(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/26 20060101AFI20221122BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01B11/26 H
G01B11/00 A
(21)【出願番号】P 2019024208
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾上 太郎
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161245(JP,A)
【文献】特開2002-005622(JP,A)
【文献】特開2009-041934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/26
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の形状を2次元座標上の測定データとして測定する第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーから取得した測定データを処理するデータ処理装置であって、
前記第1ラインセンサーにより測定される第1座標平面と前記第2ラインセンサーにより測定される第2座標平面とは同一又は平行であり、
前記第1座標平面及び前記第2座標平面と表面が直交するように配置された基準平面板を、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と直交する軸を中心に回転させた互いに異なる2以上の位置で、前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから測定データを取得する取得手段と、
前記基準平面板の前記2以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度、及び、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する算出手段と、
を備えるデータ処理装置。
【請求項2】
前記算出手段は、
前記基準平面板の前記2以上の位置のうち少なくとも1以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度を算出し、
前記基準平面板の前記2以上の位置ごとに、前記第1ラインセンサーから取得された測定データに対応する前記第1座標平面上の直線の傾き及び切片と、前記第2ラインセンサーから取得された測定データに対応する前記第2座標平面上の直線を、前記第2座標平面の原点を中心に前記角度だけ回転させた後の直線の傾き及び切片と、を求め、前記2以上の位置ごとに求められた前記第1座標平面上の直線の傾き及び切片と、前記第2座標平面上で回転させた後の直線の傾き及び切片と、に基づいて、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記第2ラインセンサーから取得された測定データを、前記第1ラインセンサーと同一の座標系における測定データに変換する変換手段を備える請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーは、電子写真方式の画像形成装置に用いられる感光体と現像ローラーとの間の距離を測定するための治具上に配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記治具には、前記感光体を保持するための保持軸が設けられており、
前記保持軸は、前記感光体に代えて前記基準平面板を保持するためにも使用され、
前記基準平面板が前記保持軸を中心に回転されることで、前記2以上の位置での前記基準平面板の測定が行われる請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
測定対象の形状を2次元座標上の測定データとして測定する第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーから取得した測定データを処理するデータ処理方法であって、
前記第1ラインセンサーにより測定される第1座標平面と前記第2ラインセンサーにより測定される第2座標平面とは同一又は平行であり、
前記第1座標平面及び前記第2座標平面と表面が直交するように配置された基準平面板を、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と直交する軸を中心に回転させた互いに異なる2以上の位置で、前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから測定データを取得する取得工程と、
前記基準平面板の前記2以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度、及び、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する算出工程と、
を含むデータ処理方法。
【請求項7】
測定対象の形状を2次元座標上の測定データとして測定する第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーから取得した測定データを処理するコンピューターを制御するためのプログラムであって、
前記第1ラインセンサーにより測定される第1座標平面と前記第2ラインセンサーにより測定される第2座標平面とは同一又は平行であり、
前記コンピューターに、
前記第1座標平面及び前記第2座標平面と表面が直交するように配置された基準平面板を、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と直交する軸を中心に回転させた互いに異なる2以上の位置で、前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから測定データを取得する取得工程と、
前記基準平面板の前記2以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度、及び、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する算出工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、帯電された感光体を露光することで静電潜像を形成し、感光体上の静電潜像に現像ローラーによってトナーを供給して現像し、トナー像を形成している。画像形成装置の内部に配置される感光体と現像ローラーの距離は、現像濃度に直結するため、高精度に計測し、調整する必要がある。
【0003】
従来は、感光体と現像ローラーの間に一定の幅を持ったレーザー光を照射し、感光体と現像ローラーの間を通過してきた光の幅を測定することで、感光体と現像ローラーの距離を測定していた。
しかし、感光体に対して現像ローラーを2本設ける場合には、現像ローラー間のスペース的な問題等により、感光体と現像ローラーの間を通過した光を測定することができず、従来の距離測定方法を利用することができない。そこで、2物体間の距離を測定する際に、2つのラインセンサーで2物体の表面形状(位置)をそれぞれ測定し、各ラインセンサーにより得られた測定データを同一座標系で扱う(ステレオキャリブレーション)方法が利用可能である。一方のラインセンサーから得られた感光体の表面形状と、他方のラインセンサーから得られた現像ローラーの表面形状を同一座標系で表すことで、感光体と現像ローラーの距離を算出することができる。
【0004】
また、白色領域及び黒色領域が交互に配されたキャリブレーションマーカーを、2台のラインセンサーカメラによって撮影し、ラインセンサーカメラのキャリブレーションを行う装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、2つのラインセンサーにより得られた測定データを同一座標系で扱う際には、絶対座標が予めわかっているマーカーを使用する必要があるため、簡易的かつ安価にキャリブレーションを行うことが難しかった。
【0007】
本発明は、上記の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、2つのラインセンサーのキャリブレーションを、簡易的かつ安価に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、測定対象の形状を2次元座標上の測定データとして測定する第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーから取得した測定データを処理するデータ処理装置であって、前記第1ラインセンサーにより測定される第1座標平面と前記第2ラインセンサーにより測定される第2座標平面とは同一又は平行であり、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と表面が直交するように配置された基準平面板を、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と直交する軸を中心に回転させた互いに異なる2以上の位置で、前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから測定データを取得する取得手段と、前記基準平面板の前記2以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度、及び、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する算出手段と、を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデータ処理装置において、前記算出手段は、前記基準平面板の前記2以上の位置のうち少なくとも1以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度を算出し、前記基準平面板の前記2以上の位置ごとに、前記第1ラインセンサーから取得された測定データに対応する前記第1座標平面上の直線の傾き及び切片と、前記第2ラインセンサーから取得された測定データに対応する前記第2座標平面上の直線を、前記第2座標平面の原点を中心に前記角度だけ回転させた後の直線の傾き及び切片と、を求め、前記2以上の位置ごとに求められた前記第1座標平面上の直線の傾き及び切片と、前記第2座標平面上で回転させた後の直線の傾き及び切片と、に基づいて、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のデータ処理装置において、前記第2ラインセンサーから取得された測定データを、前記第1ラインセンサーと同一の座標系における測定データに変換する変換手段を備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ処理装置において、前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーは、電子写真方式の画像形成装置に用いられる感光体と現像ローラーとの間の距離を測定するための治具上に配置されている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のデータ処理装置において、前記治具には、前記感光体を保持するための保持軸が設けられており、前記保持軸は、前記感光体に代えて前記基準平面板を保持するためにも使用され、前記基準平面板が前記保持軸を中心に回転されることで、前記2以上の位置での前記基準平面板の測定が行われる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、測定対象の形状を2次元座標上の測定データとして測定する第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーから取得した測定データを処理するデータ処理方法であって、前記第1ラインセンサーにより測定される第1座標平面と前記第2ラインセンサーにより測定される第2座標平面とは同一又は平行であり、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と表面が直交するように配置された基準平面板を、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と直交する軸を中心に回転させた互いに異なる2以上の位置で、前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから測定データを取得する取得工程と、前記基準平面板の前記2以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度、及び、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する算出工程と、を含む。
【0014】
請求項7に記載の発明は、測定対象の形状を2次元座標上の測定データとして測定する第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーから取得した測定データを処理するコンピューターを制御するためのプログラムであって、前記第1ラインセンサーにより測定される第1座標平面と前記第2ラインセンサーにより測定される第2座標平面とは同一又は平行であり、前記コンピューターに、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と表面が直交するように配置された基準平面板を、前記第1座標平面及び前記第2座標平面と直交する軸を中心に回転させた互いに異なる2以上の位置で、前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから測定データを取得する取得工程と、前記基準平面板の前記2以上の位置で前記第1ラインセンサー及び前記第2ラインセンサーから取得された測定データに基づいて、前記第1座標平面と前記第2座標平面の同一座標軸間の角度、及び、前記第1座標平面の原点と前記第2座標平面の原点の相対位置を算出する算出工程と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2つのラインセンサーのキャリブレーションを、簡易的かつ安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態において使用するラインセンサーで得られる測定データの座標系を示す図である。
【
図2】第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーの配置を説明するための図である。
【
図3】第1ラインセンサー及び第2ラインセンサーと基準平面板との位置関係を示す図である。
【
図4】ラインセンサーにより得られる測定データ(実際の形状)と近似直線を示す図である。
【
図5】(a)は、第1ラインセンサーにより得られた基準平面板の測定データから求めた近似直線を示す図である。(b)は、第2ラインセンサーにより得られた基準平面板の測定データから求めた近似直線を示す図である。
【
図6】第1ラインセンサーと第2ラインセンサーの同一座標軸間の角度の求め方を説明するための図である。
【
図7】(a)は、第1ラインセンサーから取得された基準平面板の測定データに対応する直線の傾き及び切片を説明するための図である。(b)は、第2ラインセンサーから取得された基準平面板の測定データに対応する直線を、第2ラインセンサーの原点を中心に角度θだけ回転させた直線の傾き及び切片を説明するための図である。
【
図8】第2ラインセンサーの座標軸の方向を第1ラインセンサーと揃えた状態を示す図である。
【
図11】データ処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図12】データ処理装置により実行されるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
【
図13】組み立て用治具に感光体及び現像ローラーが配置された状態を示す図である。
【
図14】第1ラインセンサーにより測定される現像ローラー、第2ラインセンサーにより測定される感光体の位置関係を示す模式図である。
【
図15】(a)は、感光体及び現像ローラーを軸方向から見た図である。(b)は、感光体及び現像ローラーを示す斜視図である。
【
図16】4つのラインセンサーが設けられた組み立て用治具の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るデータ処理装置の実施の形態について説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0018】
[ラインセンサー]
まず、本実施の形態において使用するラインセンサーについて説明する。
図1に、ラインセンサー10で得られる測定データの座標系を示す。ラインセンサー10は、測定対象の形状を2次元座標上の測定データ(x,y)として測定するものであり、測定対象までのy軸方向の距離をx軸方向のライン状に測定することができる。ラインセンサー10は、レーザービームを射出し、測定対象で反射されたレーザー光を受光することで、座標平面に置かれた物体(測定対象)のラインセンサー10に面した表面形状(境界)を検出する。ラインセンサー10において、レーザービームの中心軸11をy軸とし、予め定められた原点Oを通り、y軸に直交する軸をx軸とする。ラインセンサー10は、x軸及びy軸に沿った方向の座標値(x,y)を出力する。ラインセンサー10は、例えば、測定点の数をnとして、(x
i,y
i)の組み合わせをn個得る(i=1~n)。ラインセンサー10は、実際は、限られた測定範囲12内の測定データを出力する。
【0019】
なお、
図1では、ラインセンサー10から射出されるレーザービームの中心軸11、ラインセンサー10による測定範囲12を一点鎖線で示しているが、これらは仮想的なものであり、中心軸11及び測定範囲12として何らかの物体が存在するわけではない。
【0020】
このラインセンサー10を2つ用意し、2つのラインセンサー10を区別して、第1ラインセンサー10A、第2ラインセンサー10Bとする。
図2に示すように、第1ラインセンサー10Aにより測定される第1座標平面と、第2ラインセンサー10Bにより測定される第2座標平面と、が同一又は平行となるように、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bが配置されている。
【0021】
各ラインセンサー10A,10Bにより得られる測定データは、各ラインセンサー10A,10Bの原点を基準として、各ラインセンサー10A,10Bに対するx軸、y軸に沿った方向の座標値(x,y)で表される。
図2では、第1ラインセンサー10Aの原点、x軸、y軸を、それぞれ、O
a、x
a軸、y
a軸と表し、第2ラインセンサー10Bの原点、x軸、y軸を、それぞれ、O
b、x
b軸、y
b軸と表している。
【0022】
第1ラインセンサー10Aと第2ラインセンサー10Bの同一座標軸(x軸同士、y軸同士)間の角度をθとする。具体的には、第1ラインセンサー10Aのxa軸を基準とした第2ラインセンサー10Bのxb軸の角度(第1ラインセンサー10Aのya軸を基準とした第2ラインセンサー10Bのyb軸の角度)をθとする。ここで、θは反時計回りを正とする。以下、角度を表す際にも同様とする。
また、第1ラインセンサー10Aの座標系における(第1ラインセンサー10Aの座標系から見た)第2ラインセンサー10Bの原点Obの相対位置を(dx,dy)とする。
【0023】
第1ラインセンサー10Aと第2ラインセンサー10Bの位置関係(角度・相対位置)がわかれば、一方のラインセンサーで測定された測定データを他方のラインセンサーの座標系に変換し、同一座標系でのデータとして扱うことができる。
【0024】
[ステレオキャリブレーションの概要]
次に、第1ラインセンサー10Aと第2ラインセンサー10Bのステレオキャリブレーションの概要について説明する。ステレオキャリブレーションとは、2つのラインセンサーにより出力される測定データの位置関係を校正することをいう。
【0025】
図3に示すように、第1ラインセンサー10Aと第2ラインセンサー10Bで基準平面板20の平面表面21を測定する。基準平面板20は、その平面表面21が、第1ラインセンサー10Aにより測定される第1座標平面及び第2ラインセンサー10Bにより測定される第2座標平面と直交するように配置される。
基準平面板20の平面表面21を測定して第1ラインセンサー10Aと第2ラインセンサー10Bによりそれぞれ得られる測定データ(x,y)は、
図4に示すように、実際には凹凸を含むデータとなるが、これらのデータに対し最小二乗法を用いることで、基準平面板20の平面表面21に対応する近似直線を求めることができる。
【0026】
図5(a)に、第1ラインセンサー10Aにより得られた基準平面板20の平面表面21の測定データ(x
ai,y
ai)(i=1~n)から求めた近似直線L
1を示す。近似直線L
1の傾きをa
1、x
a軸と近似直線L
1との間の角度(x
a軸のプラス方向を基準とした場合の近似直線L
1までの角度)をθ
1とすると、θ
1は下記式(1)により求められる。
【数1】
【0027】
図5(b)に、第2ラインセンサー10Bにより得られた基準平面板20の平面表面21の測定データ(x
bi,y
bi)(i=1~n)から求めた近似直線L
2を示す。近似直線L
2の傾きをb
1、x
b軸と近似直線L
2との間の角度(x
b軸のプラス方向を基準とした場合の近似直線L
2までの角度)をθ
2とすると、θ
2は下記式(2)により求められる。
【数2】
【0028】
また、
図6に示すように、第1ラインセンサー10Aのx
a軸を基準とした第2ラインセンサー10Bのx
b軸の角度がθであるから、下記式(3)に従い、θ
1とθ
2から角度θを計算することができる。
【数3】
【0029】
なお、角度は、反時計回りを正、時計回りを負としているから、
図6において、θ
1は負の値、θ
2は正の値、θは負の値となる。
【0030】
次に、第2ラインセンサー10Bで得られた測定データ(基準平面板20の形状)を、第1ラインセンサー10Aの座標軸(x
a軸、y
a軸)と同一座標軸同士の方向が揃った座標系に変換する。
図7(a)に示すように、第1ラインセンサー10Aから取得された基準平面板20の平面表面21の測定データに対応する直線L
1の傾きをs(=a
1)、切片(y切片)をt
aとする。
【0031】
第2ラインセンサー10Bの座標軸(x
b軸、y
b軸)の方向を、第1ラインセンサー10Aの座標軸(x
a軸、y
a軸)と揃えるためには、第2ラインセンサー10Bの座標軸(x
b軸、y
b軸)を、第2ラインセンサー10Bの原点O
bを中心に角度(-θ)だけ回転させればよい。回転後の座標軸を(x
c軸、y
c軸)とすると、
図7(b)に示すように、x
c-y
c座標系で表した基準平面板20の平面表面21に対応する直線L
3は、第2ラインセンサー10Bから取得された基準平面板20の平面表面21の測定データに対応する直線L
2(
図5(b)参照)を、第2ラインセンサー10Bの原点O
bを中心に角度θだけ回転させたものに相当する。
【0032】
このように、第2ラインセンサー10Bにより基準平面板20の平面表面21を測定して得られた測定データに角度θ分の回転処理を施すと、直線L3が得られる。回転処理により、2つのラインセンサー10A,10Bで得られた測定データに対応する直線L1,L3の傾きsが揃う。
【0033】
第2ラインセンサー10Bの測定データに回転処理を施して得られた直線L
3の切片(y切片)をt
bとする。第1ラインセンサー10Aの原点O
aに対する第2ラインセンサー10Bの原点O
bの相対位置が(dx,dy)であるから、
図8に示すように、第1ラインセンサー10Aの原点O
aと第2ラインセンサー10Bの原点O
bの間の位置関係のうち、y軸方向(y
a軸、y
c軸)のものに注目すると、以下の関係式(4)が成立する。
【数4】
【0034】
続いて、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bに対する基準平面板20の傾き(位置)を変えて、再び第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bにより測定データを取得し、上記と同様の処理を行う。基準平面板20の傾きの変更は、第1座標平面及び第2座標平面における基準平面板20の測定データに対応する直線の傾きを変更することである。基準平面板20の傾きの変更は、基準平面板20の平面表面21が第1座標平面及び第2座標平面と直交するような配置を維持したまま、基準平面板20を、第1座標平面及び第2座標平面と直交する軸を中心に回転させることで、実現される。
【0035】
このとき、第1ラインセンサー10Aから取得された基準平面板20の平面表面21の測定データに対応する直線L
1’の傾きをs’、切片をt
a’とし、第2ラインセンサー10Bから取得された基準平面板20の平面表面21の測定データに対応する直線L
2’を、原点O
bを中心に角度θだけ回転させ、回転後の直線L
3’の傾きをs’、切片をt
b’とすると、同様の考え方により、以下の関係式(5)が成立する。
【数5】
【0036】
1回目の測定で得られた直線L1,L3の傾きs、直線L1の切片ta、直線L3の切片tb、2回目の測定で得られた直線L1’,L3’の傾きs’、直線L1’の切片ta’、直線L3’の切片tb’は既知であるため、式(4)及び(5)を連立方程式として、第1ラインセンサー10Aの原点Oaに対する第2ラインセンサー10Bの原点Obの相対位置(dx,dy)を求める。
【0037】
また、基準平面板20を3通り以上の傾き(位置)で測定した場合には、上記式(4)、(5)で表される関係が測定回数分得られるため、最小二乗法により、第1ラインセンサー10Aの原点Oaに対する第2ラインセンサー10Bの原点Obの相対位置(dx,dy)を求めることができる。
【0038】
このように、2つのラインセンサー10A,10Bの同一座標軸間の角度θ及び相対位置(dx,dy)を求めることで、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bの測定データを同一座標系で扱うことができる。
【0039】
図9に、組み立て用治具30の構成を示す。組み立て用治具30は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる感光体と現像ローラーを画像形成装置本体に組み付ける前に、感光体と現像ローラーとの間の距離を測定し、位置調整を行う際に使用される。
組み立て用治具30は、センサー保持板31と、感光体保持軸32と、を備える。
【0040】
センサー保持板31は、
図9の紙面に平行な板状の部材であり、取り付け板33,34が設けられている。センサー保持板31上には、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bが配置されている。
第1ラインセンサー10Aをセンサー保持板31に取り付ける際には、取り付け板33の側面に第1ラインセンサー10Aを突き当てた状態で、第1ラインセンサー10Aをセンサー保持板31に固定する。
第2ラインセンサー10Bをセンサー保持板31に取り付ける際には、取り付け板34の側面に第2ラインセンサー10Bを突き当てた状態で、第2ラインセンサー10Bをセンサー保持板31に固定する。
これにより、第1ラインセンサー10Aにより測定される第1座標平面、及び、第2ラインセンサー10Bにより測定される第2座標平面が、センサー保持板31と平行となり、第1座標平面と第2座標平面とは同一又は平行となる。センサー保持板31に対して、第1ラインセンサー10Aと取り付け板33、第2ラインセンサー10Bと取り付け板34のセットを取り付けることで、2つのラインセンサー10A,10Bのビーム面が平行となり、測定精度を上げることができる。
【0041】
感光体保持軸32は、センサー保持板31、第1ラインセンサー10Aにより測定される第1座標平面、第2ラインセンサー10Bにより測定される第2座標平面と直交する軸である。感光体及び現像ローラーの位置調整を行う際には、感光体保持軸32は、感光体を保持するために用いられる。一方、第1ラインセンサー10Aと第2ラインセンサー10Bのキャリブレーションを行う際には、感光体保持軸32は、感光体に代えて、基準平面板20を保持するために用いられる。
【0042】
図10に、基準平面板20の外観構成を示す。基準平面板20は、平面表面21と反対側に取付穴22を有する。取付穴22に感光体保持軸32を通すことで、組み立て用治具30において、感光体保持軸32を中心に基準平面板20を回転させることができる。
基準平面板20が取付穴22を有することで、組み立て用治具30に固定されている第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bに対して、基準平面板20の傾きの変更が容易になり、基準平面板20を回転させた2以上の位置で、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bの測定データを取得する際の操作がより簡単になる。
【0043】
[データ処理装置]
次に、データ処理装置40について説明する。
図11は、データ処理装置40の機能的構成を示すブロック図である。
データ処理装置40は、CPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、測定データI/F部44、記憶部45、操作部46、表示部47、通信部48等を備える。
【0044】
CPU41は、データ処理装置40の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPU41は、ROM42に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAM43に展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0045】
ROM42には、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。
【0046】
RAM43は、CPU41により実行制御される各種処理において、ROM42から読み出された各種プログラム、入力若しくは出力データ及びパラメーター等を一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0047】
測定データI/F部44は、ケーブルを介して接続された第1ラインセンサー10A、第2ラインセンサー10Bとの間でデータ通信を行うインターフェースであり、第1ラインセンサー10A、第2ラインセンサー10Bから測定データを取得する。
【0048】
記憶部45は、HDDや不揮発性の半導体メモリー等により構成され、各種データを記憶する。
【0049】
操作部46は、カーソルキー、文字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号をCPU41に出力する。また、操作部46は、表示部47に積層されたタッチパネルにより構成され、操作者の指等によるタッチ操作の位置に応じた操作信号をCPU41に出力してもよい。
【0050】
表示部47は、LCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、CPU41から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0051】
通信部48は、ネットワークインターフェース等により構成され、LAN、WAN、インターネット等の通信ネットワークを介して接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0052】
CPU41は、測定対象の形状を2次元座標上の測定データとして測定する第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bから取得した測定データを処理する。
【0053】
CPU41は、第1座標平面及び第2座標平面と表面(平面表面21)が直交するように配置された基準平面板20を、第1座標平面及び第2座標平面と直交する軸(感光体保持軸32)を中心に回転させた互いに異なる2以上の位置で、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bから測定データを取得する。すなわち、CPU41は、取得手段として機能する。
【0054】
CPU41は、基準平面板20の2以上の位置で第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bから取得された測定データに基づいて、第1座標平面と第2座標平面の同一座標軸間の角度θ、及び、第1座標平面の原点Oaと第2座標平面の原点Obの相対位置(dx,dy)を算出する。すなわち、CPU41は、算出手段として機能する。
【0055】
具体的には、CPU41は、基準平面板20の2以上の位置のうち少なくとも1以上の位置で第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bから取得された測定データに基づいて、第1座標平面と第2座標平面の同一座標軸間の角度θを算出する。
【0056】
CPU41は、基準平面板20の2以上の位置ごとに、第1ラインセンサー10Aから取得された測定データに対応する第1座標平面上の直線の傾き及び切片と、第2ラインセンサー10Bから取得された測定データに対応する第2座標平面上の直線を、第2座標平面の原点Obを中心に角度θだけ回転させた後の直線の傾き及び切片と、を求める。
CPU41は、2以上の位置ごとに求められた第1座標平面上の直線の傾き及び切片と、第2座標平面上で回転させた後の直線の傾き及び切片と、に基づいて、第1座標平面の原点Oaと第2座標平面の原点Obの相対位置(dx,dy)を算出する。
【0057】
CPU41は、第2ラインセンサー10Bから取得された測定データを、第1ラインセンサー10Aと同一の座標系における測定データに変換する。すなわち、CPU41は、変換手段として機能する。具体的には、CPU41は、第2ラインセンサー10Bから取得された測定データを、第2座標平面の原点Obを中心に角度θだけ回転させ、さらに、x軸方向に(dx)、y軸方向に(dy)平行移動させる。このような変換を行うための変換式を予め作成しておくことで、第2ラインセンサー10Bから取得された測定データを、第1ラインセンサー10Aと同一の座標系における測定データに変換することができる。
【0058】
第2ラインセンサー10Bから取得される測定データ(x
b,y
b)を、第1ラインセンサー10Aと同一の座標系における測定データ(x
a,y
a)に変換するための変換式は、下記式(6)、(7)で表される。
【数6】
【数7】
【0059】
次に、データ処理装置40の動作について説明する。
図12は、データ処理装置40により実行されるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。この処理は、組み立て用治具30に基準平面板20が取り付けられた状態で行われる処理であり、CPU41とROM42に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0060】
まず、CPU41は、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bに対して初期設定を行う(ステップS1)。
次に、CPU41は、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bの初期化が終了したか否かを判断する(ステップS2)。第1ラインセンサー10A又は第2ラインセンサー10Bの初期化が終了していない場合には(ステップS2;NO)、ステップS1に戻り、初期設定が続けられる。
【0061】
ステップS2において、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bの初期化が終了した場合には(ステップS2;YES)、CPU41は、測定データI/F部44を介して、第1ラインセンサー10Aから基準平面板20の平面表面21の測定データ(xai,yai)を取得し、第2ラインセンサー10Bから基準平面板20の平面表面21の測定データ(xbi,ybi)を取得する(ステップS3)。
【0062】
次に、CPU41は、第1ラインセンサー10Aの第1座標平面における測定データ(xai,yai)に対応する直線を求め、第2ラインセンサー10Bの第2座標平面における測定データ(xbi,ybi)に対応する直線を求める(ステップS4)。
【0063】
次に、CPU41は、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bによる基準平面板20の測定回数が2回以上であるか否かを判断する(ステップS5)。
基準平面板20の測定回数が2回未満である場合には(ステップS5;NO)、CPU41は、基準平面板20の位置を変更する旨のメッセージを表示部47に表示させる(ステップS6)。ユーザーは、基準平面板20を、感光体保持軸32を中心に回転させ、基準平面板20の位置を変更する。そして、ステップS3に戻り、処理が繰り返される。
【0064】
ステップS5において、基準平面板20の測定回数が2回以上である場合には(ステップS5;YES)、CPU41は、基準平面板20のいずれかの位置(1回目又は2回目の測定時)で第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bから得られた2直線の傾きから、2つのラインセンサー10A,10B間の角度θを算出する(ステップS7)。具体的には、CPU41は、上記式(1)~(3)に従って、第1ラインセンサー10Aのxa軸を基準とした第2ラインセンサー10Bのxb軸の角度(第1ラインセンサー10Aのya軸を基準とした第2ラインセンサー10Bのyb軸の角度)θを算出する。
【0065】
次に、CPU41は、基準平面板20の位置ごとに、第2ラインセンサー10Bの測定データに対応する第2座標平面上の直線を、原点Obを中心に角度θだけ回転させる(ステップS8)。すなわち、CPU41は、第2ラインセンサー10Bの測定データに対応する直線を、第1ラインセンサー10Aの測定データに対応する直線の傾きに合わせて回転させる。
【0066】
次に、CPU41は、基準平面板20の位置ごとに、第1ラインセンサー10Aの測定データに対応する第1座標平面上の直線の傾き及び切片と、第2ラインセンサー10Bの測定データに対応する第2座標平面上の直線を回転させた後の直線の傾き及び切片と、に基づいて、第1座標平面の原点Oaと第2座標平面の原点Obの相対位置(dx,dy)を算出する(ステップS9)。具体的には、CPU41は、上記式(4)及び(5)を連立方程式として、第1ラインセンサー10Aの原点Oaに対する第2ラインセンサー10Bの原点Obの相対位置(dx,dy)を求める。
【0067】
次に、CPU41は、第2ラインセンサー10Bから取得される測定データを、第1ラインセンサー10Aと同一の座標系における測定データに変換するための変換式を求める(ステップS10)。具体的には、CPU41は、上記式(6)及び(7)のように、第1座標平面と第2座標平面の同一座標軸間の角度θ、及び、第1座標平面の原点Oaと第2座標平面の原点Obの相対位置(dx,dy)に基づいて、変換式を求める。
以上で、キャリブレーション処理が終了する。
【0068】
[感光体及び現像ローラーの位置調整]
次に、感光体及び現像ローラーの位置調整について説明する。
ユーザーは、キャリブレーション処理が終了すると、組み立て用治具30の感光体保持軸32から基準平面板20を取り外し、感光体保持軸32に感光体を取り付ける。また、組み立て用治具30上で、感光体に対して、現像ローラーを含む現像器を組み付ける。
【0069】
図13に、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bが配置された組み立て用治具30に、感光体50及び現像ローラー60が配置された状態を示す。ここで、第1ラインセンサー10Aは、現像ローラー60の表面形状を測定し、第2ラインセンサー10Bは、感光体50の表面形状を測定する。
【0070】
図14に示すように、第1ラインセンサー10Aにより、現像ローラー60の表面形状61を測定することで、第1座標平面上での現像ローラー60の軸中心位置C
1及び半径r
1が求められる。
また、第2ラインセンサー10Bにより、感光体50の表面形状51を測定して得られた測定データを、第1ラインセンサー10Aの座標系に変換することで、第1座標平面上での感光体50の表面形状51がわかり、第1ラインセンサー10Aの座標系における感光体50の軸中心位置C
2及び半径r
2が求められる。
【0071】
CPU41は、第1ラインセンサー10Aの座標系で表された、現像ローラー60の軸中心位置C1及び半径r1と、感光体50の軸中心位置C2及び半径r2から、感光体50と現像ローラー60との隙間の距離dを求める。具体的には、現像ローラー60の軸中心位置C1と感光体50の軸中心位置C2との間の距離から、現像ローラー60の半径r1と感光体50の半径r2を引くことで、感光体50と現像ローラー60との隙間の距離dを算出する。
このようにして、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bから取得した測定データに対し、数学的な処理を施すことで、感光体50と現像ローラー60の距離dを測定することができる。
【0072】
CPU41は、感光体50と現像ローラー60との隙間の距離dを表示部47に表示させる。
ユーザーは、表示部47に表示された感光体50と現像ローラー60との隙間の距離dを確認しながら、感光体50及び現像ローラー60の位置を調整する。
【0073】
図15(a)は、組み立て用治具30に取り付けられた感光体50及び現像ローラー60を、感光体50及び現像ローラー60の軸方向から見た図である。
図15(b)は、組み立て用治具30に取り付けられた感光体50及び現像ローラー60を示す斜視図である。
感光体50は、感光体保持軸32により、組み立て用治具30に取り付けられている。感光体50の軸方向端部には、感光体保持板52が設けられている。また、感光体保持板52には、隙間調整板53が設けられており、隙間調整板53の位置は、感光体保持板52に対して感光体50の半径方向に変更可能となっている。隙間調整板53の位置を調整するための機構としては、どのような方法を用いてもよい。
現像ローラー60には、現像ローラー60の軸方向端部の軸周りにリング状の隙間調整スペーサー62が設けられている。
【0074】
隙間調整板53の外側端部(感光体50の半径方向における外側端部)は、現像ローラー60の隙間調整スペーサー62に当接されている。隙間調整板53を感光体50の外側に向かって移動させ、隙間調整スペーサー62を押すと、感光体50と現像ローラー60との隙間の距離dが広がる。一方、隙間調整板53を感光体50の内側に向かって移動させ、隙間調整スペーサー62に対する当接を弱くすると、感光体50と現像ローラー60との隙間の距離dが狭くなる。このように、隙間調整板53を動かすことで、感光体50と現像ローラー60との隙間の距離dを調整することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態によれば、基準平面板20の位置を変えて、2つのラインセンサー10A,10Bで基準平面板20を測定することで、第1座標平面と第2座標平面の同一座標軸間の角度θ、及び、第1座標平面の原点Oaと第2座標平面の原点Obの相対位置(dx,dy)が得られるので、2つのラインセンサー10A,10Bのキャリブレーションを、簡易的かつ安価に行うことができる。
【0076】
具体的には、各ラインセンサー10A,10Bから取得された測定データに数学的な処理を施すことで、各ラインセンサー10A,10Bの位置関係を得ることができる。
【0077】
また、第2ラインセンサー10Bから取得された測定データを、第1ラインセンサー10Aと同一の座標系における測定データに変換することで、2つのラインセンサー10A,10Bの測定データを同一座標系で扱うことができる。これにより、各ラインセンサー10A,10Bで測定された別々の物体の位置関係を得ることができる。
【0078】
例えば、第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bを、電子写真方式の画像形成装置に用いられる感光体50と現像ローラー60とを組み立てる際に用いる組み立て用治具30上に配置することで、感光体50と現像ローラー60との間の距離dを精度良く測定することができる。
また、組み立て用治具30に設けられた感光体保持軸32を、基準平面板20を保持するためにも使用することで、基準平面板20の位置の変更が容易になる。
【0079】
また、キャリブレーション処理を組み立て用治具30の組み立て時に行うことにより、感光体50と現像ローラー60との間の距離dの測定精度を高めることができる。
また、定期的にキャリブレーション処理を行うことで、組み立て用治具30における測定値の信頼性を維持することができる。
また、組み立て用治具30における測定値がずれてきた場合に、キャリブレーション処理を行うこととしてもよい。例えば、組み立て用治具30を用いて、マスターとなる感光体50に対して現像ローラー60との間の隙間を定期的に測定しておき、その値がずれた際にキャリブレーション処理を行うことで、測定の信頼性を高めることができる。
【0080】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るデータ処理装置の例であり、これに限定されるものではない。装置を構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0081】
例えば、上記実施の形態では、2つのラインセンサーを用いる場合について説明したが、4つのラインセンサーを用いることとしてもよい。
図16に、感光体50に対して2つの現像ローラー70,80が設けられている画像形成装置を組み立てる際の隙間調整に用いる組み立て用治具90の構成を示す。
【0082】
組み立て用治具90は、センサー保持板91,92を備える。
センサー保持板91上には、上述したラインセンサー10と同様の第1ラインセンサー10A及び第2ラインセンサー10Bが配置され、センサー保持板92上には、上述したラインセンサー10と同様の第3ラインセンサー10C及び第4ラインセンサー10Dが配置されている。第1ラインセンサー10Aは、現像ローラー70の表面形状を測定するために用いられる。第2ラインセンサー10Bは、感光体50の表面形状を測定するために用いられる。第3ラインセンサー10Cは、感光体50の表面形状を測定するために用いられる。第4ラインセンサー10Dは、現像ローラー80の表面形状を測定するために用いられる。
【0083】
組み立て用治具90において、感光体50及び現像ローラー70,80を組み立てる前に、基準平面板20(
図10参照)を用いて4つのラインセンサー10A~10Dのキャリブレーション処理を行う。
第1ラインセンサー10Aと第2ラインセンサー10B、第3ラインセンサー10Cと第4ラインセンサー10D、第2ラインセンサー10Bと第3ラインセンサー10Cの3組について、上述したキャリブレーション処理と同様、基準平面板20を少なくとも2以上の傾き(位置)で測定し、2つのラインセンサーの同一座標軸間の角度、及び、2つのラインセンサーの原点の相対位置を算出する。さらに、3組のラインセンサーの位置関係に基づいて、4つのラインセンサーから取得される測定データを同一座標系で表すことができる。
【0084】
キャリブレーション処理が終了した後、組み立て用治具90から基準平面板20を取り外し、組み立て用治具90において、感光体50及び現像ローラー70,80の位置を調整しながら組み立てる。
第1ラインセンサー10Aにより測定される現像ローラー70の表面形状と、第2ラインセンサー10Bにより測定される感光体50の表面形状と、に基づいて、感光体50と現像ローラー70との隙間の距離を求める。
また、第3ラインセンサー10Cにより測定される感光体50の表面形状と、第4ラインセンサー10Dにより測定される現像ローラー80の表面形状と、に基づいて、感光体50と現像ローラー80との隙間の距離を求める。
【0085】
以上の説明では、各処理を実行するためのプログラムを格納したコンピューター読み取り可能な媒体としてROMを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)を適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 ラインセンサー
10A 第1ラインセンサー
10B 第2ラインセンサー
20 基準平面板
21 平面表面
22 取付穴
30 組み立て用治具
31 センサー保持板
32 感光体保持軸
40 データ処理装置
41 CPU
42 ROM
44 測定データI/F部
45 記憶部
47 表示部
50 感光体
53 隙間調整板
60 現像ローラー
62 隙間調整スペーサー
70,80 現像ローラー
90 組み立て用治具
d 距離