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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】自動試料注入装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/18 20060101AFI20221122BHJP
   G01N 30/12 20060101ALI20221122BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01N30/18 F
G01N30/12 A
G01N30/18 A
G01N30/24 A
G01N30/24 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019024504
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020134194
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】豊後 一
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-145700(JP,A)
【文献】特開2012-237557(JP,A)
【文献】特開平09-236590(JP,A)
【文献】特開2011-179839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/18
G01N 30/24
G01N 30/12
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にニードルを有するバレルと、前記バレル内に摺動自在に嵌挿されたプランジャとを含むシリンジと、
前記シリンジを駆動するシリンジ駆動部と、
前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、
試料気化室の上部に取り付けられ、前記ニードルが挿入されるセプタムの種類およびシリンジの種類に対応する、シリンジの下方への最適速度を定めたテーブルを記憶する記憶部と、
前記テーブルを参照して、前記セプタムおよび前記シリンジに対応する前記シリンジの下方への最適速度を特定し、前記シリンジの下方への速度が前記シリンジの下方への最適速度となるように、前記シリンジ駆動部を制御する制御部とを備えた自動試料注入装置。
【請求項2】
前記テーブルは、さらに、前記セプタムの種類および前記シリンジの種類に対応する、前記プランジャの下方への最適速度を定め、
前記制御部は、前記テーブルを参照して、前記セプタムおよび前記シリンジに対応する前記プランジャの下方への最適速度を特定し、前記プランジャの下方への速度が前記プランジャの下方への最適速度となるように、前記プランジャ駆動部を制御する、請求項1記載の自動試料注入装置。
【請求項3】
先端にニードルを有するバレルと、前記バレル内に摺動自在に嵌挿されたプランジャとを含むシリンジと、
前記シリンジを駆動するシリンジ駆動部と、
前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、
試料気化室の上部に取り付けられ、前記ニードルが挿入されるセプタムの種類およびシリンジの種類に対応する、プランジャの下方への最適速度を定めたテーブルを記憶する記憶部と、
前記テーブルを参照して、前記セプタムおよび前記シリンジに対応する前記プランジャの下方への最適速度を特定し、前記プランジャの下方への速度が前記プランジャの下方への最適速度となるように、前記プランジャ駆動部を制御する制御部とを備えた自動試料注入装置。
【請求項4】
先端にニードルを有するバレルと、前記バレル内に摺動自在に嵌挿されたプランジャとを含むシリンジと、
前記シリンジを駆動するシリンジ駆動部と、
前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、
ユーザによるユーザ設定シリンジ速度の入力を受け付ける入力部と、
試料気化室の上部に取り付けられ、前記ニードルが挿入されるセプタムの種類およびシリンジの種類に対応する、通常測定時のシリンジの下方へ速度範囲を定めたテーブルを記憶する記憶部と、
前記テーブルを参照して、前記セプタムおよび前記シリンジに対応する、通常測定時のシリンジの下方への速度範囲を特定し、前記ユーザ設定シリンジ速度が前記速度範囲外の場合に、警告を通知する制御部とを備えた自動試料注入装置。
【請求項5】
前記入力部は、さらに、ユーザによるユーザ設定プランジャ速度の入力を受け付け、
前記テーブルは、セプタムの種類およびシリンジの種類に対応する、通常測定時のプランジャの下方への速度範囲を定め、
前記制御部は、前記テーブルを参照して、前記セプタムおよび前記シリンジに対応する、通常測定時のプランジャの下方への速度範囲を特定し、前記ユーザ設定プランジャ速度が前記速度範囲外の場合に、警告を通知する、請求項4記載の自動試料注入装置。
【請求項6】
先端にニードルを有するバレルと、前記バレル内に摺動自在に嵌挿されたプランジャとを含むシリンジと、
前記シリンジを駆動するシリンジ駆動部と、
前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、
ユーザによるユーザ設定プランジャ速度の入力を受け付ける入力部と、
試料気化室の上部に取り付けられ、前記ニードルが挿入されるセプタムの種類およびシリンジの種類に対応する、通常測定時のプランジャの下方への速度範囲を定めたテーブルを記憶する記憶部と、
前記テーブルを参照して、前記セプタムおよび前記シリンジに対応する、通常測定時のプランジャの下方への速度範囲を特定し、前記ユーザ設定プランジャ速度が前記速度範囲外の場合に、警告を通知する制御部とを備えた自動試料注入装置。
【請求項7】
前記シリンジの種類は、前記バレルの容量、前記ニードルの形状、前記プランジャの形状のうちの少なくとも1つによって定められる、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動試料注入装置。
【請求項8】
前記セプタムの種類は、前記セプタムの材質、および前記セプタムの厚さのうちの少なくとも1つによって定められる、請求項1~6のいずれか1項に記載の自動試料注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動試料注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ部と、試料をガスクロマトグラフ部に接続された試料気化室に自動で注入する自動試料注入装置とを備えた自動試料分析システムが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の自動試料分析システムのオートインジェクタは、下端にニードルを有し内側に摺動自在にプランジャが嵌挿されたマイクロシリンジと、マイクロシリンジのプランジャを押し入れ又は引き出すプランジャ駆動部と、マイクロシリンジ全体を上下させると共に水平方向に所定範囲内で移動させるシリンジ駆動部とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-156632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自動試料分析システムでは、シリンジおよびプランジャの下方向への速度をユーザが設定しなければならない。ユーザの設定が適切でないと、試料を正常に注入できなかったり、シリンジ、および試料気化室に試料注入口に取り付けられたセプタムを損傷させることがある。
【0006】
それゆえに、本発明の目的は、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる自動試料注入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動試料注入装置は、先端にニードルを有するバレルと、バレル内に摺動自在に嵌挿されたプランジャとを含むシリンジと、シリンジを駆動するシリンジ駆動部と、プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、試料気化室の上部に取り付けられ、ニードルが挿入されるセプタムの種類およびシリンジの種類に対応する、シリンジの下方への最適速度を定めたテーブルを記憶する記憶部と、テーブルを参照して、セプタムおよびシリンジに対応するシリンジの下方への最適速度を特定し、シリンジの下方への速度がシリンジの下方への最適速度となるように、シリンジ駆動部を制御する制御部とを備える。
【0008】
本発明の自動試料注入装置は、先端にニードルを有するバレルと、バレル内に摺動自在に嵌挿されたプランジャとを含むシリンジと、シリンジを駆動するシリンジ駆動部と、プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、ユーザによるユーザ設定シリンジ速度の入力を受け付ける入力部と、試料気化室の上部に取り付けられ、ニードルが挿入されるセプタムの種類およびシリンジの種類に対応する、通常測定時のシリンジの下方へ速度範囲を定めたテーブルを記憶する記憶部と、テーブルを参照して、セプタムおよびシリンジに対応する、通常測定時のシリンジの下方への速度範囲を特定し、ユーザ設定シリンジ速度が速度範囲外の場合に、警告を通知する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の自動試料分析システムの構成を表わす図である。
図2】(a)は、シリンジ115およびプランジャ117が駆動される前の状態を表わす図である。(c)は、プランジャ117を下方に駆動した後の状態を表わす図である。
図3】第1の実施形態の速度テーブルを表わす図である。
図4】シリンジ115の種類を表わす図である。
図5】セプタム131の種類を表わす図である。
図6】第1の実施形態における試料気化室123へ試料の注入手順を表わすフローチャートである。
図7】第2の実施形態の速度テーブルを表わす図である。
図8】第2の実施形態における試料気化室123へ試料の注入手順を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の自動試料分析システムの構成を表わす図である。
【0012】
この自動試料分析システムは、自動試料注入装置110と、ガスクロマトグラフ部120と、検出制御部230とを備える。
【0013】
自動試料注入装置110は、バイアルラック収容部111と、シリンジ115と、シリンジ駆動部119と、プランジャ駆動部118と、バイアルラック収容部111と、制御部130と、記憶部135と、入力部140と、表示部150とを備える。
【0014】
シリンジ115は、先端にニードル116を有するバレル132と、バレル132内に摺動自在に嵌挿されたプランジャ117とを含む。
【0015】
バイアルラック収容部111のバイアルラックには、複数の試料バイアル112と、洗浄バイアル113とが配置される。
【0016】
試料バイアル112には、分析対象の試料が封入されている。洗浄バイアル113には、シリンジ115を洗浄するための洗浄液が封入される。
【0017】
シリンジ駆動部119は、シリンジ115の全体を上下方向および水平方向移動させることによって、ニードル116を試料バイアル112、または洗浄バイアル113に挿入し、またはニードル116を試料バイアル112、または洗浄バイアル113から引き出す。シリンジ駆動部119は、シリンジ115の全体を下方に移動させることによって、ニードル116を試料気化室123に挿入する。シリンジ駆動部119は、モータなどの駆動源を備える。
【0018】
プランジャ駆動部118は、プランジャ117を上下方向に移動させることによって、試料または洗浄液をバレル4内に注入させる。プランジャ駆動部118は、プランジャ117を下方に移動させることによって、バレル4内の試料を試料気化室123に注入する。プランジャ駆動部118は、モータなどの駆動源を備える。
【0019】
ガスクロマトグラフ部120は、温調可能なカラムオーブン121と、カラムオーブン121内に配設されるキャピラリカラム122と、キャピラリカラム122の入口に配置される試料気化室123と、キャピラリカラム122の出口に配置される検出器125とを備える。
【0020】
試料気化室123には、キャリアガスを導入するためのキャリアガス供給管124が接続される。キャリアガス供給管124を通じて、略一定流量に調節されたキャリアガスが試料気化室123に供給される。
【0021】
試料気化室123の上部には、ニードル116が挿入されるセプタム131が配置されている。キャリアガスおよび試料は試料気化室123を通ってキャピラリカラム122に導入される。
【0022】
検出器125は、キャピラリカラム122内で分離された各種の成分を検出する。
記憶部135は、速度テーブルを記憶する。
【0023】
制御部130は、速度テーブルに基づいて、シリンジ駆動部119の駆動、およびプランジャ駆動部118の駆動を制御する。
【0024】
検出制御部230は、試料気化室123およびカラムオーブン121の温調を制御し、検出器125の検出結果のデータ処理を実行する。
【0025】
制御部130および検出制御部230は、パーソナルナルコンピュータ内のCPUが、記憶装置に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0026】
入力部140は、ユーザからの各種の指示、条件の設定を受け付ける。入力部140は、パーソナルコンピュータに接続されたキーボード、マウスなどによって構成される。
【0027】
表示部150は、制御部130から出力されるデータ処理の結果などを表示する。表示部150は、パーソナルコンピュータのモニタなどによって構成される。
【0028】
図2は、シリンジ115、プランジャ117の駆動を説明するための図である。
図2(a)は、シリンジ115およびプランジャ117が駆動される前の状態を表わす図である。この状態からシリンジ115が試料気化室123のある下方に向かって、速度SVで駆動される。
【0029】
図2(b)は、シリンジ115を下方に駆動した後の状態を表わす図である。
シリンジ115を下方に駆動することによって、ニードル116がセプタム131に突き刺さる。シリンジ115の下方への速度SVによっては、セプタム131、およびニードル116が損傷することがある。この状態から、さらに、プランジャ117が下方に向かって、速度PVで駆動される。
【0030】
図2(c)は、プランジャ117を下方に駆動した後の状態を表わす図である。プランジャ117の下方への速度PVによっては、試料気化室123、またはキャピラリカラム122に試料が正常に注入できないことがある。
【0031】
図3は、第1の実施形態の速度テーブルを表わす図である。
第1の実施形態の速度テーブルは、シリンジ115の種類およびセプタム131の種類に対応するシリンジ115の最適速度OSVおよびプランジャ117の最適速度OPVを定める。
【0032】
図3の例では、シリンジの種類IDがi、かつセプタムの種類IDがjに対応して、シリンジ115の最適速度OSVijと定められ、プランジャ117の最適速度OPVijが定められている。
【0033】
図4は、シリンジ115の種類を表わす図である。
シリンジ115の種類は、バレル132の容量、ニードル116の形状、プランジャ117の形状によって定められる。
【0034】
図4の例では、27種のシリンジ115の種類ID(1~27)が、3種類のバレル132の容量(a1~a3)、3種類のニードル116の形状(b1~b3)、および3種類のプランジャ117の形状(c1~c3)の組み合わせによって定められる。
【0035】
図5は、セプタム131の種類を表わす図である。
セプタム131の種類は、セプタム131の種類、セプタム131の厚さによって定められる。
【0036】
図5の例では、4種のセプタム131の種類ID(1~4)が、2種類のセプタムの材質(d1、d2)、および2種類のセプタム131の厚さ(e1、e2)の組み合わせによって定められる。
【0037】
制御部130は、速度テーブルを参照して、セプタム131およびシリンジ115に対応するシリンジ115の下方への最適速度OSVおよびプランジャ117の最適速度OPVを特定する。制御部130は、シリンジ115の下方への速度SVがシリンジ115の下方への最適速度OSVとなるように、シリンジ駆動部119を制御する。制御部130は、プランジャ117の下方への速度PVがプランジャ117の下方への最適速度OPVとなるように、プランジャ駆動部118を制御する。
【0038】
図6は、第1の実施形態における試料気化室123へ試料の注入手順を表わすフローチャートである。前段階として、試料バイアル112から試料が取り出されて、シリンジ115のバレル132内に封入されているものとする。
【0039】
ステップS101において、入力部140は、ユーザによるシリンジ115の種類ID、およびセプタム131の種類IDの入力を受け付ける。
【0040】
ステップS102において、制御部130は、記憶部135内の速度テーブルを参照して、入力されたシリンジ115の種類ID、およびセプタム131の種類IDに対応するシリンジ115の最適速度OSVと定められ、プランジャ117の最適速度OPVを特定する。
【0041】
ステップS103において、制御部130は、シリンジ駆動部119に、シリンジ115を速度OSVで下方に移動させるように指示する。
【0042】
ステップS104において、制御部130は、プランジャ駆動部118に、プランジャ117を速度OPVで下方に移動させるように指示する。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、最適なシリンジ速度およびプランジャ速度が決定されるので、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0044】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態の速度テーブルを表わす図である。
【0045】
第2の実施形態の速度テーブルは、シリンジ115の種類およびセプタム131の種類に対応する通常測定時のシリンジ115の速度範囲SMinV~SMaxVおよび通常測定時のプランジャ117の速度範囲PMinV~PMaxVを定める。通常測定時とは標準的なユーザが、標準的な測定を実行するときに使用される速度の範囲である。
【0046】
図7の例では、シリンジの種類IDがi、かつセプタムの種類IDがjに対応して、通常測定時のシリンジ115の速度範囲SMinVij~SMaxVijが定められ、通常測定時のプランジャ117の速度範囲PMinVij~PmaxVijが定められている。
【0047】
入力部140は、ユーザからのユーザ設定シリンジ速度SVおよびユーザ設定プランジャ速度の入力を受け付ける。
【0048】
制御部130は、速度テーブルを参照して、セプタム131およびシリンジ115に対応する通常測定時のシリンジ115の下方への速度範囲SMinV~SMaxVおよび通常測定時のプランジャ117の下方への速度範囲PMinV~PMaxVを特定する。制御部130は、ユーザ設定シリンジ速度SVが速度範囲SMinV~SMaxVの外部にある場合に、警告を表示部150に表示する。制御部130は、ユーザ設定プランジャ速度PVが速度範囲PMinV~PMaxVの外部にある場合に、警告を表示部150に表示する。
【0049】
図8は、第2の実施形態における試料気化室123へ試料の注入手順を表わすフローチャートである。前段階として、試料バイアル112から試料が取り出されて、シリンジ115のバレル132内に封入されているものとする。
【0050】
ステップS201において、入力部140は、ユーザによるシリンジ115の種類ID、およびセプタム131の種類IDの入力を受け付ける。
【0051】
ステップS202において、入力部140は、ユーザによるシリンジ115の速度(ユーザ設定シリンジ速度)SV、およびプランジャ117の速度(ユーザ設定プランジャ速度)PVの入力を受け付ける。
【0052】
ステップS203において、制御部130は、記憶部135内の速度テーブルを参照して、入力されたシリンジ115の種類ID、およびセプタム131の種類IDに対応する通常測定時のシリンジ115の速度範囲SMinV~SMaxV、通常測定時のプランジャ117の速度範囲PMinV~PMaxVを特定する。
【0053】
ステップS204において、SV<SMinV、またはSV>SMaxVのとき、すなわち、ユーザ設定シリンジ速度SVが通常測定時のシリンジ115の速度範囲外のときには、処理がステップS205に進む。SMinV≦SV≦SMaxVのとき、すなわち、ユーザ設定シリンジ速度SVが通常測定時のシリンジ115の速度範囲内のときには、処理がステップS207に進む。
【0054】
ステップS205において、制御部130は、ユーザ設定シリンジ速度SVが通常測定時のシリンジ115の速度範囲外であることを表示部150に表示する。
【0055】
ステップS206において、入力部140が、ユーザによるユーザ設定シリンジ速度SVの変更の入力を受け付けた場合には、処理がステップS204に戻る。入力部140が、ユーザ設定シリンジ速度SVの変更の入力を受け付けなかった場合には、処理がステップS207に進む。これは、専門性の高いユーザが、ユーザ設定シリンジ速度SVが速度範囲外であることを知りつつ、測定の実行を望む場合を考慮したものである。
【0056】
ステップS207において、PV<PMinV、またはPV>PMaxVのとき、すなわち、ユーザ設定プランジャ速度PVが通常測定時のプランジャ117の速度範囲外のときには、処理がステップS208に進む。PMinV≦PV≦PMaxVのとき、すなわち、ユーザ設定プランジャ速度PVが通常測定時のプランジャ117の速度範囲内のときには、処理がステップS210に進む。
【0057】
ステップS208において、制御部130は、ユーザ設定プランジャ速度PVが通常測定時のプランジャ117の速度範囲外であることを表示部150に表示する。
【0058】
ステップS209において、入力部140が、ユーザ設定プランジャ速度PVの変更の入力を受け付けた場合には、処理がステップS207に戻る。入力部140が、ユーザ設定プランジャ速度PVの変更の入力を受け付けなかった場合には、処理がステップS210に進む。これは、専門性の高いユーザが、ユーザ設定プランジャ速度PVが速度範囲外であることを知りつつ、測定の実行を望む場合を考慮したものである。
【0059】
ステップS210において、制御部130は、シリンジ駆動部119に、シリンジ115をユーザ設定シリンジ速度SVで下方に移動させるように指示する。
【0060】
ステップS211において、制御部130は、プランジャ駆動部118に、プランジャ117をユーザ設定プランジャ速度PVで下方に移動させるように指示する。
【0061】
以上のように、本実施の形態によれば、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、通常測定時のシリンジの速度範囲、および通常測定時のプランジャの速度範囲を特定し、ユーザ設定シリンジ速度が速度範囲外のとき、およびユーザ設定プランジャ速度が速度範囲外のときに、警告を表示する。これによって、ユーザは、ユーザ設定シリンジ速度およびユーザ設定プランジャ速度を変更することができるので、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0062】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、たとえば、以下のような変形例も含む。
【0063】
(1)図6のステップS101、および図8のステップS201において、ユーザがシリンジ115の種類ID、およびセプタム131の種類IDを入力するものとしたが、これに限定するものではない。
【0064】
シリンジ115にバーコードシールを取り付けて、バーコード識別機能を搭載した制御部130によって、シリンジ115の種類を識別するものとしてもよい。また、シリンジ115にRFID(Radio Frequency Identifier)ラベルを取り付けて、RFIDラベルが送信するID情報を制御部130が受信することによって、シリンジ115の種類を識別するものとしてもよい。
【0065】
セプタム131は、試料気化室123に取り付けられる前に、収納瓶に保存されている。収納瓶にバーコードシールを取り付けて、バーコード識別機能を搭載した制御部130によって、セプタム131の種類を識別するものとしてもよい。また、収納瓶にRFIDラベルを取り付けて、RFIDラベルが送信するID情報を制御部130が受信することによって、セプタム131の種類を識別するものとしてもよい。
【0066】
あるいは、カメラがシリンジ115およびセプタム131を撮影し、画像処理機能を備えた制御部130によって、シリンジ115およびセプタム131の種類を識別するものとしてもよい。
【0067】
(2)図6では、速度テーブルを参照して、シリンジ115の最適速度OSV、およびプランジャ117の最適速度OPVを特定したが、これに限定するものではない。
【0068】
シリンジ115およびプランジャ117のうちいずれか一方の速度を速度テーブルを参照して特定し、他方の速度を標準値、またはユーザの設定値としてもよい。
【0069】
(3)図8では、速度テーブルを参照して、通常測定時のシリンジ115の速度範囲、および通常測定時のプランジャ117の速度範囲を特定したが、これに限定するものではない。
【0070】
シリンジ115およびプランジャ117のうちいずれか一方の通常測定時の速度範囲を速度テーブルを参照して特定し、他方の速度を標準値、ユーザの設定値、または速度テーブルを参照した最適速度としてもよい。
【0071】
(4)シリンジの種類は、バレルの容量、ニードルの形状、およびプランジャの形状の組み合わせによって定められるものとしたが、これに限定されるものではない。シリンジの種類は、バレルの容量、ニードルの形状、およびプランジャの形状のうちの少なくとも1つによって定められるものとしてもよい。
【0072】
(5)セプタムの種類は、セプタムの材質、およびセプタムの厚さの組み合わせによって定められるものとしたが、これに限定されるものではない。セプタムの種類は、セプタムの材質、およびセプタムの厚さのうちの少なくとも1つによって定められるものとしてもよい。
【0073】
(付記)
本開示の自動試料注入装置は、以下の特徴を備える。
【0074】
(1)自動試料注入装置は、
先端にニードル(116)を有するバレル(132)と、前記バレル(132)内に摺動自在に嵌挿されたプランジャ(117)とを含むシリンジ(115)と、
前記シリンジ(115)を駆動するシリンジ駆動部(119)と、
前記プランジャ(117)を駆動するプランジャ駆動部(118)と、
試料気化室(123)の上部に取り付けられ、前記ニードル(116)が挿入されるセプタム(131)の種類およびシリンジ(115)の種類に対応する、シリンジ(115)の下方への最適速度を定めたテーブルを記憶する記憶部(135)と、
前記テーブルを参照して、前記セプタム(131)および前記シリンジ(115)に対応する前記シリンジ(115)の下方への最適速度を特定し、前記シリンジ(115)の下方への速度が前記シリンジ(115)の下方への最適速度となるように、前記シリンジ駆動部(119)を制御する制御部(130)とを備える。
【0075】
これによって、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、最適なシリンジ速度が決定されるので、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0076】
(2)好ましくは、前記テーブルは、さらに、セプタム(131)の種類およびシリンジ(115)の種類に対応する、プランジャ(117)の下方への最適速度を定め、
前記制御部(130)は、前記テーブルを参照して、前記セプタム(131)および前記シリンジ(115)に対応する前記プランジャ(117)の下方への最適速度を特定し、前記プランジャ(117)の下方への速度が前記プランジャ(117)の下方への最適速度となるように、前記プランジャ駆動部(118)を制御する。
【0077】
これによって、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、最適なプランジャ速度が決定されるので、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0078】
(3)自動試料注入装置は、
先端にニードル(116)を有するバレル(132)と、前記バレル(132)内に摺動自在に嵌挿されたプランジャ(117)とを含むシリンジ(115)と、
前記シリンジ(115)を駆動するシリンジ駆動部(119)と、
前記プランジャ(117)を駆動するプランジャ駆動部(118)と、
試料気化室(123)の上部に取り付けられ、前記ニードル(116)が挿入されるセプタム(131)の種類およびシリンジ(115)の種類に対応する、プランジャ(117)の下方への最適速度を定めたテーブルを記憶する記憶部(135)と、
前記テーブルを参照して、前記セプタム(131)および前記シリンジ(115)に対応する前記プランジャ(117)の下方への最適速度を特定し、前記プランジャ(117)の下方への速度が前記プランジャ(117)の下方への最適速度となるように、前記プランジャ駆動部(118)を制御する制御部(130)とを備える。
【0079】
これによって、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、最適なプランジャ速度が決定されるので、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0080】
(4)自動試料注入装置は、
先端にニードル(116)を有するバレル(132)と、前記バレル(132)内に摺動自在に嵌挿されたプランジャ(117)とを含むシリンジ(115)と、
前記シリンジ(115)を駆動するシリンジ駆動部(119)と、
前記プランジャ(117)を駆動するプランジャ駆動部(118)と、
ユーザによるユーザ設定シリンジ速度の入力を受け付ける入力部(140)と、
試料気化室(123)の上部に取り付けられ、前記ニードル(116)が挿入されるセプタム(131)の種類およびシリンジ(115)の種類に対応する、通常測定時のシリンジ(115)の下方へ速度範囲を定めたテーブルを記憶する記憶部(135)と、
前記テーブルを参照して、前記セプタム(131)および前記シリンジ(115)に対応する、通常測定時のシリンジ(115)の下方への速度範囲を特定し、前記ユーザ設定シリンジ速度が前記速度範囲外の場合に、警告を通知する制御部(130)とを備える。
【0081】
これによって、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、通常測定時のシリンジの速度範囲を特定し、ユーザ設定シリンジ速度が速度範囲外のときに、警告を表示するので、ユーザは、ユーザ設定シリンジ速度を変更することができる。その結果、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0082】
(5)好ましくは、入力部(140)、さらに、ユーザによるユーザ設定プランジャ速度の入力を受け付け、
前記テーブルは、セプタム(131)の種類およびシリンジ(115)の種類に対応する、通常測定時のプランジャ(117)の下方への速度範囲を定め、
前記制御部(130)は、前記テーブルを参照して、前記セプタム(131)および前記シリンジ(115)に対応する、通常測定時のプランジャ(117)の下方への速度範囲を特定し、前記ユーザ設定プランジャ速度が前記速度範囲外の場合に、警告を通知する。
【0083】
これによって、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、通常測定時のプランジャの速度範囲を特定し、ユーザ設定プランジャ速度が速度範囲外のときに、警告を表示するので、ユーザは、ユーザ設定プランジャ速度を変更することができる。その結果、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0084】
(6)自動試料注入装置は、
先端にニードル(116)を有するバレル(132)と、前記バレル(132)内に摺動自在に嵌挿されたプランジャ(117)とを含むシリンジ(115)と、
前記シリンジ(115)を駆動するシリンジ駆動部(119)と、
前記プランジャ(117)を駆動するプランジャ駆動部(118)と、
ユーザによるユーザ設定プランジャ速度の入力を受け付ける入力部(140)と、
試料気化室(123)の上部に取り付けられ、前記ニードル(116)が挿入されるセプタム(131)の種類およびシリンジ(115)の種類に対応する、通常測定時のプランジャ(117)の下方への速度範囲を定めたテーブルを記憶する記憶部(135)と、
前記テーブルを参照して、前記セプタム(131)および前記シリンジ(115)に対応する、通常測定時のプランジャ(117)の下方への速度範囲を特定し、前記ユーザ設定プランジャ速度が前記速度範囲外の場合に、警告を通知する制御部(130)とを備える。
【0085】
これによって、セプタムの種類およびシリンジの種類に応じて、通常測定時のプランジャの速度範囲を特定し、ユーザ設定プランジャ速度が速度範囲外のときに、警告を表示するので、ユーザは、ユーザ設定プランジャ速度を変更することができる。その結果、試料を正常に注入でき、かつシリンジおよびセプタムの損傷を低減することができる。
【0086】
(7)好ましくは、前記シリンジ(115)の種類は、前記バレル(132)の容量、前記ニードル(116)の形状、前記プランジャ(117)の形状のうちの少なくとも1つによって定められる。
【0087】
これによって、テーブル内のシリンジの種類を適切に設定することができる。
(8)好ましくは、セプタム(131)の種類は、前記セプタム(131)の材質、および前記セプタム(131)の厚さのうちの少なくとも1つによって定められる。
【0088】
これによって、テーブル内のセプタムの種類を適切に設定することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
110 自動試料注入装置、111 バイアルラック収容部、112 試料バイアル、113 洗浄バイアル、114 バイアルラック、115 シリンジ、116 ニードル、117 プランジャ、120 ガスクロマトグラフ部、121 カラムオーブン、122 キャピラリカラム、123 試料気化室、124 キャリアガス供給管、125 検出器、130 制御部、131 セプタム、132 バレル、135 記憶部、140 入力部、150 表示部、230 検出制御部。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8