(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法および電子部品製造装置
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221122BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20221122BHJP
【FI】
H01G4/30 311F
H01G4/30 517
H01G13/00 351
(21)【出願番号】P 2019124080
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅麗
(72)【発明者】
【氏名】田畑 和寛
(72)【発明者】
【氏名】堂岡 稔
(72)【発明者】
【氏名】入江 常雅
(72)【発明者】
【氏名】三上 和宏
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-297117(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021439(WO,A1)
【文献】特開2000-246718(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008876(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着ヘッドの底面にグリーンシートを保持させる工程と、
前記グリーンシートを前記圧着ヘッドから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、前記積層テーブル上に、複数の前記グリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程と、を備え、
少なくとも、前記圧着ヘッドに保持された前記グリーンシート、および、前記積層テーブル上に作製された前記グリーンシート積層体の最上層に積層された前記グリーンシートに、プラズマを照射する、電子部品の製造方法。
【請求項2】
キャリアフィルム上に形成されたグリーンシートを、前記キャリアフィルムから剥離する工程と、
剥離された前記グリーンシートを積層テーブル上に積層し、加熱圧着して、複数の前記グリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程と、を備え、
前記グリーンシートを前記キャリアフィルムから剥離するよりも前の時点において、前記キャリアフィルム上に形成された前記グリーンシートに、プラズマを照射する、電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記プラズマが照射された後の前記グリーンシートの表面における水の接触角が、75°以上、85°以下である、請求項1
または2に記載された電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記グリーンシートの主面上に導電性ペーストを塗布して電極膜を形成する工程を備え、
前記プラズマが照射された後の前記電極膜の表面における水の接触角が、80°以上、90°以下である、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載された電子部品の製造方法。
【請求項5】
圧着ヘッドと、積層テーブルと、を備え、
前記圧着ヘッドの底面にグリーンシートを保持させ、
前記グリーンシートを前記圧着ヘッドから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、前記積層テーブル上に、複数の前記グリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する、電子部品製造装置であって、
前記圧着ヘッドに保持された前記グリーンシートにプラズマを照射する、第2プラズマ照射装置と、
前記圧着ヘッドに取付けられ、前記圧着ヘッドとともに移動し、前記積層テーブル上に作製された前記グリーンシート積層体の最上層に積層された前記グリーンシートにプラズマを照射する、第3プラズマ照射装置と、を更に備えた、電子部品製造装置。
【請求項6】
キャリアフィルムを搬送する搬送ローラと、圧着ヘッドと、積層テーブルと、を備え、
前記圧着ヘッドの底面にグリーンシートを保持させ、
前記グリーンシートを前記圧着ヘッドから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、前記積層テーブル上に、複数の前記グリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する、電子部品製造装置であって、
前記搬送ローラに取付けられ、前記搬送ローラとともに移動し、前記圧着ヘッドに保持された前記グリーンシートにプラズマを照射する、第4プラズマ照射装置と、
前記搬送ローラに取付けられ、前記搬送ローラとともに移動し、前記積層テーブル上に作製された前記グリーンシート積層体の最上層に積層された前記グリーンシートにプラズマを照射する、第5プラズマ照射装置と、を更に備えた、電子部品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関し、更に詳しくは、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程を備えた電子部品の製造方法に関する。また、本発明は、本発明の電子部品の製造方法を実施する際に使用するのに適した、電子部品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック層が積層されたセラミック積層体を備えた電子部品の製造方法においては、通常、複数のセラミックのグリーンシートを積層し、加熱圧着して、グリーンシート積層体を作製する工程を備えている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開2005-217278号公報)には、圧着ローラの外周面に保持されたグリーンシートを、積層テーブルの上に積層し、加熱圧着して、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程を備えた電子部品の製造方法が開示されている。また、特許文献2(特許第2998503号公報)には、圧着ヘッドの底面に保持されたグリーンシートを、積層テーブルの上に積層し、加熱圧着して、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程を備えた電子部品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-217278号公報
【文献】特許第2998503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のグリーンシートが相互に良好に加熱圧着された、品質の高いグリーンシート積層体を製造するためには、加熱圧着の温度、圧力、時間の条件を適正に設定する必要がある。
【0006】
しかしながら、加熱圧着の温度、圧力と、加熱圧着に要する時間とは、相反する関係にあり、加熱圧着に要する時間を短くするためには、加熱圧着の温度を高くしたり、加熱圧着の圧力を大きくしたりする必要があった。逆に、加熱圧着の温度を低くしたり、加熱圧着の圧力を小さくしたりするためには、加熱圧着の時間を長くする必要があった。一方、加熱圧着の温度を高くし過ぎたり、加熱圧着の圧力を大きくし過ぎたりすると、グリーンシート積層体に過度なストレスがかかり、グリーンシート積層体に歪が発生する虞がある。そのため、加熱圧着の温度を高くしたり、加熱圧着の圧力を大きくしたりするのには限界があり、加熱圧着の時間を短くするのには限界があった。
【0007】
そこで、本発明は、加熱圧着の温度を高くしたり、加熱圧着の圧力を高くしたり、加熱圧着の時間を長くしたりする以外の方法によって、グリーンシート積層体のグリーンシート相互間の接合強度を高めることができる、電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様にかかる電子部品の製造方法は、従来の課題を解決するために、圧着ローラの外周面にグリーンシートを保持させる工程と、グリーンシートを、加工点において、圧着ローラから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、積層テーブル上に、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程と、を備え、少なくとも、圧着ローラに保持されたグリーンシートの加工点に至る直前の部分、および、積層テーブル上に作製されたグリーンシート積層体の最上層に積層されたグリーンシートの加工点に至る直前の部分に、プラズマを照射するものとする。
【0009】
また、本発明の別の実施態様にかかる電子部品の製造方法は、圧着ヘッドの底面にグリーンシートを保持させる工程と、グリーンシートを圧着ヘッドから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、積層テーブル上に、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程と、を備え、少なくとも、圧着ヘッドに保持されたグリーンシート、および、積層テーブル上に作製されたグリーンシート積層体の最上層に積層されたグリーンシートに、プラズマを照射するものとする。
【0010】
また、本発明の更に別の実施態様にかかる電子部品の製造方法は、キャリアフィルム上に形成されたグリーンシートを、キャリアフィルムから剥離する工程と、剥離されたキャリアフィルムを積層テーブル上に積層し、加熱圧着して、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する工程と、を備え、グリーンシートをキャリアフィルムから剥離するよりも前の時点において、キャリアフィルム上に形成されたグリーンシートに、プラズマを照射するものとする。
【0011】
また、本発明の一実施態様にかかる電子部品の製造装置は、圧着ローラと、積層テーブルと、を備え、圧着ローラの外周面にグリーンシートを保持させ、グリーンシートを加工点において圧着ローラから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、積層テーブル上に、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する、電子部品製造装置であって、少なくとも、圧着ローラに保持されたグリーンシートの加工点に至る直前の部分、および、グリーンシート積層体の最上層に積層されたグリーンシートの加工点に至る直前の部分にプラズマを照射する、第1プラズマ照射装置を更に備えたものとする。
【0012】
また、本発明の別の実施態様にかかる電子部品の製造装置は、圧着ヘッドと、積層テーブルと、を備え、圧着ヘッドの底面にグリーンシートを保持させ、グリーンシートを圧着ヘッドから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、積層テーブル上に、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する、電子部品製造装置であって、圧着ヘッドに保持されたグリーンシートにプラズマを照射する、第2プラズマ照射装置と、圧着ヘッドに取付けられ、圧着ヘッドとともに移動し、積層テーブル上に作製されたグリーンシート積層体の最上層に積層されたグリーンシートにプラズマを照射する、第3プラズマ照射装置と、を更に備えたものとする。
【0013】
また、本発明の更に別の実施態様にかかる電子部品の製造装置は、キャリアフィルムを搬送する搬送ローラと、圧着ヘッドと、積層テーブルと、を備え、圧着ヘッドの底面にグリーンシートを保持させ、グリーンシートを圧着ヘッドから積層テーブルに受け渡し、加熱圧着して、積層テーブル上に、複数のグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を作製する、電子部品製造装置であって、搬送ローラに取付けられ、搬送ローラとともに移動し、圧着ヘッドに保持されたグリーンシートにプラズマを照射する、第4プラズマ照射装置と、搬送ローラに取付けられ、搬送ローラとともに移動し、積層テーブル上に作製されたグリーンシート積層体の最上層に積層されたグリーンシートにプラズマを照射する、第5プラズマ照射装置と、を更に備えたものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子部品の製造方法によれば、グリーンシートが相互に良好に加熱圧着された、品質の高いグリーンシート積層体を作製することができる。
【0015】
また、本発明の電子部品の製造方法によれば、グリーンシートが相互に良好に加熱圧着された品質の高いグリーンシート積層体を作製するにあたり、加熱圧着の温度および圧力が同じであれば、加熱圧着に要する時間を短くすることができる。また、加熱圧着の時間が同じであれば、加熱圧着の温度および圧力の少なくとも一方を、低くまたは小さくすることができる。また、同時に、加熱圧着の時間を短くし、加熱圧着の温度を低くし、加熱圧着の圧力を小さくすることもできる。
【0016】
本発明の電子部品製造装置を使用すれば、本発明の電子部品の製造方法を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置1000の要部概略図である。
【
図2】電子部品製造装置1000の圧着ローラ4を示す断面図である。
【
図3】
図3(A)~(C)は、それぞれ、第1実施形態にかかる電子部品の製造方法における剥離工程を示す正面図である。
【
図4】
図4(A)~(C)は、それぞれ、第1実施形態にかかる電子部品の製造方法における剥離工程を示す説明図である。
【
図5】
図5(A)~(C)は、それぞれ、第1実施形態にかかる電子部品の製造方法における積層工程を示す正面図である。
【
図6】
図6(A)~(C)は、それぞれ、第1実施形態にかかる電子部品の製造方法における積層工程を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態の電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置2000の要部概略図である。
【
図8】
図8(A)~(C)は、それぞれ、第2実施形態の電子部品の製造方法におけるプラズマの照射を示す正面図である。
【
図9】第3実施形態の電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置3000の要部概略図である。
【
図10】
図10(A)~(C)は、それぞれ、第3実施形態の電子部品の製造方法におけるプラズマの照射を示す正面図である。
【
図11】第4実施形態の電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置4000の要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0019】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0020】
[第1実施形態]
以下においては、まず、第1実施形態の電子部品の製造方法の概略について説明し、その後に各工程の詳細について説明する。なお、製造する電子部品の種類は任意であるが、本実施形態においては、一例として積層セラミックコンデンサを製造する。
【0021】
図1に、第1実施形態にかかる電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置1000の要部概略図を示す。
【0022】
電子部品製造装置1000は、カット領域A1と、剥離領域A2と、積層領域A3とを備えている。
【0023】
電子部品製造装置1000は、後述する、主面にマザーグリーンシート5が形成されたキャリアフィルム6を搬送する搬送ローラ1a、1b、1c、1dを備えている。搬送ローラ1a~1dは、キャリアフィルム6を搬送するとともに、キャリアフィルム6に張力を与えたり、キャリアフィルム6の搬送方向を変更したりする機能を有している。なお、搬送ローラ1a~1dのうち、搬送ローラ1a、1dは、自ら回転して、キャリアフィルム6を駆動する機能を有する駆動ローラである。
【0024】
搬送ローラ1a~1dによって、主面に長尺状のマザーグリーンシート5が形成されたキャリアフィルム6が、カット領域A1および剥離領域A2に搬送される。
【0025】
カット領域A1において、キャリアフィルム6の搬送が停止され、カット刃3a、3bによって、マザーグリーンシート5が矩形状のグリーンシート7にカットされる。
【0026】
カットされたグリーンシート7およびキャリアフィルム6が、搬送ローラ1a~1dによって、剥離領域A2に搬送される。
【0027】
電子部品製造装置1000は、剥離領域A2および積層領域A3に、両者の間を往復移動する圧着ローラ4を備えている。
【0028】
圧着ローラ4は、剥離領域A2において、キャリアフィルム6からグリーンシート7を剥離し、剥離したグリーンシート7を自らの外周面に保持する。そして、グリーンシート7を保持した圧着ローラ4は、積層領域A3に移動する。
【0029】
電子部品製造装置1000は、積層領域A3に、水平方向に往復移動する積層テーブル9を備えている。また、電子部品製造装置1000は、積層領域A3に、プラズマ照射装置(第1プラズマ照射装置)11を備えている。
【0030】
積層領域A3において、圧着ローラ4は、保持していたグリーンシート7を積層テーブル9に受け渡す。そして、積層テーブル9の上面に、圧着ローラ4から受け渡された複数のグリーンシート7が、順次、積層され、加熱圧着されて、グリーンシート積層体10が作製される。なお、加熱圧着に先立ち、プラズマ照射装置11によって、圧着ローラ4に保持されたグリーンシート7と、グリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7とに対し、プラズマが照射される。
【0031】
次に、グリーンシート積層体10が複数の電子部品分のグリーンシート積層体を含んでいる場合は、グリーンシート積層体10を複数の個片のグリーンシート積層体に分割する。
【0032】
次に、グリーンシート積層体10、または、個片に分割されたグリーンシート積層体を、所定のプロファイルで焼成し、セラミック積層体(図示せず)を作製する。
【0033】
最後に、セラミック積層体の外表面に外部電極を形成して、本実施形態にかかる電子部品(積層セラミックコンデンサ)が完成する。
【0034】
以上、本実施形態の電子部品の製造方法の概略について説明した。次に、各工程の詳細について説明する。
【0035】
まず、キャリアフィルム6を用意する。キャリアフィルム6の材質は任意であるが、たとえば、PET(polyethylene terephthalate;ポリエチレンテレフタレート)、PP(polypropylene;ポリプロピレン)、PEN(polymethylpentene;ポリメチルペンテン)などを使用することができる。また、キャリアフィルム6の長さ、幅、厚みなどの寸法は任意であり、所望のものを使用することができる。
【0036】
次に、製造する電子部品に応じた材質、粒径などからなるセラミックスの粉末、バインダ樹脂、溶剤、必要に応じて可塑剤などを用意し、これらを湿式混合してセラミックスラリーを作製する。本実施形態においては一例として積層セラミックコンデンサを製造するため、セラミックスに、誘電体セラミックスを使用する。
【0037】
次に、キャリアフィルム6上に、セラミックスラリーを、ダイコータ、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなどを用いてシート状に塗布し、乾燥させる。なお、塗布するセラミックスラリーの厚みは任意であり、所望するマザーグリーンシート5の厚みにより、適宜、設定する。また、セラミックスラリーの塗布方法も任意であり、コーターに代えて、ドクターブレードなどを使用してもよい。
【0038】
以上により、一方の主面に長尺状のマザーグリーンシート5が形成されたキャリアフィルム6が完成する。
【0039】
次に、内部電極を形成するために、マザーグリーンシート5の上側の主面に、導電性ペーストを所望のパターンに印刷する。なお、マザーグリーンシート5において、積層セラミックコンデンサの上下の保護層となるグリーンシートを作製する部分には、導電性ペーストは印刷しない。なお、本願の図面においては、煩雑になって見にくくなることを避けるために、マザーグリーンシート5およびグリーンシート7に印刷された導電性ペーストは、図示を省略している。
【0040】
次に、
図1に示すように、マザーグリーンシート5が形成されたキャリアフィルム6を、電子部品製造装置1000に供給する。マザーグリーンシート5が形成されたキャリアフィルム6は、搬送ローラ1a~1dによって、カット領域A1および剥離領域A2に搬送される。
【0041】
次に、カット領域A1において、長尺状のマザーグリーンシート5を矩形状のグリーンシート7にカットする。具体的には、まず、マザーグリーンシート5が形成されたキャリアフィルム6の搬送を停止する。次に、カット刃3a、3bを下降させ、マザーグリーンシート5をグリーンシート7にカットする。
【0042】
次に、搬送ローラ1a~1dによって、キャリアフィルム6を間欠的に搬送し、カットされたグリーンシート7を剥離領域A2に搬送するとともに、カット領域A1にマザーグリーンシート5の次にカットすべき部分を搬送する。
【0043】
上述したとおり、電子部品製造装置1000は、剥離領域A2および積層領域A3に、両者の間を往復移動する圧着ローラ4を備えている。本実施形態においては、圧着ローラ4は、積層領域A3において積層されたグリーンシート7を圧着するだけではなく、剥離領域A2においてグリーンシート7をキャリアフィルム6から剥離して保持するとともに、保持したグリーンシート7を剥離領域A2から積層領域A3に搬送する。すなわち、本実施形態においては、圧着ローラ4は、剥離ローラおよび搬送ローラを兼ねている。
【0044】
本実施形態においては、圧着ローラ4は、
図2に示すように、外周面に通気孔4aが形成され、マルチチャンバーサクションローラ構造を備えている。圧着ローラ4は、外周面の領域ごとに、また時間の経過ごとに、通気孔4aの状態を、吸引状態、排気状態(ブロー状態)、大気開放状態などの任意の状態にすることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、圧着ローラ4には、保持したグリーンシート7を加熱するために、熱源4bが設けられている。熱源4bの種類は任意であるが、たとえば、カートリッジヒータ、プレートヒータなどの抵抗加熱方式、誘導加熱、誘電加熱方式、熱媒を利用したヒートポンプ方式などを使用することができる。
【0046】
圧着ローラ4の材質は任意であるが、たとえば、アルミ、カーボン、SUSなどを使用することができる。圧着ローラ4の直径は任意であるが、たとえば、50mm以上、1000mm以下とすることができる。
【0047】
次に、
図3(A)~(C)、
図4(A)~(C)に示すように、剥離領域A2において、圧着ローラ4によって、キャリアフィルム6上に形成されたグリーンシート7をキャリアフィルム6から剥離し、剥離したグリーンシート7を、圧着ローラ4の外周面に保持する。なお、
図3(A)~(C)は正面図である。また、
図4(A)~(C)は説明図であり、圧着ローラ4の通気孔4aの状態(吸引状態、大気開放状態、排気状態)を示している。なお、
図3(A)と
図4(A)、
図3(B)と
図4(B)、
図3(C)と
図4(C)は、それぞれ、同じ時点を示している。
【0048】
まず、
図3(A)、
図4(A)に示すように、キャリアフィルム6によって、矩形状のグリーンシート7が剥離領域A2に搬送され、その先端が圧着ローラ4の最下部に当接する。この時点では、圧着ローラ4の通気孔4aは大気開放状態(又は排気状態)にあり、吸引はしていない。
【0049】
次に、
図3(B)、
図4(B)に示すように、キャリアフィルム6によってグリーンシート7を更に搬送し、それに同期させて圧着ローラ4を回転させる。このとき、通気孔4aは、圧着ローラ4の最下部を越えると、順次、大気開放状態(又は排気状態)から吸引状態に切り替わり、グリーンシート7を吸引する。そして、圧着ローラ4の回転に伴って、グリーンシート7がキャリアフィルム6から剥離される。
【0050】
次に、
図3(C)、
図4(C)に示すように、グリーンシート7がキャリアフィルム6から完全に剥離され、グリーンシート7が圧着ローラ4の外周面に保持される。
【0051】
本実施形態においては、圧着ローラ4の外周面に保持されたグリーンシート7が、圧着ローラ4の熱源4bによって加熱される。
【0052】
次に、グリーンシート7を保持した圧着ローラ4が、
図1に示すように、積層領域A3に移動する。ただし、圧着ローラ4を積層領域A3に移動させる代わりに、搬送ローラ1bをキャリアフィルム6とともに水平方向に退避させたうえ(
図1における左側に退避させたうえ)、圧着ローラ4の直下に積層テーブル9を配置してもよい。すなわち、剥離領域A2と同じ位置に、積層領域A3を設けてもよい。
【0053】
上述したとおり、電子部品製造装置1000は、積層領域A3に、積層テーブル9を備えている。積層テーブル9は、水平方向に往復移動する。
【0054】
本実施形態においては、積層テーブル9には、グリーンシート積層体10を加熱するために、熱源9aが設けられている。熱源9aの種類は任意であるが、たとえば、カートリッジヒータ、プレートヒータなどの抵抗加熱方式、誘導加熱、誘電加熱方式、熱媒を利用したヒートポンプ方式などを使用することができる。
【0055】
また、上述したとおり、電子部品製造装置1000は、積層領域A3に、プラズマ照射装置(第1プラズマ照射装置)11を備えている。
【0056】
図5(A)~(C)、
図6(A)~(C)に、積層領域A3において、グリーンシート7を積層してグリーンシート積層体10を作製する工程を示す。なお、
図5(A)~(C)は正面図である。また、
図6(A)~(C)は説明図であり、圧着ローラ4の通気孔4aの状態(吸引状態、大気開放状態、排気状態)を示している。なお、図
5(A)と図
6(A)、図
5(B)と図
6(B)、図
5(C)と図
6(C)は、それぞれ、同じ時点を示している。
【0057】
まず、
図5(A)、
図6(A)に示すように、グリーンシート7が保持された、圧着ローラ4の下に、積層テーブル9を移動させる。なお、
図5(A)、
図6(A)においては、積層テーブル9上に、既に複数のグリーンシート7が積層され、加熱圧着されて、作製途中のグリーンシート積層体10が存在している。ただし、1層目のグリーンシート7を積層する場合には、積層テーブル9上にグリーンシート積層体10(グリーンシート7)は存在していない。
【0058】
図5(A)、
図6(A)は、加工点Pにおいて、圧着ローラ4に保持されたグリーンシート7の先端と、作製途中のグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7の先端とが、接した時点を示している。加工点Pとは、圧着ローラ4に保持されたグリーンシート7が圧着ローラ4から積層テーブル9に受け渡され、圧着ローラ4と積層テーブル9とで、受け渡されたグリーンシート7の下側主面を、作製途中のグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7の上側主面に加熱圧着する点をいう。
【0059】
図5(A)、
図6(A)に示す時点においては、圧着ローラ4の通気孔4aは吸引状態にあり、グリーンシート7は圧着ローラ4に保持されている。
【0060】
本実施形態においては、積層テーブル9上の(作製途中または作製後の)グリーンシート積層体10が、積層テーブル9の熱源9aによって加熱される。
【0061】
積層領域A3においては、プラズマ照射装置(第1プラズマ照射装置)11によって、少なくとも、圧着ローラ4に保持されたグリーンシート7の加工点Pに至る直前の部分、および、作製途中のグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7の加工点Pに至る直前の部分に、プラズマを照射する。プラズマを照射するのは、グリーンシート7の表面に親水基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、カルボニル基など)を付与し、作製途中のグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7と、新たに積層されるグリーンシート7との接合力を向上させるためである。
【0062】
プラズマ照射装置11の種類は任意であるが、たとえば、汎用されている大気圧プラズマ照射装置を使用することができる。また、プラズマの照射に、たとえば窒素やアルゴンなどのガスを使用してもよい。
【0063】
グリーンシート7の表面は、プラズマを照射することにより、親水性が高まる。親水性は水の接触角で評価することができるが、プラズマを照射することにより、グリーンシート7の表面の水の接触角は小さくなる。プラズマを照射した後のグリーンシート7の表面の具体的な接触角の大きさは任意であるが、たとえば、グリーンシート7の電極膜(導電性ペースト)が形成されていない部分において、75°以上、85°以下であることが好ましい。また、グリーンシート7の電極膜(導電性ペースト)が形成されている部分において、80°以上、90°以下であることが好ましい。これらの場合には、グリーンシート7どうしの接合力を格段に向上させることができる。
【0064】
次に、
図5(B)、
図6(B)に示すように、圧着ローラ4を回転させ、それに同期させて、積層テーブル9を回転と同じ方向(
図5(B)、
図6(B)における右方向)に移動させる。このとき、通気孔4aは、圧着ローラ4の最下部(加工点P)を越えると、順次、吸引状態から排気状態(又は大気開放状態)に切り替わる。この結果、圧着ローラ4に保持されたグリーンシート7が、積層テーブル9上の作製途中のグリーンシート積層体10の最上層に積層され、加熱圧着される。
【0065】
次に、
図5(C)、
図6(C)に示すように、グリーンシート7がグリーンシート積層体10に完全に加熱圧着されて、当該グリーンシート7の積層が完了する。
【0066】
以上のグリーンシート7の積層、加熱圧着を、予定の回数繰り返すことによって、グリーンシート積層体10が完成する。
【0067】
次に、必要に応じて、グリーンシート積層体10を複数の個片のグリーンシート積層体に分割する。
【0068】
次に、グリーンシート積層体10、または、個片に分割されたグリーンシート積層体を、所定のプロファイルで焼成し、セラミック積層体(図示せず)を作製する。このとき、層間に設けられた導電性ペーストも焼成され、セラミック積層体の層間に内部電極が形成される。
【0069】
最後に、セラミック積層体の外表面に外部電極を形成して、本実施形態にかかる電子部品(積層セラミックコンデンサ)が完成する。
【0070】
本実施形態の電子部品の製造方法においては、加熱圧着の工程において、圧着ローラ4に保持されたグリーンシート7の加工点Pに至る直前の部分、および、作製途中のグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7の加工点Pに至る直前の部分にプラズマを照射するため、グリーンシート7どうしの接合力が向上している。したがって、本実施形態の電子部品の製造方法によれば、加熱圧着の温度および圧力が同じであれば、加熱圧着に要する時間を短くすることができる。そして、その結果、電子部品を製造する生産性を向上させることができる。また、加熱圧着の時間が同じであれば、加熱圧着の温度および圧力の少なくとも一方を、低くまたは小さくすることができる。そして、その結果、グリーンシート積層体10に発生する歪を抑制することができ、品質の高い電子部品を製造することができる。
【0071】
なお、プラズマの照射によるグリーンシート7の表面の親水性の向上は、時間の経過とともに効力が低下する。しかしながら、本実施形態においては、加熱圧着の直前にグリーンシート7の表面にプラズマを照射しているため、グリーンシート7どうしが高い接合力で加熱圧着される。
【0072】
[第2実施形態]
図7に、第2実施形態にかかる電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置2000の要部概略図を示す。
【0073】
電子部品製造装置2000は、第1実施形態において使用した電子部品製造装置1000の構成の一部に変更を加えた。
【0074】
具体的には、電子部品製造装置1000では、剥離領域A2におけるキャリアフィルム6からのグリーンシート7の剥離と、剥離領域A2から積層領域A3へのグリーンシート7の搬送と、積層領域A3におけるグリーンシート7の積層に、圧着ローラ4を使用した。電子部品製造装置2000は、これを変更し、剥離領域A2におけるキャリアフィルム6からのグリーンシート7の剥離と、剥離領域A2から積層領域A3へのグリーンシート7の搬送と、積層領域A3におけるグリーンシート7の積層に、圧着ヘッド24を使用する。圧着ヘッド24は、底面に通気孔24aが形成されており、時間ごとに、通気孔24aの状態を、吸引状態、排気状態(ブロー状態)、大気開放状態などの任意の状態にすることができる。また、圧着ヘッド24は、保持したグリーンシート7を加熱するために、熱源24bが設けられている。圧着ヘッド24は、剥離領域A2と積層領域A3との間を往復移動する。
【0075】
また、電子部品製造装置1000では、積層領域A3に、水平方向に往復移動する積層テーブル9を備えていた。電子部品製造装置2000は、これを変更し、積層領域A3に、水平方向に往復移動しない積層テーブル29を設けている。積層テーブル29には、積層テーブル29上に作製されたグリーンシート積層体10を加熱するために、熱源29aが設けられている。
【0076】
また、電子部品製造装置1000では、積層領域A3に、圧着ローラ4に保持されたグリーンシート7と、グリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7とに対しプラズマを照射する、プラズマ照射装置(第1プラズマ装置)11を備えていた。電子部品製造装置2000は、これを変更し、剥離領域A2と積層領域A3との間に、圧着ヘッド24に保持されたグリーンシート7にプラズマを照射するプラズマ照射装置(第2プラズマ照射装置)32を設けるとともに、圧着ヘッド24に、圧着ヘッド24とともに移動し、積層テーブル29上に作製されたグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7にプラズマを照射するプラズマ照射装置(第3プラズマ照射装置)33を取付けている。
【0077】
本実施形態においては、剥離領域A2において、圧着ヘッド24によって、キャリアフィルム6からのグリーンシート7を剥離する。具体的には、まず、剥離領域A2において、キャリアフィルム6の搬送を停止させる。次に、圧着ヘッド24を下降させ、底面を、キャリアフィルム6上に設けられたグリーンシート7に当接させ、通気孔24aによってグリーンシート7を吸引する。次に、圧着ヘッド24を上昇させることにより、グリーンシート7がキャリアフィルム6から剥離される。剥離されたグリーンシート7は、通気孔24aによる吸引によって、圧着ヘッド24の底面に保持される。
【0078】
次に、
図8(A)~(C)に示すように、底面にグリーンシート7を保持した圧着ヘッド24を、剥離領域A2から積層領域A3へ移動させる。なお、
図8(A)~(C)は、プラズマの照射を示す正面図である。
【0079】
この圧着ヘッド24の剥離領域A2から積層領域A3への移動において、まず、
図8(A)に示すように、プラズマ照射装置32によって、圧着ヘッド24の底面に保持されたグリーンシート7にプラズマが照射される。
【0080】
次に、圧着ヘッド24が積層領域A3の方向へ進むと、
図8(B)に示すように、圧着ヘッド24に取付けられたプラズマ照射装置33によって、積層テーブル29上に作製されたグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7にプラズマが照射される。
【0081】
次に、圧着ヘッド24が積層領域A3の方向へ更に進むと、
図8(C)に示すように、プラズマ照射装置32による圧着ヘッド24の底面に保持されたグリーンシート7へのプラズマの照射が終了する。そして、図示しないが、圧着ヘッド24が積層領域A3に到着すると、プラズマ照射装置33による積層テーブル29上に作製されたグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7へのプラズマの照射が終了する。
【0082】
次に、図示しないが、積層領域A3において、圧着ヘッド24を下降させ、圧着ヘッド24の底面に保持されたグリーンシート7を、積層テーブル29上に作製されたグリーンシート積層体10の最上層に積層し、加熱圧着する。次に、圧着ヘッド24の通気孔24aを、吸引状態から、排気状態(ブロー状態)または大気開放状態に切替えたうえで、圧着ヘッド24を上昇させることによって、圧着ヘッド24に保持されたグリーンシート7の積層テーブル29上に作製されたグリーンシート積層体10への加熱圧着が完了する。なお、加熱圧着の工程においては、圧着ヘッド24を下降させる代わりに、積層テーブル29を上昇させてもよい。あるいは、圧着ヘッド24を下降させるのに加えて、積層テーブル29を上昇させてもよい。
【0083】
第2実施形態においても、加熱圧着の直前にグリーンシート7の表面にプラズマを照射しているため、グリーンシート7どうしが高い接合力で加熱圧着される。
【0084】
[第3実施形態]
図9に、第3実施形態にかかる電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置3000の要部概略図を示す。
【0085】
電子部品製造装置3000は、第2実施形態において使用した電子部品製造装置2000の構成の一部に変更を加えた。
【0086】
具体的には、電子部品製造装置2000では、剥離領域A2と積層領域A3とが、水平方向において別の位置に存在した。電子部品製造装置2000では、これを変更し、剥離領域A2と積層領域A3とを水平方向において同じ位置に設定した。
【0087】
剥離領域A2と積層領域A3を水平方向において同じ位置に設定したことにともない、電子部品製造装置3000の圧着ヘッド34は、水平方向には移動しない。また、積層テーブル39が、圧着ヘッド34の直下に配置されている。なお、圧着ヘッド34には、底面に通気孔34aが形成され、内部に熱源34bが形成されている。また、積層テーブル39には、内部に熱源39aが形成されている。
【0088】
また、電子部品製造装置3000は、剥離領域A2と積層領域A3を水平方向において同じ位置に設定したことにともない、搬送ローラ1bが、キャリアフィルム6とともに、水平方向(
図9における左側)に退避するようになっている。
【0089】
また、電子部品製造装置3000は、搬送ローラ1bに、搬送ローラ1bとともに移動し、圧着ヘッド34に保持されたグリーンシート7にプラズマを照射するプラズマ照射装置(第4プラズマ照射装置)44と、積層テーブル39上に作製されたグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7にプラズマを照射するプラズマ照射装置(第5プラズマ照射装置)45とが、取付けられている。
【0090】
第3実施形態においても、
図10(A)に示すように、剥離領域A2(積層領域A3でもある)において、第2実施形態と同様に、圧着ヘッド34によって、キャリアフィルム6からグリーンシート7を剥離し、底面に保持する。
【0091】
次に、
図10(B)に示すように、搬送ローラ1bを、キャリアフィルム6とともに、水平方向(
図10における左側)に退避させる。このとき、プラズマ照射装置44によって、圧着ヘッド34に保持されたグリーンシート7にプラズマを照射し、プラズマ照射装置45によって、積層テーブル39上に作製されたグリーンシート積層体10の最上層に積層されたグリーンシート7にプラズマを照射する。
【0092】
次に、
図10(C)に示すように、搬送ローラ1bの退避が完了すると、プラズマ照射装置44によるプラズマ照射、および、プラズマ照射装置45によるプラズマ照射を、それぞれ終了させる。そして、第2実施形態と同様に、圧着ヘッド34を下降させて、圧着ヘッド34の底面に保持されたグリーンシート7を、積層テーブル39上に作製されたグリーンシート積層体10の最上層に積層し、加熱圧着させる。なお、加熱圧着の工程においては、圧着ヘッド34を下降させる代わりに、積層テーブル39を上昇させてもよい。あるいは、圧着ヘッド34を下降させるのに加えて、積層テーブル39を上昇させてもよい。
【0093】
第3実施形態においても、加熱圧着の直前にグリーンシート7の表面にプラズマを照射しているため、グリーンシート7どうしが高い接合力で加熱圧着される。
【0094】
[第4実施形態]
図11に、第4実施形態にかかる電子部品の製造方法において使用する電子部品製造装置4000の要部概略図を示す。
【0095】
上述した第1実施形態~第3実施形態では、グリーンシート7を積層して加熱圧着する直前において、グリーンシート7の表面にプラズマを照射した。第4実施形態においては、これを変更し、カット領域A1において、キャリアフィルム6上に形成された長尺状のマザーグリーンシート5を、矩形状のグリーンシート7にカットするよりも前の段階において、グリーンシート7の表面にプラズマを照射するようにした。
【0096】
具体的には、電子部品製造装置4000では、
図11に示すように、キャリアフィルム6の搬送路において、搬送ローラ1aの前にコンペンセータローラ52が設けられ、コンペンセータローラ52の前に搬送ローラ51eが設けられ、搬送ローラ51eの前にプラズマ照射装置(第6プラズマ照射装置)56が設けられている。電子部品製造装置4000の他の構成は、電子部品製造装置1000と同じにした。
【0097】
電子部品製造装置4000においては、コンペンセータローラ52よりも前では、キャリアフィルム6が連続的に搬送され、コンペンセータローラ52よりも後では、マザーグリーンシート5をグリーンシート7にカットする必要などから、キャリアフィルム6が間欠的に搬送される。
【0098】
電子部品製造装置4000においては、キャリアフィルム6が連続的に搬送される領域において、プラズマ照射装置56によって、長尺状のマザーグリーンシート5にプラズマが照射される。なお、プラズマ照射装置56によるプラズマの照射は、マザーグリーンシート5の主面に導電性ペーストを印刷して内部電極用の電極膜を形成する前であってもよく、後であってもよい。ただし、電極膜(導電性ペースト)の表面の親水性を高めるためには、内部電極用の電極膜を形成した後にプラズマを照射することが好ましい。
【0099】
電子部品製造装置4000においては、グリーンシート7を積層して加熱圧着する直前においては、グリーンシート7へのプラズマの照射はおこなわない。ただし、グリーンシート7を積層して加熱圧着する直前においても、再度、グリーンシート7へプラズマを照射するようにしてもよい。
【0100】
第4実施形態においては、キャリアフィルム6が連続的に搬送される領域において、プラズマ照射装置56によって、マザーグリーンシート5にプラズマが安定的に照射されるため、マザーグリーンシート5の表面の親水性を均一に向上させることができる。
【0101】
第4実施形態においても、グリーンシート7にプラズマが照射されているため、グリーンシート7どうしが高い接合力で加熱圧着される。
【0102】
以上、第1実施形態~第4実施形態にかかる電子部品の製造方法について説明した。また、第1実施形態~第4実施形態において使用する電子部品製造装置1000、2000、3000、4000について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0103】
たとえば、上記実施形態では、電子部品として積層セラミックコンデンサを製造したが、製造する電子部品は積層セラミックコンデンサには限られず、他の種類の電子部品であってもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、圧着ローラ4に熱源4b、圧着ヘッド24、34に熱源24b、34bを設けるとともに、積層テーブル9、29、39に熱源9a、29a、39aを設けたが、熱源4b、24b、34bか、または、熱源9a、29a、39aかのいずれか一方を省略することも可能である。
【0105】
また、上記実施形態では、搬送ローラ1a~1dのうち、搬送ローラ1a、1dを自ら回転してキャリアフィルム6を駆動する駆動ローラとしたが、どの搬送ローラを駆動ローラとするかは任意であり、上記のものには限られない。
【0106】
また、電子部品製造装置1000、4000では、圧着ローラ4が通気孔4aを備えたサクションローラであったが、圧着ローラ4は通気孔を備えないローラであってもよい。また、電子部品製造装置2000、3000において、圧着ヘッド24、34から、通気孔24a、34aを省略することも可能である。
【0107】
本発明の一実施態様、別の実施態様、更に別の実施態様にかかる電子部品の製造方法は、それぞれ、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0108】
これらの電子部品の製造方法において、プラズマが照射された後のグリーンシートの表面における水の接触角が、75°以上、85°以下であることも好ましい。また、これらの電子部品の製造方法において、更に、グリーンシートの主面上に導電性ペーストを塗布して電極膜を形成する工程を備え、プラズマが照射された後の電極膜の表面における水の接触角が、80°以上、90°以下であることも好ましい。これらの場合には、グリーンシートどうしの接合力を格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0109】
1a、1b、1c、1d、51e・・・搬送ローラ
3a、3b・・・カット刃
4・・・圧着ローラ
4a・・・通気孔
4b・・・熱源
5・・・マザーグリーンシート
6・・・キャリアフィルム
7・・・グリーンシート
9、29、39・・・積層テーブル
9a、29a、39a・・・熱源
10・・・グリーンシート積層体
11・・・プラズマ照射装置(第1プラズマ照射装置)
24、34・・・圧着ヘッド
24a、34a・・・通気孔
24b、34b・・・熱源
32・・・プラズマ照射装置(第2プラズマ照射装置)
33・・・プラズマ照射装置(第3プラズマ照射装置)
44・・・プラズマ照射装置(第4プラズマ照射装置)
45・・・プラズマ照射装置(第5プラズマ照射装置)
52・・・コンペンセータローラ
56・・・プラズマ照射装置(第6プラズマ照射装置)
A1・・・カット領域
A2・・・剥離領域
A3・・・積層領域
P・・・加工点