面積の割合である。
【0074】
加飾層の開口部のパターン形状、開口部の平面視形状、開口部の平面視の大きさ、隣接する開口部の間隔としては、上述した透光部のパターン形状、透光部の平面視形状、透光部の平面視の大きさ、隣接する透光部の間隔と同様とすることができる。
【0075】
加飾層の絵柄や文字等の意匠としては、特に限定されず、本実施態様の加飾フィルムの用途に応じて適宜選択することができる。
【0076】
加飾層は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、加飾層は、複数色の加飾部を有していてもよい。各加飾部は、その一部または全部が重なり合っていてもよい。
【0077】
加飾層は、遮光性を有していてもよい。加飾層が遮光性を有することにより、後述する遮光層を兼ねることができる。加飾層の遮光性については、遮光層の遮光性と同様とすることができる。例えば、加飾層の厚みを厚くすることにより、遮光性を有する加飾層を得ることができる。
【0078】
加飾層の材料は、加飾することができる材料であれば特に限定されない。本実施態様においては、通常、加飾層の形成方法には印刷法が用いられる。そのため、加飾層の材料は、印刷法に適用することが可能な材料であることが好ましい。このような材料としては、例えば、着色材および樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。着色材としては、例えば、染料や顔料等が挙げられる。また、樹脂としては、着色材を分散できる材料であればよく、例えば、一般的に印刷インクに使用される樹脂を用いることができる。
【0079】
加飾層は、必要に応じて、充填剤、可塑剤、分散剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防黴剤等の添加剤を適宜含有することができる。
【0080】
加飾層の厚みは、加飾層の意匠や、加飾フィルムの用途や大きさ等に応じて、適宜調整することができる。加飾層の厚みとしては、例えば、0.01μm以上20μm以下とすることができ、中でも0.05μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0081】
3.遮光層
本実施態様の加飾フィルムは、後述する透明基材および上記加飾層の間に配置され、上記加飾層の開口部と同一のパターン状の開口部を有する遮光層をさらに備えることが好ましい。遮光層は、加飾フィルムに投射される光を遮ることができる。例えば、
図2(b)に示すように、遮光層5は、加飾フィルム1の透明基材2側の面側から投射された光L
1が、加飾層3を透過することを抑制することができる。加飾フィルム1の透明基材2側の面側から投射された光L
1が加飾層3を透過しないことにより、加飾層3によって光L
1が着色されるのを抑制することができる。これにより、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側からの観察者による情報の視認性の低下を抑制することができる。
【0082】
遮光層は、上記加飾層の開口部と同一のパターン状の開口部を有する。遮光層の開口部および開口率については、上記加飾層の開口部および開口率と同様とすることができる。
【0083】
遮光層は、遮光性を有する。具体的な遮光層の遮光性としては、加飾フィルムの用途等に応じて異なるが、例えば、全光線透過率が40%以下であることが好ましく、中でも30%以下であることが好ましく、特に25%以下であることが好ましい。
【0084】
なお、遮光層の全光線透過率は、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定することができる。
【0085】
また、遮光層の遮光性は、加飾フィルムに投射される光の波長に応じて異なる。そのため、遮光層の遮光性は、例えば、分光透過率により規定することも可能である。分光透過率により規定される数値範囲は、上記全光線透過率の数値範囲と同様とすることができる。なお、分光透過率は、例えば、日本分光製 V-7100 紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。また、分光透過率の他にも、Y値やL*値により遮光性を規定することができる。Y値やL*値は、分光透過率から算出することができ、また、例えば、コニカミノルタ製 CS-100A 色彩輝度計を用いて測定することができる。なお、分光透過率からY値やL*値を算出する方法については、公知の式から算出する方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0086】
遮光層の材料は、所望の遮光性を発揮することができる材料であれば特に限定されず、例えば、光吸収材または着色材と樹脂とを含有する樹脂組成物が挙げられる。光吸収材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等が挙げられる。また、着色材としては、例えば、グレー系や黒色系等の暗色系の染料や顔料等が挙げられる。さらに、樹脂としては、光吸収材や着色材を分散できる材料であればよく、例えば、一般的に印刷インクに使用される樹脂を用いることができる。
【0087】
遮光層の厚みは、所望の遮光機能を発揮できる程度の厚みであれば特に限定されず、例えば、0.5μm以上200μm以下とすることができ、中でも1μm以上50μm以下であることが好ましい。遮光層の厚みが上記範囲内であることにより、所望の遮光機能を発揮することができる。
【0088】
また、本実施態様の加飾フィルムは、透明基材の一方の面に、遮光層と同一材料を含むアライメントマークを有していてもよい。後述するように、遮光層形成工程後に透光部形成工程を行う場合には、遮光層形成工程において遮光層と同時にアライメントマークを形成することで、透光部形成工程において、上記アライメントマークを用いて、遮光層に対する透光部の位置合わせを行うことができる。また、本実施態様の加飾フィルムが、後述する中間層を有する場合には、遮光層形成工程において遮光層と同時にアライメントマークを形成することで、中間層形成工程において、上記アライメントマークを用いて、遮光層に対する中間層の位置合わせを行うことができる。
【0089】
4.中間層
本実施態様の加飾フィルムは、上記加飾層および上記遮光層の間に配置され、上記加飾層の開口部および上記遮光層の開口部と同一のパターン状の開口部を有する中間層をさらに備えていてもよい。加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることにより、加飾フィルムの透明基材側の面側から光が投射されていないときに、加飾層の背後を明るくして、加飾層の絵柄や文字等の意匠を引き立たせることができる。また、加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することができる。これにより、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性を高めることができる。
【0090】
中でも、例えば加飾層の絵柄や文字等の意匠の色合いが淡色である場合には、加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることが好ましい。加飾層の意匠の色合いが淡色である場合、加飾フィルムの透明基材側の面側から光が投射されていないときには、加飾層の背後が暗くなるため、また加飾層を通して遮光層が透けて見えやすいため、観察者に加飾層の意匠が暗い色合いに見えてしまうおそれがある。これに対し、加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることにより、加飾層の背後を明るくすることができ、また加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することができ、その結果、加飾層の意匠を引き立たせることができ、加飾層の意匠の視認性を高めることができる。また、加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制するためには、加飾層の厚みを厚くする必要があるが、加飾層の厚みが厚くなり過ぎると、加飾フィルムの厚み自体が厚くなってしまう傾向にある。このような場合に、中間層を設けることで、加飾層の厚みを厚くすることなく、加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することが可能となる。
【0091】
中間層は、加飾フィルムの透明基材側の面側から光が投射されていないときに、加飾層の背後を明るくすることができ、また加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することができる層であれば特に限定されず、例えば着色層を用いることができる。着色層としては、加飾層の意匠の色合いに応じて適宜選択することができる。具体的には、白色層を用いることができる。
【0092】
中間層は、上記加飾層の開口部および上記遮光層の開口部と同一のパターン状の開口部を有する。中間層の開口部および開口率については、上記加飾層の開口部および開口率と同様とすることができる。
【0093】
中間層の材料としては、加飾フィルムの透明基材側の面側から光が投射されていないときに、加飾層の背後を明るくすることができ、また加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することができるような材料であることが好ましい。中間層の材料としては、例えば、着色材および樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。中間層に用いられる着色材の色合いは、加飾層の意匠の色合いに応じて適宜選択することができる。具体的な着色材としては、公知の着色材を用いることができる。また、樹脂としては、着色材を分散できる材料であればよく、例えば、一般的に印刷インクに使用される樹脂を用いることができる。
【0094】
中間層の厚みは、加飾フィルムの透明基材側の面側から光が投射されていないときに、加飾層の背後を明るくすることができ、また加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することができる程度の厚みであれば特に限定されず、加飾層や中間層が呈する色合い等に応じて適宜調整することができる。中間層の厚みとしては、例えば、0.1μm以上30μm以下とすることができ、中でも3μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0095】
5.表面機能層
本実施態様の加飾フィルムは、例えば
図7に示すように、加飾層3の透明基材2側の面とは反対の面に、加飾層3および透光部4を覆うように配置された表面機能層7をさらに備えていてもよい。本実施態様においては、例えば
図7に示すように、表面機能層7を加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対側の面の最外層に配置することができる。
【0096】
表面機能層の屈折率は、上記透光部の屈折率との差が比較的小さいことが好ましい。具体的には、表面機能層の屈折率と透光部の屈折率との差が0.2以下であることが好ましく、中でも0.1以下であることが好ましく、特に0.05以下であることが好ましい。
【0097】
例えば、表面機能層が配置されておらず、透光部が加飾層から突出している部分において透光部が露出している場合、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射すると、透光部を透過した光は、透光部の露出面において透光部および空気の屈折率差が大きいため全反射しやすくなる。中でも、透光部が加飾層から突出している部分における透光部の側面が露出している場合、透光部の側面の露出面において全反射が起こりやすいと、見る角度により視認性が低下するおそれがある。これに対し、上記の屈折率の差が上記範囲である場合には、透光部および表面機能層の屈折率差が小さいため、透光部が加飾層から突出している部分における透光部の側面において、全反射を起こりにくくすることができ、視野角特性を良くすることができる。なお、表面機能層および透光部の屈折率は、表面機能層の屈折率と透光部の屈折率との差が上記範囲であれば、いずれの屈折率が高くてもよく低くてもよい。
【0098】
なお、表面機能層および透光部の屈折率は、例えば、JIS K 7142に準拠する方法により測定することができる。具体的には、アッベ屈折計を用いて、温度25℃の条件下で、測定波長589nmのナトリウム光源を用いて測定することができる。
【0099】
表面機能層が有する機能としては、例えば、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能等の少なくとも1つの機能を指す。中でも、表面機能層が、ハードコート機能を有する表面保護層であることが好ましい。
【0100】
表面保護層は、所定の硬度を有することが好ましい。表面保護層の硬度としては、例えば、JIS K 600-5-4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度であることが好ましい。表面保護層が所望のハードコート機能を発揮することができるからである。
【0101】
表面保護層の材料としては、例えば、所望のハードコート機能を発揮し、本実施態様の加飾フィルムを保護することができるような材料であることが好ましい。表面保護層の材料は、例えば、電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。ここで、電離放射線硬化性樹脂は、少なくとも電離放射線硬化性樹脂モノマー、電離放射線硬化性樹脂オリゴマー、またはそれらの混合物を含む樹脂をいう。
【0102】
また、表面保護層にその他の機能を付与する場合には、表面保護層は、適宜添加剤等を含有することができる。
【0103】
表面保護層の厚みは、例えば、所望のハードコート機能を発揮できる程度の厚みであれば特に限定されず、本実施態様の加飾フィルムの用途等に応じて適宜調整することができる。表面保護層の厚みとしては、例えば、1μm以上50μm以下とすることができる。
【0104】
6.透明基材
本実施態様における透明基材は、上述した透光部、加飾層、遮光層、中間層、表面機能層等を支持する部材である。本実施態様の加飾フィルムにおいては、表示装置に用いた場合に、加飾フィルムの透明基材側の面側に表示パネルが配置される。
【0105】
透明基材は、加飾フィルムに光を投射した際に、光の透過を妨げない程度の透明性を有することが好ましい。具体的な透明基材の透明性としては、例えば、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、中でも90%以上であることが好ましい。なお、透明基材の全光線透過率は、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定することができる。
【0106】
透明基材の材料としては、上述したような所定の全光線透過率を有する材料であればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等の樹脂や、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英等のガラスが挙げられる。
【0107】
また、透明基材は、必要に応じて、紫外線吸収剤、熱線吸収剤等を含有していてもよい。
【0108】
透明基材の厚みは、上述した透光部、加飾層、遮光層、中間層、表面機能層等を支持することができる程度の厚みであれば特に限定されず、例えば、0.01mm以上4.0mm以下とすることができ、中でも0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0109】
7.支持部材
本実施態様の加飾フィルムは、加飾フィルムのいずれかの面に配置された支持部材を有するものであってもよい。上記加飾フィルムは、比較的膜厚が薄いものであるので、自己支持性がなく、例えば表示パネル前面に配置されて表示装置とする場合に、上述したように支持枠を用いて配置する場合等においては問題が生じる場合がある。また、上記加飾フィルムは平面に形成されるものであるので、曲面等の形状とすることが難しい。このような場合に、支持部材を加飾フィルムのいずれかの面に配置することにより、自己支持性を付与することが可能となり、また例えば加飾フィルムに対してポリカーボネート樹脂等を用いてインモールド成形を行うこと等により、所定の形状の外形を有する加飾フィルムとすることが可能となる。
【0110】
このような支持部材を形成する材料としては、透明であれば特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アルキル樹脂等の熱可塑性樹脂や、ガラス等を挙げることができる。このような支持部材の膜厚としては、通常、2mm~5mm程度である。
【0111】
上記支持部材と加飾フィルムとは、接着剤を用いて接着してもよく、また、支持部材の材料として熱可塑性樹脂を用いる場合は、インサート成形法、インモールド成形法、およびTOM成形法(Three dimension Overlay Method=3次元表面被覆工法)等を用いて支持部材を成形すると同時に加飾フィルムを接着させたものであってもよい。この場合、加飾フィルム側に、ABS樹脂等からなる密着層を配置することが好ましい。
上述したように、支持部材は、加飾フィルムの透明基板側に形成されてもよく、また加飾層側に形成されてもよく、両側に形成されてもよいが、通常はいずれか一方側に配置される。
【0112】
8.加飾フィルムの物性
本実施態様の加飾フィルムは、所定の透明性を有することが好ましい。加飾フィルムの透明性としては、例えば、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。加飾フィルムの全光線透過率が上記範囲であることにより、加飾フィルムの透明基材側の面側から光を投射したときに、画像情報を鮮明に表示することができるとともに、加飾層の絵柄や文字等の意匠をより視認され難くすることができる。
【0113】
また、加飾フィルムは、上述したように支持部材を有する場合があり、この場合、インサート成形法、インモールド成形法、およびTOM成形法等により加飾部材と共に支持部材が成形される。このような成型方法を用いる場合、加飾フィルムは熱可塑性、延伸性を有し、成形性に優れるといった特性を有することが好ましい。
【0114】
なお、加飾フィルムの全光線透過率は、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定することができる。
【0115】
9.加飾フィルムの製造方法
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、上述した所定の構成を有する加飾フィルムを得ることができる方法であればよいが、透明基材の一方の面に透光部をパターン状に形成する透光部形成工程と、透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に加飾層を形成する加飾層形成工程とを少なくとも有することが好ましい。透光部および加飾層を順に形成することにより、透光部を利用して、加飾層の位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層を形成することができる。したがって、短時間で安価に、簡便な工程で開口部を有する加飾層を形成することができる。
【0116】
また、加飾フィルムが遮光層をさらに有する場合には、透光部形成工程前に、透明基材の一方の面に遮光層をパターン状に形成する遮光層形成工程を行ってもよく、透光部形成工程後かつ加飾層形成工程前に、透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に遮光層を形成する遮光層形成工程を行ってもよい。
【0117】
また、加飾フィルムが遮光層および中間層をさらに有する場合には、透光部形成工程前に、透明基材の一方の面に遮光層をパターン状に形成する遮光層形成工程と、遮光層上に遮光層と同一のパターン状に中間層を形成する中間層形成工程とを行ってもよく、透光部形成工程後かつ加飾層形成工程前に、透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に遮光層を形成する遮光層形成工程と、透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に、かつ遮光層上に中間層を形成する中間層形成工程とを行ってもよい。
【0118】
以下、加飾フィルムが遮光層および中間層をさらに有する場合であって、遮光層形成工程、中間層形成工程、透光部形成工程および加飾層形成工程の順に行う製造方法(第1態様)と、透光部形成工程、遮光層形成工程、中間層形成工程および加飾層形成工程の順に行う製造方法(第2態様)とについて説明する。
【0119】
(1)第1態様
本実施態様の加飾フィルムの製造方法の第1態様は、透明基材の一方の面に遮光層をパターン状に形成する遮光層形成工程と、遮光層上に遮光層と同一のパターン状に中間層を形成する中間層形成工程と、透明基材の一方の面の遮光層および中間層の開口部に透光部を形成する透光部形成工程と、透光部が配置されていない領域に、かつ中間層上に加飾層を形成する加飾層形成工程とを有する。
【0120】
図4(a)~(d)は本態様の加飾フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。なお、
図4(a)~(d)については、上述したので、ここでの説明は省略する。
【0121】
本態様においては、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、簡便な工程で加飾層を形成することができる。
【0122】
以下、本態様の加飾フィルムの製造方法の各工程について説明する。
【0123】
(a)遮光層形成工程
透明基材の一方の面に遮光層をパターン状に形成する方法としては、例えば印刷法、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。中でも、製造工程の簡略化の観点から、印刷法が好ましい。印刷方式としては、例えば、網点印刷およびベタ印刷のいずれも用いることができる。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0124】
(b)中間層形成工程
遮光層上に遮光層と同一のパターン状に中間層を形成する方法としては、例えば印刷法、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。中でも、製造工程の簡略化の観点から、印刷法が好ましい。印刷法については、上記遮光層形成工程に適用できる印刷法と同様とすることができる。
【0125】
(c)透光部形成工程
透明基材の一方の面の遮光層および中間層の開口部に透光部を形成する方法としては、透明基材の一方の面に透光部をパターン状に形成することができる方法であればよく、例えば印刷法、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。中でも、製造工程の簡略化の観点から、印刷法が好ましい。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷等を挙げることができる。
【0126】
(d)加飾層形成工程
透光部が配置されていない領域に、かつ中間層上に加飾層を形成する方法としては、例えば印刷法、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。中でも、製造工程の簡略化の観点から、印刷法が好ましい。印刷方式としては、例えば、網点印刷およびベタ印刷のいずれも用いることができる。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。また、印刷法は、被印刷面に圧力がかかる方法であることが好ましい。被印刷面に圧力がかかる印刷法の場合、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、加飾層の形成時に、上記圧力によって加飾層用組成物(インキ)が透光部上にのりにくくなり、透光部が配置されていない領域に転移しやすくなると考えられるからである。
【0127】
また、加飾層の形成時に、透光部上にも加飾層が形成された場合には、透光部上に位置する加飾層を除去すればよい。透光部上に位置する加飾層を除去する方法としては、透光部上に位置する加飾層のみを除去することができ、透光部が配置されていない領域に位置する加飾層は除去されないような方法であれば特に限定されず、例えば、ブラスト処理、ドライエッチング処理、ラビング処理等が挙げられる。この場合、例えば
図6に示すように、透光部4の上面に、すなわち透光部4の透明基材2側の面とは反対の面に、微細凹凸4cを形成することができる。
【0128】
(e)その他の工程
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、上述した工程の他にも、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
【0129】
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、例えば、上記加飾層形成工程後に、加飾層および透光部を覆うように表面機能層を形成する表面機能層形成工程を有していてもよい。
【0130】
表面機能層の形成方法としては、加飾層および透光部を覆うように表面機能層を形成することができる方法であればよく、例えば、表面機能層用組成物を塗布し、乾燥させ、必要に応じて硬化させる方法が挙げられる。
【0131】
また、支持部材を加飾フィルムに形成する支持部材形成工程を有していてもよい。具体的には、接着層により支持部材と加飾部材を接着させる工程や、支持部材が熱可塑性樹脂の場合は、インサート成形法、インモールド成形法、およびTOM成形法等を用いて、加飾フィルムの一方の面に支持部材を形成する工程であってもよい。
【0132】
(2)第2態様
本実施態様の加飾フィルムの製造方法の第2態様は、透明基材の一方の面に透光部をパターン状に形成する透光部形成工程と、透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に遮光層を形成する遮光層形成工程と、透光部が配置されていない領域に、かつ遮光層上に中間層を形成する中間層形成工程と、透光部が配置されていない領域に、かつ中間層上に加飾層を形成する加飾層形成工程とを有する。
【0133】
図8(a)~(d)は本態様の加飾フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。まず、
図8(a)に示すように、透明基材2の一方の面に透光部4をパターン状に形成する透光部形成工程を行う。この際、後の工程にて加飾層を形成したときに、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高くなるように、透光部4の厚みが設定される。続いて、
図8(b)に示すように、透明基材2の一方の面の透光部4が配置されていない領域に遮光層5を形成する遮光層形成工程を行う。これにより、開口部15を有する遮光層5が得られる。次いで、
図8(c)に示すように、透光部4が配置されていない領域に、かつ遮光層5上に中間層6を形成する中間層形成工程を行う。これにより、遮光層5の開口部15と同一のパターン状の開口部16を有する中間層6が得られる。次に、
図8(d)に示すように、透光部4が配置されていない領域に、かつ中間層6上に加飾層3を形成する加飾層形成工程を行う。これにより、遮光層5の開口部15および中間層6の開口部16と同一のパターン状の開口部13を有する加飾層3が得られる。
【0134】
このような加飾フィルムの製造方法においては、
図8(d)に示すように、加飾層3を形成する際、透光部4の透明基材2からの高さh1が加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高いため、透光部4を利用して、透光部4が配置されていない領域に加飾層3を容易に形成することができる。また、
図8(b)~(c)に示すように、遮光層5および中間層6を形成する際、後の工程にて加飾層を形成したときに、透光部4の透明基材2からの高さh1が加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高くなるように、透光部4の厚みが設定されているため、透光部4を利用して、透光部4が配置されていない領域に遮光層5および中間層6を容易に形成することができる。したがって、遮光層5、中間層6および加飾層3の位置合わせを要することなく、透光部4が配置されていない領域のみに確実に遮光層5、中間層6および加飾層3を形成することができる。
【0135】
したがって、本態様においては、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、遮光層、中間層および加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、簡便な工程で遮光層、中間層および加飾層を形成することができる。
【0136】
以下、本態様の加飾フィルムの製造方法の各工程について説明する。
【0137】
(a)透光部形成工程
透明基材の一方の面に透光部をパターン状に形成する方法としては、上記第1態様における透光部の形成方法と同様とすることができる。
【0138】
(b)遮光層形成工程
透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に遮光層を形成する方法としては、上記第1態様における加飾層の形成方法と同様とすることができる。
【0139】
(b)中間層形成工程
透光部が配置されていない領域に、かつ遮光層上に中間層を形成する方法としては、上記第1態様における加飾層の形成方法と同様とすることができる。
【0140】
(d)加飾層形成工程
透光部が配置されていない領域に、かつ中間層上に加飾層を形成する方法としては、上記第1態様における加飾層の形成方法と同様とすることができる。
【0141】
(e)その他の工程
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、上述した工程の他にも、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
【0142】
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、例えば、上記加飾層形成工程後に、加飾層および透光部を覆うように表面機能層を形成する表面機能層形成工程を有していてもよい。表面機能層の形成方法としては、上記第1態様における表面機能層の形成方法と同様とすることができる。
【0143】
また、上記第1態様と同様の方法により、加飾フィルムの表面に支持部材を形成する支持部材形成工程を有していてもよい。
【0144】
II.第2実施態様
本開示の加飾フィルムの第2実施態様は、透明基材側の面とは反対の面側から投射された光を透明基材側の面側に透過して情報を表示する部材であって、透明基材と、上記透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する加飾層と、上記加飾層の上記開口部に配置されたパターン状の透光部とを備え、上記透光部の上記透明基材からの高さが、上記加飾層の上記透明基材からの高さよりも高い、部材である。
【0145】
図1(a)は、本実施態様の加飾フィルムの一例を示す概略平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。なお、
図1(a)、(b)については、上記第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0146】
図9(a)は、本実施態様の加飾フィルムの他の例を示す概略平面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のA-A線断面図である。
図9(a)、(b)に例示するように、加飾フィルム1は、透明基材2と、透明基材2の一方の面に配置され、パターン状の開口部13を有する加飾層3と、加飾層3の開口部13に配置されたパターン状の透光部4とを備える。透光部4の透明基材2からの高さh1は、加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高くなっている。具体的には、
図9(b)においては、透光部4の厚みが、加飾層3の厚みよりも大きくなっている。
【0147】
本実施態様の加飾フィルムは、例えば
図9(b)に示すように、加飾層3の透明基材2側の面とは反対の面に配置され、加飾層3の開口部13と同一のパターン状の開口部15を有する遮光層5をさらに備えていてもよい。
【0148】
また、本実施態様の加飾フィルムは、例えば
図9(b)に示すように、加飾層3および遮光層5の間に配置され、加飾層3の開口部13および遮光層5の開口部15と同一のパターン状の開口部16を有する中間層6をさらに備えていてもよい。
【0149】
また、本実施態様の加飾フィルムは、例えば
図9(b)に示すように、加飾層3の透明基材2側の面とは反対の面に、加飾層3および透光部4を覆うように配置された表面機能層7をさらに備えていてもよい。表面機能層7は、加飾フィルム1が遮光層5をさらに備える場合には、遮光層5の透明基材2側の面とは反対の面に、遮光層5および透光部4を覆うように配置される。
【0150】
図10は、本開示の加飾フィルムを備える表示装置の一例を示す概略断面図であり、
図9(a)、(b)に示す加飾フィルムを備える例である。
図10に例示するように、表示装置20は、表示パネル21と、表示パネル21の前面に接着層22を介して配置された加飾フィルム1とを備える。
【0151】
なお、加飾フィルムと表示パネルとは、第1実施態様において説明したように支持枠等により配置されたものであってもよい。
【0152】
本実施態様の加飾フィルムは、
図9(b)に示すように、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から投射された光L
1を加飾フィルム1の透明基材2側の面側に透過して情報を表示することができる。具体的には、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から投射された光L
1が、透光部4から加飾フィルム1の透明基材2側の面側に透過することにより、加飾フィルム1の透明基材2側の面側に情報を表示することができる。そのため、
図10に示すように、加飾フィルム1を備える表示装置20においては、表示パネル21の表示時に、加飾フィルム1の透明基材2側の面側から、観察者は、加飾フィルム1の透光部4を通して、表示パネル21の画像情報を視認することができる。
【0153】
また、本実施態様の加飾フィルムにおいては、
図9(b)に示すように、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から光L
1を投射していないときには、透明基材2側の面側から加飾層3の絵柄や文字等の意匠を視認することができる。そのため、
図10に示すように、加飾フィルム1を備える表示装置20において、表示パネル21の非表示時には、加飾フィルム1の透明基材2側の面側から、観察者は、加飾層3の意匠を視認することができる。
【0154】
図11(a)~(e)は、本実施態様の加飾フィルムの製造方法の一例を示す工程図であり、
図9(a)、(b)に示す加飾フィルムの製造方法の例である。まず、
図11(a)に示すように、透明基材2の一方の面に印刷法等により透光部4をパターン状に形成する。この際、後の工程にて加飾層を形成したときに、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高くなるように、透光部4の厚みが設定される。次に、
図11(b)に示すように、透明基材2の一方の面の透光部4が配置されていない領域に印刷法等により加飾層3をパターン状に形成する。これにより、開口部13を有する加飾層3が得られる。次いで、
図11(c)に示すように、加飾層3上に印刷法等により中間層6を加飾層3と同一のパターン状に形成する。これにより、加飾層3の開口部13と同一のパターン状の開口部16を有する中間層6が得られる。続いて、
図11(d)に示すように、中間層6上に印刷法等により遮光層5を加飾層3および中間層6と同一のパターン状に形成する。これにより、加飾層3の開口部13および中間層6の開口部16と同一のパターン状の開口部15を有する遮光層5が得られる。次に、
図11(e)に示すように、遮光層5および透光部4を覆うように表面機能層7を形成する。
【0155】
このような加飾フィルムの製造方法においては、
図11(b)に示すように、加飾層3を形成する際、透光部4の透明基材2からの高さh1が加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高いため、透光部4を利用して、透光部4が配置されていない領域に加飾層3を容易に形成することができる。したがって、加飾層3の位置合わせを要することなく、透光部4が配置されていない領域のみに確実に加飾層3を形成することができる。そのため、例えば
図12に示すように、加飾層3が複数色の加飾部3a、3bを有する場合(
図12においては、加飾層3は2色の加飾部3a、3bを有する。)には、加飾層3の開口部13に対して各加飾部3a、3bの位置合わせを要しない。
【0156】
このように本実施態様においては、加飾層の開口部に透光部が配置されていることにより、レーザ加工による開口部の形成が不要であり、容易に多数の開口部を有する加飾層を形成することができる。したがって、短時間で安価に加飾フィルムを製造することが可能である。また、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、簡便な工程で加飾層を形成することができる。
【0157】
また、本実施態様においては、加飾層の開口部に透光部が配置されていることにより、レーザ加工による開口部の形成が不要であるため、加飾層、中間層および遮光層の厚みを厚くすることが可能である。したがって、加飾層、中間層および遮光層がそれぞれの機能を十分に発揮させることができる。
【0158】
以下、本実施態様の加飾フィルムについて詳細に説明する。
【0159】
1.透光部
本実施態様における透光部は、後述する加飾層の開口部に配置されるパターン状の部材である。
【0160】
本実施態様においては、透光部の透明基材からの高さは、加飾層の透明基材からの高さよりも高ければよく、例えば加飾フィルムが、加飾層の透明基材側の面とは反対の面に遮光層を有する場合には、例えば
図9(b)に示すように、透光部4の透明基材2からの高さh1が、遮光層5の透明基材2から高さよりも低くてもよく、
図13に示すように、透光部4の透明基材2からの高さh1が、遮光層5の透明基材2から高さh3よりも高くてもよく、図示しないが、透光部の透明基材からの高さが、遮光層の透明基材からの高さと同じであってもよい。
【0161】
また、例えば加飾フィルムが、加飾層の透明基材側の面とは反対の面に遮光層を有し、加飾層および遮光層の間に中間層を有する場合には、例えば
図9(b)に示すように、透光部4の透明基材2からの高さh1が、遮光層5の透明基材2から高さよりも低く、中間層6の透明基材2からの高さよりも低くてもよく、
図13に示すように、透光部4の透明基材2からの高さh1が、中間層6の透明基材2から高さh4よりも高く、遮光層5の透明基材2から高さh3よりも高くてもよく、図示しないが、透光部の透明基材からの高さが、中間層の透明基材からの高さよりも高く、遮光層の透明基材からの高さよりも低くてもよい。また、透光部の透明基材からの高さは、遮光層の透明基材からの高さと同じであってもよく、中間層の透明基材からの高さと同じであってもよい。
【0162】
透光部の透明基材からの高さが、遮光層の透明基材からの高さよりも高い場合には、透光部は、加飾層の開口部および遮光層の開口部に配置される。また、透光部の透明基材からの高さが、中間層の透明基材からの高さよりも高く、遮光層の透明基材からの高さよりも高い場合には、透光部は、加飾層の開口部、中間層の開口部および遮光層の開口部に配置される。
【0163】
透光部の透明基材からの高さは、加飾層の透明基材からの高さよりも高い。透光部の透明基材からの高さと、加飾層の透明基材からの高さとの差は、加飾フィルムの構成および上述した透光部の透明基材からの高さについての態様に応じて異なる。具体的には、透光部の透明基材からの高さと、加飾層の透明基材からの高さとの差は、0.05μm以上とすることができ、中でも0.1μm以上であることが好ましく、特に0.2μm以上であることが好ましい。上記高さの差が上記範囲であることにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層を形成することができる。
【0164】
また例えば、
図1(b)に示すように加飾フィルム1が遮光層および中間層を有さない場合、あるいは、
図9(b)に示すように加飾フィルム1が遮光層5および中間層6を有する場合であって、透光部4の透明基材2からの高さh1が、遮光層5の透明基材2から高さよりも低く、中間層6の透明基材2からの高さよりも低い場合、あるいは、図示しないが、加飾フィルムが遮光層を有し、中間層を有さない場合であって、透光部の透明基材からの高さが、遮光層の透明基材から高さよりも低い場合には、透光部の透明基材からの高さと、加飾層の透明基材からの高さとの差は、例えば、0.05μm以上とすることができ、中でも0.1μm以上7μm以下であることが好ましく、特に0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。上記高さの差が上記範囲であることにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層を形成することができる。
【0165】
また例えば、
図13に示すように加飾フィルム1が遮光層5および中間層6を有する場合であって、透光部4の透明基材2からの高さh1が、中間層6の透明基材2からの高さh4よりも高く、遮光層5の透明基材2から高さh3よりも高い場合、あるいは、図示しないが、加飾フィルムが遮光層を有し、中間層を有さない場合であって、透光部の透明基材からの高さが、遮光層の透明基材から高さよりも高い場合には、透光部の透明基材からの高さは、加飾層の透明基材からの高さよりも高く、遮光層の透明基材からの高さよりも高くなる。この場合、透光部の透明基材からの高さと、遮光層の透明基材からの高さとの差は、例えば、0.05μm以上とすることができ、中でも0.1μm以上7μm以下であることが好ましく、特に0.2μm以上5μm以下であることが好ましい。上記高さの差が上記範囲であることにより、加飾層の形成時だけでなく、中間層や遮光層の形成時にも位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層、中間層、遮光層を形成することができる。
【0166】
ここで、透光部の透明基材からの高さとは、透明基材の一方の面からの透光部の高さをいい、透光部の厚みをいう。例えば、
図1(b)、
図9(b)および
図13において、符号h1で示される高さである。
【0167】
また、加飾層の透明基材からの高さとは、透明基材の一方の面からの加飾層の高さをいう。例えば、透明基材の直上に加飾層が配置されている場合には、加飾層の透明基材からの高さとは、加飾層の厚みをいう。具体的には、
図1(b)、
図9(b)および
図13において、符号h2で示される高さである。
【0168】
また、遮光層の透明基材からの高さとは、透明基材の一方の面からの遮光層の高さをいう。例えば、透明基材の一方の面に加飾層、中間層および遮光層の順に積層されている場合には、遮光層の透明基材からの高さとは、加飾層、中間層および遮光層の合計厚みをいう。具体的には、
図13において、符号h3で示される高さである。
【0169】
透光部の厚み、すなわち透光部の透明基材からの高さは、加飾層の透明基材からの高さよりも高ければよく、加飾層の透明基材からの高さや、上述した透光部の透明基材からの高さについての態様、加飾層、遮光層および中間層の厚み等に応じて適宜調整される。具体的には、透光部の厚みは、0.05μm以上100μm以下とすることができ、中でも0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、特に0.2μm以上25μm以下であることが好ましい。透光部の厚みが上記範囲内であることにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層を形成することができる。
【0170】
なお、透光部のパターン形状、透光部の平面視形状、透光部の平面視の大きさ、隣接する透光部の間隔等については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0171】
透光部は、透明性を有する。なお、透光部が有する透明性については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0172】
透光部は、例えば
図14(a)、(b)に示すように、透光部4の透明基材2側の面とは反対の面が、微細凹凸4cを有していてもよい。透光部4が表面に微細凹凸4cを有することにより、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から光L
1を投射したときに、微細凹凸4cによって透光部4を透過した光L
1を拡散させることができ、加飾フィルムの視野角特性を向上させることができるからである。
【0173】
透光部が表面に微細凹凸を有する場合、透光部の透明基材側の面とは反対側の面における表面粗さについては、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0174】
透光部の光拡散機能、ヘイズ値については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0175】
また、透光部の材料については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0176】
2.加飾層
本実施態様における加飾層は、透明基材の一方の面に配置され、パターン状の開口部を有する部材である。本実施態様においては、上述したように、加飾フィルムの透明基材側の面と反対の面側から光が投射されていないときには、加飾フィルムの透明基材側の面側から加飾層の絵柄や文字等の意匠を視認することができる。
【0177】
加飾層は、通常、例えば
図1(a)および
図9(a)に示すように、平面視上、多数の開口部を有する。加飾層が多数の開口部を有することにより、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側から光を投射した際に、上記開口部から加飾フィルムの透明基材側の面側へと光を透過することが可能となる。これにより、観察者は、加飾フィルムの透明基材側の面側に透過された光により所定の情報を視認することが可能となる。
【0178】
加飾層については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0179】
3.遮光層
本実施態様の加飾フィルムは、後述する上記加飾層の透明基材側の面とは反対の面に配置され、上記加飾層の開口部と同一のパターン状の開口部を有する遮光層をさらに備えることが好ましい。遮光層は、加飾フィルムに投射される光を遮ることができる。例えば、
図9(b)に示すように、遮光層5は、加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から投射された光L
1が、加飾層3を透過することを抑制することができる。加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対の面側から投射された光L
1が加飾層3を透過しないことにより、加飾層3によって光L
1が着色されるのを抑制することができる。これにより、加飾フィルム1の透明基材2側の面側からの観察者による情報の視認性の低下を抑制することができる。
【0180】
遮光層については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0181】
4.中間層
本実施態様の加飾フィルムは、上記加飾層および上記遮光層の間に配置され、上記加飾層の開口部および上記遮光層の開口部と同一のパターン状の開口部を有する中間層をさらに備えていてもよい。加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることにより、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側から光が投射されていないときに、加飾層の背後を明るくして、加飾層の絵柄や文字等の意匠を引き立たせることができる。また、加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することができる。これにより、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性を高めることができる。
【0182】
中でも、例えば加飾層の絵柄や文字等の意匠の色合いが淡色である場合には、加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることが好ましい。加飾層の意匠の色合いが淡色である場合、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側から光が投射されていないときには、加飾層の背後が暗くなるため、また加飾層を通して遮光層が透けて見えやすいため、観察者に加飾層の意匠が暗い色合いに見えてしまうおそれがある。これに対し、加飾層および遮光層の間に中間層が配置されていることにより、加飾層の背後を明るくすることができ、また加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することができ、その結果、加飾層の意匠を引き立たせることができ、加飾層の絵柄や文字等の意匠の視認性を高めることができる。また、加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制するためには、加飾層の厚みを厚くする必要があるが、加飾層の厚みが厚くなり過ぎると、加飾フィルムの厚み自体が厚くなってしまう傾向にある。このような場合に、中間層を設けることで、加飾層の厚みを厚くすることなく、加飾層を通して遮光層が透けて見えるのを抑制することが可能となる。
【0183】
中間層については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0184】
5.表面機能層
本実施態様の加飾フィルムは、加飾層の透明基材側の面とは反対の面に、加飾層および透光部を覆うように配置された表面機能層をさらに備えていてもよい。本実施態様においては、例えば
図9(b)に示すように、表面機能層7を加飾フィルム1の透明基材2側の面とは反対側の面の最外層に配置することができる。
【0185】
表面機能層については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0186】
6.透明基材
本実施態様における透明基材は、上述した透光部、加飾層、遮光層、中間層、表面機能層等を支持する部材である。本実施態様の加飾フィルムにおいては、表示装置に用いた場合に、加飾フィルムの透明基材側の面とは反対の面側に表示パネルが配置される。
透明基材については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
【0187】
7.支持部材
本実施態様の加飾フィルムは、加飾フィルムのいずれかの面に配置された支持部材を有するものであってもよい。上記支持部材については、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0188】
8.加飾フィルムの物性
本実施態様の加飾フィルムは、所定の透明性を有することが好ましい。加飾フィルムの透明性については、上記第1実施態様と同様とすることができる。
また、本実施態様の加飾フィルムは、第1実施態様と同様に、インサート成形法、インモールド成形法、およびTOM成形法等に用いることができる程度の、熱可塑性、延伸性を有し、成形性に優れるといった特性を有することが好ましい。
【0189】
9.加飾フィルムの製造方法
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、上述した所定の構成を有する加飾フィルムを得ることができる方法であればよいが、透明基材の一方の面に透光部をパターン状に形成する透光部形成工程と、透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に加飾層を形成する加飾層形成工程とを少なくとも有することが好ましい。透光部および加飾層を順に形成することにより、透光部を利用して、加飾層の位置合わせを要することなく、透光部が配置されていない領域のみに確実に加飾層を形成することができる。したがって、短時間で安価に、簡便な工程で開口部を有する加飾層を形成することができる。
【0190】
また、加飾フィルムが遮光層をさらに有する場合には、加飾層形成工程後に、加飾層上に加飾層と同一のパターン状に遮光層を形成する遮光層形成工程を行ってもよい。
【0191】
また、加飾フィルムが遮光層および中間層をさらに有する場合には、加飾層形成工程後に、加飾層上に加飾層と同一のパターン状に中間層を形成する中間層形成工程と、中間層上に加飾層および中間層と同一のパターン状に遮光層を形成する遮光層形成工程とを行ってもよい。
【0192】
以下、加飾フィルムが遮光層および中間層をさらに有する場合であって、透光部形成工程、加飾層形成工程、中間層形成工程および遮光層形成工程の順に行う製造方法について説明する。
【0193】
本実施態様の加飾フィルムの製造方法の具体例としては、透明基材の一方の面に透光部をパターン状に形成する透光部形成工程と、透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に加飾層を形成する加飾層形成工程と、加飾層上に加飾層と同一のパターン状に中間層を形成する中間層形成工程と、中間層上に加飾層および中間層と同一のパターン状に遮光層を形成する遮光層形成工程とを有する。
【0194】
図11(a)~(e)は本実施態様の加飾フィルムの製造方法の一例を示す工程図である。なお、
図11(a)~(e)については、上述したので、ここでの説明は省略する。
【0195】
本実施態様においては、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高いことにより、加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、簡便な工程で加飾層を形成することができる。
【0196】
図15(a)~(d)は本実施態様の加飾フィルムの製造方法の他の例を示す工程図である。まず、
図15(a)に示すように、透明基材2の一方の面に透光部4をパターン状に形成する。この際、後の工程にて加飾層を形成したときに、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高く、かつ遮光層の透明基材からの高さよりも高くなるように、透光部4の厚みが設定される。次に、
図15(b)に示すように、透明基材2の一方の面の透光部4が配置されていない領域に加飾層3をパターン状に形成する。これにより、開口部13を有する加飾層3が得られる。次いで、
図15(c)に示すように、透光部4が配置されていない領域に、かつ加飾層3上に中間層6を形成する。これにより、加飾層3の開口部13と同一のパターン状の開口部16を有する中間層6が得られる。続いて、
図15(d)に示すように、透光部4が配置されていない領域に、かつ中間層6上に遮光層5を形成する。これにより、加飾層3の開口部13および中間層6の開口部16と同一のパターン状の開口部15を有する遮光層5が得られる。
【0197】
このような加飾フィルムの製造方法においては、
図15(b)に示すように、加飾層3を形成する際、透光部4の透明基材2からの高さh1が加飾層3の透明基材2からの高さh2よりも高いため、透光部4を利用して、透光部4が配置されていない領域に加飾層3を容易に形成することができる。また、
図15(c)~(d)に示すように、遮光層5および中間層6を形成する際、透光部4の透明基材2からの高さh1が遮光層5の透明基材2からの高さh3よりも高くなるように、透光部4の厚みが設定されているため、透光部4を利用して、透光部4が配置されていない領域に遮光層5および中間層6を容易に形成することができる。したがって、遮光層5、中間層6および加飾層3の位置合わせを要することなく、透光部4が配置されていない領域のみに確実に遮光層5、中間層6および加飾層3を形成することができる。
【0198】
したがって、透光部の透明基材からの高さが加飾層の透明基材からの高さよりも高く、かつ遮光層の透明基材からの高さよりも高い場合には、遮光層、中間層および加飾層の形成時に位置合わせを要することなく、簡便な工程で遮光層、中間層および加飾層を形成することができる。
【0199】
以下、本実施態様の加飾フィルムの製造方法の各工程について説明する。
【0200】
(a)透光部形成工程
透明基材の一方の面に透光部をパターン状に形成する方法としては、上記第1実施態様における透光部の形成方法と同様とすることができる。
【0201】
(b)加飾層形成工程
透明基材の一方の面の透光部が配置されていない領域に加飾層を形成する方法としては、上記第1実施態様における加飾層の形成方法と同様とすることができる。
【0202】
また、例えば
図15(a)~(d)に示すように、透光部4の透明基材2からの高さh1が遮光層5の透明基材2からの高さh3よりも高い場合には、透光部4の透明基材2からの高さh1と加飾層3の透明基材2からの高さh2との差が比較的大きくなるが、加飾層用組成物の粘度等を調整することにより、透光部が配置されていない領域に加飾層を形成することが可能である。
【0203】
また、加飾層の形成時に、透光部上にも加飾層が形成された場合には、透光部上に位置する加飾層を除去すればよい。透光部上に位置する加飾層を除去する方法としては、上記第1実施態様における加飾層の除去方法と同様とすることができる。
【0204】
(c)中間層形成工程
加飾層上に加飾層と同一のパターン状に中間層を形成する方法としては、上記第1実施態様における中間層の形成方法と同様とすることができる。
【0205】
(d)遮光層形成工程
中間層上に加飾層および中間層と同一のパターン状に遮光層を形成する方法としては、上記第1実施態様における遮光層の形成方法と同様とすることができる。
【0206】
(e)その他の工程
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、上述した工程の他にも、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
【0207】
本実施態様の加飾フィルムの製造方法は、例えば、上記遮光層形成工程後に、遮光層および透光部を覆うように表面機能層を形成する表面機能層形成工程を有していてもよい。表面機能層の形成方法としては、上記第1実施態様における表面機能層の形成方法と同様とすることができる。また、上記第1実施態様と同様に支持部材形成工程を有していてもよい。
【0208】
B.表示装置
本開示の表示装置は、表示パネルと、上記表示パネルの前面に配置された上述の加飾フィルムとを備える装置である。
【0209】
図3および
図10はそれぞれ、本開示の表示装置の一例を示す概略断面図である。なお、
図3および
図10については、上記「A.加飾フィルム」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0210】
本開示によれば、上述した加飾フィルムを有することにより、表示時には表示パネルの情報を表示することができ、非表示時には加飾フィルムの意匠を視認することができる表示装置とすることができる。また、このような表示装置を安価に提供することができる。
【0211】
以下、本開示の表示装置における各構成について説明する。
【0212】
1.加飾フィルム
本開示における加飾フィルムは、上記「A.加飾フィルム」の項に記載した部材と同様である。加飾フィルムを構成する各部材については、上記「A.加飾フィルム」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
【0213】
2.表示パネル
本開示における表示パネルは、情報を表示する部材である。
【0214】
表示パネルとしては、特に限定されるものではなく、例えば、LEDパネル、有機ELパネル、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、電子ペーパー等が挙げられる。また、表示パネルは、単色表示であってもよく、多色表示であってもよい。
【0215】
また、表示パネルに表示される情報は、例えば静止画であってもよく、動画であってもよい。
【0216】
3.用途
本開示の表示装置の用途としては、例えば、自動車等の車両の内装材または外装材が挙げられる。具体的には、車載ディスプレイが挙げられる。
【0217】
また、本開示の表示装置の用途としては、例えば、案内板、広告、看板等のディスプレイとしての用途や、ドアホン、浴室、台所、寝室等のモニターとしての用途、家電の表示部としての用途、表示部が埋め込まれた家具の表示部としての用途、照明器具、窓、ショーウインドウ等の照明または採光としての用途が挙げられる。
【0218】
また、本開示の表示装置の用途としては、例えば、避難経路、火災報知機、警告灯等の警告表示としての用途が挙げられる。
【0219】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0220】
以下に実施例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0221】
(実施例1~3)
実施例1~3は、
図1に示す層構成、すなわち加飾層のみの構成で加飾フィルムを形成したものである。透明基材としては、厚み125μmのアクリルフィルムを用い、加飾層はオフセット印刷により形成した。上記加飾フィルムの透明基材側に400μmのABSフィルムを熱圧着させインサート成形用フィルムとし、このインサート形成用フィルムを用い、インサート成形により厚み2mmの支持部材(ポリカーボネート樹脂およびABS樹脂の混合樹脂)と貼り合わせ、試料を調製した。
透光部の厚み、加飾層の厚み、およびその差(a-(b+c+d)、
図1(b)における(h1-h2))をそれぞれ表1に示す。
【0222】
表1中の評価は、以下の通りである。
実施例1:△(透光部にインキ残りがあるが使用可能)
実施例2:〇(透光部にややインキ残りがあるが使用可能)
実施例3:◎(透光部にインキ残りがなく、また混色も無い)
【0223】
(実施例4~8)
実施例4~8は、
図2に示す層構成、すなわち、加飾層、中間層、および遮光層を有する層構成の加飾フィルムを形成したものである。実施例4の加飾層のみオフセット印刷により形成し、他の加飾層、中間層、および遮光層はスクリーン印刷により形成した。他の点については、上記実施例1~3と同様にして試料を調製した。
透光部の厚み、加飾層、中間層、および遮光層の厚み、およびその差(a-(b+c+d)、
図2(b)における(h1-h2))をそれぞれ表1に示す。
【0224】
表1中の評価は、以下の通りである。
実施例4および5:◎(加飾層にかすれなく、また混色も無い)
実施例6および7:〇(加飾層にややかすれがあるが使用可能)
実施例8:△(加飾層にかすれあるが使用可能)
【0225】
【符号の説明】
【0226】
1 … 加飾フィルム
2 … 透明基材
3 … 加飾層
4 … 透光部
5 … 遮光層
6 … 中間層
7 … 表面機能層
13 … 加飾層の開口部
15 … 遮光層の開口部
16 … 中間層の開口部
h1 … 透光部の透明基材からの高さ
h2 … 加飾層の透明基材からの高さ