(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂組成物及びポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20221122BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221122BHJP
C08K 5/353 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08G73/10
C08K5/353
(21)【出願番号】P 2019569185
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003202
(87)【国際公開番号】W WO2019151336
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018018307
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岡 弘明
(72)【発明者】
【氏名】末永 修也
(72)【発明者】
【氏名】高田 貴文
(72)【発明者】
【氏名】針生 智大
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222797(JP,A)
【文献】国際公開第2012/173126(WO,A1)
【文献】特表2014-524512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08G73/00- 73/26
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂と、少なくとも2つのオキサゾリル基を有する架橋剤とを含むポリイミド樹脂組成物であって、
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有し、
構成単位Aが、下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)及び下記式(a-1-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-2)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(A-1)を含み、
構成単位Bが、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)とを含
み、
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が75~99モル%であり、
構成単位B中における構成単位(B-2)の比率が1~25モル%である、ポリイミド樹脂組成物。
【化1】
(式(b-1)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又はメチル基であり;式(b-2)中、Xは単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、カルボニル基、エーテル基、下記式(b-2-i)で表される基、又は下記式(b-2-ii)で表される基であり、pは0~2の整数であり、m1は0~4の整数であり、m2は0~4の整数である。ただし、pが0の場合、m1は1~4の整数である。)
【化2】
(式(b-2-i)中、m3は0~5の整数であり;式(b-2-ii)中、m4は0~5の整数である。なお、m1+m2+m3+m4は1以上であり、pが2の場合、2つのX及び2つのm2~m4のそれぞれは独立して選択される。)
【請求項2】
構成単位(B-2)が、下記式(b-21)で表される化合物に由来する構成単位(B-21)である、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【化3】
【請求項3】
前記架橋剤が、前記少なくとも2つのオキサゾリル基が結合したベンゼン環を含む、請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記架橋剤中のオキサゾリル基と前記ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比(オキサゾリル基/カルボキシル基)が1/4~1/0.5の範囲となるような比率で、前記ポリイミド樹脂と前記架橋剤とを含む、請求項1~3のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項5】
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が50モル%以上である、請求項1~
4のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項6】
構成単位(A-1)が構成単位(A-1-1)である、請求項1~
5のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項7】
構成単位(A-1)が構成単位(A-1-2)である、請求項1~
5のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物中の前記ポリイミド樹脂が前記架橋剤により架橋されてなるポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂組成物及びポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた機械的特性及び耐熱性を有することから、電気・電子部品等の分野において様々な利用が検討されている。例えば、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置に用いられるガラス基板を、デバイスの軽量化やフレキシブル化を目的として、プラスチック基板へ代替することが望まれており、当該プラスチック基板として適するポリイミドフィルムの研究が進められている。このような用途のポリイミドフィルムには無色透明性が求められる。
【0003】
また、極性溶媒等の有機溶媒に対する耐性(耐有機溶媒性)に劣るフィルムは、極性溶媒等の有機溶媒に曝されたときに、その表面の溶出または膨潤によりフィルムの形態が変わることがあるため、ポリイミドフィルムには耐有機溶媒性が求められることも多い。そのような要求に応えるため、ポリイミド樹脂に架橋剤を添加して製造されたポリイミドフィルムが提案されている。
特許文献1には、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂と少なくとも2つのオキサゾリル基を有する架橋剤とを含むポリイミド樹脂組成物が開示され、当該ポリイミド樹脂組成物によって、良好な透明性と高硬度を有する膜の形成が可能であると記載されている。
また、特許文献2には、カルボキシル基を有するポリイミド共重合体と多官能性エポキシドとを含有する透明フレキシブル膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-222797号公報
【文献】特許第6174580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示装置において、表示素子から発せられる光がプラスチック基板を通って出射されるような場合、プラスチック基板には無色透明性が要求され、さらに、位相差フィルムや偏光板を光が通過する場合(例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネル等)は、無色透明性に加えて、光学的等方性が高いことも要求される。しかし、特許文献1には、光学的等方性について何ら記載されていない。
また、特許文献2において、架橋剤として添加されている多官能性エポキシドのエポキシ基は、比較的低温(約30℃以上)でもカルボキシ基との反応が進行する。そのため、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂と多官能性エポキシドとを含む組成物は、室温にて保存すると架橋によるゲル化が進行し、保存安定性が悪い。また、一般的にエポキシ樹脂の熱分解温度は250~350℃であり、高温プロセスが必要とされる用途では耐熱性が不十分であると考えられる。
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、機械的特性、耐有機溶媒性、無色透明性、及び光学的等方性に優れるフィルムの形成が可能であって、保存安定性に優れるポリイミド樹脂組成物を提供すること、並びに前記ポリイミド樹脂組成物中のポリイミド樹脂が架橋剤により架橋されてなるポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構成単位の組み合わせを含むポリイミド樹脂と特定の架橋剤とを含むポリイミド樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の[1]~[9]に関する。
[1]
ポリイミド樹脂と、少なくとも2つのオキサゾリル基を有する架橋剤とを含むポリイミド樹脂組成物であって、
前記ポリイミド樹脂が、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有し、
構成単位Aが、下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)及び下記式(a-1-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-2)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(A-1)を含み、
構成単位Bが、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)とを含む、ポリイミド樹脂組成物。
【化1】
(式(b-1)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又はメチル基であり;式(b-2)中、Xは単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、カルボニル基、エーテル基、下記式(b-2-i)で表される基、又は下記式(b-2-ii)で表される基であり、pは0~2の整数であり、m1は0~4の整数であり、m2は0~4の整数である。ただし、pが0の場合、m1は1~4の整数である。)
【化2】
(式(b-2-i)中、m3は0~5の整数であり;式(b-2-ii)中、m4は0~5の整数である。なお、m1+m2+m3+m4は1以上であり、pが2の場合、2つのX及び2つのm2~m4のそれぞれは独立して選択される。)
【0008】
[2]
構成単位(B-2)が、下記式(b-21)で表される化合物に由来する構成単位(B-21)である、上記[1]に記載のポリイミド樹脂組成物。
【化3】
[3]
前記架橋剤が、前記少なくとも2つのオキサゾリル基が結合したベンゼン環を含む、上記[1]又は[2]に記載のポリイミド樹脂組成物。
[4]
前記架橋剤中のオキサゾリル基と前記ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比(オキサゾリル基/カルボキシル基)が1/4~1/0.5の範囲となるような比率で、前記ポリイミド樹脂と前記架橋剤とを含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[5]
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が40~99モル%であり、
構成単位B中における構成単位(B-2)の比率が1~60モル%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[6]
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が50モル%以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[7]
構成単位(A-1)が構成単位(A-1-1)である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[8]
構成単位(A-1)が構成単位(A-1-2)である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[9]
上記[1]~[8]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物中の前記ポリイミド樹脂が前記架橋剤により架橋されてなるポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミド樹脂組成物は保存安定性に優れており、機械的特性、耐有機溶媒性、無色透明性、及び光学的等方性に優れるフィルムを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリイミド樹脂組成物]
本発明のポリイミド樹脂組成物はポリイミド樹脂と架橋剤とを含む。以下、本発明におけるポリイミド樹脂及び架橋剤について説明する。
【0011】
<ポリイミド樹脂>
本発明において、ポリイミド樹脂はテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有し、構成単位Aが下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)及び下記式(a-1-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-2)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(A-1)を含み、構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)とを含む。
【化4】
(式(b-1)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又はメチル基であり;式(b-2)中、Xは単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、カルボニル基、エーテル基、下記式(b-2-i)で表される基、又は下記式(b-2-ii)で表される基であり、pは0~2の整数であり、m1は0~4の整数であり、m2は0~4の整数である。ただし、pが0の場合、m1は1~4の整数である。)
【化5】
(式(b-2-i)中、m3は0~5の整数であり;式(b-2-ii)中、m4は0~5の整数である。なお、m1+m2+m3+m4は1以上であり、pが2の場合、2つのX及び2つのm2~m4のそれぞれは独立して選択される。)
【0012】
(構成単位A)
構成単位Aは、ポリイミド樹脂に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、下記式(a-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-1)及び下記式(a-1-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-1-2)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(A-1)を含む。
【化6】
【0013】
式(a-1-1)で表される化合物は、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。
式(a-1-2)で表される化合物は、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物である。
構成単位Aが構成単位(A-1)を含むことによって、フィルムの無色透明性向上に寄与する。また、構成単位(A-1)として構成単位(A-1-1)が含まれる場合は、フィルムの光学的等方性向上にも寄与することができる。
【0014】
構成単位(A-1)は、構成単位(A-1-1)のみであってもよく、又は構成単位(A-1-2)のみであってもよい。また、構成単位(A-1)は、構成単位(A-1-1)と構成単位(A-1-2)の組み合わせであってもよい。
【0015】
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは99モル%以上である。構成単位(A-1)の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位Aは構成単位(A-1)のみからなっていてもよい。
【0016】
構成単位Aは、構成単位(A-1)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4、4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、及び4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸無二水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物(ただし、式(a-1-1)で表される化合物及び式(a-1-2)で表される化合物を除く);並びに1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環を1つ以上含むテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環も脂環も含まないテトラカルボン酸二無水物を意味する。
構成単位Aに任意に含まれる構成単位(A-1)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0017】
構成単位(A-1)以外の構成単位の好適な一態様としては、下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)が挙げられる。
【0018】
【0019】
式(a-2)で表される化合物は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)であり、その具体例としては、下記式(a-2s)で表される3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)、下記式(a-2a)で表される2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)、下記式(a-2i)で表される2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i-BPDA)が挙げられる。
【0020】
【0021】
構成単位Aが構成単位(A-1)及び構成単位(A-2)を含む場合、構成単位A中における構成単位(A-1)の比率は、好ましくは50~95モル%であり、より好ましくは70~95モル%であり、更に好ましくは85~95モル%であり、構成単位A中における構成単位(A-2)の比率は、好ましくは5~50モル%であり、より好ましくは5~30モル%であり、更に好ましくは5~15モル%である。
構成単位Aは構成単位(A-1)と構成単位(A-2)とのみからなっていてもよい。
【0022】
(構成単位B)
構成単位Bは、ポリイミド樹脂に占めるジアミンに由来する構成単位であって、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)とを含む。
【化9】
(式(b-1)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又はメチル基であり;式(b-2)中、Xは単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、カルボニル基、エーテル基、下記式(b-2-i)で表される基、又は下記式(b-2-ii)で表される基であり、pは0~2の整数であり、m1は0~4の整数であり、m2は0~4の整数である。ただし、pが0の場合、m1は1~4の整数である。)
【化10】
(式(b-2-i)中、m3は0~5の整数であり;式(b-2-ii)中、m4は0~5の整数である。なお、m1+m2+m3+m4は1以上であり、pが2の場合、2つのX及び2つのm2~m4のそれぞれは独立して選択される。)
【0023】
式(b-1)中において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又はメチル基であり、水素原子であることが好ましい。式(b-1)で表される化合物としては、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン、及び9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられ、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンが好ましい。
構成単位Bが構成単位(B-1)を含むことによって、フィルムの光学的等方性が向上する。
【0024】
式(b-2)で表される化合物の具体例としては、下記式(b-21)~(b-27)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【0026】
上記化合物の中でも式(b-21)で表される化合物が好ましく、下記式(b-211)で表される化合物、即ち、3,5-ジアミノ安息香酸がより好ましい。
【0027】
【0028】
構成単位(B-2)は、ポリイミド樹脂にカルボキシル基を与える構成単位である。ポリイミド樹脂がカルボキシル基を有することによって、後述する架橋剤を介したポリイミド樹脂同士の架橋が可能となる。したがって、構成単位Bが構成単位(B-2)を含むことによって、フィルムの耐有機溶媒性が向上する。
【0029】
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率は、好ましくは40~99モル%であり、より好ましくは45~95モル%であり、更に好ましくは75~95モル%であり、特に好ましくは80~90モル%である。
構成単位B中における構成単位(B-2)の比率は、好ましくは1~60モル%であり、より好ましくは5~55モル%であり、更に好ましくは5~25モル%であり、特に好ましくは10~20モル%である。
構成単位B中における構成単位(B-1)及び構成単位(B-2)の合計の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは99モル%以上である。構成単位(B-1)及び構成単位(B-2)の合計の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位Bは構成単位(B-1)と構成単位(B-2)とのみからなっていてもよい。
【0030】
構成単位Bは構成単位(B-1)及び(B-2)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、1,4-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビストリフルオロメチルジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5’-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)-2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン及び9,9-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン(ただし、式(b-1)で表される化合物及び式(b-2)で表される化合物を除く);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族ジアミンとは芳香環を1つ以上含むジアミンを意味し、脂環式ジアミンとは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないジアミンを意味し、脂肪族ジアミンとは芳香環も脂環も含まないジアミンを意味する。
構成単位Bに任意に含まれる構成単位(B-1)及び(B-2)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0031】
本発明において、ポリイミド樹脂の数平均分子量は、得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは5,000~100,000である。なお、ポリイミド樹脂の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
【0032】
<ポリイミド樹脂の製造方法>
本発明において、ポリイミド樹脂は、上述の構成単位(A-1)を与える化合物を含有するテトラカルボン酸成分と、上述の構成単位(B-1)を与える化合物及び上述の構成単位(B-2)を与える化合物を含むジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。
【0033】
構成単位(A-1)を与える化合物としては、構成単位(A-1-1)を与える化合物及び構成単位(A-1-2)を与える化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いる。
構成単位(A-1-1)を与える化合物としては、式(a-1-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-1-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸(即ち、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸)、及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-1-1)を与える化合物としては、式(a-1-1)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
構成単位(A-1-2)を与える化合物としては、式(a-1-2)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-1-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸、及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-1-2)を与える化合物としては、式(a-1-2)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
【0034】
構成単位(A-1)を与える化合物として、構成単位(A-1-1)を与える化合物のみを用いてもよく、構成単位(A-1-2)を与える化合物のみを用いてもよい。
また、構成単位(A-1)を与える化合物として、構成単位(A-1-1)を与える化合物と構成単位(A-1-2)を与える化合物の組み合わせを用いてもよい。
【0035】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物を、好ましくは50モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含み、特に好ましくは99モル%以上含む。構成単位(A-1)を与える化合物の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。テトラカルボン酸成分は構成単位(A-1)を与える化合物のみからなっていてもよい。
【0036】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、当該化合物としては、上述の芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物、並びにそれらの誘導体(テトラカルボン酸、テトラカルボン酸のアルキルエステル等)が挙げられる。
テトラカルボン酸成分に任意に含まれる構成単位(A-1)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0037】
構成単位(A-1)を与える化合物以外の化合物の好適な一態様としては、構成単位(A-2)を与える化合物が挙げられる。
構成単位(A-2)を与える化合物としては、式(a-2)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸、及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-2)を与える化合物としては、式(a-2)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
テトラカルボン酸成分が構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-2)を与える化合物を含む場合、テトラカルボン酸成分は構成単位(A-1)を与える化合物を、好ましくは50~95モル%含み、より好ましくは70~95モル%含み、更に好ましくは85~95モル%含み、構成単位(A-2)を与える化合物を、好ましくは5~50モル%含み、より好ましくは5~30モル%含み、更に好ましくは5~15モル%含む。
テトラカルボン酸成分は構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(A-2)を与える化合物とのみからなっていてもよい。
【0038】
構成単位(B-1)を与える化合物としては、式(b-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(b-1)で表されるジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B-1)を与える化合物としては、式(b-1)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
構成単位(B-2)を与える化合物としては、式(b-2)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(b-2)で表されるジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B-2)を与える化合物としては、式(b-2)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
【0039】
ジアミン成分は、構成単位(B-1)を与える化合物を、好ましくは40~99モル%含み、より好ましくは45~95モル%含み、更に好ましくは75~95モル%含み、特に好ましくは80~90モル%含む。
ジアミン成分は、構成単位(B-2)を与える化合物を、好ましくは1~60モル%含み、より好ましくは5~55モル%含み、更に好ましくは5~25モル%含み、特に好ましくは10~20モル%含む。
ジアミン成分は、構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物を合計で、好ましくは50モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含み、特に好ましくは99モル%以上含む。構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物の合計の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物と構成単位(B-2)を与える化合物とのみからなっていてもよい。
【0040】
ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、当該化合物としては、上述の芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、及び脂肪族ジアミン、並びにそれらの誘導体(ジイソシアネート等)が挙げられる。
ジアミン成分に任意に含まれる構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0041】
本発明において、ポリイミド樹脂の製造に用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9~1.1モルであることが好ましい。
【0042】
また、本発明において、ポリイミド樹脂の製造には、前述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の他に、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001~0.1モルが好ましく、特に0.001~0.06モルが好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、3-エチルベンジルアミン、アニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0043】
前述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(2)ジアミン成分及び反応溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、必要に応じて室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(3)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、直ちに昇温してイミド化反応を行う方法等が挙げられる。
【0044】
ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤は、イミド化反応を阻害せず、生成するポリイミド樹脂を溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。
【0045】
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ピコリン、ピリジン等のアミン系溶剤、酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0046】
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
また、カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記反応溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましい。また、上記の反応溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
イミド化反応では、ディーンスターク装置等を用いて、製造時に生成する水を除去しながら反応を行うことが好ましい。このような操作を行うことで、重合度及びイミド化率をより上昇させることができる。
【0048】
上記のイミド化反応においては、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α-ピコリン、β-ピコリン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、イミダゾール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の有機塩基触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。
また、酸触媒としては、クロトン酸、アクリル酸、トランス-3-ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、取り扱い性の観点から、塩基触媒を用いることが好ましく、有機塩基触媒を用いることがより好ましく、トリエチルアミンを用いることが更に好ましく、トリエチルアミンとトリエチレンジアミンを組み合わせて用いること特に好ましい。
【0049】
イミド化反応の温度は、反応率及びゲル化等の抑制の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは160~200℃である。また、反応時間は、生成水の留出開始後、好ましくは0.5~10時間である。
【0050】
<架橋剤>
本発明において、架橋剤は少なくとも2つのオキサゾリル基を有する。即ち、本発明における架橋剤は、分子内に2以上のオキサゾリル基(オキサゾリン環)を有する多官能オキサゾリン化合物である。
オキサゾリル基はカルボキシル基との反応性を有しており、カルボキシル基とオキサゾリル基とが反応すると、以下に示すようにアミドエステル結合が形成される。この反応は、80℃以上に加熱すると特に進行しやすい。
【0051】
【0052】
本発明のポリイミド樹脂組成物に含まれるポリイミド樹脂はカルボキシル基を有することから、本発明のポリイミド樹脂組成物を加熱すると、架橋剤を介してポリイミド樹脂同士が架橋して、架橋ポリイミド樹脂が形成される。このような理由から、フィルムの耐有機溶媒性が向上する。また、オキサゾリル基とカルボキシル基との反応は、室温ではほとんど進行しないため、本発明のポリイミド樹脂組成物は保存安定性に優れる。
【0053】
架橋剤は、分子内に2以上のオキサゾリル基を有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、株式会社日本触媒製のK-2010E、K-2020E、K-2030E、2,6-ビス(4-イソプロピル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、2,6-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-tert-ブチル-2-オキサゾリン)等が挙げられる。
架橋剤としては、好ましくは少なくとも2つのオキサゾリル基が結合した芳香環又は芳香族複素環を含む化合物であり、より好ましくは少なくとも2つのオキサゾリル基が結合したベンゼン環を含む化合物であり、更に好ましくは1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼンである。
架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、架橋剤中のオキサゾリル基とポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比(オキサゾリル基/カルボキシル基)が1/4~1/0.5の範囲となるような比率で、ポリイミド樹脂と架橋剤とを含むことが好ましい。前記モル比は、より好ましくは1/4~1/1であり、更に好ましくは1/2~1/1である。
なお、上記のモル比は、架橋剤に含まれるオキサゾリル基と、ポリイミド樹脂の製造に用いる構成単位(B-2)を与える化合物に含まれるカルボキシル基とのモル比を意味し、架橋剤の添加量と構成単位(B-2)を与える化合物の添加量に基づいて計算される。
【0055】
本発明のポリイミド樹脂組成物の好適な一態様として、上述のポリイミド樹脂及び上述の架橋剤に加えて、有機溶媒を更に含み、当該ポリイミド樹脂が当該有機溶媒に溶解しているポリイミド樹脂組成物(以後、“ポリイミドワニス”とも呼称する)が挙げられる。
有機溶媒はポリイミド樹脂が溶解するものであればよく、特に限定されないが、ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤として上述した化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
ポリイミドワニスは、重合法により得られるポリイミド樹脂が反応溶剤に溶解した溶液そのものに対して架橋剤を添加したものであってもよいし、又は当該溶液に対して希釈溶剤及び架橋剤を添加したものであってもよい。
【0056】
上述のポリイミド樹脂は溶媒溶解性を有しており、しかも、室温では架橋剤との架橋反応がほとんど進行しない。そのため、室温で安定な高濃度のポリイミドワニスとすることができる。ポリイミドワニスは、ポリイミド樹脂を5~40質量%含むことが好ましく、10~30質量%含むことがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は1~200Pa・sが好ましく、5~150Pa・sがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定された値である。
【0057】
また、本発明のポリイミド樹脂組成物は、ポリイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を含んでもよい。
本発明のポリイミド樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0058】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、機械的特性、耐有機溶媒性、無色透明性、及び光学的等方性に優れるフィルムを形成することができる。本発明のポリイミド樹脂組成物を用いて形成することができるフィルムの好適な物性値は以下の通りである。
【0059】
引張強度は、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは60MPa以上であり、更に好ましくは70MPa以上である。
引張弾性率は、好ましくは2.0GPa以上であり、より好ましくは2.2GPa以上であり、更に好ましくは2.5GPa以上である。
全光線透過率は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは87%以上であり、より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは89%以上である。
イエローインデックス(YI)は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは6.8以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは2.2以下である。
厚み位相差(Rth)の絶対値は、厚さ10μmのフィルムとした際に、好ましくは75nm以下であり、より好ましくは25nm以下であり、更に好ましく10nm以下である。
なお、本発明における引張強度、引張弾性率、全光線透過率、イエローインデックス(YI)、及び厚み位相差(Rth)は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0060】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のポリイミド樹脂組成物中に含まれる上述のポリイミド樹脂が上述の架橋剤により架橋されてなる。即ち、本発明のポリイミドフィルムは、架橋剤を介したポリイミド樹脂同士の架橋物である架橋ポリイミド樹脂を含む。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、機械的特性、耐有機溶媒性、無色透明性、及び光学的等方性に優れる。本発明のポリイミドフィルムが有する好適な物性値は上述の通りである。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法には、ポリイミド樹脂と架橋剤との架橋反応が進行する温度(好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上)で架橋する工程を含めば、特に制限はない。例えば、上述のポリイミドワニスを、ガラス板、金属板、プラスチック等の平滑な支持体上に塗布、又はフィルム状に成形した後、加熱する方法が挙げられる。この加熱処理により、ポリイミドワニス中のポリイミド樹脂と架橋剤との架橋反応を進行させながら、ポリイミドワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を除去することができる。前記支持体の表面には、必要に応じて、予め離形剤を塗布しておいてもよい。
ポリイミドワニスを支持体上に塗布する方法としては、スピンコート、スリットコート、ブレードコート等の公知の塗布方法が挙げられる。
加熱処理としては、以下の方法が好ましい。すなわち、60~150℃の温度で有機溶媒を蒸発させて自己支持性フィルムとした後、該自己支持性フィルムを支持体より剥離し、該自己支持性フィルムの端部を固定し、用いた有機溶媒の沸点以上の温度で乾燥してポリイミドフィルムを製造することが好ましい。また、窒素雰囲気下で乾燥することが好ましい。乾燥雰囲気の圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよい。自己支持性フィルムを乾燥してポリイミドフィルムを製造する際の加熱温度は、特に限定されないが、250~400℃が好ましい。
【0061】
本発明のポリイミドフィルムの厚みは用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1~250μm、より好ましくは5~100μm、更に好ましくは10~80μmの範囲である。厚みが1~250μmであることで、自立膜としての実用的な使用が可能となる。
ポリイミドフィルムの厚みは、ポリイミドワニスの固形分濃度や粘度を調整することにより、容易に制御することができる。
【0062】
本発明のポリイミドフィルムは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。本発明のポリイミドフィルムは、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置の基板として、特に好適に用いられる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0064】
実施例及び比較例で得たポリイミド樹脂溶液及びポリイミドワニスの固形分濃度並びにポリイミドフィルムの各物性は以下に示す方法によって測定した。
(1)固形分濃度
ポリイミド樹脂溶液及びポリイミドワニスの固形分濃度の測定は、アズワン株式会社製の小型電気炉「MMF-1」で試料を320℃×120minで加熱し、加熱前後の試料の質量差から算出した。
(2)フィルム厚さ
フィルム厚さは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。
(3)引張強度、引張弾性率
測定はJIS K7127に準拠し、東洋精機株式会社製の引張試験機「ストログラフVG-1E」を用いて行った。
(4)全光線透過率、イエローインデックス(YI)
測定はJIS K7361-1準拠し、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH400」を用いて行った。
(5)厚み位相差(Rth)
厚み位相差(Rth)は、日本分光株式会社製のエリプソメーター「M-220」を用いて測定した。測定波長590nmにおける、厚み位相差の値を測定した。なおRthは、ポリイミドフィルムの面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし、厚み方向の屈折率をnzとし、フィルムの厚みをdとしたとき、下記式によって表されるものである。
Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×d
(6)耐有機溶媒性
得られたフィルムを有機溶媒に60℃で3時間浸漬し、耐有機溶媒性を評価した。なお、有機溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を使用した。
耐有機溶媒性の評価基準は、以下の通りとした。
B:有機溶媒に浸漬して3時間未満でフィルム表面が溶解した。
A:有機溶媒に浸漬して3時間経過後もフィルム表面が溶解せず変化がなかった。
【0065】
実施例及び比較例にて使用したテトラカルボン酸成分、ジアミン成分、架橋剤、並びにその略号は以下の通りである。
<テトラカルボン酸成分>
HPMDA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学株式会社製;式(a-1-1)で表される化合物)
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(JXエネルギー株式会社製;式(a-1-2)で表される化合物)
s-BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱ケミカル株式会社製;式(a-2s)で表される化合物)
<ジアミン成分>
BAFL:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(田岡化学工業株式会社製;式(b-1)で表される化合物)
3,5-DABA:3,5-ジアミノ安息香酸(日本純良薬品株式会社製;式(b-211)で表される化合物)
mTB:2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(セイカ株式会社製)
<架橋剤>
1,3-PBO:1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン(三國製薬工業株式会社製)
TG:イソシアヌル酸トリグリシジル(東京化成工業株式会社製)
【0066】
<実施例1A>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた1Lの5つ口丸底フラスコに、BAFLを27.876g(0.080モル)と、3,5-DABAを3.043g(0.020モル)と、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を79.242g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、HPMDAを22.417g(0.100モル)と、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を19.811gとを一括で添加した後、イミド化触媒としてトリエチルアミン(関東化学株式会社製)を0.506g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して3時間還流した。
その後、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を351.779g添加して、反応系内温度を120℃まで冷却した後、更に約3時間撹拌して均一化して、固形分濃度10.0質量%のポリイミド樹脂溶液(1)を得た。
続いて、ポリイミド樹脂溶液(1)を100g中に、架橋剤として1,3-PBOを0.216g(0.001モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.2質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/2である。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミドワニスを塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、窒素雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、厚み18μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例1B>
ポリイミド樹脂溶液(1)に対する架橋剤1,3-PBOの添加量を0.432g(0.002モル)に変更したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製し、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.4質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/1である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例1Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み17μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0068】
<比較例1>
ポリイミド樹脂溶液(1)に対して架橋剤1,3-PBOを添加しなかったこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製した。即ち、ポリイミド樹脂溶液(1)を、そのままポリイミドワニスとして用いた。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例1Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み16μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0069】
<実施例2A>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた1Lの5つ口丸底フラスコに、BAFLを31.361g(0.090モル)と、3,5-DABAを1.522g(0.010モル)と、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を105.961g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、CpODAを38.438g(0.100モル)と、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を26.490gとを一括で添加した後、イミド化触媒としてトリエチルアミン(関東化学株式会社製)を0.506g及びトリエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)を0.056g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を190℃に保持して3時間還流した。
その後、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を478.614g添加して、反応系内温度を120℃まで冷却した後、更に約3時間撹拌して均一化して、固形分濃度10.0質量%のポリイミド樹脂溶液(2)を得た。
続いて、ポリイミド樹脂溶液(2)を100g中に、架橋剤として1,3-PBOを0.0796g(0.00037モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.07質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/2である。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミドワニスを塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、窒素雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、厚み27μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例2B>
ポリイミド樹脂溶液(2)に対する架橋剤1,3-PBOの添加量を0.1592g(0.00074モル)に変更したこと以外は、実施例2Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製し、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.14質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/1である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例2Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み23μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0071】
<比較例2>
ポリイミド樹脂溶液(2)に対して架橋剤1,3-PBOを添加しなかったこと以外は、実施例2Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製した。即ち、ポリイミド樹脂溶液(2)を、そのままポリイミドワニスとして用いた。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例2Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み14μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0072】
<実施例3A>
BAFLの量を31.361g(0.090モル)から27.876g(0.080モル)に変更し、3,5-DABAの量を1.522g(0.010モル)から3.043g(0.020モル)に変更した以外は、実施例2Aと同様の方法によりポリイミド樹脂溶液を作製し、固形分濃度10.0質量%のポリイミド樹脂溶液(3)を得た。
続いて、ポリイミド樹脂溶液(3)を100g中に、架橋剤として1,3-PBOを0.159g(0.0007モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.14質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/2である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例2Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み24μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
<実施例3B>
ポリイミド樹脂溶液(3)に対する架橋剤1,3-PBOの添加量を0.319g(0.0015モル)に変更したこと以外は、実施例3Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製し、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.29質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/1である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例3Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み23μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0073】
<比較例3>
ポリイミド樹脂溶液(3)に対して架橋剤1,3-PBOを添加しなかったこと以外は、実施例3Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製した。即ち、ポリイミド樹脂溶液(3)を、そのままポリイミドワニスとして用いた。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例3Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み20μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0074】
<実施例4A>
BAFLの量を31.361g(0.090モル)から17.423g(0.050モル)に変更し、3,5-DABAの量を1.522g(0.010モル)から7.608g(0.050モル)に変更した以外は、実施例2Aと同様の方法によりポリイミド樹脂溶液を作製し、固形分濃度10.0質量%のポリイミド樹脂溶液(4)を得た。
続いて、ポリイミド樹脂溶液(4)を100g中に、架橋剤として1,3-PBOを0.445g(0.0021モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.40質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/2である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例2Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み12μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
<実施例4B>
ポリイミド樹脂溶液(4)に対する架橋剤1,3-PBOの添加量を0.890g(0.0041モル)に変更したこと以外は、実施例4Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製し、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.79質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/1である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例4Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み15μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0075】
<比較例4>
ポリイミド樹脂溶液(4)に対して架橋剤1,3-PBOを添加しなかったこと以外は、実施例4Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製した。即ち、ポリイミド樹脂溶液(4)を、そのままポリイミドワニスとして用いた。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例4Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み20μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例5>
HPMDAの量を22.417g(0.100モル)から11.209g(0.050モル)に変更し、CpODAを19.219g(0.050モル)追加した以外は、実施例1Aと同様の方法によりポリイミド樹脂溶液を作製し、固形分濃度10.0質量%のポリイミド樹脂溶液(5)を得た。
続いて、ポリイミド樹脂溶液(5)を100g中に、架橋剤として1,3-PBOを0.372g(0.0017モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.33質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/1である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例1Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み9μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0077】
<比較例5>
ポリイミド樹脂溶液(5)に対して架橋剤1,3-PBOを添加しなかったこと以外は、実施例5と同様の方法により、ポリイミドワニスを作製した。即ち、ポリイミド樹脂溶液(5)を、そのままポリイミドワニスとして用いた。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例5と同様の方法によりフィルムを作製し、厚み9μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0078】
<実施例6>
HPMDAの量を22.417g(0.100モル)から20.175g(0.090モル)に変更し、s-BPDAを2.942g(0.010モル)追加した以外は、実施例1Aと同様の方法によりポリイミド樹脂溶液を作製し、固形分濃度10.0質量%のポリイミド樹脂溶液(6)を得た。
続いて、ポリイミド樹脂溶液(6)を100g中に、架橋剤として1,3-PBOを0.424g(0.0020モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.38質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/1である。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例1Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み20μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0079】
<比較例6>
ポリイミド樹脂溶液(6)に対して架橋剤1,3-PBOを添加しなかったこと以外は、実施例6と同様の方法により、ポリイミドワニスを作製した。即ち、ポリイミド樹脂溶液(6)を、そのままポリイミドワニスとして用いた。
得られたポリイミドワニスを用いて、実施例6と同様の方法によりフィルムを作製し、厚み17μmのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
<比較例7A>
ポリイミド樹脂溶液(1)に対して添加する架橋剤を、1,3-PBOを0.216g(0.001モル)からTGを0.500g(0.0017モル)に変更したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製し、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.45質量%のポリイミドワニスを得た。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミドワニスを塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、窒素雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、厚み20μmのフィルムを得た。得られたフィルムには全面に点状欠点が見られた。結果を表2に示す。
【0083】
<比較例7B>
ポリイミド樹脂溶液(1)に対する架橋剤TGの添加量を1.000g(0.0034モル)に変更したこと以外は、比較例7Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製し、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度10.89質量%のポリイミドワニスを得た。
得られたポリイミドワニスを用いて、比較例7Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み22μmのフィルムを得た。得られたフィルムには全面に点状欠点が見られた。結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
<比較例8A>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた1Lの5つ口丸底フラスコに、mTBを10.615g(0.050モル)と、3,5-DABAを7.608g(0.050モル)と、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を48.767g投入し、系内温度70℃、窒素雰囲気下、回転数200rpmで撹拌して溶液を得た。
この溶液に、HPMDAを22.417g(0.100モル)と、N,N’-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を12.192gとを一括で添加した後、イミド化触媒としてトリエチルアミン(関東化学株式会社製)を0.506g投入し、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を180℃まで上げた。留去される成分を捕集し、回転数を粘度上昇に合わせて調整しつつ、反応系内温度を180℃に保持して5時間還流した。
その後、N,N’-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を280.466g添加して、反応系内温度を120℃まで冷却した後、更に約3時間撹拌して均一化して、固形分濃度10.0質量%のポリイミド樹脂溶液(7)を得た。
続いて、ポリイミド樹脂溶液(7)を100g中に、架橋剤として1,3-PBOを1.425g(0.0066モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含む固形分濃度11.26質量%のポリイミドワニスを得た。なお、1,3-PBOの添加量と3,5-DABAの添加量に基づいて計算されるオキサゾリル基/カルボキシル基のモル比は、1/1である。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミドワニスを塗布し、ホットプレートで80℃、20分間保持し、その後、窒素雰囲気下、熱風乾燥機中350℃で30分加熱し溶媒を蒸発させ、厚み16μmのフィルムを得た。結果を表3に示す。
【0086】
<比較例8B>
ポリイミド樹脂溶液(7)に対して架橋剤1,3-PBOを添加しなかったこと以外は、比較例8Aと同様の方法により、ポリイミドワニスを作製した。即ち、ポリイミド樹脂溶液(7)を、そのままポリイミドワニスとして用いた。
得られたポリイミドワニスを用いて、比較例8Aと同様の方法によりフィルムを作製し、厚み15μmのフィルムを得た。結果を表3に示す。
【0087】
【0088】
表1に示されるように、実施例のフィルムは、いずれも機械的特性、耐有機溶媒性、無色透明性、及び光学的等方性に優れていた。
特に、1,3-PBOを添加することにより、耐有機溶媒性が向上することが確認された(実施例1A及び1Bと比較例1との対比、実施例2A及び2Bと比較例2との対比、実施例3A及び3Bと比較例3との対比、実施例4A及び4Bと比較例4との対比、実施例5と比較例5との対比、並びに実施例6と比較例6との対比)。
また、驚くことに、1,3-PBOを添加しても光学的等方性を維持できる(実施例1A及び1Bと比較例1との対比)か、又は1,3-PBOを添加ことにより光学的等方性が向上する(実施例2A及び2Bと比較例2との対比、実施例3A及び3Bと比較例3との対比、実施例4A及び4Bと比較例4との対比、実施例5と比較例5との対比、並びに実施例6と比較例6との対比)ことが確認された。
【0089】
架橋剤としてTG(少なくとも2つのオキサゾリル基を有する架橋剤ではない)を使用した比較例7A及び7Bで得られたフィルムは、均一なフィルムではなかった。ポリイミド樹脂と添加剤TGとの相溶性が悪く、分離しているためと考えられる。
また、表2に示されるように、比較例7Bのフィルムは、無色透明性が大きく劣っていた。
【0090】
比較例8A及び8Bでは、ジアミン成分として、BAFL(式(b-1)で表される化合物)を使用せず、代わりにmTBを用いた。その結果得られた比較例8A及び8Bのフィルムは、光学的等方性に劣っていた。また、比較例8Bのフィルムは耐有機溶媒性に劣っていた。比較例8Aを比較例8Bと対比すると分かるように、1,3-PBOを添加することにより、耐有機溶媒性は向上するものの、無色透明性(全光線透過率、YI)が大幅に悪化した。その結果として、比較例8Aのフィルムは、実施例のフィルムと比べて無色透明性が大きく劣っていた。