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特許7180372プロジェクターの制御方法、及びプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】プロジェクターの制御方法、及びプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20221122BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20221122BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20221122BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20221122BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G03B21/14 E
G03B21/00 D
G09G5/00 X
G09G5/00 510B
G09G5/00 530H
G09G5/00 550C
G09G5/36 520D
H04N5/74 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018247364
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020106739
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝明
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-077545(JP,A)
【文献】特開2012-118398(JP,A)
【文献】特開2008-203426(JP,A)
【文献】特開2006-189685(JP,A)
【文献】特開2013-243504(JP,A)
【文献】特開2014-187531(JP,A)
【文献】特開2010-028412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
G09B23/00-29/14
G09G3/00-3/08
3/12
3/16
3/19-3/26
3/30
3/34
3/38-5/36
5/377-5/42
H04N5/66-5/74
9/12-9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された基準方向に対するプロジェクターの設置角度を検出する検出ステップと、
検出した前記設置角度に基づき、前記プロジェクターが投射する画像の形状を補正する補正量を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定した前記補正量に基づき、画像の形状を補正する補正ステップと、
前記補正ステップにより補正した画像を投射する投射ステップと、を有し、
前記決定ステップは、前記プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲を複数の領域に分割し、前記検出ステップにより検出した前記設置角度が、複数の前記領域のいずれに属するのかを判定し、判定した前記属する領域に予め設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定し、
判定した前記属する領域が第1の領域から前記第1の領域に隣接する第2の領域に移動した場合であって、前記設置角度が、前記第1の領域と前記第2の領域との境界の設置角度から前記第2の領域内に予め設定された範囲内の角度である場合に、前記設置角度が前記第1の領域に属すると判定する、プロジェクターの制御方法。
【請求項2】
予め設定された基準方向に対するプロジェクターの設置角度を検出する検出ステップと、
検出した前記設置角度に基づき、前記プロジェクターが投射する画像の形状を補正する補正量を決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定した前記補正量に基づき、画像の形状を補正する補正ステップと、
前記補正ステップにより補正した画像を投射する投射ステップと、を有し、
前記決定ステップは、前記プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲を複数の領域に分割し、前記検出ステップにより検出した前記設置角度が、複数の前記領域のいずれに属するのかを判定し、判定した前記属する領域に予め設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定し、
前記設置角度が変更され、かつ前記設置角度が一定となり予め設定された時間が経過していない場合、前記設置角度が変更される前の前記属する領域に設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定する、プロジェクターの制御方法。
【請求項3】
前記決定ステップは、前記設置角度が変更され、かつ前記設置角度が一定となり予め設定された時間が経過した後に、再度、前記検出ステップにより前記設置角度の変化を検出した場合、検出した前記設置角度が複数の前記領域のいずれに属するのかを再度、判定し、判定した前記属する領域に設定された前記基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定する、請求項記載のプロジェクターの制御方法。
【請求項4】
前記決定ステップは、複数の前記領域の各々において、前記補正量が0となる角度を前記基準角度とする、請求項1からのいずれか一項に記載のプロジェクターの制御方法。
【請求項5】
前記決定ステップは、前記設置角度と前記基準角度との差と、当該差に対応した補正量とが対応づけられたテーブルを参照して、前記補正量を決定する、請求項1からのいずれか一項に記載のプロジェクターの制御方法。
【請求項6】
予め設定された基準方向に対するプロジェクターの設置角度を検出する検出部と、
検出した前記設置角度に基づき、前記プロジェクターが投射する画像の形状を補正する補正量を決定する決定部と、
前記決定部により決定した前記補正量に基づき、画像の形状を補正する補正部と、
前記補正部により補正した画像を投射する投射部と、を備え、
前記決定部は、前記プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲を複数の領域に分割し、前記検出部が検出した前記設置角度が、複数の前記領域のいずれに属するのかを判定し、判定した前記属する領域に予め設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定し、
判定した前記属する領域が第1の領域から前記第1の領域に隣接する第2の領域に移動した場合であって、前記設置角度が、前記第1の領域と前記第2の領域との境界の設置角度から前記第2の領域内に予め設定された範囲内の角度である場合に、前記設置角度が前記第1の領域に属すると判定する、プロジェクター。
【請求項7】
予め設定された基準方向に対するプロジェクターの設置角度を検出する検出部と、
検出した前記設置角度に基づき、前記プロジェクターが投射する画像の形状を補正する補正量を決定する決定部と、
前記決定部により決定した前記補正量に基づき、画像の形状を補正する補正部と、
前記補正部により補正した画像を投射する投射部と、を備え、
前記決定部は、前記プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲を複数の領域に分割し、前記検出部が検出した前記設置角度が、複数の前記領域のいずれに属するのかを判定し、判定した前記属する領域に予め設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定し、
前記設置角度が変更され、かつ前記設置角度が一定となり予め設定された時間が経過していない場合、前記設置角度が変更される前の前記属する領域に設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターの制御方法、及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターは、プロジェクターの設置状態に応じて投射画像の形状の歪みを補正している。例えば、特許文献1では、加速度センサーによりプロジェクターの姿勢を検出し、検出した姿勢に基づいて投射画像の台形歪みを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-173378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、プロジェクターは小型化が進み、ビジネスユースだけではなく、家庭での使用も増えてきている。このため、プロジェクターが画像を投射する投射面も予め設置されたスクリーンだけではなく、室内の壁や天井、床等、様々なものが想定される。しかしながら、特許文献1は、プロジェクターを台上や床面に設置する場合や、天井から吊り下げる場合の形状補正についてしか考慮がされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する一態様は、予め設定された基準方向に対するプロジェクターの設置角度を検出する検出ステップと、検出した前記設置角度に基づき、前記プロジェクターが投射する画像の形状を補正する補正量を決定する決定ステップと、前記決定ステップにより決定した補正量に基づき、画像の形状を補正する補正ステップと、前記補正ステップにより補正した画像を投射する投射ステップと、を有し、前記決定ステップは、前記プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲を複数の領域に分割し、前記検出ステップにより検出した前記設置角度が、複数の前記領域のいずれに属するのかを判定し、判定した前記属する領域に予め設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定する、プロジェクターの制御方法である。
【0006】
上記プロジェクターの制御方法において、前記決定ステップは、判定した前記属する領域が第1の領域から前記第1の領域に隣接する第2の領域に移動した場合であって、前記設置角度が、前記第1の領域と前記第2の領域との境界の設置角度から前記第2の領域内に予め設定された範囲内の角度である場合に、前記設置角度が前記第1の領域に属すると判定する構成であってもよい。
【0007】
上記プロジェクターの制御方法において、前記決定ステップは、前記設置角度が変更され、かつ前記設置角度が一定となり予め設定された時間が経過していない場合、前記設置角度が変更される前の前記属する領域に設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定する構成であってもよい。
【0008】
上記プロジェクターの制御方法において、前記決定ステップは、前記設置角度が変更され、かつ前記設置角度が一定となり予め設定された時間が経過した後に、再度、前記検出ステップにより前記設置角度の変化を検出した場合、検出した前記設置角度が複数の前記領域のいずれに属するのかを再度、判定し、判定した前記属する領域に設定された前記基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定する構成であってもよい。
【0009】
上記プロジェクターの制御方法において、前記決定ステップは、複数の前記領域の各々において、前記補正量が0となる角度を前記基準角度とする構成であってもよい。
【0010】
上記プロジェクターの制御方法において、前記決定ステップは、前記設置角度と前記基準角度との差と、当該差に対応した補正量とが対応づけられたテーブルを参照して、前記補正量を決定する構成であってもよい。
【0011】
上記課題を解決する別の一態様は、予め設定された基準方向に対するプロジェクターの設置角度を検出する検出部と、検出した前記設置角度に基づき、前記プロジェクターが投射する画像の形状を補正する補正量を決定する決定部と、前記決定部により決定した補正量に基づき、画像の形状を補正する補正部と、前記補正部により補正した画像を投射する投射部と、を備え、前記決定部は、前記プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲を複数の領域に分割し、前記検出部が検出した前記設置角度が、複数の前記領域のいずれに属するのかを判定し、判定した前記属する領域に予め設定された基準角度と、検出した前記設置角度との差に基づいて前記補正量を決定する、プロジェクターである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】プロジェクターの外観を示す斜視図。
図2】プロジェクターの外観を示す斜視図。
図3】プロジェクターの機能的構成を示す機能ブロック図。
図4】本体部が回転可能な角度範囲を4分割した領域を示す図。
図5】第1実施形態の補正テーブルを示す図。
図6】第1実施形態のプロジェクターの動作を示すフローチャート。
図7】第2実施形態の補正テーブルを示す図。
図8】プロジェクターと、プロジェクターの投射画像とを示す図。
図9】プロジェクターと、プロジェクターの投射画像とを示す図。
図10】第2実施形態のプロジェクターの動作を示すフローチャート。
図11】第2実施形態のプロジェクターの動作を示すフローチャート。
図12】プロジェクターの外観を示す斜視図。
図13】プロジェクターの外観を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2は、プロジェクター1の外観を示す斜視図である。
プロジェクター1は、装置本体を収容する筐体10と、筐体10を支持する支持部20とを備える。筐体10は、外形の形状が直方体であり、筐体10の内部には、光学的な画像である画像光を形成して投射する投射系や、画像光の元となる画像データを電気的に処理する画像処理系、これらの各部を制御する制御部70等が収容される。支持部20は、筐体10を支持する支持部材であり、台座部21と脚部22とを備える。
【0014】
プロジェクター1は、後述する図3に示すように加速度センサー55を備え、x軸、y軸及びz軸方向の加速度を検出する。x軸方向は、筐体10の側面10a,10bの法線に平行な方向である。x軸方向は、支持部20に支持されて回転する筐体10の回転軸に平行な方向でもある。y軸方向は、筐体10の背面10cの法線に平行な方向である。背面10cは、画像を投射する投射レンズが露出した前面10dとは反対側の裏面である。投射レンズについては、図示を省略する。z軸方向は、筐体10の上面10eの法線に平行な方向である。
【0015】
支持部20は、台座部21と、脚部22とを備える。台座部21は、脚部22と、脚部22が支持する筐体10との台座として機能し、台座部21の上面21aに脚部22が固定される。脚部22は、台座部21と、筐体10の側面10a、10bとに固定され、筐体10を回転可能に支持する。筐体10は、脚部22により支持され、回転軸であるx軸まわりに360°回転可能である。図1は、上面10eの法線方向であるz軸が鉛直方向を向く場合を示し、図2は、z軸を鉛直方向に対して角度αだけ傾けた場合を示す。
【0016】
図3は、プロジェクター1の機能的構成を示す機能ブロック図である。
図3を参照しながらプロジェクター1の構成について説明する。投射系は、投射部30を備える。投射部30は、光源31、光変調装置33及び光学ユニット35を備える。
【0017】
光源31には、ハロゲンランプ、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ等のランプが用いられる。また、光源31として、LED(Light Emitting Diode))やレーザー光源等の固体光源を用いてもよい。
【0018】
また、光源31には、駆動回路41が接続される。駆動回路41は、光源31及び制御部70に接続され、制御部70の制御に従って光源31に駆動電流やパルスを供給し、光源31を点灯又は消灯させる。
【0019】
光変調装置33は、光源31が発する光を変調して画像光を生成する光変調素子を備える。光変調素子には、例えば、透過型の液晶ライトバルブ、反射型の液晶ライトバルブ、デジタルミラーデバイス等を用いることができる。光変調装置33は、光変調素子が生成した画像光を光学ユニット35に射出する。
【0020】
光変調装置33には、光変調装置駆動回路43が接続される。光変調装置駆動回路43は、制御部70及び光変調装置33に接続され、制御部70の制御に従って光変調装置33を駆動して光変調素子にフレーム単位で画像を描画する。例えば、光変調装置33が液晶ライトバルブで構成される場合、光変調装置駆動回路43は液晶を駆動するドライバー回路により構成される。
【0021】
光学ユニット35は、レンズやミラー等の光学素子を備え、光変調装置33で変調された画像光を投射面5に向けて投射する。これにより投射面5には、画像光に基づく画像が結像する。投射面5に結像した画像光に基づく画像を投射画像3という。本実施形態のプロジェクター1は、筐体10がx軸まわりに360°回転する構成である。このため、筐体10を回転させることにより、室内の壁や天井、床を投射面5とすることができる。
【0022】
プロジェクター1は、リモコン受光部51、操作パネル53及び加速度センサー55を備える。
リモコン受光部51は、リモコンにより送信される赤外線信号を受光する。リモコン受光部51は、受光した赤外線信号に対応した操作信号を制御部70に出力する。この操作信号は、操作者により操作されたリモコンのスイッチの操作に対応した信号である。
【0023】
操作パネル53は、例えば、筐体10に配置され、各種のスイッチを備える。操作パネル53のスイッチが操作されると、操作されたスイッチに対応した操作信号が制御部70に入力される。本実施形態では、プロジェクター1に操作パネル53を設けた構成について説明するが、プロジェクター1を小型化する場合、筐体10に操作パネル53は設けず、リモコンによりプロジェクター1が備える機能のすべてを操作可能な構成としてもよい。
【0024】
加速度センサー55は、x軸、y軸及びz軸の互いに直交する3軸方向の加速度を検出する。加速度センサー55は、検出した3軸方向の加速度を制御部70に出力する。制御部70は、入力された3軸方向の加速度を後述する記憶部71に記憶させる。加速度センサー55は、後述する制御部70と共に本発明の「検出部」の一例として機能する。
【0025】
次に、プロジェクター1の画像処理系について説明する。
プロジェクター1は、画像処理系として画像インターフェイス61、画像処理部63、フレームメモリー65及び制御部70を備える。
【0026】
画像インターフェイス61は、画像データが入力されるインターフェイスであり、不図示のケーブルが接続されるコネクター、及びケーブルを介して画像データを受信するインターフェイス回路を備える。画像インターフェイス61は、受信した画像データを画像処理部63に出力する。
【0027】
画像インターフェイス61には、プロジェクター1に画像データを供給する外部装置が接続される。外部装置には、例えば、ノート型PC(Personal Computer)、デスクトップ型PC、タブレット端末、スマートフォン、ビデオ再生装置、DVDプレーヤー、Blu-rayプレーヤー等が用いられる。Blu-rayは、登録商標である。
【0028】
また、画像インターフェイス61は、例えば、VOD(Video On Demand)等のサービスの提供を受けるためのSTB(Set Top Box)端末を、直接接続可能な構成であってもよい。
【0029】
また、プロジェクター1と外部装置とを無線により接続してもよい。例えば、プロジェクター1に、Wi-FiやBluetooth等の通信規格に従って無線通信を行う無線通信部を設けてもよい。Wi-Fi及びBluetoothは、登録商標である。
【0030】
画像処理部63には、フレームメモリー65が接続される。画像処理部63及びフレームメモリー65は、例えば、集積回路により構成することができる。集積回路には、LSI(Large-Scale Integrated CIRCUIT)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-chip)等が含まれる。また、集積回路の構成の一部にアナログ回路が含まれてもよい。
【0031】
画像処理部63は、本発明の「補正部」の一例として機能する。画像処理部63は、画像インターフェイス61から入力された画像データをフレームメモリー65に展開する。画像処理部63は、フレームメモリー65に展開した画像データに対して画像処理を行う。画像処理部63が行う画像処理には、例えば、投射画像3の歪みを補正する形状補正処理や、解像度変換処理、リサイズ処理、画像の色合いや輝度の調整処理等が含まれる。画像処理部63は、制御部70により指定された処理を実行し、必要に応じて、制御部70から入力されるパラメーターを使用して処理を行う。また、画像処理部63は、上記のうち複数の画像処理を組み合わせて実行することも勿論可能である。画像処理部63は、画像処理の終了した画像データをフレームメモリー65から読み出して光変調装置駆動回路43に出力する。
【0032】
制御部70は、記憶部71を備える。記憶部71は、ROM(Read Only Memory)や、RAM(Random Access Memory)を備える。また、記憶部71は、eMMC(embedded Multi Media Card)や、SSD(Solid State Drive)等の半導体メモリーや、HDD(Hard Disk Drive)を補助記憶部として備えてもよい。この場合、補助記憶部を制御部70の外部に設けてもよい。
【0033】
記憶部71は、プロセッサー75が実行するOSやアプリケーションプログラム等の制御プログラム71aを記憶する。また、記憶部71は、加速度センサー55が検出した加速度を一時的に記憶する。さらに、記憶部71は、補正テーブル71bを記憶する。補正テーブル71bは、画像処理部63が実行する形状補正処理に使用する補正パラメーターを登録したテーブルである。補正パラメーターは、本発明の「補正量」の一例に対応する。また、補正テーブル71bは、本発明の「テーブル」に対応する。画像処理部63が実行する形状補正処理とは、具体的には、投射画像3の幾何学的な歪みを補正する処理である。補正パラメーターは、投射画像3の水平方向の歪みを補正するパラメーターである。
【0034】
光学ユニット35が備える投射レンズの光軸が、投射面5の法線と平行ではない場合、すなわち、投射面5に対してプロジェクター1を傾斜させて設置した場合、投射画像3が台形状に歪む、いわゆる台形歪みが発生する。このため、プロジェクター1は、投射画像3に生じる台形状の歪みとは逆向きの台形状に変換する台形歪み補正等の幾何学的な歪み補正を行う。形状補正処理を行うことで、投射画像3は、歪みが抑制された矩形状の画像となる。
【0035】
制御部70は、プロセッサー75を備える。プロセッサー75は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、マイコン等で構成される演算処理装置である。また、プロセッサー75は、単一のプロセッサーにより構成してもよいし、複数のプロセッサーの組み合わせにより構成してもよい。
【0036】
制御部70は、角度検出部75a及びパラメーター決定部75bを機能ブロックとして備える。機能ブロックは、プロセッサー75が制御プログラム71aを実行することで実現されるプロセッサー75の機能であって、プロセッサー75が実行する演算、制御等の機能を、機能ごとに区分けしたブロックである。
【0037】
角度検出部75aは、加速度センサー55が検出した3軸方向の加速度を記憶部71から読み出す。角度検出部75aは、読み出した加速度に基づいて、筐体10の回転角度θを算出する。本実施形態は、水平方向を基準方向とし、筐体10の水平方向からの回転角度θを加速度に基づいて求める。回転角度θは、例えば、回転軸であるx軸に直交するy軸及びz軸の方向の加速度に基いて算出することができる。角度検出部75aは、加速度センサー55と共に本発明の「検出部」の一例として機能する。また、角度検出部75aが算出する回転角度θは、本発明の「設置角度」の一例に対応する。また、本実施形態は、基準方向が水平方向である場合を例に説明するが、基準方向は、例えば、鉛直下方向や、鉛直上方向等、任意の方向を用いることができる。
【0038】
パラメーター決定部75bは、本発明の「決定部」の一例として機能する。パラメーター決定部75bは、角度検出部75aにより回転角度θが算出されると、算出された回転角度θが、第1領域81から第4領域84のいずれの領域に属するのかを判定する。第1領域81、第2領域82、第3領域83及び第4領域84は、筐体10が回転可能な範囲である360°を4つに分割した領域である。本実施形態では、筐体10の回転範囲である360°を、第1領域81、第2領域82、第3領域83及び第4領域84の4つの領域に分割した場合を説明するが、領域の分割数は、2つや3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、「360°」は、本発明の「プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲」に対応する。
【0039】
図4は、筐体10が回転可能な角度範囲を分割した4つの領域を示す図である。
図4には、筐体10が基準方向である水平方向を向く場合を基準の0°とし、角度範囲360°を4分割した4つの領域を示す。筐体10が水平方向を向く場合とは、上面10eの法線が鉛直上方向を向く場合であり、筐体10の水平は、z軸方向の加速度により判定することができる。例えば、z軸の正方向を鉛直上方向とした場合、筐体10が水平の場合、z軸方向の加速度が-1G、又は-1Gから所定範囲内の値になる。
【0040】
第1領域81は、315°<θ≦45°の範囲である。また、第2領域82は、45°<θ≦135°の範囲である。また、第3領域83は、135°<θ≦225°の範囲である。また、第4領域84は、225°<θ≦315°の範囲である。θ=45°は、第1領域81と第2領域82との境界の設置角度に対応する。また、θ=135°は、第2領域82と第3領域83との境界の設置角度に対応する。また、θ=225°は、第3領域83と第4領域84との境界の設置角度に対応する。また、θ=315°は、第4領域84と第1領域81との境界の設置角度に対応する。
【0041】
第1領域81、第2領域82、第3領域83及び第4領域84は、本発明の「第1の領域」又は「第2の領域」の一例に対応する。例えば、第1領域81が「第1の領域」に対応する場合、第1領域81に隣接する領域である第4領域84及び第2領域82が本発明の「第2の領域」に対応する。また、第2領域82が「第1の領域」に対応する場合、第2領域82に隣接する領域である第1領域81及び第3領域83が本発明の「第2の領域」に対応する。また、第3領域83が「第1の領域」に対応する場合、第3領域83に隣接する領域である第2領域82及び第4領域84が本発明の「第2の領域」に対応する。また、第4領域84が「第1の領域」に対応する場合、第4領域84に隣接する領域である第1領域81及び第3領域83が本発明の「第2の領域」に対応する。
【0042】
第1領域81、第2領域82、第3領域83及び第4領域84の各領域には、基準角度が設定されている。基準角度は、各領域の基準となる角度であり、補正テーブル71bには、基準角度と回転角度θとの差に対応づけて補正パラメーターが登録される。本実施形態では、第1領域81の基準角度を「0°」又は「360°」に設定し、第2領域82の基準角度を「90°」に設定している。また、本実施形態では、第3領域83の基準角度を「180°」に設定し、第4領域84の基準角度を「270°」に設定している。第1領域81、第2領域82、第3領域83及び第4領域84の各領域に設定された基準角度は、形状補正の補正量が「0」となる角度である。すなわち、プロジェクター1は、回転角度θが「0°」、「90°」、「180°」、「270°」である場合、投射画像に歪みは生じていないと判定し、形状補正は行わない。本実施形態では、筐体10が回転可能な角度範囲を4つの領域に分割し、分割した各領域の中心となる角度又はその付近の角度を基準角度に設定した場合を示すが、基準角度の設定方法は任意に変更可能である。
【0043】
パラメーター決定部75bは、角度検出部75aが算出した回転角度θが315°<θ≦45°の範囲にある場合、回転角度θが第1領域81に属すると判定する。同様に、パラメーター決定部75bは、回転角度θが45°<θ≦135°の範囲にある場合、回転角度θが第2領域82に属すると判定し、回転角度θが135°<θ≦225°の範囲にある場合、回転角度θが第3領域に属すると判定する。また、パラメーター決定部75bは、回転角度θが225°<θ≦315°の範囲にある場合、回転角度θが第4領域に属すると判定する。
【0044】
パラメーター決定部75bは、回転角度θが属する領域を判定すると、判定した属する領域の基準角度と、回転角度θとの差を求める。パラメーター決定部75bは、求めた差に対応する補正パラメーターを、補正テーブル71bから取得する。パラメーター決定部75bは、取得した補正パラメーターを画像処理部63に出力する。
【0045】
図5は、補正テーブル71bの構成を示す図である。
補正テーブル71bは、角度差γと、角度差γに対応する補正パラメーターとを対応づけて登録したテーブルである。角度差γは、角度検出部75aが検出する回転角度θと、基準角度との差である。図5に示す補正テーブル71bには、角度差γを1°ごとの間隔で登録した場合を示すが、補正テーブル71bに登録する角度差γの値は任意である。例えば、0.5°ごとの間隔で角度差γを登録してもよいし、5°ごとの間隔で角度差γを登録してもよい。例えば、補正テーブル71bに、5°ごとの角度差γと、この角度差γに対応する補正パラメーターとを登録する場合、補正テーブル71bに登録されていない角度差γに対応する補正パラメーターは、補間演算により求めることができる。
【0046】
また、角度差γには、正の角度差γと、負の角度差γとが含まれる。角度検出部75aが検出した回転角度θが、基準角度より大きい場合、正の角度差γとなる。また、角度検出部75aが検出した回転角度θが、基準角度より小さい場合、負の角度差γとなる。例えば、回転角度θが30°である場合、第1領域81の基準角度である0°との差は+30°となり、正の角度差となる。また、回転角度θが340°の場合、第1領域81の基準角度である360°との差は-20°となり、負の角度差となる。
【0047】
また、補正テーブル71bには、第1領域81~第4領域84の各領域に対応した補正パラメーターがそれぞれ登録されているわけではない。角度差γと、この角度差γに対応した補正パラメーターとを対応づけて補正テーブル71bに登録することで、第1領域81~第4領域84で補正テーブル71bを共通化することができる。パラメーター決定部75bは、判定した回転角度θが属する領域が第1領域81~第4領域84のいずれの領域であっても基準角度との角度差γを算出し、算出した角度差γに対応した補正パラメーターを、補正テーブル71bを参照して取得する。
【0048】
画像処理部63は、フレームメモリー65に展開した画像データの形状歪みを、制御部70から入力された補正パラメーターにより補正する。画像処理部63は、補正した画像データを光変調装置駆動回路43に出力する。光変調装置駆動回路43は、入力された画像データに基づいて、光変調素子を駆動する駆動信号を生成する。光変調装置駆動回路43は、生成した駆動信号により光変調素子を駆動して画像データに基づく画像を光変調素子に描画する。光源31から射出された光が光変調素子を通過することで画像光に変調される。生成された画像光は、光学ユニット35により投射面5に投射される。これにより、投射面5には、形状歪みが補正された投射画像3が表示される。
【0049】
図6は、第1実施形態のプロジェクター1の動作を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートを参照しながら第1実施形態のプロジェクター1の動作について説明する。
まず、制御部70は、形状補正処理を開始させる操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS1)。このフローチャートでは、操作者がリモコン等を操作して形状補正処理を開始させる場合を例にして説明するが、プロジェクター1の電源がオンされた場合や、画像の投射の開始操作を受け付けた場合に、形状補正処理を開始してもよい。制御部70は、形状補正処理の開始操作を受け付けていない場合(ステップS1/NO)、開始操作を受け付けるまで処理の開始を待機する。
【0050】
制御部70は、形状補正処理の開始操作を受け付けると(ステップS1/YES)、記憶部71から3軸方向の加速度を読み出して取得する(ステップS2)。加速度センサー55は、予め設定された時間間隔で3軸方向の加速度を検出し、検出した3軸方向の加速度を制御部70に出力する。
【0051】
制御部70は、取得した3軸方向の加速度に基づき、筐体10の回転角度θを算出する(ステップS3)。ステップS3は、本発明の「検出ステップ」の一例に対応する。制御部70は、回転角度θを算出すると、算出した回転角度θが第1領域81~第4領域84のいずれの領域に属するのかを判定する(ステップS4)。
【0052】
制御部70は、回転角度θが属する領域を判定すると、この判定した属する領域に設定された基準角度と、回転角度θとの角度差γを求める(ステップS5)。制御部70は、角度差γを求めると、求めた角度差γに対応づけられた補正パラメーターを、補正テーブル71bを参照して取得する(ステップS6)。ステップ5及びS6は、本発明の「決定ステップ」の一例に対応する。制御部70は、読み出した補正パラメーターを画像処理部63に出力して画像処理部63に形状補正処理を実行させる。
【0053】
画像処理部63は、フレームメモリー65に展開した画像データを、制御部70から入力された補正パラメーターにより補正して形状補正処理を実行する(ステップS7)。ステップS7は、本発明の「補正ステップ」の一例に対応する。画像処理部63は、形状補正処理が終了すると、画像の形状が補正された画像データをフレームメモリー65から読み出して光変調装置駆動回路43に出力する。光変調装置駆動回路43は、入力された画像データに基づいて駆動信号を生成し、光変調装置33の光変調素子を駆動する。これにより、光源31から射出された光が、光変調装置33により変調されて画像光が生成され、生成された画像光が光学ユニット35により投射される(ステップS8)。ステップS8は、本発明の「投射ステップ」の一例に対応する。
【0054】
また、制御部70は、記憶部71から次の3軸方向の加速度を読み出して取得し(ステップS9)、取得した加速度に基づいて回転角度θを算出する(ステップS10)。制御部70は、回転角度θを算出すると、算出した回転角度θと、ステップS3で前回、算出した回転角度θとを比較して、回転角度θに変化があるか否かを判定する(ステップS11)。制御部70は、回転角度θに変化がある場合(ステップS11/YES)、ステップS4に戻り、算出した回転角度θが属する領域を判定する。
【0055】
また、制御部70は、回転角度θに変化がない場合(ステップS11/NO)、回転角度θに変化がない状態が一定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS12)。制御部70は、回転角度θに変化がない状態が一定時間以上継続していない場合(ステップS12/NO)、ステップS9に移行して3軸方向の加速度を取得し、回転角度θを算出する(ステップS10)。また、制御部70は、回転角度θに変化がない状態が一定時間以上継続している場合(ステップS12/YES)、この処理フローを終了させる。
【0056】
以上説明したように第1実施形態のプロジェクター1は、検出ステップと、決定ステップと、補正ステップと、投射ステップとを実行する。
検出ステップは、プロジェクター1の設置角度として予め設定された基準方向である水平方向に対する回転角度θを検出するステップである。この検出ステップは、加速度センサー55や、制御部70の角度検出部75aにより実行されるステップである。
また、決定ステップは、検出ステップにより検出したプロジェクター1の回転角度θに基づいて、プロジェクター1が投射する画像の形状を補正する補正パラメーターを決定するステップである。決定ステップは、制御部70のパラメーター決定部75bにより実行されるステップである。
【0057】
また、補正ステップは、決定ステップにより決定された補正パラメーターに基づき、画像の形状を補正するステップである。この補正ステップは、画像処理部63により実行されるステップである。
また、投射ステップは、補正ステップにより補正した画像を投射するステップである。この投射ステップは、制御部70が投射部30を制御して実行するステップである。
【0058】
また、決定ステップは、プロジェクター1を設置可能な設置角度の範囲を第1領域81、第2領域82、第3領域83及び第4領域84の4つの領域に分割し、検出ステップにより検出した回転角度θが、4つの領域のいずれに属するのかを判定する。また、決定ステップは、判定した属する領域に予め設定された基準角度と、検出した設置角度との差に基づいて補正パラメーターを決定する。
従って、プロジェクター1を設置可能な設置角度の範囲で、投射する画像の形状を補正することができる。
【0059】
また、決定ステップは、第1領域81、第2領域82、第3領域83及び第4領域84の各々において、補正量が0となる角度を基準角度とし、判定した属する領域の基準角度と、検出した回転角度θとの差に基づいて補正パラメーターを決定する。
従って、第1領域81から第4領域84のすべての領域で、検出した回転角度θと、基準角度との差に基づいて補正パラメーターを特定することができる。
【0060】
また、決定ステップは、回転角度θの基準角度との差と、差に対応した補正量とが対応づけられた補正テーブル71bを参照して補正パラメーターを決定する。
従って、補正テーブル71bに登録されるデータ量を削減し、第1領域81から第4領域84のすべての領域で、検出した回転角度θと、基準角度との差に基づいて補正パラメーターを特定することができる。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態のプロジェクター1の構成は、図1に示す第1実施形態と同一であるため、プロジェクター1の詳細な構成についての説明は省略する。
【0062】
図7は、第2実施形態の補正テーブル71cの構成を示す図である。
本実施形態の補正テーブル71cは、第1実施形態で説明した角度差γと、角度差γに対応した補正パラメーターに加えて、余裕分の角度差、すなわち、マージンの角度差γと、このマージンの角度差γに対応した補正パラメーターとが対応付けて登録される。
【0063】
例えば、第1領域81の範囲は、315°<θ≦45°であり、基準角度は0°又は360°である。このため、角度差γの最大値は45°となる。しかし、補正テーブル71cには、+46°≦角度差γ≦+60°の範囲の値も正のマージンの角度差γとして登録され、かつ該正のマージンの角度差γに対応した補正パラメーターが登録される。また、補正テーブル71cには、-60°≦角度差γ≦-45°範囲の値も負のマージンの角度差γとして登録され、かつ該負のマージンの角度差γに対応した補正パラメーターが登録される。
【0064】
ここで、補正テーブル71cに、マージンの角度差γ、及び補正パラメーターを登録した理由について説明する。
例えば、プロジェクター1の向きを徐々に上向きに変更し、基準方向である水平方向からの角度である回転角度θを徐々に大きくしていく場合を例にして説明する。回転角度θが徐々に大きくなることで、投射画像3の投射位置が徐々に上方向に移動する。マージンの角度差γと、この角度差γに対応した補正パラメーターとが補正テーブル71cに登録されていない場合、パラメーター決定部75bは、回転角度θが45°を超えると、回転角度θの属する領域を第1領域81から第2領域82に変更する。また、パラメーター決定部75bは、回転角度θの属する領域を第2領域82に変更すると、第2領域82の負の角度差γに基づいて補正パラメーターを決定する。パラメーター決定部75bは、回転角度θが第2領域82の基準角度である90°を超えるまでは、第2領域82の負の角度差γに基づいて補正パラメーターを決定する。
【0065】
図8は、プロジェクター1と、プロジェクター1の投射画像3とを示す図である。プロジェクター1により表示される投射画像3は、プロジェクター1からの距離が離れるほど広がり、大きく表示される。従って、図8に示すように、プロジェクター1に、斜め上方に向かって画像光を投射させた場合、投射画像3の下辺3bより上辺3aの長さが長くなる。このため、プロジェクター1は、投射画像3に生じる台形状の歪みとは逆向きの台形状に変換する補正を行い、上辺3aの長さを短くする補正を行う。図8に破線で示す範囲に、形状補正後の投射画像3が表示される。正の角度差γに対応づけて補正テーブル71cに登録された補正パラメーターは、投射画像3の元となる画像データの上辺3aの長さを短く補正するパラメーターである。
【0066】
図9は、プロジェクター1と、プロジェクター1の投射画像3とを示す図である。
また、図9に示すように、プロジェクター1を、斜め下方向に向かって画像光を投射させる場合、投射画像3の上辺3aより下辺3bの長さが長くなる。この場合、プロジェクター1は、下辺3bの長さを短くする補正を行う。図9に破線で示す範囲に、形状補正後の投射画像3が表示される。負の角度差γに対応づけて補正テーブル71cに登録された補正パラメーターは、投射画像3の元となる画像データの下辺3bの長さを短く補正するパラメーターである。
【0067】
補正パラメーターを、領域の境界、例えば、45°を境として正から負の補正パラメーターに変更した場合、上辺3aの長さを短くする補正から、下辺3bの長さを短くする補正に切り替わり、投射画像3の形状が大きく変更される場合がある。同様に、補正パラメーターを、例えば、45°を境として負から正の補正パラメーターに変更した場合も、下辺3bの長さを短くする補正から、上辺3aの長さを短くする補正に切り替わり、投射画像3の形状が大きく変更される場合がある。
【0068】
本実施形態は、このような領域の境界で投射画像3の形状が大きく変更されることがないように、補正テーブル71cに、マージンの角度差γと、マージンの角度差γに対応した補正パラメーターとを対応づけて登録した。
パラメーター決定部75bは、角度検出部75aにより検出された回転角度θの属する領域が、第1領域81~第4領域84のいずれかの領域から隣接する他の領域に移動した場合、まず、検出された回転角度θと、移動前の領域の基準角度との角度差γを求める。そして、パラメーター決定部75bは、求めた角度差γに対応する補正パラメーターが補正テーブル71cに登録されているか否かを判定する。つまり、パラメーター決定部75bは、求めた角度差γが、マージンの角度差γとして補正テーブル71cに登録された角度差であるか否かを判定する。パラメーター決定部75bは、求めた角度差γがマージンの角度差γである場合、求めた角度差γに対応した補正パラメーターを補正テーブル71cから取得する。また、パラメーター決定部75bは、求めた角度差γがマージンの角度差γではない場合、検出された回転角度θと、移動後の領域の基準角度との角度差γを求め、求めた角度差γに対応した補正パラメーターを補正テーブル71cから取得する。
【0069】
補正テーブル71cに、マージンとして登録する角度差γの範囲は、任意に変更が可能である。例えば、第1領域81のマージンとして、+46°≦角度差γ≦+90°の範囲の補正パラメーターや、-90°≦角度差γ≦-46°の範囲の補正パラメーターを登録してもよい。また、+46°≦角度差γ≦+135°の範囲の補正パラメーターや、-135°≦角度差γ≦-46°の範囲の補正パラメーターをマージンとして補正テーブル71cに登録してもよい。第2領域82や、第3領域83、第4領域84についても同様である。
【0070】
また、パラメーター決定部75bは、プロジェクター1の動きが検出されてから、プロジェクター1の動きが停止したと判定されるまで、回転角度θが属する領域、及び基準角度を変更しないようにしてもよい。
例えば、パラメーター決定部75bは、角度検出部75aにより検出された回転角度θが属する領域として、最初に第1領域81を判定した場合、回転角度θと、第1領域81の基準角度との角度差γに基づいて補正パラメーターを取得する。この場合、補正テーブル71cには、角度差γが大きくなった場合にも対応可能なように、例えば、0°≦角度差γ≦+180°の範囲の補正パラメーターや、-180°≦角度差γ≦-°の範囲の補正パラメーターを登録しておく。
プロジェクター1の動きが停止したと判定されるまで、同一の領域の基準角度に基づいて補正パラメーターを決定することで、投射画像3の形状が大きく変更されないようにすることができる。
【0071】
パラメーター決定部75bは、角度検出部75aにより検出される回転角度θが同一の値を示し、回転角度θの変化が検出されない状態が一定時間以上経過すると、プロジェクター1の動きが停止したと判定する。そして、パラメーター決定部75bは、属する領域の判定をリセットする。その後、パラメーター決定部75bは、角度検出部75aにより異なる回転角度θが検出されると、検出された回転角度θに基づいて属する領域を再度判定する。検出された回転角度θに基づいて属する領域を再度判定することで、回転角度θが属する適切な領域を判定することができ、回転角度θに対応した適切な補正パラメーターにより画像の形状を補正することができる。
【0072】
図10及び図11は、第2実施形態のプロジェクター1の動作を示すフローチャートである。図10に示すステップS21~S31の処理は、図6に示すステップS1~S11と同一であるため、ステップS21~S31の処理の説明は省略する。
制御部70は、回転角度θを算出すると(ステップS30)、算出した回転角度θと、ステップS23で前回、算出した回転角度θとを比較して、回転角度θに変化があるか否かを判定する(ステップS31)。制御部70は、回転角度θに変化がない場合(ステップS31/NO)、回転角度θに変化がない状態が一定時間以上継続したか否かを判定する(ステップS32)。制御部70は、回転角度θに変化がない状態が一定時間以上継続した場合(ステップS32/YES)、この処理フローを終了させる。また、制御部70は、回転角度θに変化がない状態が一定時間以上継続していない場合(ステップS32/NO)、ステップS29に戻り3軸方向の加速度を取得し、回転角度を再度算出する(ステップS30)。
【0073】
また、制御部70は、ステップS31において回転角度θの変化を検出した場合(ステップS31/YES)、ステップS24で判定した属する領域を変更せずに、この属する領域に設定された基準角度と、ステップS30で算出した回転角度θとの角度差γを求める(ステップS33)。制御部70は、角度差γを求めると、求めた角度差γに対応づけられた補正パラメーターを、補正テーブル71を参照して取得する(ステップS34)。
【0074】
制御部70は、読み出した補正パラメーターを画像処理部63に出力して画像処理部63に形状補正処理を実行させる。画像処理部63は、フレームメモリー65に展開した画像データを、制御部70から入力された補正パラメーターにより補正して形状補正処理を実行する(ステップS35)。画像処理部63は、形状補正処理後の画像データをフレームメモリー65から読み出して光変調装置駆動回路43に出力する。これにより、光源31から射出された光が、光変調装置33により変調されて画像光が生成され、生成された画像光が光学ユニット35により投射される(ステップS36)。
【0075】
次に、制御部70は、記憶部71から次の3軸方向の加速度を読み出して取得し(ステップS37)、取得した加速度に基づいて回転角度θを算出する(ステップS38)。その後、制御部70は、算出した回転角度θと、ステップS30で前回、算出した回転角度θとを比較して、回転角度θに変化があるか否かを判定する(ステップS39)。制御部70は、回転角度θに変化がない場合(ステップS39/NO)、ステップS31で回転角度θの変化を検出してから一定時間を経過したか否かを判定する(ステップS40)。制御部70は、一定時間を経過していない場合(ステップS40/NO)、ステップS37に戻り、3軸方向の加速度に基づいて回転角度θを算出し、回転角度θに変化があるか否かを判定する。
【0076】
また、制御部70は、ステップS31で回転角度θの変化を検出してから一定時間を経過した場合(ステップS40/YES)、ステップS38で算出した回転角度θが属する領域を再度、判定する(ステップS41)。次に、制御部70は、判定した属する領域が、ステップS24で判定した前回の属すると領域と異なるか否かを判定する(ステップS42)。制御部70は、属すると判定した領域が、前回の領域と同一である場合(ステップS42/NO)、ステップS25の処理に戻る。
【0077】
また、制御部70は、判定した属する領域が、前回の属する領域と異なる場合(ステップS42/YES)、ステップS38で算出した回転角度θと、前回の属する領域の基準角度との角度差γを求める(ステップS43)。制御部70は、角度差γを求めると、求めた角度差γが、補正テーブル71cに登録されたマージンの角度差γとして登録されているか否かを判定する(ステップS44)。制御部70は、求めた角度差γがマージンの角度差γとして補正テーブル71cに登録されている場合(ステップS44/YES)、ステップS26に戻り、角度差γに対応した補正パラメーターを補正テーブル71cから取得し(ステップS26)、ステップS27以降の処理を再度行う。
【0078】
また、制御部70は、角度差γが補正テーブル71cに登録されていない場合(ステップS44/NO)、回転角度θが属する領域を、ステップS41で再判定した領域に変更し、基準角度を、変更した領域の基準角度に変更する(ステップS45)。その後、制御部70は、変更した領域の基準角度と、ステップS38で算出した回転角度θとの角度差γを求める(ステップS46)。その後、制御部70は、ステップS26に移行して、求めた角度差γに対応した補正パラメーターを補正テーブル71cから取得し(ステップS26)、ステップS27以降の処理を再度行う。
【0079】
以上説明したように第2実施形態では、検出される回転角度θが属する領域が、例えば、第1領域81から第2領域82に移動した場合、以下の条件が満たされるときは、回転角度θが第1領域81に属すると判定する。この条件は、回転角度θが、第1領域81の境界の回転角度θである45°から第2領域82内に予め設定された範囲内の角度である場合である。
従って、回転角度θが第1領域81の範囲から外れても、予め設定された範囲である間は、第1領域81の基準角度に基づいて補正パラメーターを決定することができる。このため、回転角度θが属する領域が変更になっても、基準角度の変更にマージンを持たせることができる。このため、補正パラメーターの値が大きく変更されるのを防止し、画像の形状が大幅に変更されるのを防止することができる。
【0080】
また、決定ステップは、回転角度θが、予め設定された時間一定値となるまで、判定した属する領域に設定された基準角度と、検出した設置角度との差に基づいて補正パラメーターを決定する。
従って、操作者の操作が継続している間は、補正パラメーターの値が大きく変更されるのを防止し、画像の形状が大幅に変更されるのを防止することができる。
【0081】
また、決定ステップは、回転角度θが、予め設定された時間一定の値となった後に、再度、回転角度θが変化した場合、検出した回転角度θが4つの領域のいずれに属するのかを再度、判定する。
従って、変化した後の回転角度θに対応した適切な補正パラメーターにより画像の形状を補正することができる。
【0082】
上述した実施形態は本発明を適用した具体的態様の例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、異なる態様として本発明を適用することも可能である。
例えば、鉛直方向であるz軸方向を回転軸としてプロジェクター1を回転させる場合にも同様の処理により形状歪みを補正することができる。上述した第1及び第2実施形態では、補正テーブル71b、71cに、投射画像3の水平方向の歪みを補正する補正パラメーターを登録したが、この場合、補正テーブル71b、71cには、投射画像3の垂直方向の歪みを補正する補正パラメーターを登録する。
【0083】
また、筐体10の回転角度θを変更する方法は、図1及び図2に示す方法以外の方法であってもよい。図12及び図13は、プロジェクターの外観を示す斜視図である。図12は、プロジェクター1の回転角度θが0°、すなわち、z軸が鉛直方向を向く場合を示し、図13は、z軸を鉛直方向に対して角度αだけ傾けた場合を示す。また、図12及び図13に示す(A)は、プロジェクター1を正面側から見た図を示し、(B)は、プロジェクター1を側面側から見た図を示す。筐体10の前面10d側の底面10fには、支持部材80を嵌め込み可能な凹部が設けられている。この凹部に支持部材80の先端を嵌め込み、支持部材80をプロジェクター1に固定する。支持部材80を固定したプロジェクター1を設置台85に設置すると、前面10d側の底面10fと設置台85との距離が、背面10c側の底面10fと設置台85との距離よりも離れた状態となり、プロジェクター1を傾けた状態にすることができる。また、支持部材80は、長さを変更可能であって、支持部材80の長さを変更することで、プロジェクター1の鉛直方向に対する傾斜角αを変更することができる。
【0084】
また、上述した第1及び第2実施形態では、筐体10が回転可能な角度範囲である360°を、プロジェクターを設置可能な設置角度の範囲としたが、設置角度の範囲は、180°や270°等の360°以外の角度であってもよい。
【0085】
また、プロジェクターの制御方法を、コンピューターを用いて実現する場合、このコンピューターに実行させるプログラムを記録媒体、又はこのプログラムを伝送する伝送媒体の態様で構成することも可能である。記録媒体には、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリーデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリー、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。また、上記記録媒体は、プロジェクター1が備えるRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD等の不揮発性記憶装置であってもよい。
【0086】
また、上述した第1及び第2実施形態では、本発明の「検出ステップ」、「決定ステップ」、「補正ステップ」に相当する処理をプロジェクター1が実行する場合について説明したが、これらのステップの少なくとも一部を他の装置に実行させてもよい。他の装置には、例えば、プロジェクター1に接続されたパーソナルコンピューターを挙げることができる。
【0087】
また、図6図10及び図11に示すフローチャートの処理単位は、制御部70の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。このため、図6図10及び図11のフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって本発明が制限されることはない。また、制御部70の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0088】
また、図3に示したプロジェクター1の構成は、プロジェクター1の機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。また、プロジェクター1の他の各部の具体的な細部構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0089】
また、光変調装置33が備える光変調素子は、例えば、3枚の反射型液晶パネルを用いた構成としてもよいし、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式を用いてもよい。或いは、3枚のデジタルミラーデバイスを用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせたDMD方式等により構成してもよい。光変調装置として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネルおよびDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な光変調装置であれば問題なく採用できる。
【符号の説明】
【0090】
1…プロジェクター、3…投射画像、3a…上辺、3b…下辺、5…投射面、10…筐体、10a…側面、10b…側面、10c…背面、10d…前面、10e…上面、20…支持部、21…台座部、21a…上面、22…脚部、30…投射部、31…光源、33…光変調装置、35…光学ユニット、41…駆動回路、43…光変調装置駆動回路、51…リモコン受光部、53…操作パネル、55…加速度センサー、61…画像インターフェイス、63…画像処理部、65…フレームメモリー、70…制御部、71…記憶部、71a…制御プログラム、71b、71c…補正テーブル、75…プロセッサー、75a…角度検出部、75b…パラメーター決定部、81…第1領域、82…第2領域、83…第3領域、84…第4領域。
図1
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