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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】構造部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019041282
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142673
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】西田 健二
(72)【発明者】
【氏名】本田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】氷室 雄也
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0124550(US,A1)
【文献】特開2014-200625(JP,A)
【文献】特開2014-128986(JP,A)
【文献】特開2018-192822(JP,A)
【文献】特許第5689536(JP,B2)
【文献】再公表特許第2015/129110(JP,A1)
【文献】特開2001-253368(JP,A)
【文献】特開2001-191949(JP,A)
【文献】特開2016-135643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
F16B 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、
前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、
前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、
を備え、
前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され
前記複数の閉空間は、前記バー部材における前記所定方向に直交する閉断面の中央に位置する中央空間と、当該中央空間の周辺に位置する複数の周辺空間とを有し、これにより、前記バー部材は、二重断面構造を構成し、
前記バー部材の前記閉断面は、多角形の断面を有し、
前記複数の周辺空間は、前記閉断面の角部に配置され、
前記複数の周辺空間にそれぞれ挿入された前記接合部は、前記複数の周辺空間のそれぞれの前記角部に対応する部分に嵌合して接合されている、
ことを特徴とする構造部材。
【請求項2】
所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、
前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、
前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、
を備え、
前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、
前記複数の閉空間は、前記バー部材における前記所定方向に直交する閉断面の中央に位置する中央空間と、当該中央空間の周辺に位置する複数の周辺空間とを有し、これにより、前記バー部材は、二重断面構造を構成し、
前記バー部材は、一対の板状の内殻構成部材と、一対の板状の外殻構成部材とを備えており、
前記一対の内殻構成部材は、それぞれ、当該内殻構成部材の中央部において互いに離間する方向に曲がる内側曲がり部分と、前記内側曲がり部分の両側に位置する内側フランジ部分を有しており、
前記一対の外殻構成部材は、それぞれ、当該外殻構成部材の中央部において互いに離間する方向に曲がる外側曲がり部分と、外側曲がり部分の両側に位置する外側フランジ部分を有しており、
前記一対の内殻構成部材における両側の前記内側フランジ部分同士が互いに接着されることにより、前記中央空間が一対の前記内側曲がり部分によって形成され、
前記一対の外殻構成部材における両側の前記外側フランジ部分同士が、前記内側フランジ部分を介在した状態で、互いに接着されることにより、前記複数の周辺空間が一対の前記外側曲がり部分および一対の前記内側曲がり部分によって形成される、
ことを特徴とする構造部材。
【請求項3】
所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、
前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、
前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、
前記複数の接合部それぞれと前記バー部材の端部とを個別に機械的に締結する複数の機械締結部と、
を備え、
前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、
前記複数の前記機械締結部のうち少なくとも1つは、前記バー部材の前記所定方向における端縁から前記機械締結部の締結位置までの距離が他の機械締結部の締結位置と異なるように、配置されている、
ことを特徴とする構造部材。
【請求項4】
所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、
前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、
前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、
を備え、
前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、
前記バー部材は、繊維強化樹脂部材によって形成され、
前記構成部分は、複数の前記繊維強化樹脂部材が前記閉空間の内側から外側に積層された構造を有しており、
前記構成部分における前記閉空間の内側を向く内面は、当該内面と反対側の外面よりも滑らかに形成されており、
前記接合部は、前記内面に当接している、
ことを特徴とする構造部材。
【請求項5】
所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、
前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、
前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、
を備え、
前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、
前記バー部材は、繊維強化樹脂部材によって形成され、
前記接合部は、繊維強化樹脂部材によって形成された前記バー部材の前記構成部分における前記閉空間の内側に配置され、
前記構成部分および前記接合部は、前記閉空間の外部から機械的に締結されている、
ことを特徴とする構造部材。
【請求項6】
前記中央空間に挿入された前記接合部は、前記中央空間の内周面全体で当該中央空間を構成する構成部分に嵌合して接合されている、
請求項1または2に記載の構造部材。
【請求項7】
前記複数の接合部は、前記複数の閉空間のそれぞれを構成する前記構成部分に個別に接着されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項8】
前記複数の前記機械締結部のうち前記バー部材における前記所定方向に延びる側縁に近い機械締結部は、前記バー部材の端縁から前記機械締結部の締結位置までの距離が他の機械締結部の締結位置までの距離よりも遠くなるように、配置されている、
請求項に記載の構造部材。
【請求項9】
前記接合部は、前記構成部分における前記閉空間の内側を向く内面、および当該内面と反対側の外面の両方に当接している、
請求項1~のいずれか1項に記載の構造部材。
【請求項10】
請求項記載の構造部材の製造方法であって、
前記一対の内殻構成部材における両側の前記内側フランジ部分同士を互いに接着し、さらに、前記一対の外殻構成部材における両側の前記外側フランジ部分同士を、前記内側フランジ部分を介在した状態で、互いに接着することにより、前記バー部材を形成する工程を含み、
前記工程において、前記内側フランジ部分の間に付与される接着材の膜厚および前記外側フランジ部分の間に付与される接着材の膜厚を、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材、ならびに前記継手部材の前記複数の接合部のうちの少なくとも1つの寸法誤差を吸収するように調整する、
ことを特徴とする構造部材の製造方法。
【請求項11】
請求項記載の構造部材の製造方法であって、
前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを型成形により製造する工程と、
前記一対の内殻構成部材における両側の前記内側フランジ部分同士を互いに接着し、さらに、前記一対の外殻構成部材における両側の前記外側フランジ部分同士を、前記内側フランジ部分を介在した状態で、互いに接着することにより、前記バー部材を形成する工程と、
前記継手部材の前記接合部を、前記バー部材における前記複数の閉空間のそれぞれを構成する前記構成部分のうち型精度の高い部位に当接していた側の面に接着する工程と
を含む構造部材の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の構造部材の製造方法であって、
前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれの構成材料である少なくとも1枚の板状の繊維強化樹脂部材を固定型にセットする工程と、
前記繊維強化樹脂部材を前記固定型と可動型の間に挟み込んで成形することにより、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを製造する工程と、
前記継手部材の前記接合部を、前記バー部材における前記複数の閉空間のそれぞれを構成する前記構成部分のうち前記固定型に当接していた側の面に接着する工程と
を含む構造部材の製造方法。
【請求項13】
前記バー部材を形成する工程において、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを前記継手部材の前記複数の接合部に模した冶具にセットした状態で、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれのフランジ部を接着する請求項10~12のいずれか1項に記載の構造部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や航空機、さらには産業機械の構造部材として、種々の材料で構成された部材が用いられる場合がある。例えば、繊維強化樹脂で構成された部分を含む構造部材が用いられる場合がある。
【0003】
例えば、自動車の車体を構成する構造部材として、繊維強化樹脂で構成された部分を含む構造部材を用いた例が特許文献1に開示されている。特許文献1には、図19~20に示されるように、自動車の車体のフレーム51の剛性を補強するために、炭素繊維強化樹脂の部分を含む帯板状の構造部材52がフレーム51の下部に複数本取り付けられた構造が開示されている。
【0004】
構造部材52は、炭素繊維強化樹脂で構成された帯板状のバー部材53と、バー部材53の両端部53aをフレーム51に固定する継手部分54とを有する。
【0005】
継手部分54は、バー部材53の両端部53aを上下両面から挟む一対の金属板54aと、ボルト54bと、ナット54cとを有する。
【0006】
この構造部材52では、バー部材53の両端部53aをフレーム51に連結する場合には、バー部材53の両端部53aを一対の金属板54aで挟んだ状態で、バー部材53の両端部53aを、ボルト54bおよびナット54cによって、フレーム51の下部に機械的に締結する。
【0007】
自動車の走行時においてフレーム51が受ける荷重や振動によるひずみエネルギーが構造部材52に伝達された際には、ひずみエネルギーが継手部分54のボルト54b、ナット54cおよび金属板54bを介してバー部材53に伝達されるので、ひずみエネルギーをバー部材53で吸収することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-61170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の構造部材52のように、ひずみエネルギーを吸収するバー部材53を繊維強化樹脂によって構成する場合、機械締結時にバー部材53がボルト54bおよびナット54cに直接接触して損傷することを防ぐために、バー部材53の両端部53aは一対の金属板54aに挟まれて保護されている。
【0010】
しかし、この構成では、自動車走行時に生じるフレーム51のひずみエネルギーを繊維強化樹脂製のバー部材53に効率よく吸収させようとする場合、バー部材53と継手部分54との接合部分(具体的には、バー部材53と金属板54aとの当接部分)に隙間があったり、またはボルト54bおよびナット54cの締結力が弱かったりすることがあり、その場合、バー部材53に吸収させるひずみエネルギーが低減する。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、継手部分からバー部材へのエネルギーの伝達ロスを低減することが可能な構造部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る構造部材は、所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、を備え、前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、前記複数の閉空間は、前記バー部材における前記所定方向に直交する閉断面の中央に位置する中央空間と、当該中央空間の周辺に位置する複数の周辺空間とを有し、これにより、前記バー部材は、二重断面構造を構成し、前記バー部材の前記閉断面は、多角形の断面を有し、前記複数の周辺空間は、前記閉断面の角部に配置され、前記複数の周辺空間にそれぞれ挿入された前記接合部は、前記複数の周辺空間のそれぞれの前記角部に対応する部分に嵌合して接合されていることを特徴とする。
本発明の請求項2に係る構造部材は、所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、を備え、前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、前記複数の閉空間は、前記バー部材における前記所定方向に直交する閉断面の中央に位置する中央空間と、当該中央空間の周辺に位置する複数の周辺空間とを有し、これにより、前記バー部材は、二重断面構造を構成し、前記バー部材は、一対の板状の内殻構成部材と、一対の板状の外殻構成部材とを備えており、前記一対の内殻構成部材は、それぞれ、当該内殻構成部材の中央部において互いに離間する方向に曲がる内側曲がり部分と、前記内側曲がり部分の両側に位置する内側フランジ部分を有しており、前記一対の外殻構成部材は、それぞれ、当該外殻構成部材の中央部において互いに離間する方向に曲がる外側曲がり部分と、外側曲がり部分の両側に位置する外側フランジ部分を有しており、前記一対の内殻構成部材における両側の前記内側フランジ部分同士が互いに接着されることにより、前記中央空間が一対の前記内側曲がり部分によって形成され、前記一対の外殻構成部材における両側の前記外側フランジ部分同士が、前記内側フランジ部分を介在した状態で、互いに接着されることにより、前記複数の周辺空間が一対の前記外側曲がり部分および一対の前記内側曲がり部分によって形成されることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る構造部材は、所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、前記複数の接合部それぞれと前記バー部材の端部とを個別に機械的に締結する複数の機械締結部と、を備え、前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、前記複数の前記機械締結部のうち少なくとも1つは、前記バー部材の前記所定方向における端縁から前記機械締結部の締結位置までの距離が他の機械締結部の締結位置と異なるように、配置されていることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る構造部材は、所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、を備え、前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、前記バー部材は、繊維強化樹脂部材によって形成され、前記構成部分は、複数の前記繊維強化樹脂部材が前記閉空間の内側から外側に積層された構造を有しており、前記構成部分における前記閉空間の内側を向く内面は、当該内面と反対側の外面よりも滑らかに形成されており、前記接合部は、前記内面に当接していることを特徴とする。
本発明の請求項5に係る構造部材は、所定方向に延びる長尺状の構造部材であって、前記所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有するバー部材であって、前記複数の閉空間のそれぞれが当該バー部材の両端部に開口するバー部材と、前記バー部材の両端部に連結された一対の継手部材であって、前記バー部材のそれぞれの端部において前記複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部、および相手部材に取付可能な取付部を有する一対の継手部材と、を備え、前記複数の接合部のそれぞれは、前記取付部に一括して固定され、前記バー部材は、繊維強化樹脂部材によって形成され、前記接合部は、繊維強化樹脂部材によって形成された前記バー部材の前記構成部分における前記閉空間の内側に配置され、前記構成部分および前記接合部は、前記閉空間の外部から機械的に締結されていることを特徴とする。
【0013】
上記の請求項1~5に係る構造部材の構成では、バー部材は、所定方向に延びる複数の閉空間を含む閉断面構造を有し、一方、継手部材は前記複数の閉空間のそれぞれを構成する部分に嵌合して接合された複数の接合部と、取付部とを有し、複数の接合部のそれぞれは、取付部に一括して固定されている。そのため、継手部材の取付部が相手部材に取り付けられた場合、相手部材から継手部材に入力された荷重や振動によるひずみエネルギーは、継手部材において取付部から複数の接合部のそれぞれに伝達され、これら接合部からバー部材の各閉空間のそれぞれを構成する構成部分に伝達される。これにより、バー部材に伝達されたひずみエネルギーを各閉空間によって分散して受けることが可能である。その結果、継手部材からバー部材へのひずみエネルギーの伝達ロスを低減することが可能である。
【0015】
上記の請求項1および2に係る構造部材において、前記複数の閉空間は、前記バー部材における前記所定方向に直交する閉断面の中央に位置する中央空間と、当該中央空間の周辺に位置する複数の周辺空間とを有し、これにより、前記バー部材は、二重断面構造を構成する。この構成では、バー部材がどの方向からの曲げやねじりの荷重または振動を受けても、バー部材に入力されたひずみエネルギーをバー部材の中央空間およびその周辺の複数の周辺空間において分散して受けることが可能であり、継手部材からバー部材へのひずみエネルギーの伝達ロスをより低減することが可能である。
上記の請求項1に係る構造部材において、前記バー部材の前記閉断面は、多角形の断面を有し、前記複数の周辺空間は、前記閉断面の角部に配置され、前記複数の周辺空間にそれぞれ挿入された前記接合部は、前記複数の周辺空間のそれぞれの前記角部に対応する部分に嵌合して接合されている。この構成では、バー部材の多角形の閉断面の角部に配置された複数の周辺空間のそれぞれの角部に対応する部分は、他の部分よりも剛性が高いので、継手部材の接合部から大きな荷重によるひずみエネルギーが伝達されても周辺空間の角部に対応する部分で確実に受けることができ、伝達ロスをより低減することが可能である。
上記の請求項2に係る構造部材において、前記バー部材は、一対の板状の内殻構成部材と、一対の板状の外殻構成部材とを備えており、前記一対の内殻構成部材は、それぞれ、当該内殻構成部材の中央部において互いに離間する方向に曲がる内側曲がり部分と、前記内側曲がり部分の両側に位置する内側フランジ部分を有しており、前記一対の外殻構成部材は、それぞれ、当該外殻構成部材の中央部において互いに離間する方向に曲がる外側曲がり部分と、外側曲がり部分の両側に位置する外側フランジ部分を有しており、前記一対の内殻構成部材における両側の前記内側フランジ部分同士が互いに接着されることにより、前記中央空間が一対の前記内側曲がり部分によって形成され、前記一対の外殻構成部材における両側の前記外側フランジ部分同士が、前記内側フランジ部分を介在した状態で、互いに接着されることにより、前記複数の周辺空間が一対の前記外側曲がり部分および一対の前記内側曲がり部分によって形成される。この構成では、一対の内殻構成部材における両側の内側フランジ部分間の接着によって、前記中央空間が一対の前記内側曲がり部分によって形成され、一対の外殻構成部材における両側の外側フランジ部分間の接着によって、前記複数の周辺空間が一対の前記外側曲がり部分および一対の前記内側曲がり部分によって形成される。そのため、内側フランジ部分間の接着および外側フランジ部分間の接着に用いられる接着材の膜厚を適宜変えることにより、中央空間および複数の周辺空間の大きさを適宜調整することが可能になる。したがって、バー部材を構成する一対の板状の内殻構成部材および一対の板状の外殻構成部材、ならびに継手部材の複数の接合部のいずれかに寸法誤差が生じている場合でも、上記のように、中央空間および複数の周辺空間の大きさの調整によって、当該寸法誤差を吸収することが可能である。その結果、継手部材とバー部材とを密着して接合することが可能であり、継手部材からバー部材へのひずみエネルギーの伝達ロスをさらに低減することが可能である。
上記の請求項3に係る構造部材は、前記複数の接合部それぞれと前記バー部材の端部とを個別に機械的に締結する複数の機械締結部を備えている。この構成では、継手部材とバー部材とを機械締結によって確実に接合することが可能であり、ひずみエネルギーを継手部材とバー部材へ確実に伝達することが可能である。
また、上記の請求項3に係る構造部材において、前記複数の前記機械締結部のうち少なくとも1つは、前記バー部材の前記所定方向における端縁から前記機械締結部の締結位置までの距離が他の機械締結部の締結位置と異なるように、配置されている。 この構成では、機械締結部がバー部材の端縁に沿って直線状に配置されることによって、バー部材の曲げの際にこれらの機械締結部が破壊の起点となるのを回避することができ、その結果、バー部材の劣化や損傷を抑えることが可能である。
上記の請求項4および5に係る構造部材において、前記バー部材は、繊維強化樹脂部材によって形成されている。この構成では、繊維強化樹脂によって形成されたバー部材は、高い曲げ剛性およびねじれ剛性を有しているので、ひずみエネルギーの吸収性能が高い。
また、上記の請求項4に係る構造部材において、前記構成部分は、複数の前記繊維強化樹脂部材が前記閉空間の内側から外側に積層された構造を有しており、前記構成部分における前記閉空間の内側を向く内面は、当該内面と反対側の外面よりも滑らかに形成されており、前記接合部は、前記内面に当接している。この構成では、バー部材の各閉空間を構成する構成部分と継手部材の接合部との接合状態のばらつきを抑えることができ、継手部材からバー部材へのひずみエネルギーの伝達ロスをより低減できる。
上記の請求項5に係る構造部材において、前記接合部は、繊維強化樹脂部材によって形成された前記バー部材の前記構成部分における前記閉空間の内側に配置され、前記構成部分および前記接合部は、前記閉空間の外部から機械的に締結されている。この構成では、接合部が閉空間の内側に配置された状態で、構成部分および接合部は、閉空間の外部から機械的に締結されているので、繊維強化樹脂部材によって形成されたバー部材の構成部分の側から機械締結のための部材をアクセスし、当該部材を閉空間内部の接合部に連結することが可能である。これにより、繊維強化樹脂製の構成部分に損傷を与えることなく、バー部材と継手部材との間の強固な機械締結が可能になる。
【0016】
上記の請求項1および2に係る構造部材において、前記中央空間に挿入された前記接合部は、前記中央空間の内周面全体で当該中央空間を構成する構成部分に嵌合して接合されているのが好ましい。
【0017】
この構成では、中央空間の内周面全体で継手部材とバー部材とを剛的に接合することが可能であり、ひずみエネルギーの伝達ロスをより一層低減することが可能である。
【0023】
上記の構造部材において、前記複数の接合部は、前記複数の閉空間のそれぞれを構成する前記構成部分に個別に接着されているのが好ましい。
【0024】
この構成では、継手部材の複数の接合部はバー部材の複数の閉空間の構成部分に個別に接着されているので、バー部材に伝達されたひずみエネルギーを各閉空間に確実に分散して受けることが可能である。その結果、継手部材からバー部材へのひずみエネルギーの伝達ロスをより低減することが可能である。
【0029】
上記の請求項3に係る構造部材において、前記複数の前記機械締結部のうち前記バー部材における前記所定方向に延びる側縁に近い機械締結部は、前記バー部材の端縁から前記機械締結部の締結位置までの距離が他の機械締結部の締結位置までの距離よりも遠くなるように、配置されているのが好ましい。
【0030】
この構成では、バー部材の側縁に近い機械締結部をバー部材の端縁から遠ざけて配置することにより、バー部材の破壊の起点になるおそれがある機械締結部の数を減らすことが可能であり、バー部材の劣化や損傷をさらに抑えることが可能である。
【0037】
上記の構造部材において、前記接合部は、前記構成部分における前記閉空間の内側を向く内面、および当該内面と反対側の外面の両方に当接しているのが好ましい。
【0038】
この構成では、継手部材の接合部がバー部材の各閉空間を構成する構成部分の内面および外面の両方に当接しているので、継手部材からバー部材へのひずみエネルギーの伝達ロスをより一層低減できる。
【0039】
本発明の構造部材の請求項10に係る製造方法は、請求項記載の構造部材の製造方法であって、前記一対の内殻構成部材における両側の前記内側フランジ部分同士を互いに接着し、さらに、前記一対の外殻構成部材における両側の前記外側フランジ部分同士を、前記内側フランジ部分を介在した状態で、互いに接着することにより、前記バー部材を形成する工程を含み、前記工程において、前記内側フランジ部分の間に付与される接着材の膜厚および前記外側フランジ部分の間に付与される接着材の膜厚を、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材、ならびに前記継手部材の前記複数の接合部のうちの少なくとも1つの寸法誤差を吸収するように調整することを特徴とする。
【0040】
この製造方法によれば、バー部材を構成する一対の板状の内殻構成部材および一対の板状の外殻構成部材、ならびに継手部材の複数の接合部のいずれかに寸法誤差が生じている場合でも、上記のように、接着材の膜厚を調整して中央空間および複数の周辺空間の大きさを調整することによって、当該寸法誤差を吸収することが可能である。
【0041】
本発明の構造部材の請求項11に係る製造方法は、請求項記載の構造部材の製造方法であって、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを型成形により製造する工程と、前記一対の内殻構成部材における両側の前記内側フランジ部分同士を互いに接着し、さらに、前記一対の外殻構成部材における両側の前記外側フランジ部分同士を、前記内側フランジ部分を介在した状態で、互いに接着することにより、前記バー部材を形成する工程と、前記継手部材の前記接合部を、前記バー部材における前記複数の閉空間のそれぞれを構成する前記構成部分のうち型精度の高い部位に当接していた側の面に接着する工程とを含むことを特徴とする。
【0042】
この製造方法では、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを板状の繊維強化樹脂部材を用いて型成形により製造する。そして、継手部材の接合部を、バー部材における複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分のうち型精度の高い部位に当接していた側の面に接着することにより、バー部材における滑らかな面に継手部材の前記接合部を接着することが可能になる。その結果、バー部材の各閉空間を構成する構成部分と継手部材の接合部との接合状態のばらつきを抑えることができ、継手部材からバー部材への伝達ロスをより低減できる。
【0043】
本発明の構造部材の請求項12に係る製造方法は、請求項11記載の構造部材の製造方法であって、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれの構成材料である少なくとも1枚の板状の繊維強化樹脂部材を固定型にセットする工程と、前記繊維強化樹脂部材を前記固定型と可動型の間に挟み込んで成形することにより、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを製造する工程と、前記継手部材の前記接合部を、前記バー部材における前記複数の閉空間のそれぞれを構成する前記構成部分のうち前記固定型に当接していた側の面に接着する工程とを含むことを特徴とする。
【0044】
この製造方法では、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを板状の繊維強化樹脂部材を用いて製造する際には、繊維強化樹脂部材における固定型に接触していた側の面が反対側の面、すなわち、可動型に接触していた面よりも滑らかに形成することが可能である。さらに、継手部材の接合部を、バー部材における複数の閉空間のそれぞれを構成する構成部分のうち前記固定型に当接していた側の面に接着することにより、バー部材における滑らかな面に継手部材の前記接合部を接着することが可能になる。その結果、バー部材の各閉空間を構成する構成部分と継手部材の接合部との接合状態のばらつきを抑えることができ、継手部材からバー部材への伝達ロスをより低減できる。
【0045】
上記の構造部材の製造方法に関しては、前記バー部材を形成する工程において、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを前記継手部材の前記複数の接合部に模した冶具にセットした状態で、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれのフランジ部を接着するのが好ましい。
【0046】
この製造方法では、バー部材を形成する工程において、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれを前記継手部材の前記複数の接合部に模した冶具、すなわち、複数の接合部と略同一形状および略同一寸法の部分を有する冶具にセットした状態で、前記一対の内殻構成部材および前記一対の外殻構成部材のそれぞれのフランジ部を接着することにより、バー部材を形成する。これにより、形成後のバー部材の中央空間および周辺空間を構成する構成部分に実際の継手部材の複数の接合部を接着したときに、当該構成部分と接合部との相対位置の誤差を低減することが可能である。
【発明の効果】
【0047】
本発明の構造部材およびその製造方法によれば、継手部分からバー部材へのエネルギーの伝達ロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の構造部材の実施形態に係る構造部材の分解斜視図である。
図2図1のバー部材の斜視図である。
図3図2のバー部材を端部から見た図である。
図4図2の外殻構成部材の斜視図である。
図5図2の内殻構成部材の斜視図である。
図6】本発明の構造部材の製造方法における外殻構成部材を固定型および可動型を用いて成形する工程を示す説明図である。
図7図1の継手部材の平面図である。
図8図7の継手部材の矢視A図である。
図9図7の継手部材の矢視B図である。
図10図1のバー部材と継手部材とを接合した状態を示す断面説明図である。
図11】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図12】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図13】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図14】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図15】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図16】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図17】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図18】本発明の構造部材の変形例に係る断面説明図である。
図19】従来の構造部材が車体のフレーム下部に取り付けられた状態の斜視図である。
図20図19の構造部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0050】
本発明の構造部材に係る実施形態として、図1に示される補強部材1は、自動車の車体を構成する構造部材であり、例えば、前述の図19に示される車体のフレーム51を補強するために、フレーム51の下部などに取り付けられて用いられる。
【0051】
補強部材1は、所定方向に延びる長尺状(例えば帯板状または棒状)の部材であり、バー部材2と、バー部材2の両端部2aに連結される一対の継手部材3と、ボルトやリベットなどの複数の機械締結部4とを有する。
【0052】
バー部材2は、図1~3に示されるように、炭素繊維強化樹脂(CFRP)などの繊維強化樹脂によって形成された所定方向に延びる長尺状の部材である。バー部材2は、所定方向(バー部材2の長手方向)に延びる複数の閉空間21~25(具体的には、中央空間21および周辺空間22~25)を含む閉断面20の構造を有する。バー部材2は、複数の閉空間21~25のそれぞれが当該バー部材2の両端部2aに開口する。
【0053】
複数の閉空間21~25は、具体的には、バー部材2における所定方向(長手方向)に直交する閉断面20の中央に位置する中央空間21と、当該中央空間21の周辺に位置する複数の周辺空間22~25とを有し、これにより、バー部材2は、二重断面構造を構成する。
【0054】
これらの閉空間21~25は、いずれも略矩形断面形状を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の断面形状(例えば円形断面や三角形断面などの断面形状)を有していてもよい。
【0055】
バー部材2の閉断面20は、多角形の断面として、本実施形態では矩形断面を有し、いいかえれば閉断面20の外周の形状が矩形である。
【0056】
複数の周辺空間22~25は、矩形断面の閉断面20のそれぞれの角部(すなわち四隅)に配置されている。
【0057】
バー部材2は、図2~5に示されるように、一対の板状の外殻構成部材5と、一対の板状の内殻構成部材6とを備えており、これらを組み合わせることによりバー部材2を構成している。
【0058】
これら外殻構成部材5および内殻構成部材6は、繊維強化樹脂部材により製造され、具体的には、CFRPなどの繊維強化樹脂製の板状またはシート状の部材により製造されている。外殻構成部材5および内殻構成部材6を構成する繊維強化樹脂部材は、所定方向(バー部材2の長手方向)に配向された強化繊維の割合が多くなるように(例えば強化繊維全体のうちの50%以上)に構成されている。
【0059】
一対の内殻構成部材6は、それぞれ、ハット断面形状を有しており、具体的には、当該内殻構成部材6の中央部において互いに離間する方向に曲がる内側曲がり部分6aと、内側曲がり部分6aの両側に位置する内側フランジ部分6bとを備えている。
【0060】
本実施形態の内側曲がり部分6aは、図3に示されるように、略コの字状をしており、角部において90度屈曲しているかまたは屈曲に近い曲率半径が小さい湾曲をしている。なお、内側曲がり部分6aは、略U字状または略C字状、すなわち、全体的に曲率半径が大きい湾曲した形状をしていてもよい。
【0061】
内側曲がり部分6aの長手方向の両端部には、機械締結部4が挿入可能な貫通孔28が形成されている。
【0062】
一対の内殻構成部材6における両側の内側フランジ部分6b同士が互いに接着材7(図10参照)により接着されている。これにより、中央空間21が一対の内側曲がり部分6aによって形成されている。
【0063】
一対の外殻構成部材5は、それぞれ、ハット断面形状を有しており、具体的には、当該外殻構成部材5の中央部において互いに離間する方向に曲がる外側曲がり部分5aと、外側曲がり部分5aの両側に位置する外側フランジ部分5bとを備えている。
【0064】
本実施形態の外側曲がり部分5aは、図3に示されるように、略コの字状をしており、角部において90度屈曲しているかまたは屈曲に近い曲率半径が小さい湾曲をしているが、外側曲がり部分5aについても、上記の内側曲がり部分6aと同様に、略U字状または略C字状、すなわち、全体的に曲率半径が大きい湾曲した形状をしていてもよい。
【0065】
外側曲がり部分5aの長手方向の両端部には、機械締結部4が挿入可能な貫通孔として、中央の貫通孔26および両側の貫通孔27が形成されている。両側の貫通孔27は、中央の貫通孔26よりも外側曲がり部分5aの長手方向の両端縁から遠い位置に配置されている。中央の貫通孔26は、上記の内殻構成部材6の内側曲がり部分6aに形成された貫通孔28に対応する位置に配置されている。
【0066】
一対の外殻構成部材5における両側の外側フランジ部分5b同士は、内側フランジ部分6bを介在した状態で、互いに接着材7(図10参照)により接着されている。これにより、複数の周辺空間22~25が一対の外側曲がり部分5aおよび一対の内側曲がり部分6a(より具体的には、それらに加えて一対の内側フランジ部分6bの一部)によって形成される。
【0067】
図3および図10に示されるバー部材2では、外側曲がり部分5aおよび内側曲がり部分6aは、略当接しており、すなわち、当接しているか、またはわずかに離間していればよい。
【0068】
本実施形態では、バー部材2は繊維強化樹脂部材によって形成されている。閉空間21~25の構成部分(すなわち、一対の外殻構成部材5および一対の内殻構成部材6)は、複数の繊維強化樹脂部材が閉空間21~25の内側から外側に積層された構造を有している。閉空間21~25の構成部分における閉空間21~25の内側を向く内面5c、6c、すなわち、外殻構成部材5の内面5cおよび内殻構成部材6の内面6cは、当該内面5c、6cと反対側の外面よりも滑らかに形成されている。
【0069】
例えば、後段の製造方法の説明のように、外殻構成部材5を図6に示される固定型41および可動型42を用いて製造する場合、固定型41に接触する面を基準面として複数の繊維強化樹脂部材が積層された状態で外殻構成部材5を製造する。この場合、外殻構成部材5において固定型41に接触している内面5cは、上下に移動する可動型42に接触する内面5cと反対側の面と比較して滑らかに形成することが可能である。
【0070】
一対の継手部材3は、それぞれバー部材2の両端部2aに連結されており、自動車の車体のフレーム51(図19参照)などの相手部材に取付可能な構成を有する。
【0071】
それぞれの継手部材3は、図7~10に示されるように、バー部材2の両端部2aにおいて複数の閉空間21~25のそれぞれを構成する構成部分に嵌合して接合された複数の接合部12~16(具体的には、中央接合部12および4つのコーナー接合部13~16)と、取付部11とを備えている。
【0072】
複数の接合部12~16のそれぞれは、取付部11に一括して固定されている。例えば、複数の接合部12~16が取付部11とともに鉄などの金属材料により一体成形されることによって、複数の接合部12~16が取付部11に一括して固定された構成を有する継手部材3を製造することが可能である。
【0073】
取付部11は、上記のフレーム51(図19参照)などの相手部材に取付可能な構成を有しており、本実施形態ではボルトを挿通可能な貫通孔11aを有する。
【0074】
本実施形態では、中央接合部12は、バー部材2の中央空間21に挿入され、中央空間21の内周面全体で当該中央空間21を構成する構成部分に嵌合して接合されている。具体的には、中央接合部12は、バー部材2の中央空間21の内周面の形状に対応する形状であり、本実施形態では矩形の筒状を有する。この矩形筒状の中央接合部12は、バー部材2の中央空間21に挿入され、中央空間21の内周面全体で接着材31によって接着されている。
【0075】
さらに、本実施形態では、中央接合部12の上面および下面には機械締結部4が取付可能な取付孔29を有する。取付孔29は、機械締結部4の形態に対応する形状に形成され、例えば、機械締結部4がリベットの場合には貫通孔であり、ボルトの場合にはねじ孔である。
【0076】
中央接合部12は、バー部材2の中央空間21に挿入され、当該中央接合部12の取付孔29、外殻構成部材5の中央貫通孔26、および内殻構成部材6の貫通孔28を一直線上に並ぶように配置した状態で、これら取付孔29および貫通孔26、28にリベットからなる機械締結部4を挿通させることにより、中央接合部12、バー部材2の外殻構成部材5、および内殻構成部材6を機械的に締結することが可能である。したがって、本実施形態では、中央接合部12は、接着材31によって中央空間21の内周面に接着されるとともに、機械締結部4によって外殻構成部材5および内殻構成部材6に接合されている。
【0077】
4つのコーナー接合部13~16は、それぞれL字状断面を有して中央接合部12と平行に延びる部分である。これらコーナー接合部13~16は、矩形断面の閉断面20の四隅に配置された複数の周辺空間22~25にそれぞれ挿入され、複数の周辺空間22~25のそれぞれの閉断面20の角部に対応する部分(具体的には、外殻構成部材5の内側角部)に嵌合して接合されており、具体的には当該部分に接着材31により接着されている。
【0078】
さらに、本実施形態では、コーナー接合部13~16の上面または下面には、上記の中央接合部12の取付孔29と同様に、機械締結部4が取付可能な取付孔30を有する。
【0079】
コーナー接合部13~16は、バー部材2の周辺空間22~25にそれぞれ挿入され、当該コーナー接合部13~16の取付孔30および外殻構成部材5の両側の貫通孔27が一直線上に並ぶように配置した状態で、これら取付孔30および貫通孔27にリベットからなる機械締結部4を挿通させることにより、コーナー接合部13~16、バー部材2の外殻構成部材5、および内殻構成部材6を機械的に締結することが可能である。したがって、本実施形態では、コーナー接合部13~16は、接着材31によって周辺空間22~25の内周面に接着されるとともに、機械締結部4によって外殻構成部材5に接合されている。
【0080】
本実施形態では、バー部材2は、上記のように繊維強化樹脂部材によって形成され、閉空間21~25(中央空間21および周辺空間22~25)の構成部分(本実施形態では、一対の外殻構成部材5および一対の内殻構成部材6)は、複数の繊維強化樹脂部材が閉空間21~25の内側から外側に積層された構造を有している。これら閉空間21~25の構成部分における当該閉空間21~25の内側を向く内面5c、6c(具体的には外殻構成部材5の内面5cおよび内殻構成部材6の内面6c)は、当該内面5c、6cと反対側の外面よりも滑らかに形成されている。中央接合部12は、中央空間21の滑らかな内面6c(具体的には、内殻構成部材6の内面6c)に当接して接着されている。複数のコーナー接合部13~16は、それぞれ複数の周辺空間22~25の滑らかな内面5c(具体的には、外殻構成部材5の内面5c)に当接した状態で接着されている。
【0081】
本実施形態の補強部材1は、図10に示されるように、内側ハット断面(すなわち、中央空間21を形成する内殻構成部材6の内側曲がり部分6a)の製造上板厚バラツキを吸収するために、内殻構成部材6と隣接するコーナー接合部13~16との間に隙間を確保した構造になっている。
【0082】
上記のように、複数の機械締結部4は、図1および図11に示されるように、バー部材2の両端部2aの上下両面に形成された中央の貫通孔26および両側の貫通孔27に挿入され、複数の接合部12~16それぞれとバー部材2の端部2aとを個別に機械的に締結する。
【0083】
本実施形態では、複数の機械締結部4のうち少なくとも1つは、バー部材2の所定方向(長手方向)における端縁から機械締結部4の締結位置までの距離が他の機械締結部4の締結位置と異なるように、配置されている。具体的には、図1に示されるように、複数の機械締結部4のうちバー部材2における所定方向(長手方向)に延びる側縁に近い機械締結部4(すなわち、図2の外殻構成部材5の両側の貫通孔26に挿入される機械締結部4)は、バー部材2の端縁から機械締結部4の締結位置までの距離が他の機械締結部4(具体的には、図2の外殻構成部材5の中央の貫通孔27に挿入される機械締結部4)の締結位置までの距離よりも遠くなるように、配置されている。これにより、バー部材2の両側縁における機械締結部4による締結位置がバー部材2の破壊の起点になるおそれがある機械締結部4の数を減らすことが可能である。
【0084】
また、本実施形態の補強部材1では、継手部材3の接合部12~16は、繊維強化樹脂部材によって形成されたバー部材2における閉空間21~25の構成部分(具体的には、外殻構成部材5および内殻構成部材6)における閉空間21~25の内側に配置されている。そして、ボルトやリベットなどの機械締結部4がバー部材2の閉空間21~25の外部からアクセスすることによって、閉空間21~25の構成部分(外殻構成部材5および内殻構成部材6)および接合部12~16は機械的に締結されている。
【0085】
(補強部材1の製造方法の説明)
上記のように構成された本実施形態の補強部材1を製造する場合、以下の工程(a)~(d)で製造することが可能である。
(a)一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれの構成材料である少なくとも1枚の板状の繊維強化樹脂部材(好ましくは複数枚積層された繊維強化樹脂部材)を凸状の固定型41(図6参照)にセットする工程(本実施形態では、固定型41に接触する面を基準面として複数の繊維強化樹脂部材が積層された状態でセットされる)。
(b)図6に示されるように、繊維強化樹脂部材を凸状の固定型41と凹状の可動型42の間に挟み込んで成形することにより、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれを製造する工程。
(c)図10に示されるように、一対の内殻構成部材6における両側の内側フランジ部分6b同士を接着材7により互いに接着し、さらに、一対の外殻構成部材5における両側の外側フランジ部分5b同士を、内側フランジ部分6bを介在した状態で、接着材7により互いに接着することにより、バー部材2を形成する工程。
(d)図10に示されるように、継手部材3の接合部12~16を、バー部材2における複数の閉空間21~25のそれぞれを構成する構成部分のうち固定型41に当接していた側の面(具体的には、外殻構成部材5の内面5cおよび内殻構成部材6の内面6c)に接着する工程。
【0086】
さらに、上記の接着工程(d)の後に、リベットなどの機械締結部4によって、継手部材3の接合部12~16とバー部材2とを機械締結すれば、上記図1および図10に示される補強部材1の製造が完了する。
【0087】
上記の(c)バー部材2を形成する工程において、内側フランジ部分6bの間に付与される接着材7(図10参照)の膜厚および外側フランジ部分5bの間に付与される接着材7(図10参照)の膜厚を、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5、ならびに継手部材3の複数の接合部12~16のうちの少なくとも1つの寸法誤差を吸収するように調整するようにすればよい。
【0088】
ここで、上記の(c)バー部材2を形成する工程において、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれを継手部材3の複数の接合部12~16に模した冶具にセットした状態で、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれのフランジ部を接着するようにしてもよく、この場合、バー部材2の閉空間21~25の構成部分と接合部12~16との相対位置の誤差を低減することが可能である。
【0089】
(本実施形態の特徴)
上記のように構成された本実施形態の補強部材1では、バー部材2の外側から機械締結部4によるアクセスが可能であり、バー部材2の外殻構成部材5および内殻構成部材6を継手部材3に機械締結部4および接着材31の両方によって固定しているため、バー部材2と継手部材3との接合剛性を効率よく確保でき、バー部材2のエネルギー伝達性能を発揮することが可能である。また、バー部材2と継手部材3との接合構造において、バー部材2の肉厚バラツキを吸収するために、コーナー接合部13~16と内殻構成部材6の内側曲がり部分6aとの間に隙間を設けることで、製造バラツキによる不具合を抑制することが可能である。
【0090】
具体的には、本実施形態の補強部材1は以下の特徴を有する。
【0091】
(1)
本実施形態の補強部材1では、バー部材2は、所定方向(バー部材2の長手方向)に延びる複数の閉空間21~25を含む閉断面20の構造を有しているので、1つの中空空間を有する単なる大口径の中空構造に比べて剛性が高い構造になっている。一方、継手部材3は複数の閉空間21~25のそれぞれを構成する部分に嵌合して接合された複数の接合部12~16と、取付部11とを有している。複数の接合部12~16のそれぞれは、取付部11に一括して固定されている。
【0092】
そのため、継手部材3の取付部11が相手部材に取り付けられた場合、相手部材から継手部材3に入力された荷重や振動によるひずみエネルギーは、継手部材3において取付部11から複数の接合部12~16のそれぞれに伝達され、これら接合部12~16からバー部材2の各閉空間21~25のそれぞれを構成する構成部分に伝達される。これにより、バー部材2に伝達された荷重や振動によるひずみエネルギーを各閉空間21~25によって分散して受けることが可能である。その結果、継手部材3からバー部材2へのひずみエネルギーの伝達ロスを低減することが可能である。
【0093】
(2)
本実施形態の補強部材1では、複数の閉空間21~25は、バー部材2における所定方向に直交する閉断面20の中央に位置する中央空間21と、当該中央空間21の周辺に位置する複数の周辺空間22~25とを有し、これにより、バー部材2は、二重断面構造を構成する。
【0094】
そのため、バー部材2がどの方向からの曲げやねじりの荷重または振動を受けても、バー部材2に入力されたひずみエネルギーをバー部材2の中央空間21およびその周辺の複数の周辺空間22~25において分散して受けることが可能であり、継手部材3からバー部材2へのひずみエネルギーの伝達ロスをより低減することが可能である。
【0095】
(3)
本実施形態の補強部材1では、中央空間21に挿入された中央接合部12は、中央空間21の内周面全体で当該中央空間21を構成する構成部分(具体的には、一対の内殻構成部材6の内側曲がり部分6a)に嵌合して接合されている。そのため、中央空間21の内周面全体で継手部材3とバー部材2とを剛的に接合することが可能であり、ひずみエネルギーの伝達ロスをより一層低減することが可能である。
【0096】
(4)
本実施形態の補強部材1では、バー部材2の閉断面20は、多角形の断面として矩形断面を有し、複数の周辺空間22~25は、閉断面20の角部(四隅)に配置されている。複数の周辺空間22~25にそれぞれ挿入されたコーナー接合部13~16は、複数の周辺空間22~25のそれぞれの前記角部に対応する部分に嵌合して接合されている。
【0097】
この構成では、バー部材2の矩形の閉断面20の四隅に配置された複数の周辺空間22~25のそれぞれの角部に対応する部分は、他の部分よりも剛性が高いので、継手部材3の接合部12~16から大きな荷重によるひずみエネルギーが伝達されても周辺空間22~25の角部に対応する部分で確実に受けることができ、伝達ロスをより低減することが可能である。
【0098】
なお、本実施形態では、閉断面20が多角形の断面であることの一例として、矩形断面を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、すべての多角形の断面の閉断面に適用可能であり、例えば、三角形断面または五角形以上の多角形の断面の閉断面であってもよい。
【0099】
(5)
本実施形態の補強部材1では、バー部材2は、一対の板状の内殻構成部材6と、一対の板状の外殻構成部材5とを備えている。一対の内殻構成部材6は、それぞれ、当該内殻構成部材6の中央部において互いに離間する方向に曲がる内側曲がり部分6aと、内側曲がり部分6aの両側に位置する内側フランジ部分6bを有している。一対の外殻構成部材5は、それぞれ、当該外殻構成部材5の中央部において互いに離間する方向に曲がる外側曲がり部分5aと、外側曲がり部分5aの両側に位置する外側フランジ部分5bを有している。一対の内殻構成部材6における両側の内側フランジ部分6b同士が互いに接着されることにより、中央空間21が一対の内側曲がり部分6aによって形成されている。さらに、一対の外殻構成部材5における両側の外側フランジ部分5b同士が、内側フランジ部分6bを介在した状態で、互いに接着されることにより、複数の周辺空間22~25が一対の外側曲がり部分5aおよび一対の内側曲がり部分6aによって形成される。
【0100】
この構成では、一対の内殻構成部材6における両側の内側フランジ部分6b間の接着によって、中央空間21が一対の内側曲がり部分6aによって形成され、一対の外殻構成部材5における両側の外側フランジ部分5b間の接着によって、複数の周辺空間22~25が一対の外側曲がり部分5aおよび一対の内側曲がり部分6aによって形成される。そのため、内側フランジ部分6b間の接着および外側フランジ部分5b間の接着に用いられる接着材7(図10参照)の膜厚を適宜変えることにより、中央空間21および複数の周辺空間22~25の大きさを適宜調整することが可能になる。
【0101】
したがって、バー部材2を構成する一対の板状の内殻構成部材6および一対の板状の外殻構成部材5、ならびに継手部材3の複数の接合部12~16のいずれかに寸法誤差が生じている場合でも、上記のように、中央空間21および複数の周辺空間22~25の大きさの調整によって、当該寸法誤差を吸収することが可能である。その結果、継手部材3とバー部材2とを密着して接合することが可能であり、継手部材3からバー部材2へのひずみエネルギーの伝達ロスをさらに低減することが可能である。
【0102】
(6)
本実施形態の補強部材1では、複数の接合部12~16(具体的には、中央接合部12および4つのコーナー接合部13~16)は、複数の閉空間21~25(具体的には、中央空間21および4つの周辺区間22~25)のそれぞれを構成する構成部分(一対の外殻構成部材5および一対の内殻構成部材6)に個別に接着材31によって接着されている。
【0103】
そのため、継手部材3の複数の接合部12~16はバー部材2の複数の閉空間21~25の構成部分に個別に接着されているので、バー部材2に伝達されたひずみエネルギーを各閉空間21~25に確実に分散して受けることが可能である。その結果、継手部材3からバー部材2へのひずみエネルギーの伝達ロスをより低減することが可能である。
【0104】
(7)
本実施形態の補強部材1では、複数の接合部12~16それぞれとバー部材2の端部2aとを個別に機械的に締結するボルトやリベットなどの複数の機械締結部4を備えている。そのため、継手部材3とバー部材2とを機械締結によって確実に接合することが可能であり、ひずみエネルギーを継手部材3とバー部材2へ確実に伝達することが可能である。
【0105】
なお、本実施形態の補強部材1では、継手部材3の複数の接合部12~16は、バー部材2の複数の閉空間21~25を構成する部分に接着材31によって接着されているので、機械締結部4を省略してもよい。ただし、機械締結部4が設けられている上記実施形態の補強部材1では、バー部材2と継手部材3との接合における信頼性が向上するとともに接着材31による接着部分への負担を軽減することが可能である。
【0106】
(8)
本実施形態の補強部材1では、複数の機械締結部4のうち少なくとも1つ(本実施形態では、図1の両側の2つ)は、バー部材2の所定方向(長手方向)における端縁から機械締結部4の締結位置までの距離が他の機械締結部4の締結位置と異なるように、配置されている。
【0107】
この構成では、機械締結部4がバー部材2の端縁に沿って直線状に配置されることによって、バー部材2の曲げの際にこれらの機械締結部4が破壊の起点となるのを回避することができ、その結果、バー部材2の劣化や損傷を抑えることが可能である。
【0108】
(9)
本実施形態の補強部材1では、複数の機械締結部4のうちバー部材2における所定方向(長手方向)に延びる側縁に近い機械締結部4は、バー部材2の端縁から機械締結部4の締結位置までの距離が他の機械締結部4(具体的には、中央の機械締結部4)の締結位置までの距離よりも遠くなるように、配置されている。
【0109】
この構成では、バー部材2の側縁に近い機械締結部4をバー部材2の端縁から遠ざけて配置することにより、バー部材2の破壊の起点になるおそれがある機械締結部4の数を減らすことが可能であり、バー部材2の劣化や損傷をさらに抑えることが可能である。
【0110】
(10)
本実施形態の補強部材1では、バー部材2は、繊維強化樹脂部材によって形成されているので、高い曲げ剛性およびねじれ剛性を有している。そのため、バー部材2におけるひずみエネルギーの吸収性能が高い。
【0111】
なお、上記態様に係る補強部材1においては、バー部材2の長手方向に強化繊維が50%以上配向されてなる繊維強化樹脂によりバー部材2を構成することが、高い曲げ剛性の確保およびねじれ剛性のコントロールによる高い振動減衰効果の確保、ひいてはエネルギー吸収性能の向上という観点から望ましい。
【0112】
(11)
本実施形態の補強部材1では、閉空間21~25の構成部分(一対の外殻構成部材5および一対の内殻構成部材6)は、複数の繊維強化樹脂部材が閉空間21~25の内側から外側に積層された構造を有している。閉空間21~25の構成部分におけるこれら閉空間の内側を向く内面5c、6c(具体的には、外殻構成部材5の内面5cおよび内殻構成部材6の内面6c)は、当該内面5c、6cと反対側の外面よりも滑らかに形成されている。継手部材3の接合部12~16は、それぞれ、閉空間21~25の内面5c、6cにそれぞれ当接している。
【0113】
そのため、バー部材2の各閉空間21~25を構成する構成部分と継手部材3の接合部12~16との接合状態のばらつきを抑えることができ、継手部材3からバー部材2へのひずみエネルギーの伝達ロスをより低減できる。
【0114】
(12)
本実施形態の補強部材1では、接合部12~16は、繊維強化樹脂部材によって形成されたバー部材2における閉空間21~25の構成部分(具体的には、外殻構成部材5および内殻構成部材6)における閉空間21~25の内側に配置されている。そして、閉空間21~25の構成部分(外殻構成部材5および内殻構成部材6)および接合部12~16は、閉空間21~25の外部からボルトやリベットなどの機械締結部4によって、機械的に締結されている。
【0115】
この構成では、接合部12~16が閉空間21~25の内側に配置された状態で、構成部分(外殻構成部材5および内殻構成部材6)および接合部12~16は、閉空間21~25の外部から機械的に締結されているので、繊維強化樹脂部材によって形成されたバー部材2の構成部分(外殻構成部材5および内殻構成部材6)の側から機械締結のためのボルトやリベットなどの機械締結部4をアクセスし、当該機械締結部4を閉空間21~25内部の接合部12~16に連結することが可能である。これにより、繊維強化樹脂製の構成部分(外殻構成部材5および内殻構成部材6)に損傷を与えることなく、バー部材2と継手部材3との間の強固な機械締結が可能になる。
【0116】
例えば、機械締結としてリベットで締結する場合にはリベットの先端が閉空間21~25の内側に位置する接合部12~16に強固に係合するので、繊維強化樹脂製の構成部分に損傷を与えない。また、機械締結としてボルトで締結する場合には、ボルトと螺合するねじ孔を、閉空間21~25の内側に位置する接合部12~16に形成しておけばよく、この場合、繊維強化樹脂製の構成部分にねじ孔を形成する必要がないので単なる貫通孔を形成すればよく、ボルトの締結時に当該構成部分に損傷を与えなくなる。
【0117】
(13)
本実施形態の補強部材1の製造方法では、一対の内殻構成部材6における両側の内側フランジ部分6b同士を互いに接着し、さらに、一対の外殻構成部材5における両側の外側フランジ部分5b同士を、内側フランジ部分6bを介在した状態で、互いに接着することにより、バー部材2を形成する工程(上記の工程(c))を含み、この工程(c)において、内側フランジ部分6bの間に付与される接着材7(図10参照)の膜厚および外側フランジ部分5bの間に付与される接着材7の膜厚を、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5、ならびに継手部材3の複数の接合部12~16のうちの少なくとも1つの寸法誤差を吸収するように調整する。
【0118】
この製造方法によれば、バー部材2を構成する一対の板状の内殻構成部材6および一対の板状の外殻構成部材5、ならびに継手部材3の複数の接合部12~16のいずれかに寸法誤差が生じている場合でも、上記のように、接着材7(図10参照)の膜厚を調整して中央空間21および複数の周辺空間22~25の大きさを調整することによって、当該寸法誤差を吸収することが可能である。
【0119】
(14)
本実施形態の補強部材1の製造方法では、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれを型成形により製造する工程と、一対の内殻構成部材6における両側の内側フランジ部分6b同士を互いに接着し、さらに、一対の外殻構成部材5における両側の外側フランジ部分5b同士を、内側フランジ部分6bを介在した状態で、互いに接着することにより、バー部材2を形成する工程と、継手部材3の接合部12~16を、バー部材2における複数の閉空間21~25のそれぞれを構成する構成部分のうち型精度の高い部位に当接していた側の面に接着する工程とを含む。
【0120】
具体的には、本実施形態の補強部材1の製造方法では、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれの構成材料である少なくとも1枚の板状の繊維強化樹脂部材(好ましくは複数枚積層された繊維強化樹脂部材)を固定型41にセットする工程(上記の工程(a))と、繊維強化樹脂部材を固定型41と可動型42の間に挟み込んで成形することにより、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれを製造する工程(工程(b))と、一対の内殻構成部材6における両側の内側フランジ部分6b同士を互いに接着し、さらに、一対の外殻構成部材5における両側の外側フランジ部分5b同士を、内側フランジ部分6bを介在した状態で、互いに接着することにより、バー部材2を形成する工程(工程(c))と、継手部材3の接合部12~16を、バー部材2における複数の閉空間21~25のそれぞれを構成する構成部分のうち固定型41に当接していた側の面(具体的には、外殻構成部材5の内面5cおよび内殻構成部材6の内面6c)に接着する工程(d)とを含む。
【0121】
この製造方法では、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれを板状の繊維強化樹脂部材を用いて型成形により製造する際には、繊維強化樹脂部材における固定型41に接触していた側の面が反対側の面、すなわち、可動型42に接触していた面よりも滑らかに形成することが可能である。これは、可動型42に接触していた面は、可動型42の移動時の摩擦などにより粗くなるためである。さらに、継手部材3の接合部12~16を、バー部材2における複数の閉空間21~25のそれぞれを構成する構成部分のうち型精度の高い部位である固定型41に当接していた側の面(具体的には、外殻構成部材5の内面5cおよび内殻構成部材6の内面6c)に接着することにより、バー部材2における滑らかな面に継手部材3の接合部12~16を接着することが可能になる。その結果、バー部材2の各閉空間21~25を構成する構成部分と継手部材3の接合部12~16との接合状態のばらつきを抑えることができ、継手部材3からバー部材2への伝達ロスをより低減できる。
【0122】
(15)
本実施形態の補強部材1の製造方法では、バー部材2を形成する工程(上記の工程(c))において、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれを継手部材3の複数の接合部12~16に模した冶具にセットした状態で、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれのフランジ部を接着するのが好ましい。
【0123】
この場合、バー部材2を形成する工程において、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれを継手部材3の複数の接合部12~16に模した冶具、すなわち、複数の接合部12~16と略同一形状および略同一寸法の部分を有する冶具にセットした状態で、一対の内殻構成部材6および一対の外殻構成部材5のそれぞれのフランジ部を接着することにより、バー部材2を形成する。これにより、形成後のバー部材2の中央空間21および周辺空間22~25を構成する構成部分に実際の継手部材3の複数の接合部12~16を接着したときに、当該閉空間21~25の構成部分と接合部12~16との相対位置の誤差を低減することが可能である。
【0124】
(変形例)
(A)
図11に示される本発明の構造部材の変形例である補強部材1は、継手部材3の中央接合部12の両側面において、一対の内殻構成部材6の接合部分を避けるための開口部12aが形成されている。開口部12aは、例えば図7に示される中央接合部12の長手方向に形成されたスリットによって構成される。なお、他の構成については、図1~10に示される補強部材1の構成と共通している。
【0125】
この図11に示される変形例では、バー部材2の一対の内殻構成部材6の間の接合において使用される接着材7が多く付与されたときに、中央空間21の内部に接着材7が飛び出して固化した場合でも、中央接合部12に上記の開口部12aが形成されていることにより、中央空間21に飛び出た接着材7と中央接合部12との接触を避けることができる。その結果、接着材7の飛び出しによる継手部材3の取付け不良を防止することが可能である。
【0126】
また、継手部材3の中央接合部12の両側面に開口部12aが形成されているので、上記の実施形態の継手部材3よりも軽量化が可能である。
【0127】
なお、図11に示される変形例の構造においても、上記実施形態の作用効果を奏することが可能である。すなわち、バー部材2の外側から機械締結部4によるアクセスが可能であり、バー部材2の外殻構成部材5および内殻構成部材6を継手部材3に機械締結部4および接着材31の両方によって固定しているため、バー部材2と継手部材3との接合剛性を効率よく確保でき、バー部材2のエネルギー伝達性能を発揮することが可能である。また、バー部材2と継手部材3との接合構造において、バー部材2の肉厚バラツキを吸収するために、コーナー接合部13~16と内殻構成部材6の内側曲がり部分6aとの間に隙間を設けることで、製造バラツキによる不具合を抑制することが可能である。
【0128】
(B)
図12~13に示される本発明の構造部材の変形例では、継手部材3の接合部12~16は、バー部材2における閉空間21~25の構成部分を内外で重複することなく(すなわち一方の面に)接着されているため、ひずみエネルギー伝達が良く、かつ、接合部12~16の軽量効果が高い。
【0129】
これら図12~13の変形例においても、接合部12~16がバー部材2の内側に嵌合して接合されているので、バー部材2の外側から機械接合部4(図10参照)のアクセスが可能である。
【0130】
(C)
図14に示される本発明の構造部材の変形例では、バー部材2の外側から機械接合部4(図10参照)のアクセスが可能であり、継手部材3の接合部12~16は、バー部材2における閉空間21の構成部分(すなわち、図10の内殻構成部材6の内側曲がり部分6a)の両側の面に接着されているため、ひずみエネルギー伝達がさらに良好である。
【0131】
しかも、接合部12~16は、すべて中空の断面形状であるので、接合部12~16の軽量化(とくに、後述の図15の変形例と比較した軽量化)を確保できる。
【0132】
この変形例においても、接合部12~16がバー部材2の内側に嵌合して接合されているので、バー部材2の外側から機械接合部4(図10参照)のアクセスが可能である。
【0133】
(D)
図15に示される本発明の構造部材の変形例では、接合部12~16が中実の断面形状を有しているので、バー部材2より剛性が高くすることが容易であり、接合部12~16からバー部材2へのひずみエネルギーの伝達をさらに良好にすることが可能である。言い換えれば、この変形例では接合部12~16の剛性が高いため、より高い剛性を有するバー部材2を採用しても、接合部12~16からバー部材2への十分なエネルギー伝達が可能になる。
【0134】
この変形例においても、接合部12~16がバー部材2の内側に嵌合して接合されているので、バー部材2の外側から機械接合部4(図10参照)のアクセスが可能である。
【0135】
(E)
図16に示される本発明の構造部材の変形例では、継手部材3のコーナー接合部13~16が、中央空間21の外面(すなわち、内殻構成部材6の内側曲がり部分6aの外面)に接着されている。図16の変形例では、継手部材3は、中央接合部12の代わりに、外側接合部17を備えている。外側接合部17は、4つの周辺空間22~25の外面(すなわち、外殻構成部材5の外側曲がり部分5aの外面)に接着されている。
【0136】
この変形例では、接合部13~17がバー部材2の閉空間21~25の構成部分の片面に接着されている構造であるため、バー部材2の肉厚バラツキを吸収することが可能である。
【0137】
この変形例においても、上記実施形態と同様に、接合部13~17がバー部材2の閉空間21~25の構成部分にそれぞれ嵌合して接合されているので、接合部13~17からバー部材2へエネルギーの伝達を良好にすることが可能である。
【0138】
(F)
図17~18に示される本発明の構造部材の変形例では、継手部材3は、上述したすべての接合部、すなわち、中央接合部12、コーナー接合部13~16、および外側接合部17をすべて備えている。これらの変形例では、接合部12~17は、バー部材2の閉空間21~25の構成部分の両面に接着することが可能である。これにより、多数の接合部12~17からバー部材2へエネルギーの伝達をさらに良好にすることが可能である。
【0139】
しかも、図17に示される接合部12~17は、すべて中空の断面形状であるので、接合部12~17の軽量化(とくに、図18の変形例と比較した軽量化)を確保できる。
【0140】
さらに、図17に示される変形例では、接合部12~17が中空形状であるので、ブラインドリベットなどのカシメによってこれら接合部12~17をバー部材2へ締結することが可能である。
【0141】
図18に示される変形例は、図15に示される変形例と同様に、接合部12~16が中実の断面形状を有しているので、バー部材2より剛性が高くすることが容易であり、接合部12~16および外側接合部17からバー部材2へのひずみエネルギーの伝達をさらに良好にすることが可能である。言い換えれば、この変形例では接合部12~16の剛性が高いため、より高い剛性を有するバー部材2を採用しても、接合部12~16および外側接合部17からバー部材2への十分なエネルギー伝達が可能になる。
【0142】
これら図17~18の変形例においても、上記実施形態と同様に、接合部13~17がバー部材2の閉空間21~25の構成部分にそれぞれ嵌合して接合されているので、接合部13~17からバー部材2へエネルギーの伝達を良好にすることが可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 補強部材(構造部材)
2 バー部材
3 継手部材
4 機械締結部
5 外殻構成部材
6 内殻構成部材
7、31 接着材
11 取付部
12 中央接合部(接合部)
13、14、15、16 コーナー接合部(接合部)
17 外側接合部(接合部)
20 閉断面
21 中央空間(閉空間)
22、23、24、25 周辺空間(閉空間)
41 固定型
42 可動型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20