(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】作動油供給装置
(51)【国際特許分類】
F01M 1/16 20060101AFI20221122BHJP
F16K 31/363 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
F01M1/16 F
F01M1/16 G
F16K31/363
(21)【出願番号】P 2018224583
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】岸 真人
(72)【発明者】
【氏名】井手 健太
(72)【発明者】
【氏名】磯田 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】堀川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 暁之
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-105886(JP,A)
【文献】特開2011-132815(JP,A)
【文献】特開2011-169215(JP,A)
【文献】特開2018-080760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/16
F16K 31/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転により駆動されて、オイルを吸い込むとともに吐出するように構成され、オイルの吐出量を調整可能な可変容量型オイルポンプと、
前記可変容量型オイルポンプからのオイルの油圧を調整して、メインギャラリと、前記メインギャラリを除く前記エンジンの油圧デバイスとに分配する調圧バルブとを備え、
前記調圧バルブは、開口面積を変更可能に構成され、オイルを前記メインギャラリに流出させる第1流出口と、開口面積を変更可能に構成され、オイルを前記油圧デバイスに流出させる第2流出口とを含み、
前記調圧バルブは、前記第2流出口から前記油圧デバイスに分配されるオイルが前記油圧デバイスの要求油圧未満である際の前記第1流出口の開口面積を、前記油圧デバイスに分配されるオイルが前記要求油圧に到達した際の前記第1流出口の開口面積よりも、大きくするように構成され
、
前記第1流出口は、互いに独立した開口として設けられ、前記調圧バルブ内に流入したオイルを通過させることにより、オイルを前記メインギャラリに流出させる第1開口および第2開口を有する、作動油供給装置。
【請求項2】
前記第1流出口は、前記第1開口および前記第2開口を下流側で連通し、前記第1開口および前記第2開口を通過したオイルを前記メインギャラリに流出させる連通路を有する、請求項
1に記載の作動油供給装置。
【請求項3】
前記調圧バルブは、弁体と、前記弁体を挟み込むように配置される付勢部材および圧力室とを含み、
前記圧力室は、前記可変容量型オイルポンプからオイルが供給されるように構成され、
前記弁体は、前記圧力室による押圧力により、前記付勢部材の付勢力に抗して前記調圧バルブの一端から他端に向けて移動されることによって、前記第1開口、前記第2開口および前記第2流出口の開口面積を変化させるように構成されている、請求項
1または
2に記載の作動油供給装置。
【請求項4】
前記油圧デバイスは、可変動弁機構であり、
前記第1開口は、前記弁体が前記一端にある場合に全開状態になり、
前記第2開口は、前記弁体が前記一端にある場合に全閉状態になり、
前記第2流出口は、前記弁体が前記一端にある場合に全開状態になり、
前記弁体は、前記一端から前記他端に向けて移動するにしたがって、前記第1開口の開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から、前記第2開口の開口面積を徐々に大きくするように構成されている、請求項
3に記載の作動油供給装置。
【請求項5】
前記弁体は、前記一端から前記他端に向けて移動するにしたがって、前記第1開口の開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から全閉状態にした後の間のいずれかのタイミングから、前記第2流出口の開口面積を徐々に小さくするように構成されている、請求項
4に記載の作動油供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルポンプおよび調圧バルブを備える作動油供給装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、オイルポンプおよび調圧バルブを備える作動油供給装置が開示されている。オイルポンプは、オイルを調圧バルブに吐出するように構成されている。調圧バルブは、機械式のバルブであり、油圧デバイスおよびメインギャラリに、オイルを分配するように構成されている。作動油供給装置は、オイルポンプおよび調圧バルブにより、油圧デバイスおよびメインギャラリの要求油圧を満たすようにしてオイルを供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に開示されているような調圧バルブに、可変容量型オイルポンプを適用することにより、オイルの吐出量を電気的に制御(抑制)して、ポンプの仕事をより低減することが考えられる。しかしながら、このような可変容量型オイルポンプを用いる作動油供給装置では、オイルの吐出量を制御する電気部品が故障した場合、オイルの吐出量が極端に抑制され、エンジンの潤滑を行うメインギャラリの要求油圧を満たすことができなくなるという懸念がある。なお、エンジンの潤滑機能が損なわれると、エンジンの破損につながる場合がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、可変容量型オイルポンプの吐出量を制御する電気部品が故障した場合でも、メインギャラリの要求油圧を満たすことが可能な作動油供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における作動油供給装置は、エンジンの回転により駆動されて、オイルを吸い込むとともに吐出するように構成され、オイルの吐出量を調整可能な可変容量型オイルポンプと、可変容量型オイルポンプからのオイルの油圧を調整して、メインギャラリと、メインギャラリを除くエンジンの油圧デバイスとに分配する調圧バルブとを備え、調圧バルブは、開口面積を変更可能に構成され、オイルをメインギャラリに流出させる第1流出口と、開口面積を変更可能に構成され、オイルを油圧デバイスに流出させる第2流出口とを含み、調圧バルブは、第2流出口から油圧デバイスに分配されるオイルが油圧デバイスの要求油圧未満である際の第1流出口の開口面積を、油圧デバイスに分配されるオイルが要求油圧に到達した際の第1流出口の開口面積よりも、大きくするように構成され、第1流出口は、互いに独立した開口として設けられ、調圧バルブ内に流入したオイルを通過させることにより、オイルをメインギャラリに流出させる第1開口および第2開口を有する。
【0008】
この発明の一の局面による作動油供給装置では、上記のように構成することにより、可変容量型オイルポンプの吐出量を制御する電気部品が故障した場合でも、第2流出口から油圧デバイスに分配されるオイルが油圧デバイスの要求油圧に到達するまでの間において、第1流出口の開口面積を大きく確保することができる。したがって、相対的に油圧デバイスよりもメインギャラリにオイルを供給しやすくすることができる。また、可変容量型オイルポンプの吐出量を制御する電気部品が故障した場合で、第2流出口からのオイルが油圧デバイスの要求油圧未満となるような、エンジン回転数が低く、可変容量型オイルポンプからの吐出量が特に小さくなる場合でも、メインギャラリに必要なオイルを供給することができる。以上により、可変容量型オイルポンプの吐出量を制御する電気部品が故障した場合でも、メインギャラリの要求油圧を満たすことができる。また、第1流出口が1つの開口のみを有する場合と比較して、エンジン回転数に応じて、より柔軟に第1流出口の開口面積を変化させることができるので、より柔軟にメインギャラリに流出する油圧を変化させることができる。その結果、ポンプの仕事に、より無駄がない状態で、メインギャラリの要求油圧を満たすことができる。
【0011】
この場合、好ましくは、第1流出口は、第1開口および第2開口を下流側で連通し、第1開口および第2開口を通過したオイルをメインギャラリに流出させる連通路を有する。
【0012】
このように構成すれば、第1開口および第2開口を通過したオイルを別々にメインギャラリに流出させる場合と比較して、構成を簡素化することができる。また、複数の油路を設ける必要がなくなるため、エンジンを小型化することができる。
【0013】
上記第1流出口が第1開口および第2開口を有する構成において、好ましくは、調圧バルブは、弁体と、弁体を挟み込むように配置される付勢部材および圧力室とを含み、圧力室は、可変容量型オイルポンプからオイルが供給されるように構成され、弁体は、圧力室による押圧力により、付勢部材の付勢力に抗して調圧バルブの一端から他端に向けて移動されることによって、第1開口、第2開口および第2流出口の開口面積を変化させるように構成されている。
【0014】
このように構成すれば、圧力室、弁体および付勢部材という簡易かつ一般的な構成により、メインギャラリの要求油圧を満たすことが可能な構成を実現することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、油圧デバイスは、可変動弁機構であり、第1開口は、弁体が一端にある場合に全開状態になり、第2開口は、弁体が一端にある場合に全閉状態になり、第2流出口は、弁体が一端にある場合に全開状態になり、弁体は、一端から他端に向けて移動するにしたがって、第1開口の開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から、第2開口の開口面積を徐々に大きくするように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、正常に動作しなくてもエンジンの破損に繋がることのない可変動弁機構の要求油圧に優先してメインギャラリの要求油圧を満たすことができる。また、可変容量型オイルポンプが故障して、十分なオイルが吐出されないことにより、弁体が移動しない間においても、第1開口により、メインギャラリに必要なオイルを供給することができる。また、可変容量型オイルポンプが正常に動作している場合には、第1開口の開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から、第2開口の開口面積を徐々に大きくすることにより、可変動弁機構にも要求油圧を満たすような必要なオイルを供給することができる。
【0017】
上記第1開口の開口面積を全閉状態にする直前から第2開口の開口面積を徐々に大きくする構成において、好ましくは、弁体は、一端から他端に向けて移動するにしたがって、第1開口の開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から全閉状態にした後の間のいずれかのタイミングから、第2流出口の開口面積を徐々に小さくするように構成されている。
【0018】
このように構成すれば、第1開口と第2流出口とのそれぞれの弁体に閉じられるタイミングを互いに略重ならないようにすることができるので、エンジン回転数が低く弁体が移動しない間は、第1開口と第2流出口との両方から積極的にオイルを流出させて、エンジン回転数が高くなり弁体が移動した場合には、第2流出口の開口面積を維持しながら、第1開口の開口面積を小さくすることができる。したがって、エンジン回転数に合わせて適切に第1流出口と第2流出口との開口面積を変更して、ポンプの仕事に、より無駄がない状態で、メインギャラリの要求油圧を満たすことができる。
【0019】
なお、上記一の局面による作動油供給装置において、以下のような構成も考えられる。
【0020】
(付記項1)
すなわち、上記第1開口の開口面積を全閉状態にする直前から全閉状態にした後の間のいずれかのタイミングから、第2流出口の開口面積を徐々に小さくする作動油供給装置において、弁体は、一端から他端に向けて移動するにしたがって、第1開口の開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にした時点から、第2流出口の開口面積を徐々に小さくするように構成されている。
【0021】
このように構成すれば、第1開口と第2流出口とのそれぞれの弁体に閉じられるタイミングを互いに重ならないようにするとともに、弁体により第1開口が全閉になった直後に第2流出口を閉じ始めることができる。このため、ポンプの仕事に一層無駄がない状態で、メインギャラリの要求油圧を満たすことができる。
【0022】
(付記項2)
また、上記一の局面による作動油供給装置において、第1開口の開口面積を徐々に小さくして全閉状態にした時点は、油圧デバイスに分配されるオイルが要求油圧に到達した時点である。
【0023】
このように構成すれば、第1開口の開口面積を徐々に小さくして全閉状態にした時点において、メインギャラリの要求油圧だけでなく、油圧デバイスの要求油圧も満たすことができる。
【0024】
(付記項3)
また、上記調圧バルブは、弁体と、弁体を挟み込むように配置される付勢部材および圧力室とを含む作動油供給装置において、弁体が一端にある場合に、第1開口の開口面積と第2開口の開口面積との合計は、第2流出口の開口面積と等しい。
【0025】
このように構成すれば、弁体が移動を開始するまでの間、メインギャラリに流出する油圧と、油圧デバイスに流出する油圧とを等しくすることができるので、設計上、調圧バルブを、メインギャラリの要求油圧を満たすように容易に構成することができる。
【0026】
(付記項4)
また、上記一の局面による作動油供給装置において、調圧バルブは、可変容量型オイルポンプよりも上流側にオイルを返送するために、オイルを流出させる返送用流出口を含む。
【0027】
このように構成すれば、返送用流出口により、調圧バルブにおける過剰な油圧を逃がすことができるので、ポンプの仕事を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態による作動油供給装置を備えるエンジンを示した図である。
【
図2】一実施形態による作動油供給装置の調圧バルブのエンジン本体への取り付けについて説明するための斜視図である。
【
図3】一実施形態による作動油供給装置の調圧バルブを示した平面図である。
【
図4】
図3の500-500線に沿った模式的な断面図である。
【
図5】
図3の510-510線に沿った模式的な断面図である。
【
図6】一実施形態による作動油供給装置の調圧バルブの弁体の移動について説明するための図であり、(A)は弁体が初期位置にある状態を示し、(B)弁体が移動を開始した直後を示し、(C)は弁体が第1開口を完全に閉じた状態を示している。
【
図7】VTC側油圧と開口面積との関係を示した図である。
【
図8】一実施形態による可変容量型オイルポンプの正常時におけるエンジン回転数の変化に伴うVTC・メインギャラリに流出する油圧の変化について説明するための図である。
【
図9】一実施形態および比較例による可変容量型オイルポンプの異常時におけるエンジン回転数の変化に伴うVTC・メインギャラリに流出する油圧の変化について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
[実施形態]
(作動油供給装置の構成)
図1~
図9を参照して、本発明の一実施形態による作動油供給装置100の構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、作動油供給装置100は、エンジンEの構成部品であり、エンジンEを備えた自動車に搭載されている。作動油供給装置100は、オイルパン11内のオイル(エンジンオイル)を汲み上げてメインギャラリ12および可変動弁機構13(油圧デバイスの一例)(以下、VTCと記載)に供給(圧送)するように構成されている。メインギャラリ12に送られたオイルは、ピストンやクランクシャフトなどの潤滑に用いられる。VTC13に送られたオイルは、VTC13の駆動に用いられる。
【0032】
ここで、メインギャラリ12の要求油圧(潤滑を行うために必要とされる油圧)は、エンジン回転数が増加する程、高くなる。
【0033】
一方、VTC13の要求油圧は、所定のエンジン回転数で所定の要求油圧に達した場合には、さらに、エンジン回転数が増加したとしても、それ以上高い要求油圧が(略)必要とされない。すなわち、VTC13の要求油圧は、所定の回転数以上では(略)変わらない。
【0034】
したがって、作動油供給装置100は、メインギャラリ12とVTC13との各々に必要以上のオイルを送ること(無駄な仕事が発生すること)を抑制しながら、エンジン回転数の増加に応じてメインギャラリ12に供給する油量を特に増やすとともに、メインギャラリ12とVTC13とのそれぞれの要求油圧を満たすように、オイルパン11からのオイルを適切に分配している。
【0035】
作動油供給装置100は、可変容量型オイルポンプ2と、調圧バルブ3とを備えている。
【0036】
(可変容量型オイルポンプの構成)
図1に示すように、可変容量型オイルポンプ2は、エンジンEの回転により駆動されて、オイルパン11からオイルを吸い込むとともに、調圧バルブ3に向けてオイルを吐出するように構成されている。可変容量型オイルポンプ2は、ECU14による吐出容量制御の下、調圧バルブ3へのオイルの吐出量を調整可能に構成されている。
【0037】
一般的な機械式のオイルポンプは、エンジン回転数に比例してオイルの吐出量が増加するように構成されている。可変容量型オイルポンプ2は、仮に、吐出容量制御を行わない場合、一般的な機械式のオイルポンプと同様に、エンジン回転数に比例してオイルの吐出量を増加させることが可能である。また、可変容量型オイルポンプ2は、吐出容量制御を行うことにより、エンジン回転数を変化させなくても、オイルの吐出量を変化させることが可能に構成されている。すなわち、可変容量型オイルポンプ2は、吐出容量制御により、オイルの吐出し易さ(難さ)を変更可能に構成されている。
【0038】
具体的には、可変容量型オイルポンプ2は、内側に油圧室2aが設けられたポンプ本体21と、油圧室2aにオイルを供給するオイル制御装置22とを備えている。
【0039】
ポンプ本体21は、中空のハウジング23と、調整リング24と、インナーロータ25aと、アウターロータ25bとを含んでいる。
【0040】
調整リング24は、油圧室2aに隣接してハウジング23の内側に配置されている。調整リング24の内側には、インナーロータ25aと、アウターロータ25bとが配置されている。インナーロータ25aは、アウターロータ25bの内側に隙間(容積室25c)を隔てて、配置されている。インナーロータ25a(の中心位置)は、アウターロータ25b(の中心位置)から偏心している。なお、インナーロータ25aはエンジンEからの駆動力を伝達する回転駆動軸26に取り付けられているため、中心位置は移動しない。
【0041】
オイル制御装置22は、たとえば、電磁弁により構成されている。オイル制御装置22は、ECU14による吐出容量制御の下、油圧室2a内の油量(油圧)を変更して、ポンプ本体21から吐出される油量を変更可能に構成されている。詳細には、オイル制御装置22は、ECU14からの信号を受信して(電流を受けて)電磁弁の開度を調整することにより、油圧室2a内の油量(油圧)を変更して、ハウジング23内の調整リング24およびアウターロータ25bを、インナーロータ25aに対して移動させるように構成されている。これにより、インナーロータ25aに対するアウターロータ25bの偏心量(容積室25cの偏り)が変わり、可変容量型オイルポンプ2からのオイルの吐出量が調整される。
【0042】
ECU14は、可変容量型オイルポンプ2は、各部の要求油圧を満たしながらも、各部の要求油圧を大きく超えてしまうことがないように(ポンプに無駄な仕事をさせることがないように)、エンジン回転数の増加に伴って、オイルの吐出量を抑える方向に吐出容量制御を行うように構成されている。
【0043】
(調圧バルブの構成)
図1に示すように、調圧バルブ3は、可変容量型オイルポンプ2からの油圧(油量)を調整して、メインギャラリ12と、メインギャラリ12を除くエンジンEの油圧デバイス(VTC13)とに分配するように構成されている。
【0044】
図2に示すように、調圧バルブ3は、ボルトなどの固定部材(図示せず)により、シール部材E10を介してエンジン本体E1の平坦な取付面E1aに固定的に設置されている。調圧バルブ3は、エンジン本体E1に設けられる油路O1にオイルを流出させることにより、油路O1を介してメインギャラリ12(
図1参照)にオイルを供給するように構成されている。調圧バルブ3は、エンジン本体E1に設けられる油路O2にオイルを流出させることにより、油路O2を介してVTC13(
図1参照)にオイルを供給するように構成されている。油路O1および油路O2は、それぞれ、後述する筐体8の第1流出口82および第2流出口83に連通されている。
【0045】
調圧バルブ3は、圧縮バネ4(付勢部材の一例)と、圧力室5と、弁体6と、オイル流通室7と、筐体8とを備えている。
【0046】
図4に示すように、筐体8は、概して、所定方向に細長く延びる中空の四角柱形状に形成されている(
図2参照)。筐体8の内部空間は、概して、所定方向に延びる円柱形状に形成されている。弁体6、圧力室5および圧縮バネ4は、筐体8の内側(内部空間)に設けられている。
【0047】
圧力室5は、弁体6に隣接(接触)した状態で、筐体8内(調圧バルブ3)の一端31に配置されている。圧縮バネ4は、弁体6に接触(隣接)した状態で、筐体8内(調圧バルブ3)の他端32に配置されている。すなわち、圧力室5および弁体6は、筐体8内で弁体6を挟み込むように配置されている。
【0048】
なお、調圧バルブ3の一端31とは、弁体6が、筐体8の移動規制部Dに接触して、A2方向への移動が規制される位置(後述する弁体6の初期位置)である。また、調圧バルブ3の他端32とは、筐体8の後述する蓋部材8aと、圧縮バネ4とが接触する位置である。
【0049】
ここで、以下の説明では、弁体6の移動方向をA方向とする。A方向のうち、筐体8内の一端31から他端32を向く方向をA1方向とし、その逆方向をA2方向とする。また、A方向に直交する方向であり、調圧バルブ3とエンジン本体E1(
図2参照)とが並ぶ方向をB方向とする。B方向のうち、調圧バルブ3からエンジン本体E1を向く方向をB1方向とし、その逆方向をB2方向とする。A方向およびB方向に直交する方向をC方向とする。
【0050】
〈圧縮バネの構成〉
圧縮バネ4は、コイルバネであり、弁体6をA2方向(オイル流通室7)に向けて付勢している。したがって、圧縮バネ4は、可変容量型オイルポンプ2(
図1参照)の停止時(圧力室5の容積が最小の時)などにおいて、付勢により、弁体6をA2方向側の調圧バルブ3の一端31に配置するように構成されている。なお、以下では、弁体6がA2方向側の調圧バルブ3の一端31にある際の弁体6の位置を、弁体6の初期位置(圧力室5の容積が最小の時の弁体6の位置)とする。
【0051】
〈圧力室の構成〉
圧力室5は、可変容量型オイルポンプ2からオイルが供給されるように構成されている。詳細には、圧力室5は、可変容量型オイルポンプ2から調圧バルブ3に供給されて調圧バルブ3から流出したオイルが、供給されるように構成されている。なお、調圧バルブ3から流出したオイルは、エンジン本体E1に設けられた油路O2(
図1参照)から分岐した分岐油路O21(
図1参照)を介して、圧力室5に供給される。油路O2および分岐油路O21を流れる油量は、エンジン回転数に応じて増加する。このため、圧力室5は、エンジン回転数が増加するにつれて、体積が増加して、弁体6をA1方向に移動させる押圧力を増加させるように構成されている。
【0052】
〈弁体の構成〉
図4に示すように、弁体6は、円柱状の第1弁体部61と、第1弁体部61と同じ外径の円柱状の第2弁体部62と、第1弁体部61と第2弁体部62とを接続する軸部63とを含んでおり、概して、ダンベル形状に形成されている。
【0053】
第1弁体部61は、圧力室5のA1方向側に、圧力室5に隣接(接触)して配置されている。第1弁体部61の外径(直径)は、筐体8の円柱形状の内部空間の内径よりも僅かに小さい。これにより、第1弁体部61は、第1弁体部61のA1方向側(オイル流通室7)と、A2方向側(圧力室5)とでオイルの受け渡しがされないように、筐体8の円柱形状の内部空間を、液密に仕切っている。
【0054】
第2弁体部62は、圧縮バネ4のA2方向側に、圧縮バネ4に接触(隣接)して配置されている。したがって、第2弁体部62は、第2弁体部62のA1方向側(圧縮バネ4が配置される空間)と、A2方向側(オイル流通室7)とでオイルの受け渡しがされないように、筐体8の円柱形状の内部空間を、液密に仕切っている。
【0055】
軸部63は、筐体8の内部空間の中心軸線αに沿って延びている。軸部63は、オイル流通室7により周囲を囲まれている。弁体6は、中心軸線αを中心とする回転体である。したがって、弁体6は、中心軸線αを中心として回動可能な状態で筐体8の内側に配置されている。
【0056】
弁体6は、圧力室5による押圧力により、圧縮バネ4の付勢力に抗して調圧バルブ3の一端31(初期位置)から他端32に向けて(A1方向に向けて)移動されることによって、筐体8の後述する第1開口82a、第2開口82bおよび第2流出口83の開口面積を変化させるように構成されている。
【0057】
具体的には、第1弁体部61は、A1方向に向けて移動されることによって、第1開口82aおよび第2流出口83の開口面積を徐々に小さくするように構成されている。第2弁体部62は、A1方向に向けて移動されることによって、第2開口82bの開口面積を徐々に大きくするように構成されている。なお、第1弁体部61は、移動時にA方向において第2開口82bと重なることがない。また、第2弁体部62は、移動時にA方向において第1開口82aおよび第2流出口83と重なることがない。
【0058】
〈オイル流通室の構成〉
オイル流通室7は、筐体8の内側で、かつ、第1弁体部61と第2弁体部62との間に設けられている。
【0059】
オイル流通室7は、筐体8のオイルの流入口81に常に接続されている。また、オイル流通室7は、筐体8の後述する第1流出口82、第2流出口83および返送用流出口84に接続されている。
【0060】
〈筐体の構成〉
図4に示すように、筐体8は、蓋部材8aと、筐体本体8bとを含んでいる。
【0061】
蓋部材8aは、A1方向側から筐体本体8bに取り付けられており、筐体8(筐体本体8b)の内部空間を塞いでいる。蓋部材8aは、A1方向側から圧縮バネ4に接触している。
【0062】
筐体本体8bは、流入口81と、第1流出口82と、第2流出口83と、返送用流出口84と、圧力室5にオイルを供給するオイル供給口85とを有している。
【0063】
流入口81および返送用流出口84は、筐体本体8bのB2方向側に設けられている。一方、第1流出口82および第2流出口83は、筐体本体8bのB1方向側(エンジン本体E1側)に設けられている。したがって、第1流出口82および第2流出口83は、それぞれ、筐体本体8bのB1方向側のエンジン本体E1への取付面80に、外側の端部が接続されている(外側の端部が開口している)。
【0064】
流入口81は、可変容量型オイルポンプ2からのオイルを、オイル流通室7に流入させる貫通穴である。第1流出口82は、オイル流通室7のオイルを、メインギャラリ12に向けて流出させる貫通穴である。第2流出口83は、オイル流通室7のオイルを、VTC13に向けて流出させる貫通穴である。返送用流出口84は、オイル流通室7のオイルを、可変容量型オイルポンプ2よりも上流側に向けて流出(返送)させる貫通穴である。
【0065】
第1流出口82は、弁体6(第1弁体部61および第2弁体部62)により開口面積を変更可能に構成されている。第2流出口83は、弁体6(第1弁体部61)により開口面積を変更可能に構成されている。以下、詳細について説明する。
【0066】
第1流出口82は、第1開口82aと、第2開口82bと、連通路82cとを有している。
【0067】
第1開口82aおよび第2開口82bは、互いに独立した開口として設けられ、調圧バルブ3内(オイル流通室7)に流入したオイルを通過させることにより、オイルをメインギャラリ12に流出させるように構成されている。すなわち、第1開口82aおよび第2開口82bは、オイル流通室7から第1流出口82にオイルを導入する入口部分である。
【0068】
第1開口82aおよび第2開口82bは、それぞれ、B1方向側から見て、円形状を有している(
図3参照)。第1開口82aは、第2開口82bよりもA2方向に配置されている。第1開口82aの全開状態の開口面積は、第2開口82bの全開状態の開口面積よりも小さい。C方向において、第1開口82aの中心位置は、第2開口82bの中心位置と同じ位置にある(
図3参照)。なお、C方向において、第1開口82aおよび第2開口82bは、第2流出口83からずれた位置に配置されている(
図3~
図5参照)(
図1では説明の便宜上、C方向において同じ位置に示している)。
【0069】
連通路82cは、第1開口82aおよび第2開口82bを下流側で連通し、第1開口82aおよび第2開口82bを通過したオイルをメインギャラリ12に流出させるように構成されている。連通路82cは、第1開口82aおよび第2開口82bからそれぞれB方向に延びる貫通穴部分810および811と、貫通穴部分810および811を取付面80に沿って接続するA方向に延びる溝部分812とを有している。
【0070】
なお、調圧バルブ3は、エンジン本体E1の取付面E1a(
図2参照)にシール部材E10を介して取り付けられるため、貫通穴部分810(第1開口82a)からのオイルは、溝部分812を流れて、貫通穴部分811から外部の油路O1に流出する。
【0071】
第2流出口83は、B1方向側から見て、A方向に延びる長円形状を有している(
図3参照)。A方向において、第2流出口83は、第1開口82aと第2開口82bとの間に配置されている。A方向において、第2流出口83のA2方向端部(圧力室5側の端部)は、第1開口82aのA1方向端部(圧縮バネ4側の端部)と略同じ位置に配置されている。
【0072】
A方向において、第2流出口83の長さと、第1開口82aの長さとの合計は、第1弁体部61の長さよりも小さい。すなわち、A方向において、第1弁体部61は、少なくとも、第2流出口83と、第1開口82aとを同時に塞ぐことが可能な長さを有している。
【0073】
(調圧バルブの動作)
次に、
図6~
図9を参照して、エンジン回転数の増加に伴う調圧バルブ3の動作について説明する。
【0074】
〈可変容量型オイルポンプが正常である際の調圧バルブの動作〉
以下の説明は、可変容量型オイルポンプ2が正常に動作していること(故障なし)を前提とする。すなわち、オイルを吐出しやすい状態に可変容量型オイルポンプ2を制御可能であることを前提とする。
【0075】
図6(A)に示すように、はじめに、弁体6は、一端31(初期位置)にある。
【0076】
第1開口82aは、弁体6が一端31(初期位置)にある場合に、全開状態になる。第2開口82bは、弁体6が一端31(初期位置)にある場合に、第2弁体部62により全閉状態になる。第2流出口83は、弁体6が一端31(初期位置)にある場合に、全開状態になる。
【0077】
なお、第1開口82aのA2方向端部(圧力室5側の端部)は、弁体6が一端31(初期位置)にある場合に、第1弁体部61のA1方向端部(圧縮バネ4側の端部)と同じ位置にある。したがって、第1開口82aは、弁体6が一端31から他端32(A1方向)に移動を開始した場合に、即座に開口面積が小さくなり始める。また、第2開口82bのA2方向端部(圧力室5側の端部)は、弁体6が一端31(初期位置)にある場合に、第2弁体部62のA2方向端部(圧力室5側の端部)よりもA1方向側にある。したがって、第2開口82bは、第2弁体部62により完全に閉じられている。
【0078】
第1開口82aの開口面積と第2開口82bの開口面積との合計は、弁体6が一端31(初期位置)にある場合に、第2流出口83の開口面積と等しい。なお、弁体6が一端31(初期位置)にある場合には、第2開口82bは、上記の通り、第2弁体部62により全閉状態(開口面積がゼロ)となる。すなわち、弁体6が一端31(初期位置)にある場合に、第2開口82bの開口面積(全開状態の面積)と、第2流出口83の開口面積(全開状態の面積)とは等しい。
【0079】
そして、エンジン回転数(Ne)が徐々に増加して、VTC13に流出する油圧が所定の第1油圧P0(
図7、
図8参照)に到達した時点で、圧力室5の圧力が圧縮バネ4の付勢力よりも大きくなり、弁体6は、A1方向に向けて移動を開始する。エンジン回転数(Ne)が増加する程、弁体6は、A1方向に移動される。
【0080】
なお、VTC13に流出する油圧が第1油圧P0に到達する時点(弁体6が移動を開始する時点)までは、メインギャラリ12に流出する油圧は、エンジン回転数の増加に伴って、VTC13に流出する油圧と等しく推移する。これは、上記の通り、VTC13に流出する油圧が第1油圧P0に到達する時点までは、第1開口82aおよび第2開口82bの開口面積の合計と、第2流出口83の開口面積とが等しいためである。
【0081】
そして、
図6(B)に示すように、弁体6のA1方向への移動に伴い、第2開口82bが全閉に維持されるとともに、第2流出口83が全開に維持されたまま、第1開口82aの開口面積が徐々に小さくなる。したがって、第1開口82aおよび第2開口82bの開口面積の合計に対して第2流出口83の開口面積が大きくなるため、メインギャラリ12に流出する油圧が減少するとともに、VTC13に流出する油圧が大きく増加する。
【0082】
これにより、所定のエンジン回転数N1(
図8参照)に到達した時点で、VTC13に流出する油圧が、VTC13の要求油圧P1(
図7、
図8参照)を超える油圧になる。この際、メインギャラリ12に流出する油圧も、メインギャラリ12の要求油圧P2(
図7、
図8参照)を超える油圧になる。なお、エンジン回転数N1でのメインギャラリ12の要求油圧P2は、VTC13の要求油圧P1と比較して小さい。
【0083】
VTC13の要求油圧P1の要求油圧は、エンジン回転数N1よりも高いエンジン回転数となっても、略変化(増加)することはないが、メインギャラリ12の要求油圧P2は、エンジン回転数の増加に伴いさらに増加する。
【0084】
ここで、弁体6は、一端31から他端32(A1方向)に向けて移動するにしたがって、第1開口82aの開口面積を徐々に小さくして、第1開口82aを全閉状態にする直前から、第2弁体部62により第2開口82bの開口面積を徐々に大きくするように構成されている。
【0085】
なお、調圧バルブ3は、エンジン回転数N1に到達した時点で、第1開口82aを全閉状態にするように構成されている。
【0086】
また、調圧バルブ3は、第2流出口83からVTC13に分配されるオイルがVTC13の要求油圧P1未満である際(エンジン回転数がN1未満である際)の第1流出口82の開口面積(第1開口82aおよび第2開口82bの開口面積の合計)を、VTC13に分配されるオイルが要求油圧P1に到達した際の第1流出口82の開口面積よりも、大きくするように構成されている(
図7参照)。
【0087】
すなわち、調圧バルブ3は、比較的低いエンジン回転数であっても、第1流出口82の開口面積が小さくなりすぎないようにして、メインギャラリ12に必要な油圧のオイル(要求油圧P2を満たすオイル)を流出させるように構成されている。
【0088】
具体的には、調圧バルブ3は、比較的低いエンジン回転数であっても、弁体6が初期位置にある際に全開となる第1開口82aにより、メインギャラリ12に必要な油圧のオイル(要求油圧P2を満たすオイル)を流出させるように構成されている。
【0089】
また、弁体6は、一端31から他端32(A1方向)に向けて移動するにしたがって、第1開口82aの開口面積を徐々に小さくして、第1開口82aを全閉状態にする直前から全閉状態にした後の間のいずれかのタイミングから、第1弁体部61により第2流出口83の開口面積を徐々に小さくするように構成されている。
【0090】
具体的には、弁体6は、一端31から他端32に向けて移動するにしたがって、第1開口82aの開口面積を徐々に小さくして、第1開口82aを全閉状態にした時点から、第1弁体部61により第2流出口83の開口面積を徐々に小さくするように構成されている。
【0091】
なお、第1開口82aの開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にした時点とは、VTC13に分配されるオイルが要求油圧P1に到達した時点(エンジン回転数がN1に到達した時点)である。
【0092】
第1開口82aの開口面積を全閉状態にした時点以降では、弁体6のA1方向への移動に伴い(エンジン回転数の増加に伴い)、第1流出口82(第2開口82b)の開口面積が大きくなるとともに、第2流出口83の開口面積が小さくなる。なお、調圧バルブ3は、第2流出口83の開口面積が小さくなっても、エンジン回転数の増加に伴い、可変容量型オイルポンプ2からオイルの吐出量は増加する。このため、調圧バルブ3は、VTC13の要求油圧P1を満たしつつ、要求油圧P1よりも油圧が高くなりすぎないように、バランスが取られるように構成されている。
【0093】
〈可変容量型オイルポンプが正常でない際の調圧バルブの動作〉
以下の説明は、可変容量型オイルポンプ2が正常でないこと(故障あり)を前提とする。すなわち、常にオイルを吐出しにくい状態に可変容量型オイルポンプ2があることを前提とする。このような不具合は、オイル制御装置22(電磁弁)の故障により発生する(懸念がある)。
【0094】
はじめに、弁体6は、一端31(初期位置)にある。
【0095】
そして、エンジン回転数(Ne)が徐々に増加して、エンジン回転数がN1(
図8参照)に到達した時点で、弁体6は未だ初期位置にある。
【0096】
この際、VTC13に流出する油圧は、要求油圧P1よりも小さくなるとともに、メインギャラリ12に流出する油圧は、要求油圧P2よりも大きくなる。
【0097】
これにより、
図8に示すように、調圧バルブ3は、可変容量型オイルポンプ2が正常でない場合でも、少なくとも、エンジンEの潤滑を行うメインギャラリ12には、必要な油圧(要求油圧P2)のオイルを確実に供給することが可能に構成されている。
【0098】
(比較例)
次に、
図9を参照して、比較例について説明する。比較例では、図示しないが、調圧バルブ3の第1開口82aがない構成の調圧バルブについて説明する。したがって、比較例の調圧バルブでは、弁体が初期位置にある場合には、第1流出口(第2開口)の開口面積は、第2流出口の開口面積よりも小さくなる。
【0099】
〈比較例における可変容量型オイルポンプが正常でない際の調圧バルブの動作〉
比較例の調圧バルブでは、エンジン回転数の増加に伴い、VTCに流出する油圧は勢いよく増加する一方、第1流出口(第2開口)の開口面積が小さいため、メインギャラリに流出する油圧は略増加しない(略ゼロとなる)。
【0100】
そして、エンジン回転数N1に到達した時点で、VTCに流出する油圧は要求油圧P1を略満たす一方、メインギャラリに流出する油圧は要求油圧P2よりも小さくなる。
【0101】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0102】
本実施形態では、上記のように、可変容量型オイルポンプ2の吐出量を制御するオイル制御装置22(電気部品)が故障した場合でも、第2流出口83から可変動弁機構13に分配されるオイルが可変動弁機構13の要求油圧に到達するまでの間において、第1流出口82の開口面積を大きく確保することができる。したがって、相対的に可変動弁機構13よりもメインギャラリ12にオイルを供給しやすくすることができる。また、可変容量型オイルポンプ2の吐出量を制御するオイル制御装置22が故障した場合で、第2流出口83からのオイルが可変動弁機構13の要求油圧未満となるような、エンジン回転数が低く、可変容量型オイルポンプ2からの吐出量が特に小さくなる場合でも、メインギャラリ12に必要なオイルを供給することができる。以上により、可変容量型オイルポンプ2の吐出量を制御するオイル制御装置22が故障した場合でも、メインギャラリ12の要求油圧を満たすことができる。
【0103】
本実施形態では、上記のように、第1流出口82は、互いに独立した開口として設けられ、調圧バルブ3内に流入したオイルを通過させることにより、オイルをメインギャラリ12に流出させる第1開口82aおよび第2開口82bを有する。これにより、第1流出口82が1つの開口のみを有する場合と比較して、エンジン回転数に応じて、より柔軟に第1流出口82の開口面積を変化させることができるので、より柔軟にメインギャラリ12に流出する油圧を変化させることができる。その結果、ポンプの仕事に、より無駄がない状態で、メインギャラリ12の要求油圧を満たすことができる。
【0104】
本実施形態では、上記のように、第1流出口82は、第1開口82aおよび第2開口82bを下流側で連通し、第1開口82aおよび第2開口82bを通過したオイルをメインギャラリ12に流出させる連通路82cを有する。これにより、第1開口82aおよび第2開口82bを通過したオイルを別々にメインギャラリ12に流出させる場合と比較して、構成を簡素化することができる。また、複数の油路を設ける必要がなくなるため、エンジンEを小型化することができる。
【0105】
本実施形態では、上記のように、調圧バルブ3は、弁体6と、弁体6を挟み込むように配置される圧縮バネ4および圧力室5とを含み、圧力室5は、可変容量型オイルポンプ2からオイルが供給されるように構成され、弁体6は、圧力室5による押圧力により、圧縮バネ4の付勢力に抗して調圧バルブ3の一端31から他端32に向けて移動されることによって、第1開口82a、第2開口82bおよび第2流出口83の開口面積を変化させるように構成されている。これにより、圧力室5、弁体6および圧縮バネ4という簡易かつ一般的な構成により、メインギャラリ12の要求油圧を満たすことが可能な構成を実現することができる。
【0106】
本実施形態では、上記のように、油圧デバイスとしての可変動弁機構13を設け、第1開口82aは、弁体6が一端31にある場合に全開状態になり、第2開口82bは、弁体6が一端31にある場合に全閉状態になり、第2流出口83は、弁体6が一端31にある場合に全開状態になり、弁体6は、一端31から他端32に向けて移動するにしたがって、第1開口82aの開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から、第2開口82bの開口面積を徐々に大きくするように構成されている。これにより、正常に動作しなくてもエンジンEの破損に繋がることのない可変動弁機構13の要求油圧に優先してメインギャラリ12の要求油圧を満たすことができる。また、可変容量型オイルポンプ2が故障して、十分なオイルが吐出されないことにより、弁体6が移動しない間においても、第1開口82aにより、メインギャラリ12に必要なオイルを供給することができる。また、可変容量型オイルポンプ2が正常に動作している場合には、第1開口82aの開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から、第2開口82bの開口面積を徐々に大きくすることにより、可変動弁機構13にも要求油圧を満たすような必要なオイルを供給することができる。
【0107】
本実施形態では、上記のように、弁体6は、一端31から他端32に向けて移動するにしたがって、第1開口82aの開口面積を徐々に小さくして、全閉状態にする直前から全閉状態にした後の間のいずれかのタイミングから、第2流出口83の開口面積を徐々に小さくするように構成されている。これにより、第1開口82aと第2流出口83とのそれぞれの弁体6に閉じられるタイミングを互いに略重ならないようにすることができるので、エンジン回転数が低く弁体6が移動しない間は、第1開口82aと第2流出口83との両方から積極的にオイルを流出させて、エンジン回転数が高くなり弁体6が移動した場合には、第2流出口83の開口面積を維持しながら、第1開口82aの開口面積を小さくすることができる。したがって、エンジン回転数に合わせて適切に第1流出口82と第2流出口83との開口面積を変更して、ポンプの仕事に、より無駄がない状態で、メインギャラリ12の要求油圧を満たすことができる。
【0108】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0109】
たとえば、上記実施形態では、本発明の付勢部材として圧縮バネを用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、本発明の付勢部材として、ゴムなどの弾性部材を用いてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、本発明の油圧デバイスとして可変動弁機構を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、本発明の油圧デバイスとしてピストンジェットを用いてもよい。この他、チェーンテンショナ、ターボカム、ターボチャージャ、HLA(Hydrauic Lash Adjuster)またはVCR(Variable Compression Ratio)などを用いてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、1つの油圧デバイスとメインギャラリとにオイルを供給するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の油圧デバイスとメインギャラリとにオイルを供給するように構成してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、第1流出口が、2つの開口(第1開口、第2開口)と、連通路とを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1流出口が、1つまたは3つ以上の開口と、連通路とを有していてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、返送用流出口から、可変容量型オイルポンプとオイルパンとの間の油路にオイルを返送した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、返送用流出口から、オイルパンにオイルを返送してもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、第1開口が全閉となった時点から、第2流出口が閉じられるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1開口が全閉となる直前から、第2流出口が閉じられるように構成してもよい。または、第1開口が全閉となった後から、第2流出口が閉じられるように構成してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、調圧バルブの構成(連通路)により第1開口と、第2開口とを連通させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、調圧バルブから流出した後の構成(エンジン本体など)で、第1開口からのオイルと、第2開口からのオイルとを合流させてもよい。
【符号の説明】
【0116】
2 可変容量型オイルポンプ
3 調圧バルブ
4 圧縮バネ(付勢部材)
5 圧力室
6 弁体
12 メインギャラリ
13 可変動弁機構(油圧デバイス)
31 一端
32 他端
82 第1流出口
82a 第1開口
82b 第2開口
82c 連通路
83 第2流出口
84 返送用流出口
100 作動油供給装置
E エンジン