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特許7180581インダクタ部品及びインダクタ部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】インダクタ部品及びインダクタ部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20221122BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20221122BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20221122BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F17/00 B
H01F41/04 C
H01F27/28 104
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019182905
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021061275
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩司
(72)【発明者】
【氏名】金本 陸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克文
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170321(JP,A)
【文献】特開2019-046993(JP,A)
【文献】特開2019-134141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 41/04
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層のインダクタ配線と、
前記インダクタ配線における第1面側に配置された第1磁性層と、
前記インダクタ配線における前記第1面とは反対側の第2面側に積層されている第2磁性層と、
前記第1磁性層を貫通して前記インダクタ配線に接続されている垂直配線と、を備え、
前記第2磁性層の主面に直交する方向を法線方向としたとき、
前記第1磁性層の前記法線方向の寸法である第1磁性層厚みは、前記第2磁性層の前記法線方向の寸法である第2磁性層厚みよりも小さく、
前記インダクタ配線の前記法線方向の寸法であるインダクタ配線厚みは、前記垂直配線の前記法線方向の寸法である垂直配線厚みの0.5倍より大きく、且つ1.5倍未満である
インダクタ部品。
【請求項2】
前記インダクタ配線は、前記垂直配線と接続されているパッドと、前記パッドに接続されている配線本体と、を有しており、
前記インダクタ配線厚みは、前記配線本体の延びる方向に垂直な断面において、前記インダクタ配線厚みと直交する方向の前記配線本体の寸法であるインダクタ配線幅よりも小さい
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記インダクタ配線の組成は、銅の比率が99wt%以上で硫黄の比率が0.1wt%以上1.0wt%未満である
請求項1又は請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記インダクタ配線のターン数は、1.0ターン未満である
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記インダクタ配線厚みは、40μm以上且つ、55μm以下である
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記インダクタ配線は、前記垂直配線と接続されているパッドと、前記パッドに接続されている配線本体と、を有しており、
前記インダクタ配線と同一層にダミー配線が設けられており、
前記ダミー配線の第1端は、前記インダクタ配線と接続しており、
前記ダミー配線の第2端は、前記インダクタ部品の外面に露出しており、
前記ダミー配線の前記法線方向の寸法であるダミー配線厚みは、前記インダクタ配線厚みと等しく、
前記ダミー配線の延びる方向に垂直な断面において前記ダミー配線厚みと直交する方向の前記ダミー配線の寸法であるダミー配線幅は、前記配線本体が延びる方向に垂直な断面において、前記インダクタ配線厚みと直交する方向の前記配線本体の寸法であるインダクタ配線幅よりも小さい
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記インダクタ配線の外面の少なくとも一部は、前記インダクタ配線よりも絶縁性の高い絶縁樹脂で被覆されている
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記絶縁樹脂は、少なくとも前記インダクタ配線の前記法線方向における前記第2磁性層側の面を被覆している
請求項7に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記インダクタ配線の第1面は、他の層を介することなく前記垂直配線及び前記第1磁性層と接している
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記垂直配線における前記インダクタ配線とは反対側に接続された外部端子と、
前記第1磁性層における前記第2磁性層とは反対側の面を覆う前記第1磁性層よりも絶縁性の高い絶縁層と、を備えている
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記インダクタ配線厚みは、前記垂直配線厚みと等しい
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記インダクタ配線は、同一層内に複数配置されている
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記インダクタ配線を含む層内において、前記インダクタ配線間の最小距離は、前記第1磁性層の平均粒子径の20倍以上である
請求項12に記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記インダクタ配線と同一層にあるダミー配線を備えており、
前記ダミー配線の第1端は、前記インダクタ配線と接続しており、
前記ダミー配線の第2端は、前記インダクタ部品の外面に露出しており、
前記ダミー配線同士の最小距離は、前記インダクタ配線同士の最小距離よりも大きい
請求項12又は請求項13に記載のインダクタ部品。
【請求項15】
前記インダクタ部品の前記法線方向の寸法であるインダクタ部品厚みは、0.300mm以下である
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項16】
絶縁樹脂の第1面の一部を被覆する第1被覆部を形成する第1被覆工程と、
前記絶縁樹脂の第1面のうちの前記第1被覆部に被覆されていない部分にインダクタ配線をめっき法で形成するインダクタ配線加工工程と、
前記第1被覆部における前記絶縁樹脂とは反対側の面である第1面、及び前記インダクタ配線における前記絶縁樹脂とは反対側の面である第1面の一部を被覆する第2被覆部を形成する第2被覆工程と、
前記絶縁樹脂の第1面のうちの前記第2被覆部に被覆されていない部分に垂直配線をめっき法で形成する垂直配線加工工程と、
前記垂直配線加工工程の後、前記第1被覆部及び第2被覆部を取り除く被覆部除去工程と、
前記被覆部除去工程の後、前記インダクタ配線の第1面側に第1磁性層を積層する第1磁性層加工工程と、
前記インダクタ配線の第2面側に第2磁性層を積層する第2磁性層加工工程と、を備えているインダクタ部品の製造方法であって、
前記第2磁性層の主面に直交する方向を法線方向としたとき、
前記垂直配線加工工程では、前記垂直配線の前記法線方向の寸法である垂直配線厚みが、前記インダクタ配線の前記法線方向の寸法であるインダクタ配線厚みの3分の2倍より大きく2倍未満となるように、前記垂直配線を形成し、
前記第2磁性層加工工程では、前記第2磁性層の前記法線方向の寸法である第2磁性層厚みを、前記第1磁性層の前記法線方向の寸法である第1磁性層厚みよりも大きくなるように、前記第2磁性層を加工する
インダクタ部品の製造方法。
【請求項17】
前記第1被覆工程の前に、シード層を形成するシード層形成工程と、
前記被覆部除去工程の後に、前記シード層をエッチングするシード層エッチング工程と、を備えている
請求項16に記載のインダクタ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品及びインダクタ部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインダクタ部品は、非磁性のプリント基板の第1面上に第1インダクタ配線が配置されており、第1インダクタ配線におけるプリント基板とは反対側には第1磁性層が配置されている。また、プリント基板における第1面とは反対側の第2面上に第2インダクタ配線が配置されており、第2インダクタ配線におけるプリント基板とは反対側には第2磁性層が配置されている。すなわち、特許文献1に記載のインダクタ部品は、第1インダクタ配線の層及び第2インダクタ配線の層が、両側から磁性層で挟まれた構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6024243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなインダクタ部品において、薄型化等を目的として、プリント基板の第2面側の第2インダクタ配線を省略して、第1面側の第1インダクタ配線のみの1層とすることがある。このような構造の場合に、第1磁性層の厚み及び第2磁性層の厚みをどのように設計すれば、インダクタ部品の製造を効率化できるかという点については、特許文献1では何ら検討がなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、単層のインダクタ配線と、前記インダクタ配線における第1面側に配置された第1磁性層と、前記インダクタ配線における前記第1面とは反対側の第2面側に積層されている第2磁性層と、前記第1磁性層を貫通して前記インダクタ配線に接続されている垂直配線と、を備え、前記第2磁性層の主面に直交する方向を法線方向としたとき、前記第1磁性層の前記法線方向の寸法である第1磁性層厚みは、前記第2磁性層の前記法線方向の寸法である第2磁性層厚みよりも小さく、前記インダクタ配線の前記法線方向の寸法であるインダクタ配線厚みは、前記垂直配線の前記法線方向の寸法である垂直配線厚みの0.5倍より大きく、且つ1.5倍未満である。
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、絶縁樹脂の第1面の一部を被覆する第1被覆部を形成する第1被覆工程と、前記絶縁樹脂の第1面のうちの前記第1被覆部に被覆されていない部分にインダクタ配線をめっき法で形成するインダクタ配線加工工程と、前記第1被覆部における前記絶縁樹脂とは反対側の面である第1面、及び前記インダクタ配線における前記絶縁樹脂とは反対側の面である第1面の一部を被覆する第2被覆部を形成する第2被覆工程と、前記絶縁樹脂の第1面のうちの前記第2被覆部に被覆されていない部分に垂直配線をめっき法で形成する垂直配線加工工程と、前記垂直配線加工工程の後、前記第1被覆部及び第2被覆部を取り除く被覆部除去工程と、被覆部除去工程の後、前記インダクタ配線の第1面側に第1磁性層を積層する第1磁性層加工工程と、前記インダクタ配線の第2面側に第2磁性層を積層する第2磁性層加工工程と、を備えているインダクタ部品の製造方法であって、前記第2磁性層の主面に直交する方向を法線方向としたとき、前記垂直配線加工工程では、前記垂直配線の前記法線方向の寸法である垂直配線厚みが、前記第1磁性層の前記法線方向の寸法である第1磁性層厚みの3分の2倍より大きく2倍未満となるように、前記垂直配線を形成する。
【0007】
上記構成によれば、インダクタ配線厚みと垂直配線厚みとの差が小さいため、インダクタ配線及び垂直配線を、同種の製造装置で同様の加工条件で形成できる。そのため、インダクタ配線の形成と垂直配線の形成とで、製造装置や加工条件を大幅に変更する必要はなく、インダクタ部品の製造を効率化できる。
【0008】
また、上記構成によれば、第2磁性層厚みよりも第1磁性層厚みの方が小さいため、インダクタ部品全体の厚みが大きくなることを抑制できる。その一方で、第1磁性層厚みが小さいが故に第1磁性層側から磁束の漏れが生じる可能性があるが、インダクタ配線が単層であることで磁束密度が小さいため、第1磁性層側から過度に磁束の漏れが生じることは抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
インダクタ部品の製造を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のインダクタ部品の分解斜視図。
図2】第1実施形態のインダクタ部品の透過上面図。
図3】第1実施形態のインダクタ部品の断面図。
図4】第2実施形態のインダクタ部品の分解斜視図。
図5】第2実施形態のインダクタ部品の透過上面図。
図6】第2実施形態のインダクタ部品の断面図。
図7】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図8】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図9】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図10】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図11】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図12】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図13】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図14】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図15】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図16】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図17】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図18】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図19】インダクタ部品の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<インダクタ部品の実施形態>
以下、インダクタ部品の各実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。また、断面図ではハッチングを付しているが、理解を容易にするために一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
以下、インダクタ部品の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、インダクタ部品10は、全体として、厚み方向に4つの薄板状の層が積層されたような構造になっている。以下の説明では、4つの各層の積層方向を上下方向として説明する。
【0013】
第1層L1は、インダクタ配線20と、第1ダミー配線31と、第2ダミー配線32と、内磁路部41と、外磁路部42と、によって構成されている。第1層L1は、平面視で略正方形状になっている。
【0014】
図2に示すように、第1層L1において、インダクタ配線20は、配線本体21と、第1パッド22と、第2パッド23と、によって構成されている。インダクタ配線20は、上面視すると、正方形状の第1層L1の主面の中心を中心とした渦巻状に延びている。具体的には、インダクタ配線20の配線本体21は、上面視すると、径方向外側の外周端部21Aから径方向内側の内周端部21Bに向かって、反時計回りに渦巻き状に巻回されている。なお、図2においては、後述する第1垂直配線51及び第2垂直配線52を二点鎖線で示すとともに、絶縁樹脂60を破線で示している。
【0015】
インダクタ配線20のターン数は、インダクタ配線の延びる方向においてインダクタ配線20の一方の端からインダクタ配線20の他方の端へと移動するときに、インダクタ配線20の一方の端を基準として、360度移動された場合を1.0ターンとして定められている。すなわち、インダクタ配線20のターン数は、インダクタ配線20の巻回されている角度が、回数によって示されている。したがって、例えば、180度巻回されると、ターン数は0.5ターンとなる。本実施形態では、インダクタ配線20が巻回されている角度は、540度である。そのため、インダクタ配線20が巻回されているターン数は、本実施形態では1.5ターンとなっている。
【0016】
インダクタ配線20は、導電性材料からなっており、本実施形態において、インダクタ配線20の組成は、銅の比率が99wt%以上で硫黄の比率が0.1wt%以上1.0wt%未満となっている。
【0017】
図1に示すように、配線本体21の外周端部21Aには、第1パッド22が接続されている。第1パッド22は、平面視すると略円形状となっている。第1パッド22の材質は、配線本体21と同じ材質となっている。
【0018】
第1パッド22からは、第1層L1の外縁側に向かって第1ダミー配線31が延びている。第1ダミー配線31は、第1層L1の側面まで延びていて、インダクタ部品10の外面に露出している。
【0019】
配線本体21の内周端部21Bには、第2パッド23が接続されている。第2パッド23は、平面視すると略円形状となっている。第2パッド23の材質は、配線本体21と同じ材質となっている。
【0020】
配線本体21の外周端部21Aと内周端部21Bとの間の部分において、外周端部21Aから0.5ターン巻回されている箇所からは、第2ダミー配線32が延びている。第2ダミー配線32は、第1層L1の側面まで延びていて、インダクタ部品10の外面に露出している。
【0021】
第1層L1において、インダクタ配線20よりも内側の領域は、内磁路部41になっている。内磁路部41は、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉と、の混合体で構成されている。すなわち、内磁路部41は、磁性材料からなっている。第1層L1において、インダクタ配線20よりも外側の領域は、外磁路部42になっている。外磁路部42は、内磁路部41と同様に、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉の混合体で構成されている。すなわち、外磁路部42は、磁性材料からなっている。
【0022】
図1に示すように、第1層L1の上面には、第1層L1と同じ平面視正方形状の第2層L2が積層されている。第2層L2は、第1垂直配線51と、第2垂直配線52と、第1磁性層43と、によって構成されている。
【0023】
第1垂直配線51は、第1パッド22の上側の面に、他の層を介することなく直接的に接続されている。第1垂直配線51の材質は、インダクタ配線20と同じ材質となっている。第1垂直配線51は、円柱状となっており、円柱の軸線方向が上下方向と一致している。上面視すると、円形の第1垂直配線51の直径は、第1パッド22の直径よりも僅かに小さくなっている。
【0024】
第2垂直配線52は、第2パッド23の上側の面に、他の層を介することなく直接的に接続されている。第2垂直配線52の材質は、インダクタ配線20と同じ材質となっている。第2垂直配線52は、円柱状となっており、円柱の軸線方向が上下方向と一致している。上面視すると、円形の第2垂直配線52の直径は、第2パッド23の直径よりも僅かに小さくなっている。なお、インダクタ配線20と、第1ダミー配線31と、第2ダミー配線32と、第1垂直配線51と、第2垂直配線52とは、区別して図示しているが、一体化している。
【0025】
第2層L2において、第1垂直配線51及び第2垂直配線52を除く部分は、第1磁性層43となっている。そのため、第1磁性層43は、インダクタ配線20における上面側である第1面側に配置されている。第1磁性層43は、上述した内磁路部41及び外磁路部42と同様に、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉の混合体で構成されている。よって、第1磁性層43は磁性材料からなっている。
【0026】
第1層L1の下には、第1層L1と同じ平面視正方形状の第3層L3が積層されている。第3層L3は、絶縁樹脂60と、絶縁樹脂磁性層44と、によって構成されている。
絶縁樹脂60は、インダクタ配線20と、第1ダミー配線31と、第2ダミー配線32と、を下側から覆っている。すなわち、絶縁樹脂60は、第1層L1の導電性の部分の下側の面を全て被覆している。絶縁樹脂60は、上面視すると、インダクタ配線20と、第1ダミー配線31と、第2ダミー配線32と、の外縁よりも僅かに広い範囲を覆うような形状となっている。その結果、絶縁樹脂60は、上面視すると、略円環状の形状となっている。絶縁樹脂60の材質は、インダクタ配線20よりも絶縁性が高い絶縁性の絶縁樹脂である。
【0027】
第3層L3において、絶縁樹脂60を除く部分は、絶縁樹脂磁性層44となっている。絶縁樹脂磁性層44は、上述した内磁路部41や外磁路部42と同様に、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉の混合体で構成されている。よって、絶縁樹脂磁性層44は磁性材料となっている。
【0028】
第3層L3の下面には、第1層L1と同じ平面視正方形状の第4層L4が積層されている。第4層L4は、第2磁性層45となっている。すなわち、第2磁性層45は、インダクタ配線20の上面である第1面とは反対側の下面である第2面に積層されている。第2磁性層45は、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉の混合体で構成されている。すなわち、第2磁性層45は、上述した内磁路部41や外磁路部42と同様に、磁性材料となっている。ここで、第2磁性層45のうち、インダクタ配線20が配置されている側の面を、第2磁性層45の主面MFとする。なお、本実施形態において、第4層L4すなわち第2磁性層45の主面MFに直交する法線方向は、上下方向となっており、4つの層の積層方向と同一である。
【0029】
インダクタ部品10において、内磁路部41と、外磁路部42と、第1磁性層43と、絶縁樹脂磁性層44と、第2磁性層45とによって、磁性層40が構成されている。内磁路部41と、外磁路部42と、第1磁性層43と、絶縁樹脂磁性層44と、第2磁性層45とは、接続されており、インダクタ配線20を取り囲んでいる。このように、磁性層40は、インダクタ配線20に対して閉磁路を構成している。なお、内磁路部41と、外磁路部42と、第1磁性層43と、絶縁樹脂磁性層44と、第2磁性層45とは、区別して図示しているが、磁性層40として一体化されている。
【0030】
図3に示すように、第1層L1の上下方向の寸法である厚みは、70μmとなっている。そのため、インダクタ配線20の上下方向の寸法であるインダクタ配線厚みTIは、70μmとなっている。また、第1ダミー配線31及び第2ダミー配線32の上下方向の寸法であるダミー配線厚みTDは、70μmとなっていて、インダクタ配線厚みTIと同じである。
【0031】
ここで、インダクタ配線20の配線本体21が延びる方向に対して垂直な断面において、インダクタ配線厚みTIと直交する方向の寸法を、図2に示すように、インダクタ配線幅WIとする。このとき、インダクタ部品10において、インダクタ配線幅WIは、インダクタ配線厚みTIである70μmよりも大きくなっている。本実施形態において、インダクタ配線幅WIは、配線本体21のうち、外周端部21Aと内周端部21Bとの中央であるの中央位置と、中央位置から外周端部21A側に100μmずれた位置と、中央位置から内周端部21B側に100μmずれた位置との3点における配線幅の算術平均値となっている。なお、本実施形態では、インダクタ配線20の配線本体21は、インダクタ配線幅WIが略一定になっている。また、本実施形態において、インダクタ配線厚みTIは、配線本体21のうち、外周端部21Aと内周端部21Bとの中央であるの中央位置と、中央位置から外周端部21A側に100μmずれた位置と、中央位置から内周端部21B側に100μmずれた位置との3点における配線厚みの算術平均値となっている。なお、本実施形態では、インダクタ配線20は、インダクタ配線厚みTIが略一定となっている。さらに、インダクタ配線幅WI及びインダクタ配線厚みTIの寸法測定において、配線厚みは断面における上下方向の寸法の最大値を測定し、配線幅は断面における上下方向に直交する方向の寸法の最大値を測定すればよい。
【0032】
第1ダミー配線31が延びる方向に対して垂直な断面において、ダミー配線厚みTDと直交する方向の寸法を、図2に示すように、ダミー配線幅WDとする。このとき、インダクタ部品10において、ダミー配線幅WDは、インダクタ配線幅WIよりも小さくなっている。なお、本実施形態においては、第2ダミー配線32の幅は、第1ダミー配線31の幅であるダミー配線幅WDと同一となっている。ダミー配線幅WDは、第1ダミー配線31のうち、インダクタ部品10の外面に露出している面の上下方向に直交する幅寸法の最大値として規定される。なお、本実施形態では、第1ダミー配線31及び第2ダミー配線32は、いずれもダミー配線幅WDが略一定になっている。
【0033】
図3に示すように、第2層L2の上下方向の寸法である厚みは、50μmとなっている。また、第2層L2を構成する第1垂直配線51と、第2垂直配線52と、第1磁性層43との上下方向の寸法である厚みも、全て同一の50μmとなっている。そのため、第1垂直配線51及び第2垂直配線52の上下方向の寸法である垂直配線厚みTVは、50μmとなっている。さらに、第1磁性層43の上下方向の寸法である第1磁性層厚みTM1は、50μmとなっている。すなわち、第1垂直配線51及び第2垂直配線52は、第1磁性層43を上下方向に貫通している。
【0034】
第3層L3の上下方向の寸法である厚みは、20μmとなっている。また、第3層L3を構成する絶縁樹脂60と、絶縁樹脂磁性層44と、の上下方向の寸法である厚みも、同一の20μmとなっている。
【0035】
第4層L4の上下方向の寸法である厚みは、100μmとなっている。そのため、第4層L4を構成する第2磁性層45の上下方向の寸法である第2磁性層厚みTM2は、100μmとなっている。その結果、第1層L1~第4層L4を合わせたインダクタ部品10の上下方向の寸法であるインダクタ部品厚みTAは、0.240mmとなっている。
【0036】
ここで、上述した厚みを比較すると、第1磁性層厚みTM1は、第2磁性層厚みTM2よりも小さくなっている。また、インダクタ配線厚みTIは、垂直配線厚みTVの1.4倍であり、垂直配線厚みTVの0.5倍より大きく、且つ1.5倍未満となっている。
【0037】
次に、上記第1実施形態の効果を説明する。
(1)上記第1実施形態において、インダクタ配線厚みTIは、垂直配線厚みTVの1.4倍である。このように、インダクタ配線厚みTIが、垂直配線厚みTVの0.5倍より大きく、且つ1.5倍未満という範囲内に収まっていれば、インダクタ配線厚みTIと垂直配線厚みTVとの差が過度に大きくないといえる。そのため、インダクタ配線20の形成と、第1垂直配線51及び第2垂直配線52の形成で、製造装置や加工条件を大幅に変更する必要はなく、インダクタ配線20と、第1垂直配線51及び第2垂直配線52とを、同種の製造装置や同様の加工条件で形成できる。その結果、インダクタ部品10の製造を効率化できる。
【0038】
(2)上記第1実施形態において、インダクタ配線20が絶縁樹脂60の下面側には配置されていないうえ、第1磁性層厚みTM1は、第2磁性層厚みTM2よりも小さくなっている。これらに起因して、インダクタ部品厚みTAは0.300mm以下の0.240mmという相応に薄い値になっている。その一方で、第1磁性層厚みTM1が小さいが故に磁性層40からの磁束の漏れが生じる可能性があるが、インダクタ配線20が単層であることで、磁束密度が小さいため、過度に磁束の漏れが生じることは抑制できる。
【0039】
特に、インダクタ配線厚みTIが、垂直配線厚みTVの1.5倍未満、すなわち第1磁性層厚みTM1は、インダクタ配線厚みTIの3分の2倍より大きい。これにより、過度な磁束漏れの発生を抑制できる。
【0040】
(3)上記第1実施形態において、インダクタ配線厚みTIは、インダクタ配線幅WIよりも小さい。そのため、インダクタ配線20の断面積が同一という条件下においてインダクタ配線厚みTIを比較的に小さくできる。そのため、インダクタ部品10全体の厚みの小型化に寄与できる。
【0041】
(4)上記第1実施形態によれば、インダクタ配線20の上面が、他の層を介することなく第1垂直配線51、第2垂直配線52、及び第1磁性層43と接している。換言すれば、インダクタ配線20の上面には、絶縁層等の他の層が積層されていない。そのため、インダクタ配線20と、第1垂直配線51及び第2垂直配線52との間の電気的な導通を確保するために、インダクタ配線20の上面に積層された層にビアを形成する必要がなく、製造方法の簡略化に寄与する。
【0042】
(5)上記第1実施形態によれば、インダクタ配線20の組成は、銅の比率が99wt%以上で硫黄の比率が0.1wt%以上1.0wt%未満となっている。そのため、銅により比較的に安価かつ低抵抗を実現できる。また、硫黄を添加することで銅の粒界に不純物が存在し、不純物である硫黄によって応力緩和がなされる。
【0043】
<第2実施形態>
以下、インダクタ部品の第2実施形態を説明する。なお、以下で説明する第2実施形態は、主として、第1実施形態のインダクタ部品10と比較してインダクタ配線の形状が異なっている。
【0044】
図4に示すように、インダクタ部品110は、全体として、厚み方向に4つの薄板状の層が積層されたような構造になっている。以下の説明では、4つの各層の積層方向を上下方向として説明する。なお、図4においては、後述する絶縁層170及び外部端子180の図示を省略する。
【0045】
第1層L11は、2つのインダクタ配線120と、2つの第1ダミー配線131と、2つの第2ダミー配線132と、内磁路部141と、外磁路部142と、によって構成されている。第1層L11は、上面視すると、長方形状となっている。
【0046】
図5に示すように、第1層L11において、インダクタ配線120は、配線本体121と、第1パッド122と、第2パッド123と、によって構成されている。配線本体121は、上面視すると、第1層L11の長方形の長手方向に延びている。そして、配線本体121の延設方向の中央部121Cが直線状に延びているとともに、配線本体121の延設方向一方側の第1端部121A及び他方側の第2端部121Bが湾曲している。配線本体121の第1端部121A及び第2端部121Bは、いずれも第1層L11の短手方向中央側を向くように略90度湾曲している。なお、図5において、後述する第1垂直配線151及び第2垂直配線152を二点鎖線で示すとともに、絶縁樹脂160を破線で示している。
【0047】
インダクタ配線120が巻回されている角度は、片側の端部で90度、両端部を合わせて180度である。そのため、インダクタ配線120が巻回されているターン数は、本実施形態では0.5ターンとなっている。
【0048】
インダクタ配線120は、導電性材料からなっており、本実施形態において、インダクタ配線120の組成は、銅の比率が99wt%以上で硫黄の比率が0.1wt%以上1.0wt%未満となっている。
【0049】
図4に示すように、インダクタ配線120の第1端部121Aには、第1パッド122が接続されている。第1パッド122は、上面視すると、略正方形状となっている。第1パッド122の材質は、配線本体121と同じ材質となっている。
【0050】
第1パッド122からは、第1層L11の外縁側に向かって第1ダミー配線131が延びている。第1ダミー配線131は、第1層L11の側面まで延びていて、インダクタ部品110の外面に露出している。
【0051】
インダクタ配線120の第2端部121Bには、第2パッド123が接続されている。第2パッド123は、上面視すると、略正方形状となっている。第2パッド123の材質は、配線本体121と同じ材質となっている。
【0052】
第2パッド123からは、第1層L11の外縁側に向かって第2ダミー配線132が延びている。第2ダミー配線132は、第1層L11の側面まで延びていて、インダクタ部品110の外面に露出している。
【0053】
ここで、第1層L11の上面である長方形の中心Cは、第1層L11の短手方向中央を通る第1層L11の長手方向と平行な直線と、第1層L11の短手方向中央を通る第1層L11の短手方向と平行な直線との交点である。そして、第1層L11は、この交点である中心Cを通る法線方向の軸線を回転中心に対して、180度回転対称な構造となっている。そのため、第1層L11の短手方向第2端側には、第1層L11の短手方向第1端側の構造と同じ構造となっている。なお、図面には同一の符号を付して、説明は省略する。
【0054】
第1層L11において、インダクタ配線120よりも内側の領域は、内磁路部141になっている。内磁路部141は、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉との混合体で構成されている。すなわち、内磁路部41は、磁性材料からなっている。第1層L11において、インダクタ配線120よりも外側の領域は、外磁路部142になっている。外磁路部142は、内磁路部141と同様に、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉との混合体で構成されている。よって、外磁路部142は、磁性材料からなっている。
【0055】
図4に示すように、第1層L11の上面には、第1層L11と同じ平面視長方形状の第2層L12が積層されている。第2層L12は、2つの第1垂直配線151と、2つの第2垂直配線152と、第1磁性層143と、によって構成されている。
【0056】
第1垂直配線151は、第1パッド122の上面に、他の層を介することなく接続している。第1垂直配線151の材質は、インダクタ配線120と同じ材質となっている。第1垂直配線151は、角柱状となっており、角柱の軸線方向が上下方向と一致している。上面視すると、正方形状の第1垂直配線151の各辺の寸法は、正方形状の第1パッド122の各辺の寸法よりも僅かに小さくなっている。
【0057】
第2垂直配線152は、第2パッド123の上面に、他の層を介することなく直接的に接続されている。第2垂直配線152の材質は、インダクタ配線120と同じ材質となっている。第2垂直配線152は、角柱状となっており、角柱の軸線方向が上下方向と一致している。上面視すると、正方形状の第2垂直配線152の各辺の寸法は、正方形状の第2パッド123の各辺の寸法よりも僅かに小さくなっている。なお、インダクタ配線120と、第1ダミー配線131と、第2ダミー配線132と、第1垂直配線151と、第2垂直配線152とは、区別して図示しているが、一体化している。
【0058】
第2層L12において、第1垂直配線151及び第2垂直配線152を除く部分は、第1磁性層143となっている。そのため、第1磁性層143は、インダクタ配線120における上面側である第1面側に配置されている。第1磁性層143は、上述した内磁路部141及び外磁路部142と同様に、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉の混合体で構成されている。すなわち、第1磁性層143は、磁性材料からなっている。
【0059】
図6に示すように、第2層L12の上面には、絶縁層170及び外部端子180が配置されている。具体的には、2つの第1垂直配線151及び2つの第2垂直配線152の上面には、外部端子180が接続されている。外部端子180は導電性の材料となっており、本実施形態では、銅、ニッケル、金の3層構造となっている。
【0060】
第2層L12の上面のうち、外部端子180によって覆われない範囲は、絶縁層170によって覆われている。絶縁層170は、第1磁性層143よりも絶縁性が高く、本実施形態では、絶縁層170はソルダーレジストとなっている。
【0061】
図4に示すように、第1層L1の下側の面には、第1層L11と同じ平面視長方形状の第3層L3が積層されている。第3層L3は、2つの絶縁樹脂160と、絶縁樹脂磁性層144と、によって構成されている。
【0062】
絶縁樹脂160は、インダクタ配線120と、第1ダミー配線131と、第2ダミー配線132とを下側から覆っている。すなわち、絶縁樹脂160は、第1層L11の導電性の部分の下側の面を全て被覆している。絶縁樹脂160は、上面視すると、インダクタ配線120と、第1ダミー配線131と、第2ダミー配線132との外縁よりも僅かに広い範囲を覆うような形状となっている。その結果、絶縁樹脂160は、全体として第3層L3の長手方向に延びる帯状となっており、第3層L3の短手方向に2つの絶縁樹脂160が並んでいる。絶縁樹脂160は、絶縁性の樹脂であり、インダクタ配線120よりも絶縁性が高くなっている。
【0063】
第3層L13において、絶縁樹脂160を除く部分は、絶縁樹脂磁性層144となっている。絶縁樹脂磁性層144は、上述した内磁路部141や外磁路部142と同様に、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉の混合体で構成されている。よって、絶縁樹脂磁性層144は磁性材料となっている。
【0064】
第3層L13の下面には、第1層L11と同じ平面視長方形状の第4層L14が積層されている。第4層L14は、第2磁性層145となっている。そのため、第2磁性層145は、インダクタ配線120の上面である第1面とは反対側の下面である第2面に積層されている。第2磁性層145は、樹脂と、フェライトや金属磁性体などの磁性粉の混合体で構成されている。すなわち、第2磁性層145は、上述した内磁路部141や外磁路部142と同様に、磁性材料となっている。ここで、第2磁性層145のうち、インダクタ配線120が配置されている側の面を、第2磁性層145の主面MF2とする。なお、本実施形態において、第4層L14すなわち第2磁性層145の主面MF2に直交する法線方向は、上下方向となっており、4つの層の積層方向と同一である。
【0065】
インダクタ部品110において、内磁路部141と、外磁路部142と、第1磁性層143と、絶縁樹脂磁性層144と、第2磁性層145とによって、磁性層140が構成されている。内磁路部141と、外磁路部142と、第1磁性層143と、絶縁樹脂磁性層144と、第2磁性層145とは、接続されており、インダクタ配線120を取り囲んでいる。このように、磁性層140は、インダクタ配線120に対して閉磁路を構成している。なお、内磁路部141と、外磁路部142と、第1磁性層143と、絶縁樹脂磁性層144と、第2磁性層145とは、区別して図示しているが、磁性層140として一体化されている。
【0066】
図5に示すように、2つのインダクタ配線120の最小距離DIは、一方のインダクタ配線120の第1パッド122と、他方のインダクタ配線120の第2パッド123との距離となっている。最小距離DIは、内磁路部141に含まれる磁性粉の平均粒子径の20倍以上となっている。磁性粉の平均粒子径は、インダクタ部品110の状態において、磁性層40の中心を通る断面のSEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)画像を用いて測定する。具体的には、15個以上の磁性粉が確認できる倍率のSEM画像において、各磁性粉の面積を測定し、円相当径を{4/π×(面積)}^(1/2)から算出した上で、その算術平均値を磁性粉の平均粒子径とする。なお、原料段階においては、磁性粉の平均粒子径は、金属磁性体の原料状態において、レーザ回折・散乱法により測定する。このレーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径を磁性粉の平均粒子径とする。
【0067】
2つのインダクタ配線120に接続しているダミー配線間の最小距離DDは、一方のインダクタ配線120の第1ダミー配線131と、他方のインダクタ配線120の第2ダミー配線132との距離となっている。2つのインダクタ配線120に接続しているダミー配線間の最小距離DDは、2つのインダクタ配線120の最小距離DIよりも大きくなっている。
【0068】
図6に示すように、第1層L11の上下方向の寸法である厚みは、45μmとなっている。そのため、インダクタ配線120の上下方向の寸法であるインダクタ配線厚みTI2は、45μmとなっている。そのため、インダクタ配線厚みT12は、40μm以上且つ、55μm以下となっている。また、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132の上下方向の寸法であるダミー配線厚みは、45μmとなっていて、インダクタ配線厚みTI2と同じである。
【0069】
ここで、インダクタ配線120の配線本体121が延びる方向に対して垂直な断面において、インダクタ配線厚みTI2と直交する方向の寸法を、図5に示すように、インダクタ配線幅WI2とする。このとき、インダクタ部品110において、インダクタ配線幅WI2は、インダクタ配線厚みTI2である45μmよりも大きくなっている。本実施形態において、インダクタ配線幅WI2は、配線本体121のうち、第1端部121Aと第2端部121Bとの中央であるの中央位置と、中央位置から第1端部121A側に100μmずれた位置と、中央位置から第2端部121B側に100μmずれた位置との3点における配線幅の算術平均値となっている。なお、本実施形態では、インダクタ配線120の配線本体121は、インダクタ配線幅WI2が略一定になっている。また、本実施形態において、インダクタ配線厚みTI2は、配線本体121のうち、第1端部121Aと第2端部121Bとの中央であるの中央位置と、中央位置から第1端部121A側に100μmずれた位置と、中央位置から第2端部121B側に100μmずれた位置との3点における配線厚みの算術平均値となっている。なお、本実施形態では、インダクタ配線120は、インダクタ配線厚みTI2が略一定となっている。さらに、インダクタ配線幅WI2及びインダクタ配線厚みTI2の寸法測定において、配線厚みは断面における上下方向の寸法の最大値を測定し、配線幅は断面における上下方向に直交する方向の寸法の最大値を測定すればよい。
【0070】
第1ダミー配線131が延びる方向に対して垂直な断面において、ダミー配線厚みと直交する方向の寸法を、図5に示すように、ダミー配線幅WD2とする。このとき、インダクタ部品110において、ダミー配線幅WD2は、インダクタ配線幅WI2よりも小さくなっている。なお、本実施形態においては、第2ダミー配線132の幅は、第1ダミー配線131の幅であるダミー配線幅WD2と同一となっている。ダミー配線幅WD2は、第1ダミー配線131のうち、インダクタ部品110の外面に露出している面の上下方向に直交する幅寸法の最大値として規定される。なお、本実施形態では、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132は、いずれもダミー配線幅WDが略一定になっている。
【0071】
図6に示すように、第2層L12の上下方向の寸法である厚みは、50μmとなっている。また、第2層L12を構成する第1垂直配線151と、第2垂直配線152と、第1磁性層143との上下方向の寸法である厚みも、全て同一の50μmとなっている。そのため、第1垂直配線151及び第2垂直配線152の上下方向の寸法である垂直配線厚みTV2は、50μmとなっている。さらに、第1磁性層143の上下方向の寸法である第1磁性層厚みTM11は、50μmとなっている。すなわち、第1垂直配線151及び第2垂直配線152は、第1磁性層143を上下方向に貫通している。
【0072】
第2層L12の上面を覆う絶縁層170の上下方向の寸法である厚みは、10μmとなっている。また、第2層L12の上面を覆う外部端子180の上下方向の寸法である厚みは、約11μmとなっている。そのため、外部端子180の厚みは、絶縁層170の厚みより僅かに大きくなっている。
【0073】
第3層L13の上下方向の寸法である厚みは、10μmとなっている。また、第3層L3を構成する絶縁樹脂160と、絶縁樹脂磁性層144と、の上下方向の寸法である厚みも、同一の10μmとなっている。
【0074】
第4層L14の上下方向の寸法である厚みは、90μmとなっている。そのため、第4層L14を構成する第2磁性層145の上下方向の寸法である第2磁性層厚みTM12は、90μmとなっている。その結果、第1層L11~第4層L14を合わせたインダクタ部品110の上下方向の寸法であるインダクタ部品厚みTA2は、0.206mmとなっている。
【0075】
ここで、上述した厚みを比較すると、第1磁性層厚みTM11は、第2磁性層厚みTM12よりも小さくなっている。また、インダクタ配線厚みTI2は、垂直配線厚みTV2の0.9倍であり、垂直配線厚みTVの0.5倍より大きく、且つ1.5倍未満となっている。
【0076】
次に、上記第2実施形態の作用及び効果を説明する。上記第1実施形態の(1)~(5)の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(6)上記第2実施形態によれば、インダクタ配線120のターン数は、1.0ターン未満である。そのため、インダクタ配線120の直流抵抗を小さくできるため、比較的に大きな電流を流すことができる。また、インダクタ配線120のターン数が小さいことから、インダクタ部品110全体の体積に対して、インダクタ配線120の体積の割合を小さくできる。そのため、相対的に磁性層140の体積の割合が大きくなることで、インダクタ部品110全体の体積に対するインダクタンスの取得率の低下を妨げにくい。
【0077】
(7)上記第2実施形態によれば、インダクタ配線厚みTI2は、40μm以上且つ、55μm以下である。このように、インダクタ配線厚みTI2が55μm以下であるため、インダクタ部品110の薄型化に寄与できる。また、インダクタ配線厚みTI2が40μm以上であるため、直流抵抗が過度に大きくならない。
【0078】
(8)上記第2実施形態によれば、第1磁性層143の上面は絶縁層170に覆われるとともに、第1垂直配線151及び第2垂直配線152の上面には外部端子180が接続している。そのため、外部端子180同士の短絡を絶縁層170によって抑制できる。
【0079】
(9)上記第2実施形態によれば、インダクタ配線120が、第1層L11の同一層内に2つ配置されている。ここで、仮に、2つのインダクタ配線120が異なる層に配置されているとすると、2つのインダクタ配線120は、上下方向に並んで配置される。この場合と比べると、上記第2実施形態では、2つのインダクタ配線120が第1層L11の同一層内に配置されているため、インダクタ部品110の上下方向の寸法が大型化することを抑制する。
【0080】
(10)上記第2実施形態によれば、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIは、磁性層140の磁性粉の粒子径の平均値の20倍以上となっている。仮に、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIが過度に小さいと、インダクタ配線120間に金属磁性体の粒子を介してインダクタ配線120同士が短絡する虞がある。上記第2実施形態によれば、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIは、磁性粉の粒子径の大きさに対して、充分に離隔しているといえる。そのため、2つのインダクタ配線120間の短絡を防ぎやすい。
【0081】
(11)配線本体121は、全体として第1層L11の長手方向に延びる直線状となっており、第1層L11の短手方向に並べられるうえで、配線本体121の距離が近くなりやすい。上記第2実施形態によれば、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIは、一方のインダクタ配線120に接続している第1パッド122と、他方のインダクタ配線120に接続している第2パッド123と、の距離となっている。そのため、インダクタ配線120の配線本体121同士の距離は、最小距離DIより大きくなっている。パッド同士の距離よりも配線本体121同士の距離を大きくすることによって、配線本体121間の距離を相応に大きくできる。よって、配線本体121同士の短絡を抑制しやすい。
【0082】
<インダクタ部品の製造方法の実施形態>
以下、インダクタ部品の製造方法の実施形態を説明する。以下では、第2実施形態で説明したインダクタ部品110の製造方法を説明する。
【0083】
図7に示すように、先ず、ベース部材準備工程を行う。具体的には、板状のベース部材210を準備する。ベース部材210の材質は、セラミックスである。ベース部材210は、上面視すると、四角形状となっており、各辺の寸法は、インダクタ部品110が複数個収容される大きさとなっている。以下の説明では、ベース部材210の面方向に直交する方向を上下方向として説明する。
【0084】
次に、図8に示すように、ベース部材210の上面全体にダミー絶縁層220を塗布する。次に、上面視したときにインダクタ配線120が配置される範囲より僅かに広い範囲に、フォトリソグラフィによって、絶縁樹脂160として機能する絶縁樹脂をパターニングする。
【0085】
次に、シード層230を形成するシード層形成工程を行う。具体的には、ベース部材210の上面側から、スパッタリングによって、絶縁樹脂160及びダミー絶縁層220の上面である第1面に銅のシード層230を形成する。なお、図面において、シード層230は、太線で図示する。
【0086】
次に、図9に示すように、シード層230の上面のうち、インダクタ配線120と、第1ダミー配線131と、第2ダミー配線132とを形成しない部分を被覆する第1被覆部240を形成する第1被覆工程を行う。具体的には、先ず、シード層230の上面全体に感光性のドライフィルムレジストを塗布する。次に、ダミー絶縁層220の上面の範囲全てと、絶縁樹脂160の上面のうち絶縁樹脂160が覆う範囲の外縁部の上面とについて、露光することで硬化させる。その後、塗布したドライフィルムレジストのうち硬化していない部分を、薬液により剥離除去する。これにより、塗布したドライフィルムレジストのうち、硬化している部分が、第1被覆部240として形成される。一方で、塗布したドライフィルムレジストのうち、薬液に除去されて第1被覆部240に被覆されていない部分には、シード層230が露出している。第1被覆部240の上下方向の寸法である第1被覆部厚みTC1は、図6に示すインダクタ部品110のインダクタ配線厚みTI2よりも僅かに大きくなっている。なお、他の工程におけるフォトリソグラフィも、同様の工程であるので詳細な説明は省略する。
【0087】
次に、図10に示すように、絶縁樹脂160の上面のうちの、第1被覆部240に被覆されていない部分にインダクタ配線120と、第1ダミー配線131と、第2ダミー配線132と、を電解めっきで形成するインダクタ配線加工工程を行う。具体的には、電解銅めっきを行い、絶縁樹脂160の上面において、シード層230が露出している部分から、銅を成長させる。これにより、インダクタ配線120と、第1ダミー配線131と、第2ダミー配線132とが、形成される。インダクタ配線120の上下方向の寸法であるインダクタ配線厚みTI2は、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132の上下方向の寸法であるダミー配線厚みと同一である。また、インダクタ配線厚みTI2は、第1被覆部厚みTC1よりも小さい。また、後述する破断線DLを挟んで隣り合うインダクタ部品110同士は、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132によって接続されている。なお、図10では、インダクタ配線120が図示されていて、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132は図示されていない。
【0088】
次に、図11に示すように、第2被覆部250を形成する第2被覆工程を行う。第2被覆部250を形成する範囲は、第1被覆部240の上面全体と、第1ダミー配線131の上面全体と、第2ダミー配線132の上面全体と、インダクタ配線120の上面のうち第1垂直配線151及び第2垂直配線152を形成しない範囲である。この範囲に、第1被覆部240を形成した方法と同一のフォトリソグラフィによって、第2被覆部250を形成する。また、第2被覆部250の上下方向の寸法である第2被覆部厚みTC2は、第1被覆部厚みTC1と同一となっている。
【0089】
次に、第1垂直配線151及び第2垂直配線152を形成する垂直配線加工工程を行う。具体的には、インダクタ配線120の上面のうち、第2被覆部250に被覆されていない部分に、電解銅めっきによって第1垂直配線151及び第2垂直配線152を形成する。また、垂直配線加工工程においては、成長する銅の上端が第2被覆部250の上面より僅かに低い位置となるように設定している。具体的には、後述する切削前の第1垂直配線151及び第2垂直配線152の上下方向の寸法である切削前垂直配線厚みTV3が、インダクタ配線厚みTI2の3分の2倍より大きく2倍未満となるように第1垂直配線151及び第2垂直配線152を形成する。本実施形態においては、切削前垂直配線厚みTV3は、インダクタ配線厚みTI2と同一になるように設定している。
【0090】
次に、図12に示すように、第1被覆部240及び第2被覆部250を取り除く被覆部除去工程を行う。具体的には、第1被覆部240及び第2被覆部250の一部を物理的に掴み、第1被覆部240及び第2被覆部250と、ベース部材210とを引き離すように剥離する。
【0091】
次に、シード層230をエッチングするシード層エッチング工程を行う。シード層230についてエッチングを行うことで、露出しているシード層230を除去する。すなわち、インダクタ配線120と、第1ダミー配線131と、第2ダミー配線132と、はSAP(Semi Additive Process:セミアディティブ工法)で形成される。
【0092】
次に、図13に示すように、第1磁性層143を積層する第1磁性層加工工程を行う。具体的には、先ず、ベース部材210の上面側に、磁性層140の材質である磁性粉を含む樹脂を塗布する。このとき、第1垂直配線151及び第2垂直配線152の上面も覆うように磁性粉を含む樹脂を塗布する。次に、プレス加工することで、磁性粉を含む樹脂を固めることで、ベース部材210の上面側に磁性層140を形成する。これにより、インダクタ配線120の上面に積層される第1磁性層143も形成される。
【0093】
次に、図14に示すように、磁性層140の上側部分を、第1垂直配線151及び第2垂直配線152の上面が露出するまで削る。その結果として、切削前の第1垂直配線151及び第2垂直配線152の上下方向の寸法である切削前垂直配線厚みTV3は、上端部が削られることで、垂直配線加工工程において成長させた銅の上下方向の寸法よりも小さい垂直配線厚みTV2となる。なお、内磁路部141と、外磁路部142と、第1磁性層143とは、一体的に形成されるが、図面においては、第1層L11と、第2層L12とを区別して図示している。そのため、内磁路部141と、外磁路部142と、第1磁性層143とも区別して図示している。
【0094】
次に、図15に示すように、絶縁層加工工程を行う。具体的には、第1磁性層143の上面と、第1垂直配線151の上面と、第2垂直配線152の上面のうち、外部端子180を形成しない部分に、フォトリソグラフィによって、絶縁層170として機能するソルダーレジストをパターニングする。
【0095】
次に、図16に示すように、ベース部材切削工程を行う。具体的には、ベース部材210及びダミー絶縁層220を全て切削によって除去する。なお、ダミー絶縁層220を全て切削する結果、絶縁樹脂160の下側部分についても、一部切削により除去されるが、インダクタ配線120は除去されない。
【0096】
次に、図17に示すように、第2磁性層145を積層する第2磁性層加工工程を行う。具体的には、先ず、ベース部材210の下側面に、磁性層140の材質である磁性粉を含む樹脂を塗布する。次に、プレス加工することで、磁性粉を含む樹脂を固めることで、ベース部材210の下側面に第2磁性層145を形成する。ここで、第2磁性層145のうち、インダクタ配線120が配置されている側の面を、第2磁性層145の主面MF2とする。なお、本実施形態において、第4層L14すなわち第2磁性層145の主面MF2に直交する法線方向は、上下方向となっており、ベース部材210の面方向に直交する方向と同一である。
【0097】
次に、第2磁性層145の下端部分を削る。例えば、外部端子180の上面から第2磁性層145の下面までの寸法が、所望の値となるように、第2磁性層145の下端部分を削る。
【0098】
次に、図18に示すように、外部端子加工工程を行う。具体的には、第1磁性層143の上面と、第1垂直配線151の上面と、第2垂直配線152の上面のうち、絶縁層170に覆われていない部分に、外部端子180を形成する。外部端子180は、銅、ニッケル、金のそれぞれについて、無電解めっきによって形成される。これにより3層構造の外部端子180が形成される。
【0099】
次に、図19に示すように、個片化加工工程を行う。具体的には、破断線DLにてダイシングにより個片化する。これにより、第2実施形態におけるインダクタ部品110を得ることができる。また、このとき、破断線DL上に含まれる第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132も切断され、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132がインダクタ部品110の側面に露出する。
【0100】
次に、上記製造方法の作用及び効果を説明する。
(12)上記製造方法によれば、インダクタ配線120と、第1垂直配線151と、第2垂直配線152と、をSAPによって形成している。そのため、インダクタ配線120と、第1垂直配線151と、第2垂直配線152と、の組成が、銅の比率が99wt%以上で硫黄の比率が0.1wt%以上1.0wt%未満となる。よって、インダクタ配線120と、第1垂直配線151と、第2垂直配線を同一工程で形成できることから比較的安価に形成することができる。また、同一工程であるため銅の残留応力などを各配線で同等とでき、各配線間の接続信頼性を高めることができる。
【0101】
(13)上記製造方法によれば、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132は、複数のインダクタ部品110を接続している。そのため、複数のインダクタ部品110を一度に製造するうえで、個片化加工工程以前においては、第1ダミー配線131及び第2ダミー配線132を通して基板状態で同電位となっている。その結果、例えば基板状態において、複数のインダクタ部品110のうち、1つのインダクタ部品110についてアースすることで、加工途中における静電気による電流が流れやすくなる。また、例えば垂直配線加工工程において、複数のインダクタ部品110のうち、1つのインダクタ部品110について電流を流すのみで、銅を成長させることができる。
【0102】
(14)上記の製造方法によれば、インダクタ配線120の下面全体は、絶縁樹脂である絶縁樹脂160によって被覆されている。そのため、加工工程において、インダクタ配線120の下側にめっき成長することを抑制できる。この点、第1実施形態及び第2実施形態においても同様である。
【0103】
上記各実施形態は以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線とは、電流が流れた場合に磁性層に磁束を発生させることによって、インダクタ部品にインダクタンスを付与できるものであれば、その構造、形状、材料などに特に限定はない。例えば、インダクタ配線において、第1パッド及び第2パッドを省略してもよい。また、第1実施形態において、インダクタ配線20が1.0ターン未満の曲線や0ターンの直線状となっていてもよい。さらに、第2実施形態において、インダクタ配線120が1.0ターン以上の曲線状となっていてもよい。また、各実施形態において、インダクタ配線20がミアンダ形状であってもよい。
【0104】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線厚みはインダクタ配線幅以上の大きさとなっていてもよい。
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線の組成は、上記各実施形態の例に限られない。
【0105】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線厚みは、上記各実施形態の例に限られない。例えば、第1実施形態において、インダクタ配線厚みTIが40μm未満であってもよいし、第2実施形態において、インダクタ配線厚みTI2が55μmより大きくてもよい。
【0106】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線厚みと垂直配線厚みとの関係は、インダクタ配線厚みが垂直配線厚みの0.5倍より大きく、且つ1.5倍未満であればよく、インダクタ配線厚みと垂直配線厚みとが等しくてもよい。この場合、上で例示した製造方法において、切削前垂直配線厚みTV3をインダクタ配線厚みTI2よりも切削する分だけ大きくなるように、垂直配線加工工程の製造条件を変更すればよい。
【0107】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線と第1垂直配線とが、他の層を介して接続していてもよい。例えば、インダクタ配線と第1垂直配線との間に、導電性のいわゆるビアが介されていてもよい。この点、インダクタ配線と第2垂直配線とについても同様である。
【0108】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線の外面のうち、第1垂直配線及び第2垂直配線と接続する部分以外が、絶縁樹脂に覆われていてもよい。この場合、例えば、製造工程において、インダクタ配線の外面全体を一度絶縁樹脂で覆った後に、第1垂直配線及び第2垂直配線を接続する部分にビアホールを加工して、当該穴に導電性のいわゆるビアを形成する。このビアの上面に第1垂直配線及び第2垂直配線を形成することで、インダクタ部品を製造できる。
【0109】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ部品は、第3層の構成を省略してもよい。この場合、インダクタ配線の下面は、絶縁樹脂によって覆われずに、第2磁性層と直接的に接する。また、この場合の製造方法では、ダミー絶縁層220を切削する際に、絶縁樹脂160もすべて切削されればよい。
【0110】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、内磁路部41と、外磁路部42と、第1磁性層43と、絶縁樹脂磁性層44と、第2磁性層45とは、一体化されておらず、別体となっており、境界が存在してもよい。また、図面においては境界が存在するが、実物には境界がなくてもよい。
【0111】
・上記インダクタ部品の第2実施形態において、外部端子180の構造は、上記第2実施形態の例に限られない。例えば、銅のみの層から構成されていてもよい。
・上記インダクタ部品の第2実施形態において、絶縁層170及び外部端子180を省略してもよい。また、上記第1実施形態において、第2実施形態における絶縁層170及び外部端子180に相当する構成を備えていてもよい。
【0112】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、第1ダミー配線及び第2ダミー配線を省略してもよい。
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ配線と、第1ダミー配線と、第2ダミー配線と、第1垂直配線と、第2垂直配線とは、一体化されておらず、別体となっており、境界が存在してもよい。また、図面においては境界が存在するが、実物には境界がなくてもよい。
【0113】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、第1層と同一層内に配置されているインダクタ配線の数は、上記各実施形態の例に限られない。例えば、第1実施形態において、第1層L1内に配置されているインダクタ配線20は、2つ以上であってもよい。また、第2実施形態において、第1層L11内に配置されているインダクタ配線120は、1つや3つ以上であってもよい。
【0114】
・上記インダクタ部品の第2実施形態において、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIは、第1パッド122と第2パッド123との間の距離でなくてもよい。例えば、配線本体121間の距離が、2つのインダクタ配線120間の最小距離となっていてもよい。
【0115】
・上記インダクタ部品の第2実施形態において、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIと、磁性層140の平均粒子径との関係は、上記第2実施形態の例に限られない。具体的には、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIは、磁性層140の平均粒子径の20倍未満であってもよい。
【0116】
・上記インダクタ部品の第2実施形態において、2つのインダクタ配線120間の最小距離DIと、2つのインダクタ配線120に接続しているダミー配線間の最小距離DDとの関係は、上記第2実施形態の例に限られない。具体的には、2つのインダクタ配線120に接続しているダミー配線間の最小距離DDは、2つのインダクタ配線120間の最小距離以下であってもよい。
【0117】
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ部品厚みは、上記各実施形態の例に限られない。インダクタ部品厚みは、0.300mm以上であってもよい。
・上記インダクタ部品の各実施形態において、インダクタ部品を上面視した形状は、上記各実施形態の例に限られない。たとえば、第1実施形態において、インダクタ部品10を上面視すると、長方形状であってもよいし、円形であってもよい。このとき、第1層L1~第4層L4の形状も同様に、上面視長方形状や円形状となる。
【0118】
・上記製造方法の実施形態において、ベース部材210の形状、大きさ、材質等は、上で例示した製造方法に限られない。特に、ベース部材210の厚みは、製造後のインダクタ部品厚みTA2に影響を与えないため、加工するうえで適宜取り扱いやすい厚みとすればよい。
【0119】
・上記製造方法の実施形態において、シード層230を形成する方法は、スパッタリングに限られない。例えば、金属フィルム、蒸着法、塗布法等によって形成されてもよい。
・上記製造方法の実施形態において、第1被覆部240及び第2被覆部250の材質は、特に限定されない。例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂及びポリイミド系樹脂などの有機絶縁樹脂を形成してもよい。
【0120】
・上記製造方法の実施形態において、第1被覆工程及び第2被覆工程の方法は、ドライフィルムレジストを用いる方法に限られない。例えば、薄型のフィルムによって、第1被覆部240及び第2被覆部250を形成してもよい。
【0121】
・上記製造方法の実施形態において、インダクタ配線加工工程の方法は、セミアディティブ工法に限られない。たとえば、フルアディティブ工法やサブトラクティブ工法であってもよいし、スクリーン印刷や、ディスペンス、インクジェットなどの塗布工法でもよい。
【0122】
・上記製造方法の実施形態において、第1磁性層加工工程で磁性層140の上端部を削る量は、適宜調整されればよい。例えば、第1磁性層厚みTM11や第2磁性層厚みTM12を大きく設定したい場合には、磁性層140の上端部を削る量を小さくすればよい。
【0123】
・上記製造方法の実施形態において、第2磁性層加工工程で磁性層140の下端部を削る量は、適宜調整されればよい。例えば、第2磁性層厚みTM12を大きく設定したい場合には、磁性層140の下端部を削る量を小さくすればよい。
【0124】
・上記製造方法の実施形態において、製造するインダクタ部品は、インダクタ部品110に限られない。例えば、インダクタ部品10の製造にも適用できる。この場合、外部端子加工工程及び絶縁層加工工程は省略される。
【符号の説明】
【0125】
10…インダクタ部品、20…インダクタ配線、21…配線本体、21A…内周端部、21B…外周端部、22…第1パッド、23…第2パッド、31…第1ダミー配線、32…第2ダミー配線、40…磁性層、41…内磁路部、42…外磁路部、43…第1磁性層、44…絶縁樹脂磁性層、45…第2磁性層、51…第1垂直配線、52…第2垂直配線、60…絶縁樹脂、L1…第1層、L2…第2層、L3…第3層、L4…第4層、TA…インダクタ部品厚み、TD…ダミー配線厚み、TI…インダクタ配線厚み、TM1…第1磁性層厚み、TM2…第2磁性層厚み、TV…垂直配線厚み、WD…ダミー配線幅、WI…インダクタ配線幅、110…インダクタ部品、120…インダクタ配線、121…配線本体、121A…第1端部、121B…第2端部、122…第1パッド、123…第2パッド、131…第1ダミー配線、132…第2ダミー配線、140…磁性層、141…内磁路部、142…外磁路部、143…第1磁性層、144…絶縁樹脂磁性層、145…第2磁性層、151…第1垂直配線、152…第2垂直配線、160…絶縁樹脂、170…絶縁層、180…外部端子、210…ベース部材、220…ダミー絶縁層、230…シード層、240…第1被覆部、250…第2被覆部、L11…第1層、L12…第2層、L13…第3層、L14…第4層、MF…主面、MF2…主面、TA2…インダクタ部品厚み、TI2…インダクタ配線厚み、TM11…第1磁性層厚み、TM12…第2磁性層厚み、TV2…垂直配線厚み、TV3…切削前垂直配線厚み、WD2…ダミー配線幅、WI2…インダクタ配線幅。
図1
図2
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図5
図6
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