IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排ガス処理装置及び排ガス処理方法 図1
  • 特許-排ガス処理装置及び排ガス処理方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】排ガス処理装置及び排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20221122BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20221122BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B01D53/50 100
B01D53/68 100
B01D53/83 ZAB
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019051830
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020151657
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】川畑 秀駿
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】長尾 厚志
(72)【発明者】
【氏名】神谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】皆川 雅志
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-212925(JP,A)
【文献】特開2016-159258(JP,A)
【文献】特開2014-024052(JP,A)
【文献】特開2015-157253(JP,A)
【文献】特開平10-235140(JP,A)
【文献】特開2015-037764(JP,A)
【文献】特開2010-116298(JP,A)
【文献】特開2007-098187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34- 53/96
B01D 53/14- 53/18
F23J 13/00- 99/00
F23G 5/00
F23G 5/20- 5/22
F23G 5/32- 5/38
F23J 3/00- 7/00
F23J 11/00- 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の酸性ガスを除去する排ガス処理装置において、
排ガス中の煤塵を集塵するバグフィルタと、
前記バグフィルタの入口より上流側で排ガスにアルカリ剤を供給するアルカリ剤供給手段と、
前記バグフィルタで捕集した集塵灰の少なくとも一部を、循環集塵灰として該バグフィルタの入口より上流側で排ガスに供給する集塵灰循環供給手段と、
前記バグフィルタで捕集した集塵灰を循環集塵灰と廃棄分とに分配する集塵灰分配手段と、
前記バグフィルタで捕集した集塵灰の塩素濃度を測定する塩素濃度測定手段あるいは硫黄濃度を測定する硫黄濃度測定手段と、
測定された集塵灰の塩素濃度あるいは硫黄濃度に応じて前記集塵灰分配手段による循環集塵灰と廃棄分との分配を制御する集塵灰分配制御手段と、
を備え
前記集塵灰循環供給手段が集塵灰貯槽を有し、前記集塵灰分配制御手段が循環集塵灰と廃棄分への分配を制御する際に、集塵灰の塩素濃度が設定された塩素濃度基準値以下であるとき、又は集塵灰の硫黄濃度が設定された硫黄濃度基準値以下であるとき、全ての集塵灰を循環集塵灰として分配することとし、集塵灰貯槽内の循環集塵灰量に応じて集塵灰の塩素濃度基準値又は硫黄濃度基準値を調整することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記バグフィルタの入口側および出口側での排ガス中における酸性ガス濃度のうち少なくとも一方に基づき、前記アルカリ剤の供給量及び前記循環集塵灰の供給量のうち少なくとも一方を制御するアルカリ剤・循環集塵灰供給量制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
排ガス中の酸性ガスを除去する排ガス処理方法において、
排ガス中の煤塵を集塵するバグフィルタの入口より上流側で排ガスにアルカリ剤を供給すると共に、
前記バグフィルタで捕集した集塵灰を循環集塵灰と廃棄分とに分配し、循環集塵灰を該バグフィルタの入口より上流側で排ガスに供給するに際して、
前記バグフィルタで捕集した集塵灰の塩素濃度あるいは硫黄濃度に応じて循環集塵灰と廃棄分との分配を制御し、
循環集塵灰を供給するための集塵灰貯槽を有する場合、集塵灰を循環集塵灰と廃棄分とに分配する際に、集塵灰の塩素濃度が設定された塩素濃度基準値以下であるとき、又は集塵灰の硫黄濃度が設定された硫黄濃度基準値以下であるとき、全ての集塵灰を循環集塵灰として分配することとし、集塵灰貯槽内の循環集塵灰量に応じて集塵灰の塩素濃度基準値又は硫黄濃度基準値を調整することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項4】
前記バグフィルタの入口側および出口側での排ガスにおける酸性ガス濃度のうち少なくとも一方に基づき、前記アルカリ剤の供給量及び前記循環集塵灰の供給量のうち少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項に記載の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置及び排ガス処理方法に係り、特に、廃棄物焼却炉や溶融炉などの廃棄物の熱処理炉から排出される排ガス中の酸性ガス成分の除去処理を行う排ガス処理装置及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却炉などから排出される煤塵や酸性ガス(塩化水素ガスHCl、亜硫酸ガスSOなど)を含む排ガスから酸性ガスを除去するために、煤塵を捕集除去する集塵装置であるバグフィルタの手前の排ガスダクト内を流通する排ガスに消石灰等のアルカリ性の薬剤(アルカリ剤とも称する)を供給し、アルカリ剤をバグフィルタの濾布上に付着保持させて、排ガスダクト内と濾布上で酸性ガスとアルカリ剤とを接触させ中和反応により酸性ガスとアルカリ剤との反応生成物を生じさせ、この反応生成物をバグフィルタで煤塵とともに濾布で捕集することにより、排ガスから酸性ガスを除去することが行われている。
【0003】
バグフィルタの濾布表面には、捕集された煤塵(集塵灰という)、アルカリ剤と酸性ガスとの反応生成物及び未反応のアルカリ剤(これらをまとめて集塵灰等という)が付着している。
【0004】
濾布表面に付着したこれらの集塵灰等は、逆洗のためのパルスジェット噴射装置により筒状濾布材内面から外面に向けて噴射されるパルスジェット気流により表面から剥離され落下して、バグフィルタ下部に一旦堆積し、適宜外部へ排出される。パルスジェット噴射装置による噴射は、例えば所定時間ごとに行われる。
【0005】
アルカリ剤の供給量は、酸性ガスとの中和反応から想定される化学的な必要量以上の量(例えば当量比1.5程度)(当量比:実際に供給されるアルカリ剤の重量(又はモル数)/HCl、SO2との反応に必要なアルカリ剤の重量(又はモル数))を供給して酸性ガス成分の十分な除去を行い、外部へ排出する際の排ガス中の当該成分の規制値を充足させている。
【0006】
このような高めの当量比でアルカリ剤を供給すると、酸性ガスとの反応に寄与しなかった未反応のアルカリ剤が生じることとなり、集塵灰を排出する際に未反応のままバグフィルタから排出されることになる。
【0007】
そこで、バグフィルタにより捕集され回収された集塵灰等をバグフィルタの入口側の排ガス中に循環して供給する(集塵灰循環という)ことにより、集塵灰等に含まれる未反応のアルカリ剤を有効利用し、新たに供給するアルカリ剤の量を低減して運転コストを低減することが、特許文献1に開示されている。
【0008】
又、この集塵灰循環における制御方法として、特許文献2では、バグフィルタで捕集した集塵灰量に対する循環集塵灰量の比率である循環率をステップ状に増減させるように制御し、バグフィルタ出口のHCl濃度に応じて、新しく吹き込む中和剤(アルカリ剤)の量を変化させている。
【0009】
さらに、特許文献3では、新しく吹き込む脱塩剤(アルカリ剤)の量を原則一定として、バグフィルタ入口又は出口のHCl濃度に応じて集塵灰の循環率を大きく(数倍~十倍程度)変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-24052号公報
【文献】特許第5955622号公報
【文献】特許第6199329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
バグフィルタ入口・出口の排ガス中の酸性ガス濃度や、新しく吹き込むアルカリ剤の量と循環集塵灰量との比率などにより、バグフィルタで捕集される集塵灰中の未反応のアルカリ剤の量が変化する。
【0012】
しかしながら従来は、集塵灰循環に用いる集塵灰中の未反応のアルカリ剤の量に注目することなく集塵灰循環させるため、未反応のアルカリ剤が少ない場合、多量の集塵灰を循環する必要が生じる。さらに、集塵灰の循環のための設備が大型になってしまう。
【0013】
又、バグフィルタに流入する循環集塵灰量が多いため、濾布に付着する集塵灰量も多くなり、バグフィルタの圧力損失も大きくなってしまう等の問題点を有していた。
【0014】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、循環集塵灰の循環量を減らし、集塵灰循環設備の小型化、及び、バグフィルタの圧力損失の増加抑制を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
酸性ガスを中和するためのアルカリ剤、例えば消石灰は、次式の反応により酸性ガスと反応して排ガスから酸性ガスを除去するため、集塵灰には反応生成物の塩化カルシウムCaCl2、亜硫酸カルシウムCaSO3や硫酸カルシウムCaSO4が含まれる。そのため、反応生成物が多く含まれている塩素濃度や硫黄濃度が高い集塵灰中には未反応消石灰が少ない傾向がある。
Ca(OH)2 + 2HCl → CaCl2 + 2H2O …(1)
Ca(OH)2 + SO2 → CaSO3 + H2O …(2)
CaSO3 + 0.5O2 → CaSO4 …(3)
【0016】
従って、未反応消石灰を多く含む低塩素濃度の集塵灰を回収して循環させることで、循環集塵灰量を適正量として、従来よりも減少させ、集塵灰循環設備の小型化やバグフィルタの圧力損失の増加抑制を図ることが可能となる。
【0017】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、排ガス中の酸性ガスを除去する排ガス処理装置において、排ガス中の煤塵を集塵するバグフィルタと、前記バグフィルタの入口より上流側で排ガスにアルカリ剤を供給するアルカリ剤供給手段と、前記バグフィルタで捕集した集塵灰の少なくとも一部を、循環集塵灰として該バグフィルタの入口より上流側で排ガスに供給する集塵灰循環供給手段と、前記バグフィルタで捕集した集塵灰を循環集塵灰と廃棄分とに分配する集塵灰分配手段と、前記バグフィルタで捕集した集塵灰の塩素濃度を測定する塩素濃度測定手段あるいは硫黄濃度を測定する硫黄濃度測定手段と、測定された集塵灰の塩素濃度あるいは硫黄濃度に応じて前記集塵灰分配手段による循環集塵灰と廃棄分との分配を制御する集塵灰分配制御手段と、を備え、前記集塵灰循環供給手段が集塵灰貯槽を有し、前記集塵灰分配制御手段が循環集塵灰と廃棄分への分配を制御する際に、集塵灰の塩素濃度が設定された塩素濃度基準値以下であるとき、又は集塵灰の硫黄濃度が設定された硫黄濃度基準値以下であるとき、全ての集塵灰を循環集塵灰として分配することとし、集塵灰貯槽内の循環集塵灰量に応じて集塵灰の塩素濃度基準値又は硫黄濃度基準値を調整することを特徴とする排ガス処理装置により、前記課題を解決するものである。
【0018】
本発明は、又、排ガス中の酸性ガスを除去する排ガス処理方法において、排ガス中の煤塵を集塵するバグフィルタの入口より上流側で排ガスにアルカリ剤を供給すると共に、前
記バグフィルタで捕集した集塵灰を循環集塵灰と廃棄分とに分配し、循環集塵灰を該バグフィルタの入口より上流側で排ガスに供給するに際して、前記バグフィルタで捕集した集塵灰の塩素濃度あるいは硫黄濃度に応じて循環集塵灰と廃棄分との分配を制御し、循環集塵灰を供給するための集塵灰貯槽を有する場合、集塵灰を循環集塵灰と廃棄分とに分配する際に、集塵灰の塩素濃度が設定された塩素濃度基準値以下であるとき、又は集塵灰の硫黄濃度が設定された硫黄濃度基準値以下であるとき、全ての集塵灰を循環集塵灰として分配することとし、集塵灰貯槽内の循環集塵灰量に応じて集塵灰の塩素濃度基準値又は硫黄濃度基準値を調整することにより、同様に前記課題を解決するものである。
【0019】
ここで、前記バグフィルタの入口側および出口側での排ガス中における酸性ガス濃度のうち少なくとも一方に基づき、前記アルカリ剤の供給量及び前記循環集塵灰の供給量のうち少なくとも一方を制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、集塵灰の塩素濃度あるいは硫黄濃度を測定することにより集塵灰に含まれる未反応のアルカリ剤の量に応じて捕集した集塵灰の循環集塵灰と廃棄分との分配を制御するようにしたので、循環集塵灰の循環量を減らして、集塵灰循環設備の小型化、及び、バグフィルタの圧力損失の増加抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図
図2】同じく集塵灰分配制御の処理手順を示す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0024】
以下の実施形態の説明では、後述するバグフィルタにより捕集されて排出される煤塵(集塵灰)、未反応のアルカリ剤及び酸性ガスとアルカリ剤との反応生成物をまとめて集塵灰という。
【0025】
本実施形態は、図1に示す如く、排ガス中の酸性ガスを除去するための排ガス処理装置において、排ガスダクト8により図示しない廃棄物焼却炉等から送り込まれる排ガス中の煤塵を集塵するためのバグフィルタ10と、該バグフィルタ10の入口より上流側で排ガスにアルカリ剤、例えば消石灰を供給するためのアルカリ剤供給手段である消石灰供給装置20と、前記バグフィルタ10下方の集塵灰ホッパ(図示省略)下部から排出された集塵灰を廃棄又は循環するために分配する集塵灰分配装置32と、該集塵灰分配装置32で分配された集塵灰を廃棄灰処理系統に送って廃棄するために例えば図の右方向に搬送する、例えばスクリューコンベアで構成される廃棄集塵灰搬送装置34と、前記集塵灰分配装置32で分配された集塵灰を回収して循環供給するために例えば図の左方向に搬送する、例えばスクリューコンベアで構成される循環集塵灰搬送装置36と、該循環集塵灰搬送装置36によって循環供給される集塵灰を一時的に貯えておくための、例えばサイロで構成される集塵灰貯槽38と、該集塵灰貯槽38に貯えられた集塵灰をバグフィルタ10の入口より上流側で排ガスダクト8に供給するための循環集塵灰供給装置40と、バグフィルタ10から排出された集塵灰の塩素濃度を測定する塩素濃度計50と、前記集塵灰貯槽38の集塵灰の層高レベルを測定するレベル計52と、前記塩素濃度計50の塩素濃度測定値及びレベル計52のレベル測定値に応じて前記集塵灰分配装置32を制御する集塵灰分配制御装置54と、前記バグフィルタ10の出口側の排ガス中の酸性ガス(例えばHCl又はSO2)濃度を測定する酸性ガス濃度計60と、前記バグフィルタ10の入口側の排ガス中の酸性ガス濃度を測定する酸性ガス濃度計62と、該酸性ガス濃度計60および62の酸性ガス濃度測定値のうち少なくとも一方によって前記消石灰供給装置20による消石灰の供給量、及び、前記循環集塵灰供給装置40による循環集塵灰の供給量のうち少なくとも一方を制御する消石灰・循環集塵灰供給量制御装置64とを備えたものである。
【0026】
前記消石灰供給装置20としては、例えば消石灰を収容するホッパとテーブルフィーダなどの切出量を制御可能な切出装置が使用できる。
【0027】
前記集塵灰分配装置32は、例えばスクリューコンベアを用いて、図の左右の2つの搬送装置へ向けて集塵灰を送る方向を切り替えて、集塵灰を循環集塵灰搬送装置36により循環供給する分(図の左側)と、廃棄集塵灰搬送装置34により廃棄灰処理系統に送って廃棄する分(図の右側)とに分配する。あるいは、廃棄集塵灰搬送装置34と循環集塵灰搬送装置36を、例えば長いコンベアを用いて一体化して、コンベアの搬送方向を切り替えることで、集塵灰の供給先を切り替えることも可能である。
【0028】
前記循環集塵灰搬送装置36の出口側に設けた集塵灰貯槽38には、集塵灰貯槽38内の循環集塵灰量として貯留されている集塵灰の層高を測定するレベル計52が設けられている。レベル計52は、例えば所定高さごとに水平方向に設けた多数のプロペラの回転の有無により層高レベルを測定するものや、ロードセルで集塵灰貯槽38の重量を測るものや、マイクロ波や赤外線を上方から投射して、その反射で層高レベルを測定するもの等を用いることができる。このレベル計52の出力により循環量を制御することで、集塵灰貯槽38内の集塵灰のレベルを一定範囲内に維持して、循環集塵灰搬送装置36の運転状態に係わらず、集塵灰が循環集塵灰供給装置40に供給されるようにすることができる。
【0029】
前記循環集塵灰供給装置40としては、テーブルフィーダ等の切出量を制御可能な切出装置を用いることができる。なお、排ガスダクト8における該循環集塵灰供給装置40の位置は、図に例示した消石灰供給装置20の下流側でも上流側でも良い。
【0030】
前記循環集塵灰搬送装置36、集塵灰貯槽38及び循環集塵灰供給装置40が集塵灰循環供給手段を構成している。
【0031】
前記塩素濃度計50としては、例えば蛍光X線分光分析装置など、集塵灰中の塩素濃度を半連続的に測定できるものを用いる。なお、反応生成物である塩化カルシウムCaCl2濃度を直接又は間接的に測るものを制御に用いることもできる。また、未反応消石灰Ca(OH)2濃度についても、例えば未反応消石灰Ca(OH)2濃度を間接的に測定するpH計などを制御に用いることもできる。
【0032】
実施形態の排ガス処理装置は、廃棄物焼却炉(図示省略)などから排出され、煤塵や酸性ガス(HCl、SO2)を含む燃焼排ガスから酸性ガスを除去する。
【0033】
具体的には、煤塵を捕集するバグフィルタ10手前の排ガスダクト8内を流通する排ガスに、例えば消石灰や重曹でなるアルカリ剤(実施形態では消石灰)を供給し、アルカリ剤をバグフィルタ10の筒状濾布(図示省略)上に付着保持させて、排ガスダクト8内と濾布で酸性ガスとアルカリ剤とを接触させ、中和反応により酸性ガスの反応生成物を生じさせ、これを濾布で捕集して酸性ガスを除去する。
【0034】
そして、バグフィルタ10に流入する排ガスに含まれる煤塵、消石灰、酸性ガスとの反応生成物(これらをまとめて集塵灰という)の大部分が濾布上に付着する。
【0035】
又、濾布は、バグフィルタ10の上部に配設されたパルスジェット噴射装置(図示省略)により濾布の内側から例えば周期的に噴射されるパルスジェット気流により、周期的に逆洗され、集塵灰が濾布表面から剥離され落下して、バグフィルタ10下部の集塵灰ホッパに堆積し、適宜集塵灰切出装置(図示省略)により排出される。
【0036】
本実施形態においては、循環集塵灰供給装置40により、バグフィルタ10で捕集した集塵灰をバグフィルタ10の入口より上流側で排ガスに吹き込む集塵灰循環を行うことにより、未反応の消石灰を有効利用して、新たに供給する消石灰の量を低減できる。
【0037】
以下、図2を参照して本実施形態における集塵灰分配制御の具体的な処理手順を説明する。
【0038】
まず、処理を開始する前にバグフィルタ10から排出される集塵灰を循環集塵灰として集塵灰貯槽38へ搬送するように分配するか、廃棄分として分配するかという分配の判定を行う際に基準とする集塵灰の塩素濃度の基準値を設定する。集塵灰の塩素濃度の測定値が基準値以下の場合は、集塵灰中の反応生成物である塩化カルシウム濃度が低く未反応消石灰が多く含まれるため集塵灰を循環集塵灰として用いるように分配し、集塵灰の塩素濃度の測定値が基準値より高い場合は、集塵灰の塩化カルシウム濃度が高く未反応消石灰が少ないため集塵灰を廃棄分として分配することとなる。
【0039】
ステップ100で、排ガスダクト8内へ消石灰のみを供給することで、酸性ガスを除去して、バグフィルタ10の出口側の酸性ガス濃度計60で測定される出口側での排ガス中における酸性ガス濃度を規定値以下にしつつ、ステップ110で集塵灰を全量、循環集塵灰として用いるように集塵灰貯槽38側に送って、集塵灰を集塵灰貯槽38に十分に(例えば集塵灰層高レベル50%まで)貯める。
【0040】
ステップ120でレベル計52により測定される集塵灰貯槽38内の集塵灰の層高レベルが例えば50%以上となり、集塵灰が十分に貯まったとステップ130で判定された時は、ステップ140に進み、循環集塵灰供給装置40による集塵灰貯槽38の循環集塵灰の排ガスダクト8への供給、即ち循環集塵灰の供給をするとともに、バグフィルタ10から切り出した集塵灰の分配、即ち、集塵灰の分配を開始する。この時、消石灰・循環集塵灰供給量制御装置64によりバグフィルタ10入口又は出口の少なくとも1つの排ガス中の酸性ガス濃度測定値に基づき、消石灰供給量又は循環集塵灰供給量の少なくとも1つを調整し、酸性ガス濃度計60で測定されるバグフィルタ出口側での排ガス中における酸性ガス濃度が規制値以下となるように制御する。
【0041】
ステップ150で塩素濃度計50により集塵灰中の塩素濃度を測定し、ステップ160で集塵灰中の塩素濃度が基準値(例えば25重量%)以下であるか否かを判定する。基準値以下の時は、集塵灰中の反応生成物の塩化カルシウムCaCl2含有量が低く、未反応消石灰の含有率が高いと判定し、集塵灰を循環集塵灰として用いるようにステップ170で集塵灰貯槽38側に送って循環集塵灰として供給する。
【0042】
一方、ステップ160で集塵灰中の塩素濃度が基準値より高い時には、塩化カルシウムCaCl2含有率が高く、未反応消石灰の含有率が低いと判定して、ステップ180に進み、集塵灰を廃棄する。ステップ180に進む際、塩素濃度計50から集塵灰分配装置32までの搬送にかかる時間を考慮して、一定時間後にステップ180に進むようタイマー制御を加えてもよい。かくのごとく、集塵灰の塩素濃度に基づき、集塵灰を循環集塵灰と廃棄分とに分配する。
【0043】
ステップ170又は180終了後、ステップ150に戻って集塵灰中の塩素濃度に基づき、集塵灰を分配するように制御を繰り返す。
【0044】
前記ステップ160の集塵灰を循環供給するか廃棄するか分配の判定を行う際の基準とする塩素濃度基準値は、例えば集塵灰貯槽38のレベル計52の集塵灰層高レベル測定値によって次の表1のように変化させることができる。
【0045】
【表1】
【0046】
即ち、集塵灰貯槽38の集塵灰層高レベルが20%以下である場合には、全て集塵灰貯槽38へ送り、循環集塵灰の貯留量を増加させる。
【0047】
集塵灰層高レベルが20~40%の間にある場合には、基準値を例えば27重量%として、標準の基準値とした25重量%に比べて高くして、集塵灰を循環集塵灰とする割合を多くする。その結果、集塵灰貯槽38の循環集塵灰貯留量を増加させ、適量で貯留することができる。
【0048】
集塵灰層高レベルが40~60%の間にある場合には、基準値は標準の基準値25重量%を用いる。
【0049】
一方、集塵灰層高レベルが60~80%の間にある場合には、基準値を例えば23重量%として、標準の基準値の25重量%に比べて低くして、集塵灰を循環集塵灰とする割合を少なくする。その結果、集塵灰貯槽38の循環集塵灰貯留量が過大とならず、適量で貯留することができる。
【0050】
集塵灰層高レベルが80%以上である場合には、循環集塵灰をさらに貯留する必要がないため全て廃棄する。
【0051】
これにより、集塵灰貯槽38に貯留する集塵灰量を制御して、過大、過小となるのを防ぎ、適量で貯留することができる。
【0053】
また、前記実施形態においては、中和剤であるアルカリ剤として消石灰が用いられていたが、中和剤の種類は、これに限定されず、例えば重曹やドロマイトであっても良い。
【0054】
更に、塩素濃度計による塩素濃度測定にかわり、硫黄濃度計による硫黄濃度測定による制御を行う場合、硫黄濃度計には、蛍光X線分光分析装置など、集塵灰中の硫黄濃度を半連続的に測定できるものを用いる。分配の判断は塩素濃度基準値にかわり、硫黄濃度基準値により行う。
【符号の説明】
【0055】
8…排ガスダクト
10…バグフィルタ
20…消石灰供給装置
32…集塵灰分配装置
34…廃棄集塵灰搬送装置
36…循環集塵灰搬送装置
38…集塵灰貯槽
40…循環集塵灰供給装置
50…塩素濃度計
52…レベル計
54…集塵灰分配制御装置
60、62…酸性ガス濃度計
64…消石灰・循環集塵灰供給量制御装置
図1
図2