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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20221122BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019092438
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020188169
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 崇功
(72)【発明者】
【氏名】秋野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】長村 雄也
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-183078(JP,A)
【文献】特開2013-065620(JP,A)
【文献】特開2004-193476(JP,A)
【文献】特開2014-183213(JP,A)
【文献】特開2016-197706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層配置された上側導電板、中間導電板及び下側導電板と、
前記上側導電板と前記中間導電板との間に位置しており、前記上側導電板と前記中間導電板とのそれぞれに電気的に接続された第1半導体素子と、
前記中間導電板と前記下側導電板との間に位置しており、前記中間導電板と前記下側導電板とのそれぞれに電気的に接続された第2半導体素子と、
前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子を封止するとともに、前記上側導電板、前記中間導電板及び前記下側導電板を一体に保持する封止体と、
を備え、
前記中間導電板の厚みは、前記上側導電板の厚み及び前記下側導電板の厚みよりも小さ
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子の各々は、第1主電極と、前記第1主電極よりも面積の大きい第2主電極とを有し、
前記第1半導体素子は、前記第1主電極において前記上側導電板に接続されているとともに、前記第2主電極において前記中間導電板に接続されており、
前記第2半導体素子は、前記第1主電極において前記中間導電板に接続されているとともに、前記第2主電極において前記下側導電板に接続されており、
前記上側導電板の厚みは、前記下側導電板の厚みよりも大きい、
半導体装置。
【請求項2】
前記中間導電板の面積は、前記上側導電板の面積及び前記下側導電板の面積よりも小さい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記中間導電板の面積は、前記上側導電板の面積と前記下側導電板の面積との少なくとも一方よりも大きい、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
積層配置された上側導電板、中間導電板及び下側導電板と、
前記上側導電板と前記中間導電板との間に位置しており、前記上側導電板と前記中間導電板とのそれぞれに電気的に接続された第1半導体素子と、
前記中間導電板と前記下側導電板との間に位置しており、前記中間導電板と前記下側導電板とのそれぞれに電気的に接続された第2半導体素子と、
前記第1半導体素子及び前記第2半導体素子を封止するとともに、前記上側導電板、前記中間導電板及び前記下側導電板を一体に保持する封止体と、
を備え、
前記中間導電板の厚みは、前記上側導電板の厚み及び前記下側導電板の厚みよりも小さく、
前記中間導電板の面積は、前記上側導電板の面積及び前記下側導電板の面積よりも小さい
導体装置。
【請求項5】
前記中間導電板の厚みは0.5±0.1mmであり、前記上側導電板の厚みは2.0±0.1mmであり、前記下側導電板の厚みは1.5±0.1mmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、半導体装置が開示されている。この半導体装置は、積層配置された上側導電板、中間導電板及び下側導電板と、上側導電板と中間導電板との間に位置する第1半導体素子と、中間導電板と下側導電板との間に位置する第2半導体素子と、第1半導体素子及び第2半導体素子を封止するとともに、上側導電板、中間導電板及び下側導電板を一体に保持する封止体とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-36047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した半導体装置では、第1半導体素子及び第2半導体素子のそれぞれが、通電によって発熱する。第1半導体素子及び第2半導体素子が発熱すると、それらに隣接する三つの導電板の温度も上昇して、各々の導電板には熱膨張が生じる。特に、第1半導体素子と第2半導体素子との間に位置する中間導電板は、上側導電板及び下側導電板よりも高温となりやすく、比較的に大きく熱膨張する傾向がある。このような不均一な熱膨張は、半導体装置内に生じる歪を局所的に増大させることがあり、例えば半導体装置の耐久性を低下させるおそれがある。
【0005】
本明細書は、三以上の導電板が積層された半導体装置において、中間導電板の熱膨張に起因する局所的な歪を低減し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置は、積層配置された上側導電板、中間導電板及び下側導電板と、上側導電板と中間導電板との間に位置しており、上側導電板と中間導電板とのそれぞれに電気的に接続された第1半導体素子と、中間導電板と下側導電板との間に位置しており、中間導電板と下側導電板とのそれぞれに電気的に接続された第2半導体素子と、第1半導体素子及び第2半導体素子を封止するとともに、上側導電板、中間導電板及び下側導電板を一体に保持する封止体とを備える。この半導体装置では、中間導電板の厚みが、上側導電板の厚み及び下側導電板の厚みよりも小さい。
【0007】
上記した半導体装置では、中間導電板の厚みが比較的に小さいので、中間導電板の熱膨張力が比較的に小さくなる。ここでいう熱膨張力とは、中間導電板が熱膨張するときに、中間導電板から他の部材に作用する力を意味する。仮に中間導電板の熱膨張力が大きいと、中間導電板は、隣接する他の部材を変形させながら、比較的に大きく熱膨張することがきる。この場合、半導体装置内には、中間導電板の熱膨張に起因して、局所的に大きな歪が生じてしまう。これに対して、中間導電板の熱膨張力が小さければ、中間導電板の熱膨張は、隣接する他の部材によって抑制される。従って、中間導電板が比較的に高温となった場合でも、中間導電板の熱膨張が抑制されることによって、上述した局所的な歪は低減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の半導体装置10の外観を示す。
図2図1中のII-II線における断面図を示す。
図3図1中のIII-III線における断面図を示す。
図4】実施例の半導体装置10の回路構造を示す。
図5】実施例の半導体装置10の特性をコンピュータシミュレーションで計算した結果を示す。
図6】一変形例の半導体装置10Aの構成を模式的に示す断面図であって、図2に示す断面図に対応する。
図7】一変形例の半導体装置10Bの構成を模式的に示す断面図であって、図2に示す断面図に対応する。
図8】一変形例の半導体装置10Cの構成を模式的に示す断面図であって、図2に示す断面図に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、第1半導体素子と第2半導体素子の各々は、第1主電極と、第1主電極よりも面積の大きい第2主電極とを有してもよい。第1半導体素子は、第1主電極において上側導電板に接続されているとともに、第2主電極において中間導電板に接続されていてもよい。そして、第2半導体素子は、第1主電極において中間導電板に接続されているとともに、第2主電極において下側導電板に接続されていてもよい。この場合、上側導電板の厚みは、下側導電板の厚みよりも大きくてもよい。
【0010】
第2主電極の面積が、第1主電極の面積よりも大きい場合、各々の半導体素子では、第1主電極よりも第2主電極を介して、より多く熱が放出される。言い換えると、第1主電極における放熱性は、第2主電極における放熱性よりも劣る。この不均等な放熱性を改善するためには、第1主電極に接続された上側導電板の厚みを、第2主電極に接続された下側導電板の厚みよりも大きくすることが有効である。このような構成によると、上側導電板が比較的に大きな熱容量を有することで、第1主電極からの放熱が促進されることになり、第1主電極における放熱性が改善される。
【0011】
本技術の一実施形態において、中間導電板の厚みは0.5±0.1mmであり、上側導電板の厚みは2.0±0.1mmであり、下側導電板の厚みは1.5±0.1mmであってもよい。本発明者らのコンピュータシミュレーションを用いた検証によると、三つの導電板がこれらの数値条件を満たすときに、半導体装置内に生じる局所的な歪が顕著に低減されることが確認された。
【0012】
本技術の一実施形態において、中間導電板の面積は、上側導電板の面積及び下側導電板の面積よりも小さくてもよい。第1半導体素子及び第2半導体素子の熱は、上側導電板及び下側導電板を介して外部へ放出される。これに対して、第1半導体素子と第2半導体素子との間に位置する中間導電板には、第1半導体素子及び第2半導体素子の熱が蓄積されやすい。そのことから、上側導電板の面積及び下側導電板の面積を大きくし、中間導電板の面積を小さくすることで、第1半導体素子及び第2半導体素子の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0013】
あるいは、本技術の他の一側面によると、中間導電板の面積は、上側導電板の面積と下側導電板の面積との少なくとも一方よりも大きくてもよい。このような構成によると、上側導電板と下側導電板の間に位置する中間導電板が、上側導電板と下側導電板との間から部分的に突出する。従って、例えば半導体装置を製造するときに、中間導電板を上側導電板及び/又は下側導電板と共に、共通の治具によって支持しやすい。
【0014】
ここで、本明細書における導電板の面積(即ち、上側導電板、中間導電板、下側導電板の各面積)とは、当該導電板の垂直視における面積を意味する。言い換えると、導電板の面積とは、当該導電板をそれに平行な平面へ投影したときの投影面積を意味する。
【実施例
【0015】
図1図4を参照して、実施例の半導体装置10を説明する。本実施例の半導体装置10は、例えば電気自動車の電力制御装置に採用され、コンバータやインバータといった電力変換回路の一部を構成することができる。なお、本明細書における電気自動車は、車輪を駆動するモータを有する自動車を広く意味し、例えば、外部の電力によって充電される電気自動車、モータに加えてエンジンを有するハイブリッド車、及び燃料電池を電源とする燃料電池車等を含む。
【0016】
半導体装置10は、複数の半導体素子12、14と、複数の導電板16、18、20と、封止体30とを備える。封止体30は、複数の半導体素子12、14を封止するとともに、複数の導電板16、18、20を一体に保持している。封止体30は、絶縁性の材料で構成されている。特に限定されないが、本実施例における封止体30は、例えばエポキシ樹脂といった、封止用の樹脂材料で構成されている。
【0017】
封止体30は、概して板形状を有しており、上面30a、下面30b、第1端面30c、第2端面30d、第1側面30e及び第2側面30fを有する。上面30aと下面30bは、互いに反対側に位置しており、第1端面30c、第2端面30d、第1側面30e及び第2側面30fの各々は、上面30aと下面30bとの間に広がっている。そして、第1端面30cと第2端面30dとが互いに反対側に位置し、第1側面30eと第2側面30fとが互いに反対側に位置する。
【0018】
複数の半導体素子12、14は、第1半導体素子12と、第2半導体素子14とを含む。第1半導体素子12と第2半導体素子14は、パワー半導体素子であって、互いに同一の構造を有する。各々の半導体素子12、14は、半導体基板12a、14a、第1主電極12b、14b、第2主電極12c、14c及び複数の信号電極12d、14dを備える。半導体基板12a、14aは、特に限定されないが、シリコン基板、炭化シリコン基板又は窒化物半導体基板であってもよい。
【0019】
第1主電極12b、14bは、半導体基板12a、14aの表面に位置しており、第2主電極12c、14cは、半導体基板12a、14aの裏面に位置している。第1主電極12b、14bと第2主電極12c、14cは、半導体基板12a、14aを介して互いに電気的に接続される。特に限定されないが、各々の半導体素子12、14は、スイッチング素子であり、第1主電極12b、14bと第2主電極12c、14cとの間を、選択的に導通及び遮断することができる。複数の信号電極12d、14dは、第1主電極12b、14bと同じく、半導体基板12a、14aの第1の表面に位置している。各々の信号電極12d、14dは、第1主電極12b、14b及び第2主電極12c、14cよりも十分に小さい。但し、半導体基板12a、14aの表面には、第1主電極12b、14bと複数の信号電極12d、14dとの両者が位置するので、第1主電極12b、14bの面積は、第2主電極12c、14cの面積よりも小さい。第1主電極12b、14b、第2主電極12c、14c及び信号電極12d、14dは、アルミニウム、ニッケル又は金といった、一又は複数種類の金属を用いて構成されることができる。
【0020】
一例ではあるが、図4に示すように、本実施例における各々の半導体素子12、14は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードとが一体化されたRC(Reverse Conducting)-IGBTである。第1主電極12b、14bは、IGBTのエミッタ及びダイオードのアノードに接続されており、第2主電極12c、14cは、IGBTのコレクタ及びダイオードのカソードに接続されている。そして、複数の信号電極12d、14dの一つは、IGBTのゲートに接続されている。なお、他の実施形態として、第1半導体素子12及び/又は第2半導体素子14は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってもよい。この場合、第1主電極12b、14bは、MOSFETのソースに接続され、第2主電極12c、14cは、MOSFETのドレインに接続される。そして、複数の信号電極12d、14dの一つは、MOSFETのゲートに接続される。
【0021】
複数の導電板16、18、20は、上側導電板16、中間導電板20及び下側導電板18を含む。各々の導電板16、20、18は、少なくとも部分的に導電性を有する板状の部材である。三つの導電板16、20、18は積層配置されており、それらの間に複数の半導体素子12、14が配置されている。即ち、第1半導体素子12は、上側導電板16と中間導電板20との間に位置しており、上側導電板16と中間導電板20とのそれぞれに電気的に接続されている。第2半導体素子14は、中間導電板20と下側導電板18との間に位置しており、中間導電板20と下側導電板18とのそれぞれに電気的に接続されている。なお、上側導電板16と中間導電板20との間には、二以上の第1半導体素子12が設けられてもよい。この場合、二以上の第1半導体素子12は、同じ種類(即ち、同じ構造)の半導体素子であってもよいし、互いに異なる種類(即ち、異なる構造)の半導体素子であってもよい。同様に、中間導電板20と下側導電板18との間には、二以上の同じ種類又は異なる種類の第2半導体素子14が設けられてもよい。
【0022】
上側導電板16、中間導電板20及び下側導電板18は、導電性を有する板状部材であり、少なくとも一部が導体で構成されている。一例ではあるが、本実施例における各々の導電板16、20、18は、金属板であって、銅で構成されている。上側導電板16は、第1導体スペーサ13を介して、第1半導体素子12の第1主電極12bと電気的に接続されている。中間導電板20は、第1半導体素子12の第2主電極12cと電気的に接続されている。特に限定されないが、上側導電板16と第1導体スペーサ13との間、第1導体スペーサ13と第1半導体素子12の第1主電極12bとの間、及び、第1半導体素子12の第2主電極12cと中間導電板20との間は、導電性を有する接合層50、52、54(例えば、はんだ層)を介して互いに接合されている。
【0023】
中間導電板20はさらに、第2導体スペーサ15を介して、第2半導体素子14の第1主電極14bとも電気的に接続されている。そして、下側導電板18は、第2半導体素子14の第2主電極14cと電気的に接続されている。特に限定されないが、中間導電板20と第2導体スペーサ15との間、第2導体スペーサ15と第2半導体素子14の第1主電極14bとの間、及び、第2半導体素子14の第2主電極14cと下側導電板18との間は、導電性を有する接合層60、62、64(例えば、はんだ層)を介して互いに接合されている。
【0024】
上側導電板16は、封止体30の上面30aにおいて外部に露出されている。これにより、上側導電板16は、半導体装置10において電気回路の一部を構成するだけでなく、半導体素子12、14の熱を外部へ放出する放熱板としても機能する。同様に、下側導電板18は、封止体30の下面30bにおいて外部に露出されている。従って、下側導電板18もまた、半導体装置10において電気回路の一部を構成するだけでなく、半導体素子12、14の熱を外部へ放出する放熱板としても機能する。
【0025】
半導体装置10は、複数の電力端子32、34、36と、複数の信号端子40、42とを備える。これらの端子32、34、36、40、42は、特に限定されないが、銅といった金属で構成されている。複数の電力端子32、34、36は、封止体30の第2端面30dから突出している。複数の信号端子40、42は、封止体30の第1端面30cから突出している。但し、これらの端子32、34、36、40、42の位置や形状といった具体的な構造は、特に限定されない。
【0026】
複数の電力端子32、34、36には、第1電力端子32、第2電力端子34及び第3電力端子36が含まれる。第1電力端子32は、封止体30の内部において、上側導電板16と電気的に接続されている。これにより、第1半導体素子12の第1主電極12bは、上側導電板16を介して第1電力端子32と電気的に接続されている。特に限定されないが、第1電力端子32は、上側導電板16と一体に形成されてもよい。
【0027】
第2電力端子34は、封止体30の内部において、中間導電板20と電気的に接続されている。これにより、第1半導体素子12の第2主電極12c、及び、第2半導体素子14の第1主電極12bは、中間導電板20を介して第2電力端子34と電気的に接続されている。特に限定されないが、第2電力端子34は、中間導電板20と一体に形成されてもよい。第3電力端子36は、封止体30の内部において、下側導電板18と電気的に接続されている。これにより、第2半導体素子14の第2主電極14cは、下側導電板18を介して第3電力端子36と電気的に接続されている。特に限定されないが、第3電力端子36は、下側導電板18と一体に形成されてもよい。
【0028】
複数の信号端子40、42には、複数の第1信号端子40と複数の第2信号端子42が含まれる。複数の第1信号端子40は、封止体30の内部において、第1半導体素子12の複数の信号電極12dとそれぞれ電気的に接続されている。特に限定されないが、第1信号端子40と信号電極12dとの間は、導電性を有する接合層56(例えば、はんだ層)を介して互いに接合されている。同様に、複数の第2信号端子42は、封止体30の内部において、第2半導体素子14の複数の信号電極14dとそれぞれ電気的に接続されている。特に限定されないが、第2信号端子42と信号電極14dとの間は、導電性を有する接合層66(例えば、はんだ層)を介して互いに接合されている。
【0029】
以上の構成により、本実施例の半導体装置10は、コンバータやインバータといった電力変換回路に組み込まれ、電流を導通及び遮断するスイッチング回路を構成することができる。第1半導体素子12及び第2半導体素子14に電流が流れると、第1半導体素子12及び第2半導体素子14がそれぞれ発熱する。第1半導体素子12及び第2半導体素子14が発熱すると、それらに隣接する三つの導電板16、18、20の温度も上昇して、各々の導電板16、18、20には熱膨張が生じる。特に、第1半導体素子12と第2半導体素子14との間に位置する中間導電板20は、上側導電板16及び下側導電板18よりも高温となりやすい。この場合、中間導電板20には、上側導電板16及び下側導電板18よりも大きな熱膨張が生じこととなり、その結果、半導体装置10内に生じる歪を局所的に増大させるおそれがある。
【0030】
そのことから、本実施例の半導体装置10では、中間導電板20の厚みT20が、上側導電板16の厚みT16及び下側導電板18の厚みT18よりも、小さくなっている。中間導電板20の厚みT20が比較的に小さいことにより、中間導電板20に生じ得る熱膨張力は比較的に小さくなる。前述したように、中間導電板20の熱膨張力とは、中間導電板20が熱膨張するときに、中間導電板20から他の部材(例えば、隣接する接合層54、60)に作用する力を意味する。中間導電板20に生じる熱膨張力が小さいことから、中間導電板20の熱膨張は、隣接する他の部材(例えば、封止体30)によって有意に抑制される。これにより、半導体装置10の内部(特に、接合層54、60)で生じる局所的な歪を低減することができる。
【0031】
加えて、中間導電板20の厚みT20が小さいほど、第1半導体素子12から下側導電板18までの距離は短くなる。これにより、第1半導体素子12から下側導電板18までの熱抵抗が小さくなって、第1半導体素子12の熱が下側導電板18からも効果的に放熱される。同様に、中間導電板20の厚みT20が小さいほど、第2半導体素子14から上側導電板16までの距離は短くなる。これにより、第2半導体素子14から上側導電板16までの熱抵抗が小さくなって、第2半導体素子14の熱が上側導電板16からも効果的に放熱される。従って、中間導電板20の厚みT20が小さいほど、第1半導体素子12及び第2半導体素子14の温度上昇が抑制される。
【0032】
本実施例の半導体装置10では、特に限定されないが、上側導電板16の厚みT16が、下側導電板18の厚みT18よりも大きい。この点に関して、各々の半導体素子12、14では、第2主電極12c、14cの面積が、第1主電極12b、14bの面積よりも大きい。従って、各々の半導体素子12、14では、第1主電極12b、14bよりも第2主電極12c、14cを介して、より多く熱が放出される。言い換えると、第1主電極12b、14bにおける放熱性は、第2主電極12c、14cにおける放熱性よりも劣る。この不均等な放熱性を改善するためには、第1主電極12bに接続された上側導電板16の厚みT16を、第2主電極12cに接続された下側導電板18の厚みT18よりも大きくすることが有効である。このような構成によると、上側導電板16が比較的に大きな熱容量を有することで、第1主電極12bからの放熱が促進されることになり、第1主電極12bにおける放熱性が改善される。
【0033】
図5は、上記の知見を確認するために、本発明者らによって実施されたコンピュータシミュレーションの結果である。このコンピュータシミュレーションでは、三つの導電板16、20、18の各厚みT16、T20、T18を、それぞれ0.5mm~2.0mmの間で変更しながら、各サンプルについて(即ち、厚みT16、T20、T18の各組合せについて)、半導体装置10の熱抵抗(℃/W)と最大歪を計算した。その結果、図5に示すように、中間導電板20の厚みT20が0.5mmであり、上側導電板16の厚みT16が2.0mmであり、下側導電板18の厚みT18が1.5mmのときに、半導体装置10内に生じる最大歪が最小となることが確認された。また、中間導電板20の厚みT20が0.5±0.1mmであり、上側導電板16の厚みT16が2.0mmであり、下側導電板18の厚みT18が1.5±0.1mmの範囲内であると、半導体装置10内に生じる最大歪が十分に低減されることが確認された。
【0034】
図6は、一変形例の半導体装置10Aを示す。図6に示すように、上側導電板16の厚みT16と、下側導電板18の厚みT18は、互いに等しくてもよい。この変形例においても、中間導電板20の厚みT20が、上側導電板16の厚みT16及び下側導電板18の厚みT18よりも小さいことから、中間導電板20の熱膨張が抑制されることによって、半導体装置10A内の局所的な歪が低減される。
【0035】
図7は、一変形例の半導体装置10Bを示す。図7に示すように、中間導電板20の面積は、上側導電板16の面積及び下側導電板18の面積よりも小さくてもよい。第1半導体素子12及び第2半導体素子14の熱は、上側導電板16及び下側導電板18を介して外部へ放出される。これに対して、第1半導体素子12と第2半導体素子14との間に位置する中間導電板20は、封止体30の内部に位置しており、そこには第1半導体素子12及び第2半導体素子14の熱が蓄積されやすい。そのことから、上側導電板16の面積及び下側導電板18の面積を大きくし、中間導電板20の面積を小さくすることで、第1半導体素子12及び第2半導体素子14の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0036】
図8は、一変形例の半導体装置10Cを示す。図8に示すように、中間導電板20の面積は、上側導電板16の面積及び/又は下側導電板18の面積よりも大きくてもよい。このような構成によると、上側導電板16と下側導電板18の間に位置する中間導電板20が、上側導電板16と下側導電板18との間から部分的に突出する。従って、例えば半導体装置10Cを製造するときに、中間導電板20を上側導電板16及び/又は下側導電板18と共に、共通の治具によって支持しやすい。なお、上側導電板16の面積と下側導電板18の面積は、互いに等しくてもよいし、互いに異なってもよい。
【0037】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
10:半導体装置
12:第1半導体素子
14:第2半導体素子
16:上側導電板
18:下側導電板
20;中間導電板
30:封止体
32、34、36:電力端子
40、42:信号端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8