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特許7180604ポリアミド樹脂及びそれからなるフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂及びそれからなるフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/36 20060101AFI20221122BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08G69/36
C08J5/18 CFG
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019539566
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2018031896
(87)【国際公開番号】W WO2019044882
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2017167095
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】中川 知之
(72)【発明者】
【氏名】花岡 康成
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀作
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-268744(JP,A)
【文献】特公昭44-017566(JP,B2)
【文献】特開昭54-152098(JP,A)
【文献】特表2017-505364(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/36
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュリンクフィルムを製造するための未延伸フィルムであって、
前記未延伸フィルムは、3種以上の単位を含むポリアミド樹脂を含み、
前記ポリアミド樹脂は、
(A)ε-カプロラクタム及び/又は6-アミノカプロン酸に由来する単位、
(B-1)芳香環構造を有さない単位並びに
(B-2)芳香環構造を有する単位
からなり、
前記(B-1)芳香環構造を有さない単位が、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の等モル塩又は等モル混合物に由来する単位であり、
前記(B-2)芳香環構造を有する単位が、ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸及び/またはテレフタル酸の等モル塩又は等モル混合物に由来する単位であり、
前記ポリアミド樹脂の全単位中に、
前記(A)ε-カプロラクタム及び/又は6-アミノカプロン酸に由来する単位を60~70重量%及び前記(B-1)芳香環構造を有さない単位及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を合計で30~40重量%含み、かつ、前記(B-1)芳香環構造を有さない単位を25~39重量%及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を1~15重量%含む、シュリンクフィルムを製造するための未延伸フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の未延伸フィルムの製造方法であって、請求項1に定義されたポリアミド樹脂又は請求項1に定義されたポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を、溶融押出機を用いて溶融押出して、未延伸フィルムを成形する工程を含む、請求項1に記載の未延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
シュリンクフィルムを製造するための延伸フィルムの製造方法であって、請求項1に記載の未延伸フィルムを延伸する工程を含む、シュリンクフィルムを製造するための延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
シュリンクフィルムを製造するための延伸フィルムであって、
前記延伸フィルムは、3種以上の単位を含むポリアミド樹脂を含み、
前記ポリアミド樹脂は、
(A)ε-カプロラクタム及び/又は6-アミノカプロン酸に由来する単位、
(B-1)芳香環構造を有さない単位並びに
(B-2)芳香環構造を有する単位
からなり、
前記(B-1)芳香環構造を有さない単位が、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の等モル塩又は等モル混合物に由来する単位であり、
前記(B-2)芳香環構造を有する単位が、ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸及び/またはテレフタル酸の等モル塩又は等モル混合物に由来する単位であり、
前記ポリアミド樹脂の全単位中に、
前記(A)ε-カプロラクタム及び/又は6-アミノカプロン酸に由来する単位を60~70重量%及び前記(B-1)芳香環構造を有さない単位及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を合計で30~40重量%含み、かつ、前記(B-1)芳香環構造を有さない単位を25~39重量%及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を1~15重量%含む、シュリンクフィルムを製造するための延伸フィルム。
【請求項5】
シュリンクフィルムの製造方法であって、請求項1に記載の未延伸フィルムを延伸する工程を含む、シュリンクフィルムの製造方法。
【請求項6】
シュリンクフィルムであって、
前記シュリンクフィルムは、3種以上の単位を含むポリアミド樹脂を含み、
前記ポリアミド樹脂は、
(A)ε-カプロラクタム及び/又は6-アミノカプロン酸に由来する単位、
(B-1)芳香環構造を有さない単位並びに
(B-2)芳香環構造を有する単位
からなり、
前記(B-1)芳香環構造を有さない単位が、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の等モル塩又は等モル混合物に由来する単位であり、
前記(B-2)芳香環構造を有する単位が、ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸及び/またはテレフタル酸の等モル塩又は等モル混合物に由来する単位であり、
前記ポリアミド樹脂の全単位中に、
前記(A)ε-カプロラクタム及び/又は6-アミノカプロン酸に由来する単位を60~70重量%及び前記(B-1)芳香環構造を有さない単位及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を合計で30~40重量%含み、かつ、前記(B-1)芳香環構造を有さない単位を25~39重量%及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を1~15重量%含む、シュリンクフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂及びそれからなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は機械的強度、熱的性質、化学的性質やガスバリヤー性に優れているため、レトルト食品などの食品包装用材料として使用されている。近年、これら食品包装用途の拡大に伴い、要求特性が多様化、高度化している。食品包装用途の一つであるハム、ソーセージなどの加工食肉製品や水物食品包装用途では、薄く、且つ実用的な機械的強度及びガスバリヤー性を維持しつつ、加熱によって包装材料を収縮させることで内容物の緊密包装が容易に可能となるような熱収縮性に優れたポリアミドフィルムが求められている。
【0003】
これまで、ポリアミドフィルムの熱収縮性が改良できるポリアミド樹脂やポリアミドフィルムが開示されている。熱収縮性が改良できるポリアミド樹脂としては、ε-カプロラクタムと、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン及びテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とからなるポリアミド共重合体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-227626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内容物との緊密性をより向上させることができるポリアミドフィルムとそのフィルムが提供できるポリアミド樹脂が求められている。
【0006】
本発明の目的は、熱収縮性、耐ピンホール性等に優れるフィルム及びそれに適したポリアミド樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、分子鎖中に芳香環構造を有するジアミンもしくはジカルボン酸に由来する単位を有する特定のポリアミド樹脂が熱収縮性、耐ピンホール性等に優れることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明は、
3種以上の単位を含むポリアミド樹脂であって、
(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位並びに
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位を含み、
前記(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位は、
(B-1)芳香環構造を有さない単位及び
(B-2)芳香環構造を有する単位
を含むシュリンクフィルム用ポリアミド樹脂である。
本発明は、好ましくは、ポリアミド樹脂の全単位中に、
前記(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位を60~70重量%及び前記(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位を30~40重量%含み、かつ、前記(B-1)芳香環構造を有さない単位を25~39重量%及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を1~15重量%含む、シュリンクフィルム用ポリアミド樹脂である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、熱収縮性、耐ピンホール性等に優れるポリアミド樹脂とそれからなるフィルムを提供することができる。本発明のポリアミド樹脂からなるフィルムは、延伸性が良好である。本発明のポリアミド樹脂からなる延伸フィルムは、熱収縮性が良好なので、包装用材料、特に、食品包装用材料としてのシュリンクフィルムとして好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本発明のポリアミド樹脂は、3種以上の単位を含むポリアミド樹脂であって、
(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位並びに
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位を含み、
前記(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位は、
(B-1)芳香環構造を有さない単位及び
(B-2)芳香環構造を有する単位
を含むポリアミド樹脂である。
【0012】
[(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位]
ポリアミド樹脂に含まれる(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位は、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を重合に供することでポリアミド樹脂中に導入することができる。
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ウンデカラクタム、ω-ドデカラクタム、2-ピロリドンなどが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、10-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これらのラクタム及びアミノカルボン酸は単独で使用してもよく、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。ラクタムとアミノカルボン酸を併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。
【0013】
ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位の含有率は、例えば50~98重量%であり、好ましくは55~90重量%であり、より好ましくは60~88重量%、特に好ましくは60~70重量%である。ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位の含有率が上記下限以上であると機械的強度がより向上する傾向がある。上記上限以下であると延伸性や熱収縮性がより向上する傾向がある。
【0014】
[(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位]
ポリアミド樹脂は、(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位として、(B-1)芳香環構造を有さない単位と、(B-2)芳香環構造を有する単位とを含む。ここで、ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位は、ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩又は等モル混合物を重合して形成される単位であり、1種類のジアミン及び1種類のジカルボン酸の組合せで1種類の単位とみなす。なお、当該単位を構成するジアミン及びジカルボン酸は直接縮合していても、他の単位又は他の単位を構成するジアミン若しくはジカルボン酸を介して縮合していてもよい。
【0015】
(B-1)芳香環構造を有さない単位
ポリアミド樹脂に含まれる(B-1)芳香環構造を有さない単位は、ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩又は等モル混合物に由来する芳香環構造を有さない単位であり、芳香環構造を有するジアミン以外のジアミンと、芳香環構造を有するジカルボン酸以外のジカルボン酸とを重合することで形成される。
【0016】
芳香環構造を有するジアミン以外のジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの直鎖状脂肪族ジアミン;1-ブチル-1,2-エタンジアミン、1,1-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1-エチル-1,4-ブタンジアミン、1,2-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1,3-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1,4-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、2,3-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、3,3-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジエチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,7-ヘプタンジアミン、2,2-ジメチル-1,7-ヘプタンジアミン、2,3-ジメチル-1,7-ヘプタンジアミン、2,4-ジメチル-1,7-ヘプタンジアミン、2,5-ジメチル-1,7-ヘプタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、3-メチル-1,8-オクタンジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、2,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、3,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、4,5-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、2,2-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、3,3-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、4,4-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミンなどの分岐状脂肪族ジアミンが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、直鎖状脂肪族ジアミンから選択される少なくとも1種がより好ましい。
芳香環構造を有するジアミン以外のジアミンは1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0017】
芳香環構造を有するジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸などの直鎖状脂肪族ジカルボン酸;ジメチルマロン酸、3,3-ジメチルコハク酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、2-ブチルオクタジオン酸、2,3-ジブチルブタンジオン酸、8-エチルオクタデカンジオン酸、8,13-ジメチルエイコサジオン酸、2-オクチルウンデカンジオン酸、2-ノニルデカンジオン酸などの分岐状脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、直鎖状脂肪族ジカルボン酸から選択される少なくとも1種がより好ましい。
芳香環構造を有するジカルボン酸以外のジカルボン酸は1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0018】
(B-2)芳香環構造を有する単位
ポリアミド樹脂に含まれる(B-2)芳香環構造を有する単位は、ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩又は等モル混合物に由来し、ジアミン及びジカルボン酸の少なくとも一方に芳香環構造を有する単位であり、例えば、ジカルボン酸及び芳香環構造を有するジアミンの等モル塩若しくは等モル混合物、又はジアミン及び芳香環構造を有するジカルボン酸の等モル塩若しくは等モル混合物を重合することで形成される。
【0019】
芳香環構造を有するジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、1,4-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチルジフェニルメタン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アミノ-3-メチル-5-エチルフェニル)プロパンなどの芳香族ジアミンが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0020】
芳香環構造を有するジアミンは1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0021】
芳香環構造を有するジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-2,4-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられ、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
【0022】
芳香環構造を有するジカルボン酸は1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0023】
ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率は、例えば2~50重量%であり、好ましくは10~45重量%であり、より好ましくは12~40重量%、特に好ましくは30~40重量%である。ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が上記下限以上であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると結晶性及びフィルム物性がより向上し、工業的に有利な延伸フィルムを得ることがより容易になる傾向がある。
ポリアミド樹脂の全単位中における(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位の含有率と(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率との合計は、実用的な物性の観点から、90~100重量%となることが好ましく、95~100重量%となることがより好ましく、97~100重量%となることがさらに好ましい。
【0024】
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が、2~50重量%の場合、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-1)芳香環構造を有さない単位の含有率は、1~49.9重量%であり、好ましくは1~49.5重量%であり、より好ましくは1~49重量%である。芳香環構造を有さない単位の含有率が、上記下限以上であると機械的強度など実用的な物性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。
【0025】
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が、2~50重量%の場合、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-2)芳香環構造を有する単位の含有率は、例えば0.1~49重量%であり、好ましくは0.5~49重量%であり、より好ましくは1~49重量%であり、さらに好ましくは1.5~20重量%である。芳香環構造を有する単位の含有率が、上記下限以上であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると機械的強度など実用的な物性がより向上する傾向がある。
【0026】
(B-2)芳香環構造を有する単位の含有率は、次のようにして求められる。
ポリアミド樹脂に含まれる芳香環構造を有する単位がジアミン単位のみの場合、(B-2)芳香環構造を有する単位の割合は、当該ジアミン単位の重量と等モルの芳香環構造を有しないジカルボン酸単位の重量との和(重量%)である。同様に、ポリアミド樹脂に含まれる芳香環構造を有する単位がジカルボン酸単位のみの場合、(B-2)芳香環構造を有する単位の割合は、当該ジカルボン酸単位の重量と等モルの芳香環構造を有しないジアミン単位の重量との和(重量%)である。ポリアミド樹脂に含まれる芳香環構造を有する単位がジアミン単位とジカルボン酸単位の両方である場合、(B-2)芳香環構造を有する単位の割合は、当該ジアミン単位の重量と当該ジカルボン酸単位の重量の等モルである部分の重量の和(重量%)である。ポリアミド樹脂に含まれる芳香環構造を有する単位がジアミン単位とジカルボン酸単位の両方である場合で、当該ジアミン単位と当該ジカルボン酸単位が等モルでない場合、(B-2)芳香環構造を有する単位の割合は、両方の等モルである部分の重量の和(重量%)に、残余の芳香環構造を有する単位の重量とこれと等モルの芳香環構造を有しない単位の重量との和(重量%)を加えたものである。
【0027】
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が、10~45重量%の場合、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-1)芳香環構造を有さない単位の含有率は、1~44.9重量%であり、好ましくは1~44.5重量%であり、より好ましくは1~44重量%である。芳香環構造を有さない単位の含有率が、上記下限以上であると機械的強度など実用的な物性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。
【0028】
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が、10~45重量%の場合、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-2)芳香環構造を有する単位の含有率は、例えば0.1~44重量%であり、好ましくは0.5~44重量%であり、より好ましくは1~44重量%である。芳香環構造を有する単位の含有率が、上記下限以上であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると機械的強度など実用的な物性がより向上する傾向がある。
【0029】
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が、12~40重量%の場合、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-1)芳香環構造を有さない単位の含有率は、1~39.9重量%であり、好ましくは1~39.5重量%であり、より好ましくは1~39重量%である。芳香環構造を有さない単位の含有率が、上記下限以上であると機械的強度など実用的な物性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。
【0030】
(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が、12~40重量%の場合、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-2)芳香環構造を有する単位の含有率は、例えば0.1~39重量%であり、好ましくは0.5~39重量%であり、より好ましくは1~39重量%である。芳香環構造を有する単位の含有率が、上記下限以上であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると機械的強度など実用的な物性がより向上する傾向がある。
【0031】
(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位及び(B-1)芳香環構造を有さない単位の総含有量に対する、(B-2)芳香環構造を有する単位の含有率[(B-2)/{(A)+(B-1)}×100]は、例えば、0.1~97重量%であり、好ましくは0.5~97重量%であり、より好ましくは1~97重量%である。芳香環構造を有する単位の百分率が、上記下限以上であると延伸性及び熱収縮性がより向上する傾向がある。上記上限以下であると機械的強度など実用的な物性がより向上する傾向がある。
【0032】
また、(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位の総含有率が、30~40重量%の場合、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-1)芳香環構造を有さない単位の含有率は25~39重量%が好ましく、ポリアミド樹脂の全単位中に含まれる(B-2)芳香環構造を有する単位の含有率は1~15重量%が好ましい。
即ち、本発明のポリアミド樹脂は、特に、
ポリアミド樹脂の全単位中に、
(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位を60~70重量%及び(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩に由来する単位を30~40重量%含み、かつ、(B-1)芳香環構造を有さない単位を25~39重量%及び前記(B-2)芳香環構造を有する単位を1~15重量%含むポリアミド樹脂が好ましい。このような組成を有するポリアミド樹脂は、特に、熱収縮性、耐ピンホール性等に優れるフィルムを提供することができるため、好ましい。
【0033】
さらには、前記(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸に由来する単位は、(A)ε-カプロラクタム及び/又は6-アミノカプロン酸に由来する単位が好ましい。前記(B-1)芳香環構造を有さない単位は、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の等モル塩に由来する単位が好ましい。また、前記(B-2)芳香環構造を有する単位は、ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸及び/またはテレフタル酸の等モル塩に由来する単位が好ましい。
【0034】
ポリアミド樹脂の製造は回分式でも、連続式でも実施でき、バッチ式反応釜、一槽式又は多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機などの混練反応押出機など、公知のポリアミド製造装置を用いることができる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合などの公知の方法を用いることができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組み合わせて用いることができる。
【0035】
ポリアミド樹脂の製造方法は、例えば、(A)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸と、(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩と、水とを耐圧容器に仕込み、密封状態で200~350℃の温度範囲で、加圧下において重縮合した後、圧力を下げて、大気圧下又は減圧下で200~350℃の温度範囲で重縮合反応を続け、高分子量化することにより、目的のポリアミド樹脂を製造することができる。この際(B)ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩は、ほぼ等モルのジアミンとジカルボン酸を水、アルコール等と混合して、溶解させた後、ナイロン塩を生成させ、そのままの溶液状態、濃縮した溶液状態、又は、再結晶により得られる固体状のナイロン塩として仕込んでもよい。また、ジアミン及びジカルボン酸の等モル塩の代わりに、ほぼ等モルのジアミン及びジカルボン酸をそのまま耐圧容器に仕込んでもよい。例えば(B-1)芳香環構造を有しない単位を構成するジアミンとジカルボン酸とをこれらの等モル塩として仕込み、(B-2)芳香環構造を有する単位を構成するジアミンとジカルボン酸とをそのまま耐圧容器仕込んでもよい。なお、ほぼ等モルのジアミン及びジカルボン酸の等モル混合物は実質的に等モル塩に相当する。
ポリアミド樹脂の製造方法で使用する水は、酸素を除去したイオン交換水、蒸留水等を使用することが望ましく、その使用量はポリアミド樹脂を構成する原料100重量部に対して、例えば1~150重量部である。
【0036】
ポリアミド樹脂を製造する際、必要ならば、重合促進や酸化防止のため、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸及びこれらのアルカリ金属塩などのリン系化合物を添加することができる。これらリン系化合物の添加量は、通常、得ようとするポリアミド樹脂に対して50~3,000ppmである。また、分子量調節や成形加工時の溶融粘度安定化のため、ラウリルアミン、ステアリルアミンなどのモノアミン;ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのジアミン;酢酸、ステアリン酸、安息香酸などのモノカルボン酸;アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の分子量調節剤を添加してポリアミド樹脂を製造してもよい。これらの分子量調節剤は1種類を添加してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて添加してもよい。分子量調節剤を使用する場合、その使用量は、分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミドの相対粘度が、1.5~5.0の範囲になるように適宜決められる。
【0037】
ポリアミド樹脂の分子量は、JIS K6810に記載の方法で測定される相対粘度(ηr)が1.5~5.0の範囲、好ましくは2.0~4.5のものである。なお、ポリアミド樹脂の末端基の種類及びその濃度や分子量分布には特別の制約は無い。
【0038】
高分子量化されたポリアミド樹脂は、通常、溶融状態で反応容器から抜き出され、水などで冷却された後、ペレット状に加工される。ナイロン6など未反応モノマーを多く含有するポリアミド樹脂が主成分のペレットの場合、さらに、熱水洗浄などにより未反応モノマーなどを除去した後、フィルムの製造等に使用することが好ましい。
【0039】
ポリアミド樹脂はフィルム製造に好適に用いることができる。すなわち、本発明はポリアミド樹脂のフィルムの製造における使用を包含する。
ポリアミド樹脂からのフィルムの製造方法には、公知のフィルム製造方法、例えば、溶融押出機を用いたTダイ法、インフレーション法、チューブラー法、溶剤キャスト法、熱プレス法などの製造方法を適用することができる。溶融押出機を用いた方法でのポリアミドの溶融温度は、例えば、使用するポリアミドの融点以上320℃以下である。
【0040】
ポリアミド樹脂からなるフィルムは延伸フィルムであってもよい。すなわち、本発明はポリアミド樹脂の延伸フィルムの製造における使用を包含する。延伸フィルムは例えば、上記フィルムを延伸することで製造することができる。
【0041】
延伸については、少なくとも一軸方向であればよく、フィルムの使用用途に合わせて適宜、一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法など選択することができる。中でも逐次二軸延伸法でフィルムを製造する場合、ポリアミド樹脂に必要に応じてステアリン酸カルシウム、ビスアミド化合物、シリカ、タルクなどの滑剤、スリップ剤、核剤などを添加して樹脂組成物を得た後、Tダイを備えた押出機で樹脂組成物を溶融押出して、未延伸フィルムを成形する。未延伸フィルムは引き続き、連続した工程で延伸してもよいし、一旦巻き取ってから延伸してもよい。
【0042】
延伸は使用するポリアミド樹脂のガラス転移温度(以下、Tgと記載する)以上の温度で実施される。逐次二軸延伸の一段目の延伸(一次延伸)はフィルムの押出方向へ、Tg以上(Tg+50)℃以下の温度範囲で延伸倍率2~5倍、好ましくは2.5~4倍に延伸され、次いでフィルムの押出方向と直角の方向に行う二段目の延伸(二次延伸)は、一次延伸と同じ温度かやや高い温度で、延伸倍率2~5倍、好ましくは2.5~4倍に延伸される。その後、150℃以上の温度で熱固定する工程を経て、逐次二軸延伸フィルムは製造される。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂からなる延伸フィルムは、好ましくは20~60%、より好ましくは22~60%、さらに好ましくは25~60%の熱水収縮率を有する。本発明のポリアミド樹脂からなる延伸フィルムは、高い熱水収縮率を生かして、包装用材料、特に、食品包装用材料として好適に使用できる。
【0044】
ポリアミド樹脂には、本発明の効果が阻害されない範囲で、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、顔料、染料、香料、補強材などを添加することができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例等により何等の限定を受けるものではない。尚、実施例及び比較例中に示した測定値は以下の方法で測定した。
【0046】
(1)ポリアミド樹脂のηr(相対粘度)の測定
JIS K6810に準じ、96重量%の濃硫酸を溶媒として、1重量/容量%のポリアミド濃度で、ウベローデ粘度計を用い、25℃の温度で測定した。
【0047】
(2)熱水収縮率の測定
フィルムに記した標線間距離(=L)を測定後、無緊張状態で60℃又は90℃の熱水中に1分間放置し、標線間の縮み量(=ΔL)を測定し、収縮率(%)=ΔL/L×100として算出した。
【0048】
(3)突刺し強度
JAS P1019に準じて、TOYO BALDWIN社製テンシロンUTM-III-200を使用して、突刺速度50mm/min、23℃、50%RHの条件下で測定した。
【0049】
(4)ゲルボフレックス(耐ピンホール性)
理学工業(株)製恒温槽付ゲルボフレックステスターにより、MIL-B-131Cに従い、23℃下で1000回の屈曲テストを未延伸ポリアミドフィルムAに対して行った後、そのフィルムを記録紙上に設置後、墨汁を塗り、記録紙上に記録された黒点の数を測定した。
【0050】
(5)酸素透過度
ASTM D-3985-81に準じて、モダンコントロール社製MOCON-OX-TRAN2/20を使用して、23℃、0%RHの条件下で、50μmの未延伸フィルムの酸素透過係数を測定した。
【0051】
(実施例1)
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、放圧口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた5リットルの圧力容器にε-カプロラクタム910.01g(70重量%)、ヘキサメチレンジアミン(HMD)とアジピン酸(AA)との等モル塩50%水溶液520.00g(HMDとAAとの等モル塩:20重量%)、HMD80%水溶液67.19g、イソフタル酸(IPA:東京化成工業株式会社製)76.51g(HMDとIPAのモル比が1:1)(10重量%)、次亜リン酸ナトリウム0.065gを仕込み、窒素加圧と放圧を数回繰り返し、圧力容器内を窒素置換してから徐々に加熱を行った。撹拌は速度50rpmで行った。1.5時間かけて室温から240℃まで昇温し、240℃で2時間重合させた後、ゲージ圧力0MPaまで放圧し、引き続き、窒素ガスを260ml/分で流しながら、240℃で6.0時間重合を行い、ポリアミドを得た。重合終了後、撹拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリアミドを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズしてペレットを得た。このペレットを熱水中、6時間撹拌洗浄し、未反応モノマーを除去した後、110℃で72時間真空乾燥した。得られたポリアミドのηrは3.5であった。
得られたポリアミド約2gを使用して260℃の条件でプレス成型機を用いて、厚さ100μmの未延伸フィルムを作製した。
この未延伸フィルムから切り出した縦90mm、横10mmの試料に標線(50mm間隔)を引いて引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロンRTA-10KN)に取り付け、80℃の雰囲気温度(延伸時温度)で約1分間予熱した後、同温度下、変形速度150mm/分でフィルムの縦方向に2.7倍に延伸した。この延伸フィルムを23℃、50%RHの雰囲気中に一昼夜放置した後、90℃の熱水中に1分間放置して熱水収縮率を測定したところ、32%であった。その結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2)
プレス成型機により作製した未延伸フィルムから試料を切り出し、120℃の雰囲気温度で予熱、延伸したことを除き、実施例1と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、36%であった。その結果を表1に示す。
【0053】
(実施例3)
プレス成型機により作製した未延伸フィルムから試料を切り出し、150℃の雰囲気温度で予熱、延伸したことを除き、実施例1と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、39%であった。その結果を表1に示す。
【0054】
(実施例4)
攪拌機、温度計、圧力計、圧力制御装置、窒素ガス導入口、放圧口及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの耐圧容器にε-カプロラクタム16.10kg(70重量%)、HMDとAAとの等モル塩50%水溶液9.20kg(HMDとAAとの等モル塩:20重量%)、HMD80%水溶液1.183kg、テレフタル酸(TPA:東京化成工業株式会社製)1.353kg(HMDとTAのモル比が1:1)(10重量%)、次亜リン酸ナトリウム1.15gを仕込み、窒素加圧と放圧を数回繰り返し、耐圧容器内を窒素置換してから240℃まで昇温した。240℃で2時間重合させた後、ゲージ圧力0MPaまで放圧し、引き続き、窒素ガスを260L/hで流しながら、240℃で3.5時間重合を行い、ポリアミドを得た。重合終了後、撹拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリアミドを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズしてペレットを得た。このペレットを熱水流通下、12時間洗浄し、未反応モノマーを除去した後、110℃で12時間真空乾燥した。得られたポリアミドのηrは4.0であった。
得られたポリアミドをPLABO製φ40mmTダイキャスティング装置にて、成形温度260℃でTダイより溶融押出しし、第一ロール温度40℃で冷却後、フィルム厚み100μmの未延伸フィルムを作製した。得られた未延伸フィルムの突刺し強度、ゲルボフレックス、酸素透過度は、それぞれ、12.1N、24個/0.03m、26.9cc/m・dayであった。
プレス成型機により作製した未延伸フィルムを実施例1と同様に延伸して得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、33%であった。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例5)
実施例4で得られたポリアミドによりプレス成型機を用いて未延伸フィルムを作製し、切り出した試料を120℃の雰囲気温度で予熱、延伸したことを除き、実施例1と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、37%であった。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例6)
実施例4で得られたポリアミドによりプレス成型機を用いて未延伸フィルムを作製し、切り出した試料を150℃の雰囲気温度で予熱、延伸したことを除き、実施例1と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、39%であった。その結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
ε-カプロラクタム975.00g(75重量%)、HMDとAAとの等モル塩50%水溶液650.00g(HMDとAAとの等モル塩:25重量%)を仕込み、芳香環構造を有するジアミン及びジカルボン酸を使用しない以外は、実施例1と同様の方法で実施し、ポリアミドを得た。このポリアミドのηrは4.4であった。
このポリアミドから実施例1と同様の方法で未延伸フィルム、次いで延伸フィルムを作製し熱水収縮率を測定したところ、22%であった。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例7)
実施例4で得られたポリアミドをPLABO製φ40mmTダイキャスティング装置にて、成形温度260℃でTダイより溶融押出しし、第一ロール温度40℃で冷却後、フィルム厚み100μmの未延伸フィルムを作製した。得られた未延伸フィルムは、岩本製作所製BIX703ラボ延伸機を使用して、延伸速度150mm/sec、延伸温度80℃、延伸倍率3.0×3.0倍に同時二軸延伸した後、120℃の加熱空気で熱処理を行い、厚み25μmの二軸延伸フィルムを作製した。この延伸フィルムを23℃、50%RHの雰囲気中に一昼夜放置した後、90℃の熱水中に1分間放置して熱水収縮率を測定したところ、49%であった。その結果を表2に示す。
【0059】
(実施例8)
実施例7で得られた未延伸フィルムを、延伸温度100℃で同時二軸延伸した後、100℃の加熱空気で熱処理を行ったことを除き、実施例7と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、50%であった。その結果を表2に示す。また、得られた延伸フィルムの突刺し強度は15.4Nであった。
【0060】
(実施例9)
実施例7で得られた未延伸フィルムを、延伸温度120℃で同時二軸延伸した後、120℃の加熱空気で熱処理を行ったことを除き、実施例7と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、51%であった。その結果を表2に示す。
【0061】
(実施例10)
ε-カプロラクタム16.10kg(70重量%)、HMDとAAとの等モル塩50%水溶液11.50kg(HMDとAAとの等モル塩:25重量%)、HMD80%水溶液0.592kg、テレフタル酸(TPA:東京化成工業株式会社製)0.677kg(HMDとTAのモル比が1:1)(5重量%)に変更したことを除き、実施例4と同様にしてポリアミドを得た。このポリアミドのηrは3.9であった。このポリアミドから実施例7と同様に得られた未延伸フィルムの突刺し強度、ゲルボフレックス、酸素透過度は、それぞれ、11.8N、8個/0.03m、26.0cc/m・dayであった。
得られた未延伸フィルムを用い、実施例7と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、48%であった。その結果を表2に示す。
【0062】
(実施例11)
実施例10で得られたポリアミドを用い、実施例8と同様にして得られた延伸フィルムの熱水収縮率を測定したところ、50%であった。その結果を表2に示す。また、得られた延伸フィルムの突刺し強度は、15.1Nであった。
【0063】
(比較例2)
ε-カプロラクタム17.25kg(75重量%)、HMDとAAとの等モル塩50%水溶液11.5kg(HMDとAAとの等モル塩:25重量%)を仕込み、芳香環構造を有するジアミン及びジカルボン酸を使用しないことを除き、実施例4と同様の方法で実施し、ポリアミドを得た。このポリアミドのηrは4.4であった。このポリアミドから実施例7と同様の方法で未延伸フィルム、次いで延伸フィルムを作製し熱水収縮率を測定したところ、41%であった。その結果を表2に示す。
【0064】
(実施例12)
ε-カプロラクタム13.80kg(60重量%)、HMDとAAとの等モル塩50%水溶液16.10kg(HMDとAAとの等モル塩:35重量%)、HMD80%水溶液0.592kg、テレフタル酸(TA:東京化成工業株式会社製)0.677kg(HMDとTAのモル比が1:1)(5重量%)に変更したことを除き、実施例4と同様にしてポリアミドを得た。このポリアミドのηrは3.15であった。このポリアミドから実施例7と同様に得られた未延伸フィルムの突刺し強度、ゲルボフレックスは、それぞれ、9.4N、5個/0.03mであった。
得られた未延伸フィルムを用い、実施例7と同様にして得られた延伸フィルムを60℃の熱水中に1分間放置して熱水収縮率を測定したところ、40%であった。その結果を表2に示す。
【0065】
(実施例13)
ε-カプロラクタム13.80kg(60重量%)、HMDとAAとの等モル塩50%水溶液11.50kg(HMDとAAとの等モル塩:25重量%)、HMD80%水溶液1.775kg、テレフタル酸(TA:東京化成工業株式会社製)2.031kg(HMDとTAのモル比が1:1)(15重量%)に変更したことを除き、実施例4と同様にしてポリアミドを得た。このポリアミドのηrは2.98であった。このポリアミドから実施例7と同様に得られた未延伸フィルムの突刺し強度、ゲルボフレックスは、それぞれ、9.3N、17個/0.03mであった。
得られた未延伸フィルムを用い、実施例7と同様にして得られた延伸フィルムを60℃の熱水中に1分間放置して熱水収縮率を測定したところ、40%であった。その結果を表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】