(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】アルミナの保護液、保護方法及びこれを用いたアルミナ層を有する半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/314 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H01L21/314 A
(21)【出願番号】P 2020503539
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007409
(87)【国際公開番号】W WO2019167971
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2018037144
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】尾家 俊行
(72)【発明者】
【氏名】プトラ プリアンガ プルダナ
(72)【発明者】
【氏名】堀田 明伸
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-284487(JP,A)
【文献】特開2014-090156(JP,A)
【文献】特開平08-181048(JP,A)
【文献】特開2003-195517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/314
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属化合物を0.0001~
10質量%含有するアルミナ保護液であって、前記アルカリ土類金属がベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される1以上であ
り、アルミナ保護液中の水の含有量が90質量%以上である、アルミナ保護液。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属化合物が、
硝酸ベリリウム、酢酸ベリリウム、塩化ベリリウム、水酸化ベリリウム、亜硫酸ベリリウム、塩素酸ベリリウム、過塩素酸ベリリウム、過酸化ベリリウム、クロム酸ベリリウム、酸化ベリリウム、シアン化ベリリウム、臭化ベリリウム、炭酸ベリリウム、メタホウ酸ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、テトラフルオロホウ酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、硫化ベリリウム、及び水酸化ベリリウムと酸を反応させた塩;
硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、塩素酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、過酸化マグネシウム、クロム酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シアン化マグネシウム、臭化マグネシウム、炭酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、テトラフルオロホウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムと酸を反応させた塩;
硝酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、亜硫酸ストロンチウム、塩素酸ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム、過酸化ストロンチウム、クロム酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、シアン化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、メタホウ酸ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、テトラフルオロホウ酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硫化ストロンチウム、及び水酸化ストロンチウムと酸を反応させた塩;並びに
硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム、水酸化バリウム、亜硫酸バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、過酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化バリウム、シアン化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ヨウ化バリウム、テトラフルオロホウ酸バリウム、硫酸バリウム、硫化バリウム、及び水酸化バリウムと酸を反応させた塩
からなる群より選択される1以上である、請求項1に記載のアルミナ保護液。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属がバリウムである、請求項1又は2に記載のアルミナ保護液。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属化合物が硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム及び水酸化バリウムからなる群より選択される1以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミナ保護液。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属化合物を1質量%超含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミナ保護液。
【請求項6】
過酸化水素の含有量が0.002質量%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミナ保護液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のアルミナ保護液を用いてアルミナを含有するアルミナ層の表面の少なくとも一部を処理する工程を含む、アルミナの保護方法。
【請求項8】
請求項7に記載のアルミナの保護方法を用いてアルミナ層に含有されるアルミナを保護する工程を含む、アルミナ層を有する半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造工程においてアルミナの腐食を抑制するための保護液、アルミナの保護方法、及びこれを用いたアルミナ層を有する半導体基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の洗浄液による洗浄工程では、ドライエッチング残渣、レジスト、ハードマスクなどの除去が行われる。一般的に、この洗浄工程においては除去対象以外の材質へ腐食を与えないことが求められる。
近年、デザインルールの微細化に伴い、トランジスタのゲートの構成が酸化シリコンと多結晶シリコンの組み合わせから高誘電率材料と金属の組み合わせに変更されるようになってきた。この高誘電率材料として、アルミナが用いられる場合がある。
また、ドライエッチングでビアを形成する際、フッ素系のガスが選択されるが、フッ素系のガスへの耐性が高い点からエッチストップ層としてアルミナが選択される場合がある(非特許文献1)。
さらに、ハードマスクの材質としてアルミナが用いられる場合もある(特許文献1)。
以上のように、半導体集積回路及びその製造工程では、アルミナが使用されることがあるが、洗浄工程において一般的に使用されるフッ素化合物や酸化剤、アルカリなどを含む洗浄液がアルミナと接液する場合、アルミナを激しく腐食してしまう問題がある。そのため、これらの洗浄液が使用される洗浄工程において、アルミナへの腐食を抑制する方法が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】16th MME workshop, Goeteborg, Sweden, 2005 “Etch stop materials for release by vapor HF etching”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アルミナの保護液、保護方法、およびこれを用いたアルミナ層を有する半導体基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により本課題を解決できることを見出した。本発明は以下の通りである。
【0007】
[1] アルカリ土類金属化合物を0.0001~20質量%を含有するアルミナ保護液(保護膜形成液)であって、前記アルカリ土類金属がベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される1以上である、アルミナ保護液。
[2] 前記アルカリ土類金属化合物が、
硝酸ベリリウム、酢酸ベリリウム、塩化ベリリウム、水酸化ベリリウム、亜硫酸ベリリウム、塩素酸ベリリウム、過塩素酸ベリリウム、過酸化ベリリウム、クロム酸ベリリウム、酸化ベリリウム、シアン化ベリリウム、臭化ベリリウム、炭酸ベリリウム、メタホウ酸ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、テトラフルオロホウ酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、硫化ベリリウム、及び水酸化ベリリウムと酸を反応させた塩;
硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、塩素酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、過酸化マグネシウム、クロム酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シアン化マグネシウム、臭化マグネシウム、炭酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、テトラフルオロホウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムと酸を反応させた塩;
硝酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、亜硫酸ストロンチウム、塩素酸ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム、過酸化ストロンチウム、クロム酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、シアン化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、メタホウ酸ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、テトラフルオロホウ酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硫化ストロンチウム、及び水酸化ストロンチウムと酸を反応させた塩;並びに
硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム、水酸化バリウム、亜硫酸バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、過酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化バリウム、シアン化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ヨウ化バリウム、テトラフルオロホウ酸バリウム、硫酸バリウム、硫化バリウム、及び水酸化バリウムと酸を反応させた塩
からなる群より選択される1以上である、[1]に記載のアルミナ保護液。
[3] 前記アルカリ土類金属がバリウムである、[1]又は[2]に記載のアルミナ保護液。
[4] 前記アルカリ土類金属化合物が硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム及び水酸化バリウムからなる群より選択される1以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のアルミナ保護液。
[5] 前記アルカリ土類金属化合物を1質量%超含有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載のアルミナ保護液。
[6] 過酸化水素の含有量が0.002質量%未満である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のアルミナ保護液。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載のアルミナ保護液を用いたアルミナの保護方法。本発明のアルミナの保護方法は、[1]~[6]のいずれか一項に記載のアルミナ保護液を用いてアルミナを含有するアルミナ層の表面の少なくとも一部を処理する工程を含む。
[8] [7]に記載のアルミナの保護方法を用いた基板の製造方法。本発明の基板の製造方法は、アルミナ層を有する半導体基板の製造方法であって、[7]に記載のアルミナの保護方法を用いてアルミナ層に含有されるアルミナを保護する工程を含む。
本発明の好ましい態様によれば、アルミナ保護液でアルミナ層の表面の少なくとも一部を処理することで、アルミナ層の表面の少なくとも一部に保護膜が形成され、アルミナ層に含有されるアルミナを洗浄液などの薬液等による腐食から保護することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、半導体回路の製造工程において、アルミナの腐食を抑制することが可能となり、高精度、高品質の半導体基板を歩留まりよく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ビアの底がアルミナの場合における、ドライエッチング残渣除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
【
図2】ハードマスクがアルミナの場合における、ドライエッチング残渣除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
【
図3】ビアの底がアルミナの場合における、ハードマスク(アルミナ系ハードマスクを除く)除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
【
図4】ビアの底がアルミナの場合における、レジスト除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
【
図5】ハードマスクがアルミナの場合における、レジスト除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるアルミナの保護方法では、アルカリ土類金属化合物を含むアルミナ保護液が使用される。以下、アルミナ保護液、保護方法及びこれを用いたアルミナ層を有する半導体基板の製造方法について詳細に説明する。
【0011】
[アルミナ保護液]
(アルカリ土類金属化合物)
本発明で使用されるアルカリ土類金属化合物は、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群より選択される1以上の金属を含有する無機物である。これらはアルミナ層の表面の少なくとも一部に保護膜を形成する効果があり、例えば保護膜形成後の洗浄工程における洗浄液によるアルミナへの腐食を抑制できる。同属のカルシウムは、アルカリへの防食性能が十分ではなく、またラジウムは高価であり、かつ化合物として不安定な場合が多く使用に適さない。
アルカリ土類金属化合物の具体例としては、
硝酸ベリリウム、酢酸ベリリウム、塩化ベリリウム、水酸化ベリリウム、亜硫酸ベリリウム、塩素酸ベリリウム、過塩素酸ベリリウム、過酸化ベリリウム、クロム酸ベリリウム、酸化ベリリウム、シアン化ベリリウム、臭化ベリリウム、炭酸ベリリウム、メタホウ酸ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、テトラフルオロホウ酸ベリリウム、硫酸ベリリウム、硫化ベリリウム、及び水酸化ベリリウムと酸を反応させた塩;
硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、塩素酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、過酸化マグネシウム、クロム酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シアン化マグネシウム、臭化マグネシウム、炭酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、テトラフルオロホウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムと酸を反応させた塩;
硝酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、亜硫酸ストロンチウム、塩素酸ストロンチウム、過塩素酸ストロンチウム、過酸化ストロンチウム、クロム酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、シアン化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、メタホウ酸ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、テトラフルオロホウ酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硫化ストロンチウム、及び水酸化ストロンチウムと酸を反応させた塩;
硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム、水酸化バリウム、亜硫酸バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、過酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化バリウム、シアン化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ヨウ化バリウム、テトラフルオロホウ酸バリウム、硫酸バリウム、硫化バリウム、及び水酸化バリウムと酸を反応させた塩が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。
これらの中でバリウム化合物、すなわち、硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム、水酸化バリウム、亜硫酸バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、過酸化バリウム、クロム酸バリウム、酸化バリウム、シアン化バリウム、臭化バリウム、炭酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ヨウ化バリウム、テトラフルオロホウ酸バリウム、硫酸バリウム、硫化バリウム、及び水酸化バリウムと酸を反応させた塩が、アルミナの腐食抑制効果が高いため、好ましい。さらに、硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウム及び水酸化バリウムが高い水溶性があり、入手が容易なため特に好ましい。
本発明のアルミナ保護液中のアルカリ土類金属化合物の濃度(含有量)は0.0001~20質量%、好ましくは0.00025~17.5質量%、さらに好ましくは0.0005~15質量%、特に好ましくは0.001~10質量%、なお好ましくは1質量%超、さらになお好ましくは1.5~10質量%である。この範囲にあることでアルミナ表面の少なくとも一部に保護膜を形成でき、アルミナへのダメージを効果的に抑制できる。
【0012】
(その他の成分)
本発明のアルミナ保護液には、所望により本発明の目的を損なわない範囲で従来から半導体用組成物に使用されている成分を配合してもよい。
例えば、添加剤として、アルカリ、酸、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、酸化剤、還元剤、金属防食剤及び水溶性有機溶剤などを添加することができる。
【0013】
(水)
本発明のアルミナ保護液の残部は水である。本発明に使用できる水としては、特に限定されないが、蒸留、イオン交換処理、フイルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーテイクルなどが除去されたものが好ましく、純水がより好ましく、超純水が特に好ましい。
アルミナ保護液中の水の濃度(含有量)は、70~100質量%が好ましく、より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは95~100質量%、特に好ましくは98~100質量%である。
【0014】
(アルミナ保護液の調製方法)
本発明のアルミナ保護液は、アルカリ土類金属化合物及び必要に応じてその他の成分に水(好ましくは超純水)を加えて均一になるまで攪拌することで調製される。
なお、本発明のアルミナ保護液は、過酸化水素を実質的に含まないことが好ましく、過酸化水素のアルミナ保護液中の濃度(含有量)は0.002質量%未満とすることがより好ましい。
【0015】
(アルミナ保護液の使用方法)
本発明のアルミナ保護液を使用する温度は通常20~70℃、好ましくは30~60℃、特に好ましくは40~55℃である。アルミナ保護液の使用条件は、使用される半導体基板により適宜選択すればよい。
本発明のアルミナ保護液を使用する時間は通常0.2~60分である。アルミナ保護液の使用条件は、使用される半導体基板により適宜選択すればよい。
このような条件でアルミナ保護液を使用することで、半導体基板が有するアルミナ層の表面の少なくとも一部に好適に保護膜を形成し、アルミナ層に含有されるアルミナを保護することができる。なお、本発明において保護膜の厚みは特に制限されない。本発明の好ましい態様によれば、アルミナ層の表面の少なくとも一部を本発明のアルミナ保護液で処理することでアルミナ層に含有されるアルミナを洗浄液などの薬液等による腐食から保護することができる。
【0016】
(洗浄液への添加)
本発明で使用されるアルミナ保護液は、半導体基板の洗浄工程で使用される洗浄液に添加することもでき、アルミナを保護しつつ洗浄を行うことも出来る。このような場合は、アルカリ土類金属化合物としてバリウムを含有する無機物が含有されていることが好ましく、好適に半導体基板の洗浄を実施でき、洗浄液によるアルミナへの腐食を抑制できる。
【0017】
[半導体基板]
本発明が好適に使用できる半導体基板としては、
シリコン、非晶質シリコン、ポリシリコン、ガラスなどの基板材料;
酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン及びこれらの誘導体などの絶縁材料;
コバルト、コバルト合金、タングステン、チタン-タングステンなどの材料;
ガリウム-砒素、ガリウム-リン、インジウム-リン、インジウム-ガリウム-砒素、インジウム-アルミニウム-砒素などの化合物半導体及びクロム酸化物などの酸化物半導体、特に低誘電率層間絶縁膜を使用している基板であり、いずれの材料を有する半導体基板も、アルミナを含有するアルミナ層を有する。具体的には、例えば、エッチストップ層及びハードマスクなどとしてアルミナ層を有する。
アルミナ層におけるアルミナの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0018】
[アルミナの保護方法]
本発明のアルミナの保護方法は、本発明のアルミナ保護液でアルミナ層の表面の少なくとも一部を処理する工程を含む。例えば、本発明のアルミナ保護液をアルミナ層の表面の少なくとも一部と接触させることで処理する。
【0019】
本発明のアルミナ保護液の使用温度及び使用時間は、前記「アルミナ保護液の使用方法」で述べたとおりである。アルミナ層の表面に本発明のアルミナ保護液を接触させる方法は特に制限されなく、例えば滴下(枚葉スピン処理)またはスプレーなどの形式によりアルミナ層の表面に本発明のアルミナ保護液を接触させる方法、またはアルミナ層の表面を本発明のアルミナ保護液に浸漬させる方法などを採用することができる。本発明においては、いずれの方法を採用してもよい。
【0020】
本発明のアルミナの保護方法を用いることにより、アルミナ層に含有されるアルミナを洗浄液などの薬液等による腐食から保護することができ、アルミナの腐食を抑制することができる。
【0021】
[アルミナ層を有する半導体基板の製造方法]
本発明の半導体基板の製造方法は、本発明のアルミナの保護方法を用いて半導体基板が有するアルミナ層に含有されるアルミナを保護する工程を含む。これによりアルミナ層に含有されるアルミナを洗浄液などの薬液等による腐食から保護することができ、アルミナの腐食を抑制し、電気特性に影響を与えることなく、半導体基板を製造することができる。
【0022】
本発明の組成物の使用温度及び使用時間は、前記「アルミナ保護液の使用方法」で述べたとおりである。半導体基板が有するアルミナ層の表面に本発明の組成物を接触させる方法についても、前記「アルミナの保護方法」で述べたとおりである。
【0023】
図1から5は、アルミナ層を有する半導体基板の断面構造の一例を示したものである。
【0024】
図1は、ビアの底がアルミナの場合における、ドライエッチング残渣除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
図1では、ドライエッチングにより低誘電率層間絶縁膜6にビアが形成されており、ビアの底はアルミナ1である。ビア及び低誘電率層間絶縁膜6の表面にドライエッチング残渣2が付着している。
【0025】
図2は、ハードマスクがアルミナの場合における、ドライエッチング残渣除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
図2では、低誘電率層間絶縁膜6上にアルミナ系ハードマスク3が積層されており、これにドライエッチングによりビアが形成されている。ビア及びアルミナ系ハードマスク3の表面にドライエッチング残渣2が付着している。
【0026】
図3は、ビアの底がアルミナの場合における、ハードマスク(アルミナ系ハードマスクを除く)除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
図3では、低誘電率層間絶縁膜6上にハードマスク(アルミナ系ハードマスクを除く)4が積層されており、これにビアが形成されている。ビアの底はアルミナ1である。
【0027】
図4は、ビアの底がアルミナの場合における、レジスト除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
図4では、低誘電率層間絶縁膜6上にレジスト5が積層されており、これにビアが形成されている。ビアの底はアルミナ1である。
【0028】
図5は、ハードマスクがアルミナの場合における、レジスト除去前の半導体基板における、低誘電率層間絶縁膜を有する半導体基板の一形態における断面図の模式図である。
図5では、低誘電率層間絶縁膜6上に、アルミナ系ハードマスク3及びレジスト5がこの順に積層されており、これにビアが形成されている。ビアの底は低誘電率層間絶縁膜6である。
【0029】
本発明の半導体基板の製造方法では、このような半導体基板が有するアルミナ層が表面に露出した様々な段階で、本発明のアルミナ保護液を使用してアルミナ層の表面を保護することにより、その後の工程においてアルミナ層に含有されるアルミナを洗浄液などの薬液等による腐食から保護することができ、アルミナの腐食を抑制することができる。本発明の好ましい態様によれば、電気特性に影響を与えることなく、高精度、高品質の半導体基板を歩留まりよく製造できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の効果を奏する限りにおいて実施形態を適宜変更することができる。
尚、特に指定しない限り%は質量%を意味する。
【0031】
<評価用膜付きウェハ>:アルミナへのダメージ評価用
アルミナが製膜された12インチの膜付きウェハ(アルミナの膜厚300Å)を、1cm×1cmにカットしたチップ片を用いた。
【0032】
[評価方法]
<E.R.(エッチングレート)>
アルミナ膜付きウェハを保護液による処理、及び洗浄液による処理を50℃で実施し、一連の処理の前後の膜厚差を洗浄液による処理時間で除することでE.R.を算出した。アルミナ膜付きウェハの膜厚は、n&kテクノロジー社製光学式膜厚計n&k1280を用いて測定した。
【0033】
[実施例1~13及び比較例1~7]
実施例1~13と比較例1では、表1に記した保護液にアルミナ膜付きウェハを50℃で1分間浸漬し、次いで、洗浄液に50℃で0.5分浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。
処理前後のアルミナ膜付きウェハの膜厚差を洗浄液の浸漬時間で除することで、E.R.を算出した。
比較例2~7では、保護液による浸漬処理を省き、洗浄液に50℃で0.5分浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。E.R.は上記と同様に算出した。
比較例2~7と比較して、実施例1~13では、保護液による浸漬処理を加えたことで、洗浄液によるアルミナへの腐食を抑制できていることがわかる。
比較例1では、カルシウムを含有する無機物を含む水溶液による浸漬を行っても、その後の洗浄液でアルミナへの腐食を抑制できていないことがわかる。
【0034】
【0035】
[参考例1~6]
参考例1~6では、表2に記したアルカリ土類金属化合物を含む洗浄液にアルミナ膜付きウェハを50℃で5分浸漬し、その後、超純水によるリンス、乾燥窒素ガス噴射による乾燥を行った。処理前後のアルミナ膜付きウェハの膜厚差を洗浄液の浸漬時間で除することでE.R.を算出した。参考例3~6と比較して、参考例1~2では、バリウムを含有する無機物を洗浄液に添加することで、洗浄液によるアルミナへの腐食を抑制できていることがわかる。
【0036】
【符号の説明】
【0037】
1:アルミナ
2:ドライエッチング残渣
3:アルミナ系ハードマスク
4:ハードマスク(アルミナ系以外)
5:レジスト
6:低誘電率層間絶縁膜