(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 30/22 20060101AFI20221122BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B65D30/22 J
B65D33/38
(21)【出願番号】P 2018201785
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美沙子
(72)【発明者】
【氏名】冨手 政寛
(72)【発明者】
【氏名】長尾 将弘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 愛子
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-178442(JP,A)
【文献】特開2001-294249(JP,A)
【文献】特開2013-014366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/22-33/38
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートから成る包装袋であって、
前記樹脂シートを前後に重ねて周縁を閉じて形成され、
内部に収容物を収容可能な収容部と、
前記収容部の内部に配された混合部材と、を備え、
前記樹脂シートは、前方に配置された前面部と、後方に配置された後面部と、を有し、
前記混合部材は、前後に折り曲げられて前記前面部及び前記後面部のそれぞれに固定され、
前記混合部材は、前記収納部を第1収容室と、前記第1収容室と並んで配置された第2収容室とに仕切っており、全域で前記収容物が透過可能であるとともに透過する前記
収容物を細分化可能な構造を有する物質で形成されている包装袋。
【請求項2】
前記周縁に配されて前記収容物の取り出しが可能な注出部をさらに備え、
前記注出部は、前記第1収容室及び前記第2収容室の一方に隣接して配置される請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記周縁に配されて前記収容物の取り出しが可能な注出部をさらに備え、
前記混合部材は、前記抽出部の近傍に配置される請求項1に記載の包装袋。
【請求項4】
前記収容部は、前記混合部材と並んで形成されて前記第1収容室と前記第2収容室とを連通する部分を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載の包装袋。
【請求項5】
前記混合部材は、メッシュ材で形成される請求項1から請求項4のいずれかに記載の包装袋。
【請求項6】
前記混合部材は、多孔質体で形成される請求項1から請求項4のいずれかに記載の包装袋。
【請求項7】
前記収容物は流動性を有するとともに性質が異なる2種以上の物質を含み、
前記樹脂シートは、前記各物質の透過を抑制する材料で形成される請求項1から請求項6のいずれかに記載の包装袋。
【請求項8】
請求項7に記載の包装袋の使用方法において、前記
収容物が前記混合部材を横切って前記第1収容室から前記第2収容室またはその反対に移動するように前記包装袋を振る動作を複数回繰り返して前記収容物を混合する包装袋の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で収容物の混合が可能な包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2005-112451号公報には、2以上の被包装物収容室を有する包装袋が開示されている。この包装袋は、積層フィルムを表裏重ねて外周縁部同士を融着接合している。そして、包装袋には中央縦シール部を挟んで2つの被包装物収容室が画成されている。
【0003】
この包装袋では、仕切りシール部によって画成された被包装物収容室のそれぞれに異なる種類の被包装物が収容される。そして、中央縦シール部を折り曲げた状態で、2つの被包装物収容室に収容されている被収容物を手を汚すことなく同時にまたは個別に取り出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2005-112451号公報に記載の包装袋は、異なる種類の被収容物を収容することが可能であるが、取出し前に被収容物同士を混ぜることはできない。そのため、混ぜた状態で使用したい被収容物を収容している場合、一旦、別の容器に取り出したのち、混ぜて使用する必要があり、使用者の利便性が低い。
【0006】
本発明は、内部で収容物を十分に混合した後に注出可能な包装袋を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、注出前の収容物を包装袋の内部で十分に混合させることができる包装袋の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の包装袋は、樹脂シートから成る。前記包装袋は、内部に前記収容物を収容可能な収容部と、前記収容部の内部に配された混合部材と、を備える。前記混合部材は、前記収容物が透過可能であるとともに透過する前記収納物を細分化可能な構造を有する物質で形成されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、収納物が混合部材を通過するときに収納物が細分化される。これにより、収納物が混合(撹拌)されて、収納物のむらを抑制できる。また、収納物が混合物の場合、混合の効果を高めることができ、使用者の利便性を高めることができる。
【0010】
上記構成において、前記樹脂シートを重ねて周縁を閉じて形成される。前記周縁に配されて前記収容物の取り出しが可能な注出部をさらに備える。前記混合部材は、前記収容部を前記注出部と隣接する部分と隣接しない部分とに分割するように配置されてもよい。このように配置することで、包装袋を上下または回転方向に移動させて振ることで、収納物が混合部材を通過する。これにより、容易に収納物を混合することができ、使用者の利便性を高めることができる。
【0011】
上記構成において、前記混合部材は、前記注出部に隣接して配されてもよい。このように構成することで、注出部から収容物を注出するときに必ず混合部材を通過する。そのため、収容物をより確実に混合(撹拌)することができる。これにより、使用者は、混合(撹拌)のための操作を減らすことができるため、使用者の利便性をより高めることができる。
【0012】
上記構成において、前記樹脂シートは、前記収容部に対して前方に配置される前面部と、背後に配置される後面部と、前記前面部の下部および前記後面部の下部と接着される底面部とを備え、前記混合部材は、前記前面部および前記後面部に固定されてよい。このように構成することで、包装袋を立てて保存することができる。また、底面部が設けられることで、収納物の収納量を多くすることができる。
【0013】
上記構成において、前記混合部材は、メッシュ材であってもよいし、多孔質体であってもよい。
【0014】
上記構成において、前記収容物は流動性を有するとともに性質が異なる2種以上の物質を含み、前記樹脂シートは、前記各物質の透過を抑制する材料で形成されてもよい。
【0015】
上記構成の包装袋の使用方法において、前記収納物が前記混合部材を横切って前記第1収容室から前記第2収容室またはその反対に移動するように前記包装袋を振る動作を複数回繰り返して前記収容物を混合してもよい。包装袋では、収容物を混合するときの作業が簡単であり、使用者の利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の包装袋によると、注出前の収容物を包装袋の内部で十分に混合させることができる。これにより、使用者の利便性を高めることが可能である。
【0017】
また、本発明は、注出前の収容物を包装袋の内部で十分に混合させることができる包装袋の使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1に示す包装袋のII-II線で切断した断面図である。
【
図4】包装袋の第2収容室から第1収容室へ収容物を移動させる動作を示す正面図である。
【
図5】包装袋の第1収容室から第2収容室へ収容物を移動させる動作を示す正面図である。
【
図7】包装袋の第2収容室から第1収容室へ収容物を移動させる動作を示す正面図である。
【
図8】包装袋の第1収容室から第2収容室へ収容物を移動させる動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の包装袋1の正面図である。
図2は、
図1に示す包装袋1のII-II線で切断した断面図である。なお、「上」、「下」、「左」、「右」は、
図1に示す状態を基準とする。また、「前」は
図1において紙面手前とし、「後」は
図1において紙面奥とする。また、
図1に示す包装袋1では、熱接着部21を斜線のハッチング、混合部材43を格子のハッチングで示している。
【0020】
包装袋1は所謂スタンディングパウチにより形成され、袋本体2および注出部3を備える。注出部3は樹脂により形成され、袋本体2の上部に取り付けられる。なお、注出部3の取り付けの詳細については、後述する。
【0021】
袋本体2は透明な樹脂シート100から成り、前面部5、後面部6および底面部8を備える。袋本体2の周縁には樹脂シート100の内面に配した熱接着性樹脂層17(
図2参照)同士を熱接着した熱接着部21が形成される。袋本体2の熱接着部21で囲まれた内部には収容物Sを収容する収容部4が形成される。なお、収容物Sは、収容部4の内部を流動可能であるとともに、注出部3から注出可能な流動性を有する物質である。詳細は後述するが、本実施形態において収容物Sは、液体せっけんと空気とを含む物質である。
【0022】
前面部5と後面部6とは互いに対向して配置したとき、前側から見て、左上部に上側に向かうにつれて右側に向かって傾斜した傾斜部51および傾斜部61を備える。前面部5および後面部6の左右側端の上部、傾斜部51、傾斜部61および上端部を熱接着して熱接着部21が形成される。
【0023】
底面部8は、樹脂シート100を二つ折りして前面部5の下部と後面部6の下部との間に挟まれる。底面部8は、前面部5および後面部6の側端下部および下端部に熱接着部21で熱接着される。なお、袋本体2の上端部は開放され、収容物Sを収容後に熱接着部21により熱接着される。
【0024】
また、底面部8の左右端部の熱接着部21内には複数の未接着の未接着部9が設けられる。未接着部9によって熱接着処理時の熱収縮による底面部8のカール等を防止することができる。
【0025】
ここで、樹脂シート100について説明する。
図3は、樹脂シート100の断面図である。
図3に示すように、樹脂シート100は袋本体2の外側から内側に向かって順に基材層11、中間層15、熱接着性樹脂層17を積層して形成される。基材層11と中間層15とは接着層14を介して接着され、中間層15と熱接着性樹脂層17とは接着層16を介して接着される。
【0026】
基材層11は、例えば、厚さ約9~25μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムにより形成される。なお、基材層11として例えば一軸または二軸に延伸したポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム等の熱可塑性樹脂を用いることができる。印刷層12は基材層11上の所定位置に配したインキにより厚さ約1~5μmに形成される。印刷層12は、例えば、グラビア印刷により形成される。
【0027】
中間層15は例えば厚さ約10~25μmの透明樹脂フィルム15aの下面に透明蒸着膜15bを蒸着した蒸着フィルムにより形成される。これにより、中間層15は透明蒸着膜15bによって水蒸気や酸素等のガスに対してガスバリア性を有する。透明樹脂フィルム15aは例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等により形成される。透明蒸着膜15bはシリカやアルミナ等により形成される。
【0028】
熱接着性樹脂層17は例えば厚さ約25~150μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムにより形成される。対向する熱接着性樹脂層17が互いに熱接着されることにより熱接着部21(
図1、
図2参照)が形成される。また、熱接着性樹脂層17を低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム等により形成してもよい。
【0029】
接着層14および接着層16は例えばアクリル系等の接着剤から成る。基材層11と中間層15とが接着層14を用いたドライラミネート法により接着され、中間層15と熱接着性樹脂層17とが接着層16を用いたドライラミネート法により接着される。なお、エクストルージョンコーター(不図示)等を用いた押出し法により接着層14を介して基材層11と中間層15とを接着し、接着層16を介して中間層15と熱接着性樹脂層17とを接着してもよい。このとき、接着層14および接着層16は、例えば、ポリエチレンフィルム等により形成される。
【0030】
図1に戻り、注出部3について説明する。注出部3は、熱接着部21のうち、傾斜部51と傾斜部61とを接着した部分(以下、傾斜接着部211とする)に取り付けられる。注出部3は、注出部本体31と、蓋部32とを備える。注出部本体31は、傾斜接着部211に取り付けられて袋本体2に固定される。蓋部32は、注出部本体31に着脱可能に取り付けられる。
【0031】
注出部本体31は、接着基部311と、注出口312とを備える。接着基部311は、傾斜接着部211を熱接着するときに、一緒に熱接着される。これにより、接着基部311は、傾斜接着部211に固定される。なお、接着基部311は、上部にリブを備えている。接着基部311において、リブは袋本体2の外部に露出して配置される。これにより、接着基部311は、傾斜接着部211に位置決めされるとともに、ずれが抑制される。
【0032】
注出口312は、接着基部311と一体に成形される。注出口312は、接着基部311の外部に露出した部分、ここでは、リブと連結される。接着基部311および注出口312は、いずれも筒状である。そして、接着基部311の内部の空間と注出口312の内部の空間とは連通している。包装袋1において収容部4は、注出部本体31を介して外部と連通される。これにより、収容部4は注出部3を介して、収容物Sを外部に注出可能な状態となる。すなわち、注出部本体31は、包装袋1の収容部4に収容されている収容物Sを取り出す開口としての役割を果たす。
【0033】
蓋部32は、一端が閉じられた有蓋円筒形状である。注出口312は、外面に不図示の雄ねじを備える。蓋部32の内面は雄ねじと螺合する不図示の雌ねじを備える。蓋部32は注出口312に着脱可能に取り付けられる。蓋部32の脱着によって、注出部3は開閉される。そして、注出部3の開閉により収容部4が開閉される。
【0034】
次に収容部4の詳細について説明する。
図1、
図2に示すように、収容部4は、袋本体2の内部に形成され、収容物Sを収容可能な空間である。収容部4は、第1収容室41と、第2収容室42と、混合部材43とを備える。
【0035】
第1収容室41と第2収容室42とは、それぞれ、上下に並んで配置されている。そして、混合部材43によって、上下に仕切られている。
図1、
図2に示すように、第1収容室41は注出部3と隣接し、第2収容室42は底面部8と隣接する。
【0036】
混合部材43は、収容物Sが透過可能な物質で形成される。ここでは、混合部材43は、不織布であり、収容物Sは混合部材43を通過するときに、混合部材43にて細かく分割(細分化)される。すなわち、収容物Sは、混合部材43によって混合(撹拌)される。本実施形態の包装袋1に収容される収容物Sは、収容部4の内部を流動可能な流動性を有する異なる2種以上の物質を含む構成である。
【0037】
そのため、混合部材43を通過するときに、収容物Sを構成する物質は混合(撹拌)される。混合部材43は、シート状であり、熱接着部21と同様、前面部5と後面部6とに熱接着にて固定される。包装袋1において、混合部材43は前後方向の中央が上になるように折り曲げられて、収容部4の内部に取り付けられる。混合部材43は、複数回折り曲げた形状、いわゆる、アコーディオン状で収容部4の内部に取り付けられてもよい。収容部4の内部に、確実に固定できる構成を広く採用できる。
【0038】
なお、混合部材43は、不織布に限定されず、例えば、スポンジ等の多孔質体、ニット、メッシュ等の格子状の物質等を挙げることができるが、これに限定されない。混合部材43としては、収容物Sが通過するときに、収容物Sを混合(撹拌)することができる物質で形成されたものを広く採用できる。また、混合部材43は、収容部4を第1収容室41と第2収容室42に仕切ることができる構成であればよく、シート状に限定されない。
【0039】
本実施形態にかかる包装袋1は、以上のような構成を備える。次に、包装袋1の使用方法について図面を参照して説明する。
図4は、包装袋1の第2収容室42から第1収容室41へ収容物Sを移動させる動作を示す正面図である。
図5は、包装袋1の第1収容室41から第2収容室42へ収容物Sを移動させる動作を示す正面図である。
図4および
図5において、混合される前の収容物Sは、粗いドットハッチで表示し、混合が行われた収容物Sは、細かいドットハッチで表示している。また、図中の白抜きの矢印は、包装袋1の移動方向および収容物Sの混合部材43内における移動方向を示している。
【0040】
本実施形態において、収容物Sは、液体せっけんと空気とからなる混合物である。なお、空気は、液体せっけんを充填するときに一緒に入った空気であってよい。また、液体せっけんを泡立てるために適切な量の空気を充填してもよい。さらには、酸化等の劣化を抑制するために、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガスを充填してもよい。
【0041】
包装袋1に収容されている収容物Sである液体せっけんは、例えば、顔、手足、体等を洗うために用いられる。このとき、使用者は、液体せっけんを泡立てた後、泡立てられた液体せっけんを対象部分に付着させて洗う。本実施形態の包装袋1では、予め泡立てた液体せっけんを注出部3から注出できる。本実施形態の包装袋1の使用方法の一つである、液体せっけんの泡立て方法、すなわち、収容物の混合方法について説明する。
【0042】
上述したとおり、包装袋1はスタンディングパウチである。例えば、包装袋1は、収納棚等に、起立した状態で収納される。そのため、本実施形態の包装袋1では、使用前の状態において液体せっけんは第2収容室42に収容される。また、空気は、第1収容室41および第2収容室42に溜まっている。
【0043】
図4に示すように、使用者は、手で第1収容室41が上部、第2収容室42が下部となるように包装袋1の側部を把持する。そして、使用者が手を上方に移動した後、手を止めることで慣性力によって液体せっけんは、上方に移動する。このとき、液体せっけんは空気と共に混合部材43を通過し、混合(撹拌)されて第1収容室41に移動する。液体せっけんは表面張力が低いため、液体せっけんと空気とが混合されることで気泡(泡)が発生する。
【0044】
次に、
図5に示すように、使用者が手を下方に移動させた後に、手を止めることで慣性力によって液体せっけんは、下方に移動する。このとき、液体せっけんは空気と共に混合部材43を通過し、混合(撹拌)されて第2収容室42に移動する。さらに、液体せっけんが空気と混合(撹拌)される。これにより、液体せっけんは、第2収容室42に流入するときに泡が小さくなるとともに多くなる(細かくなる)。
【0045】
このように、使用者が、包装袋1を把持した手を上下に移動させることで、包装袋1の内部の収容物S、すなわち、液体せっけんは、泡立つ。なお、上述では、上方への移動後、下方への移動後に停止するとしているが、実際の使用状態では、上方への移動が終了した後、すぐに下方に移動させ、下方への移動が終了した後すぐに上方に移動させる往復動作(振り)を行っている。この場合も、袋本体2の移動方向が切り替わったとき、袋本体2の移動方向と、収容物Sに作用している慣性力の方向が逆になっているため、停止させた時と同じ効果を得ることが可能である。
【0046】
そして、液体せっけんが十分に泡立てられたのちに、使用者は、注出部3の蓋部32を開き、注出口312から泡立てられた液体せっけんを取り出すことができる。これにより、液体せっけんを包装袋1から注出した後、泡立てる道具が不要であるとともに、泡立てる手間を省略できる。また、包装袋1の収容部4の内部に収容されている状態で液体せっけんと空気とを混合する。そのため、使用者は、例えば、子供や知人のために液体せっけんおよび空気(収容物)を混合する場合に、液体せっけん(収容物)に触れることなく泡立て可能である。これらのことから、本実施形態の包装袋を使用することで、使用者の利便性を高めることが可能である。
【0047】
なお、本実施形態において、収容物Sとして、液体せっけんと空気との混合物を例に説明したが、これに限定されない。例えば、しょうゆ、ソース等の調味液のように、従来、液体として使用していた物質に発泡しやすい加工を施し、泡立てて注出するときに用いてもよい。このようにすることで、空気と絡むことで調味液の食感を変更する(例えば、やわらかくする)ことができる。また、泡立てることで表面積が大きくなるため、調味液の使用量を抑えることができる。すなわち、新しい食感を楽しむことができるとともに、健康維持に貢献できる。
【0048】
また、調味液と油を用いるドレッシングのように2種の混ざりにくい液体であってもよい。このような、2種の液体の場合、液体同士を混ぜ合わせることができるとともに、種類によっては乳化させることも可能である。
【0049】
以上示したとおり、収容物Sとしては、包装袋1の内部で十分に混合した後、注出して使用するような物質を広く採用できる。そして、包装袋1としては、複数の物質を混合させたり、液体を気体と混合して泡立てたりして注出される収容物を収容できるものを広く採用できる。
【0050】
本実施形態の包装袋1において、収容物Sは混合部材43を通過するときに、混合される。そして、包装袋1は、前面部5または後面部6の少なくとも一方に、収容物Sの混合状態(上述の液体せっけんの場合、泡立ちの状態)を確認するための窓部を備えていることが好ましい。窓部は、透明な樹脂で形成されており、外部から収容部4の内部を視認できる。このように、窓部を備えることで、使用者は、収容物Sの混合状態を容易に確認でき、使用者の利便性を高めることができる。
【0051】
そして、使用者は、窓部から混合状態を確認して、好みの混合状態(上述の液体せっけんの場合、泡立ちの状態)の収容物Sを注出部3から注出することが可能である。また、、例えば、収容物Sの一部が混合した状態のとき、混合していない収容物Sは、収容部4内で下方に溜まる。このことを利用して、最初、十分に混合された収容物Sを注出部3から注出し、その後、注出部3を下部になるように包装袋1を傾けて混合が不十分な収容物Sを注出してもよい。このようにすることで、十分に混合された収容物Sと、混合されていない(あまりされていない)収容物Sとを同じ場所に注出することが可能である。
【0052】
例えば、収容物Sがコーヒーに添加するミルクとすると、同じコーヒーに液体のミルクと泡立てたミルクの両方を添加することができ、異なる味覚を同時に楽しむことができる。これにより、使用者の利便性が高くなる。なお、収容物Sとしては、コーヒー用のミルクに限定されず、混合しているものおよび混合していないものの両方を使用するような物質を広く採用できる。
【0053】
<第2実施形態>
本実施形態の包装袋の他の例について図面を参照して説明する。
図6は、本実施形態にかかる包装袋1bの正面図である。
図6に示す包装袋1bは、混合部材44が混合部材43と異なる以外、包装袋1と同じ構成を有する。そのため、包装袋1bにおいて、包装袋1と実質上同じ部分については、同じ符号を付すとともに同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0054】
図6に示すように、包装袋1bは、収容部4bを斜めに横切るように混合部材44が配置されている。そして、収容部4bでは、
図6において、混合部材44よりも右側を第1収容室41bとし、左側を第2収容室42bとしている。換言すると、混合部材44を挟んで、注出部3側が第2収容室42bであり、反対側が第1収容室41bである。
【0055】
図6に示すように、包装袋1bでは、混合部材44の下端部は、収容部4bの下端部から離れて配置されている。そのため、収容部4bにおいて、第1収容室41bと第2収容室42bとは、下部で連通している。混合部材44は、混合部材43と同様、シート状であり、折り曲げられて、前面部5および後面部6に固定されている。混合部材44は、混合部材43と同様の特徴を有するものであり、詳細な説明は省略する。
【0056】
次に本実施形態にかかる包装袋1bの使用方法について図面を参照して説明する。
図7は、包装袋1bの第2収容室42bから第1収容室41bへ収容物Sを移動させる動作を示す正面図である。
図8は、包装袋1bの第1収容室41bから第2収容室42bへ収容物Sを移動させる動作を示す正面図である。
図7および
図8において、混合される前の収容物Sは、粗いドットハッチで表示し、混合が行われた収容物Sは、細かいドットハッチで表示している。また、図中の白抜きの矢印は、包装袋1の移動方向および収容物Sの混合部材44内における移動方向を示している。
【0057】
本実施形態において、収容物Sは、液体せっけんと空気とからなる混合物である。なお、空気は、液体せっけんを充填するときに一緒に入った空気であってよい。本実施形態の包装袋1の使用方法の一つである、液体せっけんの泡立て方法、すなわち、収容物の混合方法について説明する。
【0058】
上述したとおり、包装袋1bは、包装袋1と同様、振ることで液体せっけんと空気とが混合部材44を通過し、液体せっけんと空気とが混合(撹拌)されて泡立つ。使用者が包装袋1bを振る場合、
図4および
図5に示すように、長手方向に直線的に往復移動させて振ることが考えられる。また、これ以外にも、例えば、手首を軸周りに回転させることで手のひらで把持した包装袋1bを回転させて振ることも考えられる。本実施形態の包装袋1bでは、回転させて振る場合に用いられる。なお、包装袋1bの外面に、振り方(振る方向)が表示されていてもよい。
【0059】
まず、
図7に示すように、使用者は、注出部3が上部になるように、包装袋1bの側部を把持する。そして、使用者が手を振って包装袋1bを時計回り方向(
図7中CW)に回転させる。この回転によって収容部4b内の液体せっけんは遠心力で上部に移動する。なお、第2収容室42bが第1収容室41bよりも移動方向の後方側、すなわち、時計回り方向CWにおいて後側になるため、液体せっけんの多くが第2収容室42bの上部に移動する。そして、手を止めることで慣性力によって液体せっけんは、時計回り方向CWに移動する。このとき、液体せっけんは空気と共に混合部材44を通過し、混合(撹拌)されて第1収容室41b側に移動する。液体せっけんは表面張力が低いため、液体せっけんと空気とが混合されることで気泡(泡)が発生する。
【0060】
次に、
図8に示すように、使用者が手を反時計回り方向(
図8中CCW方向)に移動させることで、遠心力により液体せっけんは第1収容室41bの上部に移動する。そして、手を止めることで慣性力によって液体せっけんは、反時計回り方向CCWに移動する。このとき、液体せっけんは空気と共に混合部材44を通過し、混合(撹拌)されて第2収容室42bに移動する。さらに、液体せっけんが空気と混合(撹拌)される。これにより、液体せっけんは、第2収容室42bに流入するときに泡が小さくなるとともに多くなる(細かくなる)。
【0061】
そして、液体せっけんが十分に泡立てられた後に、使用者は、注出部3の蓋部32を開き、注出口312から泡立てられた液体せっけんを取り出すことができる。以上のとおり、包装袋1を用いることで、使用者は手を汚すことなく、また、泡立て用の器具を用いることなく、泡立てられた液体せっけんを使用できる。
【0062】
このように、使用者が、手首を軸周りに回転させることで、包装袋1bは回転方向に往復移動される。これにより、包装袋1bの内部の収容物S、すなわち、液体せっけんは、泡立つ。なお、上述では、時計回り方向CWへの移動後、反時計回り方向CCWへの移動後に停止するとしているが、実際の使用状態では、時計回り方向CWへの移動と反時計回り方向CCWの移動は連続して行われる。
【0063】
これにより、収容部4bの内部の収容物Sは、遠心力で、常に収容部4bの上部に位置する。包装袋1bにおいて混合部材44を収容部4bを斜めに横切るように配置することで、1回の移動における混合部材44を収容物Sが通過する範囲を大きくできる。これにより、収容物Sを効率よく混合(撹拌)することができる。なお、混合部材44の形状及び配置については、包装袋1bの移動時における収容物Sの移動に合わせて配置されることが好ましい。具体的には、包装袋1bを回転方向に移動させる場合の半径に沿って配置するとともに、なるべく長くなるように配置することで効率よく混合(撹拌)が可能となる。
【0064】
これ以外の特徴については、第1実施形態と同じである。
<第3実施形態>
本実施形態の包装袋の他の例について図面を参照して説明する。
図9は、本実施形態にかかる包装袋1cの正面図である。
図9に示す包装袋1cは、収容部4cが混合部材45を備える以外、包装袋1と同じ構成を有する。そのため、包装袋1cにおいて、包装袋1と実質上同じ部分については、同じ符号を付すとともに同じ部分の詳細な説明は省略する。なお、包装袋1cの傾斜部51および61の長さは、包装袋1の傾斜部51および61よりも短いが、構成は実質上同じであるため、同じ符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0065】
図9に示すように、包装袋1cの収容部4cは、1つの空間で形成されて内部に配置された混合部材45を備える。
図9に示すように、混合部材45は、収容部4cの注出部3と隣接する部分を囲むように配置される。これにより、収容部4cの内部に収容されている収容物Sが注出部3から注出されるときに、混合部材45を通過する。収容物Sは、混合部材45にて混合(撹拌)されて、注出部3から外部に注出される。例えば、上述と同じく、収容物Sが液体せっけんと空気の場合、混合部材45を通過するときに、液体せっけんと空気とが混合されて泡立てられて、注出部3から注出される。
【0066】
包装袋1cでは、袋本体2を掴み、収容部4cの内部の収容物Sを加圧することで、収容物Sを注出部3から外部に注出させる。このとき、収容物Sは、混合部材45で混合(撹拌)する。収容物Sが混合部材45を通過するときの速度が高いほど、すなわち、収容部4c内部における収容物Sの圧力が強いほど、混合(撹拌)の効果が高い。例えば、収容物Sが液体せっけんと空気の場合、細かい泡が生成される。
【0067】
そして、注出部3の収容物Sが通過する断面積が、ある程度小さい方が、収容部4c内での収容物Sの圧力が高くなる。そのため、包装袋1cでは、注出部3の断面積が、ある程度小さいことが好ましい。
【0068】
なお、混合部材45は、前面部5および後面部6に固定されていてもよいし、注出部3に固定されていてもよい。
【0069】
包装袋1cでは、包装袋を振る等の操作を行わなくても、収容物Sを混合(撹拌)することが可能である。これにより、使用者の利便性が高くなる。また、これ以外の特徴については、第1実施形態および第2実施形態と同じである。
【0070】
なお、第1実施形態から第3実施形態の包装袋1、1b、1cはいずれもスタンディングパウチであるが、これに限定されない。例えば、所謂、四方シール袋、三方シール袋、ピロー袋等により形成されてもよい。
【0071】
また、第1実施形態から第3実施形態の包装袋1、1b、1cはいずれも注出部3を備えた構成であったが、これに限定されない。例えば、熱接着部21にノッチ等の切断補助部を設け、収容物Sを注出するときに切断補助部で袋本体2を引裂いて、注出口を形成するようにしてもよい。さらに、包装袋1cでは、混合部材45を形成される注出口と隣接して配置してよい。
【0072】
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0073】
上述の構成の包装袋1(1b、1c)は、樹脂シート100から成る。包装袋1(1b、1c)は、内部に収容物Sを収容可能な収容部4(4b、4c)と、収容部4(4b、4c)の内部に配された混合部材43(44、45)と、を備える。混合部材43(44、45)は、収容物Sが透過可能であるとともに透過する収容物Sを細分化可能な構造を有する物質で形成されている。
【0074】
このように構成することで、収容物Sが混合部材43(44、45)を通過するときに収納物が細分化される。これにより、収容物Sが混合(撹拌)されて、収容物Sのむらを抑制できる。また、収容物Sが混合物の場合、混合の効果を高めることができ、使用者の利便性を高めることができる。
【0075】
上記構成において、包装袋1(1b、1c)は、樹脂シート100を重ねて周縁を閉じて形成される。そして、周縁には、収容物Sの取り出しが可能な注出部3が配される。混合部材43(44)は、収容部4(4b)を注出部3と隣接する部分41(42b)と隣接しない部分42(41b)とに分割するように配置されてもよい。このように配置することで、包装袋1(1b)を上下または回転方向に移動させて振ることで、収容物Sが混合部材44(45)を通過する。これにより、容易に収容物Sを混合することができ、使用者の利便性を高めることができる。
【0076】
上記構成において、混合部材45は、注出部3に隣接して配されてもよい。このように構成することで、注出部3から収容物Sを注出するときに必ず混合部材45を通過する。そのため、収容物Sをより確実に混合(撹拌)することができる。これにより、使用者は、混合(撹拌)のための操作を減らすことができるため、使用者の利便性をより高めることができる。なお、混合部材45は、注出部3と連結されていてもよい。
【0077】
上記構成において、樹脂シート100は、収容部4(4b、4c)に対して前方に配置される前面部5と、後方に配置される後面部6と、前面部5の下部および後面部6の下部と接着される底面部8とを備え、混合部材43(44、45)は、前面部5および後面部6に固定されてよい。このように構成することで、包装袋1(1b、1c)を立てて保存することができる。また、底面部8が設けられることで、収納物の収納量を多くすることができる。
【0078】
上記構成において、混合部材43(44、45)は、メッシュ材であってもよいし、多孔質体であってもよい。
【0079】
上記構成において、収容物Sは流動性を有するとともに性質が異なる2種以上の物質を含み、樹脂シート100は、各物質の透過を抑制する材料で形成されてもよい。
【0080】
上記構成の包装袋1(1b)の使用方法において、収容物Sが混合部材43(44)を横切って第1収容室41(41b)から第2収容室42(42b)またはその反対に移動するように包装袋1(1b)を振る動作を複数回繰り返して収容物Sを混合してもよい。包装袋1(1b)では、収容物Sを混合するときの作業が簡単であり、使用者の利便性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によると、液体と気体の混合物、異なる2種以上の液体の混合物等、異なる性質を有する複数種の流動体を含む収容物を収容する包装袋に利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 包装袋
1b 包装袋
1c 包装袋
11 基材層
12 印刷層
14 接着層
15 中間層
15a 透明樹脂フィルム
15b 透明蒸着膜
16 接着層
17 熱接着性樹脂層
2 袋本体
21 熱接着部
3 注出部
31 注出部本体
32 蓋部
4 収容部
41 第1収容室
42 第2収容室
43 混合部材
4b 収容部
41b 第1収容室
42b 第2収容室
44 混合部材
4c 収容部
45 混合部材
5 前面部
51 傾斜部
6 後面部
61 傾斜部
8 底面部
9 未接着部
100 樹脂シート
211 傾斜接着部
311 接着基部
312 注出口
CCW 反時計回り方向
CW 時計回り方向
S 収容物