(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/655 20150101AFI20221122BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20221122BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20221122BHJP
B60J 5/06 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
E05F15/655
E05F15/611
B60J5/00 A
B60J5/06 A
(21)【出願番号】P 2018220471
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】萩原 心一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】高田 陽介
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-036568(JP,A)
【文献】特開2014-113962(JP,A)
【文献】実開昭58-090971(JP,U)
【文献】特開2018-164615(JP,A)
【文献】特開2012-170624(JP,A)
【文献】特開2018-002019(JP,A)
【文献】特開昭63-017133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-17/00
B60J 5/00- 5/14
B60N 2/00- 2/90
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車している乗員の睡眠状態を判定する判定部と、
駆動装置により開閉される開閉体の作動音を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記判定部の判定の結果、前記乗員が睡眠中の場合は、前記乗員が睡眠中でない場合に比べて前記開閉体の作動音が小さくなるように制御
し、
前記判定部による前記睡眠状態の判定には、前記乗員の睡眠の深さの判定が含まれており、
前記制御部は、前記判定部による前記乗員の睡眠の深さの判定結果に応じて前記作動音の大きさを変更する開閉体制御装置。
【請求項2】
車両に乗車している乗員の睡眠状態を判定する判定部と、
駆動装置により開閉される開閉体の作動音を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記判定部の判定の結果、前記乗員が睡眠中の場合は、前記乗員が睡眠中でない場合に比べて前記開閉体の作動音が小さくなるように制御し、
前記制御部は、前記乗員が着座している座席の背凭れの傾倒角度を変化させるシート装置による前記傾倒角度及び前記背凭れの作動速度を制御するシート制御部を有しており、
前記シート制御部は、前記判定部により前記乗員が睡眠中であると判定された場合、前記開閉体が開作動するときに、前記背凭れの前記傾倒角度を傾倒姿勢から直立姿勢に変化させる前記作動速度を通常の速度に比べて小さくす
る開閉体制御装置。
【請求項3】
前記作動音は、前記開閉体が開閉するときに外部に対して報知する報知音である請求項1
又は2に記載の開閉体制御装置。
【請求項4】
前記作動音は、前記開閉体が開閉するときに発生する機械音である請求項1
から3の何れか一項に記載の開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開閉体の作動音等を制御する開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の開閉体(リアスライドドア等)の作動時に車両周囲の人への注意喚起のためにブザー等の報知音を吹鳴させる開閉体制御装置が知られている(例えば、特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の開閉体制御装置は、車両周囲の騒音を複数のマイクで集音し、集音された騒音の音量に基づいて報知音の音量を変更する技術である。例えば、車両周囲がうるさい場合には報知音の音量を大きくし、車両周囲が静かな場合には報知音の音量を小さくしている。
【0004】
特許文献2に記載の開閉体制御装置は、開閉体に設けられた複数の距離センサにより検出されたユーザのスワイプ動作に基づいて、報知音の音量を変更する技術である。例えば、スワイプ動作が距離センサから遠い位置で行われた場合には報知音を標準音量に設定し、スワイプ動作が距離センサから近い位置で行われた場合には報知音を小音量に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-144432号公報
【文献】特開2014-177819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、車両周囲の騒音により報知音を画一的に設定しているため、ユーザが期待する報知音量と一致するとは限らない。例えば、車内で幼児が座席の背凭れを傾倒させて睡眠している場合、大音量の報知音により幼児が起きてしまうおそれがある。
【0007】
特許文献2に記載の技術では、ユーザ操作により報知音を変更することが可能であるため、特許文献1に記載の技術に比べてユーザが期待する報知音量に近付けることができる。しかしながら、煩雑な報知音量の変更作業をユーザに要求することとなり、利便性が低下してしまう。
【0008】
そこで、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザが期待する開閉体の作動音を提供する開閉体制御装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る開閉体制御装置の特徴構成は、車両に乗車している乗員の睡眠状態を判定する判定部と、駆動装置により開閉される開閉体の作動音を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記判定部の判定の結果、前記乗員が睡眠中の場合は、前記乗員が睡眠中でない場合に比べて前記開閉体の作動音が小さくなるように制御する点にある。
【0010】
本構成では、乗員の睡眠状態に連動させて開閉体の作動音を変更している。つまり、乗員が睡眠中の場合、駆動装置により開閉される開閉体の作動音が、乗員が睡眠中でない場合の通常の作動音に比べて小さくなるように制御している。これにより、例えば、車内で睡眠している幼児等の乗員がいる場合、この幼児が大きな作動音により起きてしまうといった不都合を防止できる。しかも、制御部により開閉体の作動音を制御しているため、ユーザが作動音を設定する必要がなく利便性が高い。よって、本構成の開閉体制御装置は、ユーザの利便性を損なうことなく、ユーザが期待する開閉体の作動音を提供することができる。
【0011】
他の特徴構成は、前記作動音は、前記開閉体が開閉するときに外部に対して報知する報知音である点にある。
【0012】
本構成のように、開閉体の作動音を外部に対しての報知音とすれば、例えば、乗員が睡眠中の場合に報知音が聞こえにくいので覚醒しにくくなると共に、車両周辺にいる人に開閉体の開閉を認識させることができる。
【0013】
他の特徴構成は、前記作動音は、前記開閉体が開閉するときに発生する機械音である点にある。
【0014】
本構成のように、作動音を開閉体の機械音とすれば、例えば開閉体の開閉速度を小さくすることにより作動音を小さくすることが可能となり、当該機械音によって睡眠中の乗員が目覚めるといった不都合を防止できる。
【0015】
他の特徴構成は、前記判定部による前記睡眠状態の判定には、前記乗員の睡眠の深さの判定が含まれており、前記制御部は、前記判定部による前記乗員の睡眠の深さの判定結果に応じて前記作動音の大きさを変更する点にある。
【0016】
本構成のように、乗員の睡眠の深さに応じて開閉体の作動音の大きさを変更すれば、例えば、眠りが深い乗員に対しては作動音を比較的大きくし、眠りが浅い乗員に対しては作動音を比較的小さくするといったことが可能となる。これによって、睡眠中の乗員を起こすことなく、車両周囲の人に対して開閉体が開閉作動していることを認識させることができる。よって、車両周辺の安全性と乗員の快適性を両立させることができる。
【0017】
他の特徴構成は、前記制御部は、前記乗員が着座している座席の背凭れの傾倒角度を変化させるシート装置による前記傾倒角度及び前記背凭れの作動速度を制御するシート制御部を有しており、前記シート制御部は、前記判定部により前記乗員が睡眠中であると判定された場合、前記開閉体が開作動するときに、前記背凭れの前記傾倒角度を傾倒姿勢から直立姿勢に変化させる前記作動速度を通常の速度に比べて小さくする点にある。
【0018】
本構成のようにシート制御部を有することで、例えば、幼児が座席の背凭れを傾倒させて睡眠している場合、開閉体の開作動と共に背凭れを起こすことにより、ユーザが幼児を抱きやすくなる。しかも、乗員が睡眠中の場合、背凭れを、傾倒姿勢から直立姿勢に変化させる作動速度を小さくしているので、睡眠中の乗員を無理やり覚醒させることもない。よって、ユーザの利便性と乗員の快適性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】開閉体制御装置の制御フローの一例を示す図である。
【
図3】開閉体制御装置の制御フローの一例を示す図である。
【
図4】開閉体制御装置の制御フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る開閉体制御装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、開閉体制御装置の一例として、ドアハンドルの把持等によってドアD(開閉体の一例)を開閉可能な自動車C(車両の一例)に備えられた開閉体制御装置Xとして説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
[全体構成]
図1に示すように、自動車Cは、通信部2を介してリモートキー1と双方向無線通信(近距離無線通信)が可能に構成されている。このリモートキー1は、ドア施錠ボタン、ドア開錠ボタン等を有しており、ユーザが何れかのボタンを押下することで自動車CのドアDが施錠,開錠可能に構成されている。また、自動車Cは、ユーザが、リモートキー1のバックドア開作動ボタンを押下することでバックドア(ドアDの一例)が開作動したり、リアドアハンドルを把持することでリアスライドドア(ドアDの一例)が開閉作動したりするように構成されている。
【0022】
自動車Cは、通信部2と照合部3と記憶部4と計測部5と判定部61と制御部6と操作部71と駆動機構7とを備えている。通信部2は、リモートキー1と所定の周波数で双方向無線通信(近距離無線通信)を行う通信インターフェースである。
【0023】
照合部3と判定部61と制御部6とは、ECU(エレクトロニックコントロールユニット)の一部として機能するものであり、各種処理を実行するCPUやメモリを中核としたソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されている。記憶部4は、RAMやHDDといったハードウェアで構成されている。計測部5は、自動車Cの駆動状態や周辺情報を検出する各種センサで構成されている。駆動機構7は、ECUからの制御信号を受けて、自動車Cの各種機能を駆動させる装置で構成されている。照合部3と記憶部4と計測部5と判定部61と制御部6と操作部71と駆動機構7とは、CAN(登録商標、コントローラーエリアネットワーク)やLIN(ローカルインターコネクトネットワーク)等で電気的に接続されている。
【0024】
通信部2は、送信部2aと受信部2bとを有しており、フロントドア等に設けられたアンテナ(不図示)を含んで構成されている。送信部2aは、アンテナから自動車Cからリモートキー1に要求信号を間欠的に送信する。受信部2bは、リモートキー1から要求信号に対する応答信号をアンテナを介して受信する。
【0025】
照合部3は、検知エリア内でリモートキー1からの応答信号を受けると、当該応答信号と認証用信号とを照合する。そして、照合部3による照合の結果、当該応答信号と認証用信号とが一致した場合、後述する開閉体制御部62がドア駆動部73にドアDの施錠,開錠を実行させる。ここで、検知エリアとは、通信部2がリモートキー1の応答信号を送受信可能なエリアとして、利用者が自動車Cを目視できるエリア(例えば、自動車Cから5m程度の近距離)に設定されている。
【0026】
記憶部4は、制御部6の各機能を実行させる各種プログラムを格納しており、各種プログラムがECUのメモリに一時的に読み出される。また、計測部5の計測結果が記憶されると共に、後述する判定部61における各種判定モードが記憶されている。
【0027】
計測部5は、車内カメラ51と車外カメラ52と距離センサ53と荷重センサ54と雨滴センサ55とドアセンサ56等を有している。計測部5の計測結果は記憶部4に記憶され、判定部61及び制御部6からの要求に応じて記憶部4から判定部61及び制御部6に計測結果が送信される。なお、計測部5の計測結果を記憶部4に記憶せずに、判定部61及び制御部6の要求に応じて計測部5から直接、判定部61及び制御部6に送信されるように構成しても良い。
【0028】
車内カメラ51及び車外カメラ52は、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を用いて、フレームの2次元画像を時系列に撮影し、デジタル変換して動画データをリアルタイムに出力する可視光カメラである。距離センサ53は、ミリ波レーダ,レーザセンサ及びクリアランスソナー等で構成されており、車両の周囲に位置する人物を含む物体との距離を測定する。車内カメラ51は、車内の運転手及び乗員を撮影できるように車内のバックミラー等に設置されている。車外カメラ52及び距離センサ53は、車外の周囲(前方,側方,後方)の状況を検出できるように車体外側に設置されている。
【0029】
荷重センサ54は、座席上の人の体動等を検出するために座席に設置された歪みゲージ等で構成されている。雨滴センサ55は、雨量を検出するセンサであり、ワイパーの固定部等に設置されている。ドアセンサ56は、ドアDの開度を検出したり、ドアDの施錠,開錠を検出したりするポジションセンサである。
【0030】
判定部61は、優先度判定部61aと睡眠状態判定部61bと危害性判定部61cと外部環境判定部61dとを有している。優先度判定部61aは、睡眠状態判定部61b,危害性判定部61c及び外部環境判定部61dの判定結果のうち何れを優先的に選択するか判定する。本実施形態では、危害性判定部61c及び外部環境判定部61dを第1優先順位とし、睡眠状態判定部61bを第2優先順位としている。
【0031】
睡眠状態判定部61bは、自動車Cに乗車している乗員の睡眠状態を判定する。この睡眠状態の判定には、乗員の睡眠深度(睡眠の深さ)の判定も含まれている。乗員の睡眠状態を判定する一例として、車内カメラ51で撮影した乗員の顔画像から、継続的に瞼を閉じている時間を計測して、計測時間が所定時間以上であれば睡眠していると判定し、この計測時間を積算することで睡眠深度を判定することができる。また、他の睡眠判定の一例として、荷重センサ54から取得した体動に基づいて睡眠深度を判定する、特開2014-233488号公報に記載の睡眠状態判定装置や、荷重センサ54から取得した振動出力波形の特徴量を取得し、教師データに基づいて学習されたサポートベクタマシンに該特徴量を適用することで睡眠深度を判定する、特開2015-171394号公報に記載の睡眠深度判定装置などを用いることができる。
【0032】
危害性判定部61cは、自動車Cの乗員や車内に載置されている荷物に対して、ドアDを開閉することにより危害を及ぼすか否かを判定する。危害判定の一例として、車内カメラ51で撮影した乗員がドアDに凭れかかって睡眠している場合、ドアDを開くことで乗員がドアDの開作動に巻き込まれるおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する。他の危害判定の一例として、車内カメラ51で撮影した荷物がドアDに寄りかかっている場合、ドアDを開くことで荷物が外部に落下するおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する。他の危害判定の一例として、後述する開閉体制御部62がドア駆動部73に対してドアDを閉める指令を出すとき、人がドアDや窓の可動範囲にいる場合には、ドアDや窓の閉作動中に人が挟まれるおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する。
【0033】
外部環境判定部61dは、自動車Cの周辺にある物体(人,荷物,雨等)に対して、ドアDを開閉することの影響を判定する。外部環境判定の一例として、車外カメラ52や距離センサ53に基づいてドアDの近傍に障害物があると認識された場合、ドアDを開くことでドアDが障害物に当たるおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する。他の外部環境判定の一例として、車外カメラ52でドアDに積み込まれる荷物の大きさを認識し、荷物の大きさに応じてドアDの開度を判定する。他の外部環境判定の一例として、雨滴センサ55に基づいて大量の雨が検出された場合、雨音に対して聞き取りやすい報知音量を判定する。
【0034】
制御部6は、開閉体制御部62と報知音制御部63とシート制御部64と照明制御部65等を有している。また、駆動機構7は、報知装置72とドア駆動部73(駆動装置の一例)とシート装置74と照明装置75等を有している。操作部71は、利用者が駆動機構7を作動させるために操作可能なインターフェースであり、イグニションスイッチ、タッチパネル及びスライドドア開閉ボタン等の各種操作ボタンで構成されている。
【0035】
開閉体制御部62は、ドアDを施錠,開錠したり、モータ等の駆動源によりドアD(リアスライドドア、バックドア等)を開閉させるドア駆動部73の作動を制御したり、不図示の窓の開閉作動を制御したりする。報知音制御部63は、報知装置72が出力する報知音の属性(音の大きさ(音圧)、音の高さ(周波数)、音色(信号波形))を制御する。本実施形態では、報知装置72がドアD付近に設置されており、ドアDを開閉する際に報知音を鳴らす一例を後述する。
【0036】
シート制御部64は、モータ等の駆動源により座席の背凭れ位置や座面位置を変更するシート装置74の作動を制御する。本実施形態におけるシート装置74は、座席の背凭れと、背凭れの傾倒角度を変化させるモータ等で構成される背凭れ駆動部とを有している。このシート装置74の作動は、乗員が着座している座席の背凭れの傾倒角度を、傾倒姿勢と直立姿勢との間で変化可能に構成されている。シート制御部64は、シート装置74による背凭れの傾倒角度及び背凭れの作動速度を制御する。照明制御部65は、室内の上側に設置された照明装置75の照度や照射形態(点灯,点滅等)を制御する。
【0037】
[開閉体制御装置]
本実施形態に係る開閉体制御装置Xは、上述した判定部61と制御部6とを備えている。以下、開閉体制御装置Xにおける制御形態について詳述する。
【0038】
睡眠状態判定部61bは、車内カメラ51等に基づいて自動車Cに乗車している乗員の睡眠状態を判定する。そして、制御部6の開閉体制御部62は、睡眠状態判定部61bの判定の結果、乗員が睡眠中の場合、乗員が睡眠中でない場合に比べてドアDの作動音が小さくなるように制御する。ここで、作動音とは、ドアDが開閉するときに報知装置72から外部に対して報知する報知音や、ドア駆動部73によりドアDが開閉するときに発生する機械音のことである。機械音については、開閉体制御部62によりドア駆動部73のドア開閉速度を制御することにより、音量が調整される。具体的には、ドア開閉速度を標準速度よりも小さくすれば機械音が小さくなり、ドア開閉速度を標準速度よりも大きくすれば機械音が大きくなる。
【0039】
開閉体制御部62は、睡眠状態判定部61bで判定された乗員の睡眠の深さ(睡眠深度)に応じてドアDの作動音の大きさを変更する。具体的には、乗員の睡眠深度が深い場合には、ドアDの作動音により覚醒する可能性が低いことから、開閉体制御部62は、周辺への注意喚起を優先してドアDの作動音が比較的大きくなるように制御する。一方、乗員の睡眠深度が浅い場合には、ドアDの作動音により覚醒する可能性が高いことから、危害性判定部61cや外部環境判定部61dにより周辺への注意喚起の必要性が低いことを判定してから、開閉体制御部62は、ドアDの作動音が比較的小さくなるように制御する。これにより、睡眠中の乗員を起こすことなく、車両周囲の人に対してドアDが開閉作動していることを認識させることができる。
【0040】
シート制御部64は、睡眠状態判定部61bにより乗員が睡眠中であると判定された場合、ドア駆動部73によりドアDが開作動するときに、該乗員が着席している座席の背凭れを傾倒姿勢から直立姿勢に変化させる作動速度が、標準速度(通常の速度)に比べて小さくなるように、シート装置74を制御する。これにより、例えば、幼児が座席の背凭れを傾倒させて睡眠している場合、シート装置74の開作動と共に背凭れを起こすことにより、ユーザが幼児を抱きやすくなる。しかも、乗員が睡眠中の場合、背凭れの作動速度を小さくしているので、睡眠中の乗員を無理やり覚醒させることもない。
【0041】
危害性判定部61cは、車内カメラ51等で検出された自動車Cの車内のドアD近傍にある乗員や荷物等に対して、ドアDの開閉作動により危害を及ぼすか否かを判定する。そして、危害性判定部61cの判定の結果、危害が及ぶ可能性が高く注意喚起が必要である場合、さらに、外部環境判定部61dが、周辺状況に基づいて報知音を吹鳴させても良いか否かを判定する。そして、外部環境判定部61dの判定の結果、報知音を吹鳴させても良い場合、報知音制御部63は、報知装置72の報知音の音色を変更する又は標準音量(通常の音量)よりも報知音量を大きくするといった制御を実行する。一方、外部環境判定部61dの判定の結果、報知音を吹鳴することが不可である場合、照明制御部65は、照明装置75の照明を点滅させるといった制御を実行する。
【0042】
外部環境判定部61dは、車外カメラ52,距離センサ53及び雨滴センサ55等で検出された自動車Cの外部環境に基づいて、ドアDの開閉作動により注意喚起が必要であるか否かを判定する。例えば、外部環境判定部61dは、車外カメラ52や距離センサ53に基づいてドアDの近傍に障害物があると認識された場合、ドアDを開くことでドアDが障害物に当たるおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する。そして、外部環境判定部61dの判定の結果、注意喚起が必要である場合、雨滴センサ55により雨が検出されれば、報知音制御部63は、報知装置72の報知音量を大きくするといった制御を実行する。外部環境判定部61dの判定の結果、注意喚起が必要でない場合、車外カメラ52により検出された積荷の大きさに応じてドアDの開度を判定し、開閉体制御部62は、ドア駆動部73によるドアDの開度を制御し、報知音制御部63は、報知装置72の報知音量を標準音量に設定するといった制御を実行する。
【0043】
続いて、
図2~
図4を用いて、開閉体制御装置Xの制御フローの一例を説明する。
図2には、乗員の睡眠状態に応じてリアスライドドアDの作動音を変更する一例が示されている。
【0044】
まず、睡眠状態判定部61bは、操作部71のスライドドア開閉ボタンが押下されたり、リアドアハンドルが把持されたりすることでリアスライドドアDの開作動指示があったか否かを判定する(#21)。そして、リアスライドドアDの開作動指示があった場合(#21Yes)、睡眠状態判定部61bは、乗員の睡眠状態を判定する(#22)。このとき、優先度判定部61aは、危害性判定部61c及び外部環境判定部61dによる判定が睡眠状態判定部61bによる判定よりも優先順位が高いと判定し、危害性判定部61c及び外部環境判定部61dによって注意喚起が必要であるか否かが判定される(#23)。危害性判定部61cの判定結果により、リアスライドドアD近傍に乗員や荷物等がありリアスライドドアDの開閉作動により危害を及ぼす場合(#23Yes)、報知音制御部63により、報知装置72の報知音量を標準音量よりも大きく吹鳴させる制御が実行される(#24)。また、外部環境判定部61dの判定結果により、車外においてリアスライドドアDの近傍に障害物があると認識された場合(#23Yes)、報知音制御部63により、報知装置72の報知音量を標準音量よりも大きく吹鳴させる制御が実行される(#24)。
【0045】
一方、危害性判定部61c及び外部環境判定部61dにより、注意喚起が必要でないと判定された場合(#23No)、睡眠状態判定部61bは、睡眠深度が所定深度よりも浅いか否かを判定する(#25)。睡眠深度が所定深度よりも浅い場合(#25Yes)、報知音制御部63及び開閉体制御部62は、リアスライドドアDの作動音が、乗員が睡眠中でない場合における標準設定値(通常の作動音)よりも小さく、且つ乗員が睡眠中の場合における睡眠設定値(<標準設定値)よりもさらに小さくなるように制御する。具体的には、報知音制御部63により外部に対して報知される報知音が極めて小さく又は無音となるように制御され、開閉体制御部62によりリアスライドドアDの開速度が標準速度よりも小さくなるように制御される(#26)。一方、睡眠深度が所定深度よりも深い場合(#25No)、報知音制御部63及び開閉体制御部62は、リアスライドドアDの作動音が、乗員が睡眠中でない場合における標準設定値よりも小さく、且つ乗員が睡眠中の場合における睡眠設定値(<標準設定値)よりも大きくなるように制御する。具体的には、報知音制御部63により外部に対して報知される報知音が標準設定値よりもやや小さくなるように制御され、開閉体制御部62によりリアスライドドアDの開速度が標準速度と同等に制御される(#27)。このように、乗員が睡眠中の場合、報知音を小さくしているので、睡眠中の乗員を無理やり覚醒させることがない。しかも、乗員の睡眠深度に応じてリアスライドドアDの作動音を変更しているので、乗員の快適性がさらに向上する。なお、
図2の#21~#27までの制御フローは、リアスライドドアDの開作動だけでなく、バックドアDの開作動についても同様に適用できる。
【0046】
次いで、睡眠状態判定部61bは、シート装置74の座席の背凭れが傾倒されているか否かを判定する(#28)。座席の背凭れが傾倒されている場合(#28Yes)、♯25と同様に、睡眠深度が所定深度よりも浅いか否かを判定する(#29)。睡眠深度が所定深度よりも浅い場合(#29Yes)、シート制御部64は、座席の背凭れを傾倒姿勢から直立姿勢に復帰駆動させる作動速度を標準速度に比べて小さくする(#30)。一方、睡眠深度が所定深度よりも深い場合(#29No)、シート制御部64は、座席の背凭れを傾倒姿勢から直立姿勢に復帰駆動させる作動速度を標準速度に設定する(#31)。このように、乗員が睡眠中の場合、背凭れの作動速度を小さくしているので、睡眠中の乗員を無理やり覚醒させることがなく、リアスライドドアDの開作動と共に背凭れを起こすことにより、ユーザが幼児を抱きやすくなる。
【0047】
図3には、ドアDの開閉に伴い危害性がある場合において、ドア開閉時の報知形態を変更する一例が示されている。
【0048】
まず、危害性判定部61cは、照合部3による照合の結果リモートキー1が認証され、リアドアハンドルを把持することによるリアスライドドアDの開閉作動指示や、リモートキー1のバックドア開作動ボタンの押下によるバックドア開作動指示があるか否かを判定する(#32)。そして、ドア開閉指示(リアスライドドアDの開閉作動指示やバックドア開作動指示の総称、以下「ドア開閉指示」という)があった場合(#32Yes)、危害性判定部61cは、ドアDの開閉作動により危害を及ぼすか否かを判定する(#33)。具体的には、危害性判定部61cは、乗員がリアスライドドアDに凭れかかって睡眠している場合、ドアDを開くことで乗員がドアDの開作動に巻き込まれるおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する(#34Yes)。また、危害性判定部61cは、荷物がバックドアDに寄りかかっている場合、バックドアDを開くことで荷物が外部に落下するおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する(#34Yes)。さらに、危害性判定部61cは、乗員や車外の人がドアDや窓の可動範囲にいる場合には、乗員等がドアDや窓の閉作動中に挟まれるおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する(#34Yes)。
【0049】
次いで、外部環境判定部61dは、周辺環境の状況により報知可能であるか否かを判定する(#35)。一例として、外部環境判定部61dにより自動車Cが夜間の住宅地で停車されていると判定された場合(#35No)、報知音を吹鳴させるのは適切でないので、照明制御部65が照明装置75を点滅させて注意喚起を促す(#37)。一方、外部環境判定部61dにより自動車Cが昼間の商業地で停車されていると判定された場合(#35Yes)、報知音を吹鳴させても影響が小さいので、報知音制御部63が報知装置72の報知音(音色)を警告音に変更するか、報知音量を大きくする(#36)。これにより、人に注意喚起を促して危害性を排除することができる。
【0050】
図4には、周辺環境に応じてドアDの開閉作動時における報知形態やドアDの開度を変更する一例が示されている。
【0051】
照合部3による照合の結果、リモートキー1が認証され、リアドアハンドルを把持することでリアスライドドアDの開閉作動指示や、リモートキー1のバックドア開作動ボタンの押下によるバックドア開作動指示があるか否かを判定する(#41)。そして、ドア開閉指示があった場合(#41Yes)、外部環境判定部61dは、ドアDの開閉作動により周辺環境に影響を及ぼすか否かを判定する(#42)。外部環境判定部61dは、ドアDの近傍に障害物がある場合、ドアDを開くことでドアDが障害物に当たるおそれがあるとして注意喚起が必要であると判定する(#43Yes)。次いで、外部環境判定部61dは、雨滴センサ55により雨が検出されたか否かを判定する(#44)。雨が検出された場合(#44Yes)、報知音制御部63は、報知装置72の報知音量を大きくするといった制御を実行する(#45)。その結果、雨音により報知音が聞こえないといった不都合が無く、周囲の人に対して注意喚起を確実に行うことができる。一方、雨が検出されない場合(#44No)、報知音制御部63は、報知装置72の報知音量を標準音量とする制御を実行する(#46)。
【0052】
#43の判定の結果、注意喚起が必要でない場合(#43No)、外部環境判定部61dは、雨滴センサ55により雨が検出されたか否かを判定する(#47)。雨が検出された場合(#47Yes)、外部環境判定部61dは、車外カメラ52により検出された積荷の大きさに応じてドアDの開度を判定する(#48)。外部環境判定部61dの判定の結果、積荷が小さい場合、開閉体制御部62によりドアDの開度を、積荷の積込みが可能な範囲で通常開度よりも小さくする制御が実行される(#49)。その結果、積荷を車内に収容する際、雨が車内に浸入して車内が水浸しになることを防止できる。一方、#47の判定の結果、雨が検出されていない場合(#47No)や#48の判定の結果、積荷が大きい場合(#48No)は、開閉体制御部62によりドアDの開度を通常開度(最大)にする制御が実行される(#50)。
【0053】
以上説明したように、本実施形態における開閉体制御装置Xにより、様々なシーンに適したドアDの開閉制御が実行される。上述した開閉体制御装置Xの制御フローは、必要に応じて適宜組み合わせることができる。
【0054】
[その他の実施形態]
(1)睡眠状態判定部61bは、車両に乗車している睡眠状態を車内カメラ51等で判定したが、操作部71の操作ボタンがユーザにより押下されたときに睡眠していると判定していても良い。この場合、ユーザ自ら乗員の睡眠状態を判断して、ドアDの作動音を小さくすることができる。
(2)優先度判定部61aは、危害性判定部61c及び外部環境判定部61dの判定結果を第1優先順位とし、睡眠状態判定部61bを第2優先順位としたが、危害性判定部61c及び外部環境判定部61dの注意喚起のレベルに応じて、睡眠状態判定部61bの優先順位を変更しても良い。
(3)ドア駆動部73により開閉されるドアDは、リアスライドドアDやバックドアDに加え、オートスイングドアで構成されたフロントドアであっても良く、モータ等の駆動源により駆動されるドアDであれば特に限定されない。
(4)リモートキー1が検知エリア内に入れば自動的に開錠し、検知エリア外に出れば自動的に施錠するスマートキーシステムであっても良い。この場合、リモートキー1のドア施錠ボタン及びドア開錠ボタンを省略することができる。
(5)上述した実施形態における開閉体制御装置Xは、自動車以外の車両に適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、車両の開閉体の作動音等を制御する開閉体制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
6 :制御部
61 :判定部
64 :シート制御部
73 :ドア駆動部(駆動装置)
74 :シート装置
C :自動車(車両)
D :ドア(開閉体)
X :開閉体制御装置