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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H01F37/00 G
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F37/00 J
H01F37/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019002997
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020113632
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-88007(JP,A)
【文献】特開2017-28084(JP,A)
【文献】特開2017-199890(JP,A)
【文献】特開2018-14459(JP,A)
【文献】特開2017-108025(JP,A)
【文献】特開2015-220449(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2646555(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F27/02-27/22
H01F27/28-27/32
H01F37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠体で構成される側壁部と、
前記底板部と対向する側に設けられる開口部とを備え、
前記一対の巻回部は、並列方向が前記底板部と直交するように配置され、
前記側壁部は、一対の長辺部と一対の短辺部とを備え、
前記短辺部又は前記長辺部は、前記開口部側から前記底板部側に向かって連続して設けられ、前記ケースの内方側に開口する溝部を備えるリアクトル。
【請求項2】
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠体で構成される側壁部と、
前記底板部と対向する側に設けられる開口部とを備え、
前記一対の巻回部は、前記両巻回部の軸が前記底板部と直交するように配置され、
前記側壁部は、一対の長辺部と一対の短辺部とを備え、
前記短辺部及び前記長辺部の一方は、前記開口部側から前記底板部側に向かって連続して設けられ、前記ケースの内方側に開口する溝部を備え
前記短辺部及び前記長辺部の他方は、前記溝部を備えておらず、
前記溝部は、前記短辺部及び前記長辺部の一方の両端部に設けられているリアクトル。
【請求項3】
前記溝部は、前記短辺部に設けられる請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記溝部は、前記一対の短辺部の一方又は前記一対の長辺部の一方に設けられる請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記溝部を備えない短辺部及び前記溝部を備えない長辺部の少なくとも一つは、前記開口部側から前記底板部側に向かうに従って前記ケースの内方側に傾斜する内面を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記溝部における前記開口部側の縁部が面取りされている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルと、磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースと、組合体の外周を覆う封止樹脂とを備えるリアクトルが開示されている。特許文献1では、封止樹脂をケースの底部側からケースの開口側に向かって充填するために、リアクトルの構成部材に封止樹脂の導入路を一体に形成している。導入路を形成する構成部材として、ケースにおける組合体の外周を囲む側壁部を例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-131567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルの更なる小型化が望まれている。ここでのリアクトルの小型化とは、リアクトルの設置面積が小さく、かつ組合体とケースとの間隔が小さいことを言う。また、リアクトルの更なる放熱性の向上が望まれている。特許文献1に記載のリアクトルでは、小型化及び放熱性の向上に関して、更なる改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、小型で、放熱性に優れるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一のリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠体で構成される側壁部と、
前記底板部と対向する側に設けられる開口部とを備え、
前記一対の巻回部は、並列方向が前記底板部と直交するように配置され、
前記側壁部は、一対の長辺部と一対の短辺部とを備え、
前記短辺部又は前記長辺部は、前記開口部側から前記底板部側に向かって連続して設けられ、前記ケースの内方側に開口する溝部を備える。
【0007】
本開示の第二のリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠体で構成される側壁部と、
前記底板部と対向する側に設けられる開口部とを備え、
前記一対の巻回部は、前記両巻回部の軸が前記底板部と直交するように配置され、
前記側壁部は、一対の長辺部と一対の短辺部とを備え、
前記短辺部又は前記長辺部は、前記開口部側から前記底板部側に向かって連続して設けられ、前記ケースの内方側に開口する溝部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のリアクトルは、小型で、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。
図2A図2Aは、実施形態1のリアクトルを示す概略上面図である。
図2B図2Bは、図2Aに示すリアクトルに備わる溝部近傍を拡大した部分拡大図である。
図3図3は、図2Aに示す(III)-(III)線で切断した概略断面図である。
図4図4は、実施形態1のリアクトルに備わる溝部にノズルを配置した状態を示す概略斜視図である。
図5図5は、実施形態2のリアクトルを示す概略上面図である。
図6図6は、実施形態3のリアクトルを示す概略上面図である。
図7図7は、実施形態4のリアクトルを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の実施形態に係る第一のリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠体で構成される側壁部と、
前記底板部と対向する側に設けられる開口部とを備え、
前記一対の巻回部は、並列方向が前記底板部と直交するように配置され、
前記側壁部は、一対の長辺部と一対の短辺部とを備え、
前記短辺部又は前記長辺部は、前記開口部側から前記底板部側に向かって連続して設けられ、前記ケースの内方側に開口する溝部を備える。
【0012】
本開示のリアクトルでは、ケース内のコイルが、一対の巻回部の並列方向が底板部と直交するように配置されている。この配置形態を縦積み型と呼ぶ。一方、特許文献1に記載のリアクトルでは、ケース内のコイルが、一対の巻回部の並列方向がケースの底板部と平行となるように配置されている。この配置形態を平置き型と呼ぶ。
【0013】
縦積み型のコイルを備える本開示のリアクトルは、平置き型のコイルを備えるリアクトルに比較して、ケースの底板部に対する設置面積を小さくできる。一般的に、一対の巻回部の並列方向及び両巻回部の軸方向の双方に直交する方向に沿った組合体の長さは、一対の巻回部の並列方向に沿った組合体の長さよりも短いからである。よって、本開示のリアクトルは、薄型であり、小型である。特に、一対の巻回部の並列方向に沿った組合体の長さが、巻回部の軸方向に沿った組合体の長さよりも長い場合、縦積み型のコイルを備える本開示のリアクトルは、後述する直立型のコイルを備えるリアクトルに比較して、ケースの底板部に対する設置面積を小さくできる。
【0014】
また、縦積み型のコイルを備える本開示のリアクトルは、平置き型のコイルを備えるリアクトルに比較して、放熱性に優れる。縦積み型のコイルは、平置き型のコイルに比較して、巻回部とケースとの対向面積を大きくでき、組合体に発生した熱をケースに放出し易いからである。
【0015】
本開示のリアクトルは、ケースの側壁部に溝部を備えることで、封止樹脂部を形成する際に、封止樹脂部を構成する樹脂をケースの底板部側から開口部側に向かって注入でき、封止樹脂部の内部に気泡が混在することを防止できる。よって、本開示のリアクトルは、組合体とケースとの間に封止樹脂部を良好に充填でき、封止樹脂部を介して組合体に発生した熱をケースに良好に放出でき、放熱性に優れる。また、上記溝部により組合体とケースとの間に封止樹脂部を良好に充填できることから、組合体とケースとの間隔を小さくでき、リアクトルを小型化できる。
【0016】
(2)本開示の実施形態に係る第二のリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む矩形枠体で構成される側壁部と、
前記底板部と対向する側に設けられる開口部とを備え、
前記一対の巻回部は、前記両巻回部の軸が前記底板部と直交するように配置され、
前記側壁部は、一対の長辺部と一対の短辺部とを備え、
前記短辺部又は前記長辺部は、前記開口部側から前記底板部側に向かって連続して設けられ、前記ケースの内方側に開口する溝部を備える。
【0017】
本開示のリアクトルでは、ケース内のコイルが、一対の巻回部の双方の軸がケースの底板部と直交するように配置されている。この配置形態を直立型と呼ぶ。直立型のコイルを備える本開示のリアクトルは、平置き型のコイルを備えるリアクトルに比較して、ケースの底板部に対する設置面積を小さくできる。一般的に、一対の巻回部の並列方向及び両巻回部の軸方向の双方に直交する方向に沿った組合体の長さは、巻回部の軸方向に沿った長さよりも短いからである。よって、本開示のリアクトルは、薄型であり、小型である。特に、巻回部の軸方向に沿った組合体の長さが、一対の巻回部の並列方向に沿った組合体の長さよりも長い場合、直立型のコイルを備えるリアクトルは、縦積み型のコイルを備えるリアクトルに比較して、ケースの底板部に対する設置面積を小さくできる。
【0018】
また、直立型のコイルを備える本開示のリアクトルは、平置き型のコイルを備えるリアクトルに比較して、放熱性に優れる。直立型のコイルは、平置き型のコイルに比較して、巻回部とケースとの対向面積を大きくでき、組合体に発生した熱をケースに放出し易いからである。
【0019】
本開示のリアクトルは、ケースの側壁部に溝部を備えることで、上記(1)に記載のリアクトルと同様に、小型で、放熱性に優れる。
【0020】
(3)本開示のリアクトルの一例として、前記溝部は、前記短辺部に設けられる形態が挙げられる。
【0021】
側壁部の短辺部に溝部を備えることで、より薄型のリアクトルを得易い。
【0022】
(4)本開示のリアクトルの一例として、前記溝部は、前記一対の短辺部の一方又は前記一対の長辺部の一方に設けられる形態が挙げられる。
【0023】
一対の短辺部の一方又は一対の長辺部の一方に溝部を備えることで、一対の短辺部の双方又は一対の長辺部の双方に溝部を備える場合に比較して、小型なリアクトルを得易い。特に、一対の短辺部の一方に溝部を備えることで、より薄型のリアクトルを得易い。
【0024】
(5)本開示のリアクトルの一例として、前記溝部を備えない短辺部及び前記溝部を備えない長辺部の少なくとも一つは、前記開口部側から前記底板部側に向かうに従って前記ケースの内方側に傾斜する内面を備える形態が挙げられる。
【0025】
組合体とケースとの間隔が小さいと、封止樹脂部を形成する際に、封止樹脂部を構成する樹脂が溝部を備えない短辺部側や溝部を備えない長辺部側に回り込み難く、組合体とケースとの間に良好に封止樹脂部を形成し難い。そこで、溝部を備えない短辺部及び溝部を備えない長辺部の少なくとも一つの内面が傾斜面で構成されることで、溝部を備えない短辺部側及び溝部を備えない長辺部側に上記樹脂を回し込み易く、組合体とケースとの間に良好に封止樹脂部を形成し易い。特に、短辺部に溝部を備える場合、上記樹脂を回し込み難い領域(長辺部)が大きいため、長辺部の内面が傾斜面で構成されることで、上記樹脂を効果的に回し込み易い。
【0026】
(6)本開示のリアクトルの一例として、前記溝部における前記開口部側の縁部が面取りされている形態が挙げられる。
【0027】
溝部におけるケースの開口部側の縁部が面取りされていることで、封止樹脂部を形成する際に、溝部に樹脂注入用のノズルを挿入し易い。また、樹脂を注入している際に、溝部の上記縁部に垂れた樹脂をケース内に案内できる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<実施形態1>
≪概要≫
図1から図4に基づいて、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。実施形態1のリアクトル1Aは、図1に示すように、コイル2と、磁性コア3と、ケース5と、封止樹脂部6とを備える。コイル2は、図1に示すように、並列される一対の巻回部21、22を備える。磁性コア3は、巻回部21、22の内側に配置される内側コア部31、32と、巻回部21、22の外側に配置される外側コア部33とを備える。ケース5は、コイル2と磁性コア3とを含む組合体10を収納する。封止樹脂部6は、ケース5内に充填される。封止樹脂部6は、組合体10とケース5との間の隙間に介在される。この例のリアクトル1Aは、更に、保持部材4を備える。保持部材4は、コイル2及び磁性コア3の互いの位置を保持する部材である。実施形態1のリアクトル1Aは、コイル2が後述する縦積み型である点を特徴の一つとする。また、実施形態1のリアクトル1Aは、ケース5を構成する側壁部52に溝部520を備える点を特徴の一つとする。以下、リアクトル1Aの構成について詳しく説明する。
【0030】
≪コイル≫
コイル2は、図1に示すように、巻線が螺旋状に巻回されてなる筒状の巻回部21、22を備える。一対の巻回部21、22を備えるコイル2として、以下の二つの形態が挙げられる。一つ目の形態は、独立した2本の巻線によってそれぞれ形成される巻回部21、22と、巻回部21、22から引き出される巻線の両端部のうち、一方の端部同士を接続する接続部とを備える。接続部は、巻線の端部同士が溶接や圧着等によって直接接合されて構成されることが挙げられる。他に、接続部は、適宜な金具等を介して間接的に接続されて構成されることが挙げられる。二つ目の形態は、1本の連続する巻線から形成される巻回部21、22と、巻回部21、22間に渡される巻線の一部からなり、巻回部21、22を連結する連結部とを備える。上述のいずれの形態も、各巻回部21、22から延びる巻線の端部は、ケース5の外部に引き出されて、電源等の外部装置が接続される箇所として利用される。なお、図1及び後述の図7では、説明の便宜上、巻回部21、22のみ示し、巻線の端部、接続部や連結部を省略している。
【0031】
巻線は、導体線と、導体線の外周を覆う絶縁被覆とを備える被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅等が挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミド等の樹脂が挙げられる。被覆線の具体例として、断面形状が長方形である被覆平角線、断面形状が円形である被覆丸線が挙げられる。平角線からなる巻回部21、22の具体例として、エッジワイズコイルが挙げられる。
【0032】
この例の巻線は被覆平角線である。この例の巻回部21、22はエッジワイズコイルである。この例では、巻回部21、22の形状、巻回方向、ターン数等の仕様が等しい。なお、巻線や巻回部21、22の形状、大きさ等は適宜変更できる。例えば、巻線を被覆丸線としてもよい。また、各巻回部21、22の仕様を異ならせてもよい。
【0033】
巻回部21、22は、端面形状が長方形状であることが挙げられる。つまり、巻回部21、22は、四つの角部と、角部間を繋ぐ一対の長い直線状部と一対の短い直線状部とを備える。一対の長い直線状部が対向配置され、一対の短い直線状部が対向配置されている。巻回部21、22の端面形状は、四つの角部を丸めたレーストラック形状であってもよい。巻回部21、22が直線状部を備えることで、巻回部21、22の外周面を実質的に平面で構成することができる。よって、巻回部21、22とケース5とを平面同士の対向状態とできる。平面同士の対向状態とできることで、巻回部21、22とケース5との間隔を狭くし易い。
【0034】
この例のコイル2は、縦積み型である。縦積み型のコイル2は、図1に示すように、一対の巻回部21、22の並列方向がケース5の底板部51と直交するように配置されている。つまり、一対の巻回部21、22は、ケース5の深さ方向に積層されるように配置されている。一方の巻回部21は、ケース5の底板部51側に配置され、他方の巻回部22は、ケース5の開口部53側に配置されている。縦積み型のコイル2を備えるリアクトル1Aは、平置き型のコイルを備えるリアクトルに比較して、ケース5の底板部51に対する巻回部21、22の設置面積を小さくできる。平置き型のコイルは、一対の巻回部の並列方向がケースの底板部と平行となるように配置されている(特許文献1を参照)。一般的に、一対の巻回部21、22の並列方向及び両巻回部21、22の軸方向の双方に直交する方向に沿った組合体10の長さは、一対の巻回部21、22の並列方向に沿った組合体10の長さよりも短いからである。そのため、縦積み型のコイル2を備えるリアクトル1Aは、底板部51と直交する方向の長さが長く、底板部51と直交する方向及び巻回部21、22の軸方向の双方に直交する方向の長さが短い。つまり、縦積み型のコイル2を備えるリアクトル1Aは、薄型である。特に、巻回部21、22の外周面が実質的に平面で構成される場合、巻回部21、22とケース5との対向面積を大きくできる。かつ、巻回部21、22の外周面が実質的に平面で構成される場合、巻回部21、22とケース5との間隔を狭くし易い。よって、縦積み型のコイル2を備えるリアクトル1Aは、組合体10に発生した熱をケース5に放出し易く、放熱性を向上できる。ケース5の底板部51側に配置される巻回部21は、底板部51と側壁部52に面しており、側壁部52に加えて底板部51にも放熱する。ケース5の開口部53側に配置される巻回部22は、主に側壁部52に放熱する。
【0035】
≪磁性コア≫
磁性コア3は、図1に示すように、二つの内側コア部31、32と二つの外側コア部33とを備える。内側コア部31、32はそれぞれ、巻回部21、22の各内側に配置される。外側コア部33は、巻回部21、22の外側に配置される。磁性コア3は、離間して配置される二つの内側コア部31、32を挟むように二つの外側コア部33が配置される。磁性コア3は、各内側コア部31、32の端面と外側コア部33の内端面とを接触させて環状に形成される。これら二つの内側コア部31、32と二つの外側コア部33とにより、コイル2を励磁したとき、閉磁路を形成する。
【0036】
〔内側コア部〕
内側コア部31、32は、磁性コア3のうち、巻回部21、22の軸方向に沿った部分である。この例では、各内側コア部31、32の両端部は、巻回部21、22の端面から突出している。この突出する部分も内側コア部31、32である。巻回部21、22から突出した内側コア部31、32の端部は、後述する保持部材4の貫通孔(図示せず)に挿入される。
【0037】
この例の内側コア部31、32はそれぞれ、巻回部21、22の内周形状に概ね対応した直方体状である。また、この例の内側コア部31、32はそれぞれ、同一の形状、及び同一の大きさである。更に、この例の内側コア部31、32はそれぞれ、非分割構造の一体物である。
【0038】
〔外側コア部〕
外側コア部33は、磁性コア3のうち、巻回部21、22の外側に配置される部分である。外側コア部33は、内側コア部31、32の端面に対向して接触する内端面と、内端面と反対側の外端面と、内端面と外端面とを繋ぐ周回面とを備える。外側コア部33の形状は、二つの内側コア部31、32の端部を繋ぐ形状であれば特に限定されない。この例の外側コア部33はそれぞれ、概ね直方体状である。また、この例の外側コア部33はそれぞれ、同一の形状、及び同一の大きさである。更に、この例の外側コア部33はそれぞれ、非分割構造の一体物である。
【0039】
〔構成材料〕
内側コア部31、32及び外側コア部33は、軟磁性材料を含む成形体で構成されることが挙げられる。軟磁性材料は、鉄や鉄合金(例、Fe-Si合金、Fe-Ni合金等)といった金属、フェライト等の非金属等が挙げられる。上記成形体は、軟磁性材料からなる粉末や、更に絶縁被覆を備える被覆粉末等が圧縮成形されてなる圧粉成形体が挙げられる。また、上記成形体は、軟磁性粉末と樹脂とを含む流動性の混合体を固化させた複合材料の成形体が挙げられる。複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散された状態である。更に、軟磁性材料を含む成形体は、フェライトコア等の焼結体、電磁鋼板等の板材が積層されてなる積層体等が挙げられる。
【0040】
内側コア部31、32の構成材料と外側コア部33の構成材料とは、同じであってもよいし、異なってもよい。構成材料が異なる例として、内側コア部31、32が複合材料の成形体であり、外側コア部33が圧粉成形体である形態が挙げられる。また、内側コア部31、32及び外側コア部33の双方が複合材料の成形体であり、軟磁性粉末の種類や含有量が異なる形態が挙げられる。
【0041】
≪保持部材≫
保持部材4は、コイル2及び磁性コア3の互いの位置を保持する部材である。保持部材4は、代表的には電気絶縁材料から構成されて、コイル2と磁性コア3との間の電気絶縁性の向上に寄与する。図1に例示する保持部材4は、両巻回部21、22の一方の端面と一方の外側コア部33とを保持する矩形枠体で構成される保持部材4と、両巻回部21、22の他方の端面と他方の外側コア部33とを保持する矩形枠体の保持部材4とを備える。
【0042】
保持部材4は、例えば、外側コア部33の周回面を覆う角筒部と、角筒部の一端面に配置されて外側コア部33の内端面が接触する端面部とを備える。外側コア部33の外端面及びその近傍の周回面の一部は、保持部材4から露出される。角筒部の内周面の一部には、外側コア部33の周回面に接触する部分を備え、この接触部分によって、角筒部に外側コア部33が保持される。角筒部の内周面の他部は、外側コア部33の周回面と非接触であり、この非接触部分には外側コア部33の周回面との間に隙間が形成される。この隙間は、図示しないモールド樹脂部の構成樹脂の流路となる。モールド樹脂部については、後述する製造方法にて詳述する。端面部は、外側コア部33が配置される側から巻回部21、22が配置される側に貫通する貫通孔を備えるB字状の枠状部材である。貫通孔には、内側コア部31、32の端部が挿入される。貫通孔の四隅は、内側コア部31、32の端面の角部にほぼ沿った形状となっている。この貫通孔の四隅によって、貫通孔内に内側コア部31、32が保持される。この貫通孔の四隅を繋ぐ縁部には、内側コア部31、32の端面の輪郭線よりも外方側に拡がった部分を備える。貫通孔に内側コア部31、32を挿入した状態では、その拡がった部分に、端面部を貫通する隙間が形成される。この隙間は、図示しないモールド樹脂部の構成樹脂の流路となる。貫通孔に挿入された内側コア部31、32の端面は、端面部における外側コア部33が配置される側の面とほぼ面一となる。よって、保持部材4に内側コア部31、32及び外側コア部33が保持された状態では、内側コア部31、32の端面と、外側コア部33の内端面とが接触する。
【0043】
保持部材4は、上述の機能を有すれば、形状や大きさ等を適宜変更できる。また、保持部材4は、公知の構成を利用できる。例えば、保持部材4は、巻回部21、22と内側コア部31、32との間に配置される部材(類似の形状として特許文献1の周壁部を参照)を含んでもよい。
【0044】
保持部材4は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等の熱可塑性樹脂で構成することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等で保持部材4を形成することができる。これらの樹脂にセラミックスフィラーを含有させて、保持部材4の放熱性を向上させても良い。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカ等の非磁性粉末を利用することができる。
【0045】
≪ケース≫
ケース5は、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護(防食性の向上)等の機能を有する。ケース5は、代表的には金属材料から構成されて、組合体10に発生した熱を外部に放出する放熱性の向上に寄与する。ケース5の構成材料は、放熱性の点から金属が好ましいが、軽量化の点から一部又は全部を樹脂としてもよい。
【0046】
ケース5は、底板部51と側壁部52と開口部53とを備える有底筒状の容器である。底板部51は、組合体10が載置される平板部材である。側壁部52は、組合体10の周囲を囲む矩形枠体である。底板部51と側壁部52とで囲まれる空間が組合体10の収納空間となる。開口部53は、底板部51と対向する側に形成される。この例では、底板部51と側壁部52とは、一体に構成されている。
【0047】
側壁部52は、一対の短辺部521と一対の長辺部522とを備える。短辺部521又は長辺部522は、ケース5の内方側に開口する溝部520を備える。この例では、一対の短辺部521の双方に、溝部520を備える。溝部520は、ケース5の開口部53側から底板部51側に向かって連続して設けられる。溝部520は、ケース5内に後述する封止樹脂部6を形成するにあたり、封止樹脂部6を構成する樹脂をケース5の底板部51側から開口部53側に向かって注入する際の樹脂の流路となる。溝部520からの上記樹脂の注入は、図4に示すように、ノズル9を用いて行う。上記樹脂の注入については、後述の製造方法にて詳述する。
【0048】
短辺部521及び長辺部522のうち、溝部520を備える辺部の厚さは、溝部520を備えない辺部の厚さよりも厚い(図2A参照)。溝部520の形成による側壁部52の強度の低下を抑制するためである。この例では、短辺部521に溝部520を備えるため、短辺部521の厚さは、長辺部522の厚さよりも厚い。言い換えると、この例では、長辺部522の厚さは、短辺部521の厚さよりも薄い。
【0049】
溝部520の大きさは、適宜選択できる。ここでの溝部520の大きさは、溝部520の長手方向と直交する方向に切断した溝部520の横断面積である。溝部520の大きさは、大きいほど、ノズル9(図4)を配置し易く、かつ一度に多くの樹脂を注入できる。一方、溝部520の大きさは、小さいほど、小型なリアクトル1Aが得られる。図2Aにおける二点鎖線で囲む溝部520近傍の拡大図を図2Bに示す。溝部520の大きさは、例えば、溝部520の深さ(最も深い長さ)Dが、その溝部520を備える辺部(この例では短辺部521)の厚さLの40%以上50%以下が挙げられる。溝部520の深さDが、その溝部520を備える辺部の厚さLの40%以上であることで、ノズル9(図4)を配置し易く、かつ一度に多くの樹脂を注入できる。一方、溝部520の深さDが、その溝部520を備える辺部の厚さLの50%以下であることで、側壁部52の強度を確保でき、かつ小型なリアクトル1Aとできる。溝部520の深さDは、更にその溝部520を備える辺部の厚さLの42%以上47%以下が挙げられる。また、溝部520の大きさは、例えば、溝部520の開口側の幅Wが溝部520の深さDの200%以上250%以下が挙げられる。溝部520の開口側の幅Wが溝部520の深さDの200%以上であることで、ノズル9(図4)を配置し易く、かつ一度に多くの樹脂を注入できる。一方、溝部520の開口側の幅Wが溝部520の深さDの250%以下であることで、側壁部52の強度を確保できる。溝部520の開口側の幅Wは、更に溝部520の深さDの210%以上240%以下が挙げられる。
【0050】
溝部520の形状は、適宜選択できる。ここでの溝部520の形状は、溝部520の長手方向と直交する方向に切断した溝部520の断面形状である。溝部520の形状は、例えば、半円状、V字状、[字状が挙げられる。この例では、溝部520の形状は、半円状である。
【0051】
溝部520の形成位置は、適宜選択できる。溝部520は、短辺部521又は長辺部522の両端部に設けられることが挙げられる。この例では、溝部520は、各短辺部521の両端部にそれぞれ設けられている。溝部520は、ケース5の開口部53側から底板部51側に向かって直線状に設けられていることが好ましい。溝部520が直線状であると、溝部520内を流れる樹脂の抵抗を低減でき、樹脂を注入し易い。特に、溝部520は、底板部51と直交する方向に沿って設けられていることが好ましい。そうすることで、溝部520の長さを短くでき、より樹脂を注入し易い。溝部520は、底板部51と交差するように斜めに設けたり、長手方向の途中で湾曲や屈曲するように設けたりしてもよい。
【0052】
溝部520におけるケース5の開口部53側の縁部は、面取りされていることが好ましい。上記縁部が面取りされていることで、溝部520にノズル9(図4)を挿入し易い。また、樹脂を注入している際に、溝部520の上記縁部に垂れた樹脂をケース5内に案内できる。この例では、溝部520の開口の縁部も面取りされている。
【0053】
側壁部52のうち溝部520を備えない短辺部521及び長辺部522の少なくとも一つは、ケース5の開口部53側から底板部51側に向かうに従ってケース5の内方側に傾斜する内面を備えることが好ましい。溝部520を備えない短辺部521及び長辺部522の少なくとも一つの内面が傾斜面で形成されていることで、組合体10とケース5との間隔が、底板部51側から開口部53側に向かうに従って大きくなる。組合体10とケース5との間隔が大きい領域が形成されることで、上記樹脂を組合体10の周囲に回し込み易く、組合体10とケース5との間に良好に封止樹脂部6を形成し易い。また、傾斜面により、組合体10とケース5との間隔が傾斜面のない場合に比較して大きい領域が形成されることで、組合体10をケース5に配置し易い。この例では、図3に示すように、対向する両長辺部522の内面522iが傾斜面で形成されている。短辺部521に溝部520を備える場合、上記樹脂を回し込み難い領域(長辺部522)が大きいため、長辺部522の内面522iが傾斜面で構成されることで、上記樹脂を効果的に回し込み易い。
【0054】
溝部520を備える短辺部521又は長辺部522は、底板部51に直交する方向に沿った内面(以下、単に直交面ということがある)を備えることが好ましい。溝部520を備える短辺部521や長辺部522の内面が直交面で形成されていることで、組合体10とケース5との間隔を狭くし易く、かつケース5の深さ方向に実質的に均一とできる。組合体10とケース5との間隔を狭くかつ均一とできることで、ケース5内で組合体10をある程度位置決めできる。この例では、短辺部521の内面521iが直交面で形成されている。
【0055】
組合体10と側壁部52との間隔は、最も狭い領域で0.5mm以上1mm以下が挙げられる。上記間隔が0.5mm以上であることで、組合体10と側壁部52との間に上記樹脂を充填し易い。一方、上記間隔が1mm以下であることで、小型のリアクトル1Aを得易い。また、上記間隔が1mm以下であることで、巻回部21、22と側壁部52との間の間隔を狭くでき、放熱性に優れるリアクトル1Aを得易い。
【0056】
短辺部521の長さ(ケース5の短辺方向に沿った外寸)は、例えば、40mm以上80mm以下が挙げられる。また、長辺部522の長さ(ケース5の長辺方向に沿った外寸)は、例えば、80mm以上120mm以下が挙げられる。更に、ケース5の高さ(ケース5の深さ方向に沿った外寸)は、例えば、80mm以上150mm以下が挙げられる。リアクトル1Aの体積は、250cm以上1450cm以下が挙げられる。
【0057】
ケース5は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の非磁性金属材料から構成することができる。
【0058】
≪封止樹脂部≫
封止樹脂部6は、ケース5内に充填されて、組合体10の少なくとも一部を覆う。具体的には、封止樹脂部6は、組合体10とケース5との間の隙間に介在される。封止樹脂部6は、溝部520内にも充填される。封止樹脂部6は、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護(防食性の向上)の機能を有する。また、組合体10とケース5との一体化によるリアクトル1Aの強度や剛性の向上の機能を有する。また、封止樹脂部6は、組合体10とケース5との間の電気的な絶縁性を向上する機能を有する。また、封止樹脂部6は、組合体10の熱をケース5に伝熱させ、放熱性を向上する機能を有する。
【0059】
封止樹脂部6の構成樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、PPS樹脂等が挙げられる。上述の樹脂成分に加えて、熱伝導性に優れるフィラーや電気絶縁性に優れるフィラーを含有するものを封止樹脂部6に利用できる。上記フィラーは、非金属無機材料、例えば、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム等の酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物等のセラミックス、カーボンナノチューブといった非金属元素からなるもの等が挙げられる。その他、封止樹脂部6は公知の樹脂組成物を利用できる。
【0060】
≪リアクトルの製造方法≫
上述したリアクトル1Aは、例えば、組合体10を用意する工程と、組合体10をケース5内に収納する工程と、ケース5内に封止樹脂部6を形成する工程とを経て製造できる。
【0061】
組合体を用意する工程では、コイル2と、磁性コア3と、保持部材4とを組付けて組合体10を形成する。このとき、組合体10は、図示しないモールド樹脂部によって一体化しておくことが挙げられる。具体的には、外側コア部33の外端面及び周回面をモールド樹脂部で覆うと共に、巻回部21、22と内側コア部31、32との間に上記モールド樹脂部を介在させる。保持部材4によってコイル2及び磁性コア3の位置を保持した状態では、保持部材4の角筒部と外側コア部33との間、及び保持部材4の端面部と内側コア部31、32との間には、それぞれ隙間が形成される。この隙間を介して注入された樹脂モールド部の構成樹脂によって、内側コア部31、32と外側コア部33とは一体化される。巻回部21、22は、モールド樹脂部から露出される。
【0062】
用意した組合体10をケース5の内部に収納する。このとき、コイル2が縦積み型となるように組合体10をケース5の内部に収納する。
【0063】
組合体10が収納されたケース5内に、封止樹脂部6を構成する未固化の樹脂を充填する。上記樹脂の充填は、真空槽内で行う。上記樹脂の注入は、図4に示すように、ノズル9を溝部520に沿わせて組合体10と側壁部52との間に挿入し、ノズル9を介して行う。このとき、上記樹脂の注入は、一対の短辺部521の一方又は一対の長辺部522の一方に形成された溝部520に対して行うことが好ましい。この樹脂の注入形態を、一端注入と呼ぶ。対向する一対の短辺部521の双方又は一対の長辺部522の双方から樹脂の注入を行う(この注入形態を両端注入と呼ぶ)と、樹脂の合流によってウェルドと呼ばれる脆弱部分が形成され易い。よって、一端注入とすることで、ウェルドの形成を抑制できる。なお、ノズル9の開口部の位置は適宜選択できる。例えば、ノズル9の開口部は、底板部51近傍に配置してもよいし、ケース5の高さ方向の途中や開口部53側に配置してもよい。いずれであっても、上記構成樹脂は、溝部520により形成された空間を流れることになる。そのため、上記樹脂の液面は、ケース5の底板部51側から開口部53側に向かって上昇し、コイル2の外周や磁性コア3の外周を覆うことになる。この状態で、上記樹脂を固化することで、組合体10を封止する。
【0064】
≪使用態様≫
リアクトル1Aは、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品に利用できる。リアクトル1Aは、例えば、種々のコンバータや電力変換装置の構成部品等に利用できる。コンバータの一例としては、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC-DCコンバータ)や、空調機のコンバータ等が挙げられる。
【0065】
≪効果≫
実施形態1のリアクトル1Aは、コイル2が縦積み型で構成される。縦積み型のコイル2は、平置き型のコイルに比較して、ケース5の底板部51に対する設置面積を小さくできる。よって、実施形態1のリアクトル1Aは、薄型であり、小型である。また、縦積み型のコイル2は、平置き型のコイルに比較して、巻回部21、22とケース5との対向面積を大きくできる。よって、実施形態1のリアクトル1Aは、組合体10に発生した熱をケース5に放出し易く、放熱性を向上できる。
【0066】
また、実施形態1のリアクトル1Aは、ケース5の側壁部52に溝部520を備える。よって、封止樹脂部6を形成する際に、封止樹脂部6を構成する樹脂をケース5の底板部51側から開口部53側に向かって注入でき、封止樹脂部6の内部に気泡が混在することを防止できる。よって、実施形態1のリアクトル1Aは、組合体10とケース5との間に封止樹脂部6を良好に充填でき、封止樹脂部6を介して組合体10に発生した熱をケース5に良好に放出でき、放熱性に優れる。上記溝部520により組合体10とケース5との間に封止樹脂部6を良好に充填できることから、組合体10とケース5との間隔を小さくでき、リアクトル1Aを小型化できる。特に、側壁部52の短辺部521に溝部520を備えることで、より薄型であり、小型なリアクトル1Aとできる。
【0067】
<実施形態2>
溝部520は、一対の短辺部521の一方又は一対の長辺部522の一方に設けてもよい。例えば、短辺部521に溝部520を備える場合、溝部520は、図5に示すように、一方の短辺部521のみに備えてもよい。一対の短辺部521の一方又は一対の長辺部522の一方に溝部520を備えることで、一対の短辺部521の双方又は一対の長辺部522の双方に溝部520を備える場合に比較して、小型なリアクトル1Aを得易い。溝部520を備えない短辺部521の厚さを薄くできるからである。封止樹脂部6を形成する際に、封止樹脂部6を構成する樹脂の注入は、一端注入が好ましい。そのため、一対の短辺部521の一方又は一対の長辺部522の一方に溝部520を備えれば、上記樹脂の注入は十分に行える。
【0068】
<実施形態3>
溝部520は、図6に示すように、長辺部522に設けてもよい。長辺部522に溝部520を備える場合、長辺部522の厚さは、溝部520を備えない短辺部521の厚さよりも厚い。言い換えると、短辺部521の厚さは、長辺部522の厚さよりも薄い。そのため、実施形態3のリアクトル1Aは、巻回部21、22の軸方向に沿った長さを短くできる。溝部520は、一対の長辺部522の双方に備えてもよいし(図6参照)、一対の長辺部522の一方のみに備えてもよい。長辺部522に溝部520を備える場合、短辺部521の内面521i(図1)は、ケース5の開口部53側から底板部51側に向かうに従ってケース5の内方側に傾斜する傾斜面で形成されていることが好ましい。また、長辺部522に溝部520を備える場合、長辺部522の内面522i(図1)は、底板部51に直交する方向に沿った直交面で形成されていることが好ましい。
【0069】
<実施形態4>
図7に基づいて、実施形態4のリアクトル1Bを説明する。実施形態4のリアクトル1Bは、コイル2が後述する直立型である点が実施形態1と異なる。コイル2の配置形態以外の構成は、実施形態1と同様であり、その説明を省略する。
【0070】
直立型のコイル2は、図7に示すように、一対の巻回部21、22の軸が底板部51と直交するように配置されている。つまり、一対の巻回部21、22は、ケース5の対向する側壁部52の一方から他方に向かう方向に並列されている。直立型のコイル2の場合、一方の外側コア部33が底板部51に接触した状態で組合体10が載置される。直立型のコイル2を備えるリアクトル1Bは、平置き型のコイル(特許文献1を参照)に比較して、底板部51に対する組合体10の設置面積を小さくできる。一般的に、一対の巻回部21、22の並列方向及び両巻回部21、22の軸方向の双方に直交する方向に沿った組合体10の長さは、巻回部21、22の軸方向に沿った長さよりも短いからである。特に、巻回部21、22の軸方向に沿った組合体10の長さが、一対の巻回部21、22の並列方向に沿った組合体10の長さよりも長い場合、直立型のコイル2を備えるリアクトル1Bは、縦積み型のコイル2を備えるリアクトル1A(図1)に比較して、底板部51に対する設置面積を小さくできる。また、この例の場合、直立型のコイル2を備えるリアクトル1Bは、縦積み型のコイル2を備えるリアクトル1A及び平置き型のコイルを備えるリアクトルに比較して、ケース5の開口部53に臨む面積を最も小さくできる。よって、組合体10がケース5に囲まれる面積を大きくできるため、放熱性を向上できる。特に、巻回部21、22の外周面が実質的に平面で構成される場合、巻回部21、22とケース5との対向面積を大きくできる。かつ、巻回部21、22の外周面が実質的に平面で構成される場合、巻回部21、22とケース5との間の間隔を実質的に均一にできる。よって、直立型のコイル2を備えるリアクトル1Bは、縦積み型のコイル2を備えるリアクトル1A(図1)と同様に、組合体10に発生した熱をケース5に放出し易く、放熱性を向上できる。
【0071】
図7に例示するケース5は、一対の短辺部521の双方に溝部520を備える。溝部520は、実施形態2や実施形態3と同様に、長辺部522に備えてもよいし、一対の短辺部521の一方又は一対の長辺部522の一方に備えてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1A、1B リアクトル
10 組合体
2 コイル
21、22 巻回部
3 磁性コア
31、32 内側コア部
33 外側コア部
4 保持部材
5 ケース
51 底板部
52 側壁部
520 溝部
521 短辺部
521i 内面
522 長辺部
522i 内面
53 開口部
6 封止樹脂部
9 ノズル
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7