(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
A61G 5/08 20060101AFI20221122BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20221122BHJP
B62K 5/007 20130101ALI20221122BHJP
B62K 15/00 20060101ALI20221122BHJP
B62J 1/12 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61G5/08 703
A61G5/10 703
B62K5/007
B62K15/00
B62J1/12 Z
(21)【出願番号】P 2018206661
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-09-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔公開場所〕 老人ホーム「舘山寺の里」1階ホール 〔公開年月日〕 平成30年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ラージャー ゴピナート
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌祥
(72)【発明者】
【氏名】百目鬼 純
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04613151(US,A)
【文献】特開2016-202483(JP,A)
【文献】米国特許第04025088(US,A)
【文献】特開2017-140205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/08
A61G 5/10
B62K 5/007
B62K 15/00
B62J 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を有する前側ベース、及び該前側ベースに対して後方に配置され、かつ後輪を有する後側ベースを含む移動ベースと、
着座面を有する着座部、及び該着座部を支持する脚部を含み、かつ前記移動ベース上に配置されるシートと
、
前記後側ベース上にて前記シートの後方に配置されるフレームと
を備える移動体であって、
前記前側及び後側ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大及び縮小可能とすべく互いに対して相対的に移動可能に構成され、
前記着座部は、前記ホイールベースを縮小するための前記前側及び後側ベースの相対的な移動に伴う前記脚部の移動によって前方に移動するように構成され、
さらに、前記着座部は、前記ホイールベースを拡大するための前記前側及び後側ベースの相対的な移動に伴う前記脚部の移動によって後方に移動するように構成され
、
前記フレームは、前記移動ベースの拡大状態において、前記着座部と隣接し、かつ前記着座部の着座面を上方に向けて支持するように構成され、前記移動ベースの縮小状態において、前記着座部と離隔するように構成されている、移動体。
【請求項2】
前記脚部が、該脚部を前記前側ベースに対して旋回可能とするように前記前側ベースに取り付けるように構成されるベース取付区域を有し、
前記シートの着座部の前方移動が、前記ホイールベースを縮小するための前記前側ベースの後方移動に伴う前記脚部のベース取付区域の後方移動及び前記脚部の前方旋回によってもたらされ、かつ前記着座部の後方移動が、前記ホイールベースを拡大するための前記前側ベースの前方移動に伴う前記脚部のベース取付区域の前方移動及び前記脚部の後方旋回によってもたらされるように構成されている、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記後側ベース上にて前記シートの後方に配置されるフレームをさらに備え、
前記脚部が、該脚部を前記フレームに対して旋回可能とするように前記フレームに取り付けるように構成されるフレーム取付区域を有し、
前記フレーム取付区域が、前記着座部と前記ベース取付区域との間に位置している、請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記前側及び後側ベースの相対的な前後移動によって、前記移動ベースが、前記ホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも短くするように縮小した縮小状態との間で変化できるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項5】
前記シートの着座部が、前記移動ベースの縮小状態にて前記着座面を前方に向けるように構成されている、請求項4に記載の移動体。
【請求項6】
前記シートから分離して前記移動ベース上に配置される背板をさらに備え、
前記背板は、前記シートの前記着座部が着座位置にある場合に該着座部に対して後方かつ上方に位置する起立位置と、前記起立位置に対して前方に位置する倒伏位置との間で前記シートの移動とは独立して移動可能に構成されており、
さらに、前記背板は、前記起立位置と前記倒伏位置との間で旋回可能となるように、前記フレームに取り付けられている、請求項1に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪及び後輪を有する移動ベースと、この移動ベース上に配置されるシートとを備える移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車椅子、カート等の移動体は、高齢者、要介護者等のユーザの移動手段として用いられている。典型的に、移動体は、前輪及び後輪を有する移動ベースと、この移動ベース上に設置されるシートとを備えていて、ユーザは移動体のシートに着座した状態で移動することができる。そして、移動体については、モータ等の駆動手段によって自走可能な電動車椅子、電動カート等の電動車両が普及してきている。電動車両は、「シニアカー」と呼ばれることもある。
【0003】
このような移動体は、長距離移動の場合には自動車によって搬送されることが多く、この場合、移動体は自動車の荷室等の狭いスペースに収容される。また、移動体は、玄関等の狭いスペースに収容されることが多い。そのため、移動体は折り畳み可能に構成されることがあり、具体的には、移動体は、自走時の安定性を得ることを可能とするように移動ベースを前後方向に拡大させた展開状態と、狭いスペースに収容されることに適するように移動ベースを前後方向に縮小させた折り畳み状態とに変化可能に構成されることがある。
【0004】
折り畳み可能な移動体の一例としては、前輪を有する車体前部と、後輪及びシートを有する車体後部とを備え、シートの着座部の着座面を上方に向けると共に着座部を車体後部に対して一定の位置に固定した状態で、前輪及び後輪間のホイールベースを伸縮させるように車体前部及び車体後部を互いに対して相対的に前後移動可能とした電動車椅子が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した移動体の一例においては、移動体の折り畳み状態で、シートの着座部が、移動体を単にコンパクトサイズとするように着座面を上方に向けた状態で車体後部に対して一定の位置に固定される。しかしながら、着座部は、ユーザが安定的に着座できるように移動体内の広い範囲を占めるので、折り畳み状態の移動体を使用する場合、このような着座部が邪魔になることが多い。すなわち、上記移動体は、折り畳み状態で効率的に使用できていない。また、このような移動体は小回りが利き難くなっている。そのため、移動体は利便性の低いものとなっている。
【0007】
上記実情を勘案すると、移動体においては、折り畳み状態にて効率的に使用可能とし、移動体の利便性を高めることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のような課題を解決するために、一態様に係る移動体は、前輪を有する前側ベース、及び該前側ベースに対して後方に配置され、かつ後輪を有する後側ベースを含む移動ベースと、着座面を有する着座部、及び該着座部を支持する脚部を含み、かつ前記移動ベース上に配置されるシートと、前記後側ベース上にて前記シートの後方に配置されるフレームとを備える移動体であって、前記前側及び後側ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大及び縮小可能とすべく互いに対して相対的に移動可能に構成され、前記着座部は、前記ホイールベースを縮小するための前記前側及び後側ベースの相対的な移動に伴う前記脚部の移動によって前方に移動するように構成され、さらに、前記着座部は、前記ホイールベースを拡大するための前記前側及び後側ベースの相対的な移動に伴う前記脚部の移動によって後方に移動するように構成され、前記フレームは、前記移動ベースの拡大状態において、前記着座部と隣接し、かつ前記着座部の着座面を上方に向けて支持するように構成され、前記移動ベースの縮小状態において、前記着座部と離隔するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る移動体においては、折り畳み状態にて効率的に使用することができ、移動体の利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す前方斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態において、バスケットを搭載した電動車両を展開状態で概略的に示す後方斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態において、バスケットを搭載した電動車両を展開状態で概略的に示す左側面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態において、バスケットを搭載した電動車両を展開及び折り畳み状態間にて移行する途中の状態で概略的に示す左側面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態において、バスケットを搭載した電動車両を折り畳み状態で概略的に示す左側面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態において、バスケットを搭載した電動車両を折り畳み状態で概略的に示す前方斜視図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る電動車両において、着座状態のシート及び起立状態の背板を概略的に示す前方斜視図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る電動車両において、退避状態のシート及び倒伏状態の背板を概略的に示す前方斜視図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態に係る電動車両において、拡大状態の移動ベースを概略的に示す左側面図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態に係る電動車両において、縮小状態の移動ベースを概略的に示す左側面図である。
【
図13】
図13は、第5実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す右側面図である。
【
図14】
図14は、第5実施形態に係る電動車両の移動ベース及びその周辺部分を概略的に示す前方斜視図である。
【
図15】
図15は、第5実施形態において、バスケットを搭載した電動車両を展開及び折り畳み状態間にて移行する途中の状態で概略的に示す後方斜視図である。
【
図16】
図16は、第5実施形態に係る電動車両を、展開及び折り畳み状態間にて移行する途中の状態で概略的に示す右側面図である。
【
図17】
図17は、第5実施形態に係る電動車両を折り畳み状態で概略的に示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1~第5実施形態に係る移動体について以下に説明する。このような移動体は1人乗りであるとよく、さらに、移動体は、それに設置されるシートを移動体の外部に開放するように構成されるとよい。例えば、移動体は、車椅子、カート等とすることができ、特に、移動体は、1人乗り車椅子、1人乗りカート等とすることができる。しかしながら、移動体は、これらの構成に限定されない。
【0012】
また、移動体は、電動駆動により走行可能に構成された電動車両であるとよく、各実施形態においては、移動体が電動車両である場合について説明する。具体的には、各実施形態に係る電動車両は電動カート、特に、1人乗り電動カートとなっている。しかしながら、電動車両は、これに限定されず、電動カート以外であってもよい。例えば、電動車両は、電動車椅子、特に、1人乗り電動車椅子とすることもできる。以下においては、電動車両を必要に応じて単に「車両」と呼ぶ。
【0013】
なお、本実施形態の説明に用いられる図面について、
図1、
図2、及び
図4~
図17においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ矢印F及び矢印Rによって示す。すなわち、車両前後方向は、矢印F及び矢印Rによって示される。
図1、
図3、
図4、
図8~
図10、
図14、及び
図15においては、車両幅方向を矢印Wによって示す。
図1~
図17においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ矢印U及び矢印Lによって示す。すなわち、車両上下方向は、矢印U及び矢印Lによって示される。
【0014】
「第1実施形態」
図1~
図8を参照して、第1実施形態に係る電動車両について説明する。
【0015】
「電動車両の概略について」
本実施形態に係る電動車両の概略について説明する。
図1~
図4に示すように、車両は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベース1を有する。車両は、移動ベース1上に配置される1つのシート2を有する。特に、かかるシート2は1人乗り用となっている。しかしながら、車両のシートは、これに限定されない。
図1、
図2及び
図4に示すように、車両は、移動ベース1上にてシート2に対して車両後方に位置するフレーム3を有する。
【0016】
車両は、この車両に搭乗するユーザの背もたれとして用いることができるように構成される背板4を有する。背板4は移動ベース1上に配置される。車両は、シート2に対してシート幅方向の両側にそれぞれ位置する2つのアームレスト5を有する。なお、シート幅方向は車両幅方向と略一致する。各アームレスト5もまた移動ベース1上に配置される。しかしながら、車両は、シートに対してシート幅方向の少なくとも一方にアームレストを有することもできる。
【0017】
図1及び
図4に示すように、車両は、それを操作可能とするように構成される前側操作装置6及び後側操作装置7を有する。後側操作装置7は、前側操作装置6に対して車両後方に配置される。前側及び後側操作装置6,7のそれぞれは、ユーザ、補助者等が、車両を走行駆動させるための操作、車両を操舵するための操作、車両の速度を調節するための操作、車両を制動するための操作等を行うことができるように構成されている。特に明確に図示はしないが、前側及び後側操作装置6,7のそれぞれは、車両を操作可能とするように構成されたジョイスティック、タッチパネル、ステアリング等を有するとよい。
図2及び
図4に示すように、車両は、シート2の位置を検知可能に構成される検知装置8を有する。
【0018】
図1~
図4に示すように、かかる電動車両において、移動ベース1は、2つの前輪11と、これらの前輪11に対して車両後方に間隔を空けて位置する2つの後輪12を有する。前輪11及び後輪12は車両の走行輪となっている。しかしながら、移動ベースは、少なくとも1つの前輪と2つ以上の後輪とを有するか、又は2つ以上の前輪と少なくとも1つの後輪とを有していればよい。
【0019】
図1、
図2及び
図4に示すように、移動ベース1はまた、上記前輪11を有する前側ベース13と、上記後輪12を有する後側ベース14とを含む。後側ベース14は、前側ベース13に対して車両後方に配置される。
図1及び
図5~
図8に示すように、移動ベース1は、前輪11及び後輪12間のホイールベースHを拡大及び縮小させるように変化可能に構成されている。言い換えれば、移動ベース1の前側及び後側ベース13,14が、ホイールベースHを拡大及び縮小可能とすべく、互いに対して相対的に移動可能に構成される。
【0020】
前側及び後側ベース13,14の相対的な移動によって、移動ベース1は、ホイールベースHを拡大した拡大状態と、ホイールベースHを拡大状態よりも短くするように縮小した縮小状態との間で変化できる。さらに、かかる移動ベース1においては、ホイールベースHを拡大及び縮小させるために、後輪12が駆動し、かつ前輪11が停止するように構成されている。すなわち、ホイールベースHを拡大するときには、後輪12が後側ベース14を車両後方に移動させるように回転駆動し、かつ前輪11が前側ベース13を一定の位置に留めるように停止する。また、ホイールベースHを縮小するときには、後輪12が後側ベース14を車両前方に移動させるように回転駆動し、かつ前輪11が前側ベース13を一定の位置に留めるように停止する。しかしながら、移動ベースは、ホイールベースを拡大及び縮小させるために、前輪が駆動し、かつ後輪が停止するように構成されてもよい。
【0021】
図1~
図4に示すように、シート2は、着座面21aを有する着座部21と、この着座部21を支持することができる2つの脚部22とを含む。2つの脚部22は、互いにシート幅方向に間隔を空けるように配置される。しかしながら、シートは、少なくとも1つの脚部を有するように構成することもできる。
【0022】
図1及び
図5~
図8に示すように、シート2は、ホイールベースHの拡大及び縮小に応じて移動可能となるように移動ベース1に取り付けられている。かかるシート2においては、着座部21は、ホイールベースHを縮小するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動に伴う脚部22の移動によって前方に移動するように構成されている。着座部21はまた、ホイールベースHを拡大するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動に伴う脚部22の移動によって後方に移動するように構成されている。
【0023】
さらに、シート2は、着座部21が着座面21aを車両上方に向けるように配置された着座位置と、着座部21が着座位置から車両前方に退避した退避位置との間で移動可能に構成されている。着座部21は、移動ベース1の拡大状態にて着座位置に配置される。また、着座部21は、移動ベース1の縮小状態にて退避位置に配置される。
【0024】
図2及び
図3に示すように、脚部22は、この脚部22を前側ベース13に対して旋回可能とするように前側ベース13に取り付ける構成であるベース取付区域22aを有する。
図1及び
図5~
図8に示すように、着座部21の車両前方側移動は、ホイールベースHを縮小するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動に伴う脚部22のベース取付区域22aの車両後方側移動及び脚部22の車両前方側旋回によってもたらされる。着座部21は、その車両前方側移動によって、着座位置から退避位置に移動できる。
【0025】
そして、ホイールベースHを拡大するための前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動によって、脚部22のベース取付区域22aの車両前方側移動及び脚部22の車両後方側旋回がもたらされ、これによって、着座部21の車両後方側移動がもたらされる。着座部21は、その車両後方側移動によって退避位置から着座位置に移動できる。
【0026】
図1、
図2及び
図4に示すように、フレーム3は、着座位置にある場合の着座部21に対して車両後方に隣接するように配置される。フレーム3はまた、移動ベース1の拡大状態で着座位置にある着座部21を支持するように構成されている。
【0027】
背板4は、着座位置にある場合の着座部21に対して車両後方かつ車両上方に位置する起立位置と、この起立位置に対して車両前方に位置する倒伏位置との間で移動可能に構成されている。
図7及び
図8に示すように、退避位置にある着座部21は、このような倒伏位置にある背板4を支持するように構成されている。さらに、
図2に示すように、背板4は、起立位置と倒伏位置との間で旋回可能となるようにフレーム3に取り付けられている。
【0028】
前側操作装置6は、2つのアームレスト5の一方によって支持されている。しかしながら、前側操作装置は、2つのアームレスト両方によって支持されてもよい。後側操作装置7は、起立位置にある場合の背板4に対して車両後方に配置される。前側操作装置6は、着座部21及び背板4がそれぞれ着座位置及び起立位置にある状態で車両を操作できる。後側操作装置7は、着座部21及び背板4がそれぞれ退避位置及び倒伏位置にある状態で車両を操作できる。
【0029】
図1及び
図5~
図8に示すように、車両は、着座位置にあるシート2が移動したことを検知装置8によって検知したときに、移動ベース1がホイールベースHを縮小させるための変化を開始するように構成されている。車両は、退避位置にあるシートが移動したことを検知装置8によって検知したときに、移動ベース1がホイールベースHを拡大させるための変化を開始するように構成されている。
【0030】
図1、
図2及び
図4~
図8に示すように、かかる検知装置8は、着座位置にあるシート2に対応するように配置される第1センサ8aと、退避位置にあるシート2に対応するように配置される第2センサ8bとを有する。しかしながら、シートがホイールベースの拡大及び縮小に応じて移動可能である場合には、第1センサは、拡大状態にある移動ベースがホイールベースを縮小するための変化を開始したことを検知できるように配置されてもよい。また、第2センサは、縮小状態にある移動ベースがホイールベースを拡大するための変化を開始したことを検知できるように配置されてもよい。さらに、検知装置が、着座位置にあるシートの移動開始と、退避位置にあるシートの移動開始との両方を検知可能に構成された1つのセンサを有してもよい。
【0031】
図1及び
図5~
図8に示すように、車両は、移動ベース1が拡大状態にあり、かつシート2が着座位置にあるときに展開状態となる。車両は、展開状態では、ユーザが搭乗した状態で前側操作装置6を操作することによって走行可能である。車両は、展開状態では、ユーザ、補助者等が車両後方に位置する状態で後側操作装置7を操作することによって走行可能である。車両は、展開状態では、ユーザ、補助者等が車両後方に位置する状態で車両を手押しすることによっても走行可能である。かかる車両は、展開状態では、車椅子、カート等として用いることができる。
【0032】
また、車両は、移動ベース1が縮小状態にあり、かつシートが退避位置にあるときに折り畳み状態となる。車両は、折り畳み状態では、ユーザが車両後方に位置した状態で後側操作装置7を操作することによって走行可能である。また、車両は、折り畳み状態では、ユーザが車両後方に位置した状態で車両を手押しすることによっても走行可能である。かかる車両は、折り畳み状態では、歩行補助車、ショッピングカート、台車等として用いることができる。
【0033】
「移動ベースの詳細について」
移動ベース1は詳細には次のように構成されるとよい。
図5~
図7に示すように、移動ベース1の前側及び後側ベース13,14は、互いに対して相対的に車両前後方向にて略直線的にスライド可能になっている。特に、移動ベースの拡大状態及び縮小状態間におけるホイールベースHの長さの差は、シート2のシート前後方向の最大長さに対して半分以上かつ同最大長さ以下であるとよい。この場合、車両が、移動ベース1を拡大状態とした展開状態にて、搭乗するユーザを安定的に支えながら安定的に走行することができ、かつ車両が、移動ベースを縮小状態とした折り畳み状態にて、コンパクトになると共に小回りできるようになる。
【0034】
図1及び
図3に示すように、移動ベース1の前側ベース13は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される2つの前側サイドメンバ13aを有する。2つの前輪11は、それぞれ、車両幅方向に延びる回転軸線11aを中心に回転可能となるように2つの前側サイドメンバ13aの車両前後方向の前端部に取り付けられる。
【0035】
特に明確に図示はしないが、前側ベース13には、2つの前輪11を制動可能とするように構成される制動装置が搭載される。例えば、制動装置は、各前輪11に対して車両幅方向に隣接するソレノイドロック機構を有することができる。ソレノイドロック機構は、直線状に進退可能な可動子を有し、可動子が、前輪11に係止する前進位置と、前輪11から離脱する後退位置との間で移動可能に構成されるとよい。しかしながら、制動装置は、これに限定されない。
【0036】
図1~
図3に示すように、前側ベース13はまた、2つの前側サイドメンバ13aの前端部を連結するように車両幅方向に延びる前側クロスメンバ13bを有する。前側ベース13は、2つの前側サイドメンバ13aの下面を連結するように車両幅方向に延びる前側プレート13cを有する。前側ベース13には、車両の電力供給源であるバッテリ15と、車両を電気的に制御するための制御装置16とが搭載される。バッテリ15及び制御装置16は、車両幅方向にて2つの前側サイドメンバ13a間に配置され、かつ前側クロスメンバ13bに対して車両後方に配置される。バッテリ15及び制御装置16は、前側プレート13c上に載置される。
【0037】
図1及び
図3に示すように、移動ベース1の後側ベース14は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される2つの後側サイドメンバ14aを有する。2つの後輪12は、それぞれ、車両幅方向に延びる回転軸線12aを中心に回転可能となるように2つの後側サイドメンバ14aの車両前後方向の後端部に取り付けられる。特に明確に図示はしないが、後側ベース14は、各後輪12を回転駆動するための駆動モータを有する。例えば、駆動モータは各後輪12と車両幅方向に隣接するように配置されるか、又は駆動モータは各後輪12に内蔵されるとよい。しかしながら、駆動モータは、これに限定されない。
【0038】
バッテリ15と制御装置16と駆動モータとは互いに電気的に接続されている。また、制御装置16は、検知装置8、特に、検知装置8の第1及び第2センサ8a,8bと電気的に接続されている。
【0039】
図1及び
図4に示すように、各後側サイドメンバ14aは、この後側サイドメンバ14aから車両幅方向の外側に突出するように形成されるガイド部14bを有する。ガイド部14bは、車両前後方向に略直線状に延びる。ガイド部14bの車両前後方向の前端は、後側サイドメンバ14aの車両前後方向の前端と略一致するように位置する。ガイド部14bの車両前後方向の後端は、後輪12の近傍に位置する。
【0040】
図2に示されるように、各後側サイドメンバ14aには、その後側サイドメンバ14aを車両幅方向に貫通するようにガイド長孔14cが形成される。ガイド長孔14cは、車両前後方向に略直線状に延びる。ガイド長孔14cはガイド部14bと略平行に延びる。
【0041】
図1~
図4に示すように、移動ベース1は、前側ベース13が後側ベース14に対して車両前後方向に移動することをガイドするように構成されたベースガイド17を有する。具体的には、移動ベース1は2つのベースガイド17を有し、これら2つのベースガイド17がそれぞれ2つの前側サイドメンバ13aにおける車両前後方向の後端部に取り付けられている。
【0042】
図3に示すように、各ベースガイド17は、車両幅方向の中央に向かって開口する略U字形状に形成されている。各ベースガイド17は、車両幅方向の外側に位置する基部17aと、この基部17aから車両幅方向の中央に向かって延びる上側及び下側アーム部17b,17cとを有する。上側アーム部17bは、下側アーム部17cに対して車両下方に間隔を空けて配置されている。
【0043】
各ベースガイド17において、基部17aは前側サイドメンバ13aの後端部に取り付けられる。さらに、ベースガイド17は、前側ベース13が後側ベース14に対して車両前後方向に移動するときに後側サイドメンバ14aのガイド部14bに沿って移動する。より具体的には、ベースガイド17の上側アーム部17bはガイド長穴17c内を車両前後方向に摺動し、かつ下側アーム部17cはガイドの下側に沿って車両前後方向に摺動する。
【0044】
図5に示すように、ベースガイド17は、移動ベース1の拡大状態で後側サイドメンバ14aの車両前後方向の前端部に位置する。
図7に示すように、ベースガイド17は、移動ベース1の縮小状態で後輪12の近傍に位置する。より具体的には、ベースガイド17は、移動ベース1の縮小状態では、後輪12との接触を防ぎながら後輪12と最も接近できるように後輪12に対して車両前方に位置する。
【0045】
図1、
図2及び
図4に示すように、後側ベース14は、車両にバスケットK(
図4に示す)を搭載可能とするように構成される棚板18を有する。棚板18は、2つの後側サイドメンバ14aを橋渡し、かつ2つの後側サイドメンバ14aによって支持される。棚板18は、2つの後側サイドメンバ14aに対して車両上方に配置される。
【0046】
「シートの詳細について」
シート2は詳細には次のように構成されるとよい。
図5に示すように、シート2は、着座位置にある状態で、着座部21の着座面21aを実質的に車両水平方向に沿わせるように配置される。また、着座部21は、着座位置にある状態で、棚板18に対して車両上下方向に間隔を空け、かつ棚板18の真上に位置する。棚板18と着座部21との間には、バスケットKを収容可能とするような荷物収容空間Sが形成される。
【0047】
シート2はまた、退避位置にある状態で、着座部21の着座面21aを、車両上下方向及び車両幅方向に広がる平面に対して所定の角度に向けるように配置される。かかる角度は絶対値で約30°以下であるとよい。しかしながら、着座面の角度は、これに限定されない。また、着座部21は、退避位置にある状態で、荷物収容空間Sを維持しながら棚板18に対して車両前方に配置される。
【0048】
図6及び
図7に示すように、着座部21のシート前後方向の後端は自由端となっている。なお、シート前後方向は、シート幅方向に略直交し、かつ着座部21の正面及び背面間で延びる方向とする。
【0049】
図1~
図4に示すように、着座部21は、互いにシート幅方向に間隔を空けて配置される2つのシートサイドメンバ23を有する。2つのシートサイドメンバ23は、それぞれ、シート幅方向にて2つの脚部22に対応するように位置する。2つのシートサイドメンバ23はまた、着座面21aに対してシート上下方向の下方に位置する。なお、シート上下方向は、シート前後方向及びシート幅方向に略直交する方向とする。各シートサイドメンバ23はシート前後方向に延びる。
【0050】
図7及び
図8に示すように、シート2は、このシート2及び背板4がそれぞれ退避位置及び倒伏位置にある状態で背板4を支持するように構成される背板支持機構24を有する。背板支持機構24は、各シートサイドメンバ23からシート上下方向の下方に突出するように形成される。
【0051】
着座部21は、シート前後方向にて背板支持機構24とシートサイドメンバ23の後端との間で延びる衝立区域21bを有する。シート2及び背板4がそれぞれ退避位置及び倒伏位置にある状態で、衝立区域21bは背板4から車両上方に突出し、かかる衝立区域21bは、背板4上に載置された荷物の衝立として機能することができる。
【0052】
着座部21は、そのシート前後方向の後端区域をシート上下方向に貫通する取っ手孔21cを有する。取っ手孔21cは、シート幅方向に延びる細長形状となっている。ユーザは、指を取っ手孔21cに挿入した状態で着座部21の後端区域を掴むことができる。
【0053】
図1~
図3に示すように、2つの脚部22は、着座部21からシート上下方向の下方に向かって延びる。より具体的には、2つの脚部22は、それぞれ、2つのシートサイドメンバ23からシート上下方向の下方に向かって延びる。各脚部22のベース取付区域22aは、その脚部22のシート上下方向の下端に位置する。
【0054】
図2に示すように、ベース取付区域22aは、車両幅方向に延びる旋回シャフト22bを有する。ベース取付区域22aは、脚部22が旋回シャフト22bを中心に前側サイドメンバ13aに対して旋回可能となるように、旋回シャフト22bを用いて前側サイドメンバ13aに取り付けられる。より具体的には、ベース取付区域22aはベースガイド17に取り付けられるとよい。
【0055】
旋回シャフト22bは、後側サイドメンバ14aのガイド長孔14cに挿入されたベースガイド17の上側アーム部17cに取り付けられる。前側ベース13が後側ベース14に対して車両前後方向に移動するときに、旋回シャフト22bはガイド長孔14c内を車両前後方向に移動する。
【0056】
図1~
図4に示すように、シート2は、前側及び後側ベース13,14の相対的な車両前後方向の移動とシート2の移動とを連動させるように構成されたリンク部材25を有する。具体的には、シート2は2つのリンク部材25を有する。
【0057】
リンク部材25は、後側ベース14の後側サイドメンバ14aに取り付けられるベース側取付部25aを有する。ベース側取付部25aは、後側サイドメンバ14aに対して車両幅方向に延びる旋回軸線25bを中心に旋回可能となるように後側サイドメンバ14aに取り付けられる。ベース側取付部25aは、脚部22のベース取付区域22aに対して車両前方に位置する。ベース側取付部25aは、後側サイドメンバ14aの車両前後方向の前端部に取り付けられる。
【0058】
リンク部材25はまた、シート2の脚部22に取り付けられるシート側取付部25cを有する。シート側取付部25cは、ベース側取付部25aと間隔を空けて配置される。シート側取付部25cは、脚部22に対して車両幅方向に延びる旋回軸線25dを中心に旋回可能となるように脚部22に取り付けられる。より具体的には、シート側取付部25cは、脚部22のシート上下方向の中間部に取り付けられる。
【0059】
図5~
図7に示すように、着座部21の車両前方側移動のために、後側ベース14に対する前側ベース13の車両後方側の移動に伴って脚部22のベース取付区域22aが車両後方側に移動するときに、リンク部材25は脚部22の車両前方側旋回を促すようになっている。また、着座部21の車両後方側移動のために、後側ベース14に対する前側ベース13の車両前方の移動に伴って脚部22のベース取付区域22aが車両前方側に移動するときに、リンク部材25は脚部22の車両後方側旋回を促すようになっている。
【0060】
「フレームの詳細について」
フレーム3は詳細には次のように構成されるとよい。
図1、
図2及び
図4に示すように、フレーム3は、シート2に対して車両後方にてシート2に隣接するように配置される。フレーム3は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される2つの支柱31を有する。2つの支柱31は、それぞれ、車両幅方向にて後側ベース14の2つの後側サイドメンバ14aに対応するように配置される。2つの支柱31はまた、それぞれ、車両幅方向にてシート2の着座部21における2つのシートサイドメンバ23に対応するように配置される。各支柱31は、車両上下方向に沿って配置される。支柱31の車両上下方向の下端部は後側サイドメンバ14aの車両前後方向の後端部に取り付けられる。
【0061】
フレーム3は、着座位置にあるシート2の着座部21の後端を支持可能に構成されるシート支持機構32を有する。より具体的には、フレーム3は、それぞれ2つの支柱31における車両上下方向の中間部に配置される2つのシート支持機構32を有する。2つの支持機構32は、それぞれ、着座部21の2つのシートサイドメンバ23におけるシート前後方向の後端を支持する。さらに、シート支持機構32は、支柱31の中間部から車両前方に突出するように形成することができる。この場合、シート支持機構32は、車両下方から車両上方に向かって着座部21の後端を支持する。
【0062】
フレーム3は、2つの支柱31における車両上下方向の上端部を連結するように車両幅方向に延びる連結部材33を有する。背板4が起立位置にある状態で、連結部材33は、この背板4と当接するように背板4に対して車両後方に位置する。後側操作装置7は、かかる連結部材33に取り付けられている。
【0063】
「背板の詳細について」
背板4は詳細には次のように構成されるとよい。
図5に示すように、背板4は、起立位置にある状態で車両幅方向及び車両上下方向に広がる平面に沿って配置される。背板4はまた、倒伏位置にある状態で車両水平方向に沿って配置される。背板4は、倒伏位置にある状態で、棚板18に対して車両上下方向に間隔を空け、かつ棚板18の真上に位置する。背板4と棚板18との間においても、バスケットKを収容可能とするような荷物収容空間Sが維持される。
【0064】
図1、
図2及び
図4に示すように、背板4は略平板形状に形成される。背板4は、起立位置にある状態で、それぞれ車両上下方向の下端側及び上端側に位置する基端部4a及び先端部4bを有する。背板4の基端部4aは、背板4を車両幅方向に延びる旋回軸線3cを中心に旋回可能とするようにフレーム3の2つの支柱31に取り付けられる。より具体的には、背板4の基端部4aは、2つの支柱31における車両上下方向の中間部に取り付けられる。背板4の基端部4aは、フレーム3の支柱31のシート支持機構32に対して車両上方に位置する。
【0065】
背板4の先端部4bは自由端となっている。かかる背板4の先端部4bは、起立位置と倒伏位置との間で旋回軸線4cを中心に旋回可能となる。さらに、シート2が退避位置にあり、かつ背板4が倒伏位置にある状態で、背板4の先端部4bは、シート2の脚部22の背板支持機構24によって支持される。
【0066】
「アームレストの詳細について」
アームレスト5は詳細には次のように構成されるとよい。
図1、
図2及び
図4に示すように、アームレスト5は、車両前後方向に延びるように形成される。アームレスト5は、シート2の着座部21に対して車両上方にて間隔を空けるように位置する。2つのアームレスト5は、それぞれ、フレーム3の2つの支柱31に取り付けられる。より具体的には、アームレスト5の車両前後方向の後端部が、支柱31の車両上下方向の中間部に取り付けられる。
【0067】
アームレスト5の後端部は、支柱31のシート支持機構32及び背板4の基端部4aに対して車両上方に位置する。2つのアームレスト5のうち一方が、前側操作装置6を取り付けるための前側取付部51を有する。前側取付部51は、2つのアームレストのうち一方における車両前後方向の前端部に取り付けられている。
【0068】
「検知装置の詳細について」
検知装置8は詳細には次のようになっているとよい。
図2に示すように、検知装置8の第1センサ8aは、フレーム3のシート支持機構32に配置される位置センサ8aとすることができる。かかる第1センサ8aは、着座位置にあるシート2における着座部21の後端の位置、特に、着座部21におけるシートサイドメンバ23の後端の位置を検知可能に構成されるとよい。
【0069】
しかしながら、第1センサは、これに限定されない。例えば、第1センサは、脚部のベース取付区域に配置される角度センサとすることもできる。また、第1センサが、拡大状態にある移動ベースがホイールベースを縮小するための変化を開始したことを検知できるように配置される場合には、例えば、第1センサは、拡大状態にある移動ベースにおける前側ベースのベースガイドの位置を検知できるように、後側ベースの車両前後方向の前端部に配置することができる。さらに、第1センサは、接触式のスイッチとすることもできる。
【0070】
検知装置8の第2センサ8bは、移動ベース1における後側ベース14の車両前後方向の前端部に配置される位置センサ8bとすることができる。かかる第2センサ8bは、退避位置にあるシート2における脚部22の上端部の位置を検知可能に構成されるとよい。
【0071】
しかしながら、第2センサは、これに限定されない。例えば、第2センサは、脚部のベース取付区域に配置される角度センサとすることもできる。また、第2センサが、縮小状態にある移動ベースがホイールベースを拡大するための変化を開始したことを検知できるように配置される場合には、例えば、第2センサは、縮小状態にある移動ベースにおける前側ベースのベースガイドの位置を検知できるように、後側ベースの車両前後方向の後端部にて後輪に対して車両前方に配置することができる。さらに、第2センサは、接触式のスイッチとすることもできる。
【0072】
なお、検知装置が、着座位置にあるシートの移動開始と、退避位置にあるシートの移動開始との両方を検知可能に構成された1つのセンサを有する場合には、かかる1つのセンサは、脚部のベース取付区域に配置される角度センサであってもよい。
【0073】
「車両の変形動作の一例について」
本実施形態に係る車両の変形動作の一例について説明する。最初に、車両が展開状態から折り畳み状態に変形する動作について説明する。車両の展開状態では、移動ベース1が拡大状態にあり、かつシート2が着座位置にある。ユーザが、着座位置から退避位置に向けてシート2の移動を手動で開始させると、検知装置8、特に、第1センサ8aが、着座位置からのシート2の移動開始を検知する。かかる検知装置8の検知が制御装置16に伝えられる。
【0074】
制御装置16は、移動ベース1を拡大状態から縮小状態に変化させるべく、ホイールベースHを縮小させるように前側及び後側ベース13,14を互いに対して相対的に車両前後方向に移動させる。具体的には、例えば、制御装置16は、ホイールベースHを縮小させるべく、前輪11を停止させるように制動装置を制御し、かつ後輪12を駆動させるように駆動モータを制御する。このような前側及び後側ベース13,14の相対的な移動は、移動ベース1が縮小状態になると停止される。
【0075】
次に、車両が折り畳み状態から展開状態に変形する動作について説明する。車両の折り畳み状態では、移動ベース1が縮小状態にあり、かつシート2が退避位置にある。ユーザが、退避位置から着座位置に向けてシート2の移動を手動で開始させると、検知装置8、特に、第2センサ8bが、退避位置からのシート2の移動開始を検知する。かかる検知装置8の検知が制御装置16に伝えられる。
【0076】
制御装置16は、移動ベース1を縮小状態から拡大状態に変化させるべく、ホイールベースHを拡大させるように前側及び後側ベース13,14を互いに対して相対的に車両前後方向に移動させる。具体的には、例えば、制御装置16は、ホイールベースHを拡大させるべく、前輪11を停止させるように制動装置を制御し、かつ後輪12を駆動させるように駆動モータを制御する。このような前側及び後側ベース13,14の相対的な移動は、移動ベース1が拡大状態になると停止される。
【0077】
以上、本実施形態の一態様に係る移動体は、前輪11を有する前側ベース13、及び該前側ベース13に対して車両後方に配置され、かつ後輪12を有する後側ベース14を含む移動ベース1と、着座面21aを有する着座部21、及び該着座部21を支持する脚部22を含み、かつ移動ベース1上に配置されるシート2とを備え、前側及び後側ベース13,14が、前輪11及び後輪12間のホイールベースHを拡大及び縮小可能とすべく互いに対して相対的に前後移動可能であり、着座部21は、ホイールベースHを縮小するための前側及び後側ベース13,14の相対的な前後移動に伴う脚部22の移動によって前方に移動可能であり、さらに、着座部21は、ホイールベースHを拡大するための前側及び後側ベース13,14の相対的な前後移動に伴う脚部22の移動によって後方に移動可能である。
【0078】
かかる移動体においては、移動ベース1が、移動体を安定的に走行可能とするようにホイールベースHを拡大した拡大状態と、移動体を小回り可能とするようにホイールベースHを縮小した縮小状態とに変化可能となるように、前側及び後側ベース13,14が互いに対して相対的に前後移動可能である。そして、かかる移動ベース1が縮小状態から拡大状態に向かって変化するときに、前側ベース13の前方移動に伴うシートの脚部22の移動によって、シート2の着座部21が、移動ベース1の縮小状態にて配置される退避位置から、移動ベース1の拡大状態にて配置される着座位置に向かって前方に移動することができる。移動ベース1の拡大状態では、着座部21が、移動体内の空間(以下、「着座空間」という)を占有した状態で安定的に維持されるので、ユーザが安定的に着座部21に着座することができる。そのため、ユーザが安定的に着座できるようにシート2の着座部21が着座位置にあり、かつ移動体が安定的に走行できるように移動ベース1が拡大状態にあるような移動体の展開状態を容易にもたらすことができる。
【0079】
その一方で、移動ベース1が拡大状態から縮小状態に向かって変化するときに、前側ベース13の後方移動に伴うシート2の脚部22の移動によって、シート2の着座部21が、移動ベース1の拡大状態にて配置される着座位置から、移動ベース1の縮小状態にて配置される退避位置に向かって前方に移動することができる。かかる移動ベース1の縮小状態では、着座部21は、着座空間から退避するように前方に移動するので、縮小状態の移動ベース1上において、着座空間に買い物かご等の荷物を載置することができる。そのため、荷物を載置可能なスペースが確保できるように着座部21が退避位置にあり、かつ移動体が小回りできるように移動ベース1が縮小状態にあるような移動体の折り畳み状態を容易にもたらすことができる。また、移動体の展開状態と折り畳み状態とを容易に切り換えることができる。よって、移動体を、折り畳み状態で、歩行補助車、ショッピングカート、台車等として効率的に使用することができ、移動体の利便性を高めることができる。
【0080】
本実施形態の一態様に係る移動体においては、シート2の脚部22が、該脚部22を前側ベース13に対して旋回可能とするように前側ベース13に取り付けるベース取付区域22aを有し、シート2の着座部21の前方移動が、ホイールベースHを縮小するための前側及び後側ベース13,14の相対的な前後移動に伴う脚部22のベース取付区域22aの後方移動及び脚部22の前方旋回によってもたらされ、かつ着座部21の後方移動が、ホイールベースHを拡大するための前側及び後側ベース13,14の相対的な前後移動に伴う脚部22のベース取付区域22aの前方移動及び脚部22の後方旋回によってもたらされる。
【0081】
そのため、シート2の着座位置及び退避位置間の変化と、移動ベース1の拡大状態及び縮小状態間の変化とを連動させることができるので、シート2を着座位置とすると共に移動ベース1を拡大状態とした移動体の展開状態と、シート2を退避位置とすると共に移動ベース1を縮小状態とした移動体の折り畳み状態とを、シート2の手動操作によって容易に切り換えることができる。よって、移動体の利便性を高めることができる。
【0082】
本実施形態の一態様に係る移動体においては、前側及び後側ベース13,14の相対的な前後移動によって、移動ベース1が、ホイールベースHを拡大した拡大状態と、ホイールベースHを拡大状態よりも短くするように縮小した縮小状態との間で変化できる。そのため、移動ベース1の拡大状態では、移動体が安定的に走行することができ、移動ベース1の縮小状態では、移動体が小回りできるようになる。よって、移動体の利便性を高めることができる。
【0083】
本実施形態の一態様に係る移動体においては、シート2の着座部21が、移動ベース1の縮小状態にて着座面21aを前方に向けるように構成されている。そのため、移動体の折り畳み状態において、着座部21を、その着座面21aを前方に向けるように立てながら着座空間を避けるように効率的に配置することができる。さらに、かかる着座部21は着座空間の前方に配置されるので、着座部21を、着座空間に載置される荷物のための衝立として用いることができる。よって、移動体を折り畳み状態でも効率的に使用することができ、移動体の利便性を高めることができる。
【0084】
本実施形態の一態様に係る移動体は、後側ベース14上にてシート2の後方に配置されるフレーム3を備え、シート2の着座部21が、移動ベース1の拡大状態にて着座面21aを上方に向け、フレーム3は、移動ベース1の拡大状態で着座部21を支持する。そのため、移動体の展開状態において、シート2の着座部21をフレーム3によって安定的に支持できるので、着座部21が移動体の走行時においてもユーザを安定的に支えることができ、その結果、移動体を展開状態においても安定的に使用することができる。よって、移動体の利便性を高めることができる。
【0085】
本実施形態の別の一態様に係る電動車両は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベース1と、着座面21aを有する着座部21を含み、かつ移動ベース1上に配置されるシート2と、着座部21に対応する背もたれとして用いることができるように構成され、かつ移動ベース1上に配置される背板4とを備え、着座部21が、着座面21aを上方に向けるように配置した着座位置と、着座部21を着座位置から前方に退避させた退避位置との間で移動可能であり、背板4は、着座位置にある場合の着座部21に対して後方かつ上方の起立位置と、起立位置に対して前方の倒伏位置との間で移動可能であり、退避位置にある着座部21が倒伏位置にある背板4を支持する。
【0086】
そのため、シート2の着座部21が、着座位置にあるときには、電動車両内の着座空間を占有した状態で安定的に維持できるので、ユーザが安定的に着座部21に着座できる。さらに、背板4が、起立位置にあるときには、着座位置にある着座部21に対して後方かつ上方の起立位置に配置されるので、ユーザが安定的に背板4にもたれ掛かることができる。そして、このように着座部21が着座位置にあり、かつ背板4が起立位置にあるときには、ユーザがシート2の着座部21に着座可能となるような電動車両の展開状態をもたらすことができる。
【0087】
その一方で、着座部21が、退避位置にあるときには、着座空間から退避するように前方に移動し、かつ退避位置にある着座部21が倒伏位置にある背板4を支持するので、電動車両の着座空間にて、かかる背板4上に買い物かご等の荷物を安定的に載置することができる。そして、このように着座部21が退避位置にあり、かつ背板4が倒伏位置にあるときには、電動車両を歩行補助車、ショッピングカート、台車等として使用可能とするような電動車両の折り畳み状態をもたらすことができる。よって、電動車両を、折り畳み状態にて、歩行補助車、ショッピングカート、台車等として効率的に使用することができる。また、電動車両の利便性を高めることができ、特に、電動車両の利便性を高めるべく電動車両の操作性を高めることができる。
【0088】
本実施形態の別の一態様に係る電動車両は、シート2の着座部21に対してシート幅方向の少なくとも一方に位置するアームレスト5と、電動車両を操作可能に構成される前側及び後側操作装置6,7とを備え、前側操作装置6が、アームレスト5によって支持され、後側操作装置7が、起立位置にある場合の背板4に対して後方に配置され、着座部21及び背板4がそれぞれ着座位置及び起立位置にある状態では、電動車両が前側制御部6によって操作可能であり、かつ着座部21及び背板4がそれぞれ退避位置及び倒伏位置にある状態では、電動車両が後側制御部7によって操作可能である。
【0089】
そのため、電動車両の展開状態では、ユーザが、上述のようなシートの着座部21に着座し、かつ上述のような背板4にもたれ掛かった状態で、アームレスト5に配置された前側操作装置6を操作できる。このとき、背板4がユーザと後側操作装置7との間に位置するので、ユーザが誤って後側操作装置7に触れることを、背板4によって防ぐことができる。よって、電動車両の利便性を高めるべく電動車両の操作性を高めることができる。
【0090】
本実施形態の別の一態様に係る電動車両は、移動ベース1上にて、着座位置にある場合の着座部21の後方に配置されるフレーム3を備え、背板4が、起立位置と倒伏位置との間で旋回可能となるようにフレーム3に取り付けられている。そのため、背板4を旋回させるという簡単なプロセスによって、背板4を起立位置と倒伏位置との間で変化させることができるので、電動車両の利便性を高めるべく電動車両の操作性を高めることができる。
【0091】
本実施形態のさらなる別の一態様に係る電動車両は、電動駆動可能に構成され、かつ前輪11及び後輪12を有する移動ベース1と、着座面21aを有する着座部21を含むシート2と、該シート2の位置を検知可能に構成される検知装置8とを備え、移動ベース1が、前輪11及び後輪12間のホイールベースHを拡大及び縮小させるように変化可能であり、シート2は、着座部21が着座面21aを上方に向けるように配置された着座位置と、着座部21が着座位置から前方に退避した退避位置との間で移動可能であり、着座位置にあるシート2が移動したことを検知装置8によって検知したときに、移動ベース1がホイールベースHを縮小させるための変化を開始し、かつ退避位置にあるシート2が移動したことを検知装置8によって検知したときに、移動ベース1がホイールベースHを拡大させるための変化を開始する。
【0092】
かかる電動車両においては、移動ベース1が、電動車両を安定的に走行可能な展開状態とするようにホイールベースHを拡大した拡大状態と、電動車両を小回り可能な折り畳み状態とするようにホイールベースHを縮小した縮小状態とに変化することができる。また、着座位置にあるシート2を退避位置に変化させるためにこのシート2の移動を手動で開始しようとすれば、検知装置8がシート2の移動開始を検知し、かかる検知によって移動ベース1がホイールベースHを縮小させるように駆動して、電動車両の折り畳み状態を自動的にもたらすことができる。さらに、着座位置にあるシート2を退避位置に変化させるためにこのシート2の移動を手動で開始しようとすれば、検知装置8がシート2の移動開始を検知し、かかる検知によって移動ベース1がホイールベースHを拡大させるように駆動して、電動車両の展開状態を自動的にもたらすことができる。そのため、電動車両の展開状態と折り畳み状態とをシート2の手動操作によって容易に切り換えることができる。
【0093】
そして、電動車両の展開状態で、着座部21を、車両内の着座空間を占有するように着座位置に配置すれば、車両を安定的に走行可能とすることに加えて、ユーザが安定的に着座部21に着座することを可能にできる。また、電動車両の折り畳み状態で、着座部21を、着座空間から退避するように退避位置に配置すれば、電動車両を小回り可能とすることに加えて、着座空間に買い物かご等の荷物を載置することができる。よって、電動車両を、折り畳み状態にて、歩行補助車、ショッピングカート、台車等として効率的に使用することができ、電動車両の利便性を高めることができる。
【0094】
本実施形態のさらなる別の一態様に係る電動車両においては、シート2は、移動ベース1がホイールベースHを拡大させた拡大状態にあるときに着座位置にあり、かつ移動ベース1がホイールベースHを移動ベース1の拡大状態よりも短くするように縮小させた縮小状態にあるときに退避位置にあり、検知装置8が、着座位置にあるシート2に対応するように配置されるか又は拡大状態にある移動ベース1がホイールベースHを縮小させるための変化を開始したことを検知可能とするように配置される第1センサ8aと、退避位置にあるシート2に対応するように配置されるか又は縮小状態にある移動ベース1がホイールベースHを拡大させるための変化を開始したことを検知可能とするように配置される第2センサ8bとを有する。
【0095】
そのため、第1センサ8aが、着座位置にあるシート2の移動開始、又はそれに連動すると共に拡大状態にある移動ベース1の移動開始を検知すれば、かかる検知によって、ホイールベースHを縮小させるように移動ベース1を確実に駆動させることができ、電動車両の折り畳み状態を確実にもたらすことができる。また、第2センサが、退避位置にあるシート2の移動開始、又はそれに連動すると共に縮小状態にある移動ベース1の移動開始を検知すれば、かかる検知によって、ホイールベースHを拡大させるように移動ベース1を確実に駆動させることができ、電動車両の展開状態を確実にもたらすことができる。よって、ユーザは、電動車両の展開状態と折り畳み状態とをシート2の手動操作によって容易に切り換えることができ、電動車両の利便性を高めることができる。
【0096】
本実施形態のさらなる別の一態様に係る電動車両においては、ホイールベースHを拡大及び縮小させるために、前輪11及び後輪12の一方が駆動し、かつ前輪11及び後輪12の他方が停止する。そのため、ホイールベースHを拡大及び縮小させるための駆動機構を別途設けずとも、電動車両の走行駆動のために常設される前輪11及び後輪12の一方の駆動と、これらの他方の制動とを用いて、ホイールベースHを拡大及び縮小させることができる。その結果、電動車両にて上記駆動機構を設けるスペースを削減できるので、買い物かご等の荷物を載置するスペースを拡大することができる。よって、電動車両の利便性を高めることができる。
【0097】
「第2実施形態」
第2実施形態に係る電動車両について説明する。本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる構成を除いて、第1実施形態に係る電動車両と同様に構成される。そのため、本実施形態に係る電動車両の構成要素は、第1実施形態に係る電動車両に係る電動車両の構成要素と同様に構成される場合、それと同じ符号を付す。
【0098】
図1~
図8を参照すると、本実施形態に係る電動車両においては、移動ベース1は、ホイールベースHを拡大及び縮小させるために、前輪11及び後輪12が互いに対して反転駆動可能に構成されている。すなわち、ホイールベースHを拡大するときには、前輪11が前側ベース13を車両前方に移動させるように回転駆動し、かつ後輪12が後側ベース14を車両後方に移動させるように回転駆動する。また、ホイールベースHを縮小するときには、前輪11が前側ベース13を車両後方に移動させるように回転駆動し、かつ後輪12が後側ベース14を車両前方に移動させるように回転駆動する。
【0099】
かかる電動車両において、特に明確に図示はしないが、前側ベース13は、各前輪11を回転駆動するための駆動モータを有する。例えば、駆動モータは各前輪11と車両幅方向に隣接するように配置されるか、又は駆動モータは各前輪11に内蔵されるとよい。しかしながら、駆動モータは、これに限定されない。そして、かかる前輪1の駆動モータは、バッテリ15と制御装置16とに電気的に接続される。
【0100】
以上、本実施形態に係る電動車両においては、第1実施形態の一態様及び別の一態様に係る電動車両と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る電動車両においては、ホイールベースHを拡大及び縮小させるために、前輪11及び後輪12の一方を駆動し、かつこれらの他方が停止する構成に基づく効果を除いて、第1実施形態のさらなる別の一態様に係る電動車両と同様の効果を得ることができる。
【0101】
さらに、本実施形態に係る電動車両においては、ホイールベースHを拡大及び縮小させるように、前輪11及び後輪12が互いに対して反転駆動可能である。そのため、ホイールベースHを拡大及び縮小させるための駆動機構を別途設けずとも、電動車両の走行駆動のために常設される前輪11及び後輪12の駆動を用いて、ホイールベースHを拡大及び縮小させることができる。その結果、電動車両にて上記駆動機構を設けるスペースを削減できるので、買い物かご等の荷物を載置するスペースを拡大することができる。よって、電動車両の利便性を高めることができる。
【0102】
「第3実施形態」
第3実施形態に係る電動車両について説明する。本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる構成を除いて、第1又は第2実施形態に係る電動車両と同様に構成される。そのため、本実施形態に係る電動車両の構成要素は、第1又は第2実施形態に係る電動車両に係る電動車両の構成要素と同様に構成される場合、それと同じ符号を付す。
【0103】
図9及び
図10に示すように、本実施形態に係る電動車両は、背板104が起立位置と倒伏位置との間でフレーム3に沿って移動可能である点を除いて、第1又は第2実施形態の背板4と同様に構成される背板104を有する。そして、かかる背板104は、さらに次のように構成されるとよい。背板104は、起立位置にある状態で、それぞれ車両上下方向の下端側及び上端側に位置する基端部104a及び先端部104bを有する。背板104の基端部104aは、連結部材141を介して、シート2における着座部21の後端区域に連結されている。
【0104】
具体的には、2つの連結部材141が、それぞれ、背板104における基端部104aのシート幅方向の両端に取り付けられる背板側取付部141aを有する。背板側取付部141aは、背板104の基端部104aに対してシート幅方向に延びる旋回軸線141bを中心に旋回可能となるように背板104の基端部104aに取り付けられている。
【0105】
2つの連結部材141はまた、それぞれ、着座部21における後端部のシート幅方向の両端に取り付けられるシート側取付部141cを有する。シート側取付部141cは、背板側取付部141aと間隔を空けて配置される。シート側取付部141cは、着座部21の後端区域に対してシート幅方向に延びる旋回軸線141dを中心に旋回可能となるように着座部21の後端区域に取り付けられる。
【0106】
背板104の先端部104bは、フレーム3に対して旋回可能かつスライド移動可能にフレーム3に取り付けられる。具体的には、背板104における先端部104bのシート幅方向の両端は、それぞれ、フレーム3の2つの支柱31に対して、シート幅方向に延びる旋回軸線104cを中心に旋回可能であり、かつ旋回軸線104cと一緒に2つの支柱31に沿ってスライド移動可能に2つの支柱31に取り付けられる。
【0107】
かかる背板104が起立位置にある状態では、背板104の基端部104aは、フレーム3の支柱31のシート支持機構32に対して車両上方に位置する。さらに、シート2が退避位置にあり、かつ背板104が倒伏位置にある状態で、背板104の基端部104aは、連結部材141を介してシート2の着座部21の後端区域によって支持され、かつ背板104の先端部104bは、フレーム3のシート支持機構32によって支持される。
【0108】
かかる背板104は、シート2の着座位置及び退避位置間の移動に伴って、起立位置及び倒伏位置間で移動する。背板104が起立位置から倒伏位置に移動する場合においては、背板104がその先端部104bの旋回軸線104cを中心に車両前方側に旋回し、かつ背板104の先端部104bが支柱31に沿って車両上方から車両下方に移動する。さらに、シート2が退避位置に到達し、かつ背板104の先端部104bがフレーム3のシート支持機構32に到達すると、背板104が車両水平方向に沿って配置される。このとき、背板104が倒伏位置に到達する。背板104が倒伏位置から起立位置に移動する場合においては、この逆の動作が行われる。
【0109】
以上、本実施形態に係る電動車両においては、第1実施形態の一態様及びさらなる別の一態様に係る電動車両と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る電動車両においては、背板4を起立位置と倒伏位置との間で旋回可能となるようにフレーム3に取り付けた構成に基づく効果を除いて、第1実施形態の別の一態様に係る電動車両と同様の効果を得ることができる。
【0110】
さらに、本実施形態に係る電動車両は、移動ベース1上にて、着座位置にある場合の着座部21の後方に配置されるフレーム3をさらに備え、背板104が起立位置と倒伏位置との間でフレーム3に沿って移動可能である。そのため、背板104をフレーム3に沿って移動させるという簡単なプロセスによって、背板104を起立位置と倒伏位置との間で変化させることができるので、電動車両の利便性を高めるべく電動車両の操作性を高めることができる。
【0111】
「第4実施形態」
第4実施形態に係る電動車両について説明する。本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる構成を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つに係る電動車両と同様に構成される。そのため、本実施形態に係る電動車両の構成要素は、第1~第3実施形態のいずれか1つに係る電動車両に係る電動車両の構成要素と同様に構成される場合、それと同じ符号を付す。
【0112】
図11及び
図12に示すように、本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる点を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける移動ベース1と同様に構成される移動ベース201を有する。移動ベース201は、前輪11を有する前側ベース213と、後輪12を有する後側ベース214とを含む。後側ベース214は、前側ベース213に対して車両後方に配置される。
【0113】
かかる前側及び後側ベース213,214は、さらに以下に述べる点を除いて、それぞれ第1~第3実施形態のいずれか1つにおける移動ベース1の前側及び後側ベース13,14と同様に構成される。移動ベース201の前側及び後側ベース213,214は、互いに対して、車両幅方向に延びる旋回軸線201aを中心に旋回可能に連結されている。より具体的には、前側ベース213は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される2つの前側サイドメンバ213aを有する。後側ベース214は、互いに車両幅方向に間隔を空けて配置される2つの後側サイドメンバ214aを有する。
【0114】
前側及び後側サイドメンバ213a,214aは、以下に述べる点を除いて、それぞれ第1~第3実施形態のいずれか1つにおける前側及び後側サイドメンバ13a,14aと同様に構成される。2つの前側サイドメンバ213aにおける車両前後方向の後端部は、それぞれ、旋回連結機構217によって、それぞれ後側サイドメンバ214aの車両前後方向の前端部に対して旋回軸線201aを中心に旋回可能となるようにこれらの前端部取り付けられている。かかる移動ベース201は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける移動ベース1のベースガイド17の代わりに、かかる旋回連結機構217を有することとなる。
【0115】
かかる移動ベース201が拡大状態から縮小状態に変化するときには、前側ベース213の車両前後方向の後端部が、前輪11の回転軸線11aを中心に車両上方に持ち上がるように旋回する。また、後側ベース214の車両前後方向の前端部が、後輪12の回転軸線12aを中心に車両上方に持ち上がるように旋回する。その結果、前側及び後側ベース213,214は、旋回連結機構217を頂点とするように略山型に折れ曲がる。移動ベース201が縮小状態から拡大状態に変化するときには、この逆の動作が行われる。
【0116】
「第5実施形態」
第5実施形態に係る電動車両について説明する。本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる構成を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つに係る電動車両と同様に構成される。そのため、本実施形態に係る電動車両の構成要素は、第1~第3実施形態のいずれか1つに係る電動車両に係る電動車両の構成要素と同様に構成される場合、それと同じ符号を付す。
【0117】
なお、本実施形態に係る電動車両を説明するために用いられる
図13~
図17においては、検知装置等を省略している。しかしながら、本実施形態に係る電動車両は、このような検知装置等を含むことができ、かつ本実施形態に係る電動車両においては、当該検知装置等に基づく作用及び効果もまた第1~第3実施形態と同様に得ることができる。
【0118】
「移動ベースについて」
図13~
図17に示すように、本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる点を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける移動ベース1と同様に構成される移動ベース301を有する。移動ベース301は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける移動ベース1と同様に、前輪11及び後輪12間のホイールベースHを拡大及び縮小させるように変化可能に構成されている。
【0119】
移動ベース301は、前輪11を有する前側ベース313と、後輪12を有する後側ベース314とを含む。後側ベース314は、前側ベース313に対して車両後方に配置される。前側及び後側ベース313,314は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける前側及び後側ベース13,14にそれぞれ相当する。前側及び後側ベース313,314が、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける前側及び後側ベース13,14と同様に、ホイールベースHを拡大及び縮小可能とすべく、互いに対して車両前後方向に相対的に移動可能に構成される。
【0120】
前側ベース313は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける2つの前側サイドメンバ13aにそれぞれ相当する2つ前側サイドメンバ313aを有する。後側ベース314は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける2つの後側サイドメンバ14aにそれぞれ相当する2つ後側サイドメンバ314aを有する。
【0121】
各前側サイドメンバ313aは、この前側サイドメンバ313aの車両前後方向の後端部から車両幅方向に突出するように形成される旋回シャフト317を有する。詳細は後述するが、かかる旋回シャフト317にはシート302の脚部322が取り付けられる。かかる旋回シャフト317は、前側及び後側ベース313,314が互いに対して相対的に移動するときに、後側ベース314との干渉を避けるように配置される。
【0122】
さらに、旋回シャフト317は、移動ベース301の拡大状態で後側サイドメンバ314aの車両前後方向の前端部に位置するとよい。旋回シャフト317はまた、移動ベース301の縮小状態で後輪12の近傍に位置するとよい。
【0123】
「シートについて」
図13~
図17に示すように、本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる点を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つにおけるシート2と同様に構成されるシート302を有する。シート302は、着座部21を支持することができる2つの脚部322を含む。2つの脚部322は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける2つの脚部22にそれぞれ相当する。
【0124】
シート302はまた、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける2つのシートサイドメンバ23にそれぞれ相当する2つのシートサイドメンバ323を有する。シート302は、シート302及び後述する背板304がそれぞれ退避位置及び倒伏位置にある状態で背板304を支持するように構成される背板支持機構324を有する。なお、
図16においては、背板支持機構324は、着座部21のシート前後方向の後端となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、背板支持機構は、第1~第3実施形態のいずれか1つの背板支持機構と同様に、各シートサイドメンバからシート上下方向の下方に突出するように形成されてもよい。
【0125】
各脚部322は、シート上下方向の上方から下方に向かうに従ってシート前後方向の後方から前方に傾斜するように延びるとよい。各脚部322はまた、それに対応するシートサイドメンバ323のシート前後方向の後端部からシート上下方向の下方側に延びるとよい。
【0126】
各脚部322は、この脚部322を前側ベース313に取り付けるように構成されるベース取付区域322aを有する。ベース取付区域322aは、前側サイドメンバ313aの旋回シャフト317に旋回可能に取り付けられる。より具体的には、ベース取付区域322aは、旋回シャフト317を挿入可能とするように車両幅方向に貫通する取付長孔322bを有する。取付長孔322bは、脚部322の長手方向に沿って延びる。前側ベース313が後側ベース314に対して車両前後方向に移動するときに、旋回シャフト317は取付長孔322b内で取付長孔322bの長手方向に沿って移動する。
【0127】
詳細は後述するが、各脚部322は、その脚部322を後述するフレーム303に対して旋回可能とするようにフレーム303に取り付けるように構成されるフレーム取付区域322cを有する。フレーム取付区域322cは、着座部21とベース取付区域322aとの間に位置する。また、各脚部322のベース取付区域322aは、その脚部322のシート上下方向の下端に位置し、かつ各脚部322のフレーム取付区域322cは、その脚部322のシート上下方向の中間に位置するとよい。
【0128】
「フレームについて」
図13~
図17に示すように、本実施形態に係る電動車両は、以下に述べる点を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つにおけるフレーム3と同様に構成されるフレーム303を有する。フレーム303は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける2つの支柱31にそれぞれ相当する2つの支柱331を有する。各支柱331は、それに対応する脚部322のフレーム取付区域322cを取付可能に構成されるシート旋回取付部331aを有する。フレーム取付区域322cは、車両幅方向に延びる旋回軸線322dを中心に旋回可能にシート旋回取付部331aに取り付けられる。
【0129】
シート旋回取付部331aは、車両前後方向にて、後側ベース314の前端及び後端間に配置される。特に、シート旋回取付部331aは、着座位置にある着座部21に対して車両下方に位置する各支柱331の下方領域に配置されるとよい。支柱331の下方領域は、車両前方に向かって略三角形状に突出するように形成されるとよい。この場合、シート旋回取付部331aは、車両前方に突出する支柱331の下方領域の頂部に位置するとよい。
【0130】
さらに特に明確に図示はしないが、フレーム303は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおけるシート支持機構32及び連結部材33とそれぞれ同様のシート支持機構及び連結部材を有する。
【0131】
「背板について」
図13~
図17に示すように、本実施形態に係る電動車両は背板304を有する。かかる背板304は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける基端部4a、先端部4b、及び旋回軸線4cにそれぞれ相当する基端部304a、先端部304b、及び旋回軸線304cを有する。背板304は、旋回軸線304cが基端部304aに位置している点を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける背板4と同様に構成されている。
【0132】
「アームレスト並びに前側及び後側操作装置について」
図13及び
図15~
図17に示すように、本実施形態に係る電動車両は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおけるアームレスト5と同様に構成されるアームレスト305を有する。本実施形態に係る電動車両は、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける前側及び後側操作装置6,7にそれぞれ相当する前側及び後側操作装置306,307を有する。電動車両は、2つのアームレスト305と、2つの前側操作装置306と、2つの後側操作装置307とを有する。
【0133】
前側操作装置306は、次に述べる点を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける前側操作装置6と同様に構成される。前側操作装置306はジョイスティックとなっている。しかしながら、前側操作装置は、これに限定されない。2つの前側操作装置306は、それぞれ、2つのアームレスト305の前端部に取り付けられている。しかしながら、車両が、2つのアームレストの一方に取り付けられる1つの前側操作装置を有してもよい。なお、このような2つの前側操作装置306は、第1~第4実施形態の車両にも適用することができる。
【0134】
後側操作装置307は、次に述べる点を除いて、第1~第3実施形態のいずれか1つにおける後側操作装置7と同様に構成される。後側操作装置307はジョイスティックとなっている。しかしながら、前側操作装置は、これに限定されない。2つの後側操作装置307は、それぞれ、フレーム303の2つの支柱331に取り付けられている。しかしながら、後側操作装置は、第1~第3実施形態と同様に、フレームの連結部材に取り付けられてもよい。
【0135】
かかる後側操作装置307と背板304との関係について、背板304は、起立位置にある状態で後側操作装置307を車両上方から覆うように配置される。かかる背板304の先端部304bは、背板304が起立位置にある状態で、車両下方から車両上方に向かうに従って車両前方から車両後方に向かって曲がっている。しかしながら、背板は、これに限定されず、例えば、背板の先端部は、背板が起立位置にある状態で、車両下方から車両上方に向かうに従って車両前方から車両後方に向かって傾斜してもよい。さらに、背板の先端部は略L字形状に形成されてもよい。なお、かかる背板304の配置は、第1~第4実施形態における背板4の配置にも適用することができる。
【0136】
このような本実施形態に係る車両は、上述した第1実施形態に係る車両の変形動作の一例と同様に変形動作を行うことができる。さらに、本実施形態に係る移動体においては、第1実施形態の一態様に係る移動体の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0137】
本実施形態の一態様に係る移動体においては、シート302の脚部322が、この脚部322をフレーム303に対して旋回可能とするようにフレーム303に取り付けるように構成されるフレーム取付区域322cを有し、フレーム取付区域322cが、着座部21とベース取付区域322aとの間に位置している。そのため、移動体の展開状態において、シート302の着座部21を安定的かつスムーズに前方及び後方移動させることができるので、移動体を効率的に使用することができる。よって、移動体の利便性を高めることができる。
【0138】
本実施形態の別の一態様に係る電動車両においては、背板304が、起立位置にある状態で、後側操作装置307を車両上方から覆うように配置される。そのため、移動ベース301が拡大状態にあり、かつシート302に着座した乗員が前側操作装置306を操作している場合に、背板304によって、乗員の後側操作装置307へのアクセスを制限することができる。さらに、移動ベース301が拡大状態にあり、かつ後側操作装置307が操作不能である場合においても、乗員の後側操作装置307への不要なアクセスを制限できる結果、後側操作装置307の損傷を防ぐことができる。
【0139】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0140】
1,201,301…移動ベース、11…前輪、12…後輪、13,213,313…前側ベース、14,214,314…後側ベース、2,302…シート、21…着座部、21a…着座面、22,322…脚部、22a,322a…ベース取付区域、3,303…フレーム、H…ホイールベース