(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス配索装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20221122BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221122BHJP
B60N 2/06 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
H02G11/00
B60R16/02 620A
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2019091341
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】小原 一仁
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-93016(JP,A)
【文献】特開2017-93015(JP,A)
【文献】特開2016-220518(JP,A)
【文献】特開2019-22379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
B60R 16/02
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスが挿通される挿通孔が形成されたレールと、前記レールに対して前記ワイヤーハーネスと共にスライド移動するスライダと、を備えるワイヤーハーネス配索装置であって、
前記挿通孔内の前記ワイヤーハーネスに沿って配され、前記スライド移動する方向とは異なる方向への前記ワイヤーハーネスの移動を規制し、かつ、前記スライダのスライド移動に伴って前記挿通孔内を移動するハーネス規制部を備え
、
前記ハーネス規制部は、帯状の金属からなる薄肉で弾性変形可能な板バネであり、前記挿通孔内の前記ワイヤーハーネスに沿って前記スライド移動する方向に延びており、
前記板バネは、自然状態では一定の曲率で曲げられており、直線に引き伸ばすときに生じる戻り力は一定となっており、
前記板バネは、前記スライダの移動に応じて弾性変形可能とされ、前記板バネの端部は前記スライダ側に固定されている、ワイヤーハーネス配索装置。
【請求項2】
前記ハーネス規制部は、前記スライダの移動に応じて弾性変形可能とされ、前記ハーネス規制部の端部は前記スライダ側に固定されている、請求項1に記載のワイヤーハーネス配索装置。
【請求項3】
前記レールの外側には、前記ハーネス規制部を巻き取る巻取部が設けられている、請求項1または請求項2に記載のワイヤーハーネス配索装置。
【請求項4】
前記レールの外側に導出された前記ワイヤーハーネスの余長部が収容される余長収容部を備え、
前記ワイヤーハーネスは、前記余長収容部内に2周以上の渦巻き状に巻かれている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス配索装置。
【請求項5】
前記ワイヤーハーネスは、複数の電線と、前記複数の電線を収容する外装体とを備え、前記外装体は、幅方向よりも上下方向が長くなる向きで前記レール内に挿通されており、
前記ハーネス規制部は、前記ワイヤーハーネスの倒れを抑制する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のワイヤーハーネス配索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ワイヤーハーネス配索装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、スライド可能なシートが備えられており、このシートには電動リクライニング装置やシートヒータなどの電装品が装備されているものがある。これらの電装品と車体側の機器等との間を接続するワイヤーハーネスは、シートと車体との間でシートのスライドに追従するため、シートと車体との間にワイヤーハーネスの余長を吸収する構成が備えられている。特許文献1では、シート下のシートレール内を仕切った側部空間にシート脚部及びプロテクタで外装されたワイヤーハーネスがスライド自在に収容されている。シートレールの側部に隣接した位置には余長吸収ボックスが配置されており、シート脚部がスライドした際のワイヤーハーネスの余長部はU字状に折り返して余長吸収ボックスに収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートをスライドさせるためのレール内にワイヤーハーネスを配索する構成では、レール内のワイヤーハーネスが所定の配索経路から外れると、シートのスライドの際に、ワイヤーハーネスの余長部が余長吸収ボックスに適切に収容されず、円滑なシートのスライドに支障が生じることが懸念される。特許文献1では、シートレールに側部空間を形成することでシートレール内におけるワイヤーハーネスの配索経路を規制しているが、シートレールに側部空間を形成すると、シートレールの内部形状が複雑になるとともに、シートレール内の空間を効率的に利用することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載されたワイヤーハーネス配索装置は、ワイヤーハーネスが挿通される挿通孔が形成されたレールと、前記レールに対して前記ワイヤーハーネスと共にスライド移動するスライダと、を備えるワイヤーハーネス配索装置であって、前記挿通孔内の前記ワイヤーハーネスに沿って配され、前記スライド移動する方向とは異なる方向への前記ワイヤーハーネスの移動を規制し、かつ、前記スライダのスライド移動に伴って前記挿通孔内を移動するハーネス規制部を備える。
【発明の効果】
【0006】
本明細書に記載された技術によれば、レール内のワイヤーハーネスの配索経路を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態のハーネス配索装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、スライダがレールの後方側に配された状態のハーネス配索装置を示す平面図である。
【
図4】
図4は、スライダがレールの前方側に配された状態のハーネス配索装置を示す平面図である。
【
図5】
図5は、ガイド部材がスライダに固定された状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ハーネス規制部が巻取部に巻き取られる状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、レール及び余長収容部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のワイヤーハーネス配索装置は、ワイヤーハーネスが挿通される挿通孔が形成されたレールと、前記レールに対して前記ワイヤーハーネスと共にスライド移動するスライダと、を備えるワイヤーハーネス配索装置であって、前記挿通孔内の前記ワイヤーハーネスに沿って配され、前記スライド移動する方向とは異なる方向への前記ワイヤーハーネスの移動を規制し、かつ、前記スライダのスライド移動に伴って前記挿通孔内を移動するハーネス規制部を備える。
上記構成によれば、ハーネス規制部により、レール内のワイヤーハーネスの配索経路を規制することができる。また、ハーネス規制部は、スライダの移動に伴って挿通孔内を移動するため、ハーネス規制部がスライダの移動の障害物となることを抑制することができる。
【0009】
(2)前記ハーネス規制部は、前記スライダの移動に応じて弾性変形可能とされ、前記ハーネス規制部の端部は前記スライダ側に固定されている。
このようにすれば、簡素な構成で、ワイヤーハーネスの配索経路を規制しつつ、弾性変形によりハーネス規制部がスライダの移動の障害物となることを抑制することができる。
【0010】
(3)前記レールの外側には、前記ハーネス規制部を巻き取る巻取部が設けられている。
このようにすれば、簡素な構成で、ハーネス規制部をレールの外側に収容することができる。
【0011】
(4)前記レールの外側に導出された前記ワイヤーハーネスの余長部が収容される余長収容部を備え、前記ワイヤーハーネスは、前記余長収容部内に2周以上の渦巻き状に巻かれている。
このようにすれば、余長収容部内にワイヤーハーネスが渦巻き状に収容されるため、例えば、ワイヤーハーネスが長尺の収容ボックス内でU字状に折り返して収容される構成と比較して余長収容部の長さを短くすることが可能になる。
【0012】
(5)前記ワイヤーハーネスは、複数の電線と、前記複数の電線を収容する外装体とを備え、前記外装体は、幅方向よりも上下方向が長くなる向きで前記レール内に挿通されており、前記ハーネス規制部は、前記ワイヤーハーネスの倒れを抑制する。
ワイヤーハーネスを幅方向よりも上下方向が長くなる向きでレール内に挿通すれば、幅方向よりも上下方向が短くする構成と比較して、ワイヤーハーネスの経路が曲がる部分の外径を小さくできて小型化できる反面、ワイヤーハーネスが縦長の形状になって倒れやすくなるという問題がある。本構成によれば、小型化するためのワイヤーハーネスの向きにより倒れやすくなる構成であっても、ハーネス規制部によりワイヤーハーネスの倒れを抑制することができる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の基板、部品実装基板及び電気接続箱の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
<実施形態>
実施形態について、
図1~
図7を参照しつつ説明する。
本実施形態のワイヤーハーネス配索装置10は、自動車等の車両(不図示)におけるシート60の下の床上に固定され、シート60の電装品に接続されるワイヤーハーネス11が配索されるものである。以下では、
図1のX方向を前方、Y方向を左方、Z方向を上方として説明する。
【0015】
シート60は、
図1に示すように、車体(不図示)の乗員室の床上にボルト締結等によって固定されたレール20に対して前後方向にスライド可能とされている。シート60には、例えば、電動リクライニング装置、シートヒータ、乗員の着座の有無を検出するセンサ、シートベルトの装着の有無を検出するセンサなどの各種電装品が備えられている。シート60の下部は、レール20内のスライダ26(
図1では一方のレール20のスライダ26のみ図示し、他方のレール20のスライダは省略)に固定されている。
【0016】
(ワイヤーハーネス11)
ワイヤーハーネス11は、車体の床上(のマットやパネル等の下)や床下に配索されており、車体側ではECU(Electronic Control Unit)等の機器に接続されている。このワイヤーハーネス11を介して車体側の機器とシート60の電装品との間の給電や信号の送受が行われる。
【0017】
シート60と車体との間に配索されたワイヤーハーネス11は、シート60の下のレール20に挿通(配索)されている。ワイヤーハーネス11は、
図3に示すように、複数本(本実施形態では9本)の電線12と、複数の電線12を一括して収容する外装体14とを備えている。各電線12は、金属製の導体部が絶縁層で被覆された被覆電線であり、シート60の各種電装品に接続されている。
【0018】
外装体14は、例えば絶縁性の合成樹脂製であって、上下に並んだ複数の電線12を包囲した状態で前後方向に帯状に延びている。外装体14は、複数の電線12に沿って延びる帯状の外装本体15と帯状の外装カバー16とを備え、外装本体15に多数のスリット状の切り込み15A(
図6参照)を並んで形成することで、外装体14を左右方向の一方側(余長収容部40側)にのみ湾曲させるようになっている。なお、レール20及び余長収容部40の外部に配索されるワイヤーハーネス11は、外装体14で覆われていない複数の電線12の状態で配索されている。
【0019】
(ワイヤーハーネス配索装置10)
ワイヤーハーネス配索装置10は、
図2,
図4に示すように、レール20と、レール20内にスライド可能に配されるスライダ26と、ワイヤーハーネス11の配索経路を規制するハーネス規制部30と、ワイヤーハーネス11の余長部11Aが収容される余長収容部40と、を備えている。
【0020】
(レール20)
レール20は、金属製であって、
図1に示すように、各シート60に対して一対設けられ、前後方向に直線状に延びている。各レール20は、
図3に示すように、スライダ26が挿通される挿通孔21が前後方向に貫通形成されている。挿通孔21は、左右方向に長い長方形状とされ、下方側に幅寸法が小さくされた底溝22が前後方向に延びている。挿通孔21の上方には、外部と連通する通し溝24が前後方向に溝状に延びている。
【0021】
(スライダ26)
スライダ26は、例えば、合成樹脂製又は金属製であって、レール20に対して前後方向にスライド移動可能とされており、挿通孔21内に配されるスライダ本体27と、スライダ本体27の上面から上方に板状に突出する取付部28とを有する。スライダ本体27の幅寸法は、通し溝24の間隔よりも大きくされている。取付部28は、床上のマット等に形成された切り込みの間をスライドし、ボルト等の締結部材(不図示)によりシート60の被取付部(不図示)に締結される。また、スライダ26の前方には、
図5に示すように、複数の電線12が挿通される筒状のガイド部材17が設けられており、ガイド部材17の後方に延出された一対の延出取付部17Cが取付部28に固定されている。各延出取付部17Cには、貫通孔17Dが貫通形成されており、取付部28に貫通形成された締結孔(不図示)と貫通孔17Dとに締結部材としてのボルトの軸部を挿通してナットで締結する。ガイド部材17は、合成樹脂製であって、外装体14の後端部に接続されて外装体14を位置決めする外装体固定部17Aと、複数の電線12が上方に導出される導出口17Bと、ハーネス規制部30の後端部の金属固定板31が差し込まれる差込溝18Aと、固定部材19が収容される一対の固定部材収容室18Bと、を備える。ガイド部材17の内部における外装体固定部17Aの後方は、外装体14の後端部から複数の電線12が後方に延びている。
【0022】
固定部材19は、円柱状であって、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄等の金属製や合成樹脂製とされ、固定孔31Aと同じ外周形状とされており、金属固定板31の固定孔31Aに圧入されて金属固定板31(ハーネス規制部30の後端部)の位置を固定する。なお、固定部材19は、これに限られず、例えば、固定孔31Aより大きい頭部を有するボルトと固定孔31Aより外径が大きいナットとから固定部材を構成し、ボルトの軸部が金属固定板31の固定孔31Aに挿通された状態で軸部をナットで締結するようにしてもよい。差込溝18Aは、所定寸法の隙間を有している。固定部材収容室18Bは、差込溝18Aの前後方向の中間部に設けられ、固定部材19を挿入可能な空間を形成し、固定部材収容室18Bに収容された固定部材19の前後方向の移動を規制する。
【0023】
(ハーネス規制部30)
ハーネス規制部30は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の帯状の金属からなる薄肉で弾性変形可能な板バネであり、挿通孔21内のワイヤーハーネス11に沿って前後方向に延びている。板バネは、自然状態では一定の曲率で曲げられており、直線に引き伸ばすときに生じる戻り力(荷重)は一定となっている。ハーネス規制部30は、
図5に示すように、後端部(一端側)に板バネよりも厚肉の金属からなる金属固定板31が板バネに重ねられており、溶接等の固定手段により金属固定板31が板バネに固定されている。金属固定板31には、円形状の固定孔31Aが貫通形成されており、固定孔31Aに圧入された固定部材19がガイド部材17に係止することでスライダ26のスライド移動に伴ってハーネス規制部30が挿通孔21内を移動する。
【0024】
ハーネス規制部30の前端側(他端側)は、
図6に示すように、レール20の外側に配された巻取部32に巻き取られる。ハーネス規制部30は、ワイヤーハーネス11の近傍にワイヤーハーネス11に沿って延びているため、レール20内のワイヤーハーネス11の上下方向や左右方向への移動(位置ずれ)を規制する。
【0025】
巻取部32は、ハーネス規制部30が外周に巻き付けられる円筒形状の筒部33と、筒部33の縁部から鍔状に張り出す一対の張出部34とを備える。一対の張出部34の間の筒部33の外周にハーネス規制部30が弾性変形して巻き付けられる。筒部33の内側には、例えば車両の床上や余長収容部40に対して固定される支持軸部36が挿通される。支持軸部36は、円柱状であって、筒部33の内径よりも小さい外径を有し、支持軸部36の先端部には、筒部33の内径よりも大きい外径の頭部36Aが形成されており、この頭部36Aにより巻取部32の離脱が規制される。巻取部32は、支持軸部36に対して回動可能とされており、シート60のスライドに伴ってワイヤーハーネス11及びハーネス規制部30がシート60と同じ方向にスライド移動すると、ワイヤーハーネス11及びハーネス規制部30の移動方向の側に巻取部32が回転し、ハーネス規制部30が移動した距離だけハーネス規制部30が巻取部32により巻き取られる。本実施形態では、ハーネス規制部30は、自然状態で巻回された状態とされているため、筒部33の外周面に対しては、固定手段を用いなくても巻き付けられた状態に保持される。なお、ハーネス規制部30と巻取部32との関係は、これに限られず、例えばハーネス規制部30の端部を筒部33に対して溶接、接着等の固定手段により固定してもよい。
【0026】
余長収容部40は、ワイヤーハーネス11のうち、レール20内に収容されない余長部11Aを収容するものであり、
図7に示すように、収容部本体41と、蓋部55とを備える。収容部本体41は、平板状の底面部42と、ワイヤーハーネス11が渦巻き状に内側に収容される収容壁46と、ワイヤーハーネス11を収容壁46内に案内する案内壁48と、を備える。底面部42の中間部には、ワイヤーハーネス11を車両の床上や床下等に導出するための導出部43が形成されている。導出部43は底面部42に形成された貫通孔42A(
図2参照)の縁部から起立する筒状であって、
図7に示すように、ワイヤーハーネス11が挿入される挿入溝44が切り欠かれている。収容壁46は、底面部42から円環状に起立し、導出部43と収容壁46との間にワイヤーハーネス11の収容スペースを形成する。案内壁48は、レール20の前方のワイヤーハーネス11の進行方向を前後方向に対して収容壁46内の収容スペース側に曲がった方向に案内する。収容壁46の外側に隣接する位置には、蓋部55をネジでネジ留め可能な複数(本実施では3つ)の留め部50が形成されている。各留め部50にはネジ孔が形成されている。
【0027】
案内壁48における収容壁46側には、巻取部32が回転可能に収容される凹み壁52が設けられている。凹み壁52は、案内壁48の壁を円弧状に切り欠いて巻取部32が収容されるスペースを確保している。案内壁48の後方における底面部42よりも下側には、レール固定部54が配されている。レール固定部54は、逆U字状であって、上面部にレール20の端部をボルトにより締結可能な締結孔54Aが貫通形成されている。レール20がレール固定部54上に固定された状態では、レール20の挿通孔21の内壁(孔壁)が案内壁48の内面や底面部42の上面に連なるようになっている。
【0028】
蓋部55は、収容部本体41の形状に応じた平板状とされており、蓋部55における巻取部32に対応する位置には、上方に円形状に突出する突部56が形成され、突部56の下面側は、巻取部32上端部が嵌合する円形状の凹部(不図示)が形成されている。蓋部55には、収容部本体41の留め部50にネジ留めするためのネジの軸部を挿通可能な複数のネジ孔57が貫通形成されている。蓋部55の周縁部には、収容部本体41の上端部の外側を覆う周壁58が形成されている。
【0029】
次に、シート60のスライドの際の動作について説明する。
シート60がレール20の後方側にあるときには(
図2の状態)、帯状のハーネス規制部30がレール20内で直線状に延びた状態とされている。この状態のハーネス規制部30は、
図3に示すように、レール20の内壁とハーネス規制部30との間に配されるため、ハーネス規制部30により、ワイヤーハーネス11の配索経路の位置ずれやワイヤーハーネス11の倒れ等が規制されている。また、この状態のハーネス規制部30は、自然状態から変形しているため(挿通孔21の側方の孔壁21A側への)弾性反発力を生じており、ワイヤーハーネス11に撓み等が生じて配索経路が曲がった場合には、ハーネス規制部30がワイヤーハーネス11に当接し、ワイヤーハーネス11を挿通孔21の側方の孔壁21Aとハーネス規制部30との間に保持可能とされている。
【0030】
次に、ユーザがシート60を前方側にスライドさせると、スライダ26及びワイヤーハーネス11が前方にスライド移動するとともに、レール20内のハーネス規制部30が前方側にスライド移動する(
図4の状態)。このとき、レール20の前方に導出されたハーネス規制部30は、回転する巻取部32に巻き取られて弾性復元しつつ巻回されていく(
図6参照)。
【0031】
次に、この状態からユーザがシート60を後方側にスライドさせると、スライダ26及びワイヤーハーネス11が後方にスライド移動するとともに、レール20内のハーネス規制部30が後方にスライド移動する(
図2の状態)。このとき、レール20の前方側のハーネス規制部30は、反対側に回転する巻取部32により弾性変形しつつ巻き戻され、直線状に延びた状態となる。
【0032】
本実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
本実施形態によれば、ワイヤーハーネス11が挿通される挿通孔21が形成されたレール20と、レール20に対してワイヤーハーネス11と共にスライド移動するスライダ26と、を備えるワイヤーハーネス配索装置10であって、挿通孔21内のワイヤーハーネス11に沿って配され、前後方向(スライド移動する方向)とは異なる方向へのワイヤーハーネス11の移動を規制し、かつ、スライダ26のスライド移動に伴って挿通孔21内を移動するハーネス規制部30を備える。
本実施形態によれば、ハーネス規制部30により、レール20内のワイヤーハーネス11の配索経路を規制することができる。また、ハーネス規制部30は、スライダ26の移動に伴って挿通孔21内を移動するため、ハーネス規制部30がスライダ26の移動の障害物となることを抑制することができる。
【0033】
また、ハーネス規制部30は、スライダ26の移動に応じて弾性変形可能とされ、ハーネス規制部30の端部はスライダ26側に固定されている。
このようにすれば、簡素な構成で、ワイヤーハーネス11の配索経路を規制しつつ、弾性変形によりハーネス規制部30がスライダ26の移動の障害物となることを抑制することができる。
【0034】
また、レール20の外側には、ハーネス規制部30を巻き取る巻取部32が設けられている。
このようにすれば、簡素な構成で、ハーネス規制部30をレール20の外側に収容することができる。
【0035】
また、レール20の外側に導出されたワイヤーハーネス11の余長部11Aが収容される余長収容部40を備え、ワイヤーハーネス11は、余長収容部40内に2周以上の渦巻き状に巻かれている。
このようにすれば、余長収容部40内にワイヤーハーネス11が渦巻き状に収容されるため、例えば、ワイヤーハーネス11が長尺の収容ボックス内でU字状に折り返して収容される構成と比較して余長収容部40の長さを短くすることが可能になる。
【0036】
また、ワイヤーハーネス11は、複数の電線12と、複数の電線12を収容する外装体14とを備え、外装体14は、幅方向よりも上下方向が長くなる向きでレール20内に挿通されており、ハーネス規制部30は、ワイヤーハーネス11の倒れを抑制する。
ワイヤーハーネス11を幅方向よりも上下方向が長くなる向きでレール20内に挿通すれば、幅方向よりも上下方向が短くする構成と比較して、ワイヤーハーネス11の経路が曲がる部分の外径を小さくできて小型化できる反面、ワイヤーハーネス11が縦長の形状になって倒れやすくなるという問題がある。本実施形態によれば、小型化するためのワイヤーハーネス11の向きにより倒れやすくなる構成であっても、ハーネス規制部30によりワイヤーハーネス11の倒れを抑制することができる。
【0037】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
(1)余長収容部40内のワイヤーハーネス11の巻き数は、上記実施形態の巻き数に限られず、異なる巻き数とすることができる。また、スライダ26のスライド前後における余長収容部40内の巻き数は、シート60やスライダ26の位置(スライド方向の位置)に応じて巻き数が変わる構成に限られず、シート60やスライダ26の位置により巻き数が変わらない構成(渦巻き状のワイヤーハーネス11における隣り合うワイヤーハーネス11の間の間隔のみが変わる構成)としてもよい。
【0038】
(2)ハーネス規制部30は弾性体としたが、これに限られない。例えば、樹脂や繊維によりハーネス規制部を形成してもよい。
(3)巻取部32は、異なる位置に配置してもよい。例えば、ハーネス規制部の前端側をレール20に対して固定し、ハーネス規制部の後端側(スライダ26側)に回転可能な巻取部32を固定してもよい。
【0039】
(4)ワイヤーハーネス11を構成する電線12の本数は、上記実施形態の本数に限られず、種々の本数に変更することができる。例えば、一本の電線12でワイヤーハーネス11を構成してもよい。また、電線12を保護する外装体14についても上記実施形態の形状に限られず、種々に変更することができる。また、例えば、外装体14を用いず、電線12のみでワイヤーハーネス11を構成してもよい。
【0040】
(5)スライダ26は、スライド対象物としてのシート60に固定されることとしたが、これに限られない。例えば、スライドドアをスライド対象物としてスライドドアにスライダ26が固定されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10: ワイヤーハーネス配索装置
11: ワイヤーハーネス
11A: 余長部
12: 電線
14: 外装体
15: 外装本体
15A: 切り込み
16: 外装カバー
17: ガイド部材
17A: 外装体固定部
17B: 導出口
17C: 延出取付部
17D: 貫通孔
18A: 差込溝
18B: 固定部材収容室
19: 固定部材
20: レール
21: 挿通孔
21A: 側方側の孔壁
22: 底溝
24: 通し溝
26: スライダ
27: スライダ本体
28: 取付部
30: ハーネス規制部
31: 金属固定板
31A: 固定孔
32: 巻取部
33: 筒部
34: 張出部
36: 支持軸部
36A: 頭部
40: 余長収容部
41: 収容部本体
42: 底面部
42A: 貫通孔
43: 導出部
44: 挿入溝
46: 収容壁
48: 案内壁
50: 留め部
52: 凹み壁
54: レール固定部
54A: 締結孔
55: 蓋部
56: 突部
57: ネジ孔
58: 周壁
60: シート