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特許7180322外壁目地の防水構造及び防水部材の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】外壁目地の防水構造及び防水部材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
E04B1/684 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018222829
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020084646
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸子
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-066036(JP,A)
【文献】特開2004-108048(JP,A)
【文献】特開平09-170273(JP,A)
【文献】特開2011-174322(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162454(JP,U)
【文献】特開平07-252928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/684
E04F 13/08
E04F 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルと該外壁パネルを支持するフレームとの間に配置され、隣接する外壁パネルとの間に形成される外壁目地を二次止水するシート状の第1防水部材と、
前記外壁目地の内側で、前記第1防水部材を貫通して前記フレームを建物躯体に固定する固定ビスと、
板状をなし前記固定ビスのビス頭より屋外側に配置され、組み付け後の状態で中央に形成された凹部の内側に前記ビス頭を被覆する弾性部材が配置され、かつ、両端部が前記ビス頭の両側で前記第1防水部材と前記外壁パネルとの隙間に挿入された第2防水部材と、
を有する外壁目地の防水構造。
【請求項2】
前記第1防水部材は弾性体で形成されており、
前記第1防水部材と前記第2防水部材の前記凹部の内側でかつ前記ビス頭の周囲に配置された弾性部材との間で互いに弾性復元力が作用している、
請求項1に記載の外壁目地の防水構造。
【請求項3】
前記第2防水部材は、
矩形板状に形成され、組み付け後の状態で中央に前記凹部が形成された金属製の本体部と、
前記本体部の屋内側に配置されると共に、前記本体部と同一形状に形成され、中央が前記本体部の前記凹部に接着され、両端部が弾性変形されることで前記凹部の内側に略収容された前記弾性部材と、
を備える請求項1又は請求項2に記載の外壁目地の防水構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載された外壁目地の防水構造に適用される防水部材の施工方法であって、
前記第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の一方側の端部が前記外壁目地を構成する一方の前記外壁パネルと前記ビス頭との隙間を通って前記第1防水部材と一方の前記外壁パネルとの隙間に挿入される第1工程と、
前記第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の他方側の端部が前記外壁目地を構成する他方の前記外壁パネルと前記ビス頭との隙間を通って前記第1防水部材と他方の前記外壁パネルとの隙間に挿入される第2工程と、
を含む防水部材の施工方法。
【請求項5】
前記第1工程及び前記第2工程により、前記第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の両端部が前記外壁パネルと前記第1防水部材との間に挿入され、該第2防水部材の屋内側面に配設された前記弾性部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の両端部が前記外壁パネルと前記第1防水部材との間に挿入されずに前記第1防水部材との間に発生する摩擦力により弾性変形され、前記第2防水部材の前記凹部の内側へ略収容されることを特徴とする
請求項4に記載の防水部材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁目地の防水構造及び防水部材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の外壁目地からの浸水を防ぐために、外壁目地の屋外側に一次止水材が配設され、一次止水材の屋内側に二次止水材が配設された構成が開示されている。この二次止水材は、シート状に形成されて、外壁を支持するフレームと建物の躯体(柱)との間に配設されている。また、この先行技術では、フレームと建物の躯体(柱)とを固定する固定部材(木ネジ)が、二次防水材とフレームを貫通して、建物の躯体に打ち込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-108048号公報
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、固定部材が二次防水部材を貫通しているため、二次防水部材に固定部材を貫通させる下穴が形成されることになる。このため、二次防水部材の経年劣化などの理由で下穴から浸水する可能性があり、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、外壁目地を二次止水する防水部材の止水性能を向上させることができる外壁目地の防水構造と、防水部材の施工方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る外壁目地の防水構造は、外壁パネルと該外壁パネルを支持するフレームとの間に配置され、隣接する外壁パネルとの間に形成される外壁目地を二次止水するシート状の第1防水部材と、前記外壁目地の内側で、前記第1防水部材を貫通して前記フレームを建物躯体に固定する固定ビスと、板状をなし前記固定ビスのビス頭より屋外側に配置され、組み付け後の状態で中央に形成された凹部の内側に前記ビス頭を被覆する弾性部材が配置され、かつ、両端部が前記ビス頭の両側で前記第1防水部材と前記外壁パネルとの隙間に挿入された第2防水部材と、を有している。
【0007】
第1の態様に係る外壁目地の防水構造では、外壁パネルと外壁パネルを支持するフレームとの間にシート状の第1防水部材が配置され、外壁目地を二次止水している。また、外壁目地の内側で第1防水部材を貫通する固定ビスのビス頭の屋外側には板状の第2防水部材が配置されている。ここで、組み付け後の状態では、第2防水部材の中央には凹部が形成され、かつ、両端部がビス頭の両側で第1防水部材と外壁パネルとの隙間に挿入されている。この凹部の内側では、弾性部材によってビス頭が被覆されている。これにより、ビス頭と第1防水部材の貫通孔との間が弾性部材によって止水され、第1防水部材の止水性能が向上される。
【0008】
第2の態様に係る外壁目地の防水構造は、前記第1防水部材は弾性体で形成されており、前記第1防水部材と前記第2防水部材の前記凹部の内側でかつ前記ビス頭の周囲に配置された弾性部材との間で互いに弾性復元力が作用している。
【0009】
第2の態様に係る外壁目地の防水構造では、弾性体により形成された第1防水部材と第2防水部材の弾性部材との間に弾性復元力が作用するため、第1防水部材と弾性部材との接触面が一層密になる。これにより、第1防水部材の止水性能が一層向上される。
【0010】
第3の態様に係る外壁目地の防水構造は、前記第2防水部材は、矩形板状に形成され、組み付け後の状態で中央に前記凹部が形成された金属製の本体部と、前記本体部の屋内側に配置されると共に、前記本体部と同一形状に形成され、中央が前記本体部の前記凹部に接着され、両端部が弾性変形されることで前記凹部の内側に略収容された前記弾性部材と、を備えている。
【0011】
第3の態様に係る外壁目地の防水構造では、第2防水部材が、同一形状に形成された矩形板状の本体部と弾性部材を配置させる簡易な構成とされている。この構成によれば、第2防水部材は、弾性部材の中央を本体部に接着し、本体部に固定されない両端部を中央側へ弾性変形させる。これにより、組み付け後の状態で、本体部の中央に形成された凹部の内側に弾性部材が略収容される。このように、簡単な構成で第2防水部材を形成することにより施工コストを抑えつつ第1防水部材の止水性能を向上させることが可能とされる。
【0012】
第4の態様に係る防水部材の施工方法は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に記載の外壁目地の防水構造に適用される防水部材の施工方法であって、前記第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の一方側の端部が前記外壁目地を構成する一方の前記外壁パネルと前記ビス頭との隙間を通って前記第1防水部材と一方の前記外壁パネルとの隙間に挿入される第1工程と、前記第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の他方側の端部が前記外壁目地を構成する他方の前記外壁パネルと前記ビス頭との隙間を通って前記第1防水部材と他方の前記外壁パネルとの隙間に挿入される第2工程と、を含んでいる。
【0013】
第4の態様に係る防水部材の施工方法では、隣接して配置され、外壁目地を構成する各々の外壁パネルとビス頭との隙間に第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の両端部がそれぞれ挿入されることにより第2防水部材が組み付けられる。これにより、第2防水部材は、外壁目地における既存の構成を利用して、簡単な方法で組み付けが可能とされる。
【0014】
第5の態様に係る防水部材の施工方法は、前記第1工程及び前記第2工程により、前記第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の両端部が前記外壁パネルと前記第1防水部材との間に挿入され、該第2防水部材の屋内側面に配設された前記弾性部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の両端部が前記外壁パネルと前記第1防水部材との間に挿入されずに前記第1防水部材との間に発生する摩擦力により弾性変形され、前記第2防水部材の前記凹部の内側へ略収容されることを特徴としている。
【0015】
第5の態様に係る防水部材の施工方法では、第4の態様に記載の第1工程及び第2工程により、第2防水部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の両端部が外壁パネルと第1防水部材との間に挿入される。このとき、第2防水部材の屋内側面に配設された弾性部材における前記外壁目地の延在方向と略直交する方向の両端部が外壁パネルと第1防水部材との間に挿入されずに第1防水部材との間に発生する摩擦力により弾性変形され、第2防水部材の凹部の内側へ略収容される。このように、シート状の第1防水部材と第2防水部材の屋内側面に配置された弾性部材との摩擦力を利用して、簡単な方法でビス頭を弾性部材で覆うことが可能となる。これにより、施工現場における作業負担を軽減しつつ、第1防水部材の止水性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、第1の態様に係る外壁目地の防水構造によれば、ビス頭と第1防水部材の貫通孔との間を弾性部材によって止水し、第1防水部材の止水性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0017】
第2の態様に係る外壁目地の防水構造によれば、第1防水部材と第2防水部材の弾性部材間で互いに作用する弾性復元力により、第1防水部材と弾性部材との隙間を一層密な状態とし、第1防水部材の止水性能を一層向上させることができるという優れた効果を有する。
【0018】
第3の態様に係る外壁目地の防水構造によれば、同一の矩形板状に形成された本体部と弾性部材とを対向して配置させるという簡易な構成で第2防水部材を形成し、施工コストを抑えつつ第1防水部材の止水性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0019】
第4の態様に係る防水部材の施工方法によれば、外壁目地の内側に固定ビスが取り付けられる既存の構成を利用して、簡単な方法で第2防水部材を組み付けることができるという優れた効果を奏する。
【0020】
第5の態様に係る防水部材の施工方法によれば、シート状の第1防水部材と第2防水部との間に発生する摩擦力を利用して、簡単な方法で第1防水部材の止水性能を向上させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(A)~(C)は第1実施形態に係る外壁目地の防水構造の要部を示しており、第2防水部材を外壁目地に装着する際の作業工程を示す工程図である。
図2】第1実施形態に係る第2防水部材の組み付け前の状態を示す平断面図である。
図3図4の3-3線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
図4】第1実施形態に係る外壁目地の防水構造が適用された建物を示す全体斜視図である。
図5】外壁目地から浸水が起こる現象を説明するための説明図である。
図6】第2実施形態に係る外壁目地の防水構造の要部を示す図1に対応する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、図1図5を用いて、本発明に係る外壁目地の防水構造の第1実施形態について説明する。
【0023】
本実施形態の外壁目地の防水構造は、建物10の二階部分に形成されたインナバルコニー28の出隅部16Aに適用されている。まず、建物10について説明する。
【0024】
図4に示されるように、建物10は、所謂ユニット建物である。建物10は、基礎12上に複数個の下階側(一階部分14)の建物ユニット18を据え付けた後に、当該下階側の建物ユニット18上に複数個の上階側(二階部分16)の建物ユニット20を据え付けることにより構成されている。各建物ユニット18、20は、4本の柱22と、それぞれの柱22の上端部に接合された矩形枠状の天井大梁24と、それぞれの柱22の下端部に接合された矩形枠状の床大梁26と、によって躯体フレームとされている。
【0025】
建物10の二階部分16の正面側には、インナバルコニー28が設けられている。インナバルコニー28は、二階部分を構成する建物ユニット20の内部に形成されている。詳細には、建物ユニット20の長手方向に面した一方側(建物10の正面側)の側面に形成された略矩形状の開口部30と、開口部30の幅方向両側に配置された側壁部32と、開口部30の高さ方向上方側に配置された垂れ壁34と、を備えている。また、開口部30の下半分は、手すり部36で覆われている。上記構成により、インナバルコニー28の側壁部32は、建物10の居室空間とインナバルコニー28とを連通させる出入口37に対して屋外側に張り出した構造とされており、二階部分16における出隅部16Aを構成している。
【0026】
図3には、インナバルコニー28の側壁部32を図4の3-3線で切断した状態の断面図が示されている。この図に示されるように、側壁部32高さ方向中間部から下端部において、屋外側の端部の意匠面には、建物ユニット20の柱22を囲むように外側コーナパネル40及び内側コーナパネル42からなる外壁パネル38が配置されている。外側コーナパネル40は、建物10の高さ方向に立設し、柱22の右側面22Aに平行に配置された右側壁40Aと柱22の正面22Bに平行に配置された外前壁40Bによってアングル状に形成されている。
【0027】
また、内側コーナパネル42は、建物10の高さ方向に立設し、柱22の左側面22Cに平行に配置された左側壁42Aと柱22の正面22Bに平行に配置された内前壁42Bによってアングル状に形成されている。
【0028】
このように、側壁部32の屋外側の端部では、外側コーナパネル40と内側コーナパネル42とが左右に隣接する部位に建物高さ方向に延在する外壁目地44が形成されている。以下、外壁目地44の防水構造について詳細に説明する。
【0029】
なお、図3に二点鎖線で示されるように、側壁部32の上端側では、柱22の建物正面側で、外側コーナパネル40と垂れ壁34で形成された外壁目地が形成されている。
【0030】
図3に示されるように、外壁目地44の屋外側には一次止水部46が設けられおり、外壁目地44の屋内側には二次止水部48が設けられている。一次止水部46は、弾性材料(本実施形態では、EPDM等のゴム)によって形成された長尺状のガスケット47によって構成されている。
【0031】
一方、二次止水部48は、外壁パネル38と外壁パネル38を支持するフレーム50との間に設けられている。フレーム50は、外側コーナパネル40を屋内側から支持する外側フレーム52と、内側コーナパネル42を屋内側から支持する内側フレーム54と、外側フレーム52と内側フレーム54の間の継ぎ目を屋内側から覆う継ぎ位置フレーム56と、を備えている。
【0032】
外側フレーム52は、板金により形成され、建物10の高さ方向に延在すると共に外側コーナパネル40と図示しない締結部材によって締結されている。また、外側フレーム52は、外側コーナパネル40の角部に対応してアングル状に形成されている。詳細には、外側フレーム52は、外側コーナパネル40の右側壁40Aに平行に配置された右側面部52Aと、外前壁40Bに平行に配置された外前面部52Bを備えている。この外前面部52Bの水平方向の寸法は、外前壁40Bの水平方向の寸法より長く設定されている。このため、外前面部52Bは、外壁目地44を屋内側から覆うように配置されている。
【0033】
内側フレーム54は、板金により形成され、建物10の高さ方向に延在すると共に内側コーナパネル42と図示しない締結部材によって締結されている。また、内側フレーム54は、内側コーナパネル42の角部に対応してアングル状に形成されている。詳細には、内側フレーム54は、内側コーナパネル42の左側壁42Aに平行に配置された左側面部54Aと、内前壁42Bに平行に配置された内前面部54Bを備えている。この内前面部54Bの水平方向の寸法は、内前壁42Bの水平方向の寸法より短く設定されている。
【0034】
上記構成により、外側フレーム52と内側フレーム54を組み付けた状態では、外側フレーム52と内側フレーム54との間のフレーム目地58が内側コーナパネル42の内前壁42Bの屋内側に配置される。そして、当該フレーム目地58にシリコン樹脂系の接着剤60(例えばPM100等)が塗布されている。
【0035】
また、継ぎ位置フレーム56は、長尺状に形成された板金で構成され、建物10の高さ方向に延在している。この継ぎ位置フレーム56は、内側コーナパネル42と図示しない締結部材によって締結されており、外側フレーム52と内側フレーム54の屋内側に配置されると共に外壁目地44とフレーム目地58とを屋内側から覆うように配置されている。これにより、外壁目地44の屋内側では、外側コーナパネル40を支持する外側フレーム52と、内側コーナパネル42を支持する継ぎ位置フレーム56とが重ね合わされている。
【0036】
また、柱22の正面22B、外側フレーム52、継ぎ位置フレーム56には、外壁目地44に沿って複数の下穴(符号省略)がそれぞれ形成され、同軸的に配置されている。この下穴に対して、外壁パネル38の屋外側から固定ビスとしてのタッピングビス62が取り付けられて、外壁パネル38が柱22に固定されている。なお、フレーム50(継ぎ位置フレーム56の屋内側面)と柱22との間には所定の板厚を有する合板64が適宜配置されており、合板64をフレーム50と共に共締めして柱22へ固定することにより、タッピングビス62の固定部が補強されている。
【0037】
一方、二次止水部48は、外壁パネル38とフレーム50との間に設けられた防水シート66と、タッピングビス62のビス頭62Aを屋外側から覆うビス頭防水部材68と、によって構成されている。なお、防水シート66が本発明における「第1防水部材」に相当し、ビス頭防水部材68が「第2防水部材」に相当する。
【0038】
防水シート66は、建物10の高さ方向に延在する長尺なシート材料とされ、一例として弾性体(本実施形態では、EPDM等のゴム)によって形成されている。防水シート66は、外壁目地44を屋内側から覆うように外壁パネル38とフレーム50との間に設けられており、上述したタッピングビス62によって、フレーム50、合板64と共に柱22に固定されている。これにより、外壁パネル38とフレーム50との間の隙間が止水されている。
【0039】
ビス頭防水部材68は、鋼板で形成された本体部70と、板状のブチルゴムで形成された弾性部材72により構成されている。ここで、図2には、外壁目地44に組み付けられる前の状態のビス頭防水部材68を水平方向に沿って切断した断面が示されている。また、図1(C)には、外壁目地44に組み付けられた後の状態のビス頭防水部材68を水平方向に沿って切断した断面が示されている。
【0040】
図2に示されるように、ビス頭防水部材68は、装着前の状態において、平板状の本体部70と、本体部70より屋内側で平行に配置された平板状の弾性部材72によって構成されている。本体部70と弾性部材72は、略同一の寸法及び形状を有しており、略矩形板状に形成されている。また、本体部70と弾性部材72は、正面視で外壁目地44の延在方向と略直交する方向を長手方向として配置されている。なお、本体部70及び弾性部材72の長手方向の寸法Lは、20.0mm程度に設定されることが好ましい。また、本体部70の板厚t1は0.35mm程度とされることが好ましく、弾性部材72の板厚t2は0.50mm~1.0mm程度に設定されることが好ましい。
【0041】
弾性部材72は、長手方向の中央部72Aが接着剤層73によって本体部70に接着されており、長手方向の両側の端部72Bは本体部70に固定されていない。なお、接着剤層73の水平方向に沿った寸法t3は10.0mm程度に設定されることが好ましく、端部72Bの水平方向に沿った寸法t4は5.0mm程度に設定されることが好ましい。
【0042】
ビス頭防水部材68の装着は、以下の要領で行われる。まず、予め建物ユニット20の柱22に、外壁目地44に跨って配置される各部材を工場で固定して現場に搬入する。具体的には、外側コーナパネル40、外側フレーム52、継ぎ位置フレーム56、合板64、防水シート66を柱22に予め固定する。次に、外側フレーム52の端部に接着剤60を塗布し、内側コーナパネル42が固定された内側フレーム54の端部を接着剤60に沿って配置し、フレーム目地58を形成する。その後、内側コーナパネル42と継ぎ位置フレーム56を固定して外壁目地44を形成する。
【0043】
次に、図1(A)に示されるように、ビス頭防水部材68を、その本体部70が屋外側に配置される向きにして、長手方向の一端をビス頭62Aと外側コーナパネル40との隙間74に臨ませる(第1工程)。この時、弾性部材72に対して剛性の高い鋼板からなる本体部70は、一端部70Aが外側コーナパネル40と防水シート66の間に挿入される。一方、弾性部材72の端部72Bは防水シート66との間に発生する摩擦力により、弾性変形しながらビス頭62A側に留まる(図1(B)参照)。
【0044】
次に、同様の要領でビス頭防水部材68の長手方向の他端をビス頭62Aと内側コーナパネル42との隙間74に臨ませる(第2工程)。これにより、図1(C)に示されるように、本体部70の他端部70Bが内側コーナパネル42と防水シート66の間に挿入される。また、本体部70の中央部には、平面視で屋内側に開放された略U字状の凹部76が形成される。そして、当該凹部76が外壁目地44の内側に挿入される。この段階では、弾性部材72は、長手方向両側の端部72Bがビス頭62A側に留まり、ビス頭62Aと共に凹部76の内側に収容されている。これにより、ビス頭62Aが弾性部材によって屋外側から被覆されている。
【0045】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図5に示されるように、外壁パネル38とフレーム50との間に防水シート66を設ける場合、タッピングビス62が取り付けられる部位では、タッピングビス62が防水シート66を貫通している。このため、ガスケット47が経年劣化等により破損すると、雨水78が外壁目地44から侵入し、防水シート66の下穴(符号省略)を通って屋内側へ浸水する。なお、図5において、防水シートを通って屋内側へ浸水した雨水を符号「80」で示す。
【0046】
しかし、本実施形態に係る外壁目地の防水構造では、タッピングビス62のビス頭62Aより屋外側に、当該ビス頭を被覆するビス頭防水部材68が配置されている。具体的には、ビス頭防水部材68を構成する本体部70は、長手方向の一端部70A及び他端部70Bがビス頭62Aの左右両側で外壁パネル38と防水シート66の間に挿入されている。このようにしてビス頭防水部材68を組み付けた後の状態では、本体部70の中央部に屋外側に突出した凹部76が形成され、凹部76が外壁目地44の内側に挿入されている。この凹部76の内側には弾性部材72が収容されており、ビス頭62Aを屋外側から被覆している。これにより、ビス頭62Aと防水シート66の下穴(符号省略)との間が弾性部材72によって止水され、外壁目地44からの浸水を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、防水シート66及びビス頭防水部材68の弾性部材72が弾性体で形成されている。また、弾性部材72は、防水シート66との間に発生する摩擦力により弾性変形されているため、防水シート66と弾性部材72との間に弾性復元力が作用している。このため、互いの弾性復元力により防水シート66と弾性部材72との接触面が一層密になり、防水シート66の止水性能をより一層向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、ビス頭防水部材68が、同一寸法に形成された矩形板状の本体部70と弾性部材72とを並べて配置し、長手方向の中央部を接着固定させるという簡易な構成とされている。このため、施工コストを抑えつつ外壁目地44からの浸水を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、ビス頭防水部材68は、その長手方向一方側の端部を外側コーナパネル40とビス頭62Aとの隙間74に挿入する。次いで、ビス頭防水部材68の長手方向他方側の端部を内側コーナパネル42とビス頭62Aとの隙間に挿入することにより組み付けが完了する。このように、ビス頭防水部材68は、外壁目地44の内側に固定ビス62が取り付けられるという既存の構成を利用して、簡単な方法で組み付けることができる。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、ビス頭防水部材68の長手方向の両端部をビス頭62Aと外壁パネル38との隙間74に挿入することにより、本体部70の長手方向の両端部70A,70Bが外壁パネル38と防水シート66の間に挿入される。このとき、ビス頭防水部材68の屋内側面に配設された弾性部材72の長手方向の両端部72A,72Bが外壁パネル38と防水シート66との間に挿入されずに防水シート66との間に発生する摩擦力により弾性変形され、本体部70の凹部76の内側へ収容される。このように、防水シート66とビス頭防水部材68の弾性部材72との摩擦力を利用して、簡単な方法でビス頭62Aを弾性部材72で覆うことができる。これにより、施工現場における作業負担を軽減しつつ、防水シート66の止水を向上させることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
以下、図6を用いて、本発明に係る外壁目地の防水構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0052】
図6(A)~(C)に示されるように、この第2実施形態に係る外壁目地の防水構造では、ビス頭防水部材82の本体部84の屋外側面に一対の突起86が設けられている点に特徴がある。一対の突起86は、本体部84の長手方向の中央部に間隔を空けて設けられており、正面視でビス頭62Aの左右両側に設けられた外壁パネル38との間の隙間74と重なる位置に配置されている。突起86は、本体部84を水平方向に沿った断面視で屋外側に凸をなす略三角形状に形成されており、本体部84の高さ方向に沿って連続的に形成されている。なお、突起86は、本体部84の高さ方向に沿って不連続(例えば破線状)に形成されていてもよい。
【0053】
(作用・効果)
上記構成のビス頭防水部材82は、基本的には第1実施形態のビス頭防水部材68の構成を踏襲しているため、同様の作用及び効果を得ることができる。また、本実施形態では、以下に説明するように、ビス頭防水部材82を装着する際の部材の位置決めが容易になる。
【0054】
本実施形態のビス頭防水部材82を装着する場合には、上述した第1実施形態と同様に、まず、予め建物ユニット20の柱22に、外壁目地44に跨って配置される各部材を工場で固定して現場に搬入する。具体的には、外側コーナパネル40、外側フレーム52、継ぎ位置フレーム56、合板64、防水シート66を柱22に予め固定する。
【0055】
次に、図6(A)に示されるように、ビス頭防水部材82の一端を外側コーナパネル40とビス頭62Aとの隙間74に臨ませて、本体部84に設けられた一対の突起86の一方側に係止される位置まで本体部84の一端部84Aを挿入する。その後、図6(B)、図6(C)に示されるように、外側コーナパネル40に隣接して内側コーナパネル42の組み付けを行う際に、他方側の突起86を基準に内側コーナパネル42の組み付け位置の位置決めをし、本体部84の他端部84Bを屋外側から覆うように内側コーナパネル42を取り付けることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、隣接して配置される外側コーナパネル40と内側コーナパネル42の組み付位置を本体部84の一対の突起86を基準に判断することができ、外壁パネル38の組み付け作業が容易になる。なお、ビス頭防水部材82は、第1実施形態のビス頭防水部材68と同様の要領で取り付けることも可能である。
【0057】
[補足説明]
上記各実施形態では、ビス頭防水部材68、82の本体部70、84が鋼板製とされたが、他の金属材料により形成されてもよく、樹脂材料で形成されてもよい。つまり、弾性部材72と比べて、剛性の高い材料で形成されていればよい。
【0058】
また、上記各実施形態では、ビス頭防水部材68、82の弾性部材72がブチルゴムで形成される構成としたが、これに限らず天然ゴム製でもよく、EPDM等の合成ゴムで形成してもよい。
【0059】
また、上記各実施形態の外壁目地の防水構造は、インナバルコニー28の出隅部16Aに適用したが、これに限らず、アルコーブやガレージの出隅部に適用してもよい。
【0060】
また、上記各実施形態の外壁目地の防水構造は、建物10の出隅部16Aに限らず、建物の入隅や、平面部に配置される外壁に形成される外壁目地に適用してもよい。
【0061】
また、上記各実施形態では、外壁パネル38を支持するフレーム50が建物ユニット20の柱22に固定される構成としたが、本発明はこれに限らず、フレーム50が天井大梁24や床大梁26に固定されてもよい。また、上記各実施形態の外壁目地の防水構造は、ユニット建物に限らず、鉄骨軸組工法で建築された建物に適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 建物(ユニット建物)
16A出隅部
38 外壁パネル
44 外壁目地
50 フレーム
62 タッピングビス(固定ビス)
62Aビス頭
66 防水シート(第1防水部材)
68 ビス頭防水部材(第2防水部材)
70 本体部
72 弾性部材
76 凹部
82 ビス頭防水部材(第2防水部材)
84 本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6