(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】エレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20221122BHJP
B66D 3/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B66B7/06 H
B66D3/04 G
(21)【出願番号】P 2019102073
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】長岐 一輝
(72)【発明者】
【氏名】諏訪園 祥子
(72)【発明者】
【氏名】大西 貴之
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136348(JP,A)
【文献】特開平05-262495(JP,A)
【文献】特開2007-131379(JP,A)
【文献】特開2011-016603(JP,A)
【文献】実開昭51-099366(JP,U)
【文献】特開2010-168147(JP,A)
【文献】中国実用新案第207330213(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00-7/12
B66D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回転軸の先端に駆動シーブが取り付けられたエレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置であって、
上記駆動シーブの一方の端部の外周に沿った円弧状ないし円環状をなすロープガード支持プレートと、
上記ロープガード支持プレートに、上記駆動シーブの端部の外周に沿った円弧形の列をなすように、一定の単位角度毎に周方向に並んで配置された複数の取付ネジ孔と、
上記取付ネジ孔にそれぞれ螺合する少なくとも2本のボルトを用いて上記の円弧形の列をなす取付ネジ孔の列の中の任意の位置に取り付けられる基部および該基部から上記駆動シーブの軸方向に延びたガードバーを有するロープガードと、
を備えてなる
エレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置において、
上記ロープガード支持プレートは、上記駆動シーブの外周縁の一部に位置するブレーキユニットと干渉する領域を除いたほぼ全周に亘って設けられており、上記取付ネジ孔は、上記ブレーキユニットの領域を除いた範囲に円弧形に並んで設けられている、エレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置。
【請求項2】
上記駆動シーブが上記電動モータに片持ち状に支持されており、
上記ロープガード支持プレートは、上記電動モータの上記駆動シーブ側に位置するブレーキディスクカバーの開口縁に取り付けられている、請求項
1に記載のエレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置。
【請求項3】
電動モータの回転軸の先端に駆動シーブが取り付けられたエレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置であって、
上記駆動シーブの一方の端部の外周に沿った円弧状ないし円環状をなすロープガード支持プレートと、
上記ロープガード支持プレートに、上記駆動シーブの端部の外周に沿った円弧形の列をなすように、一定の単位角度毎に周方向に並んで配置された複数の取付ネジ孔と、
上記取付ネジ孔にそれぞれ螺合する少なくとも2本のボルトを用いて上記の円弧形の列をなす取付ネジ孔の列の中の任意の位置に取り付けられる基部および該基部から上記駆動シーブの軸方向に延びたガードバーを有するロープガードと、
を備えてなるエレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置において、
上記駆動シーブが一対のペデスタルの間に支持されており、
円環状に連続したロープガード支持プレートが、一方のペデスタルの駆動シーブ側の端面に取り付けられており、
上記ロープガード支持プレートの360°に亘って等角度間隔に取付ネジ孔が配置されている
、エレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置。
【請求項4】
上記基部は、少なくとも2本のボルトがそれぞれ貫通する複数の取付孔を有する板状をなすとともに、これら複数の取付孔よりも上記駆動シーブの内周側でかつ周方向に片寄った位置に延びるアーム部を有し、
上記ガードバーは、上記アーム部の先端から上記駆動シーブの軸方向に直線状に延びている、請求項1~
3のいずれかに記載のエレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの巻き上げ機において駆動シーブのロープ溝からロープが外れることを防止するロープ外れ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの巻き上げ機においては、一般に、特許文献1~3に記載されているように、複数のロープ溝を横切るように駆動シーブの外周面に沿ってロープガード(ロープ外れ止めとも呼ばれる)を配置し、ロープの半径方向外側への移動ひいてはロープ溝から外れてしまうことを防止するようにしている。ロープガードは、例えば駆動シーブの外周の2箇所に設けられており、詳しくは、駆動シーブのロープ溝から該駆動シーブの接線方向へとロープの軌跡が離れることとなる点の付近にそれぞれ配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-44675号公報
【文献】特開2003-276972号公報
【文献】特開2009-208923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロープ外れ防止装置においては、巻き上げ機におけるロープガードの取付位置が固定的に定まっており、巻き上げ機毎に決まった特定の位置にのみロープガードが取り付けられる。そのため、転向シーブの位置関係などでロープの張り角度(駆動シーブから接線方向へ延びるロープが鉛直方向に対してなす角度)が異なる多様なエレベータにおいて1種類の巻き上げ機で対応することができず、巻き上げ機の汎用性が制限される。
【0005】
またエレベータの改修などにより、駆動シーブから接線方向へ延びるロープの張り角度が変わったような場合に、ロープガードを適切な位置に配置することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電動モータの回転軸の先端に駆動シーブが取り付けられたエレベータ巻き上げ機のロープ外れ防止装置であって、
上記駆動シーブの一方の端部の外周に沿った円弧状ないし円環状をなすロープガード支持プレートと、
上記ロープガード支持プレートに、上記駆動シーブの端部の外周に沿った円弧形の列をなすように、一定の単位角度毎に周方向に並んで配置された複数の取付ネジ孔と、
上記取付ネジ孔にそれぞれ螺合する少なくとも2本のボルトを用いて上記の円弧形の列をなす取付ネジ孔の列の中の任意の位置に取り付けられる基部および該基部から上記駆動シーブの軸方向に延びたガードバーを有するロープガードと、
を備えて構成されている。
【0007】
すなわち、本発明では、円弧形の列をなすように複数の取付ネジ孔が並んで配置されており、その中の所望の位置つまりロープの張り角度に対応した位置を選択してロープガードを取り付けることができる。ロープガードは少なくとも2本のボルトを介して堅固に取り付けられるが、複数の取付ネジ孔は、一定の単位角度毎に並んでいるので、この単位角度の細かさでロープガードの周方向の取付位置を調整できる。
【0008】
本発明の具体的な一つの態様では、上記ロープガード支持プレートは、上記駆動シーブの外周縁の一部に位置するブレーキユニットと干渉する領域を除いたほぼ全周に亘って設けられており、上記取付ネジ孔は、上記ブレーキユニットの領域を除いた範囲に円弧形に並んで設けられている。従ってブレーキユニットと干渉しない角度範囲内において任意の周方向位置にロープガードを配置し得る。
【0009】
本発明の好ましい一つの態様では、上記駆動シーブが上記電動モータに片持ち状に支持されており、上記ロープガード支持プレートは、上記電動モータの上記駆動シーブ側に位置するブレーキディスクカバーの開口縁に取り付けられている。
【0010】
本発明の他の一つの態様では、上記駆動シーブが一対のペデスタルの間に支持されており、円環状に連続したロープガード支持プレートが、一方のペデスタルの駆動シーブ側の端面に取り付けられている。
【0011】
このように円環状に連続したロープガード支持プレートの場合、好ましくは、ロープガード支持プレートの360°に亘って等角度間隔に取付ネジ孔が配置されている。
【0012】
また、好ましい一つの態様では、ロープガードとして、上記基部は、少なくとも2本のボルトがそれぞれ貫通する複数の取付孔を有する板状をなすとともに、これら複数の取付孔よりも上記駆動シーブの内周側でかつ周方向に片寄った位置に延びるアーム部を有し、上記ガードバーは、上記アーム部の先端から上記駆動シーブの軸方向に直線状に延びている。
【0013】
このようなロープガードでは、例えば、ブレーキユニットとの干渉などにより円弧形の列をなす取付ネジ孔の列が途切れている箇所において、アーム部が周方向に延びていることで、ガードバーの周方向位置を取付ネジ孔の周方向位置よりもさらに周方向に延ばした位置とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、巻き上げ機の周方向に沿った任意の位置にロープガードを配置することが可能であり、ロープの張り角度が異なる多様なエレベータに対して汎用性の高い巻き上げ機を提供することができる。また、エレベータの改修などで事後的にロープの張り角度が変更される場合でも容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係るロープ外れ防止装置を備えた第1実施例の巻き上げ機の正面図。
【
図2】この第1実施例の巻き上げ機の一部を切り欠いて示す側面図。
【
図8】第2実施例におけるロープガード支持プレートの(A)正面図および(B)側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、この発明に係るロープ外れ防止装置を備えた第1実施例の巻き上げ機1の正面図であり、
図2は、この巻き上げ機1の一部を切り欠いて示す側面図である。
【0018】
この第1実施例の巻き上げ機1は、電動モータ2の回転軸の端部に駆動シーブ3が固定されており、該駆動シーブ3が電動モータ2にいわゆる片持ち状に支持されている。電動モータ2は、直径に比較して軸方向寸法が小さな偏平な円筒状をなしており、一対の脚部2aによってエレベータ昇降路内の図示しない支持台上に支持・固定される構成となっている。駆動シーブ3の直径は、電動モータ2のハウジングの直径よりも小径である。周知のように、巻き上げ機1は、エレベータのローピングの態様に応じて、昇降路上部や昇降路下部あるいは機械室内部などに適宜に配置される。
【0019】
駆動シーブ3は、6本の平行なロープ溝4を有し、各ロープ溝4にロープ5が例えば180°程度の巻付角でもって巻き付けられている。6本のロープ5は、基本的には互いに平行に延びており、図示しないエレベータのかごとカウンタウェイトとを種々の態様で連係している。典型的な1:1ローピングでは、ロープ5の一端にかごが、他端にカウンタウェイトが、それぞれ連結される。昇降路内でのロープ5の経路は、昇降路内に適宜に配置された転向シーブによって定まる。また、2:1ローピングなどでは、ロープ5の両端がそれぞれ昇降路内で固定され、かごおよびカウンタウェイトが転向シーブを介して吊り下げられた形となる場合もある。なお、
図3に示すように、駆動シーブ3は、電動モータ2寄りの一端部に径を拡大したフランジ部6を備えている。
【0020】
図示例の巻き上げ機1は、ディスク型のブレーキ機構を備えている。このブレーキ機構は、駆動シーブ3のフランジ部6に連結された円盤状のブレーキディスク7と、このブレーキディスク7に油圧により制動力を与える一対のブレーキユニット8と、から構成されている。円盤状のブレーキディスク7は、巻き上げ機1の軸方向において、電動モータ2の端部つまり電動モータ2と駆動シーブ3との境界付近に位置しており、電動モータ2や駆動シーブ3よりも大きな径を有している。ブレーキユニット8は、
図1に示すように、個々には略円筒状をなすハウジングを備えており、一対のブレーキユニット8が巻き上げ機1の上部において左右対称をなすように配置されている。なお、
図2においては、このブレーキユニット8の部分が切り欠かれて巻き上げ機1が図示されている。
【0021】
ブレーキディスク7の駆動シーブ3側の面は、円環状をなすブレーキディスクカバー9によって覆われている。ブレーキディスクカバー9は、平坦な板金製のものであり、その内周側の円形の開口部を通して駆動シーブ3が軸方向に突出している。ブレーキディスクカバー9は、下部の一対の突起片9aがそれぞれ脚部2aにボルト10によって固定されているとともに、上半部の複数箇所においてカバーブラケット11を介して電動モータ2外周部に支持されている。また、
図1に示すように、ブレーキディスクカバー9は、ブレーキユニット8が位置する2箇所においてそれぞれ略U字形をなす切欠部12を備えており、この切欠部12によってブレーキユニット8との干渉が回避されている。つまり、
図1のように巻き上げ機1を駆動シーブ3側から軸方向に見たときに、略円筒状をなす一対のブレーキユニット8以外の領域をブレーキディスクカバー9が覆っている。また、略円筒状をなすブレーキユニット8のハウジングは、
図1に示すように、駆動シーブ3の外周縁に近接して位置している。
【0022】
上記ブレーキディスクカバー9の内周の開口縁には、全体として駆動シーブ3の端部の外周に沿った円環状をなすロープガード支持プレート15が取り付けられている。このロープガード支持プレート15は、ブレーキディスクカバー9に比較して板厚が厚い帯状(詳しくは一定半径で湾曲した帯状)の金属板からなる。そして、このロープガード支持プレート15には、駆動シーブ3の端部の外周に沿った円弧形の列をなすように、一定の単位角度毎に周方向に並んで配置された複数の取付ネジ孔16が形成されている。
【0023】
上記ロープガード支持プレート15は、詳しくは、
図1に示すように、一対のブレーキユニット8と干渉する領域には存在しない。そのため、図示例では、ロープガード支持プレート15は完全な円環状には連続しておらず、複数の円弧状部分に分割して形成された上で、ブレーキディスクカバー9の開口縁に円形をなすように並べて取り付けられている。例えば、
図1に示すように、左右一対のプレート片15A,15Bと、上部のプレート片15Cと、下部のプレート片15Dと、の4つの片に分割されている。勿論、可能であれば、ブレーキユニット8との干渉を避けるような形で全周に連続した円環状の1つの部品として構成してもよい。
【0024】
従って、図示例では、ロープガード支持プレート15は、ブレーキユニット8と干渉する領域(換言すればブレーキユニット8と軸方向に重なる領域)を除いたほぼ全周に亘って設けられている。同様に、複数の取付ネジ孔16は、ブレーキユニット8と重なる領域を除いた範囲に円弧形に並んで設けられている。取付ネジ孔16は、ロープガード支持プレート15の強度などの点から可能な範囲でできるだけ小さな単位角度毎に配列されている。一例では、4°毎に取付ネジ孔16が形成されている。なお、4つのプレート片15A~15Dの境界では、境界を跨いで隣接する2つの取付ネジ孔16の角度間隔は必ずしも4°ではない。
【0025】
ロープガード支持プレート15は、
図3の拡大した断面図に示すように、適宜な材質(例えば発泡ゴムなど)からなる円環状の緩衝材18を挟んでブレーキディスクカバー9に重ねられ、かつ
図1に例示したようなボルト19でもってブレーキディスクカバー9に固定されている。なお、
図1の例では、ロープガード支持プレート15を固定するためのボルト19が本来は取付ネジ孔16となるべき位置に配置されているため、それだけ取付ネジ孔16の個数が減少する。従って、取付ネジ孔16と重ならない位置にボルト19を配置するようにしてもよい。
【0026】
ロープ5のロープ溝4からの外れを防止するロープガード21は、上記のように円弧形の列をなすように配列された取付ネジ孔16を利用して、任意の位置に取り付けられる。
図1および
図2の例では、3個のロープガード21が駆動シーブ3の周囲に配置されている。
【0027】
図4,
図5に示すように、ロープガード21は、ロープガード支持プレート15に沿って取り付けられる板状の基部22と、この基部22から直角に立ち上がり、駆動シーブ3の軸方向に沿って直線状に延びる丸棒状のガードバー23と、を備えている。基部22には、隣接する2つの取付ネジ孔16の間隔に対応した間隔でもって2つの取付孔24が貫通形成されている。そして、これら2つの取付孔24を有する矩形状部分22aの一端からロープガード支持プレート15の周方向に沿って延びたアーム部22bが基部22の一部として設けられている。アーム部22bは、ロープガード支持プレート15の周方向の一方へ向かって延びるとともに、円弧形をなすロープガード支持プレート15の内周側へ向かって延びている。ガードバー23の基端部は、アーム部22bの先端に例えば溶接等により固定されている。
【0028】
このような構成のロープガード21は、
図1~
図3に示すように、基部22の取付孔24を貫通してロープガード支持プレート15の取付ネジ孔16に螺合する一対のボルト25によって、ロープガード支持プレート15に固定される。このようにロープガード支持プレート15にロープガード21が固定された状態では、
図3に示すようにガードバー23が駆動シーブ3の6本のロープ溝4を横切っており、ロープ溝4に係合したロープ5との間に僅かな隙間を保ちつつロープ5の径方向への移動を制限する。ガードバー23は、6本のロープ5を横切るように駆動シーブ3の幅(軸方向寸法)に対応した長さを有している。
【0029】
ロープガード21としては、基部22におけるアーム部22bの構成が対称形状をなす2種類のロープガード21が用意されている。なお、
図1の例では、互いに対称形状をなす2種類のロープガード21が使用されているが、ある特定の態様の巻き上げ機1において、いずれか1種類のロープガード21のみが使用されることもある。
【0030】
上記のような構成の巻き上げ機1においては、ロープガード支持プレート15に取り付けるロープガード21の個数および各ロープガード21の取付位置(駆動シーブ3の周方向における取付位置)は、ロープ5の張り角度(駆動シーブ3から接線方向へ延びるロープ5が鉛直方向に対してなす角度)などに応じて最適に設定される。例えば、
図1の例では、
図1に符号21A,21B,21Cを付した3個のロープガード21がロープガード支持プレート15に取り付けられている。
図1の例では、ロープ5は、図の右斜め下方へ延びており、駆動シーブ3のロープ溝4から該駆動シーブ3の接線方向へロープ5が離れていく2つの点の近傍にロープガード21Aおよびロープガード21Bが配置され、さらに駆動シーブ3の最上部にロープガード21Cが配置されている。ここで、図右側のロープガード21Aと図左側のロープガード21Bは、互いに対称の形状をなす異なる種類のロープガード21であり、最上部のロープガード21Cは左側のロープガード21Bと同じ種類のロープガード21である。
【0031】
図右側のロープガード21Aは、ブレーキユニット8の近くに位置しており、ロープガード支持プレート15に固定された基部22の矩形状部分22aからアーム部22bがブレーキユニット8に近付くように周方向に(つまり反時計回り方向に)延びており、矩形状部分22aよりもブレーキユニット8に近い位置にガードバー23が配置されている。これにより、ロープ溝4からロープ5が離れる点に近い最適位置にガードバー23が位置している。このように、上記実施例では、アーム部22bによってガードバー23の位置を取付孔24から周方向に片寄った位置とすることができ、取付ネジ孔16が存在しないブレーキユニット8の近くにガードバー23を配置することが可能となる。
【0032】
最上部のロープガード21Cにおいても、図示例では最上部には取付ネジ孔16が設けられていないが、隣りに位置する2つの取付ネジ孔16を利用してロープガード21Bを固定することで、ガードバー23が最上部に配置されている。
【0033】
また、前述したロープガード支持プレート15を固定するためのボルト19が取付ネジ孔16となるべき位置を占有している箇所においても、2種類のロープガード21のいずれかをボルト19の隣りに位置する2つの取付ネジ孔16を利用して取り付けることで、ボルト19に制限されることなくガードバー23を配置することができる。
【0034】
従って、駆動シーブ3の全周360°の範囲内で、円筒状ブレーキユニット8の外周が駆動シーブ3外周に接近しているごく一部の角度範囲を除く大部分の角度範囲において、ガードバー23を配置することが可能である。
【0035】
また上記実施例のロープガード21は、基部22が複数本つまり2本のボルト25によってロープガード支持プレート15に固定されるため、高い支持剛性が得られる。そして、このように複数のボルト25で取り付ける構成であっても、2つの取付孔24の間隔と列をなす複数の取付ネジ孔16の間隔とが対応しているため、単位角度(例えば4°)毎の取付位置調整が可能である。
【0036】
従って、上記実施例のロープ外れ防止装置を備えた巻き上げ機1にあっては、駆動シーブ3におけるロープ5の張り角度がどのような態様であっても、必要な箇所にロープガード21を配置することが可能であり、汎用性の高い巻き上げ機1となる。また、アーム部22bが異なる方向(時計回り方向もしくは反時計回り方向)に延びた2種類のロープガード21を適宜に選択して用いることで、より適切な位置にガードバー23を位置させることが可能となる。
【0037】
また、事後的なロープガード21の取付位置の変更も容易であり、例えば転向シーブのレイアウトの変更に伴う張り角度の変更などに対応できるほか、実際のロープ5の挙動に対するガードバー23の僅かな位置調整なども可能となる。
【0038】
次に、
図6~
図10を参照して本発明の第2実施例を説明する。第2実施例のロープ外れ防止装置を備えた巻き上げ機101は、電動モータ102と、該電動モータ102の回転軸の先端に取り付けられた駆動シーブ103と、を有し、駆動シーブ103には、ロープ105がそれぞれ巻き付けられる複数本のロープ溝104が形成されている。偏平な円盤状をなす電動モータ102は、一対の脚部102aによって基台151上に支持されている。
【0039】
この第2実施例においては、駆動シーブ103は、一対のペデスタル152の間に支持されている。ペデスタル152は、駆動シーブ103の回転軸を回転自在に支持する軸受部(図示せず)を備えており、一対のペデスタル152によって駆動シーブ103はいわゆる両持ち状態に支持されている。ペデスタル152は、それぞれ基台151上に取り付けられている。
【0040】
駆動シーブ103の一方の端部、具体的には電動モータ102とは反対側となる端部には、ブレーキディスク107が取り付けられている。
図6においては、駆動シーブ103およびブレーキディスク107の下端の一部が基台151の開口部の中に入り込んでいて、見えていない。また、ブレーキディスク107に制動力を与えるブレーキユニットは、図示省略されている。
【0041】
駆動シーブ103の他方の端部(つまり電動モータ102寄りの端部)に面する一方のペデスタル152の端面には、円環状に連続したロープガード支持プレート115が取り付けられている。ロープガード支持プレート115は、
図8(A),(B)に示すように、中心に円形の開口部を有する平坦な円形の板状をなし、外径が駆動シーブ103の径よりも僅かに大きく設定されている。なお、中心の開口部の周囲には、図示せぬボルトによってペデスタル152に固定するための取付孔154が設けられている。
【0042】
駆動シーブ103の外周縁から径方向外側に張り出しているロープガード支持プレート115の外周縁部分には、ロープガード121を取り付けるための複数の取付ネジ孔116が配列されている。複数の取付ネジ孔116は、駆動シーブ103の端部の外周に沿った円弧形の列をなすように、一定の単位角度毎に周方向に並んで配置されている。特に、図示例では、円環状に連続したロープガード支持プレート115の全周360°に亘って等角度間隔に複数の取付ネジ孔116が配置されている。
図8の例では、6°毎に60個の取付ネジ孔116が円形の列をなすように並んでいる。
【0043】
ロープガード121は、
図9および
図10に示すように、一対の取付孔124を有する矩形の基部122と、この基部122の側縁から直角に立ち上がって駆動シーブ103の軸方向に沿って直線状に延びる丸棒状のガードバー123と、を備えている。ガードバー123の基端部は、ロープガード支持プレート115に取り付けた状態で内周側となる基部122の一方の側面に溶接等で固定されている。
図9に示すように、ロープガード支持プレート115の周方向に関してガードバー123は2つの取付孔124の間に位置している。つまり、この実施例では、ロープガード支持プレート115の全周に亘って前述した実施例のブレーキユニット8のような障害物が存在しないので、前述した実施例のアーム部22bに相当する構成は具備していない。各々のロープガード121は、基部122の取付孔124を通ってロープガード支持プレート115の取付ネジ孔116に螺合する2本のボルト125によって、ロープガード支持プレート115に固定される。
【0044】
このような第2実施例においても、ロープガード支持プレート115に取り付けるロープガード121の個数および各ロープガード121の取付位置は、ロープ105の張り角度などに応じて最適となるように設定される。例えば、
図7の例では、左右の2箇所と上部の1箇所の計3箇所にロープガード121が配置されている。従って、前述した第1実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
以上、この発明の一実施例を説明したが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記の第1、第2実施例では、ロープガード21,121が2本のボルト25,125で固定される構成となっているが、支持剛性を高めるためにさらに多数のボルト、例えば3本のボルトでもって固定する構成であってもよい。このように例えば3本のボルトで固定する場合でも、3個の取付孔を取付ネジ孔16,116の配置に対応した円弧の上に等角度間隔で並べておけば、単位角度(例えば4°、あるいは6°)毎の取付位置の調整が可能である。
【0047】
また、上記第1実施例のロープガード21においては、基部22の一部としてアーム部22bを周方向に延ばすことでガードバー23の位置を2つの取付孔24よりも周方向の一方へ片寄った配置としているが、基部22を単純な矩形状とし、この基部22に接続されるガードバー23の基端部をステップ状に折り曲げることで、ロープ5に対するガードバー23の実質的な位置を同様に周方向に片寄らせた構成も可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…巻き上げ機
2…電動モータ
3…駆動シーブ
4…ロープ溝
5…ロープ
7…ブレーキディスク
8…ブレーキユニット
9…ブレーキディスクカバー
15…ロープガード支持プレート
16…取付ネジ孔
21…ロープガード
22…基部
22b…アーム部
23…ガードバー
101…巻き上げ機
102…電動モータ
103…駆動シーブ
104…ロープ溝
105…ロープ
115…ロープガード支持プレート
116…取付ネジ孔
121…ロープガード
122…基部
123…ガードバー
152…ペデスタル