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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20221122BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20221122BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20221122BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20221122BHJP
   B01D 65/08 20060101ALI20221122BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20221122BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F1/76 A
C02F1/70 Z
C02F1/50 510C
C02F1/50 520A
C02F1/50 531P
C02F1/50 540B
C02F1/50 550C
C02F1/50 550H
C02F1/50 550L
C02F1/50 560E
C02F1/44 C
B01D65/08
C02F5/10 610Z
C02F5/10 620Z
B01D61/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018217723
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020081939
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健輔
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/133620(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084061(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175657(WO,A1)
【文献】特開2016-022458(JP,A)
【文献】特開2012-205985(JP,A)
【文献】特開昭62-030599(JP,A)
【文献】特開2007-197416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/76
C02F 1/70
C02F 1/50
C02F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をろ過して給水を生成するろ過装置と、
原水を前記ろ過装置に供給する原水ラインと、
前記ろ過装置で生成された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、
前記濃縮水の全部又は一部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、
原水及び/又は給水に塩素系酸化剤を薬注する第4薬注装置と、
前記ろ過装置の出口における給水内の遊離塩素濃度を測定する第1塩素濃度測定装置と、
前記第1塩素濃度測定装置の下流において、給水に添加することで給水内の遊離塩素との化学反応により安定化次亜塩素酸を生成させる安定化剤を薬注する第1薬注装置と、
前記第1塩素濃度測定装置により測定された前記ろ過装置の出口での遊離塩素濃度に基づいて、前記安定化剤の薬注量を調整することで、給水内の塩素系酸化剤と前記安定化剤のモル比バランスを調整し、前記逆浸透膜モジュールの前段における遊離塩素濃度を適性値にする、薬注制御部と、を備える、水処理システム。
【請求項2】
前記安定化剤は、スルファミン酸を含む、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記第1塩素濃度測定装置の下流において、給水に還元剤を薬注する第2薬注装置を更に備え、
前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された遊離塩素濃度に基づいて、還元剤の薬注量を制御する、請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記還元剤は、SBS(重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガスのうちいずれか1以上である、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記第1塩素濃度測定装置の下流において、給水に臭素化合物を薬注する第3薬注装置を更に備え、
前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された遊離塩素濃度に基づいて、臭素化合物の薬注量を制御する、請求項2~4のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された前記ろ過装置の出口での遊離塩素濃度に基づいて、原水及び/又は給水への塩素系酸化剤の薬注を制御する、請求項2~5のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項7】
原水に前記安定化剤を薬注する第5薬注装置を更に備え、
前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された遊離塩素濃度に基づいて、原水に薬注される前記安定化剤と、給水に薬注される前記安定化剤との双方の薬注を制御する、請求項2~6のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記濃縮水ライン又は前記濃縮排水ラインにおける塩素濃度を測定する第2塩素濃度測定装置を更に備え、
前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された遊離塩素濃度に加えて、第2塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に基づいて薬注を制御する、請求項2~7のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項9】
原水をろ過して給水を生成するろ過装置と、
原水を前記ろ過装置に供給する原水ラインと、
前記ろ過装置で生成された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、
前記濃縮水の全部又は一部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、
原水及び/又は給水に塩素系酸化剤を薬注する第4薬注装置と、
前記給水ラインにおける前記ろ過装置の出口における酸化還元電位を測定する電位測定装置と、
前記電位測定装置の下流において、給水に添加することで給水内の遊離塩素との化学反応により安定化次亜塩素酸を生成させる安定化剤を薬注する第1薬注装置と、
前記電位測定装置により測定された前記ろ過装置の出口での酸化還元電位に基づいて、安定化剤の薬注量を制御することにより、前記給水内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスを調整し、前記逆浸透膜モジュールの前段における遊離塩素濃度を適性値にする薬注制御部と、を備える、水処理システム。
【請求項10】
前記電位測定装置の下流において、給水に還元剤を薬注する第2薬注装置を更に備え、
前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、還元剤の薬注量を制御する、請求項9に記載の水処理システム。
【請求項11】
前記還元剤は、SBS(重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガスのうちいずれか1以上である、請求項10に記載の水処理システム。
【請求項12】
前記電位測定装置の下流において、給水に臭素化合物を薬注する第3薬注装置を更に備え、
前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、臭素化合物の薬注量を制御する、請求項9~11のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項13】
前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、原水及び/又は給水への塩素系酸化剤の薬注を制御する、請求項9~12のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項14】
原水に前記安定化剤を薬注する第5薬注装置を更に備え、
前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、原水に薬注される前記安定化剤と、給水に薬注される前記安定化剤との双方の薬注を制御する、請求項9~13のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項15】
給水の水質を測定する水質測定手段を更に備え、
前記薬注制御部は、前記水質測定手段により測定された水質に基づいて、前記給水内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスと薬注量を調整する、請求項1~14のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項16】
前記安定化剤中に、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート成分、及び/又はポリマーが含まれる、請求項1~15のいずれか1項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いた膜ろ過プロセスを実行する水処理システムにおいて、微生物の繁茂に由来するバイオフィルムの抑制のため、微生物を除去するための塩素系殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムが用いられることがある。
例えば、特許文献1は、逆浸透膜を用いた造水方法であって、バイオフィルムの発生によるバイオファウリングの抑制のため、次亜塩素酸ナトリウムを水処理システム中の逆浸透膜に流入させる造水方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-190214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水処理システムに流通する給水中の次亜塩素酸ナトリウムの含有量が高すぎると逆浸透膜は劣化する。逆浸透膜の劣化を防ぐため、水処理システムに安定化剤を添加することがあるが、安定化剤の添加量が過大な場合、次亜塩素酸ナトリウムによるバイオフィルム抑制の度合いが下がりすぎてしまう。従って、バイオフィルムを抑制しつつ、逆浸透膜の劣化を防ぐためには、給水中の次亜塩素酸ナトリウムの含有量と安定化剤の含有量とのバランスを取る必要がある。
【0005】
本発明は、水処理システム内で、バイオフィルム抑制のため給水中に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの含有量と、逆浸透膜の劣化を防止するため給水中に含まれる安定化剤の含有量とのバランスを、簡便に取ることが可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原水をろ過して給水を生成するろ過装置と、原水を前記ろ過装置に供給する原水ラインと、前記ろ過装置で生成された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、前記濃縮水の全部又は一部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、給水に安定化剤 を薬注する第1薬注装置と、安定化剤の薬注量を調整することにより、前記給水内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスを調整する薬注制御部と、を備える、水処理システムに関する。
【0007】
また、前記ろ過装置の出口における塩素濃度を測定する第1塩素濃度測定装置を更に備え、前記第1薬注装置は、前記第1塩素濃度測定装置の下流において、給水に安定化剤を薬注し、前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に基づいて、安定化剤の薬注量を調整することが好ましい。
【0008】
また、前記塩素濃度測定装置の下流において、給水に還元剤を薬注する第2薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に基づいて、還元剤の薬注量を制御することが好ましい。
【0009】
また、前記還元剤は、SBS(重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガスのうちいずれか1以上であることが好ましい。
【0010】
また、前記第1塩素濃度測定装置の下流において、給水に臭素化合物を薬注する第3薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に基づいて、臭素化合物の薬注量を制御することが好ましい。
【0011】
また、原水及び/又は給水に塩素系酸化剤を薬注する第4薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に基づいて、原水及び/又は給水への塩素系酸化剤の薬注を制御することが好ましい。
【0012】
また、原水に安定化剤を薬注する第5薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に基づいて、原水に薬注される安定化剤と、給水に薬注される安定化剤との双方の薬注を制御することが好ましい。
【0013】
前記濃縮水ライン又は前記濃縮排水ラインにおける塩素濃度を測定する第2塩素濃度測定装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記第1塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に加えて、第2塩素濃度測定装置により測定された塩素濃度に基づいて薬注を制御することが好ましい。
【0014】
また本発明は、原水をろ過して給水を生成するろ過装置と、原水を前記ろ過装置に供給する原水ラインと、前記ろ過装置で生成された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、前記濃縮水の全部又は一部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、前記給水ラインにおける前記ろ過装置の出口、及び/又は前記濃縮排水ラインにおける酸化還元電位を測定する電位測定装置と、前記電位測定装置の下流において、給水に安定化剤を薬注する第1薬注装置と、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、安定化剤 の薬注量を制御することにより、前記給水内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスを調整する薬注制御部と、を備える、水処理システムに関する。
【0015】
また、前記電位測定装置の下流において、給水に還元剤を薬注する第2薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、還元剤の薬注量を制御することが好ましい。
【0016】
また、前記還元剤は、SBS(重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガスのうちいずれか1以上であることが好ましい。
【0017】
また、前記電位測定装置の下流において、給水に臭素化合物を薬注する第3薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、臭素化合物の薬注量を制御することが好ましい。
【0018】
また、原水及び/又は給水に塩素系酸化剤を薬注する第4薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、原水及び/又は給水への塩素系酸化剤の薬注を制御することが好ましい。
【0019】
また、原水に安定化剤を薬注する第5薬注装置を更に備え、前記薬注制御部は、前記電位測定装置により測定された酸化還元電位に基づいて、原水に薬注される安定化剤と、給水に薬注される安定化剤との双方の薬注を制御することが好ましい。
【0020】
また、前記還元剤は、SBS(重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガスのうちいずれか1以上であることが好ましい。
【0021】
また、給水の水質を測定する水質測定手段を更に備え、前記薬注制御部は、前記水質測定手段により測定された水質に基づいて、前記給水内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスと薬注量を調整することが好ましい。
【0022】
また、前記安定化剤中に、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート成分、及び/又はポリマーが含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水処理システム内で、バイオフィルム抑制のため給水中に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの含有量と、逆浸透膜の劣化を防止するため給水中に含まれる安定化剤の含有量とのバランスを、簡便に取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る水処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔全体構成〕
以下、本発明の実施形態である水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の水処理システム1の全体構成図である。
【0026】
図1に示すように、水処理システム1は、ろ過装置3と、第1薬剤添加装置4と、第2薬剤添加装置5と、第3薬剤添加装置6と、第4薬剤添加装置7と、第5薬剤添加装置8と、第1塩素濃度センサ9と、第2塩素濃度センサ10と、水質センサ11と、加圧ポンプ12と、インバータ13と、逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)14と、定流量弁15と、比例制御排水弁16と、制御部30と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0027】
水処理システム1は、ラインとして、原水ラインL1と、給水ラインL2と、透過水ラインL3と、濃縮水ラインL4と、循環水ラインL5と、濃縮排水ラインL6と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、その由来(出所)やその水質によらず、原水ラインL1を流通する水を、「原水」ともいい、給水ラインL2、濃縮水ラインL4又は循環水ラインL5を流通する水を、「給水」ともいい、濃縮水ラインL4、循環水ラインL5又は濃縮排水ラインL6を流通する水を、「濃縮水」ともいう。
【0028】
原水ラインL1は、原水W10をろ過装置3に向けて供給するラインである。原水ラインL1の上流側の端部は、原水W10の水源2に接続されている。原水ラインL1の下流側の端部は、ろ過装置3に接続されている。原水ラインL1には、第4薬剤添加装置7と、第5薬剤添加装置8が設けられている。
【0029】
第4薬剤添加装置7は、原水ラインL1に、第4薬剤を添加する装置である。第4薬剤添加装置7は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、第4薬剤添加装置7は、逆浸透膜モジュール14におけるバイオフィルムの析出を抑制するために、第4薬剤として酸化剤を添加することにより、原水W10中の塩素濃度を調整する。逆浸透膜モジュール14において、逆浸透膜の表面にバイオフィルムが付着することを効果的に抑制可能なことから、第4薬剤の例として、次亜塩素酸ソーダ等の塩素系酸化剤が挙げられる。なお、第4薬剤が次亜塩素酸ソーダの場合、次亜塩素酸ソーダの添加量は、後述の給水W21中の有効塩素濃度が、0.01~5mgCl/L程度となることが好ましい。
以下では説明の簡略化のため、第4薬剤が次亜塩素酸ソーダである例について説明するが、本発明はこれには限られない。他の塩素系酸化剤として、例えば、液化塩素、さらし粉、塩素化イソシアヌル酸等を用いてもよい。
【0030】
第5薬剤添加装置8は、原水ラインL1に、第5薬剤を添加する装置である。第5薬剤添加装置8は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、第5薬剤添加装置8は、逆浸透膜モジュール14に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第5薬剤として安定化剤を添加する。安定化剤の添加により、例えば原水W10や後述の給水W21に含まれる次亜塩素酸は、安定化次亜塩素酸になる。逆浸透膜モジュール14において、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制可能なことから、第5薬剤の例としては、アミン系化合物、例えばスルファミン酸等の安定化剤が挙げられる。なお、第5薬剤がスルファミン酸の場合、スルファミン酸の添加量は、給水W21中の次亜塩素酸に由来する有効塩素:スルファミン酸のモル比が、1:1~20程度となることが好ましく、1:1.5~10程度とするとなおよい。有効塩素1に対して、スルファミン酸が1を切ると、両者の反応効率が100%だと仮定しても、遊離塩素が生じるためである。
以下では説明の簡略化のため、第5薬剤がスルファミン酸である例について説明するが、本発明はこれには限られない。
【0031】
また、安定化剤中には、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート成分、及び/又はポリマーが含まれていてもよい。
透過水W30あるいは、逆浸透膜の表面に遷移金属が存在している場合、後述の安定化次亜臭素酸の様に酸化力が低い物質であっても、酸化剤と共存することで、触媒作用によって膜劣化を促進する懸念がある。このため、膜劣化抑制のため、遷移金属を封鎖出来るキレート効果、分散効果を有する成分を安定化剤へ配合し、添加する。
【0032】
ろ過装置3は、原水W10を予備的にろ過する装置であり、除鉄・除マンガン装置や、砂ろ過装置等であってよい。
【0033】
給水ラインL2は、給水W21~W22を逆浸透膜モジュール14に向けて供給するラインである。給水ラインL2は、上流側から下流側に向けて、第1給水ラインL21と、第2給水ラインL22とを有する。
【0034】
第1給水ラインL21の上流側の端部は、ろ過装置3に接続されている。第1給水ラインL21の下流側の端部は、接続部J1において、第2給水ラインL22及び循環水ラインL5に接続されている。第1給水ラインL21には、第1塩素濃度センサ9、第1薬剤添加装置4、第2薬剤添加装置5、第3薬剤添加装置6が設けられる。とりわけ、第1塩素濃度センサ9は、第1薬剤添加装置4、第2薬剤添加装置5、及び第3薬剤添加装置6よりも上流に設けられる。
【0035】
第1塩素濃度センサ9は、ろ過装置3の出口における給水W21中の遊離塩素濃度を測定する機器である。第1塩素濃度センサ9は、制御部30と電気的に接続されている。第1塩素濃度センサ9で測定された給水W21の遊離塩素濃度は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0036】
第1薬剤添加装置4は、給水ラインL2に、第1薬剤を添加する装置である。第1薬剤添加装置4は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、第1薬剤添加装置4は、逆浸透膜モジュール14に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第1薬剤として安定化剤を添加する。安定化剤の添加により、例えば給水W21に含まれる次亜塩素酸は、安定化次亜塩素酸になる。逆浸透膜モジュール14において、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制可能なことから、第1薬剤の例としては、アミン系化合物、例えばスルファミン酸等の安定化剤が挙げられる。なお、第1薬剤がスルファミン酸の場合、スルファミン酸の添加量は、給水W21中の次亜塩素酸に由来する有効塩素:スルファミン酸のモル比が、1:1~20程度となることが好ましく、1:1.5~10程度とするとなおよい。有効塩素1に対して、スルファミン酸が1を切ると、両者の反応効率が100%だと仮定しても、遊離塩素が生じるためである。
以下では説明の簡略化のため、第1薬剤がスルファミン酸である例について説明するが、本発明はこれには限られない。
【0037】
また、安定化剤中には、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート成分、及び/又はポリマーが含まれていてもよい。
【0038】
第2薬剤添加装置5は、給水ラインL2に、第2薬剤を添加する装置である。第2薬剤添加装置5は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、第2薬剤添加装置5は、逆浸透膜モジュール14に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第2薬剤として還元剤を添加する。還元剤の添加により、給水W21に含まれている塩素濃度は、適正濃度まで低下する。第2薬剤の例としては、SBS(NaHSO:重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガス等の還元剤が挙げられる。以下では説明の簡略化のため、第2薬剤がSBSである例について説明するが、本発明はこれには限られない。
【0039】
第3薬剤添加装置6は、給水ラインL2に第3薬剤を添加する装置である。第3薬剤添加装置6は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、第3薬剤添加装置6は、逆浸透膜モジュール14に備わる逆浸透膜に与えるダメージをより小さくするために、臭素化合物を添加する。臭素化合物の添加により、間接的に安定化次亜臭素酸が生成され、次亜臭素酸とスルファミン酸が反応することにより、最終的に臭化スルファミン酸化合物が生成される。第3薬剤の例としては、臭化ナトリウム等の臭素化合物が挙げられる。なお、臭素化合物の添加量は、給水W21中の次亜塩素酸に由来する有効塩素:臭素化合物のモル比が1:1~10程度となることが好ましく、1:1~2程度とするとなおよい。
以下では説明の簡略化のため、第3薬剤が臭化ナトリウムである例について説明するが、本発明はこれには限られない。
【0040】
水質センサ11は、給水W21の水質を測定する。水質センサ11は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、水質センサ11は、給水W21の水質として、TOC(Total Organic Carbon:全有機炭素量)、COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)、BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)、AOC(Assimilable Organic Carbon:同化可能有機炭素量)等の有機物量や、細菌数、ATP数等の微生物量のいずれか一つ以上を測定する。制御部30は、水質センサ11からこれらの測定値を受信し、受信した測定値を用いてバイオフィルムリスクを予測し、予測したバイオフィルムリスクに基づいて、給水W21内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスと薬注量を調整するため、給水W21への第1薬剤~第5薬剤の薬注量を設定する。
【0041】
あるいは、水質センサ11は、給水W21の水質として給水W21に含まれる還元性物質の濃度を測定してもよい。具体的には、水質センサ11は、還元性物質である鉄イオン、マンガンイオン等の金属イオンや、亜硝酸イオン等のイオン濃度、アンモニア性窒素(アンモニアイオン中の窒素)の量、あるいはSBS(重亜硫酸ソーダ:NaHSO)等の濃度を測定する。制御部30は、水質センサ11からこれらの還元性物質濃度の測定値を受信し、受信した測定値を用いて給水W21内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスを調整するため、給水W21への第1薬剤~第5薬剤の添加量を設定する。
【0042】
第2給水ラインL22の上流側の端部は、接続部J1に接続されている。第2給水ラインL22の下流側の端部は、逆浸透膜モジュール14の一次側入口ポートに接続されている。第2給水ラインL22には、加圧ポンプ12が設けられる。
【0043】
加圧ポンプ12は、給水W22を吸入し、逆浸透膜モジュール14に向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ12には、インバータ13から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ12は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0044】
インバータ13は、加圧ポンプ12に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ13は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ13には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ13は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ12に出力する。
【0045】
給水W22は、加圧ポンプ12を介して逆浸透膜モジュール14に供給される。また、給水W22は、給水W21及び循環水W50(後述)からなる。
【0046】
逆浸透膜モジュール14は、給水W22を透過水W30と濃縮水W40とに分離する設備である。詳細には、逆浸透膜モジュール14は、加圧ポンプ12から吐出された給水W22を、溶存塩類が除去された透過水W30と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W40とに膜分離処理する設備である。逆浸透膜モジュール14は、単一又は複数の逆浸透膜エレメント(図示せず)を備える。逆浸透膜モジュール14は、これら逆浸透膜エレメントにより給水W22を膜分離処理し、透過水W30と濃縮水W40とを製造する。
【0047】
透過水ラインL3は、逆浸透膜モジュール14で分離された透過水W30を送出するラインである。透過水ラインL3の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール14の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL3の下流側の端部は、貯留タンク(図示せず)に接続されている。
【0048】
濃縮水ラインL4は、逆浸透膜モジュール14で分離された濃縮水W40が流通するラインである。濃縮水ラインL4の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール14の二次側ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL4の下流側は、接続部J2において、循環水ラインL5及び濃縮排水ラインL6に分岐している。
【0049】
循環水ラインL5は、濃縮水ラインL4に接続され、給水としての濃縮水(循環水W50)を給水ラインL2に返送するラインである。本実施形態においては、循環水ラインL5は、濃縮水ラインL4を流通する濃縮水W40を循環水W50として、給水ラインL2における加圧ポンプ12よりも上流側に返送(循環)させるラインである。循環水ラインL5の上流側の端部は、接続部J2において濃縮水ラインL4に接続されている。また、循環水ラインL5の下流側の端部は、接続部J1において、給水ラインL2に接続されている。循環水ラインL5には、定流量弁15が設けられる。
【0050】
定流量弁15は、循環水ラインL5を流通する循環水W50の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する機器である。定流量弁15において保持される「一定流量値」とは、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を有するものを含む。定流量弁15は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。なお、定流量弁15は、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0051】
濃縮排水ラインL6は、濃縮水ラインL4に接続され、濃縮排水W60としての濃縮水を系外へ排出するラインである。本実施形態においては、濃縮排水ラインL6は、接続部J2において濃縮水ラインL4に接続され、逆浸透膜モジュール14で分離された濃縮水W40を、濃縮排水W60として装置外(系外)に排出するラインである。濃縮排水ラインL6には、第2塩素濃度センサ10と、比例制御排水弁16が設けられる。
【0052】
第2塩素濃度センサ10は、濃縮排水ラインL6における濃縮排水W60中の結合塩素濃度を測定する機器である。第2塩素濃度センサ10は、制御部30と電気的に接続されている。第2塩素濃度センサ10で測定された濃縮排水W60の結合塩素濃度は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0053】
比例制御排水弁16は、濃縮排水ラインL6から装置外に排出される濃縮排水W60の流量を調節する弁である。比例制御排水弁16は、制御部30と電気的に接続されている。比例制御排水弁16の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4~20mA)を比例制御排水弁16に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮排水W60の排水流量を調節することができる。
【0054】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0055】
制御部30は、第1塩素濃度センサ9、及び/又は第2塩素濃度センサ10により測定された塩素濃度に基づいて、第1薬剤添加装置4によって添加される安定化剤の薬注量、第2薬剤添加装置5によって添加される還元剤の薬注量、第3薬剤添加装置6によって添加される臭素化合物の薬注量、第4薬剤添加装置7によって添加される塩素系酸化剤の薬注量、第5薬剤添加装置8によって添加される安定化剤の薬注量を調整することにより、給水W21内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスを調整する薬注制御部としての機能を実行する。なお、本明細書では、第1塩素濃度センサ9が測定する「遊離塩素濃度」と、第2塩素濃度センサが測定する「結合塩素濃度」とを、まとめて「塩素濃度」とも呼称する。
【0056】
なお、制御部30が、第1塩素濃度センサ9により測定された遊離塩素濃度と、第2塩素濃度センサ10により測定された結合塩素濃度との双方の塩素濃度を用いる場合には、例えば、双方の塩素濃度のうち高い方又は低い方の塩素濃度のみを用いてもよい。
【0057】
本実施形態においては、例えば、第1塩素濃度センサ9、及び/又は第2塩素濃度センサ10により測定された塩素濃度の領域を、低濃度の領域から高濃度の領域へと順に第1領域、第2領域、第3領域、第4領域に分割した場合に、塩素濃度が第1領域にある場合には、制御部30は、第4薬剤添加装置7を制御することにより、給水W21中の安定化次亜塩素酸の濃度を適正値まで高めるため、塩素系酸化剤の薬注量を増加させると共に、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整してもよい。
【0058】
また、塩素濃度が第2領域にある場合には、制御部30は、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整してもよい。
【0059】
また、塩素濃度が第3領域にある場合には、制御部30は、第3薬剤添加装置6を制御することにより、逆浸透膜モジュール14の逆浸透膜へのダメージを低減させるため、給水W21への臭素化合物の薬注量を増加させると共に、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整してもよい。
【0060】
また、塩素濃度が第4領域にある場合には、制御部30は、第2薬剤添加装置5を制御することにより、給水W21中の塩素濃度を適正値まで下げるため、給水W21への還元剤の薬注を開始すると共に、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整してもよい。
【0061】
なお、上記の制御内容はあくまで一例であって、これには限定されない。例えば、塩素濃度が第2~第4領域のいずれかにある場合に、制御部30は、第4薬剤添加装置7を制御することにより、塩素系酸化剤の薬注量を減少させてもよい。
【0062】
〔発明の動作〕
以下、本発明の実施形態である水処理システム1の動作例について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の水処理システム1の動作を示すフローチャートである。
なお、以下では、上記の第1領域を塩素濃度がC未満の領域とし、上記の第2領域を塩素濃度がC以上C未満の領域とし、上記の第3領域を塩素濃度がC以上C未満の領域とし、上記の第4領域を塩素濃度がC以上の領域とする。
【0063】
以下の表1は、C~Cの設定例を示す。濃縮水中での管理濃度は、有効塩素濃度として0.5~2.0mg/Lが好適と考えられる。給水中での濃度は、この値を濃縮倍率で割った値となるが、回収率が50~80%となることを想定した場合、濃縮倍率は2~5倍となる。これは、濃縮倍率=1/(1-回収率)なる数式に基づく。
【表1】
【0064】
ステップS1において、第1塩素濃度センサ9及び/又は第2塩素濃度センサ10によって測定される塩素濃度がC未満である場合(S1:YES)には、処理はステップS2に移行する。第1塩素濃度センサ9又は第2塩素濃度センサ10によって測定される塩素濃度がC以上である場合(S1:NO)には、処理はステップS3に移行する。
【0065】
ステップS2において、制御部30は、第4薬剤添加装置7を制御することにより、塩素系酸化剤の薬注量を増加させると共に、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整する。その後、処理はステップS1に移行する(リターン)。
【0066】
ステップS3において、第1塩素濃度センサ9又は第2塩素濃度センサ10によって測定される塩素濃度がC以上C未満である場合(S3:YES)には、処理はステップS4に移行する。第1塩素濃度センサ9又は第2塩素濃度センサ10によって測定される塩素濃度がC以上である場合(S3:NO)には、処理はステップS5に移行する。
【0067】
ステップS4において、制御部30は、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整する。その後、処理はステップS1に移行する(リターン)。
【0068】
ステップS5において、第1塩素濃度センサ9及び/又は第2塩素濃度センサ10によって測定される塩素濃度がC以上C未満である場合(S5:YES)には、処理はステップS6に移行する。第1塩素濃度センサ9又は第2塩素濃度センサ10によって測定される塩素濃度がC以上である場合(S5:NO)には、処理はステップS7に移行する。
【0069】
ステップS6において、制御部30は、第3薬剤添加装置6を制御することにより、給水W21への臭素化合物の薬注量を増加させると共に、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整する。その後、処理はステップS1に移行する(リターン)。
【0070】
ステップS7において、制御部30は、第2薬剤添加装置5を制御することにより、給水W21への還元剤の薬注を開始すると共に、第1薬剤添加装置4及び第5薬剤添加装置8を制御することにより、給水W21中に遊離塩素を残さないよう、安定化剤の薬注量を調整する。その後、処理はステップS1に移行する(リターン)。
【0071】
〔本実施形態の効果〕
上述した本実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本発明の水処理システム1は、原水W10をろ過して給水W21を生成するろ過装置3と、原水W10をろ過装置3に供給する原水ラインL1と、ろ過装置3で生成された給水W21を透過水W30と濃縮水W40とに分離する逆浸透膜モジュール14と、給水W22を逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインL2と、逆浸透膜モジュール14で分離された透過水W30を送出する透過水ラインL3と、逆浸透膜モジュール14で分離された濃縮水W40を送出する濃縮水ラインL4と、濃縮水W40の全部又は一部を濃縮排水W60として、系外に排出する濃縮排水ラインL6と、給水W21に安定化剤を薬注する第1薬剤添加装置4と、安定化剤の薬注量を調整することにより、給水W21内の塩素系酸化剤と安定化剤のモル比のバランスを調整する制御部30と、を備える。
【0072】
逆浸透膜モジュールへの給水として、ろ過装置3によりろ過された給水を用いる場合、ろ過後の給水中の残留塩素濃度の変動は大きなものとなる。安定化剤の薬注を調整することにより、逆浸透膜モジュールの前段における塩素濃度を適正値とすることが可能となる。更に、とりわけろ過装置よりも後段における遊離塩素を除去する方法に比較して、システム全体での薬注の簡素化と薬品使用量の削減が可能となる。
【0073】
また、水処理システム1は、ろ過装置3の出口における塩素濃度を測定する第1塩素濃度センサ9を更に備え、第1薬剤添加装置4は、第1塩素濃度センサ9の下流において、給水W21に安定化剤を薬注し、制御部30は、第1塩素濃度センサ9により測定された塩素濃度に基づいて、安定化剤の薬注量を調整する。
【0074】
ろ過装置出口での塩素濃度に基づいて、安定化剤の薬注を調整することにより、逆浸透膜モジュールの前段における塩素濃度を適正値とすることが可能となる。
【0075】
また、水処理システム1は、第1塩素濃度センサ9の下流において、給水W21に還元剤を薬注する第2薬剤添加装置5を更に備え、制御部30は、第1塩素濃度センサ9により測定された塩素濃度に基づいて、還元剤の薬注量を制御する。
【0076】
ろ過装置出口での塩素濃度が高すぎる場合に、給水に還元剤を添加することにより、所定濃度の残留塩素を含む給水を、逆浸透膜モジュールに供給することが可能となる。
【0077】
また、還元剤は、SBS(重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガスのうちいずれか1以上である。
【0078】
還元剤として、SBS(重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガスのうちいずれか1以上を用いることにより、所定濃度の残留塩素を含む給水を、逆浸透膜モジュールに供給することが可能となる。
【0079】
また、水処理システム1は、第1塩素濃度センサ9の下流において、給水W21に臭素化合物を薬注する第3薬剤添加装置6を更に備え、制御部30は、第1塩素濃度センサ9により測定された塩素濃度に基づいて、臭素化合物の薬注量を制御する。
【0080】
臭素化合物を薬注して安定化剤を塩素系から臭素系に切り替えることで、給水の酸化力が弱まり、逆浸透膜の膜劣化の度合いを下げることが可能となる。
【0081】
また、水処理システム1は、原水W10に塩素系酸化剤を薬注する第4薬剤添加装置7を更に備え、制御部30は、第1塩素濃度センサ9により測定された塩素濃度に基づいて、原水W10への塩素系酸化剤の薬注を制御する。
【0082】
ろ過装置出口での塩素濃度が高すぎる又は低すぎる場合に、ろ過装置出口での塩素濃度に基づいて、塩素系酸化剤の薬注を制御することにより、逆浸透膜モジュールの前段における遊離塩素の濃度を適正値とすることが可能となる。
【0083】
また、水処理システム1は、原水W10に安定化剤を薬注する第5薬剤添加装置8を更に備え、制御部30は、第1塩素濃度センサ9により測定された塩素濃度に基づいて、原水W10に薬注される安定化剤と、給水W21に薬注される安定化剤との双方の薬注を制御する。
【0084】
系内に配管やタンクが多く存在するため、原水の滞留時間が長い場合、遊離塩素が揮発してしまう。遊離塩素を安定化次亜塩素酸等の結合体とすることにより、系内をよりクリーンに保つことが可能となる。
【0085】
また、水処理システム1は、濃縮水ラインL4又は濃縮排水ラインL6における塩素濃度を測定する第2塩素濃度センサ10を更に備え、制御部30は、第1塩素濃度センサ9により測定された塩素濃度に加えて、第2塩素濃度センサ10により測定された塩素濃度に基づいて薬注を制御する。
【0086】
第1塩素濃度センサ9により測定された塩素濃度のみならず、還元剤・安定化剤・臭素化合物の薬剤添加装置、更には逆浸透膜モジュール14よりも後段の、濃縮水ラインL4又は濃縮排水ラインL6における塩素濃度にも基づいて薬注を制御することにより、各薬剤の薬注量のバランスをより適切に調整することが可能となる。
【0087】
また、安定化剤中には、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート成分、及び/又はポリマーが含まれてもよい。
【0088】
膜劣化は安定化剤の添加量を増加する事で低減できると考えられるが、遷移金属が触媒となって劣化を促進する場合、これだけでは不十分であり、前記の金属に対するキレート効果、分散効果を有する成分を添加することで、遷移金属を封鎖でき、膜劣化のより一層の抑制が可能となる。特に、安定化剤と同じ比率で添加される場合、添加量が増えると、遷移金属に対する封鎖効果を高める事ができ、相補的な効果で膜劣化を軽減する事が出来る。
また、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート成分は、遷移金属の封鎖作用をする以外に、金属が溶解度を超えて析出するのを防止する役割も果たす。これにより、バイオフィルムの抑制と同時に、金属スケールの生成による膜閉塞を防止することが可能となる。
バイオフィルムとスケールが複合的に生成する場合、スケール分がバインダーとなる事でバイオフィルム構造が強化される傾向があるが、上記のスケール抑制効果によって、強固なバイオフィルムとなるのを防止すると共に、安定化次亜臭素酸の有するバイオフィルム抑制効果と併せる事によって、より一層のバイオフィルム抑制効果が期待される。
更に、キレート成分は、細菌の生息に必要な必須金属を奪う作用や、細胞内の金属と反応することで細胞を崩壊させる作用により、それ自体が殺菌効果も有し、防腐効果が得られる事での保存安定性向上が期待される共に、処理対象水への添加時には、安定化次亜臭素酸と相補的に作用する事で、より一層のバイオフィルム抑制効果が期待される。
【0089】
〔変形例〕
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0090】
〔変形例1〕
水処理システム1においては、第1塩素濃度センサ9及び第2塩素濃度センサ10が備わり、薬注制御部としての制御部30は、これらのセンサによって測定される塩素濃度に基づいて、薬注を制御するが、これには限定されない。例えば、水処理システム1は、第1塩素濃度センサ9の代わりに、原水ラインL1に設置される電位測定装置を備え、第2塩素濃度センサ10の代わりに、濃縮排水ラインL6に設置される電位測定装置を備えてもよい。更に、薬注制御部としての制御部30は、これらの電位測定装置によって測定される酸化還元電位に基づいて、薬注を制御してもよい。
【0091】
〔変形例2〕
水処理システム1は、上記の実施形態とは異なる構成を有してもよい。例えば、上記では循環水ラインL5を備えるとしたが、これには限定されず、循環水ラインL5を有さない構成としてもよい。また、水処理システム1は、臭素化合物を薬注する第3薬剤添加装置6を有さない構成としてもよい。また、水処理システム1は、安定化剤を薬注する第5薬剤添加装置8を有さない構成としてもよい。また、水処理システム1において、塩素系酸化剤を薬注する第4薬剤添加装置7は、原水ラインL1ではなく、給水ラインL2に備わっていてもよい。また、水処理システム1は、第1塩素濃度センサ9と第2塩素濃度センサ10は、いずれか一方のみを有する構成としてもよい。
【0092】
〔変形例3〕
また、水処理システム1及び1Aは、更に、耐塩素膜を使用すると、膜劣化の影響をより受け難くなるのでより好適である。上述の薬注調整手法と併用することで、より劣化影響を低減することができる。耐塩素膜としては、例えばポリアミド系の材料を用いて製造されるものがある。
【0093】
〔変形例4〕
また、水処理システム1及び1Aにおいて、膜洗浄工程にも薬剤を添加した給水を用いて行うのが好ましい。膜洗浄工程としては、フラッシング等が有るが、濃縮水ラインに給水ラインを接続して通水してもよい。
【0094】
〔変形例5〕
また、水処理システム1及び1Aにおいて、劣化防止の点から、塩素と膜との接触量を低減するため、バイオフィルムの発生時のみ、間欠的に上記の薬剤を添加してもよい。
【0095】
〔変形例6〕
また、水処理システム1及び1Aにおいて、当該システム休止中の微生物繁殖を抑制するためには、当該システムの休止前に、上記の薬剤を添加しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0096】
1 水処理システム、
3 ろ過装置
4 第1薬剤添加装置(第1薬注装置)
5 第2薬剤添加装置(第2薬注装置)
6 第3薬剤添加装置(第3薬注装置)
7 第4薬剤添加装置(第4薬注装置)
8 第5薬剤添加装置(第5薬注装置)
9 第1塩素濃度センサ(第1塩素濃度測定装置)
10 第2塩素濃度センサ(第2塩素濃度測定装置)
11 水質センサ(水質測定手段)
12 加圧ポンプ
14 逆浸透膜モジュール
30 制御部(薬注制御部)
L1 原水ライン
L2 給水ライン、
L3 透過水ライン
L4 濃縮水ライン、
L5 循環水ライン
L6 濃縮排水ライン、
L21 第1給水ライン
L22 第2給水ライン

図1
図2