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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】エアバッグの折畳体
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/235 20060101AFI20221122BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20221122BHJP
   B60R 21/201 20110101ALI20221122BHJP
   D03D 1/02 20060101ALI20221122BHJP
   D03D 1/04 20060101ALI20221122BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B60R21/235
B60R21/232
B60R21/201
D03D1/02
D03D1/04
D03D11/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019177700
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054183
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柿本 憲志
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-140086(JP,A)
【文献】特開平05-213138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
D03D 1/02
D03D 1/04
D03D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋織りにより形成されたエアバッグが、平らに展開した状態から折り畳まれるとともに、折り崩れ防止用のテープ材を巻き付けられてなるエアバッグの折畳体であって、
前記エアバッグが、
経糸と緯糸とを織り込んで2層の織物層として形成し、膨張用ガスを流入させる袋部と、
前記袋部の周囲に配置され、経糸と緯糸とを織り込んで1層の織物層とした閉じ部と、
前記閉じ部の周囲における前記エアバッグの外周縁側に配置され、経糸と緯糸とを織り込んで2層の織物層とした端縁部と、
前記テープ材を巻き付ける位置に、袋織り時に形成されるとともに、周囲の織り組織と異なる織り組織により形成された目印
を備え、
前記目印は、前記端縁部の2層の前記織物層における一方の織物層の経糸若しくは緯糸の構成糸を、他方の織物層の緯糸若しくは経糸の構成糸に接結させてなる接結部から形成されており、
前記折畳体は、前記目印に対応して、前記テープ材が巻き付けられて形成されていることを特徴とするエアバッグの折畳体。
【請求項2】
前記エアバッグが、車両のサイドウインドの上縁側に折り畳まれて収納されるカーテンエアバッグとして構成されるとともに、平らに展開された上縁側に、車両に取り付けるための複数の取付タブを備え、
前記折畳体が、前記取付タブを突出させた状態で、平らに展開した前記エアバッグの下縁側を上縁側に接近させるように、ロール折りして形成されて、
前記目印が、前記取付タブを突出させた前記エアバッグの上縁側における前記折畳体の外表面側となる位置に、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグの折畳体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋織りにより形成されたエアバッグが、平らに展開した状態から折り畳まれるとともに、折り崩れ防止用のテープ材を巻き付けられてなるエアバッグの折畳体に関し、例えば、車両に搭載する前に、車両に搭載し易いように、カーテンエアバッグ等のエアバッグを折り畳んで、そして、折り崩れ防止用のテープ材を巻き付けてなる折畳体、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーテンエアバッグでは、車両のサイドウインドの上縁側に、折り畳まれた折畳体として、収納される構成としており、折畳体には、折り崩れしないように複数個所で、テープ材が巻き付けられていた(例えば、特許文献1参照)。このようなカーテンエアバッグでは、平らに展開された上縁側に、車両に取り付けるための複数の取付タブを備えていた。そして、折畳体は、取付タブを突出させた状態で、平らに展開したエアバッグの下縁側を上縁側に接近させるように、ロール折りして形成されて、取付タブからずれた位置に、テープ材を巻き付けていた。テープ材は、エアバッグの膨張時には、飛散せずに破断するような不織布等からなるシート材に粘着剤が塗布されて形成されていた。さらに、従来のエアバッグには、テープ材の巻付位置の目印となるように、上縁側に凹部が設けられていた。そのため、従来の折畳体では、ロール折りによってエアバッグを折り畳んだ後、目印となる凹部に、テープ材を巻き付けて、構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-140086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の折畳体では、テープ材を巻き付ける位置の目印として、袋織りからなるエアバッグの上縁側に設けた凹部が、利用されており、この凹部は、従来、多数のエアバッグを並設させて袋織りで形成した後の裁断に使用するレーザー加工機により、形成されていた。なお、エアバッグを袋織りで形成する際には、多数のエアバッグを形成して、レーザー加工機のレーザー加工により、所定形状に、各エアバッグを裁断して、所定形状のエアバッグを形成していた。
【0005】
そして、レーザー加工による凹部を形成する場合には、裁断した各エアバッグの上縁側に、所定の凹み深さとなるようにレーザー光を当てて行うことから、手間がかかり、さらに、1枚のエアバッグ自体に設ける凹部も、折り崩れ防止用に巻くテープ材の数に応じて、多くなることから、凹部の形成による手間が、折畳体のコストを上昇させる要因になっていた。
【0006】
また、従来の折畳体では、テープ材を巻き付ける目印を凹部としており、凹部にテープ材を巻き付けた後には、そのテープ材を巻き付けた部位が、テープ材の押圧力により、周囲のテープ材で押されられていない部位より、凹み、逆に、テープ材を巻き付けた部位近傍は、テープ材の巻付部位より、若干、膨らむこととなる。そしてさらに、凹部とその凹部近傍のエアバッグの縁とには、エアバッグ自体に、凹部周縁のエアバッグの上縁から凹部の底まで凹む長さ分の差が発生しており、そのため、テープ材の巻付部位近傍の凹部の縁側は、テープ材の押圧力を作用されて巻き付けられた巻付部位より、膨らみ、さらに、凹部の周縁から凹んだ長さ分、浮き上がり易くなって、テープ材の巻付部位から反って捲れる事態が発生する。そして、その反りの捲れが大きくなれば、折畳体の車両への組み付け時に、凹部近傍の捲れて反った縁が、車両の周縁部材に引っ掛らないように、反りを押えたり、あるいは、注意しつつ、組み付けることとなり、円滑な組付作業を阻害する虞れを生じさせていた。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、コストを低減させて形成できるとともに、巻き付けたテープ材の巻付部位とその近傍との外形形状の差を抑制できるエアバッグの折畳体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアバッグの折畳体では、袋織りにより形成されたエアバッグが、平らに展開した状態から折り畳まれるとともに、折り崩れ防止用のテープ材を巻き付けられてなるエアバッグの折畳体であって、
前記エアバッグが、前記テープ材を巻き付ける位置に、袋織り時に形成されるとともに、周囲の織り組織と異なる織り組織により形成された目印、を備え、
該目印に対応して、前記テープ材が巻き付けられて形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る折畳体では、折り畳んだエアバッグに対して、テープ材を巻き付けるための目印が、袋織りして形成するエアバッグの袋織り時に、単に、周囲の織り組織と異なる織り組織として織るだけで、手間無く形成できて、後加工せずに済み、製造コストの上昇を防止できる。また、目印が、凹部のような目印でなく、単に、織り組織の変更で形成できて、エアバッグの目印を設ける部位とその周囲の部位との形状差を設けずに済み、テープ材を巻き付けても、その巻付部位とその近傍の非巻付部位との形状の差を抑制できる。そして、テープ材の巻付部位近傍のエアバッグの縁の捲れを抑制できることから、折畳体の車両への組み付け時に、巻付部位近傍の捲れが防止されて、円滑に、折畳体を、車両に組み付けることができる。
【0010】
したがって、本発明に係るエアバッグの折畳体では、コストを低減させて形成できるとともに、テープ材の巻付部位とその近傍との外形形状の差を抑制することができる
そして、本発明に係るエアバッグの折畳体では、前記エアバッグが、車両のサイドウインドの上縁側に折り畳まれて収納されるカーテンエアバッグとして構成されるとともに、平らに展開された上縁側に、車両に取り付けるための複数の取付タブを備え、
前記折畳体が、前記取付タブを突出させた状態で、平らに展開した前記エアバッグの下縁側を上縁側に接近させるように、ロール折りして形成されて、
前記目印が、前記取付タブを突出させた前記エアバッグの上縁側における前記折畳体の外表面側となる位置に、配設されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成では、テープ材を巻き付けられた折畳体が、テープ材の巻付部位近傍におけるエアバッグの上縁側において、反りや捲れの発生を抑えられており、折畳体の車両への取付時、取付部位近傍のスペースが狭くとも、支障なく、所定の取付タブを車両の取付部位に取り付けて、折畳体を車両に取り付けることができる。
【0012】
そして、本発明に係るエアバッグの折畳体では、袋織りにより形成される前記エアバッグが、
経糸と緯糸とを織り込んで2層の織物層として形成して、膨張用ガスを流入させる袋部と、
該袋部の周囲に配置されて、経糸と緯糸とを織り込んで1層の織物層とした閉じ部と、
前記閉じ部の周囲における前記エアバッグの外周縁側に配置されて、経糸と緯糸とを織り込んで2層の織物層とした端縁部と、
を備え、
前記目印が、前記端縁部の2層の前記織物層における一方の織物層の経糸若しくは緯糸の構成糸を、他方の織物層の緯糸若しくは経糸の構成糸に接結させてなる接結部から、形成されていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、袋織りにより形成するエアバッグの端縁部において、端縁部の2層の織物層における一方の織物層の経糸若しくは緯糸の構成糸を、他方の織物層の緯糸若しくは経糸の構成糸に接結させてなる接結部から、目印が形成されており、単に、2層の織物層からなる端縁部の一方の織物層の経糸若しくは緯糸の構成糸を、他方の織物層の緯糸若しくは経糸の構成糸に接結させるだけで、目印を形成できることから、容易に目印を形成できるとともに、接結部の配置も容易に変更でき、すなわち、目印の形状や寸法を容易に変更でき、巻き付けるテープ材の配置位置に対応する目印の機能の他に、例えば、テープ材を巻く順番を示す機能を目印に付加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のカーテンエアバッグの折畳体を使用したカーテンエアバッグ装置の車内側から見た車両への搭載状態を示す概略正面図である。
図2】実施形態のカーテンエアバッグ装置の車両搭載状態の概略部分断面図であり、図1のII-II部位に対応する。
図3】実施形態のカーテンエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
図4】実施形態のカーテンエアバッグの目印を示す拡大正面図である。
図5図4のV-V部位を示す拡大概略断面図である。
図6】実施形態のカーテンエアバッグの折畳体にテープ材を巻き付ける状態を説明する斜視図である。
図7】実施形態のカーテンエアバッグの折畳体にテープ材を巻き付けた状態の断面図である。
図8】実施形態におけるテープ材を巻き付けた折畳体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ20の折畳体15は、図1,2に示すカーテンエアバッグ装置Sに使用される。実施形態のカーテンエアバッグ装置Sは、前後2つのサイドウインドW1,W2を有した二列シートタイプの車両Vに搭載されている。このカーテンエアバッグ装置Sは、エアバッグ20を折り畳んでなる折畳体15と、インフレーター9と、エアバッグカバー6と、を備えて構成されている。折畳体15は、車両Vの車内側におけるサイドウインドW1,W2の上縁WU側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、収納されている。
【0016】
なお、エアバッグカバー6は、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ2と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング3と、のそれぞれの下縁2a,3aから、構成されて、展開膨張時のエアバッグ20を車内側Iの下方へ突出可能とするために、エアバッグ20に押されて車内側Iに開き可能に、構成されている。
【0017】
インフレーター9は、折畳体15のエアバッグ20に膨張用ガスを供給するもので、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させて、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ20の後述する接続口部24に挿入させ、接続口部24の外周側に配置されるクランプ10を用いて、エアバッグ20に対して連結されている。このインフレーター9は、取付ブラケット11を利用して、車両Vのボディ1側のインナパネル1aの後サイドウインドW2の上方となる位置に、取り付けられている。また、インフレーター9は、図示しないリード線を介して、車両Vの図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が、車両Vの側面衝突や斜突、ロールオーバーを検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動する。
【0018】
エアバッグ20は、図2,3に示すように、ポリエステルやポリアミド等の糸を使用した袋織りにより形成されている。エアバッグ20は、膨張用ガスを流入させて車内側壁部22aと車外側壁部22bとを離すように膨らみ可能なガス流入部22と、膨張用ガスを流入させない非流入部30と、を備えて構成されている。
【0019】
ガス流入部22は、経糸VSと緯糸HS(図5参照)とを織り込む袋織りによる織物層51aを、二層とするように織り込んでなる袋部51から構成されている。そして、実施形態のガス流入部22は、図1~3に示すように、サイドウインドW1,W2の車内側を覆うように、折畳状態から展開膨張する展開膨張部25と、エアバッグ20の上縁20aの前後方向の中央付近から上方へ突出して、インフレーター9と接続される接続口部24と、を備えて構成されている。展開膨張部25は、エアバッグ20の上縁20aに、接続口部24からの膨張用ガスを前後両側に供給可能なガス供給路部26、を配設させるとともに、前サイドウインドW1の車内側を覆い可能な前膨張部27、後サイドウインドW2からリヤピラー部RPの車内側を覆い可能な後膨張部28、及び、中間ピラー部CPから後サイドウインドW2の前部側の車内側を覆い可能な中間膨張部29、を配設させて構成されている。
【0020】
非流入部30は、ガス流入部22の周縁に配置される境界部31と、境界部31からガス流入部22内に進入して、ガス供給路部26、前膨張部27、後膨張部28、及び、中間膨張部29を区画する区画部33と、ガス流入部22内に配設される厚さ規制部35,36,37と、を備えて構成されている。これらの境界部31、区画部33、及び、厚さ規制部35,36,37は、経糸VSと緯糸HSとを織り込んでなる袋織りの織物層を1層とするように織り込まれた閉じ部54から形成されている(図5参照)。
【0021】
さらに、エアバッグ20の非流入部30としては、ガス流入部22の周縁の境界部31から外縁側に延びる周縁部38、を備えて構成されている。周縁部38は、エアバッグ20の周囲の上縁20a、下縁20b、前縁20c、及び、後縁20dに配置されて、これらの縁20a,20b,20c,20dを構成している。周縁部38は、経糸VSと緯糸HSとを織り込む袋織りによる織物層52aを、二層とするように織り込んでなる端縁部52から構成されている(図5参照)。
【0022】
なお、実施形態では、経糸VSと緯糸HSとに、350dtexの繊度のポリアミド製の原糸を使用して、経糸VSの1インチ当たりの打ち込み本数を135本とし、緯糸HSの1インチ当たりの打ち込み本数を121本とし、そして、閉じ部54は、1×1組織等の平織りから形成され、袋部51と周縁部38との各織物層51a,52aは、1×2組織等の斜文織りとしている。
【0023】
エアバッグ20の上縁20a側の周縁部38には、取付タブ40(A~E)が上方へ突出するように、配設されている。各取付タブ40には、折畳体15をサイドウインドW1,W2の上縁WU側に取り付ける取付ボルト等の取付具8を挿通させる取付孔40aが、配設されている。各取付タブ40は、板金等の当板7を配設されて、取付具8により、当板7とともに、サイドウインドW1,W2の上縁WU側のインナパネル1aに取り付けられることとなる。
【0024】
なお、エアバッグ20の前縁20c側には、ポリアミド等の布材からなる取付ベルト45が、元部45bを縫着させて、配設されている。取付ベルト45の先端45aには、取付孔45aaが配設されている。この取付ベルト45は、先端45aに当板7を配設されて、取付具8により、当板7とともに、フロントピラー部FPのインナパネル1aに取り付けられることとなる。
【0025】
そして、エアバッグ20には、各取付タブ40の配設される上縁20aに、折り畳まれた折畳体15にテープ材64を巻き付ける目印60が配設されている(図3,4参照)。目印60の配置されるエアバッグ20の上縁20aは、取付タブ40を上方へ突出させた状態で、エアバッグ20を平らに展開した状態として、下縁20b側を上縁20a側に接近させるように、ロール折りして折畳体15を形成した際、折畳体15の外表面16側となる部位としている(図6,7参照)。
【0026】
この目印60は、周囲の織り組織と異なる織り組織により形成されている。具体的には、図5に示すように、エアバッグ20の周縁部38を形成する端縁部52の2層の織物層52aにおける一方の織物層52aaの経糸VS若しくは緯糸HSの構成糸VS1を、他方の織物層52abの緯糸HS若しくは経糸VSの構成糸HS1に接結させてなる接結部58から、形成されており、実施形態の場合、この接結部58を多数、間隔を空けて、配設することにより、目印60が形成されている。
【0027】
実施形態の場合、目印60は、エアバッグ20の上縁20a側の取付タブ40からずれた4箇所に、配設されている。また、各目印60は、その幅寸法WMを、巻き付けるテープ材46の幅寸法WTと略等しくした略長方形としている(図4,6参照)。なお、テープ材46は、粘着剤を塗布した不織布製としている。
【0028】
折畳体15は、取付ベルト45をエアバッグ20の前縁20cに縫着した状態で、エアバッグ20の下縁20bを、車外側壁部22bの側で巻きつつ、上縁20a側まで巻くロール折りを行って、形成されている。なお、ガス供給路部26の領域のエアバッグ20の上縁20a側では、接続口部24から流れる膨張用ガスが前膨張部27と後膨張部28とに流れやすいように、蛇腹折りしている。
【0029】
そして、ガス供給路部26の部位を蛇腹折りしつつ、エアバッグ20をロール折りした後、4箇所の目印60の配置位置に、テープ材64を巻き付ければ、図8に示すように、折畳体15を形成することができる。
【0030】
その後、折畳体15を車両Vに搭載する際には、各取付タブ40と取付ベルト45の先端45aに当板7を取り付けるとともに、接続口部24に、取付ブラケット11を組み付けたインフレーター9を挿入させて、エアバッグ組付体を形成する。このように形成したエアバッグ組付体では、各当板7を、取付タブ40や取付ベルト45とともに、取付具8を使用して、インナパネル1aに取り付け、さらに、インフレーター9に組み付けた取付ブラケット11をインナパネル1aにボルト12止めし、そして、インフレーター9に図示しない制御装置から延びる作動用のリード線を結線すれば、車両Vに取り付けることができて、カーテンエアバッグ装置Sを車両Vに搭載することができる(図1参照)。
【0031】
カーテンエアバッグ装置Sの車両Vへの搭載後において、車両Vの側面衝突時、斜突時、もしくは、ロールオーバー時に、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター9が作動されれば、インフレーター9から吐出される膨張用ガスが、エアバッグ20の接続口部24を経てガス供給路部26に流れ、さらに、ガス供給路部26から各膨張部27,28,29に流れることとなって、折畳体15として折り畳まれたエアバッグ20が、各テープ材64を破断しつつ、膨張し、ピラーガーニッシュ2やルーフヘッドライニング3の下縁2a,3aからなるエアバッグカバー6を押し開いて、図1の二点鎖線に示すように、サイドウインドW1,W2、中間ピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うように、大きく展開膨張することとなる。
【0032】
そして、実施形態におけるエアバッグ20にテープ材64を巻き付けてなる折畳体15では、折り畳んだエアバッグ20に対して、テープ材64を巻き付けるための目印60が、袋織りして形成するエアバッグ20の袋織り時に、単に、周囲の織り組織と異なる織り組織として、接結部58を設けるように織るだけで、手間無く形成できて、後加工せずに済み、製造コストの上昇を防止できる。また、目印60が、凹部のような目印でなく、単に、織り組織の変更で形成できて、エアバッグ20の目印60を設ける部位とその周囲の部位との形状差を設けずに済み、テープ材64を巻き付けても、その巻付部位70とその近傍の非巻付部位71との形状の差を抑制できる(図6,7参照)。そして、テープ材4の巻付部位70近傍のエアバッグ20の縁20aの捲れを抑制できることから、折畳体15の車両Vへの組み付け時に、巻付部位70近傍の捲れが防止されて、円滑に、折畳体15を、車両Vに組み付けることができる。
【0033】
なお、従来の凹部80からなる目印60Zであると、図6図7の括弧書きに示すように、凹部80からなる目印60Zにテープ材64を巻き付けると、その巻付部位70の近傍の非巻付部位71、すなわち、エアバッグ20の上縁20a側における凹部80の縁81側の角部82付近が反って捲れる事態を招き、その折畳体15Zの車両Vへの搭載時、角部82付近の捲れ83が、大きすぎれば、周縁部材と引っ掛る虞れが生じてしまう。
【0034】
したがって、実施形態のエアバッグ20の折畳体15では、コストを低減させて形成できるとともに、テープ材64の巻付部位70とその近傍の非巻付部位71との外形形状の差を抑制することができる。
【0035】
そして、実施形態のエアバッグ20の折畳体15では、エアバッグ20が、車両VのサイドウインドW1,W2の上縁WU側に折り畳まれて収納されるカーテンエアバッグ20として構成されるとともに、平らに展開された上縁20a側に、車両Vに取り付けるための複数の取付タブ40を備えている。折畳体15は、取付タブ40を突出させた状態で、平らに展開したエアバッグ20の下縁20b側を上縁20a側に接近させるように、ロール折りして形成されている。そして、目印60が、取付タブ40を突出させたエアバッグ20の上縁20a側における折畳体15の外表面16側となる位置に、配設されている。
【0036】
そのため、実施形態では、テープ材64を巻き付けられた折畳体15が、テープ材64の巻付部位70近傍におけるエアバッグ20の上縁20a側において、反りや捲れの発生を抑えられており、折畳体15の車両Vへの取付時、図2に示すように、インナパネル1aの車内側I側における取付部位1b近傍のスペースISが狭くとも、支障なく、所定の取付タブ40を車両Vの取付部位1bに取り付けて、折畳体15を車両に取り付けることができる。
【0037】
また、実施形態の折畳体15では、袋織りにより形成されるエアバッグ20が、経糸VSと緯糸HSとを織り込んで2層の織物層51aとして形成して、膨張用ガスを流入させる袋部51と、袋部51の周囲に配置されて、経糸VSと緯糸HSとを織り込んで1層の織物層とした閉じ部54と、閉じ部54の周囲におけるエアバッグ20の外周縁(上縁20a、下縁20b、前縁20c、及び、後縁20d側に配置されて、経糸VSと緯糸HSとを織り込んで2層の織物層52aとした端縁部52と、を備えて構成されている。そして、目印60が、端縁部52の2層の織物層52aにおける一方の織物層52aaの経糸VS若しくは緯糸HSの構成糸VS1を、他方の織物層52abの緯糸HS若しくは経糸VSの構成糸HS1に接結させてなる接結部58から、形成されている。
【0038】
そのため、実施形態では、単に、袋織りの2層の織物層52aからなる端縁部52の一方の織物層の経糸若しくは緯糸の構成糸VS1を、他方の織物層の緯糸若しくは経糸の構成糸HS1に接結させるだけで、目印60を形成できることから、容易に目印60を形成できる。
【0039】
さらに、一方の織物層の経糸若しくは緯糸の構成糸VS1を、他方の織物層の緯糸若しくは経糸の構成糸HS1に接結させて目印を形成する場合には、接結部58の配置も容易に変更できて、例えば、図4の括弧書きに示す目印60A,60Bのように、接結部58の配置や数を調整すれば、形状や寸法を容易に変更でき、巻き付けるテープ材64の配置位置に対応する目印60の他に、例えば、テープ材64を巻く順番を示す機能を目印60A,60Bに付加することもできる。ちなみに、目印60Aは、「I」の記号に近似した印60a1を設けており、、1番目に、テープ材64を巻き付ける箇所として、表示でき、目印60Bは、「II」の記号に近似した印60a2を設けており、2番目に、テープ材64を巻き付ける箇所として、表示できる。
【0040】
そのため、接結部58の数や配置を調整すれば、1つのエアバッグ20に設ける目印として、複数種類、配設することも可能となる。
【0041】
なお、接結部は、袋織りで形成するエアバッグにおける周縁部において、経糸と緯糸とを織り込んで2層の織物層とした端縁部が設けられている場合、それらの2層の織物層相互のバタツキを防止するように、点状に設けられる場合があり、そのような構成のエアバッグに、接結部からなるテープ材を巻き付ける目印を設ける場合には、点状の接結部と相違して、一見して、テープ材を巻き付ける目印であると、視認して区別できるように、巻き付けるテープ材64の幅寸法WT(通常、10~20mmとしており、実施形態の場合は約15mmとしている)に対応して、略同等の幅寸法WHの範囲内に、接結部58を集合させるように配設させて、目印60,60A,60Bを形成することが望ましい。また、目印60の長さWLは、視認しやすいように、テープ材64の幅寸法WTの略1/2程度以上、かつ、他の織り組織となる閉じ部54に到達しない長さ以下として、設けることが望ましい。
【0042】
勿論、端縁部に目印を設ける場合には、接結部によって形成するほか、周縁の織り組織と異なっていればよいことから、経糸と緯糸とを織り込んで1層の織物層とするような閉じ部54を、所定形状、例えば、テープ材64の幅寸法WTと同等の略長方形状に、配設させて、目印としてもよい。さらに、目印は、図例の目印60,60A,60Bのような略長方形に限らず、他の三角形状等と、種々の計形状を採用できる。
【0043】
また、実施形態では、カーテンエアバッグ20を折り畳んで折畳体15を例示したが、折り畳んだエアバッグにテープ材を巻き付けて折畳体とする構成であれば、本発明は、カーテンエアバッグの折畳体に限定されるものではない。
【0044】
さらに、実施形態では、取付タブ40(A~E)を、袋織りしたエアバッグ20と一体的に形成する場合を示したが、取付タブ40は、取付ベルト45と同様に、別体として、袋織りするエアバッグ20の上縁20aに、縫着させてもよい。
【符号の説明】
【0045】
15…折畳体、16…外表面、20…エアバッグ、40(A,B,C,D)…取付タブ、51…袋部、51a…織物層、52…端縁部、52a…織物層、54…閉じ部、58…接結部、60,60A,60B…目印、64…テープ材、70…巻付部位、71…非巻付部位、
VS…経糸、HS…緯糸、VS1,HS1…(織物層52aa)構成糸、V…車両、W1,W2…サイドウインド、WU…上縁。
図1
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図7
図8