(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
A01M 29/32 20110101AFI20221122BHJP
【FI】
A01M29/32
(21)【出願番号】P 2019054903
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-313005(JP,A)
【文献】実開昭54-148264(JP,U)
【文献】登録実用新案第3088389(JP,U)
【文献】登録実用新案第3155156(JP,U)
【文献】特開2009-153443(JP,A)
【文献】特開2000-032901(JP,A)
【文献】特開2006-075036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、前記軸部から斜め下方に放射状に延びる枝部とを備える鳥害防止具であって、
前記軸部は、内部に屈曲部を有する貫通孔が設けられ、
前記枝部は、前記貫通孔に挿入され、前記貫通孔に沿って前記屈曲部で屈曲するようにして前記軸部に取り付けられている、
鳥害防止具。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記軸部の側部に設けられた2つの出入口のそれぞれから斜め上方に延びて前記軸部の内部で前記屈曲部において連結し、前記屈曲部は前記軸部の軸線方向に上向きの突状である、
請求項1に記載の鳥害防止具。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記軸部の側部に設けられた2つの出入口のそれぞれから斜め上方に延び、前記軸部の内部で連結し、前記屈曲部は前記軸部の軸線に向かう方向に突状である、
請求項1又は2に記載の鳥害防止具。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記軸部における軸線方向又は径方向の異なる位置に、互いに連通しないように複数設けられ、
前記枝部はそれぞれの貫通孔に挿通されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【請求項5】
前記軸部と前記枝部とを含む鳥害防止ユニットを複数備え、
前記軸部同士は、互いに同軸に連結可能である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【請求項6】
互いに連結された前記軸部は、互いに相対回転可能である、
請求項5に記載の鳥害防止具。
【請求項7】
前記枝部の先端は前記貫通孔の径よりも幅広である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の鳥害防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
カラス等の鳥類が電柱に設置した設備に営巣すると、鳥類の糞が電気装柱物に付着するといった鳥害が発生する。また、例えばカラスが針金等を電柱の設備に運んできた場合には、この針金が電線に接触して、短絡が発生する可能性がある。
このため、軸部と、軸部から斜め下方に放射状に延びる枝部(飛来防止棒)とを備えた傘の骨組み状の鳥害防止具、いわゆる、アンブレラボーン形の鳥害防止具を腕金に取り付けることで、鳥類の飛来及び営巣を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、腕金に取り付けた後、広がっている枝部の位置によっては高圧の縁線に接触してしまうことがあるので、従来、取付後を想定して邪魔になる枝部は予め撤去・切断しておかなければならない。
しかし、どの枝部が縁線に対して接近して邪魔になるのかを取付前に判断することは容易ではない。取付後に、想定と違っていた場合、再度、やり直しをしなければならず、鳥害防止具の取付作業に時間を要する。また、枝部が高圧の縁線に接触していた場合、塩害によって地絡故障の原因になる可能性がある。一方、高圧の縁線との離隔を意識しすぎて、枝部を撤去しすぎたり、多めに切断した場合、鳥害防止具としての効果が減少する。
【0005】
本発明は、枝部を適切な位置に容易に設置可能な鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するために本発明は、軸部と、前記軸部から斜め下方に放射状に延びる枝部とを備える鳥害防止具であって、前記軸部は、内部に屈曲部を有する貫通孔が設けられ、前記枝部は、前記貫通孔に挿入され、前記貫通孔に沿って前記屈曲部で屈曲するようにして前記軸部に取り付けられている、鳥害防止具を提供する。
【0007】
(2)前記貫通孔は、前記軸部の側部に設けられた2つの出入口のそれぞれから斜め上方に延びて前記軸部の内部で前記屈曲部において連結し、前記屈曲部は前記軸部の軸線方向に上向きの突状であってもよい。
【0008】
(3)前記貫通孔は、前記軸部の側部に設けられた2つの出入口のそれぞれから斜め上方に延び、前記軸部の内部で連結し、前記屈曲部は前記軸部の軸線に向かう方向に突状であってもよい。
【0009】
(4)前記貫通孔は、前記軸部における軸線方向又は径方向の異なる位置に、互いに連通しないように複数設けられ、前記枝部はそれぞれの貫通孔に挿通されていてもよい。
【0010】
(5)前記軸部と前記枝部とを含む鳥害防止ユニットを複数備え、前記軸部同士は、互いに同軸に連結可能であってもよい。
【0011】
(6)互いに連結された前記軸部は、互いに相対回転可能であってもよい。
【0012】
(7)前記枝部の先端は前記貫通孔の径よりも幅広であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、枝部を適切な位置に容易に設置可能な鳥害防止具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の鳥害防止具1の設置状態を説明する側面図である。
【
図2】鳥害防止具1の設置状態を説明する上面から見た模式図である。
【
図3】鳥害防止ユニット100の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態の鳥害防止具1について図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態の鳥害防止具1(1A,1B)の設置状態を説明する側面図で、
図2は、鳥害防止具1(1A,1B,1C,1D)の設置状態を説明する上面から見た模式図である。
【0016】
図1に示すように鳥害防止具1(1A,1B)は、いわゆるアンブレラボーン形の鳥害防止具であり、それぞれ、軸部2と、その軸部2から斜め下方に放射状に延びる枝部3とを含む鳥害防止ユニット100A,100B,100Cが、同軸上に複数段連結されている。さらに鳥害防止具1は、連結された鳥害防止ユニット100A,100B,100Cの上端に取り付けられる円錐形状の頂部5と、下端に取り付けられる下端にねじ部4aが設けられた固定部4とを備える。
【0017】
固定部4は、支持金具10によって電柱20の腕金20Aに取り付けられる部分である。支持金具10は、L字状に屈曲した支持部材11と、L字状に屈曲したボルト部材12と三角体状の押え部材14と備える。
【0018】
支持部材11は、水平部11aと鉛直部11bとを有し、水平部11aの一端側には、固定部4の下部のねじ部4aが挿通される開口11cが設けられている。
固定部4のねじ部4aを開口11cに挿通し、ナット15をねじ部4aに締結することで、支持部材11に鳥害防止具1が固定される。
また、支持部材11の水平部11aの他端側は、腕金20Aの上面に載置され、鉛直部11bは腕金20Aの側面に沿って下方に延びている。
【0019】
ボルト部材12は、一端が支持部材11の水平部11aの下面に係止され、他端は、雄ねじ部12aとなっている。
断面矩形の腕金20Aの角部に、支持部材11の水平部11aと鉛直部11bとの間の角部の内面側を当接させる。そして、ボルト部材12の雄ねじ部12aを、鉛直部11bの下部に設けられた孔11dから外面側に突出させる。そして、ボルト部材12の雄ねじ部12aにナット13を締結することにより、支持金具10を介して、鳥害防止具1が腕金20Aに支持される。
なお、押え部材14は、上面を腕金20Aが下面に当接し、側面が鉛直部11bの内面に当接するようにして取り付けられて腕金20Aへの支持金具10の傾きを防止している。
【0020】
腕金20Aは、
図2に示す電柱20に片持ち支持され、略水平状態に配置されている。
図2に示す形態では、一対の腕金20Aが、電柱20を挟んで略平行に配置されている。それぞれの腕金20Aには、電線を保持するための三つのピン碍子Piが略等間隔で配置されている。
【0021】
(鳥害防止具1)
鳥害防止具1は、それぞれの腕金20Aにおいて、隣接するピン碍子Piの中央部に配置されている。例えば
図2には、1本の腕金20Aに2つの鳥害防止具1が配置され、合計4つの鳥害防止具1A,1B,1C,1Dが設けられている。
【0022】
鳥害防止具1は、
図1に示すように、鳥害防止ユニット100(100A,100B,100C)が、同軸上に複数段連結されている。
図3は1つの鳥害防止ユニット100の部分拡大図である。それぞれの鳥害防止ユニット100A,100B,100Cの構成は同じであるので、以下、まとめて鳥害防止ユニット100として説明する。
【0023】
鳥害防止ユニット100は、軸部2と、2本の枝部3とを備える。枝部3は、一つの鳥害防止ユニット100に2本取り付けられている。それぞれの枝部3は後述の貫通孔23に挿通されて、両端が軸部2の貫通孔23から2方向に放射状に延びるので、枝部3は一つの鳥害防止ユニット100の軸部2から合計4方向に延びている。
【0024】
軸部2は軸線L0を中心として鉛直方向に延びる円柱部材である。
(上端の連結孔21)
軸部2の上端には、連結孔21が設けられている。連結孔21は、小径孔21aと小径孔21aの下方に設けられた大径孔21bとを有する。小径孔21aの側面の2か所から外径側に溝部21cが延びている。2か所の溝部21cは大径孔21bの内側面と同じ位置まで径方向に延び、実施形態では軸線L0に対して対称な位置、すなわち一直線上に設けられている。
【0025】
軸部2の下端には、連結部22が設けられている。連結部22は、小径孔21aとほぼ同径の円柱部22aと、円柱部22aの下端の側面の2か所から外径側に延びる突部22bとを有する。2か所の突部22bは、軸線L0に対して対称な位置、すなわち一直線上に設けられている。
【0026】
ここで、溝部21cの径方向長さと突部22bの径方向長さとは略等しい。また、連結部22の軸線L0方向の長さ(円柱部22aの軸線L0方向の長さ)と、連結孔21の軸線L0方向の長さ(深さ,小径孔21aと大径孔21bとを合わせた長さ)と略等しい。さらに、突部22bの軸線L0方向の長さと大径孔21bの軸線L0方向の長さ(深さ)とは略等しい。
【0027】
すなわち、例えば鳥害防止ユニット100Cの連結孔21に、その上に配置される鳥害防止ユニット100Bの連結部22を挿入する。
そのとき、溝部21cに突部22bが入るように位置合わせし、円柱部22aを小径孔21aに挿入する。そして、円柱部22a下端が連結孔21の大径孔21bの底面に到達するまで押し込むと、突部22bが溝部21cから大径孔21b内に入り込み、大径孔21b内で軸線L0を中心として回転可能となる。
そうすると、連結孔21内で連結部22が回転可能、すなわち下方の鳥害防止ユニット100Cの軸部2に対して、上方の鳥害防止ユニット100Bの軸部2が回転可能となる。
ただし、このとき、実施形態においては連結部22と連結孔21との間の隙間はわずかであるので摩擦力が発生し、ある程度力を入れない限り、上方の鳥害防止ユニット100Bが下方の鳥害防止ユニット100Cに対して自由に回転することはない。
【0028】
軸部2には、内部に屈曲部23aを有する貫通孔23が設けられている。貫通孔23は、軸部2の側部に設けられた2つの出入口23bのそれぞれから斜め上方に延びて軸部2の内部で、軸線L0方向に上向き突状の屈曲部23aにおいて連結された孔である。
また、実施形態では、貫通孔23の長さを確保するために、軸部2の側面から貫通孔23の外周を覆うように円筒部材24が斜め下方に延び、出入口23bは円筒部材の先端に設けられている。
実施形態で貫通孔23は2本設けられており、それぞれの貫通孔23は、互いに連通しないように軸線L0方向の異なる位置(実施形態では上下)に設けられている。
図3において上部の貫通孔を貫通孔23U、下部の貫通孔を貫通孔23Dとして示す。
【0029】
枝部3は可撓性であって、円柱部3aと、円柱部3aの両端に設けられた幅広部3bとを有する。
円柱部3aの径は貫通孔23の径と略等しく、円柱部3aは貫通孔23を挿通可能である。
幅広部3bの軸線L1と直交する方向の幅は、貫通孔23の径より大きいので、幅広部3bはそのままの状態では貫通孔23を挿通することはできない。しかし、幅広部3bは、軸線L1を中心として折り曲げ可能で、折り曲げることにより軸線L1と直交する幅が狭くなり、そうすると、幅広部3bは貫通孔23を挿通可能となる。
【0030】
枝部3の一端側の幅広部3bを折り曲げ、一方の出入口23bから貫通孔23内に挿入する。
そして、一端側の幅広部3bが奥に入るように枝部3を貫通孔23内に押し込んでいくと、幅広部3bは斜め上方に向かって進み、屈曲部23aにおいて方向転換し、さらに斜め下方に向かって進み、他方の出入口23bから外部へと出てくる。
すなわち挿入された枝部3は、貫通孔23の内部の屈曲部23aで屈曲するようにして、軸部2に取り付けられる。
なお、実施形態では、軸部2の側面から貫通孔23の外周を覆うように円筒部材24が斜め下方に延びているので、枝部3が可撓性を有していても水平方向への広がりが保たれる。
外部へ出た一端側の幅広部3bは、折り曲げた状態から広がりもとの形状に戻る。その一端側の幅広部3bを引っ張ると、枝部3の一端側は貫通孔23からさらに外方に延び、他端側が貫通孔23の内部へと引っ張られる。しかし、他端側の幅広部3bも折り曲げない限り、貫通孔23内へ挿入しないので、枝部3が貫通孔23から抜け出すことがない。
【0031】
そして、枝部3の一端又は他端のいずれかを引っ張ることにより、枝部3における、貫通孔23の一方の出入口23bから延びる長さと、他方の出入口23bから延びる長さとを自在に調節することができる。
【0032】
図1に示すように、例えば2つの鳥害防止具1Aと鳥害防止具1Bとが近接して配置されている場合、枝部3における鳥害防止具1A,1B同士が近接している側を短くし、他側を長くすることにより、水平方向での鳥害防止具1A,1Bの枝部3同士の衝突や重なり防止を容易に行うことができる。
【0033】
また、1つの鳥害防止具1において上下に設けられた鳥害防止ユニット100A,100B,100C間においては、互いに軸線L0を中心として回転させることで、それぞれの枝部3が上から見たときに水平方向で重ならないようにすることができる。
図2に一例を示す。図中、鳥害防止ユニット100Aの枝部3を実線、鳥害防止ユニット100Bの枝部3を鎖線、鳥害防止ユニット100Cの枝部3を一点鎖線で示す。
図示するように、鳥害防止ユニット100Aの枝部3(100A)と、鳥害防止ユニット100Bの枝部3(100B)とを互いに相対回転させることで、上から見たときに鳥害防止ユニット100Aの枝部3(100A)と、鳥害防止ユニット100Bの枝部3(100B)と、鳥害防止ユニット100Cの枝部3(100C)とが水平方向に重ならないようにすることを、容易に行うことができる。
【0034】
以上、実施形態によると、鳥害防止具1を腕金20Aに固定した後に、軸部2から延びる枝部3の長さを最適に調節することができる。したがって、縁線の状態を見ながら、軸部2から延びる枝部3の長さを容易に微調整できる。ゆえに、邪魔になる可能性のある枝部3を予め撤去・切断する必要がない。
軸部2から延びる枝部3の長さや位置を最適な状況にすることができるので、無駄なく効率的に鳥害防止具1を配置することができる。したがって鳥害防止具1の所定箇所への設置数を減少させることができる。
縁線の状態を見ながら、軸部2から延びる枝部3の長さを容易に微調整できるので、鳥害防止具1の設置作業時間を短縮することがきる。さらに簡単な構造であるのでコストを低減することができる。
【0035】
(変形形態)
(1)上述の実施形態で貫通孔23は、軸部2の側部に設けられた2つの出入口23bのそれぞれから斜め上方に延び、軸部2の内部で連結し、屈曲部23aは軸部2の軸線L0に向かう方向に突状である。そして、貫通孔23は、軸部2における鉛直方向の異なる位置に、互いに連通しないように複数設けられている。
ただしこれに限定されない。
図4は貫通孔23の位置の変形形態を示す図である。図示するように貫通孔23は、軸部2における水平方向の異なる位置に、互いに連通しないように複数設けてもよい。
(2)上述の実施形態では、複数の鳥害防止ユニット100を備える構成としたが、これに限定されず、鳥害防止具1は1つの鳥害防止ユニット100のみを備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1,1A,1B,1C,1D 鳥害防止具
2 軸部
3 枝部
3a 円柱部
3b 幅広部
4 固定部
20 電柱
20A 腕金
21 連結孔
21a 小径孔
21b 大径孔
21c 溝部
22 円柱部
22 連結部
22a 円柱部
22b 突部
23,23D,23U 貫通孔
23a 屈曲部
23b 出入口
100,100A,100B,100C 鳥害防止ユニット