(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】モータ制御装置およびこれを備えるモータ制御システム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/028 20160101AFI20221122BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20221122BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H02P29/028
B62D6/00
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2018243543
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中村 功一
(72)【発明者】
【氏名】中島 信頼
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】大城 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】岡 篤子
(72)【発明者】
【氏名】倉光 修司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治雄
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-058911(JP,A)
【文献】特開2018-177097(JP,A)
【文献】特開2017-052448(JP,A)
【文献】特開2016-007981(JP,A)
【文献】特開2015-003689(JP,A)
【文献】特開2007-190985(JP,A)
【文献】特許第5967338(JP,B1)
【文献】特開2014-221586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/028
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 113/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操向に関わるモータ(80,313,322)を制御するモータ制御装置(10)であって、
前記モータの回転を検知する第1角度センサ(131,132)と、
前記第1角度センサからの出力に基づいて、前記モータの回転回数情報を検知する第1検知回路(130)と、
前記モータの回転を検知する第2角度センサ(231,232)と、
前記第2角度センサからの出力に基づいて、前記モータの回転回数情報を検知する第2検知回路(230)と、
前記第1角度センサ及び前記第2角度センサとは異なるセンサであって、前記車両の操向に関わる舵角情報を検知する外部センサ(33)から舵角情報を取得する舵角情報取得部(11)と、
前記第1検知回路により検知された第1回転回数情報と、前記第2検知回路により検知された第2回転回数情報と、前記外部センサから取得した舵角情報と、を用いて、共通の特性値に変換した場合にいずれに対しても一致度合が所定度合よりも低い情報を異常と判定する異常判定部(12)と、
前記第1回転回数情報、前記第2回転回数情報、及び前記舵角情報のうち、前記異常判定部により異常と判定されなかった情報に基づいて、前記モータの制御量を演算する制御量演算部(14)と、を備
え、
前記第1検知回路は、前記第1角度センサに基づいて前記モータの第1回転角情報を検知し、
前記第2検知回路は、前記第2角度センサに基づいて前記モータの第2回転角情報を検知し、
前記舵角情報取得部は、前記外部センサにより検知された前記舵角情報に関わる第3回転角情報を取得し、
前記異常判定部は、前記各回転角情報を前記共通の特性値に変換して互いに比較して前記各回転角情報についての異常判定を実行し、前記各回転角情報のうちの少なくともいずれか1つに異常判定がなされた場合には、前記第1回転回数情報、前記第2回転回数情報、および前記舵角情報についての異常判定を実行しないモータ制御装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記各回転角情報のうちの少なくともいずれか1つに異常判定がなされた場合には、さらに、異常発生の通知処理、取得した前記第1回転回数情報、前記第2回転回数情報および前記舵角情報の無効化処理、および、異常判定された前記回転角情報を取得した前記検知回路または前記外部センサに対する動作制限処理、のうち少なくとも1つの処理を実行する請求項
1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第1検知回路に電力を供給する第1電源(191)と、前記第2検知回路に電力を供給する第2電源(291)とを備える請求項
1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記舵角情報取得部は、前記外部センサとして、前記車両の転舵角情報を検知するストロークセンサ、前記車両の操舵トルクを検知するトルクセンサ、および、前記車両の操舵角情報を検知する操舵角センサのうちの少なくともいずれかから前記舵角情報を取得する請求項1~
3のいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項5】
操舵部材に反力を与える反力モータと、
車輪の転舵量を変更する転舵モータと、
前記反力モータを制御する反力モータ制御装置と、
前記転舵モータを制御する転舵モータ制御装置と、を備えるモータ制御システムであって、
前記反力モータ制御装置または前記転舵モータ制御装置として、請求項1~
4のいずれかに記載のモータ制御装置を備えるモータ制御システム。
【請求項6】
前記反力モータ制御装置は、前記転舵モータ制御装置から前記舵角情報を取得する請求項
5に記載のモータ制御システム。
【請求項7】
前記転舵モータ制御装置は、前記反力モータ制御装置から前記舵角情報を取得する請求項
5に記載のモータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操向に関わるモータを制御するモータ制御装置およびこれを備えるモータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータによりパワーステアリングを実行するためには、操舵角と転舵角とを一致させるために、舵角(操舵角または転舵角)の算出精度が要求される。舵角算出の精度を確保するために、モータの回転を検知する角度センサの異常診断に係る技術が知られている。特許文献1に、モータの回転を検知する角度センサ等の診断に関する技術が記載されている。この技術では、それぞれ2つの独立した角度センサから得られる角度センサ信号を比較する比較診断と、各角度センサ信号の個別診断とを行う。そして、個別診断において角度センサ信号の1つのみが異常と判定された場合には、正常な角度センサ信号を用いるとともにダウングレードとして扱い、双方が異常と判定された場合には、角度センサ信号を使用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、個別診断により2つの角度センサ信号のうちの一方が異常と判定された場合には、他方の角度センサ信号をダウングレードとして扱う。このため、モータ制御について継続可能な機能は継続される一方で、重大事象に至る可能性のある機能は停止され、モータ制御の継続性が損なわれる。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、車両の操向に関わるモータを制御するモータ制御装置において、モータ制御の継続性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の操向に関わるモータを制御するモータ制御装置を提供する。このモータ制御装置は、前記モータの回転を検知する第1角度センサと、前記第1角度センサからの出力に基づいて、前記モータの回転回数情報を検知する第1検知回路と、前記モータの回転を検知する第2角度センサと、前記第2角度センサからの出力に基づいて、前記モータの回転回数情報を検知する第2検知回路と、前記第1角度センサ及び前記第2角度センサとは異なるセンサであって、前記車両の操向に関わる舵角情報を検知する外部センサから舵角情報を取得する舵角情報取得部と、前記第1検知回路により検知された第1回転回数情報と、前記第2検知回路により検知された第2回転回数情報と、前記外部センサから取得した舵角情報と、を用いて、共通の特性値に変換した場合にいずれに対しても一致度合が所定度合よりも低い情報を異常と判定する異常判定部と、前記第1回転回数情報、前記第2回転回数情報、及び前記舵角情報のうち、前記異常判定部により異常と判定されなかった情報に基づいて、前記モータの制御量を演算する制御量演算部と、を備える。
【0007】
上記のモータ制御装置によれば、異常判定部は、第1検知回路、第2検知回路からそれぞれ取得された複数の回転回数情報と、外部センサから取得された舵角情報とを互いに比較して、一致度合が低い回転回数情報または前記舵角情報を異常と判定する。異常判定に際して、複数の回転回数情報と、舵角情報とを用いて、異常判定を実行できるため、異常判定の精度を確保することができるとともに、異常と判定されなかった回転回数情報または舵角情報をダウングレードとして扱う必要がない。その結果、制御量演算部は、異常判定部により異常と判定されなかった回転回数情報または舵角情報に基づいて、モータ制御における一部の機能を停止させることなくモータの制御量を演算して、モータ制御を実行できる。その結果、従来と比較して、モータ制御の継続性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るモータ制御装置を備えるステアリングシステムの概略構成図。
【
図2】第1実施形態に係るモータ制御装置を備える駆動装置の断面図。
【
図4】第1実施形態に係るモータ制御装置を備える駆動装置を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態に係る異常判定処理を説明するフローチャート。
【
図6】第2実施形態に係る異常判定処理を説明するフローチャート。
【
図7】変形例に係るモータ制御装置を備えるステアリングシステムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、車両のステアリングシステム90は、操舵部材であるステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98、および、操舵装置8等を備える。操舵装置8は、車両のステアリング操作を補助するための電動パワーステアリング装置である。
【0011】
ステアリングホイール91は、ステアリングシャフト92と接続される。ステアリングシャフト92には、操舵トルクTsを検知するトルクセンサ94が設けられる。ステアリングシャフト92の先端には、ピニオンギア96が設けられる。ピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が連結される。
【0012】
運転者がステアリングホイール91を回転させると、ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によってラック軸97の直線運動に変換される。一対の車輪98は、ラック軸97の変位量に応じた角度に操舵される。
【0013】
操舵装置8は、モータ80およびECU10を有する駆動装置40、ならびに、モータ80の回転を減速してステアリングシャフト92に伝える動力伝達部としての減速ギア89等を備える。モータ80は、いわゆる操舵制御アシストモータであり、ECU10は、モータ80を制御する制御装置であり、駆動装置40は、ECU10とモータ80とが一体に構成された、いわゆる機電一体型の駆動装置である。
【0014】
モータ80は、運転者によるステアリングホイール91の操舵を補助する補助トルクを出力するものであって、電源である電源191、291(
図4参照)から電力が供給されることにより駆動され、減速ギア89を正逆回転させる。モータ80は、3相ブラシレスモータであって、ロータ860およびステータ840を有する(
図2参照)。
【0015】
モータ80は、巻線組としての第1モータ巻線180および第2モータ巻線280を有する。モータ巻線180、280は、電気的特性が同等であり、共通のステータ840に、互いに電気角を30[deg]ずらしてキャンセル巻きされる。これに応じて、モータ巻線180、280には、位相φが30[deg]ずれた相電流が通電されるように制御される。通電位相差を最適化することで、出力トルクが向上する。また、6次のトルクリプルを低減することができる。さらにまた、位相差通電により、電流が平均化されるため、騒音、振動のキャンセルメリットを最大化することができる。また、発熱についても平均化されるため、各センサの検知値やトルク等、温度依存の系統間誤差を低減可能であるとともに、通電可能な電流量を平均化できる。
【0016】
駆動装置40は、モータ80の軸方向の一方側にECU10が一体的に設けられており、いわゆる「機電一体型」であるが、モータ80とECU10とは別途に設けられていてもよい。ECU10は、モータ80の出力軸とは反対側において、シャフト870の軸Axに対して同軸に配置されている。ECU10は、モータ80の出力軸側に設けられていてもよい。機電一体型とすることで、搭載スペースに制約のある車両において、ECU10とモータ80とを効率的に配置することができる。
【0017】
駆動装置40は、モータ80と、モータ80の回転を検知する2つの検知回路130,230と、2つの検知回路130,230に電力を供給する2つの電源191,291とを備えている。
【0018】
以下、第1モータ巻線180の駆動制御に係る第1インバータ120、第1検知回路130および第1制御部170等の組み合わせを第1系統L1、第2モータ巻線280の駆動制御に係る第2インバータ220、第2検知回路230および第2制御部270等の組み合わせを第2系統L2とする。特に言及した場合を除き、各図においては、破線で区切った上側を第1系統L1として示し、下側を第2系統L2として示している。
【0019】
また、第1系統L1に係る構成を主に100番台で付番し、第2系統L2に係る構成を主に200番台で付番する。また、第1系統L1および第2系統L2において、同様の構成には、下2桁が同じとなるように付番する。以下適宜、「第1」を添え字の「1」、「第2」を添え字の「2」として記載する。
【0020】
モータ80は、ステータ840、ロータ860、および、これらを収容するハウジング830等を備える。ステータ840は、ハウジング830に固定されており、モータ巻線180、280が巻回される。ロータ860は、ステータ840の径方向内側に設けられ、ステータ840に対して相対回転可能に設けられる。
【0021】
シャフト870は、ロータ860に嵌入され、ロータ860と一体に回転する。シャフト870は、軸受835、836により、ハウジング830に回転可能に支持される。シャフト870のECU10側の端部は、ハウジング830からECU10側に突出する。シャフト870のECU10側の端部には、検知対象としてのマグネット875が設けられる。
【0022】
ハウジング830は、リアフレームエンド837を含む有底筒状のケース834、および、ケース834の開口側に設けられるフロントフレームエンド838を有する。ケース834とフロントフレームエンド838とは、ボルト等により互いに締結されている。リアフレームエンド837には、リード線挿通孔839が形成される。リード線挿通孔839には、モータ巻線180、280の各相と接続されるリード線185、285が挿通される。リード線185、285は、リード線挿通孔839からECU10側に取り出され、基板470に接続される。
【0023】
ECU10は、カバー460、カバー460に固定されているヒートシンク465、ヒートシンク465に固定されている基板470、および、基板470に実装される各種の電子部品等を備える。
【0024】
カバー460は、外部の衝撃から電子部品を保護したり、ECU10の内部への埃や水等の浸入を防止したりする。カバー460は、カバー本体461、および、コネクタ部462が一体に形成される。なお、コネクタ部462は、カバー本体461と別体であってもよい。コネクタ部462の端子463は、図示しない配線等を経由して基板470と接続される。コネクタ数および端子数は、信号数等に応じて適宜変更可能である。コネクタ部462は、駆動装置40の軸方向の端部に設けられ、モータ80と反対側に開口する。
【0025】
基板470は、例えばプリント基板であり、リアフレームエンド837と対向して設けられる。基板470には、2系統分の電子部品が系統ごとに独立して実装されており、完全冗長構成をなしている。本実施形態では、1枚の基板470に電子部品が実装されているが、複数枚の基板に電子部品を実装するようにしてもよい。
【0026】
基板470の2つの主面のうち、モータ80側の面をモータ面471、モータ80と反対側の面をカバー面472とする。
図3に示すように、モータ面471には、第1インバータ120を構成するスイッチング素子121、第2インバータ220を構成するスイッチング素子221、検知部としての回転角センサ30、カスタムIC159、259等が実装される。回転角センサ30は、マグネット875の回転に伴う磁界の変化を検知可能なように、マグネット875と対向する箇所に実装される。
【0027】
カバー面472には、コンデンサ128、228、インダクタ129、229、および、制御部170、270を構成するマイコン等が実装される。
図3では、第1制御部170および第2制御部270を構成するマイコンについて、それぞれ「170」、「270」を付番した。コンデンサ128、228は、電源191、291から入力された電力を平滑化する。また、コンデンサ128、228は、電荷を蓄えることで、モータ80への電力供給を補助する。コンデンサ128、228、および、インダクタ129、229は、フィルタ回路を構成し、電源191、291を共用する他の装置から伝わるノイズを低減するとともに、駆動装置40から電源191、291を共用する他の装置に伝わるノイズを低減する。なお、図示しない電源リレー、モータリレー、および、電流センサ等についても、モータ面471またはカバー面472に実装される。
【0028】
図4に示すように、ECU10は、モータ80と、第1電源191と、第2電源291とに電気的に接続されている。ECU10は、センサパッケージ60と、第1インバータ120および第2インバータ220と、第1制御部170および第2制御部270等を備えている。
【0029】
外部センサ33は、第1系統L1の外部かつ第2系統L2の外部に設けられ、舵角情報として、操舵角と転舵角の少なくともいずれか一方を検知するセンサである。外部センサ33は、センサ素子131,132,231,232とは異なる電力源から電力供給されており、ECU10に対して外部に設置されている。外部センサ33は、車両における転舵角情報を検知するストロークセンサ、操舵トルクを検知するトルクセンサ、および、操舵角情報を検知する操舵角センサのうちの少なくともいずれか1つを含む。例えば、外部センサ33がラックストロークセンサである場合には、検知したラック軸97の変位量に基づいて転舵角を算出できる。例えば、外部センサ33がトルクセンサである場合には、検知したステアリングシャフト92の回転トルクに基づいて操舵角を算出できる。また、例えば、外部センサ33が、検知したステアリングシャフト92の回転角を検知する操舵角センサである場合には、検知した回転角から操舵角を算出できる。
【0030】
第1実施形態では、外部センサ33が、ステアリングシャフト92の回転角を検知して操舵角を取得可能な操舵角センサである場合を例示して説明する。この操舵角センサとしては、例えば、ステアリングシャフト92に連動して回転するメインギアと、メインギアの回転動作が伝達される検出ギアと、検出ギアに搭載された磁石の回転角を検知する磁気センサとを備える操舵角センサを例示できる。
【0031】
第1検知回路130および第2検知回路230は、1つのセンサパッケージ60内に設けられている。センサパッケージ60は、図示しない基板上であって、モータ80のシャフトと一体となって回転するマグネットの磁界を検知可能な箇所に実装される。検知回路130、230を1パッケージとすることで、実装面積を抑えることができる。また、検知回路130、230ごとにパッケージを設けるようにしてもよい。センサパッケージ60には、電源端子161、162、261、262、グランド端子163、263、および、通信端子165、265が設けられる。
【0032】
電源端子161は、定電圧源171を経由して第1電源191と接続される。電源端子162は、定電圧源172を経由して第1電源191と接続される。定電圧源172は、電源回路116およびダイオード173を経由して、第1電源191と接続される。また、定電圧源172は、スイッチ179およびダイオード174を経由して第1電源191と接続される。ダイオード174は、第1電源191側から定電圧源172側への通電を許容し、逆向きの通電を禁止する向きに配置される。
【0033】
電源端子261は、定電圧源271を経由して第2電源291と接続される。電源端子262は、定電圧源272を経由して第2電源291と接続される。定電圧源272は、電源回路216およびダイオード273を経由して、第2電源291と接続される。また、定電圧源272は、スイッチ279およびダイオード274を経由して第2電源291と接続される。ダイオード274は、第2電源291側から定電圧源272側への通電を許容し、逆向きの通電を禁止する向きに配置される。
【0034】
スイッチ179、279は、車両の始動スイッチと同期してオンオフされる。スイッチ179、279の一方は、始動スイッチそのものであってもよい。本実施形態の始動スイッチは、イグニッションスイッチである。以下、イグニッションスイッチを「IG」とし、スイッチ179、279のオンオフを、IGのオンオフとして説明する場合がある。また、IGがオフされている状態を「システム停止中」とする。
【0035】
定電圧源171、172、271、272は、検知回路130、230を駆動できる程度(例えば数mA程度)の電力消費量の小さいレギュレータ等である。検知回路130、230には、IGがオフされている間においても、それぞれ定電圧源171、271を経由して電力供給が継続される。グランド端子163、263は、グランドと接続される。
【0036】
第1検知回路130と第1制御部170とは、通信端子165および通信線166を経由して信号を授受可能に接続される。第2検知回路230と第2制御部270とは、通信端子265および通信線266を経由して信号を授受可能に接続される。第1検知回路130は、センサ素子131、132、および、回路部140を有する。第2検知回路230は、センサ素子231、232、および、回路部240を有する。
【0037】
センサ素子131、132は、モータ80の回転を検知する第1角度センサに相当する。センサ素子231、232は、モータ80の回転を検知する第2角度センサに相当する。センサ素子131、132、231、232は、モータ80のステアリングシャフト92と一体となって回転するマグネットの回転に伴う磁界の変化を検知する磁気検知素子である。センサ素子131、132、231、232は、例えばGMR、AMR、TMR等のMR素子、または、ホール素子等であって、同じ種類のものを用いてもよいし、異なる種類のものを用いてもよい。例えば、センサ素子131、231をGMR素子とし、センサ素子132、232をホール素子とする、といった具合に、同一の検知回路の2つのセンサ素子に異なる種類のものを用いることで、検知手段の異なる情報による冗長の堅牢性を高めることができる。センサ素子131、132、231、232の検知値は、必要に応じてAD変換された値が用いられる。
【0038】
回路部140は、第1演算部としての角度演算部141、142、第2演算部としての回数演算部143、144、自己診断部145、および、通信部149を有する。回路部240は、第1演算部としての角度演算部241、242、第2演算部としての回数演算部243、244、自己診断部245、および、通信部249を有する。角度演算部141は、センサ素子131の検知値に基づき、モータ80の回転角θm11を演算する。角度演算部142は、センサ素子132の検知値に基づき、モータ80の回転角θm12を演算する。角度演算部241は、センサ素子231の検知値に基づき、モータ80の回転角θm21を演算する。角度演算部242は、センサ素子232の検知値に基づき、モータ80の回転角θm22を演算する。
【0039】
角度演算部141、142、241、242にて演算される値は、回転角θmそのものに限らず、第1制御部170にて回転角θmを演算可能などのような値であってもよい。このような場合も含め、以下単に「回転角の演算」とする。回転回数TCの演算についても同様である。なお、本実施形態では、回転角θmを機械角とするが、電気角としてもよい。
【0040】
回数演算部143は、センサ素子131の検知値に基づき、モータ80の回転回数TC11を演算する。回数演算部144は、センサ素子132の検知値に基づき、モータ80の回転回数TC12を演算する。回数演算部243は、センサ素子231の検知値に基づき、モータ80の回転回数TC21を演算する。回数演算部244は、センサ素子232の検知値に基づき、モータ80の回転回数TC22を演算する。
【0041】
回転回数TCは、例えばモータ80の1回転を3以上の領域に分け、領域が変わるごとに回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンすることで、カウント値に基づいて演算可能である。モータ80の1回転の分割数divを3以上とすることで、回転方向を判別可能である。また、1回転の分割数divを5領域以上とすることで、読み飛ばしが生じたときにも回転方向を判別可能である。また、回転角θmから回転回数TCを演算するようにしてもよい。ここで、本明細書でいう「回転回数」とは、単位rpm等で表される、いわゆる回転数(回転速度)ではなく、「ロータが何回転したか」を表す値である。回転角θmおよび回転回数TCは、モータ80の回転検知値に相当する。
【0042】
自己診断部145は、センサ素子131、132、角度演算部141、142、および、回数演算部143,144の天絡や地絡等の電源異常を監視する。また、第1検知回路130のIC内部回路の動作異常の監視にて、回転角θm11の異常を監視する。例えば、第1検知回路130内のセンサ素子131、132の出力の検知部や演算回路の異常等による回転角θm11の異常を検知する方法として、回転角θm11、θm12を比較し、オフセット異常等の中間異常を検知する等がある。また、例えば、第1検知回路130内のセンサ素子131、132の出力の検知部や演算回路の異常等による回転回数TC11の異常を検知する方法として、回転回数TC11とTC12とを比較し、オフセット異常等の中間異常を検知する等がある。
【0043】
自己診断部245は、センサ素子231、232、角度演算部241、242、および、回数演算部243,244の天絡や地絡等の電源異常を監視する。また、第2検知回路230のIC内部回路の動作異常の監視にて、回転角θm21の異常を監視する。例えば、第2検知回路230内のセンサ素子231、232の出力の検知部や演算回路の異常等による回転角θm21の異常を検知する方法として、回転角θm21とθm22とを比較し、オフセット異常等の中間異常を検知する等がある。また、例えば、第2検知回路230内のセンサ素子231、232の出力の検知部や演算回路の異常等による回転回数TC21の異常を検知する方法として、回転回数TC21とTC22とを比較し、オフセット異常等の中間異常を検知する等がある。
【0044】
自己診断部145、245における自己診断の方法は、上述の方法に限らず、どのような方法であってもよい。自己診断部145、245における自己診断結果は、ステータス信号に反映される。
【0045】
また、自己診断部145における回転角θm11、θm12の比較、もしくは、回転回数TC11とTC12との比較による異常監視に替えて、第1制御部170にて回転角θm11とθm12との比較、もしくは、回転回数TC11とTC12との比較による異常監視を行うようにしてもよい。同様に、自己診断部245における回転角θm21、θm22の比較、もしくは、回転回数TC21とTC22との比較による異常監視に替えて、第2制御部270にて回転角θm21、θm22の比較、もしくは、回転回数TC21とTC22との比較による異常監視を行うようにしてもよい。
【0046】
通信部149は、回転角θmに係る回転角信号、および、回転回数TCに係る回転回数信号を含む出力信号を生成する。生成された出力信号は、SPI(Serial Peripheral Interface)通信等のデジタル通信にて、第1制御部170に出力される。
【0047】
通信部249は、回転角θmに係る回転角信号、および、回転回数TCに係る回転回数信号を含む出力信号を生成する。生成された出力信号は、SPI通信等のデジタル通信にて、通信端子265および通信線266を経由して、第2制御部270に出力される。
【0048】
本実施形態では、センサ素子131、回数演算部143、および、自己診断部145には、電源端子161を経由して、第1電源191から常時、電力供給される。また、センサ素子132、角度演算部141、142、および、通信部149は、電源回路116またはスイッチ179がオンされているとき、第1電源191から電力供給され、電源回路116およびスイッチ179がオフされているとき、電力供給されず、動作を停止する。
【0049】
また、センサ素子231、回数演算部243、および、自己診断部245には、電源端子261を経由して、第2電源291から常時電力供給される。また、センサ素子232、角度演算部241、242、および、通信部249は、電源回路216またはスイッチ279がオンされているとき、第2電源291から電力供給され、電源回路216およびスイッチ279がオフされているとき、電力供給されず、動作を停止する。
【0050】
第1系統L1を構成する第1電源191と、第1制御部170と、第1検知回路130とは、互いに電気的に接続されている。第2系統L2を構成する第2電源291と、第2制御部270と、第2検知回路230とは、互いに電気的に接続されている。第1制御部170と第2制御部270とは、双方向通信が可能である。
【0051】
第1制御部170は、第1検知回路130から、回転回数TC1の検知値を含む第1回転回数情報、および、回転角θm1の検知値を含む第1回転角情報を取得することができる。第2制御部270は、第2検知回路230から、回転回数TC2の検知値を含む第2回転回数情報、および、回転角θm2の検知値を含む第2回転角情報を取得することができる。双方向通信により、第1制御部170は、第2制御部270から、第2回転回数情報および第2回転角情報を取得できる。第2制御部270は、第1制御部170から、第1回転回数情報および第1回転角情報を取得できる。
【0052】
ECU10は、検知部11と、異常判定部12と、舵角算出部13と、制御量演算部14とを備える。ECU10は、図示しない中央処理装置(CPU(Central Processing Unit))及びメモリ(ROM,RAM)をそれぞれ備えており、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することによって、上記の各部の機能を得ることができ、モータ80を制御できる。
【0053】
検知部11は、複数のセンサ素子131,132,231,232からの出力に基づくモータ80の回転回数情報および回転角情報を取得する。また、検知部11は、外部センサ33から、車両の操向きに関わる舵角情報を取得する。すなわち、検知部11は、舵角情報取得部としての機能を有している。舵角情報は、例えば、ステアリングシャフト92の操舵角や、ラック軸97の変位量に基づいて算出される転舵輪(車輪98)の転舵角についての検知値を含む舵角情報として取得できる。
【0054】
検知部11は、第1回転回数情報として、センサ素子131,132から同時期に検知された回転回数TC11とTC12との比較に基づいて、回転回数TC1を設定するように構成されていてもよい。具体的には、例えば、回転回数TC11と、回転回数TC12との差が所定の閾値dTCよりも小さい場合(|TC11-TC12|<D1である場合)には、TC11は正常であると判定され、TC1=TC11に設定するように構成されていてもよい。同様に、検知部11は、第2回転回数情報として、センサ素子231,232から同時期に検知された回転回数TC21と回転回数TC22との比較に基づいて、回転回数TC2を設定できるように構成されていてもよい。
【0055】
異常判定部12は、例えば、現在(同時期)において、第1検知回路130、第2検知回路230から、それぞれ回転回数情報として取得した2つの回転回数TC1,TC2と、外部センサ33から舵角情報として取得した操舵角A3とを互いに比較して、一致度合が低い回転回数または操舵角を異常と判定するように構成されていてもよい。
【0056】
一致度合の比較は、例えば、回転回数TC1,TC2に基づいて操舵角A1,A2を算出し、3つの操舵角A1~A3を互いに比較して行ってもよい。より具体的には、他の2者との差の合計値が所定の閾値未満となる操舵角を一致度合が所定度合よりも高いものとして正常と判定し、所定の閾値以上となる操舵角を一致度合が所定度合よりも低いものとして異常と判定してもよい。または、統計的処理により、例えば、各操舵角について平均値との偏差が所定の範囲よりも大きくなる操舵角を一致度合が所定度合いよりも低いものとして異常と判定してもよい。
【0057】
一致度合の比較は、回転回数TC1,TC2の2者を比較した後に、操舵角A3との比較を行うようにしてもよい。例えば、回転回数TC1とTC2とを比較した後で、回転回数TC1から操舵角A1を算出し、操舵角A3と比較してもよい。この場合、回転回数TC1と回転回数TC2との比較は、2者共通の特性値として回転回数で比較してもよいし、操舵角A1,A2に変換した後に、操舵角を共通の特性値として比較してもよい。
【0058】
舵角算出部13は、回転角θm1と回転回数TC1に基づいて、操舵角A1を算出する。また、舵角算出部13は、回転角θm2と回転回数TC2とに基づいて、操舵角A2を算出する。なお、下記式(1)を用いて、回転角θmと回転回数TCとから絶対角Aを算出することができる。
【0059】
A=INT(TC/k)×360+θm … (1)
【0060】
上記式(1)において、「INT(TC/k)」は、回転回数TCを、モータ80の1回転当たりの回転回数TCであるkで割った商(TC/k)の整数部を示す。例えば、回転回数TCの角度領域を定めるカウント間隔が90°であれば、kは4となる。
【0061】
制御量演算部14は、運転者の操舵に伴うステアリングシャフト92の回転量(絶対角)を示す操舵側絶対角Y1と、操舵トルクThと、車速Vcとに基づいて、モータ80に対するトルクの指令値である操舵トルク指令値を演算する。この操舵側絶対角Y1として、操舵角A1~A3のうち、異常判定部12により異常と判定されなかった操舵角が用いられる。更に、この操舵トルク指令値に基づいて、モータ80を制御するための制御信号(より詳細には、インバータを操作するための操作信号)を演算する。操舵側絶対角Y1は、車両を直進走行させる場合のステアリングシャフト92の角度を中立位置とし、この中立位置から、車輪98を左右のいずれかの操舵限界角度まで操舵する場合の回転角を示す値である。
【0062】
制御量演算部14は、操舵角A1~A3のうち複数の操舵角が正常であると判定された場合には、より精度が高い操舵角を選択して優先的にモータ80の制御に用いてもよい。操舵角A1~A3の精度は、センサ素子131,132,231,232および外部センサ33の検出精度を考慮して判断されてもよい。
【0063】
検知部11と、異常判定部12と、舵角算出部13と、制御量演算部14とは、第1制御部170に備えられていてもよいし、第2制御部270に備えられていてもよい。または、第1制御部170および第2制御部270とは別個に、ECU10において、検知部11と、異常判定部12と、舵角算出部13と、制御量演算部14とが備えられていてもよい。
【0064】
図5に、モータ80の駆動時に、ECU10の第1制御部170が実行する異常判定処理のフローを示す。
図5に示す処理は、モータ80の駆動時に繰り返し実行される。なお、外部センサ33は、ステアリングシャフト92の回転角を検知し、これに基づいて、ステアリングシャフト92の操舵角を算出する操舵角センサである場合を例示して説明する。
【0065】
ステップS101では、第1検知回路130により取得された回転回数TC1に基づいて、操舵角A1を算出し、その後、ステップS102に進む。
【0066】
ステップS102では、他のシステム(系統及び外部センサ)により算出または検知された操舵角A2および操舵角A3を受信する。本実施形態では、操舵角A2は、第2検知回路230において回転回数TC2に基づいて算出された操舵角である。また、操舵角A3は、外部センサ33である操舵角センサにより検知された操舵角A3である。
【0067】
ステップS103では、自システムで(この場合、第1系統L1)において取得されたモータ80の回転角θm1と、他システムで取得された回転角、すなわち、第2系統L2で得られたモータ80の回転角θm2と、外部センサ33により得られたステアリングシャフト92の回転角θm3とが、全て正常であるか否かを判定する。具体的には、各回転角θm1~θm3を互いに比較可能な共通の特性値にそれぞれ変換し、その共通の特性値において互いの差(回転角差)を算出する。そして、算出した各回転角差が所定の回転角閾値X5未満である場合に、各回転角θm1~θm3は正常であると判定する。各回転角差のうちの少なくともいずれかが回転角閾値X5以上である場合には、正常ではない(異常あり)と判定する。ステップS103において、回転角θm1~θm3について全て正常と判定された場合には、ステップS104に進み、全て正常と判定されなかった場合には、ステップS104以下の処理を実行しないで終了する。
【0068】
ステップS104では、操舵角A1と操舵角A2との差が所定の第1閾値X1未満であるか否かを判定する。|A1-A2|<X1である場合には、ステップS105に進む。|A1-A2|≧X1である場合には、ステップS108に進む。
【0069】
ステップS105では、操舵角A1と操舵角A3との差が所定の第2閾値X2未満であるか否かを判定する。|A1-A3|<X2である場合には、ステップS106に進み、全ての操舵角A1~A3について、正常と判定した後、ステップS113に進む。|A1-A3|≧X2である場合には、ステップS107に進み、操舵角A1,A2について正常と判定し、操舵角A3について異常と判定した後、ステップS113に進む。
【0070】
ステップS108では、操舵角A1と操舵角A3との差が所定の第2閾値X2未満であるか否かを判定する。|A1-A3|<X2である場合には、ステップS109に進み、操舵角A1,A3について正常と判定し、操舵角A2について異常と判定した後、ステップS113に進む。|A1-A3|≧X2である場合には、ステップS110に進み、操舵角A1について異常と判定した後、処理を終了する。
【0071】
ステップS113では、正常判定された操舵角A1に基づいて、モータ80の制御が実行される。一方、ステップS108,S110に示すように、操舵角A1について異常と判定された場合には、第1制御部170は、モータ80の制御を実行しない。
【0072】
なお、所定の閾値X1,X2は、例えば、過去のモータ80の駆動時に第1検知回路130および第2検知回路230が取得した回転回数、または、外部センサ33が取得した操舵角等の履歴等に基づいて、正常と判断される範囲内で設定することができる。
【0073】
上記のとおり、第1実施形態によれば、第1制御部170は、第1系統L1および第2系統L2において回転回数TC1,TC2から算出した操舵角A1,A2と、外部センサ33から取得した操舵角A3とを互いに比較する。2つの系統L1,L2における回転回数TC1,TC2、ECU10の外部に設置された外部センサ33における操舵角A3とを用いており、異なるシステムから得られた3つ以上の検知値に基づいて異常判定を実行できるため、1つのシステム(例えば、第1系統L1)における異常発生に起因して検知値(例えば回転回数TC1)は異常値となっても、他のシステム(例えば、第2系統L2および外部センサ33)において得られる検知値(例えば回転回数TC2、操舵角A3)は異常値となりにくい。このため、異常判定の精度を向上させることができる。
【0074】
また、操舵角A1と操舵角A2との比較により、その差が第1閾値以上となり、操舵角A1について異常の疑いがある場合には、さらに操舵角A1と操舵角A3との比較を行う。そして、操舵角A1と操舵角A3との差と第2閾値X2とを比較することにより、操舵角A1が正常であるか否かを精度よく判定することができる。このため、操舵角A1をダウングレードとして扱う必要がなく、操舵角A1を用いてモータ80を制御するに際して、その制御に係る一部の機能を停止する必要がない。その結果、ステアリングシステム90におけるモータ80の制御における継続性を確保することができる。
【0075】
なお、
図5においては、ステップS103で否定判定された場合に処理を終了したが、下記のような処理を実行した後で、処理を終了してもよい。例えば、回転角θm1~θm3のうち、異常と判定された回転角を取得したシステム(例えば、センサ素子、検出回路、外部センサ)に対して、異常発生の通知処理、取得した回転回数情報や舵角情報の無効化処理、そのシステムの動作制限処理等を実行するようにしてもよい。具体的には、例えば、回転角m1が異常と判定された場合には、第1系統L1の第1制御部170に対して異常発生を通知したり、第1検知回路130から取得した検知値を無効化したり、第1制御部170によるモータ80の制御を制限または禁止したりする処理を実行してもよい。
【0076】
(変形例)
上記において
図5を用いて説明した各処理は、第2制御部270によっても同様に実行可能に構成されていてもよい。第2制御部270において、
図5に示す処理において操舵角A1と操舵角A2とを入れ替えて実行することにより、操舵角A2が正常であるか否かを判定することができる。操舵角A1について異常判定がなされ、操舵角A2について正常判定がなされた場合には、第2制御部270により操舵角A2を用いたモータ80の制御が実行されるようにしてもよい。このように構成することにより、操舵角A1が異常であると判定された場合にも、操舵角A2に基づいて、モータ80の制御を、その制御の一部の機能を停止させることなく実行できるため、モータ80の制御における継続性をさらに向上させることができる。
【0077】
なお、第1制御部170により操舵角A1が正常であると判定され、かつ、第2制御部270により操舵角A2が正常であると判定された場合には、一方(例えば、第1制御部170と操舵角A1)を他方(例えば、第2制御部270と操舵角A2)に優先させるように予め設定されていてもよい。または、操舵角A1と操舵角A2のうち、より正確と判断される方を選択するようにしてもよい。この際、操舵角A1,A2のうち、操舵角A3に近い方をより正確であると判断して、モータ80の制御に優先的に使用してもよい。
【0078】
(第2実施形態)
第2実施形態において、モータ80の駆動時に、ECU10の第1制御部170が実行する異常判定処理のフローを
図6示す。第2実施形態では、操舵角A1に異常判定がなされた後の処理において、第1実施形態と相違している。
図6に示すように、ステップS201~ステップS209,S213の処理は、
図5と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
ステップS210では、操舵角A1について、異常と判定した後、ステップS211に進む。ステップS211では、操舵角A2と操舵角A3との差が所定の第3閾値X3未満であるか否かを判定する。|A2-A3|<X3である場合には、ステップS211に進み、操舵角A1を操舵角A2に置き換える処理(操舵角A1=操舵角A2)を実行した後、ステップS213に進む。|A2-A3|≧X3である場合には、処理を終了する。
【0080】
なお、第3閾値X3は、例えば、過去のモータ80の駆動時に第1検知回路130および第2検知回路230が取得した回転回数、または、外部センサ33が取得した操舵角の履歴等に基づいて、正常と判断される範囲内で設定することができる。第3閾値X3は、第2閾値X2と同じ値に設定してもよい。
【0081】
上記のとおり、第2実施形態によれば、第1制御部170は、操舵角A1について異常判定がなされた場合には、さらに操舵角A2と操舵角A3との比較を行うことにより、操舵角A2が正常であるか否かを判断する。そして、操舵角A2が正常であると判定された場合には、操舵角A1を操舵角A2に置き換え、操舵角A2に基づいて、モータ80の制御を実行する。このため、精度が確保された操舵角A1(操舵角A2によって置き換えられたもの)に基づいてモータ80を制御できる。すなわち、置き換えられた操舵角A1に基づいて、モータ80の制御を、その制御の一部の機能を停止させることなく実行できる。このため、モータ80の制御における継続性をさらに向上させることができる。
【0082】
また、第1実施形態の変形例として説明したように、第2制御部270において、同様の制御を行う必要がないため、処理の負担が軽減され、システムの簡略化に寄与することができる。
【0083】
また、一般に、センサ素子131,132,231,232から検知されるモータ80の回転回数TC1,TC2から算出する操舵角A1,A2は、本実施形態において外部センサ33として例示した操舵角センサから得られる操舵角A3よりも高精度である。このため、操舵角A1または操舵角A2を、操舵角A3に優先させてモータ80の制御に用いることにより、モータ80の制御における精度をより高くすることができる。なお、外部センサ33が高精度であり、操舵角A3が、操舵角A1,A2よりも高精度である場合には、操舵角A3を優先的にモータ80の制御に用いてもよい。
【0084】
なお、上記の各実施形態では、モータ制御装置としてのECU10を備えるステアリングシステム90が「コラムアシストタイプ」である場合を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、モータ80の回転をラック軸97に伝える「ラックアシストタイプ」等の他の形式としてもよい。
【0085】
(第3実施形態)
ステアリングシステムは、
図7に示すように、反力側モータと、転舵側モータとの双方を備えていてもよい。反力側モータや、転舵側モータにおいても、上記の各実施形態において説明した場合と同様に、異常判定処理を実行することができる。なお、転舵角を検知するために使用する外部センサ33としては、ラックストロークセンサ等の転舵角を検知可能なセンサを例示できる。
【0086】
図7に示すステアリングシステム300は、いわゆるステア・バイ・ワイヤ型のステアリングシステムである。ステアリングシステム300は、運転者の操舵を受け付ける反力装置310と、反力装置310が受け付けた操舵量に応じて、車輪316を転舵する転舵装置320とを備えている。
【0087】
反力装置310は、運転者の操作により回転するステアリング311と、ステアリング311の回転に伴って回転するステアリングシャフト312と、反力側モータ313とを備えている。反力側モータ313は、操舵側モータに相当する。反力側モータ313は、反力側減速機314を介してステアリングシャフト312に連結されており、運転者のステアリング311の操作に応じた反力を付与する。反力側モータ313は、交流電力により回転駆動する交流モータである。また、反力側モータ313は、インバータ315を介して電源に接続されている。インバータ315は、電源からの直流電力を交流電力に変換し、反力側モータ313に給電する。
【0088】
ステアリングシャフト312の先端側には、クラッチ312bを介してピニオン軸312aが設けられている。車両の通常の運転時ではクラッチ312bは開状態となっており、ステアリングシャフト312の回転はピニオン軸312aへ伝達されない。例えば、ステアリングシステム300の異常時等によりクラッチ312bが閉状態となることにより、ステアリングシャフト312の回転は、ピニオン軸312aへ伝達される。
【0089】
転舵装置320は、車輪316の向きを変化させるラック軸321と、転舵側モータ322とを備えている。ラック軸321の両端には、タイロッドを介して車輪316が連結されている。転舵側モータ322は、転舵側減速機323を介してラック軸321に連結されており、ラック軸321に対して車輪316の向きを変化させる力である転舵力を付与する。転舵側モータ322は、インバータ324を介して電源に接続されている。インバータ324は、電源からの直流電力を交流電力に変換し、転舵側モータ322に給電する。
【0090】
ピニオン軸312aは、ラック軸321に噛み合っており、クラッチ312bの開状態では、ステアリングシャフト312はラック軸321に機械的に連結されていない状態である。そのため、運転者のステアリング311の操作に伴うステアリングシャフト312の回転は、ラック軸321の直線運動に変換されない。一方、クラッチ312bの閉状態では、ステアリングシャフト312はラック軸321に機械的に連結された状態である。そのため、運転者のステアリング311の操作に伴うステアリングシャフト312の回転運動は、ラック軸321の直線運動に変換される。
【0091】
反力装置310のステアリングシャフト312には、運転者の操舵に応じた操舵トルクを検知するトルクセンサ317が設けられている。また、転舵装置320のラック軸321には、ラック軸321の直線移動量である変位量Xを検知するラックストロークセンサ325が設けられている。
【0092】
ステアリングシステム300は、反力側制御部としての反力側ECU340と、転舵側制御部としての転舵側ECU345とを備えている。反力側ECU340及び転舵側ECU345は、図示しない中央処理装置(CPU(CentralProcessing Unit))及びメモリ(ROM,RAM)をそれぞれ備えており、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することによって、反力側モータ313や転舵側モータ322への電力供給が制御される。
【0093】
反力側ECU340は、運転者の操舵に伴うステアリングシャフト312の回転量(絶対角)を示す操舵側絶対角Y1と、操舵トルクThと、車速Vcとに基づいて、反力側モータ313に対するトルクの指令値である操舵トルク指令値を演算する。更に、この操舵トルク指令値に基づいて、インバータ315を操作するための操作信号を演算する。絶対角は、車両を直進走行させる場合のステアリング311の角度を中立位置とし、この中立位置から、車輪316を左右のいずれかの操舵限界角度まで操舵する場合の回転角を示す値である。
【0094】
反力側ECU340は、回転検知回路として、反力側モータ313の回転状態を示す検知値により操舵側絶対角Y1を演算する反力側検知回路341を備えている。反力側検知回路341は、検知値として、反力側モータ313の回転角θm、及び反力側モータ313が所定角度を回転した回数を示す回転回数TCとを演算する。例えば、反力側モータ313には、ロータ又は回転軸と一体となって回転するマグネットが設けられており、反力側検知回路341は、このマグネットが回転することによる磁界の変化により反力側モータ313の回転角θmや回転回数TCを演算する。反力側ECU340は、上述の実施形態と同様の電力供給経路および通信経路によって、電力源と接続するように構成でき、同様の処理を実行することができる。
【0095】
転舵側ECU345は、ステアリングシャフト312の回転量(絶対角)を示す転舵側絶対角Y2と、変位量Xと、操舵トルクThと、車速Vcとに基づいて、転舵側モータ322に対するトルクの指令値である転舵トルク指令値を演算する。そして、この転舵トルク指令値に基づいて、インバータ324を操作するための操作信号を演算する。
【0096】
転舵側ECU345は、回転検知回路として、転舵側モータ322の回転状態を示す検知値により転舵側絶対角Y2を演算する転舵側検知回路346を備えている。転舵側検知回路346は、検知値として、転舵側モータ322の回転角θmと、転舵側モータ322が所定角度を回転した回数を示す回転回数TCとを演算する。例えば、転舵側モータ322には、ロータ又は回転軸と一体となって回転するマグネットが設けられており、転舵側検知回路346は、このマグネットが回転することによる磁界の変化により転舵側モータ322の回転角θmや回転回数TCを演算する。
【0097】
反力側ECU340および転舵側ECU345は、上記の実施形態における操舵装置8のECU10と同様に、2系統に構成することができる。
図4に図示した構成は、ECU10を反力側ECU340または転舵側ECU345に読み替え、モータ80を、反力側モータ313または転舵側モータ322に読み替えることにより、反力側ECU340および転舵側ECU345においても適用できる。
【0098】
反力側ECU340においては、上記の実施形態および変形例と同様の処理を実行できる。転舵側ECU345に上記の各実施形態に係る操舵装置8の構成を適用するに際しては、
図4における外部センサ33は、ラックストロークセンサ等の転舵角センサとなる。また、上記の各実施形態および変形例において、「操舵角」を「転舵角」と読み替え、操舵角A1~A3に替えて、転舵角B1~B3を用いることにより、転舵側においても同様の処理を実行可能であることが理解できる。
【0099】
上記のとおり、ステアリングシャフト312を反力側モータ313により駆動し、ラック軸321を転舵側モータ322により駆動するステアリングシステム300においても、反力側モータ313を制御する反力側ECU340は、検知部11と、異常判定部12と、舵角算出部13と、制御量演算部14とに係る機能を有するように構成することができる。同様に、転舵側モータ322を制御する転舵側ECU345は、検知部11と、異常判定部12と、舵角算出部13と、制御量演算部14とに係る機能を有するように構成することができる。
【0100】
ステアリングシステム300においては、反力装置310において得られる回転回数および操舵角の検知値と、転舵装置320において得られる回転回数および転舵角の検知値とを、互いに利用可能に構成されている。
【0101】
具体的には、操舵側制御装置に相当する反力側ECU340と、転舵側制御装置に相当する転舵側ECU345とは、別々に設けられるとともに互いに情報通信が可能に構成されている。この情報通信によって、反力側ECU340の異常判定において転舵側の情報を舵角情報として使用することができ、転舵側ECU345の異常判定において反力側(操舵側)の情報を舵角情報として使用することができる。すなわち、反力側ECU340は、車両の操向に関わる舵角情報を検知する外部センサからの舵角情報として転舵側ECU345からの情報を利用することができる。また、転舵側ECU345は、車両の操向に関わる舵角情報を検知する外部センサからの舵角情報として反力側ECU340からの情報を利用することができる。
【0102】
例えば、反力側ECU340において、異常判定部12は、同時期において、反力側モータ313についての2つの系統L1,L2から取得した2つの回転回数(TCs1、TCs2)を含む回転回数情報と、転舵側モータ322についての複数の回転回数(TCr1,TCr2)を含む回転回数情報と、外部センサ33からの操舵角または転舵角を含む舵角情報と、を比較し、各情報についての異常判定を実行できる。なお、第1実施形態等と同様に、各情報は、互いの比較に際して、共通の特性値(例えば、反力側モータ313の回転回数や、ステアリングシャフト312の操舵角)に変換する。また、なお、小文字の添え字「s」は反力側(操舵側)を示し、「r」は転舵側を示す。
【0103】
同様に、転舵側ECU345においても、異常判定部12は、同時期において、反力側モータ313についての2つの系統L1,L2から取得した2つの回転回数(TCs1、TCs2)を含む回転回数情報と、転舵側モータ322についての複数の回転回数(TCr1,TCr2)を含む回転回数情報と、外部センサ33からの操舵角または転舵角を含む舵角情報と、を比較し、各情報についての異常判定を実行できる。なお、第1実施形態等と同様に、各情報は、互いの比較に際して、共通の特性値(例えば、転舵側モータ322の回転回数や、車輪316の転舵角)に変換する。このように構成することにより、異常判定部12において使用可能な検知値を増やすことができるため、異常判定の精度をより向上させることができる。
【0104】
また、舵角算出部13は、転舵角についても、上記式(1)と同様に、回転回数と、回転角から算出することができる。上記式(1)において、操舵角「A」を転舵角「B」に置き換えることにより、転舵側モータ322の回転角θmr1,θmr2と回転回数TCr1,TCr2とに基づいて、転舵角B1,B2を算出することができる。
【0105】
また、反力側ECU340においては、制御量演算部14は、運転者の操舵に伴うステアリングシャフト312の回転量(絶対角)を示す操舵側絶対角Y1と、操舵トルクThと、車速Vcとに基づいて、反力側モータ313に対するトルクの指令値である操舵トルク指令値を演算する。この操舵側絶対角Y1として、操舵角A1~A3のうち、異常と判定されなかった操舵角が用いられる。更に、この操舵トルク指令値に基づいて、インバータ315を操作するための操作信号を演算する。
【0106】
また、転舵側ECU345においては、制御量演算部14は、ステアリングシャフト312の回転量(絶対角)を示す転舵側絶対角Y2と、変位量Xと、操舵トルクThと、車速Vcとに基づいて、転舵側モータ322に対するトルクの指令値である転舵トルク指令値を演算する。この転舵側絶対角Y2として、転舵角B1~B3のうち、異常と判定されなかった転舵角が用いられる。そして、この転舵トルク指令値に基づいて、インバータ324を操作するための操作信号を演算する。
【0107】
上記のとおり、第3実施形態に係るステアリングシステム300では、反力側モータ313および転舵側モータ322のそれぞれにおいて、モータ313,322の回転回数情報および回転角情報を検知する第1検知回路130および第2検知回路230を備える。制御装置としての反力側ECU340および転舵側ECU345は、それぞれ、異常判定部12と、制御量演算部14等を備える。
【0108】
さらに、反力側ECU340と、転舵側ECU345とは、別々に設けられるとともに互いに情報通信が可能に構成されている。情報通信の手段としては、CAN(Controller Area Network)、無線LAN(Local Area Network)、SENT(Single Edge Nibble Transmission)、PSI5(Peripheral Sensor Interface 5)、LIN(Local Interconnect Network)等を用いることができる。情報通信によって、反力側ECU340と、転舵側ECU345との双方の異常判定部12において、反力側モータ313についての2つの系統L1,L2から取得した2つの回転回数(TCs1、TCs2)と、転舵側モータ322についての複数の回転回数(TCr1,TCr2)と、外部センサ33からの操舵角および転舵角とを、共通の特性値に変換して比較し、各検知値についての異常判定を実行することができる。このため、異常判定部12において使用可能な検知値を増やすことができ、異常判定の精度をより向上させることができる。
【0109】
なお、反力装置310と、転舵装置320との双方が、それぞれ第1系統L1と第2系統L2のような複数の系統を備えている必要はなく、いずれか一方のみが複数の系統を備えるように構成されていてもよい。また、検知部11、異常判定部12、舵角算出部13、制御量演算部14は、反力側ECU340と、転舵側ECU345の双方にそれぞれ設けられていなくてもよい。検知部11、異常判定部12、舵角算出部13、制御量演算部14は、例えば、反力側ECU340、転舵側ECU345のいずれか一方のみに設けられていてもよいし、反力側ECU340および転舵側ECU345から独立した別のECUに設けられていてもよい。
【0110】
なお、第3実施形態においては、反力側ECU340では、転舵側ECU345に設けられた第1検知回路および第2検知回路により取得された回転回数情報を舵角情報として用いることができる。同様に、転舵側ECU345では、反力側ECU340に設けられた第1検知回路および第2検知回路により取得された回転回数情報を舵角情報として用いることができる。このため、第1実施形態のように、舵角情報を取得するための外部センサ33を設置する必要がない。
【0111】
なお、上記の各実施形態で説明した技術は、運転者等による操作入力を行うことなく、自動でモータ80,313,322等を制御する自動運転システム(ADS)についても適用できる。
【0112】
上記の各実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0113】
ECU10,340,345は、モータ80,313,322の回転を検知するセンサ素子131,132,231,232と、センサ素子131,132,231,232からの出力に基づいて、モータ80,313,322の回転回数情報を検知する第1検知回路130および第2検知回路230とを備える。そして、ECU10,340,345は、第1検知回路130および第2検知回路230から、第1回転回数情報および第2回転回数情報をそれぞれ取得する。また、ECU10,340,345は、センサ素子131,132,231,232とは異なる外部センサから、車両の操向に関わる舵角情報として、操舵角と転舵角の少なくともいずれか一方を取得する。
【0114】
そして、ECU10,340,345は、異常判定部12によって、第1回転回数情報および第2回転回数情報と、舵角情報とを、共通の特性値に変換した場合に、いずれに対しても一致度合が所定度合よりも低い回転回数または舵角を異常と判定する。このため、異常判定に際して、複数の回転回数情報に加え、外部センサから得られた舵角情報を用いて、異常判定を実行でき、異常判定の精度を確保することができる。
【0115】
また、異常判定の精度を確保できるため、異常と判定されなかった(すなわち、正常と判定された)回転回数情報または舵角情報をダウングレードとして扱う必要がない。その結果、制御量演算部14は、異常判定部により異常と判定されなかった(正常と判定された)第1回転回数情報、第2回転回数情報を含む複数の回転回数情報、または舵角情報に基づいて、モータ制御における一部の機能を停止させることなく、モータ80,313,322の制御を実行できる。その結果、従来と比較して、モータ制御の継続性を向上させることができる。
【0116】
なお、ECU10,340,345においては、第1回転回数情報と第2回転回数情報との差が所定の第1閾値X1以上である場合に、この複数の回転回数情報のうちの少なくともいずれか1つと、外部センサから取得した舵角情報とを共通の特性値に変換して比較し、複数の回転回数情報のうちのいずれが異常であるかを特定するように構成されていてもよい。
【0117】
また、ECU10,340,345においては、第1検知回路130は、センサ素子131,132に基づいてモータ80の第1回転角情報を検知し、第2検知回路230は、センサ素子231,232に基づいてモータ80の第2回転角情報を検知してもよい。この場合、異常判定部12は、検知回路130,230からそれぞれ取得した第1回転角情報、第2回転角情報と、外部センサから取得した、舵角情報に関わる第3回転角情報とを、共通の特性値に変換して互いに比較することにより、各回転角情報についての異常判定を実行してもよい。この場合、各回転角情報の少なくともいずれか1つが異常と判定された場合には、異常判定部12は、第1回転角情報、第2回転回数情報、および舵角情報についての異常判定を実行しないように構成されていてもよい。検知回路130,230および外部センサ33から得られる回転角情報に異常が発見された場合には、第1回転角情報、第2回転回数情報、および舵角情報を比較する異常判定を行わないようにすることにより、異常判定の精度が低下することを抑制できる。
【0118】
さらに、異常判定部12は、各回転角情報の少なくともいずれか1つに異常判定がなされた場合には、上述のとおり、第1回転角情報、第2回転回数情報、および舵角情報についての異常判定を不実行とするとともに、異常の発生の通知を実行する処理や、取得した第1回転回数情報、第2回転回数情報および舵角情報を無効化する処理や、異常判定された回転角情報を取得した検知回路または外部センサの動作を制限する処理等を実行するように構成されていてもよい。
【0119】
また、ECU10等においては、第1系統L1は、第1検知回路130および第1制御部170に電力供給する第1電源191を備え、第2系統L2は、第2検知回路230および第2制御部270に電力供給する第2電源291を備えている。複数の系統L1,L2において、それぞれ、系統内の構成要素(検知回路、制御部)に電力供給する電源191,291を別個に備えているため、複数の系統L1,L2からそれぞれ得られる第1回転回数情報および第2回転回数情報の双方に同時に異常が発生する危険性が低減される。
【0120】
上記に説明したモータ制御装置としてのECU10等の機能は、ECU340,345のように、操舵部材に反力を与える反力側モータ313と、車輪の転舵量を変更する転舵側モータ322とを備えるモータ制御システム(ステアリングシステム300)におけるモータ制御装置(反力側ECU340,転舵側ECU345)においても適用できる。この場合、反力側ECU340は、転舵側ECU345から舵角情報を取得してもよい。また、転舵側ECU345は、反力側ECU340から舵角情報を取得してもよい。
【0121】
なお、上記の各実施形態においては、2つの系統L1,L2を備える2系統システムを例示して説明したが、2系統に限定されず、3以上の系統を備えるシステムであってもよい。また、第1回転回数情報または第2回転回数情報として利用できる情報は、2つの回転回数情報に限定されず、3つ以上の回転回数情報を含むものであってもよい。さらには、舵角情報として利用できる情報は、1つの舵角情報に限定されず、複数の舵角情報を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
10…ECU、11…検知部、12…異常判定部、14…制御量演算部、33…外部センサ、80…モータ、130…第1検知回路、131,132,231,232…センサ素子、230…第2検知回路、313…反力側モータ、322…転舵側モータ、340…反力側ECU、345…転舵側ECU