(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/00 20060101AFI20221122BHJP
A01C 15/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A01C11/00 302
A01C15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020149869
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-46041(JP,A)
【文献】特開2010-94107(JP,A)
【文献】特開2014-131520(JP,A)
【文献】特開2010-263867(JP,A)
【文献】特開2002-51618(JP,A)
【文献】特開平7-135806(JP,A)
【文献】実開昭63-20710(JP,U)
【文献】実開平01-167818(JP,U)
【文献】特開2001-245510(JP,A)
【文献】特開2016-29892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00
A01C 15/00
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(40)に、苗を植え付ける植付装置(20a,20b)と、該植付装置(20a,20b)を植付昇降動作させる上下動機構(21)と、該植付装置(20a,20b)が植え付けた苗の周囲を均す鎮圧装置(37)と、苗の植付位置付近に薬剤を供給する薬剤供給装置(500)を設けた移植機において、
該薬剤供給装置(500)の薬剤供給動作を上下動機構(21)に連動させる連動部材(522)を設け、
前記上下動機構(21)は、上下回動すると共に植付装置(20a,20b)を前後揺動させる上側リンクアーム(21a)と、該上側リンクアーム(21a)の下側に上下回動可能に設ける下側リンクアーム(21b)で構成し、
該連動部材(522)は、前記
下側リンクアーム(21b)に設ける
ケーブル取付アーム(523)に装着
し、
前記植付装置(20a,20b)を機体左右方向に位置調節可能に構成し、前記走行車体(40)のハンドルフレーム(402)に支持フレーム(553)を設け、該支持フレーム(553)に前記薬剤供給装置(500)を装着する調節プレート(557)を左右方向に位置調節可能に設け、
該調節プレート(557)の下部に前記連動部材(522)を支持する支持ステー(561)を設けたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記
薬剤供給装置(500)の繰出装置(507)から繰り出される薬剤を案内する供給ホース(509)を設け、該供給ホース(509)が案内する薬剤を圃場に放出する供給ノズル(510)を設け、
該供給ノズル(510)の供給姿勢を変更可能に装着するノズル支持体(567)を前記支持ステー(561)に設けたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉葱やレタス等の野菜苗を圃場に移植する移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植付装置で圃場に苗を植え付けると共に、苗の植付位置付近に肥料や殺菌剤等の薬剤を供給する薬剤供給装置を備える移植機が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の移植機は、植付装置を昇降及び前後揺動させる上下動リンク機構に駆動力を伝動する植付伝動ケースに、薬剤供給装置に駆動力を伝動する供給伝動ロッドを装着する構成である。
【0005】
これにより、植付装置の植付駆動に連動して薬剤供給装置による薬剤の供給動作を行わせることができ、苗の植付と同時、あるいは苗の植付の直前または直後に薬剤が供給されるので、植え付けられた苗は薬剤の効果を受けて安定した生育が可能になる。
【0006】
しかしながら、供給伝動ロッドを所定範囲で揺動させるにはある程度のスペースが必要となるので、薬剤供給装置を配置できる位置が制限される問題がある。
【0007】
また、供給伝動ロッド等の比較的大きく重量のある部材を装着する必要があり、機体重量の増加や上下長の増加などの問題があると共に、着脱作業に要する工数が増大する問題がある。
【0008】
本発明は、従来の課題を考慮して、簡潔な構成で植付装置の植付動作と薬剤供給装置を連動して作動させることができる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0010】
請求項1に係る発明は、走行車体(40)に、苗を植え付ける植付装置(20a,20b)と、該植付装置(20a,20b)を植付昇降動作させる上下動機構(21)と、該植付装置(20a,20b)が植え付けた苗の周囲を均す鎮圧装置(37)と、苗の植付位置付近に薬剤を供給する薬剤供給装置(500)を設けた移植機において、該薬剤供給装置(500)の薬剤供給動作を上下動機構(21)に連動させる連動部材(522)を設け、前記上下動機構(21)は、上下回動すると共に植付装置(20a,20b)を前後揺動させる上側リンクアーム(21a)と、該上側リンクアーム(21a)の下側に上下回動可能に設ける下側リンクアーム(21b)で構成し、該連動部材(522)は、前記下側リンクアーム(21b)に設けるケーブル取付アーム(523)に装着し、前記植付装置(20a,20b)を機体左右方向に位置調節可能に構成し、前記走行車体(40)のハンドルフレーム(402)に支持フレーム(553)を設け、該支持フレーム(553)に前記薬剤供給装置(500)を装着する調節プレート(557)を左右方向に位置調節可能に設け、該調節プレート(557)の下部に前記連動部材(522)を支持する支持ステー(561)を設けたことを特徴とする移植機とした。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記薬剤供給装置(500)の繰出装置(507)から繰り出される薬剤を案内する供給ホース(509)を設け、該供給ホース(509)が案内する薬剤を圃場に放出する供給ノズル(510)を設け、
該供給ノズル(510)の供給姿勢を変更可能に装着するノズル支持体(567)を前記支持ステー(561)に設けたことを特徴とする請求項1に記載の移植機とした。
【0012】
また、請求項1に係る発明に関連する、第1の関連発明は、前記上下動機構(21)は、上下回動すると共に植付装置(20a,20b)を前後揺動させる上側リンクアーム(21a)と、該上側リンクアーム(21a)の下側に上下回動可能に設ける下側リンクアーム(21b)で構成し、該下側リンクアーム(21b)に前記揺動取付部材(523)を揺動可能に装着し、前記揺動取付部材(523)に連動部材(522)の一側を連結すると共に、連動部材(522)の他側を前記薬剤供給装置(500)の繰出装置(507)に連結したことを特徴とする移植機とした。
【0013】
また、第1の関連発明に係る第2の関連発明は、前記下側リンクアーム(21b)の基部側と端部側の支点軸に支持突起(525)を各々設け、前記揺動取付部材(523)には基部側取付孔(523a)と端部側取付孔(523b)を各々形成し、該基部側取付孔(523a)と端部側取付孔(523b)のどちらか一方は前記支持突起(525)と同径とし、他方は前記支持突起(525)よりも大径とし、前記基部側取付孔(523a)と端部側取付孔(523b)の間に受け突起(524)を形成すると共に、前記連動部材(522)の一側端部には、該受け突起(524)が入り込む上下方向の長孔(522a)を形成したことを特徴とする請求項2に記載の移植機とした。
【0014】
(削除)
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明により、薬剤供給装置(500)による薬剤の供給動作を上下動機構(21)の動作に連動させることができるので、薬剤の供給位置を苗に近付けることができ、薬効を高めることができる。
【0016】
また、上下動機構(21)に装着したケーブル取付アーム(523)に連動部材(522)を取り付けることにより、連動部材(522)が上下動機構(21)の作動抵抗となり上下動が乱れることが防止される。
また、薬剤供給装置(500)を調節プレート(557)に装着したことにより、植付装置(20a,20b)の左右位置調節に合わせて薬剤供給装置(500)の左右位置を調節することができるので、繰出装置(507)から繰り出される薬剤の移動経路を上下方向の略直線状に設定することができ、薬剤の移動が停滞することが防止される。
また、調節プレート(557)を左右方向に移動させると薬剤供給装置(500)と支持ステー(561)が同時に移動するので、位置調節作業に要する時間と労力が軽減される。
また、調節プレート(557)の下部に設ける支持ステー(561)に連動部材(522)を支持させることにより、連動部材(522)が機体振動や風により上下動機構(21)や植付装置(20a,20b)の植付動作軌跡に干渉することを防止できる。
【0017】
請求項2に係る発明により、請求項1に係る発明の効果に加えて、供給ノズル(510)の供給姿勢を変更可能としたことにより、苗の植付位置の付近で、且つ苗に直接触れない位置に薬剤を供給することができるので、苗の生育時に薬剤の効果を最大限作用させると共に、薬剤に接触することによる苗への悪影響の発生が防止される
また、支持ステー(561)に設けたノズル支持体(567)で供給ノズル(510)を支持することにより、機体の振動や風等の影響で供給ホース(509)が大きく揺れることが防止できるので、薬剤の供給が停滞することや、供給位置が苗から遠くなることが防止される。
【0018】
上記請求項1に係る、第1の関連発明により、上下回動のみする下側リンクアーム(21b)に揺動取付部材(523)を介して連動部材(522)を装着したことにより、連動部材(522)が上下動機構(21)の偏心駆動の影響を受けにくくなるので、繰出装置(507)の動作が安定して薬剤の供給量が設定量と異なることが防止される
【0019】
(削除)
【0020】
第1の関連発明に関連する、第2の関連発明により、基部側取付孔(523a)と端部側取付孔(523b)のどちらか一方を支持突起(525)よりも大径としたことにより、部品の組み付け等による上下動機構の作動量の微細な変化があっても揺動取付部材(523)が揺動することで誤差を吸収できるので、繰出装置(507)による薬剤の繰出量や繰出タイミングが安定する。
【0021】
また、揺動取付部材(523)が僅かながら上下揺動可能であることにより、連動部材(522)の動作により負荷がかかっても下側リンクアーム(21b)に直接負荷が伝わりにくくなるので、下側リンクアーム(21b)、ひいては上下動機構(21)の破損が防止される。
【0022】
(削除)
【0023】
(削除)
【0024】
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図9】潅水ポンプとチェックバルブを備える移植機の要部側面図
【
図10】機体後部の操縦部や植付装置、苗供給装置等を示す要部斜視図
【
図11】畝端センサや搭乗ステップ等を示す移植機の要部斜視図
【
図12】側部支持フレームを装着した状態を示す要部側面図
【
図13】側部支持フレームを装着した状態を示す要部平面図
【
図14】別構成例の水タンクステーの支持状態を示す要部正面図
【
図15】別構成例の水タンクステーの支持状態を示す要部側面図
【
図16】別構成例の水タンクステーの支持状態を示す要部平面図
【
図17】別構成例の水タンクステーの支持状態を示す要部斜視図
【
図18】鎮圧装置に支持される薬剤供給装置を備える移植機の側面図
【
図19】鎮圧装置に支持される薬剤供給装置を示す要部側面図
【
図20】鎮圧装置に支持される薬剤供給装置の分解図
【
図21】(a)植付装置が苗を植え付ける際の上下動機構と繰出ケーブルを示す要部側面図、(b)植付装置が苗を受け取る際の上下動機構と繰出ケーブルを示す要部側面図
【
図22】(a)ケーブル取付アームを示す斜視図、(b)ケーブル取付アームを示す正面図
【
図23】ハンドルフレームに支持される薬剤供給装置を備える移植機の側面図
【
図24】ハンドルフレームに支持される薬剤供給装置の分解図
【
図25】薬剤供給装置の繰出アームと繰出ケーブルを示す分解図
【
図26】(a)ノズルステーと薬剤ノズルを示す分解図、(b)ノズルステーに支持された薬剤ノズルを示す要部正面図
【
図27】(a)ケーブルステーを備える苗供給装置の要部平面図、(b)ケーブルステーを備える苗供給装置の要部背面図
【
図28】(a)ケーブルステーの平面図、(b)ケーブルステーの側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態の移植機の一例として苗を移植する移植機10を示す左側面図であり、
図2は右側面図、
図3は背面図、
図4は正面図であると共に、
図5は平面図である。
【0028】
なお、以下の説明では、操縦ハンドル404を配置した側を後とし、その反対側、すなわちエンジン41を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
【0029】
本実施の形態の移植機10は、
図1から
図5に示すとおり、機体を前進走行可能とする走行車体40と、走行車体40の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル404と、圃場に苗を植え付ける植付装置42と、植付装置42に苗を供給する苗供給装置43を備えている。
【0030】
走行車体40は、機体前部にミッションケース39を設け、該ミッションケース39の前側に駆動装置であるエンジン41を設ける。前記ミッションケース39の左右両側の機体後側下部には、後輪となる走行輪44の左右位置を変更するトレッド調節が可能な車軸を覆う車軸カバー101が各々連結され、該車軸カバー101の機体外側端部には、機体後側に設ける走行輪44に駆動力を伝動する走行伝動ケース38を各々上下回動可能に装着する。
【0031】
なお、左右の走行輪44は、走行伝動ケース38の機体外側に装着するものとする。
【0032】
より正確には、左右の車軸カバー101が内部の車軸(図示省略)を支点として回転可能に装着され、これらの車軸カバー101に走行伝動ケース38を各々装着し、後述する昇降用油圧シリンダ300やローリングシリンダの伸縮により車軸カバー101が回転することで、走行伝動ケース38が上下回動する構成である。
【0033】
そして、
図1から
図5、及び
図10に示すとおり、前記ミッションケース39から伝動されて植付装置42及び苗供給装置43に駆動力を分岐供給する伝動ケース26に、少なくとも該伝動ケース26の左右側面と背面を覆うベースプレート400を設け、該ベースプレート400の後部にフレームステー401をボルト、ナット等の締結部材を介して着脱可能に設ける。そして、該フレームステー401に、機体後側上方に向かって円弧を描く形状で突出するハンドルフレーム402を設け、該ハンドルフレーム402の後部には、車高の上下調節や走行及び植付作業の伝動の入切等を操作する操縦部ユニット403を設けると共に、苗の植付を行わない移動時等に作業者が機体を操作する際に把持する操縦ハンドル404を設ける。該操縦ハンドル404はハンドルフレーム402を中心として機体左右方向で且つ機体後方に向かって屈曲する形状であり、左右の後部側には、前記走行輪44への伝動を入切するサイドクラッチ操作レバー405を各々設けている。また、操縦ハンドル404のうち、左右どちらか一側には、エンジン41の出力を増減操作する第1スロットルレバー406を設ける。
【0034】
そして、前記ハンドル404の左右間には、操縦パネル47aを設け、該操縦パネル47aに、昇降用油圧シリンダ300を伸縮操作して走行車体40の車高を調節する車高調節レバー123と、左右の走行伝動ケース38及び伝動ケース26への駆動力の伝動を入切する主クラッチレバー125と、エンジン41の始動の可否を切り替えると共に停止操作を行う第1エンジンスイッチ407と、走行車体40の走行伝動を移動速、植付作業速、走行中立及び後進のいずれかに切り替える主変速レバー150を設ける。
【0035】
エンジン41の始動を許可するときは、作業者は該第1エンジンスイッチ407を押し込んで回転させて入位置に操作する。これにより、エンジン41の始動操作が行われると、エンジン41が始動する。なお、エンジン41の始動は、セルスタータを用いるものでも、リコイルスタータを用いるものでもよい。また、エンジン41以外の駆動装置、例えば電動モータで作動するものであるときでも、第1エンジンスイッチ407が入位置にあるときに電動モータへの通電が行われて始動する構成とする。
【0036】
エンジン41を停止させるときは、作業者が前記第1エンジンスイッチ407を軽く押し込むと、内装されたトルクバネ(図示省略)の力で切位置に切り替わり、これによりエンジン41が停止状態になる。
【0037】
切操作時は第1エンジンスイッチ407を軽く押し込むだけでよいので、走行及び植付を即座に止めることができる。これにより、畝端に到達したときにすぐに走行と植付が停止するので、畝でない箇所での苗の植付動作が防止され、余分に消費される苗が減少する。また、次の植付作業を行う畝に機体を移動させる際、余分な移動が生じないので、燃料消費や作業時間が軽減される。
【0038】
前記操縦ハンドル404の機体前側で、且つ伝動ケース26の上部には、後述する、作業者が投入する苗を左右の植付ホッパ20a,20bに搬送する苗供給装置43が設けられている。該苗供給装置43の後部と、ハンドルフレーム402の後側上部で且つ操縦パネル47aの前側に設ける補強連結ステー151に亘って、操縦ハンドル404及び苗供給装置43付近の強度を向上させると共に振動を低減させる、前後方向の補強フレーム152を設ける。
【0039】
前記走行車体40は、一つの畝での苗の植付作業が終わると、作業者は機体の進行方向後側に移動し、旋回内側の操縦ハンドル404及びサイドクラッチ操作レバー405を把持して旋回内側の走行輪44への伝動を遮断して走行車体40を旋回操作し、次の植付作業条の始端側に移動する。このとき、作業者は操縦ハンドル404を把持したまま下方に向かって体重をかけて、走行車体40の機体前側を圃場面から上方に離間させることで、旋回走行を行いやすくする。
【0040】
前記ミッションケース39の機体前側で且つ左右両側には、正面断面視でコの字形状のバンパー支持フレーム108を機体前側に突出させて設ける。そして、該左右のバンパー支持フレーム108の前方には、機体前側に突出するバンパー109を設ける。
【0041】
なお、
図6から
図8に示すとおり、バンパー109は、板体の機体前側と左右両側を下方に折り曲げたバンパープレート109aと、該バンパープレート109aの上面に着脱可能なフロントウエイト109bと、バンパープレート109aから左右方向に延びるバンパーロッド109cで構成している。該フロントウエイト109bは、鉄等の比較的重量があり且つ硬度の高い素材の塊で構成し、バンパープレート109aよりも機体前側に突出する形状とする。
【0042】
これにより、重量と硬度を有する塊であるフロントウエイト109bが最も機体前方に突出するので、障害物に接触したときにバンパープレート109aまで損傷が及ぶことを防止できる。
【0043】
前記左右のバンパー支持フレーム108の機体前側で、且つ機体下部側には機体下側が開口部となる凹部(図示省略)を形成し、これらの凹部に、機体左右方向を長手方向とする前部梁フレーム110を差し込んで固定する。
【0044】
該前部梁フレーム110を設けることにより、左右のバンパー支持フレーム108とミッションケース39とで機体前側にも四角形にフレームが組み上げられるので、機体前側の強度が向上する。特に、バンパー109が障害物に接触した際、前部梁フレーム110に左右のバンパー支持フレーム108を差し込んで固定しているので、左右のバンパー支持フレーム108の後部側に破損や衝撃が伝播しにくくなる。
【0045】
また、ミッションケース39を機体に組み付ける際、左右のバンパー支持フレーム108の凹部を前部梁フレーム110に差し込んでから左右方向に移動させることにより、ミッションケース39の前後位置を固定したうえで左右位置を調節できるので、ミッションケース39の取付位置のずれにより組立作業が滞ることが防止される。
【0046】
なお、前記ミッションケース39の前側で且つ左右一側に前記エンジン41の後部を積載し、エンジン41の前部は、前部梁フレーム110の左右中央部付近に配置するエンジンマウントに積載する構成とするが、エンジン41が配置される側のバンパー支持フレーム108とエンジン41は、上下方向に間隔を空けて配置する構成とする。即ち、バンパー支持フレーム108は、エンジン41を下方から受ける部材ではない。
【0047】
上記構成により、バンパー109が障害物に接触したときの衝撃が、バンパー支持フレーム108からエンジン41に伝播することを防止できるので、エンジン41が破損することや、衝撃により作動不良を起こすことを防止できる。
【0048】
また、バンパー支持フレーム108が衝撃で変形しても、エンジン41の積載状態に影響を及ぼしにくい構成となり、バンパー109が破損してもエンジン41の動力で作業や移動を行うことができる。
【0049】
そして、前記バンパープレート109aの左右両側には、バンパーロッド109cを装着する左右方向の凹部を有するステップ支持プレート111を各々装着する。該左右のステップ支持プレート111は、前記前部梁フレーム110の機体後側で且つ左右両側に各々設ける補強アーム112を介して支持する構成とする。
【0050】
該左右のステップ支持プレート111の上面は平坦であり、走行車体40の機体左右一側、即ち機体左側においては、作業者が機体前側から乗り降りする際に足を乗せる前側搭乗ステップ113の機体前側部分を装着する。一方、機体左右他側、即ち機体右側には、植付ホッパ20a,20bが植え付ける苗同士の前後間隔、所謂株間を設定する、株間主変速レバー801と株間副変速レバー802、及び主変速レバー150が植付速に操作されているときに、第1植付速または第2植付速を選択する植付変速レバー803を支持する、株間切替カバー114を形成する。
【0051】
該前側搭乗ステップ113は、機体前側で且つ上下方向下側に位置する下部足載せ部113aと、下部足載せ部113aよりも機体後側で且つ上下方向上側に位置する上側足載せ部113bと、下部足載せ部113aと上側足載せ部113bの上下間に位置し、機体外側方向に向かって捻れて傾斜する中間傾斜部113cで構成される。下部足載せ部113aの表面には、滑り止め突起113dを複数形成するものとし、中間傾斜部113cは、乗り降りの際に作業者が足を心理的に乗せにくい傾斜角度で、且つ下部足載せ部113aと上側足載せ部113bの間で移動するときに跨いで通過される前後長さとする。
【0052】
一方、該株間切替カバー114は、機体前側で且つ上下方向下側に位置する下側台部114aと、下側台部114aよりも機体後側で且つ上下方向上側に位置する上側台部114bと、下側台部114aと上側台部114bの上下間に位置し、機体外側方向に向かって捻れて傾斜すると共に、株間主変速レバー801と株間副変速レバー802、及び主変速レバー150が各々移動する移動溝を形成したレバー装着部114cで構成される。
【0053】
なお、前記前側搭乗ステップ113と株間切替カバー114は左右対称な形状であり、機体左右一側に設けるものを株間切替カバー114とし、機体左右他側に設けるものを前側搭乗ステップ113としてもよい。
【0054】
そして、前記上側足載せ部113b及び上側台部114bの機体後側には、機体側方から作業者が乗り降りすると共に、作業時の足場となる側部ステップ118を各々設ける。
該側部ステップ118は、枠内に縦横に板体を配置して複数の空間部を形成しており、作業者の靴底に付着した土を下方に落下させる構成とする。また、前記左右の側部ステップ118の左右間には、搭乗する作業者の足場となる中央ステップ119を着脱可能に設ける。
【0055】
以上により、フロアステップ122が構成される。
【0056】
前側搭乗ステップ113、株間切替カバー114、左右の側部ステップ118及び中央ステップ119の取付は、各々独立して行う、即ち、一つの取付部材(ボルト等)で共締めしないものとする。これにより、部分的なメンテナンス作業時に各ステップ構成体を取り外す際、別のステップ構成体を取り外す必要が無く、メンテナンス作業の能率が向上する。
【0057】
前記前側搭乗ステップ113の前側下部には、前側搭乗ステップ113への乗り降りの際に作業者が足を乗せる、乗降補助機構170を装着する。該乗降補助機構170は、機体外側に位置する、側面視でL字形状であり、屈曲部分より機体下側に機体前方に突出する第1突出部171aを有する外側支持アーム171と、機体内側に位置する、正面視でL字形状であり、屈曲部分より機体下側に機体外側に突出する第2突出部172aを有する内側支持アーム172と、第1突出部171aと第2突出部172aに亘って設ける乗降補助ステップ173で構成する。
【0058】
前記外側支持アーム171は、ステップ支持プレート111と共に、共締めボルト174…で共締めして走行車体40に装着する。また、前記内側支持アーム172は、バンパープレート109aと共に、共締めボルト174…で共締めして走行車体40に装着する。
【0059】
これにより、共締めボルト174…で複数の部材を締め込む構成となるので、走行車体40の機体前側付近の強度の向上が図られ、作業者の乗り降りの際に係る荷重による耐久性の低下が軽減される。
【0060】
また、乗降補助ステップ173を設けたことにより、畝の高さ等に合わせて走行車体40の車高を高くしていても、作業者は乗降補助ステップ173に足を乗せ、前側搭乗ステップ113の下側足載せ部113aに足を段階的に載せて乗り込むと共に、逆の動作により降りることができるので、乗り降りの際に足を高く上げる必要や、多少なりとも飛び降りる必要が無く、作業者の身体への負担が軽減される。
【0061】
そして、乗降補助ステップ173を、第1突出部171aと第2突出部172aに亘って設けたことにより、乗降補助ステップ173の左右幅内に外側支持アーム171と内側支持アーム172が位置しないので、作業者の足が外側支持アーム171と内側支持アーム172に接触することが防止される。
【0062】
一方、走行車体40の車高を下降させたときや植付作業中は、前記乗降補助機構170は不要になるだけでなく、車高によっては畝面や畝の法面に接触して畝を崩し、苗の植付精度を低下させるおそれがある。
【0063】
これを防止すべく、外側支持アーム171と内側支持アーム172の基部をダブルナット(図示省略)で装着し、共締めボルト174…を回動支点として外側支持アーム171と内側支持アーム172を回動可能に装着して、乗降補助機構170を上下回動可能に構成するとよい。
【0064】
上記構成により、不要な時には乗降補助機構170を畝面から離間する上方に回動させることができるので、乗降補助機構170が畝を崩すことが防止され、苗の植付精度が維持される。
【0065】
図1から
図8に示すとおり、前記株間切替カバー114の下部には、自重により下方回動して畝面に接触し、走行車体40が畝の端に到達して接地しなくなるとさらに下方回動し、圃場端に到達したことを作業者に知らせる報知装置181を作動させる、畝端センサ182を支持する、畝端センサステー182aを設ける。該報知装置181は、走行車体40の各部に装着するブザーやランプ、あるいは、作業者の情報端末(タブレット、スマートフォン等)に通知する通信装置とする。
【0066】
該畝端センサ182は、センサアーム183を回動可能に設け、該センサアーム183の下部に畝面接地ローラ184を回転可能に装着し、センサアーム183を下方に付勢する接地付勢スプリング185を設けると共に、センサアーム183の基部には、所定角度以上になると入(あるいは切)になる畝端検知スイッチ186を設けて構成する。該接地付勢スプリング185は、長孔に沿って角度調節可能な検知調節プレート187に上端部側を装着し、畝高さに合わせて作動する角度を変更可能に構成する。
【0067】
この畝端センサ182は、苗の植付作業走行の開始時、走行車体40の車高調整により畝面に接地させる。回転自在な畝面接地ローラ184を接地させていることにより、畝面を崩しにくく、且つ微細な凹凸を均すことができ、苗の植付精度の向上が図られる。
【0068】
そして、走行車体40が前進を続けて畝の端部に到達し、畝面接地ローラ184が畝面に接触しなくなると、接地付勢スプリング185の付勢力と、センサアーム183と畝面接地ローラ184の自重により、センサアーム183が下方回動して、畝端検知スイッチ186が押されない状態となる。畝端検知スイッチ186が押されなくなると、報知装置181に通電されることにより、報知装置181が作動し、作業者に走行車体40の機体前端付近が畝端に到達したことを報知する。
【0069】
なお、畝端センサ182が畝端を検知した時点では、畝にはまだ数株分の植付スペースが残っているので、作業者は機体を即座に停止させるのではなく、残りの植付スペースに植え付けられる数の苗を苗供給装置43に投入しつつ、停止操作を準備する。
【0070】
これにより、作業者は背後を振り返ることなく畝端への接近を知ることができるので、苗を畝上に植え付け終えるタイミングで機体を停止させることができ、余分な走行による燃料の消費や、次の作業条への移動距離が長くなることが防止される。
【0071】
また、畝端が近付いた際、苗供給装置43に投入する苗の数を調整できるので、植付作業走行の停止操作が遅れて植付ホッパ20a,20bが植付動作を行っても、畝でない箇所に苗が放出されることが防止される。
【0072】
なお、
図4、
図6及び
図7に示すとおり、前記センサアーム183を左右一対のセンサアーム183a,183aとし、畝面接地ローラ184を左右の畝面接地ローラ184a,184aを各々回転可能に装着し、左右の畝端検知スイッチ186,186を各々設ける構成としてもよい。
【0073】
これにより、左右のセンサアーム183,183のどちらか一方が下方回動して対応する畝端検知スイッチ186,186の一方が押されない状態になると、報知装置181が作動することにより、畝端が風雨により崩れて形状が乱れていても畝端が検知されやすく、作業者による植付作業走行停止操作がタイミングよく行える。
【0074】
また、走行車体40の機体前側の左右両側で、且つ走行輪44よりも機体前側には、前部梁フレーム110の下部側に設けられて機体左右方向に突出する横フレーム16を介して、転動自在に支持した前輪45を設ける。
【0075】
そして、前記走行伝動ケース38の前部の回動軸心位置には、ミッションケース39から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース39内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が走行伝動ケース38内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は走行伝動ケース38内の伝動機構を介して、走行伝動ケース38の伝動車軸に伝動し、走行輪44が駆動回転する構成としている。
【0076】
また、前記走行伝動ケース38には、走行伝動ケース38の前部側を回動支点として走行輪44を上下させる、上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、走行伝動ケース38のミッションケース39への取付部には、上方に延びるアーム13が一体的に取り付けられており、アーム13がミッションケース39に固定された昇降用油圧シリンダ300のピストンロッド先端に取り付けた連結体の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、連結ロッドで連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に対応して伸縮作動可能な左右制御用油圧シリンダで連結している。
【0077】
昇降用油圧シリンダ300が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右のアーム13は後方に回動し、これに伴い走行伝動ケース38が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ300のピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右のアーム13は前方に回動し、これに伴い走行伝動ケース38が上方に回動して、機体が下降する。
【0078】
この昇降用油圧シリンダ300は、畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動に伴って動作する畝面センサ14によって作動する。畝面センサ14の動作は機体の位置を基準とした畝上面高さを検出する動作となり、その畝面センサ14の検出動作に基づいて機体を畝上面高さに対応して設定高さになる構成で昇降用油圧シリンダ300が作動する構成としている。
【0079】
また、左右水平制御用油圧シリンダが伸縮作動すると、その左右水平制御用油圧シリンダと連結する左側のアーム13が回動して、左側の走行輪44のみを上下動させ、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダは、左右水平を基準として機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて作動して、機体を左右水平にする構成としている。
【0080】
図1、
図2及び
図5に示すとおり、前記横フレーム16は、前部梁フレーム110に前後方向の軸中心にローリング回動可能に装着されており、該横フレーム16の左右両側部には、上下に長い縦フレーム17を装着する。そして、左右前輪45は、縦フレーム17の下端部側方に固着した前輪車軸18に回転自在に取り付けられている。従って、左右前輪45は、機体の左右中央の前後方向の軸心回りにローリング回動自在となっている。また、横フレーム16の左右両側部を基準として、縦フレーム17が上下調節可能に設けられており、前輪45の高さ調節をすることが出来る構成としている。
【0081】
前記操縦ハンドル404は、機体後部に設けられており、走行輪44の伝動車軸より機体後側に位置している。具体的には、ミッションケース39に前端部を固定した機体フレーム19の後端部に取り付けられている。
【0082】
機体フレーム19は、機体の左右中央で後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。
【0083】
操縦ハンドル404は、機体フレーム19の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル404のグリップ部としている。
【0084】
なお、
図2では、グリップ部を左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル404の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0085】
植付装置42は、先端が下方に向かう嘴状の複数の植付具と、植付具の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに植付具を上下動させる上下動機構21と、嘴状の植付具の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と植付具の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能とする開状態とに植付具を開閉する開閉機構とを備える。
【0086】
図1から
図5に示すとおり、本実施の形態の植付装置42は、第1植付ホッパ20aと第2植付ホッパ20bを左右に並べて配備した、二条植の構成としている。これらの第1植付ホッパ20a及び第2植付ホッパ20bは、ミッションケース39から伝動される伝動ケース26の左右両側部に設けられた上下動機構21に各々装着されている。
【0087】
各苗収容体22は、上下に開口する筒状体と、その筒状体の下側の開口部を開閉する底蓋とを有し、互いにループ状に連結している。
【0088】
移動機構23は、連結した各苗収容体22が左右の植付ホッパ20a,20bの上方近傍を通過する状態で、機体平面視で左右に長い長円形状のループ状の軌跡で、連結した苗収容体22を左回りに周回動させる。
【0089】
苗落下機構は、苗収容体22の底蓋を、その苗収容体22に対応する、植付ホッパ20a,20bの上方位置で開放する。
【0090】
本実施の形態では、苗収容体22の外周に円筒外周部を形成し、その円筒外周部に外側から回動自在に接続する係合部(丸孔)を設けて、2つの苗収容体22を連結する連結体を複数形成した。そして、その連結体の係合部を苗収容体22の円筒外周部に回動自在に接続し、その円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体22が回動自在に連結する状態として、複数の苗収容体22を互いに連結した構成としている。すなわち、苗収容体22と連結体とで無端チェーンの如く連結した構成である。
【0091】
これにより、苗収容体22は、直線的に移動する直線状部分28でも円弧状に移動する円弧状部分29でも隣接する苗収容体22との間隔が変わらないので、苗収容体22から左右の植付ホッパ20a,20bに苗を供給する個所で、苗収容体22の左右の植付ホッパ20a,20bを基準とした位置ズレが生じ難くなり、苗供給が適正に行われて適確な苗の植え付けが出来る。
【0092】
苗供給装置43の移動機構23は、無端チェーンの如く互いに連結する苗収容体22を、左右に設けたスプロケットの外周の円弧状切欠部に巻き掛け、この左右のスプロケットを伝動ケース26内から取り出した動力で駆動回転することにより、各苗収容体22を周回動させる構成としている。
【0093】
苗収容体22が周回する周回移動経路は、平面視で左右方向に延びる直線状部分28と、スプロケットにより直線状部分28から前側または後側に円弧状に曲がる円弧状部分29とを備えた長円状であり、左右の走行輪44より機体内側に配置されている。
【0094】
前記苗供給装置43の苗収容体22は、直線状部分28では比較的安定して所定方向に移動するが、左右両側部の円弧状部分29では、苗収容体22同士の間隔が狭まったり広くなったりして、苗供給装置43の駆動に負荷を与えて破損させたり、苗の落下供給タイミングが不安定になったりするおそれがある。これを防止すべく、複数の苗収容体22の内周縁部で、且つ苗供給装置43の左右両外側部には、駆動回転するスターホイル240,240を各々設けており、該スターホイル240,240の外周縁部には等間隔に突起部が形成されている。これらの突起部を苗収容体22の間隔部に入り込ませることで、苗供給装置43の左右両側の円弧状部分29を通過するときの各苗収容体22の位置を各々保つことにより、過負荷の発生や、苗の落下供給タイミングのズレの発生を防止している。
【0095】
作業者は、作業座席46に着座、あるいはフロアステップ122上に立って苗供給装置43に苗の供給作業を行うが、補充用の苗が無くなったときや何らかの問題、例えば苗の植付姿勢が連続して異常、苗が植え付けられない等、が生じたときは、走行車体40の走行の停止や、植付ホッパ20a,20bの駆動を止める必要がある。また、作業者のペースよりも走行速度や植付ホッパ20a,20bの昇降ペースが速いときは、エンジン41の出力を低下させ、作業を行いやすい速度に変化させる必要がある。
【0096】
上記の操作を、
図4及び
図5に示すとおり、作業座席46に着座したまま、あるいはフロアステップ122上から降りることなく行うべく、前記苗供給装置43の機体前側で、且つ左右一側端部、即ち、作業座席46に着座した作業者の右手側には、エンジン41の始動の可否を切り替えると共に停止操作を行う第2エンジンスイッチ408を設けると共に、該第2エンジンスイッチ408よりも機体内側(機体左右他側)寄りとなる位置には、エンジン41の出力を増減操作する第2スロットルレバー409を機体左右方向に回動操作可能に設ける。
【0097】
なお、前記第2エンジンスイッチ408は、第1エンジンスイッチ407と同じ操作方法であるが、エンジン41は、これら第1エンジンスイッチ407と第2エンジンスイッチ408の両方が入位置に操作されていなければ始動しないものとする。
【0098】
これにより、移動時等作業者が機体の後方で操縦ハンドル404を握って操縦するときは第1エンジンスイッチ407で停止操作ができると共に、苗の植付作業時等走行車体40に搭乗しているときは第2エンジンスイッチ408を切操作してエンジン41を停止させることができるので、搭乗中に走行車体40から降りて第1エンジンスイッチ407を切操作しに行く必要が無く、植付あるいは機体に問題を生じさせる動作を中断することができる。
【0099】
また、第2スロットルレバー409を走行車体40上から・BR> 作できるので、エンジン41の出力を増減操作する際に走行車体40を乗り降りする必要が無く、作業能率や作業精度が向上する。
【0100】
また、左右の植付ホッパ20a,20bは、伝動車軸の位置よりも後側に配置している。
【0101】
苗供給装置43は、左右の植付ホッパ20a,20bに合わせて苗収容体22が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。
【0102】
植付ホッパ20a,20bは、それぞれ第1落下供給位置31a及び第2落下供給位置31bで、苗収容体22から苗が落下供給される。
【0103】
そして、左右の植付ホッパ20a,20bに対応して落下供給する苗を収容する苗収容体22を各別に設けており、苗収容体22が対応する左右の植付ホッパ20a,20bの上方にきたときのみ底蓋が開き、対応しない左右の植付ホッパ20a,20bの上方では底蓋が開かない構成としている。
【0104】
すなわち、植付ホッパ20aに対応する苗収容体22は第1落下供給位置31aにきたときのみ、植付ホッパ20bに対応する苗収容体22は第2落下供給位置31bにきたときのみ、それぞれの底蓋が開いて対応する植付ホッパ20a,20bに苗が供給される構成となっている。
【0105】
なお、第1落下供給位置31a及び第2落下供給位置31bは、左右の植付ホッパ20a,20bの条間を調節した際、対応する位置に移動可能な構成とする。
【0106】
移動機構23の作動周期は、上下動機構21の作動周期に同期する設定にされており、左右の植付ホッパ20a,20bに対応する苗収容体22を合わせて1つの苗収容体ユニットとして、その苗収容体ユニットを複数連結した構成とすることにより、苗収容体22が左右の落下供給位置31a、31bを直列的に通過しながら、左右の植付ホッパ20a,20bに対応して苗供給漏れが生じることなく苗を供給でき、且つ左右の落下供給位置31a、31bを通過した後に苗が供給されなかった苗収容体22が生じなくすべく、余すことなく左右の植付ホッパ20a,20bに対応して苗を供給出来る構成としている。
【0107】
本実施の形態の移植機10は、左右の植付ホッパ20a,20bが植え付けた苗に合わせて覆土鎮圧することに利用される覆土鎮圧輪37を左右の植付ホッパ20a,20bの苗植え付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。該左右の覆土鎮圧輪37は、一本の棒材を平面視J形状に屈曲させて構成した、各々別個に上下回動自在な鎮圧アーム370,370と、該左右の鎮圧アーム370,370の後部側に、各々左右一対回転自在に設けられる鎮圧回転体371,371で構成する。
【0108】
なお、鎮圧アーム370は、機体内側に位置する一側端部が走行車体40の後部側に上下回動自在に装着され、後方に向かって突出する直線部分の後部を上方に屈曲させた後、機体外側に屈曲させ、さらに下方に屈曲させて機体内側の直線部分と同じ上下位置で機体前側に屈曲させている。そして、左右の鎮圧回転体371,371のうち、機体外側の鎮圧回転体371は機体前側に屈曲する機体外側の直線部分に設けられ、機体内側の鎮圧回転体371は機体内側の直線部分に装着される。
【0109】
上記構成により、鎮圧アーム370の後部に、機体上方に向かって突出する回避部分372が形成され、左右の鎮圧回転体371,371は左右間隔を空けて配置される。これにより、植付ホッパ20a,20bが植え付けた苗は、左右の鎮圧回転体371,371の左右間隔部を通過しつつ周辺の土を均されると共に、回避部分372の下方を通過するので、覆土鎮圧輪37,37に押し倒され、植付姿勢が乱れることが防止される。
【0110】
なお、左右の鎮圧アーム370,370は各々機体左右位置を調節可能に装着し、植付ホッパ20a,20bの条間設定に合わせて鎮圧する位置を変更可能に構成する。また、左右の鎮圧回転体371,371についても、各々左右位置を調節可能に構成すると、植付後の苗の周囲の土を確実に固められ、苗が倒伏や低温により生育不良を起こすことが防止される。
【0111】
本件の移植機には、苗供給装置43に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業を行うべく、作業者が座る作業座席46を設けている。具体的には、苗供給装置43の前側となる機体左右中央位置に後向きに作業座席46を配置している。作業座席46に座る作業者は、苗供給装置43の前側部に向って後側向き姿勢で着座して、苗供給装置43の前側部、特に苗収容体22の周回移動経路における前側の直線状部分28に対応して苗補給作業を行う。
【0112】
また、前記操縦パネル47aの左右他側には、ミッションケース39に内装され、左右の走行伝動ケース38及び伝動ケース26への駆動力の伝動を入切する主クラッチレバー125を設ける。
【0113】
本発明の移植機において、機体後部の操縦ハンドル404による作業者の操作は、圃場への移動、輸送手段からの積み下ろし、倉庫への収納や、圃場端での旋回のときに行われるものである。一方、苗の植付作業時には、作業者は走行車体40の作業座席46に搭乗しており、操縦ハンドル404の操縦パネル47aでの操作を行うことは困難である。
【0114】
従って、走行車体40上には、作業座席46に搭乗した作業者用の、車体上操縦部126を設ける。
【0115】
図4及び
図11に示すとおり、前記苗供給装置43の下部には、機体後側に上方傾斜する後部ステップ127を設け、該後部ステップ127の左右どちらか一側、本件では機体右側(作業座席46に着座した作業者を基準とすると左側)の端部に、
図4、
図5及び
図11に示すとおり、車体上操縦部126を設ける。
【0116】
該車体上操縦部126は、最も機体外側に、走行車体40の車高を調節して植付ホッパ20a,20bの植付深さを調節する第2車高調節レバー128を配置し、該第2車高調節レバー128よりも機体内側に、第2主クラッチレバー129を配置する。
【0117】
なお、苗の植付作業時は、基本的に車高を固定する必要が無いので、第2車高調節レバー128は「高」ポジションと「低」ポジションのみを有する構成とする。
【0118】
そして、前記後部ステップ127の外側端部には、第2車高調節レバー128を枠内に収めると共に車高の目安を示す表示目盛りを形成した車高調節レバーガイド130を機体前側に向かう上方傾斜姿勢で設け、該車高調節レバーガイド130の機体内側方には、第2主クラッチレバー129を枠内に収める主クラッチレバーガイド131を機体前側に向かう上方傾斜姿勢で設ける。
【0119】
なお、第2車高調節レバー128は、第2主クラッチレバー129よりも機体前側への突出量を大きくする。
【0120】
また、前記第2車高調節レバー128と第2主クラッチレバー129は、機体左右一側(機体右側)の前記取付支持プレート105、及び前後の梁フレーム106f,106rに基部側を回動可能に装着するものとすると、別途取付部材を設ける必要が無く、部品点数の削減が図られる。
【0121】
さらに、前記車体上操縦部126よりも機体左右他側、即ち機体左側には、左右のサイドクラッチを入切操作するサイドクラッチペダル132L,132Rを、後部ステップ127の上面に露出させて設ける。
【0122】
前記車高調節レバーガイド130と主クラッチレバーガイド131は、側部ステップ118の上面との間に一定の上下間隔Sを空けて配置するものとする。上記の上下間隔Sは、作業者の足を入り込ませても空間が確保される程度(例:15~20cm程度)とする。
【0123】
上記構成により、フロアステップ122上、及び作業座席46に搭乗した作業者は、走行車体40から降りることなく植付深さの手動操作や、植付作業の入切を手動操作することができるので、作業能率が向上すると共に、苗の植付精度が向上する。
【0124】
また、第2主クラッチレバー129を第2車高調節レバー128よりも作業座席46に近付く機体内側に配置したことにより、苗の補充や植付状態の修正、休憩等の際に使用する第2主クラッチレバー129に作業者の手が届きやすく、労力の軽減が図られる。
【0125】
特に、問題の発生時に速やかに苗の植付作業を中断でき、苗の植え直し作業が不要になると共に、生育に適さず破棄される苗の数が減少する。
【0126】
また、第2車高調節レバー128を第2主クラッチレバー129よりも機体前側に突出させたことにより、作業座席46から遠い側の第2車高調節レバー128を操作する際に腕を大きく伸ばす必要が無く、作業者の労力が軽減される。
【0127】
そして、後部ステップ127に左右のサイドクラッチペダル132L,132Rを設けたことにより、走行車体40の進行方向が畝を基準とする直進方向から外れかけているときに前記サイドクラッチペダル132L,132Rのどちらかを操作して対応するサイドクラッチを一時的に切状態とすることで、走行車体40の進路を修正でき、苗の植付位置が左右方向に蛇行することが防止される。
【0128】
また、車高調節レバーガイド130と主クラッチレバーガイド131、即ち車体上操縦部126と側部ステップ118の上下間に上下間隔Sが形成される構成としたことにより、作業座席46に搭乗する作業者の足の動きが妨げられず、作業者は楽な姿勢で操縦座席46に搭乗でき、労力の軽減が図られる。
【0129】
作業座席46の左右両側で機体側面視で走行輪44の伝動車軸の上方位置に、苗供給装置43に補給する苗を収容可能な予備苗枠50を設けている。
【0130】
前記予備苗枠50は、走行車体40の機体外側に突出する苗載支柱51の上部に支持ステー52を設け、該支持ステー52に回動状態と非回動状態を切替可能な苗載回動アーム53を設け、該苗載回動アーム53には上下方向の苗枠フレーム54,54を間隔を開けて配置すると共に、該苗枠フレーム54,54の同じ面に、補充用の苗を収容する苗箱や苗トレイ等の容器を載置する載置台55の一側端部を装着して構成する。
【0131】
該載置台55は、上下方向に一つだけ設けてもよいが、容器の取り出しに支障の無い上下方向の間隔を空けて複数配置してもよい。
【0132】
上記構成の予備苗枠50は、走行車体40の左右両側に各々設け、状況に合わせて支持ステー52上で苗載回動アーム53を回動させる。
【0133】
例えば、苗の植付作業時には、載置台55の長手方向を機体前後方向に向けることで、載置台55から苗の容器を取り出したり、空になった容器を戻しやすくすることで、作業能率を向上させることができる。
【0134】
また、この位置では載置台55が走行車体40の左右両側に位置するので、作業者が走行車体40の搭乗可能な部分の端部を把握しやすくなり、走行車体40上から足がはみ出し、姿勢を崩すことが防止される。
【0135】
また、走行車体40に作業者が乗り降りするときには、苗載回動アーム53を約90度回動させる。
【0136】
これにより、走行車体40の左右両側に乗り降りの空間部が形成される。
【0137】
また、作業者は走行車体40の機体前側からも乗り降りすることができるが、苗載回動アーム53を回動させて苗枠フレーム54,54が機体前側に位置し、載置台55が機体後側に位置する状態とすると、作業者は苗枠フレーム54,54を手摺りとして用いることができるので、走行車体40の乗り降りを円滑に行うことができる。
【0138】
また、載置台55に苗の容器を積載、あるいは取り出す際、機体後側からであれば容器の積載、取り出しを妨げる部材が無いので、作業能率が向上する。
【0139】
圃場に苗を移植する際、圃場の土質や周辺の水環境、あるいは作業前の天候等の条件を考慮して、植え付けた苗の付近に水を供給する、所謂潅水作業を行うことがある。
【0140】
本件の移植機には、
図1から
図5、及び
図12、
図13に示すとおり、機体前側の転輪45と機体後側の走行輪44に亘って側部支持フレーム60を上下回動可能に設け、この側部支持フレーム60には、作業座席46を支持する座席支持フレーム46aの基部と、水タンク600を積載する水タンクホルダ601を装着する。
【0141】
この側部支持フレーム60は、転輪45と走行輪44の前後間に直線状に配置する前側フレーム61と、走行伝動ケース38の機体内側に直線状に配置する後側フレーム62と、走行伝動ケース38の下部側を通過して前側フレーム61の後端部と後側フレーム62の前端部を連結すると共に、座席支持フレーム46aの基部を装着する連結フレーム63で構成する。なお、前側フレーム61、後側フレーム62及び連結フレーム63は、相互に回動し合わない連結構成とし、側部支持フレーム60として一体に上下回動する構成とする。
【0142】
さらに、前側フレーム61、即ち側部支持フレーム60の前端部には、転輪45に側部支持フレーム60を回動可能に連結する前側連結アーム64を装着する。この前側連結アーム64は、平面視でコの字形状であり、転輪45の車軸部分付近に、転輪45を挟み込む形で回動可能に装着するものとする。また、前側フレーム61の前側下部には、前側連結アーム64の下方を通過して転輪45の外周面、乃至外周面付近に先端部を臨ませる、転輪スクレーパ65を前後位置調節可能に装着する。
【0143】
そして、後側フレーム62には、機体前後方向を長手方向とすると共に後輪44の車軸12が差し込まれる長孔66aが機体前後方向に形成された後側連結アーム66を設ける。この後側連結アーム66の前後端部は機体内側に向かって折曲支持部66bを形成しており、これら前後の折曲指示部66b,66bに水タンクステー601の下部を連結して取り付けるものとする。後側支持アーム66の長孔66aに車軸12が差し込まれることにより、転輪45の上下高さの変更、及び走行伝動ケース38の上下回動により走行車体40の車高を変更する際、側部支持フレーム60の上下回動が妨げられることが無い構成となる。
【0144】
なお、上記の車軸12のうち、走行輪44に差し込まれる側とは反対側、即ち機体内側を延長した部分が、長孔66a内に入り込むものとする。また、後側連結アーム66と走行伝動ケース38は密接させず、数cm(例:3~8cm)程度の間隔を任意に調整して空けるものとする。
【0145】
これにより、横フレーム16を操作して転輪45の左右位置を変更する以外に、側部支持フレーム60の左右位置を変更することで、畝幅に合わせたトレッド変更をより細かく行える。
【0146】
そして、連結フレーム63の機体外側で、且つ前側フレーム61の後部側の上部には、座席支持フレーム46aの基部側を差し込む鉛直姿勢の支持ポスト67が配置される。なお、座席フレーム46aは、走行車体40を跨ぎ、左右の基部が左右の支持ポスト67,67に差し込まれる構成であるが、左右片方のみ支持ポスト67を設け、座席支持フレーム46aの下端側を支持ポスト67に差し込む構成としてもよい。
【0147】
上記の連結フレーム63は、外側が前側フレーム61上に位置すると共に後側フレーム62の前端部に接する前側プレート63aと、外側が前側フレーム61の後端部に接すると共に後側フレーム62上に位置する後側プレート63bと、前側プレート63aと後側プレート63bを連結する左右プレート63c,63cで、上下が開放された枠形状に構成するものとする。なお、前側プレート63aと後側プレート63bは、走行伝動ケース38の下方を通過させるべく、長方形ではなく、不等辺多角形で構成するものとする。
【0148】
上述した水タンクステー601は、前後方向を長手方向とする前後受けプレート602と、前後受けプレート602の前後間に複数、
図12及び
図13では二つ設けられている、左右方向を長手方向とする左右受けプレート603と、前後受けプレート602及び左右受けプレート603に亘って装着される、枠形状の水タンクガード604で構成する。
【0149】
なお、
図13では、水タンクステー601を装着した状態では側部支持フレーム60の構成が不明瞭になるので、取り外した状態で示している。
【0150】
より詳細には、前後受けプレート602の前後両側には機体上側に向けて各々前後受け屈曲部602aが形成され、左右受けプレート603の前後両側には機体上側に向けて各々左右受け屈曲部603aが形成され、水タンクガード604は前後受け屈曲部602a及び左右受け屈曲部603aの上端部、乃至上端部付近に溶接等により装着される。なお、水タンクガード604は上端部付近よりも機体下方側に設けてもよく、さらには、上下方向に間隔を空けて複数設けてもよい。
【0151】
そして、前後受けプレート602の下部側には、後側連結アーム66の前後の折曲指示部66b,66bと連結される、側面視L字形状の接続ステー605,605を前後一対設ける。前後の折曲指示部66b,66bと接続ステー605,605は、ボルト、ナット等の締結部材で接続することが考えられるが、水タンク600の荷重を受けて破断することを防止すべく、こうした部材同士の締結に用いる標準的なものに比べて、大径のものを用いることが望ましい。
【0152】
上記の構成により、走行伝動ケース38の上下回動、及び縦フレーム17による転輪45の上下位置調節を行う際、側部支持フレーム60が連動して上下回動できると共に、側部支持フレーム60の前後移動量を抑えられる。したがって、作業座席46や水タンク600の前後位置の変動による重量バランスの変動が抑えられ、走行車体40の進行方向の乱れや、植付ホッパ20a,20bの植付姿勢の乱れが防止される。
【0153】
また、走行伝動ケース38を上下回動させる際に連動して側部支持フレーム60が回動することにより、別途側部支持フレーム60を上下回動させる必要がなく、車高調節作業を能率よく行うことができる。
【0154】
また、前側連結アーム64が転輪45を左右から挟み込む形で装着されることにより、転輪45が左右方向から支持されるので、作業座席46から受ける荷重に対して強い構成となり、破損が生じにくくなる。
【0155】
また、前側フレーム61及び支持ポスト67が転輪45と走行輪44の前後間に直線状に配置されることにより、畝溝上にこれらの部材が位置するので、接触により畝が崩されることが防止され、植え付けた苗の生育に悪影響が生じるにくくなる。
【0156】
また、後側連結アーム66に形成された長孔66a内に走行輪44の車軸12が差し込まれることにより、走行車体40の荷重及び接地抵抗を受けるべく高い強度で設計される車軸12を利用して水タンク600の荷重を受けることができるので、水タンクステー601や側部支持フレーム60の破損が防止される。
【0157】
また、前側フレーム60に転輪スクレーパ65を装着したことにより、転輪45に付着した土を削ぎ落すことができるので、転輪45の直径が変化して走行車体40の進行方向が乱れることや、走行車体40の前後傾斜角度が変化して苗の植付姿勢が乱れることが防止される。
【0158】
また、転輪スクレーパ65の前後位置が調節可能であることにより、転輪45に過度に接触して走行抵抗となることや、転輪45に付着した土を十分に除去できず効果が得られなくなることが防止される。
【0159】
上記の構成で積載する水タンク600の容量は、強度を考慮すると10リットル程度であり、即ち水10kgと水タンク600自体の重量の数百グラムであることが望ましい。
しかしながら、植付作業面積が広い圃場においては、作業能率の低下を防止すべく、水タンク600の交換頻度が少ないことが望ましい。なお、一例として、灯油等の輸送や貯留に用いる容量20リットルのポリタンクが挙げられる。
【0160】
水タンクの大容量化に際し、荷重に加えて、水タンクの前後及び左右幅が問題となる。本願の移植機の構成に合わせて大容量の水タンクを積載するにあたり、走行伝動ケース38の上方の空間は、前後幅は問題ないが左右幅が確保できない、できるとしても走行輪44の内側に接触し得るおそれがあるので、走行輪44の機体外側の開放空間を用いることが望ましい。
【0161】
大容量タンク610を走行輪44の機体外側に支持させるべく、
図14から
図17に示すとおり、走行伝動ケース38の回動基部側、即ち機体前側で且つ内側に内側ステー611を設ける。この内側ステー611は上部側を走行伝動ケース38の上面よりも大幅に上方に突出させると共に、下部側も走行伝動ケース38の下面より下方に突出させる。また、走行伝動ケース38の機体前側で且つ外側には、内側ステー611に対応する外側ステー612を装着し、この外側ステー612の下部は走行伝動ケース38の下方に突出させ、上部には角柱状の部材を走行伝動ケース38の上面よりも機体上方で受ける受け部を形成する。
【0162】
この外側ステー612に形成する受け部には、中空の柱状部材、例えば六角柱状であるアウターチューブ613を機体左右方向に向けて装着する。この六角柱状のアウターチューブ613は、大容量タンク610の荷重を受けるべく、溶接等で強固に外側ステー612に固着するものとする。
【0163】
なお、外側ステー612の機体後部側は機体外側に向けて曲げ部612aを形成し、この曲げ部612aの上端部をアウターチューブ613の後部側に接触させて溶着することで、より強度を向上させる。また、アウターチューブ613は外周面にボルト等の締結部材を差し込ませる受けナットを設けて、内側ステー611に形成するネジ溝(図示省略)に向けて締結部材をねじ込むと共に、内側ステー611と外側ステー612の下部側に形成される取付孔に締結部材を差し込み締結することで、取付強度を高めている。さらに、内側ステー611と外側ステー612の走行伝動ケース38に接触する面の一部にも取付孔を形成し、走行伝動ケース38の内部から露出するネジ軸にナット等を取り付け、上下方向に亘って耐荷重性を確保する構造とする。
【0164】
そして、アウターチューブ613に対応する形状の柱状部材、例えば六角柱状のインナーチューブ614に、大容量タンク610の外周を包囲して支持するタンクガード615の左右の基部側を各々連結する。このタンクガード615の基部側にはインナーチューブ614を差し込む孔部が形成されており、インナーチューブ614を差し込んだ後、強度を向上させるべく溶接等により固着することが望ましい。また、タンクガード615のうち、大容量タンク610の左右側方に位置する部分は、基部側から前後方向中央位置付近にかけて上方傾斜する上方傾斜部615aを形成すると共に、前後方向中央位置付近から後方は走行輪44の接地面に対して略平行な姿勢となる、側面視でへの字形状とする。
【0165】
このタンクガード615の後部側とインナーチューブ614の前後間には、機体前後方向を長手方向とする前後支持プレート616の前部側、及び後部側を各々連結する。前後支持プレート616の前部側には上方に屈曲する前側支持屈曲部616aを形成し、後部側には上方に屈曲する後側支持屈曲部616bを形成する。後側支持屈曲部616bは前側支持屈曲部616aよりも上方に突出するものとし、上方傾斜部615aが機体前側ほど下方に位置する構成により、大容量タンク610の出し入れを行いやすい構成とする。
また、前側支持屈曲部616aの下部側、具体的にはインナーチューブ614よりも下部側には、機体前側に向かって屈曲する補強屈曲部616cを形成し、この補強屈曲部616cの上面をインナーチューブ614の下面に連結する構成とする。そして、前後支持プレート616の前後間部分のうち、機体外側を機体下方に向けて折り曲げ、さらに強度を向上させるものとする。
【0166】
さらには、前側支持屈曲部616aは上端部付近、即ちインナーチューブ614に連結する位置よりも機体上側で機体前側に向けて屈曲させると共に、後側支持屈曲部616bは上端部付近、即ちタンクガード615の後部に連結する位置よりも機体上側で機体後側に向けて屈曲させるものとし、より大容量タンクの出し入れを行いやすくする。
【0167】
そして、前後支持プレート616には、大容量タンク610の左右両側を支持する左右支持プレート617を一つ、あるいは各々間隔を空けて複数配置する。左右支持プレート617を一つ設けるときは、前後方向における前後支持プレート616は前後中間位置、乃至前後中間位置付近に配置されるものとする。左右支持プレート617の左右両側には、上方に屈曲する左右の支持屈曲部617a,617aを各々形成し、左右の支持屈曲部617a,617aの上端部をタンクガード615に各々溶接等により連結する。
【0168】
なお、左右の支持屈曲部617a,617aの上端部の位置は左右で同じ、乃至略同じとするが、機体外側に位置する支持屈曲部617aはタンクガード615の枠内で連結し、機体内側に位置する支持屈曲部617aはタンクガード615の枠外で連結する構成とする。
【0169】
これにより、大容量タンク610を出し入れ自在に支持する大容量タンクステー618が形成される。
【0170】
この大容量タンクステー618は、インナーチューブ614をアウターチューブ613から引き出し切ることにより、取り外すことが可能である。これにより、大容量タンク610を積載しないときには大容量タンクステー618を取り外し、機体の左右幅をコンパクトにできるので、軽トラックの荷台からはみ出すことが防止されると共に、倉庫等に収納する際、収納スペースが確保しやすい。
【0171】
一方、大容量タンク610を載置して苗の植付作業を行うときには、大容量タンクステー618が外れることは当然防止される必要があるが、左右方向に移動できてしまうと重量バランスに乱れが生じ、走行車体40の進行方向や、苗の植付姿勢に大きな乱れが生じるおそれがある。
【0172】
作業中にはインナーチューブ614の左右方向の移動を規制し、非作業時に大容量タンクステー618を容易に着脱可能とするべく、アウターチューブ613及びインナーチューブ614に左右方向に間隔を空けて複数の調節孔を形成し、アウターチューブ613及びインナーチューブ614の調節孔同士の位置を合わせた状態で、ボルト、ナット等の装着部材の着脱により、装着状態と取り外し状態を切替可能に構成する。
【0173】
上記の構成では、大容量タンクステー618を取り外し状態にした際に、装着部材を無くさないように保管する必要がある。アウターチューブ613またはインナーチューブ614に形成されている調節孔に装着部材を取り付けておけば、次に大容量タンクステー618を装着する際にすぐに用いることができるが、一旦ナットをボルトから取り外す等の作業が必要になる。また、圃場から移植機を持ち帰る際、装着部材を取り外す必要があるが、作業時に大容量タンクステー618の脱落を防止すべく強固な締結状態としていると、工具を用いないと取り外しができず、余分な時間が必要になると共に、工具を圃場に持ち込む手間もかかる。
【0174】
この問題に対応させるべく、アウターチューブ613にパイプピンの回動アーム部の基部を装着し、この回動アーム部の端部に装着ピンを設けることが考えられる。これにより、装着ピンを抜き出しても回動アーム部がアウターチューブ613に設けられているので、装着ピンを無くすことが防止される。
【0175】
水タンク600に貯留された潅水用の水は、走行車体40の底部で、且つ機体前後中央付近に設けられる潅水ポンプ700の動作によって汲み上げられると共に、植付ホッパ20a,20bが苗を植え付ける位置に排出される。該潅水ポンプ700は、植付ホッパ20a,20bの数に合わせて配置し、走行車体40の左右中央部を基準として、間隔を空けて左右に配置する。
【0176】
前記潅水ポンプ700にホースを装着し、水タンク600から潅水ポンプ700を経由して散水ノズル710から水を排出する構成とすることもできるが、潅水ポンプ700のギアポンプ800の動作により、排出方向に送り出された水の一部が水タンク600側に戻されることがある。これにより、圃場に供給される1回当たりの潅水量が減少し、水不足により苗の生育が遅れたり、生育不良により収穫物の品質を低下させるおそれがある。
【0177】
これを防止すべく、前記左右の側部ステップ118の機体外側の下部に、送水方向を一方に制限するチェックバルブ720を各々設け、水タンク600とチェックバルブ720の給水側を吸水ホース721で連結すると共に、チェックバルブ720の排水側と排水ノズル710を排水ホース722で連結する。また、チェックバルブ720と潅水ポンプ700を、中継ホース723で連結する。
【0178】
より具体的には、
図9で示すとおり、まず、機体前側から後側への送水を許容する方向に向けた吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725を上下に並べて側部ステップ118の機体外側端部の下部に装着する。そして、前記吸水ホース721の一側を水タンク600内に入り込ませ、他側を吸水チェックバルブ724の入口、即ち機体前側と連結し、前記排水ホース722の一側を排水チェックバルブ725の出口、即ち機体後側と連結し、他側を前記排水ノズル710に連結する。
【0179】
前記潅水ポンプ700には、機体左右方向の第1中継ホース723aの基部側を装着し、端部側には、三又形状の分岐ジョイント723dの収束ポートを装着する。そして、該分岐ジョイント723dの吸水ポートと吸水チェックバルブ724の出口(機体後側)の間には、第2中継ホース723bを設け、分岐ジョイント723dの排水ポートと排水チェックバルブ725の入口(機体前側)の間には、第3中継ホース723cを設ける。
【0180】
なお、排水ノズル710は、圃場に直接水を供給してもよいが、植付ホッパ20a,20bの上側開口部から内部に潅水をある程度の水勢で投入し、植付ホッパ20a,20b内に付着した泥土の除去に利用する構成としてもよい。
【0181】
これにより、植付ホッパ20a,20bが開いている間に内部に入り込み、泥土を除去するスクレーパが不要になるので、部品点数の削減が図られる。
【0182】
上記スクレーパが、植付ホッパ20a,20bの昇降に連動して所定の軌跡を描くものであれば、所定の軌跡で昇降させる機構の部品を削減できるので、部品点数の大幅な削減と、機体構成の簡略化が図られる。
【0183】
さらに、泥土を潅水で圃場に戻すことができるので、圃場外を泥土で汚染することを防止できると共に、圃場内の養分の流出が軽減される。
【0184】
上記構成により、チェックバルブ720が機体左右外側の空間部に配置されるので、詰まり等の問題が生じた際に原因の調査やメンテナンス作業が行いやすく、労力の軽減や作業時間の短縮が図られる。
【0185】
また、吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725の送水方向が同じになる配置としたことにより、分解後の組付作業時に取付方向を間違えにくくなり、作業能率が向上する。
【0186】
また、チェックバルブ720が水タンク600の後側で、植付ホッパ20a,20bの前側で、且つ潅水ポンプ700の機体外側に配置されることにより、吸水ホース721、排水ホース722、第1中継ホース723a、第2中継ホース723b及び第3中継ホース723cの屈曲を最低限に抑え、且つ重複しにくい配置とすることができる。
【0187】
なお、吸水チェックバルブ724と排水チェックバルブ725は透明な筒とし、内部のスプリングや逆流防止用のボールを外部から確認できるものとすると、送水方向が視認でき、取付間違いがより生じにくくなる。
【0188】
前記植付ホッパ20a,20bが植え付ける苗には、上記の潅水作業により水を供給すると共に、苗の生育に必要な肥料や、病害虫の害から守る薬剤を供給することがある。こうした肥料や薬剤の供給は、機体に搭載される薬剤供給装置500により行われる。
【0189】
従来の薬剤供給装置は、苗供給装置43の前方等に設けられているが、装着位置から苗の植付位置までの上下間隔が大きく、薬剤を移動させる供給ホースが長いものとなり、機体の振動や風等の影響により供給ホースが揺れると薬剤の落下速度が変動し、苗の植付位置の近傍に設定量の薬剤が供給されないことや、供給ホースを装着するクランプ等の部材が外れ、苗の植付位置から離れた位置に薬剤が供給されることがある。
【0190】
また、供給ホースは植付ホッパの植付軌跡に干渉することを防止すべく大きく屈曲させて配置されることもあり、この屈曲部を通過することで薬剤の移動時間が長くなり、適切な位置への供給が行われないことがある。
【0191】
上記の問題を解消すべく、
図18から
図20に示すとおり、前記鎮圧アーム370の回避部分372のうち、上端部で且つ機体左右方向に伸びる回避頂部372aと、前記覆土鎮圧輪371,371の装着位置よりも機体後側で回避頂部372aに向かう左右の回避上下部372bの左右どちらか一側に、U字形状の取付金具501を各々配置する。
【0192】
該取付金具501は、2枚のU字形状の板体を間隔を空けて四角い板体で連結する、あるいはO字形状の板体を折り曲げて形成し、ボルト等の固定部材502が通過する左右方向の空間部と、鎮圧アーム370に入り込む前後方向の空間部を有する形状とする。
【0193】
上記2つの取付金具501に機体前側から固定部材502を各々差し込み、該固定部材502の端部を、薬剤支持フレーム503に形成する螺子穴に捻じ込ませ、鎮圧フレーム370の機体後側で且つ上部に固定する。該薬剤支持フレーム503は、板体を折り曲げて側面視でL字形状としている。
【0194】
なお、薬剤支持フレーム503のうち、回避上下部372bの機体後側に位置する部分は、固定部材502の差し込み位置を形成すべく、他の部分よりも機体下方に突出させる。これにより、薬剤支持フレーム503は、背面視において、側面視とは異なるL字形状となる。一方、回避部分372の下方を通過する植え付けられた苗との干渉を防止すべく、他の薬剤支持フレーム503の下端位置は、回避頂部372aと略同じ高さ、あるいは回避頂部372aから左右の回避上下部372bに向かい僅かに突出する高さとする。
【0195】
また、前記薬剤支持フレーム503のうち、左右一側端部、本件では取付金具501を設けた回避上下部372b側に側面視で三角形状の第1連結プレート504を設けると共に、該第1連結プレート504の側方で且つ回避頂部372aの上方位置に側面視でL字形状の第2連結プレート505を溶接等の方法で固定する。第1連結プレート504及び第2連結プレート505は、薬剤支持フレーム503から機体前側へ同じ長さ突出するものとし、これらの突出部には、取付ナット(図示省略)が装着される。
【0196】
そして、前記第1連結プレート504と第2連結プレート505の上部に正(背)面視でコの字形状のベースプレート506をボルト等の固定部材(図示省略)を介して着脱自在に取り付け、該ベースプレート506上に薬剤を設定量ずつ放出する繰出装置507と、該繰出装置507が放出する薬剤を貯留する薬剤ホッパ508を一体的に配置する。
【0197】
なお、薬剤ホッパ508には薬剤を投入する蓋部を開閉可能に設けると共に、繰出装置507のメンテナンス作業時等に脱着可能な構成とする。また、繰出装置507は、内部をメンテナンスしやすくすべく、外装部品を簡単な操作で分割して着脱可能に構成するとよい。上記の着脱を簡潔化する構成としては、薬剤ホッパ508や繰出装置507の外装部品に受フックを形成し、この受フックに引っかかる留め金を進退移動させ、ロック状態と非ロック状態を切替可能とするもの、たとえばパッチン錠を用いることが考えられる。
【0198】
前記繰出装置507の下部には、繰り出された薬剤が流下して案内される供給ホース509の上端部が着脱可能に接続され、該供給ホース509の下端部は、供給ホース509の径よりも大径の薬剤ノズル510に接続可能とする。該薬剤ノズル510は、鎮圧アーム370のうち、左右一側の覆土鎮圧輪371の取付部の後方、具体的には、左右一側の回避上下部372bの下端部から機体前側に突出する部分に、前記取付金具501と固定部材502を介して装着する。
【0199】
なお、薬剤ノズル510は、機体左右一側に突出する取付螺子軸510aを備え、該取付螺子軸510aを取付金具501の左右方向の空間部を通過させ、端部にナット等を設けて固定するものとする。これにより、薬剤ノズル510は鎮圧アーム370に装着されるものとなる。
【0200】
上記構成により、薬剤供給装置500を圃場面に近い鎮圧アーム370に装着することができるので、薬剤ホッパ508から放出された薬剤が薬剤ノズル510から苗の植付位置付近に供給されるまでの時間が短くなり、植え付けられた苗が薬剤を吸収しやすくなる、あるいは薬剤の成分で保護されやすくなり、安定した生育が見込まれる。
【0201】
特に、病害虫により苗が生育途中で枯れることを防止できるので、収穫量の減少を防止できる。
【0202】
また、薬剤供給装置500と圃場面の距離が短くなることにより、供給ホース509の上下長さを短くできるので、機体の振動や風等の影響で揺れても影響が抑えられ、安定した薬剤の供給が可能となる。
【0203】
また、機体の後部で上方、機体外側方、及び後方を遮られない鎮圧アーム370の機体後側上部に薬剤供給装置500が着脱自在に設けられることにより、薬剤の補充作業や薬剤供給装置500の着脱作業が能率よく行える。
【0204】
また、薬剤ノズル510を薬剤供給装置500よりも下方側において鎮圧アーム370に装着したことにより、供給ホース509が機体の振動や風等の影響で揺れても薬剤の供給位置が変化しにくくなるので、苗の生育の安定化が図られる。
【0205】
また、薬剤ノズル510と供給ホース509の接続を外すと、薬剤ノズル510及び供給ホース509の内部を確認できるので、詰まりが生じた位置の確認や対処が容易となり、詰まりによる作業の中断時間が抑えられる。
【0206】
また、供給ホース509を薬剤ノズル510よりも小径としたことにより、供給ホース509を薬剤ノズル510に差し込んで容易に装着することができる。
【0207】
上記の薬剤供給装置500は、鎮圧アーム370ごとに設け、一つの薬剤供給装置500は一条分の植付苗に薬剤を供給するものとする。
【0208】
上記の薬剤供給装置500が装着されると、鎮圧アーム370には上方から数Kgの荷重がかかり続けることになり、そのままでは圃場の凹凸(特に凸)があっても相応に上方回動できなくなる。この状態で前進すると、圃場の凸部となっている土を左右の覆土鎮圧輪371,371が押し、植え付けられた苗を倒してしまうおそれがある。
【0209】
また、左右の鎮圧アーム370,370の回動量に基づき機体の左右傾斜を補正するローリング機構が備えられている機種においては、鎮圧アーム370の回動量が圃場の凹凸と異なると、ローリング機構により機体が圃場面に対して左右方向に傾斜姿勢となり、苗が左右方向に傾斜した姿勢で植え付けられてしまうおそれがある。
【0210】
薬剤供給装置500を装着しても鎮圧アーム370の上下回動に支障が出ない構成について説明する。
図18から
図20に示すとおり、前記ハンドルフレーム402に補強フレーム152の後側端部を装着するL字形状の連結ステー402aの前側に、取付ステー511を装着する。該取付ステー511は左右中央部に連結ステー402aとの連結突部511aを形成し、装着時に補強フレーム152はこの上方を通過する構成とする。また、連結突部511aの左右には空間部を各々形成し、これらの空間部の左右両外側には、上方に突出して連結突部511aよりも上方位置で機体後側に屈曲する支持突出部511bが各々形成される。
【0211】
なお、連結突部511aと左右の支持突出部511bの間の空間部は、前記操縦パネル47aに設けるレバー類、及びレバー類に接続されるケーブル類を通過させるべく形成される。これにより、レバーやケーブルをできるだけ真っすぐに配置できると共に、ケーブル類のバラつきを防止することもできる。
【0212】
そして、前記取付ステー511及び連結ステー402aの上部に、吊下げ支持フレーム512をボルト等の固定部材で装着する。該吊下げ支持フレーム512は、平面視で台形状であり、短辺側を機体後側に向けて取り付ける。この短辺側には、左右の支持突出部511bと連結すべく固定部材を取り付ける外側連結穴513,513が形成され、該左右の外側連結穴513,513の左右間には、連結ステー402aの上部に形成した左右一対の取付孔と固定部材を介して連結する内側連結穴514、及びもう片方の取付孔を回避する前後方向の切欠部515を形成している。
【0213】
また、前記吊下げ支持フレーム512の機体前側は上方に屈曲させて強度を向上させ、この上方屈曲部よりも機体後側には、吊下げ取付孔516…を機体左右方向に所定間隔毎に形成する。なお、吊下げ取付孔516…は吊下げ支持フレーム512の左右両側には形成するが、左右の外側連結穴513,513や内側連結穴514を形成した左右中央部には形成しないものとする。吊下げ支持フレーム512の下方にはハンドルフレーム402等の部材が配置されるので、この位置に吊下げ取付孔516…を形成しても使用することが無く、吊下げ支持フレーム512の強度が低下するだけであるので、形成しないことにより部品強度が維持される。
【0214】
なお、上記では吊下げ取付孔516…は所定間隔毎に形成する丸穴であるが、機体左側及び右側の吊下げ取付孔516…を左右方向を長手方向とする長孔として形成してもよい。
【0215】
そして、該吊下げ取付孔516…の任意の位置には、鎮圧アーム370に装着された薬剤供給装置500による荷重を受けて鎮圧荷重を適正化する、鎮圧荷重スプリング517の上端部を装着する。該鎮圧荷重スプリング517の引っ掛け部分がJ形状のフックであれば、吊下げ支持フレーム512の前側の上方屈曲部分に円弧部分を接触させて配置し、接触抵抗で回り止めとしてもよい。
【0216】
なお、選択する吊下げ取付孔516…の位置は、前記植付ホッパ20a,20bの条間、即ち左右間隔に合わせて選択する必要があり、吊下げ取付孔516…を形成する位置、あるいは形成する左右幅は、苗の植付条間の選択可能な範囲に対応させる。
【0217】
また、前記鎮圧荷重スプリング517の下端部を装着すべく、前記薬剤支持フレーム503のうち、ベースプレート506を設ける側とは反対側、本件では左右他側に四角形の引掛け切欠部518を形成する。前記鎮圧荷重スプリング517の引っ掛け部分がJ形状のフックであれば、引掛け切欠部518の内側から薬剤支持フレーム503の下方を通過させ、フックの端部が薬剤支持フレーム503の前端部付近に位置する取付方が望ましい。
【0218】
なお、引掛け切欠部518は左右方向に長く形成し、鎮圧荷重スプリング517の上端部をどの吊下げ取付孔516…に装着しても左右傾斜が小さくなる角度で装着される構成とすると、鎮圧荷重スプリング517で薬剤支持フレーム503を十分に引っ張り上げ、圃場の凹凸に合わせて適切に鎮圧アーム370を回動させる構成とすることができる。
【0219】
また、この引掛切欠き部518は、回避頂部372aに設ける取付金具501の上部側を入り込ませる空間部として活用する。
【0220】
前記鎮圧アーム370の回避頂部372aには、鎮圧荷重調節用の鎮圧ウェイト374を上下方向に1または複数個装着するウェイト支持軸374aを設けている。該ウェイト支持軸374aを回避すべく、薬剤支持フレーム503の上面で、且つ引掛け切欠部518の側方には、支持軸回避穴374bを形成する。
【0221】
これにより、薬剤供給装置500を設けるときに鎮圧荷重が不足していても、鎮圧ウェイト374を装着して適切な鎮圧荷重を確保することができるので、植え付けられた苗の周囲の土が適切に均され、苗が倒れることや、苗の根部が外気に晒されて生育不良が生じることが防止される。
【0222】
前記鎮圧荷重スプリング517の付勢力は、強過ぎると覆土鎮圧輪371,371が圃場面から浮いた状態となり、鎮圧性能が低下することになるので、薬剤供給装置500の重量と略同程度とすることが望ましい。しかしながら、薬剤ホッパ508内に薬剤を投入することで重量が増加し、作業時には減少していくので、薬剤供給装置500の重量よりも1kg程度付勢力が強いものとしてもよい。
【0223】
上記構成により、鎮圧フレーム370が圃場の凹凸に対して適切に回動できるので、植え付けられた苗の周囲の土を適切に均し固め、苗の植付姿勢を安定させることができる。
【0224】
また、左右の植付ホッパ20a,20bの条間調節に合わせて左右の鎮圧アーム370,370を移動させた際、鎮圧荷重スプリング517の上端部側を装着する吊下げ取付孔516を変更するだけで対応できるので、条間調節が容易に行える。
【0225】
上記の吊下げ支持フレーム512の左右幅では、左右の植付ホッパ20a,20b及び左右の鎮圧アーム370,370の条間調節範囲に対して、十分な数、または範囲の吊下げ取付孔516…を形成し得ないことがある。
【0226】
左右の条間調節範囲に鎮圧荷重スプリング517を対応させるべく、側面視でL字形状の延長プレート519に、左右方向に亘って所定間隔毎に形成する丸穴、あるいは左右方向の所定範囲に亘って形成する長孔として延長取付孔520…を形成する。
【0227】
そして、該延長プレート519を吊下げ支持フレーム512の側方の上部または下部に沿わせて配置し、鎮圧荷重スプリング517を任意の位置の延長取付孔520に装着すると共に、鎮圧荷重スプリング517を装着しない延長取付孔520と任意の位置の吊下げ取付孔516の位置を合わせて固定部材を設けて、延長プレート519を吊下げ支持フレーム512に装着する。
【0228】
これにより、条間調節範囲に合わせて略直線状に鎮圧荷重スプリング517を装着することができるので、鎮圧荷重スプリング517の付勢力で薬剤支持フレーム503を適切に上方に付勢し、鎮圧アーム370を圃場の凹凸に合わせて適切に上下動させることができる。
【0229】
したがって、苗の植付姿勢や植付深さが安定し、苗の生育を安定させられると共に、収穫作物の収量や品質の低下が防止される。
【0230】
上記の薬剤供給装置500は、側面視において、植付ホッパ20a,20bよりも機体後側で、且つ操縦ハンドル404よりも機体前側に配置する。
【0231】
これにより、植付ホッパ20a,20bの昇降軌跡に干渉することが無く、また、移動時に作業者が操縦ハンドル404を持って走行操作する際にも足が薬剤供給装置500に接触しにくい配置とすることができ、作業能率が向上する。
【0232】
上記の薬剤供給装置500の繰出し装置507の駆動力は、例えば電動モータ等を設けると簡潔な構成となる。しかしながら、薬剤は苗の植付位置付近にのみ供給される必要があり、植付ホッパ20a,20bが各々苗を植え付けるタイミングに合わせて電動モータを間欠駆動させる必要がある。これだけでも電動モータの制御ユニットが必要になるが、植付ホッパ20a,20bが苗を植え付けるタイミングは、苗の植付位置の前後間隔、即ち株間の設定や走行車体40の車速設定により変化するので、より複雑な制御に対応する制御ユニットが必要となり、制御系の複雑化によるメンテナンス性の低下や、部品数の増加によるコストアップといった問題が生じる。
【0233】
上記の複雑な設計を行わずに植付タイミングに合わせる構成を説明する。
図21(a)(b)、及び
図22(a)(b)に示すとおり、前記上下動機構21を構成する、上側リンクアーム21aの昇降及び進退動作に連動して上下回動可能に装着される下側リンクアーム21bに、繰出装置507内に内装される繰出ロール(図示省略)を所定量作動させる繰出ケーブル522の一側端部を連結する。該下側リンクアーム21bには、下側リンクアーム21bと略同じ前後長のケーブル取付アーム523が設けられ、該ケーブル取付アーム523には機体外側に向かって突出するワイヤ受けピン524を装着する。該ワイヤ受けピン524に、繰出ケーブル522の一側端部を装着する。
【0234】
なお、繰出ケーブル522の一側端部には上下方向の繰出長孔522aを形成し、下側リンクアーム21bの下方回動量が一定角度を超えると繰出ケーブル522が引っ張られ始め、苗の植付が行われる、あるいは植付が行われる直前または直後に薬剤が薬剤ノズル510から放出される構成とする。
【0235】
前記ケーブル取付アーム523は、前端部付近に前側取付孔523aを形成すると共に、後端部付近に後側取付孔523bを形成するが、前側取付孔523aと後側取付孔523bのどちらか一方は他方よりも大径に形成する。そして、下側リンクアーム21bの基部側及び端部側の支点軸に延設ピン525を各々装着し、これら延設ピン525を前側取付孔523aと後側取付孔523bに各々差し込む。該延設ピン525の径は、前側取付孔523aと後側取付孔523bの小径である側と同じであり、大径である側には多少の遊びが生じる構成である。
【0236】
なお、支点軸は各々螺子軸とし、延設ピン525のうち支点軸に取り付ける側は、例えば六角ナットとすると、着脱作業が容易に行える構成となる。
【0237】
これにより、メンテナンス等により上下動機構21の位置調節に僅かな差異が生じたときや、繰出装置507の作動による負荷が大きくなっても、ケーブル取付アーム523が回動して負荷を逃がすことができるので、メカロックが生じにくく、薬剤の供給タイミングが乱れることが防止される。
【0238】
前記苗供給装置43を構成するテーブルフレーム43aの下部側にケーブルステー522aを設け、該ケーブルステー522aに前記繰出ケーブル522のケーブルアウタを装着し、このケーブルステー522aを経由して繰出装置507の機体後側に設けられる繰出アーム526に連結される。
【0239】
また、前記上側リンクアーム21aと下側リンクアーム21bの後部側を支持する後側リンク支持プレート21cの機体上部側と、前記テーブルフレーム43aの下部側との上下間には、上下動機構21に上方への付勢力を加えて上昇時の負荷を軽減すると共に、下降時のブレーキをかける昇降補助スプリング527を設ける。
【0240】
前記繰出アーム526は、繰出装置507に内装される繰出ロールに設ける回転軸528の後端部に連結され、繰出アーム526の上部に繰出ケーブル522の他側端部を連結する。
【0241】
これにより、下側リンクアーム21bが所定角度になるまで下降すると繰出ケーブル522が引っ張られ始め、植付ホッパ20a(20b)が土中に入り込んで苗を植え付けるタイミング、あるいは植え付ける直前または直後に繰出アーム526が回動して繰出装置507の繰出ロールを回動させ、薬剤ホッパ508から流下して載置されていた薬剤を供給ホース509に流下させ、薬剤ノズル510を通じて植え付けられた苗の近傍に薬剤を供給することができる。
【0242】
上記の構成では、株間設定及び走行速度に連動して植付昇降動作を行う上下動機構21を介して繰出装置507の繰出動作を行わせるので、苗の植え付けタイミングに合わせて薬剤を供給することができる。したがって、薬剤が苗の植付位置から大きく離れた位置に供給することが防止され、苗に薬剤の効能を十分に作用させることができる。
【0243】
上記の薬剤供給装置500は、圃場との距離を短くでき、薬剤の供給位置がずれてしまうことや、薬剤の供給タイミングが乱れることを防止しやすいが、鎮圧アーム370の上下回動を安定させるべく、追加構成が必要である。
【0244】
圃場までの距離が多少長くなりながらも、安定した薬剤の供給を可能とする構成例を以下に説明する。
【0245】
図23、及び
図24に示すとおり、ハンドルフレーム402の連結ステー402aに、平面視でコの字形状の取付ステー551を装着し、該取付ステー551に薬剤支持フレーム553の基部を装着する。該取付ステー551は左右中央部に連結ステー402aとの連結突部551aを形成し、装着時に補強フレーム152はこの上方を通過する構成とする。また、連結突部551aの左右には空間部を各々形成し、これらの空間部の左右両外側には、機体前側に屈曲する支持突出部551bが各々形成される。
【0246】
なお、連結突部551aと左右の支持突出部551bの間の空間部は、前記操縦パネル47aに設けるレバー類、及びレバー類に接続されるケーブル類を通過させるべく形成される。これにより、レバーやケーブルをできるだけ真っすぐに配置できると共に、ケーブル類のバラつきを防止することもできる。
【0247】
前記左右の支持突出部551bには取付孔が各々形成されており、この取付孔と薬剤支持フレーム553の取付部分に形成される取付孔の位置を合わせてボルト、ナット等の固定部材で連結する。該薬剤支持フレーム553は、機体左右方向を長手方向とする支持シャフト554に、前記支持突出部551bへの取付孔を有する左右の取付アーム555,555を左右方向に間隔を空けて配置すると共に、支持シャフト554の左右両側に側面視でL字形状の支持プレート556,556を各々装着して構成する。
【0248】
前記左右の取付アーム555,555は平面視でL字形状とし、支持突出部551bの外側面と正面に接する形状とすることで、取付強度を向上させる構成とする。また、左右の支持プレート556,556の上面には、固定部材の取付孔を左右方向に複数形成している。
【0249】
移植機の左右の植付ホッパ20a,20b、及び鎮圧アーム370,370は、苗同士の左右間隔、所謂条間を変更可能に装着されている。一つの薬剤供給装置500が一つの植付条に薬剤を供給するものであれば、薬剤供給装置500についても条間調節の範囲に合わせて左右方向に移動可能に装着する必要がある。
【0250】
前記左右の支持プレート556,556には、側面視でL字形状で、上面側に左右方向の取付長孔557aが形成された調節プレート557を各々設け、該調節プレート557を左右方向にスライドさせ、支持プレート556の取付孔と取付長孔557aに亘って機体上側から固定部材を通すことで、薬剤供給装置500の左右位置が変更される構成とする。
【0251】
前記調節プレート557の後部面には、機体後方に突出する左右の取付ロッド558,558を設け、該左右の取付ロッド558,558にベースプレート559の取付孔を差し込んで装着する。該ベースプレート559の上部には薬剤を繰り出す繰出装置507と、薬剤を貯留する薬剤ホッパ508を設け、ベースプレート559の下部には薬剤を流下案内する供給ホース509と、供給ホース509の下端部に設けて苗の付近に薬剤を供給する薬剤ノズル510を設ける。
【0252】
前記繰出装置507は、内装する繰出ロール(図示省略)を所定量回転させて薬剤を繰り出させる繰出駆動アーム560を機体外側に装着する。該繰出駆動アーム560は機体前側上方に向かう傾斜姿勢で配置される。
【0253】
該繰出駆動アーム560は、植付ホッパ20a(20b)が苗を圃場に植え付けるタイミング、あるいはその直前または直後のタイミングで回動して繰出ロールを回転させ、植え付けられた苗の付近に薬剤が供給される構成とすることが望ましい。これを実現するにあたり、上下動機構21を構成する下側リンクアーム21bの上下回動に繰出駆動アーム560が連動して回動する構成とすると、植付ホッパ20a,20bが植え付ける苗同士の前後間隔、所謂株間の設定や走行車体40の走行速度に対応した薬剤の供給間隔とすることができる。
【0254】
図21(a)(b)、及び
図22(a)(b)に示すとおり、該下側リンクアーム21bには、下側リンクアーム21bと略同じ前後長のケーブル取付アーム523が設けられ、該ケーブル取付アーム523には機体外側に向かって突出するワイヤ受けピン524を装着する。該ワイヤ受けピン524に、繰出ケーブル522の一側端部を装着する。
【0255】
なお、繰出ケーブル522の一側端部には上下方向の繰出長孔522aを形成し、下側リンクアーム21bの下方回動量が一定角度を超えると繰出ケーブル522が引っ張られ始め、苗の植付が行われる、あるいは植付が行われる直前または直後に薬剤が薬剤ノズル510から放出される構成とする。
【0256】
前記ケーブル取付アーム523は、前端部付近に前側取付孔523aを形成すると共に、後端部付近に後側取付孔523bを形成するが、前側取付孔523aと後側取付孔523bのどちらか一方は他方よりも大径に形成する。そして、下側リンクアーム21bの基部側及び端部側の支点軸に延設ピン525を各々装着し、これら延設ピン525を前側取付孔523aと後側取付孔523bに各々差し込む。該延設ピン525の径は、前側取付孔523aと後側取付孔523bの小径である側と同じであり、大径である側には多少の遊びが生じる構成である。
【0257】
なお、支点軸は各々螺子軸とし、延設ピン525のうち支点軸に取り付ける側は、例えば六角ナットとすると、着脱作業が容易に行える構成となる。
【0258】
これにより、メンテナンス等により上下動機構21の位置調節に僅かな差異が生じたときや、繰出装置507の作動による負荷が大きくなっても、ケーブル取付アーム523が回動して負荷を逃がすことができるので、メカロックが生じにくく、薬剤の供給タイミングが乱れることが防止される。
【0259】
図25から
図28に示すとおり、前記繰出ケーブル522は、前記調節プレート557の下部に設けるケーブル支持ステー561にケーブルアウタを装着し、このケーブル支持ステー561を経由して繰出駆動アーム560に連結される。但し、直接繰出駆動アーム560と連結すると、特定の株間及び走行速度以外の繰出ケーブル522の引きストロークに対応できないので、繰出ケーブル522と繰出駆動アーム560の間には、次の構成を加える。
【0260】
前記繰出駆動アーム560には、側面視でへの字形状の繰出連結アーム562の一側端部を装着し、該繰出連結アーム562の他側端部には、スプリング受けワッシャ563を設ける。該スプリング受けワッシャ563の左右一側には受けピン563aが設けられ、該受けピン563aにストローク調節スプリング564の上端部側を引っ掛けると共に、該ストローク調節スプリング564の下端部側を繰出ケーブル522に引っ掛ける構成とする。
【0261】
下側リンクアーム21bから機体後側に向けて配置する繰出ケーブル522は、上下動機構21や植付ホッパ20a,20bの動作に干渉しない位置に配置する必要がある。
【0262】
図27及び
図28に示すとおり、苗供給装置43のテーブルフレーム43aに、ケーブル中継ステー565を設ける。該ケーブル中継ステー565は、平面視J字形状の中継プレート565aの一側端部にケーブルアウタ受け溝565bを形成し、他側端部に前側取付アーム565cと後側取付アーム565dを前後間隔を空けて配置して構成する。該前側取付アーム565cは、中継プレート565aとの連結部で上方に立ち上がり、立ち上がり上部から機体内側で且つ上方に向かう形状とし、後側取付アーム565dは、中継プレート565aとの連結部で機体内側で且つ上方に向かい、機体内側端部が上方に立ち上がる形状とする。
【0263】
前記中継プレート565aのケーブルアウタ受け溝565bには繰出ケーブル522の中途部に設けるケーブルアウタを連結し、中継プレート565aを通過した繰出ケーブル522は前記補強フレーム152に沿わせて薬剤支持フレーム553に向かわせ、前記ケーブル支持ステー561に装着する構成とする。
【0264】
これにより、繰出ケーブル522が途中で弛んで上下動機構21や植付ホッパ20a,20bの植付昇降軌跡に干渉することを防止できるので、苗を一株ずつ適切に植えつつ、薬剤を供給することができ、苗の生育が安定する。
【0265】
上記構成では、薬剤供給装置500は植付ホッパ20a,20bと操縦ハンドル404の前後間に位置するので、供給ホース509をほとんど曲げることなく薬剤ノズル510を植え付けられる苗の付近に位置させることができ、供給ホース509内で薬剤の移動が停滞して薬剤の供給量が不足することや、苗から離れた位置に薬剤が供給されることが防止される。
【0266】
また、薬剤供給装置500を機体の高い位置、具体的にはハンドルフレーム404の上部位置に配置できるので、着脱作業や左右位置の調節作業、薬剤の投入作業を立ったまま行いやすく、作業能率の向上や作業者の労力の軽減が図られる。
【0267】
上記の構成では、薬剤ノズル510が固定されておらず、また供給ホース509も固定されていないので、機体の振動や風等の影響で供給ホース509が揺れると、薬剤の供給位置が乱れるおそれがある。
【0268】
これを防止すべく、前記ケーブル支持ステー561の上下間に固定部材の取付孔を形成し、この取付孔に合わせてノズルステー567を固定部材を介して装着する。該ノズルステー567は、正面視で機体下側が機体内側に向かって屈曲するへの字形状のステーロッド567aと、該ステーロッド567aの上端部に設ける取付孔部が形成された取付プレート567bと、該ステーロッド567aの下端部にノズル取付プレート567cを設けて構成する。
【0269】
該ノズル取付プレート567cには、機体内側と外側の両方にナットを設けるダブルナット方式とし、薬剤ノズル510の外周に突出する取付螺子軸510aを差し込む際に前後傾斜角度を調節可能な構成とする。
【0270】
これにより、供給ホース509は繰出装置507と薬剤ノズル510により支持されるので、機体の振動や風等の影響で揺れても薬剤の供給位置がずれることが防止でき、苗に薬剤を確実に作用させることができる。
【0271】
また、供給ホース509が捻れることを防止できるので、薬剤を設定どおりに薬剤ノズル510に送ることができ、薬剤の不足による生育への悪影響が防止される。
【0272】
また、薬剤ノズル510の前後傾斜角度を変更できるので、薬剤の供給位置を苗の植付位置に合わせて調節できるので、薬剤の効果を確実に作用させることができる。さらに、直接苗に接触すると薬害が生じる薬剤を用いる際には、苗に薬剤が触れることが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明に係る移植機は、薬剤の供給タイミングを苗の植付タイミングに合わせることで薬剤を適切な位置に供給させることに適用でき、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0274】
20a 植付ホッパ(植付装置)
20b 植付ホッパ(植付装置)
21 上下動機構
21a 上側リンクアーム
21b 下側リンクアーム
37 覆土鎮圧輪(鎮圧装置)
40 走行車体
402 ハンドルフレーム
500 薬剤供給装置
509 供給ホース
510 薬剤ノズル(供給ノズル)
522 繰出ケーブル(連動部材)
522a 繰出長孔(長孔)
523 ケーブル取付アーム(揺動取付部材)
523a 前側取付孔(基部側取付孔)
523b 後側取付孔(端部側取付孔)
524 ワイヤ受けピン(受け突起)
553 薬剤支持フレーム(支持フレーム)
557 調節プレート
561 ケーブル支持ステー(支持ステー)
567 ノズルステー(ノズル支持体)