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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】車両用計器
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221122BHJP
   G01D 11/30 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
G01D11/30 V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020523149
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2019022361
(87)【国際公開番号】W WO2019235534
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018110109
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-32315(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0241949(US,A1)
【文献】特開2011-111056(JP,A)
【文献】特開2013-79075(JP,A)
【文献】特開2010-145182(JP,A)
【文献】特開2007-3630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G01D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字板と、
前記文字板の背面側に設けられるものであって、その背面側に音波を発生する発音体が実装されるとともに前記発音体の領域外に貫通孔が形成される回路基板と、
前記回路基板の背面側に設けられるものであって、前記発音体を収容する発音体収容部と、前記貫通孔と対応する位置に設けられる空洞部と、前記発音体収容部及び前記空洞部を連通する音搬送経路とを有するケースと備え、
前記音搬送経路は、前記回路基板の延在する方向に沿って設けられるように、前記発音体収容部から前記空洞部へ向かうに従って次第に拡径するホーン形状である
ことを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記空洞部は、前記発音体収容部と隣接するように設けられ、
前記音搬送経路は、数回折り返すように蛇行したバックロードホーン形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記空洞部を構成する壁部の一部は、前記発音体収容部を構成する壁部として兼用される
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用計器。
【請求項4】
前記発音体収容部を構成する壁部の一部及び前記空洞部を構成する壁部の一部は、前記音搬送経路を構成する壁部として兼用される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用計器。
【請求項5】
前記空洞部を構成する壁部は、前記貫通孔を構成する前記回路基板の縁部の背面側と密着されるように設けられる
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の車両用計器。
【請求項6】
前記発音体収容部、前記空洞部及び前記音搬送経路のそれぞれを構成する壁部は、前記回路基板の背面側と密着されるように設けられる
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の車両用計器。
【請求項7】
前記発音体収容部には、前記発音体収容部と前記ケースの外部とを連通するための開口が形成される
ことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の車両用計器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板の貫通孔、ケーシングの貫通孔、見返し板の貫通孔及びプロジェクタの凹部などから形成される伝音路を介して、圧電ブザー(発音体)の放音孔を外部の車室内空間と連通させ、プリント基板の貫通孔及びケーシングの貫通孔を囲むようにリヤカバーの伝音筒及びケーシングの伝音筒を設けるコンビネーションメータ(車両用計器)が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記のような特許文献1に記載の車両用計器では、伝音路や伝音筒を発音体周辺に設ける必要があるため、部品や回路基板の配線パターンのレイアウトに制限が多くなり、設計の自由度が低下するおそれがあるという課題があった。
【0004】
また、特許文献1に記載の車両用計器では、発音体の放音孔から発生された音波をリヤカバーや伝音筒に反射させてから、車両用計器の前面側に伝播しなければならないため、車両用計器全体の厚みが十分に抑えられず、かつ、低周波数領域や基本吹鳴周波数における音圧レベルが低下してしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-3630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、設計の自由度が高く、全体の薄型化が図られるとともに低周波数領域や基本吹鳴周波数における音圧を増幅することが可能な車両用計器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記のような課題を解決するため、本発明に係る車両用計器は、文字板と、前記文字板の背面側に設けられるものであって、その背面側に音波を発生する発音体が実装されるとともに前記発音体の領域外に貫通孔が形成される回路基板と、前記回路基板の背面側に設けられるものであって、前記発音体を収容する発音体収容部と、前記貫通孔と対応する位置に設けられる空洞部と、前記発音体収容部及び前記空洞部を連通する音搬送経路とを有するケースと備え、前記音搬送経路は、前記回路基板の延在する方向に沿って設けられるように、前記発音体収容部から前記空洞部へ向かうに従って次第に拡径するホーン形状であることを特徴とする。
【0008】
(2)上記構成(1)において、前記空洞部は、前記発音体収容部と隣接するように設けられ、前記音搬送経路は、数回折り返すように蛇行したバックロードホーン形状であることが好ましい。
【0009】
(3)上記構成(2)において、前記空洞部を構成する壁部の一部は、前記発音体収容部を構成する壁部として兼用されることが好ましい。
【0010】
(4)上記構成(2)又は(3)において、前記発音体収容部を構成する壁部の一部及び前記空洞部を構成する壁部の一部は、前記音搬送経路を構成する壁部として兼用されることが好ましい。
【0011】
(5)上記構成(1)から(4)までのいずれか1つにおいて、前記空洞部を構成する壁部は、前記貫通孔を構成する前記回路基板の縁部の背面側と密着されるように設けられることが好ましい。
【0012】
(6)上記構成(1)から(5)までのいずれか1つにおいて、前記発音体収容部、前記空洞部及び前記音搬送経路のそれぞれを構成する壁部は、前記回路基板の背面側と密着されるように設けられることが好ましい。
【0013】
(7)上記構成(1)から(6)までのいずれか1つにおいて、前記発音体収容部には、前記発音体収容部と前記ケースの外部とを連通するための開口が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設計の自由度が高く、全体の薄型化が図られるとともに低周波数領域や基本吹鳴周波数における音圧を増幅することが可能な車両用計器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両用計器の正面図である。
図2】文字板及び保護カバーが取り外された車両用計器の正面図である。
図3】回路基板の背面図である。
図4】ケースの説明図である。
図5図4における部分Aを拡大して表示する拡大図である。
図6】従来車両用計器及び本実施形態に係る車両用計器から発生される音波の周波 数変化に伴う音圧変化を示すグラフである。
図7】音搬送経路の変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を詳細に説明する。また、実施形態の説明の全体を通して同じ要素に同じ符号を付する。
【0017】
(車両用計器の全体構造)
まず、図1及び図3を参照しながら本実施形態に係る車両用計器1の構成を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用計器1の正面図である。図2は、文字板2及び保護カバー4が取り外された車両用計器1の正面図である。図3は、回路基板6の背面図である。
【0018】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る車両用計器1は、例えば、自動車などの車両にユーザ(運転者)が視認可能に設けられ、車両のパラメータ(例えば、走行中の速度やエンジンの回転速度など)を、後述する指針3によって表示させるものであり、文字板2と、文字板2の正面側に回動可能に配置される一対の指針3と、指針3の正面側に配置される保護カバー4と、文字板2の背面側に配置されるケース5と、車両用計器1の厚み方向に沿って文字板2及びケース5の間に配置される回路基板6とを備えている。
【0019】
図1に示すように、文字板2は、合成樹脂などの薄板から形成されるものであり、略円弧状に沿って所定の間隔を空けるように設けられる複数の目盛り21と、各目盛り21に対応するように設けられる数字22と、目盛り21及び数字22の内側に設けられる文字23とを有している。目盛り21及び数字22は、一対の指針3とともに車両の走行速度やエンジンの回転速度などを表示するためのものであり、文字23は、表示される車両の走行速度やエンジンの回転速度の単位を示すためのものである。また、文字板2の外周側には、ケース5の後述する複数の係止孔53と係止するための複数の係止爪(図示しない)が設けられている。
【0020】
一方の指針3は、後述する一方の駆動体7(ムーブメント)の駆動力によって回動可能に一方の駆動体7の回転軸71に接続されるとともに、他方の指針3は、後述する他方の駆動体7(ムーブメント)の駆動力によって回動可能に他方の駆動体7の回転軸71に接続されている。
【0021】
図1に示すように、保護カバー4は、透明な合成樹脂などからなる透明カバー41と、透明カバー41の背面側に取り付けられ不透明な合成樹脂などからなる見返し板42とを有している。透明カバー41は、見返し板42を介してケース5に取り付けられている。見返し板42は、光の反射を防止するためのものであり、指針3の基部をカバーするように設けられている。
【0022】
ケース5は、回路基板6の背面側に設けられ、回路基板6及び回路基板6の背面側に実装される部品などを収容するためのものであり、その詳細については、後述する。
【0023】
回路基板6は、例えば、ねじ締めなどによってケース5に取り付けられるものである。回路基板6の背面側には、一対の駆動体7及び発音体8が実装されている(図3参照)。これにより、一対の駆動体7及び発音体8を回路基板6の正面側に設けることなく、文字板2と回路基板6との間に形成されるクリアランスを小さくすることができ、車両用計器1全体の薄型化が図られる。
【0024】
一方、回路基板6の正面側には、一対の駆動体7の駆動制御及び発音体8の発音制御などの制御を行う制御部9が実装されている(図2参照)。制御部9は、例えば、マイクロコンピュータなどからなっている。また、制御部9は、平偏形状をなしているため、回路基板6の正面側に設けても、文字板2と回路基板6の間に形成されるクリアランスを大きくすることなく、車両用計器1全体の薄型化が維持されることになっている。
【0025】
また、回路基板6の一対の駆動体7及び発音体8が実装される領域外(具体的には、発音体8と隣接する位置)には、車両用計器1の厚み方向に沿って回路基板6を貫通する貫通孔61が形成されている。この貫通孔61は、発音体8の後述する放音孔81から発生される音波を、車両用計器1の正面側(文字板側)へ伝播するためのものである。また、本実施形態では、貫通孔61は、正面視で四角形状のものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、三角形状、多角形状又は円形状のものであってもよい。
【0026】
一対の駆動体7は、それぞれ一対の指針3を回動させるための駆動力を発生する略円柱形状のものであり、例えば、ステッピングモータなどが用いられている。また、駆動体7は、回路基板6を貫通して正面側に延在して回転可能に設けられる回転軸71を有している。
【0027】
発音体8は、一方の駆動体7の付近に設けられ、圧電素子の薄板と金属又は樹脂の薄板とを張り合わせて振動板(図示しない)を形成するとともに、圧電素子に電圧を印加して振動板を振動させて所定の周波数の音波を発生する電圧ブザーである。また、発音体8は、回路基板6の背面側に延在するように設けられる略円柱形状のものであり、発音体8の先端には、振動板が振動して発生した音波をケース5の外部である車室内空間へ伝播するための放音孔81が設けられている。なお、本実施形態では、発音体8は、電圧ブザーからなっているが、これに限定されるものではなく、例えば、スピーカなどからなってもよい。
【0028】
(ケースの構造)
つぎに、図4及び図5を参照しながらケース5を詳細に説明する。
図4は、ケース5の説明図である。図5は、図4における部分Aを拡大して表示する拡大図である。
【0029】
図4及び図5に示すように、ケース5は、合成樹脂から一体成形されるものであり、回路基板6と略平行になるように設けられるケース本体51と、ケース本体51の外周側に全周に亘って正面側へ立設される周壁52と、周壁52に周壁52の延在する方向に沿って所定の間隔を空けるように設けられる複数の係止孔53と、回路基板6に形成されたQRコード(登録商標)をケース本体51の外側から目視可能とするための確認孔54と、一対の駆動体7をそれぞれ収容するための一対の駆動体収容部55と、発音体8を収容するための発音体収容部56と、発音体収容部56から後述する音搬送経路58を介して搬送されてきた音波を車両用計器1の正面側へ伝播するための空洞部57と、発音体8の放音孔81から発生された音波を発音体収容部56から空洞部57に搬送するための音搬送経路58とを有している。なお、QRコード(登録商標)には、製品にかかる品質管理情報が付与されている。
【0030】
確認孔54は、車両用計器1の厚み方向に沿ってケース本体51を貫通するものであり、その外周側に全周に亘ってケース本体51から正面側に突出するように壁部541が立設されている。この壁部541は、所定の高さになるように設けられているため、回路基板6がねじ締めによってケース5に取り付けられた状態において、回路基板6の背面側と密着している。また、本実施形態では、この壁部541は、正面視で略四角形状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、三角形状、多角形状又は円形状をなしてもよい。なお、この壁部541の一部541a(一方の駆動体収容部55、発音体収容部56及び空洞部57に対向する部分)は、音搬送経路58を構成する壁部581の一部として兼用されている。
【0031】
さらに、本実施形態では、この壁部541は、全周に亘って所定の高さになるように設けられているが、これに限定されるものではなく、壁部581の一部として兼用する一部541aのみが所定の高さになるように設けられればよく、この場合、一部541aを除く壁部541が所定の高さよりも低くなるように設けられている。このようにすれば、音搬送経路58を構成する壁部581と回路基板6との間の間隙を確実になくすことができ、この間隙から音波が伝播されることを確実に防止することができるので、低周波数領域における音圧の低下を有効に抑制することができる。
【0032】
各駆動体収容部55は、収容される各駆動体7の外周側を全周に亘って取り囲むようにケース本体51から正面側に突出して立設される壁部551を有している。この壁部551は、壁部541と同様に所定の高さになるように設けられているため、回路基板6がねじ締めによってケース5に取り付けられた状態において、回路基板6の背面側と密着している。また、本実施形態では、この壁部551は、正面視で略四角形状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、三角形状、多角形状又は円形状をなしてもよい。
【0033】
そして、一方の駆動体収容部55は、確認孔54の付近に配置されている。なお、一方の駆動体収容部55における壁部551の一部551a(すなわち、発音体収容部56及び空洞部57に対向する部分)は、音搬送経路58を構成する壁部581の一部として兼用されている。
【0034】
さらに、本実施形態では、この壁部551は、全周に亘って所定の高さになるように設けられているが、これに限定されるものではなく、壁部581の一部として兼用する一部551aのみが所定の高さになるように設けられればよく、この場合、一部551aを除く壁部551が所定の高さよりも低くなるように設けられている。このようにすれば、音搬送経路58を構成する壁部581と回路基板6との間の間隙を確実になくすことができ、この間隙から音波が伝播されることを確実に防止することができるので、低周波数領域における音圧の低下を有効に抑制することができる。
【0035】
発音体収容部56は、確認孔54及び一方の駆動体収容部55の付近に設けられるものであり、収容される発音体8の外周側を取り囲むようにケース本体51から正面側に突出して立設される壁部561と、壁部561に形成される切り欠き562と、ケース本体51の壁部561によって取り囲まれる領域に形成される開口563とを有している。
【0036】
この壁部561は、壁部541及び壁部551と同様に所定の高さになるように設けられているため、回路基板6がねじ締めによってケース5に取り付けられた状態において、回路基板6の背面側と密着している。壁部561の内周側と収容される発音体8の外周側との間に所定のクリアランスが形成されることが好ましい。また、本実施形態では、この壁部561は、正面視で略C字型の形状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、略U字型又は略V字型の形状をなしてもよい。なお、壁部561の空洞部57に対向する一部561a(壁部561の一端)は、音搬送経路58を構成する壁部581の一部として兼用されている。
【0037】
切り欠き562は、発音体収容部56及び音搬送経路58を連通するための連通部であり、壁部561の一端と壁部561の他端との間に形成されている。また、切り欠き562は、駆動体収容部55に対向するとともにその幅(すなわち、壁部561の一端から壁部561の他端までの寸法)がd1となるように形成されている。
【0038】
開口563は、発音体収容部56とケース5の外部である車室内空間とを直接に連通するためのものである。発音体8の放音孔81は、開口563に対向するように発音体収容部56に収容されている。また、本実施形態では、開口563は、略平行に沿って配列される複数(例えば、3つ)のスリットから構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、円形状の透孔などから構成されてもよい。
【0039】
空洞部57は、確認孔54及び一方の駆動体収容部55の付近において発音体収容部56と隣接するように設けられるものであり、発音体収容部56と直接に連通されておらず、音搬送経路58を介して発音体収容部56に連通されている。また、空洞部57は、回路基板6の貫通孔61と対応する位置に設けられているため、空洞部57に搬送された音波を貫通孔61を介して車両用計器1の正面側へ伝播することができる。
【0040】
さらに、空洞部57は、ケース本体51から正面側に突出して立設される壁部571と、壁部571に形成される切り欠き572とを有している。ただし、空洞部57は、空洞部57とケース5の外部である車室内空間とを直接に連通する開口を有していない。これにより、発音体収容部56から音搬送経路58を介して搬送されてきた音波をそのままケース5の外部である車室内空間へ流さず、車両用計器1の正面側へ伝播することができる。
【0041】
この壁部571は、壁部541、壁部551及び壁部561と同様に所定の高さになるように設けられているため、回路基板6がねじ締めによってケース5に取り付けられた状態において、回路基板6の背面側と密着している。具体的には、壁部571は、回路基板6がねじ締めによってケース5に取り付けられた状態において、貫通孔61を構成する回路基板6の縁部の背面側と密着している。また、この壁部571は、貫通孔61の形状に対応するように正面視で略U字型の形状をなしている。なお、壁部571の発音体収容部56に対向する一部571a(壁部571の一端)は、音搬送経路58を構成する壁部581の一部として兼用されている。
【0042】
さらに、壁部571の他の一部571bは、発音体収容部56を構成する壁部561の一部として兼用されている。すなわち、壁部571の他の一部571bは、壁部561とつながるように設けられている。
【0043】
切り欠き572は、空洞部57及び音搬送経路58を連通するための連通部であり、壁部571の一端と壁部571の他端との間に形成されている。また、切り欠き572は、その幅(すなわち、壁部571の一端から壁部571の他端までの寸法)がd1(切り欠き562の幅)よりも大きいd5(例えば、d5=1.3×d1)となるように形成されている。なお、切り欠き572は、切り欠き562と同様に、駆動体収容部55に対向するように形成されている。すなわち、本実施形態では、切り欠き562と切り欠き572とは、同一向きとなるように形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、異なる向きとなるように形成されてもよい。
【0044】
音搬送経路58は、発音体収容部56及び空洞部57を連通するためのものであり、確認孔54、一方の駆動体収容部55、発音体収容部56及び空洞部57によって取り囲まれる狭小スペースにケース本体51の延在する方向(すなわち、回路基板6の延在する方向、又は車両用計器1の厚み方向と直交する方向)に沿って設けられている。
【0045】
また、音搬送経路58は、ケース本体51から正面側に突出して立設される複数の壁部581を有しており、このような複数の壁部581によって、数回(例えば、3回)折り返して蛇行した、発音体収容部56から空洞部57へ向かうに従って次第に拡径するバックロードホーン形状に画成されている。なお、本実施形態では、音搬送経路58の折り返し回数は、3回であるが、これに限定されるものではなく、例えば、2回又は4回以上であってもよい。
【0046】
この壁部581は、壁部541、壁部551、壁部561及び壁部571と同様に所定の高さになるように設けられているため、回路基板6がねじ締めによってケース5に取り付けられた状態において、回路基板6の背面側と密着している。
【0047】
そして、音搬送経路58は、その一端582が発音体収容部56の切り欠き562と連通するとともに、その他端583が空洞部57の切り欠き572と連通するように設けられている。音搬送経路58には、上流側から下流側へ向かって(すなわち、発音体収容部56の切り欠き562から空洞部57の切り欠き572へ向かって)順に第1折り返し部584、第2折り返し部585及び第3折り返し部586が設けられている。
【0048】
第1折り返し部584は、その幅がd1よりも大きいd2(例えば、d2=1.3×d1)となるように形成されており、第2折り返し部585は、その幅がd2よりも大きいd3(d3=1.3×d2=1.3×d1)となるように形成されており、第3折り返し部586は、その幅がd3よりも大きく、d5(切り欠き572の幅)よりも小さいd4(d4=1.3×d3=1.3×d1)となるように形成されている。
【0049】
このように、音搬送経路58は、上流側から下流側へ向かって(すなわち、発音体収容部56の切り欠き562から空洞部57の切り欠き572へ向かって)次第に拡径するバックロードホーン形状となっているため、音波の音圧を増幅させながら音波を発音体収容部56から空洞部57へ搬送することができる。
【0050】
最後、図6を参照しながら従来車両用計器の音圧及び本実施形態に係る車両用計器1から発生される音波の音圧の相違を説明する。
図6は、従来車両用計器及び本実施形態に係る車両用計器1から発生される音波の周波数変化に伴う音圧変化を示すグラフである。また、図6において、横軸は、周波数(Hz)を示すものであり、縦軸は、音圧(dB)を示すものである。
【0051】
図6では、A線の波形は、従来車両用計器から発生される音波の周波数変化に伴う音圧変化を示すものであるのに対し、B線の波形は、本実施形態に係る車両用計器1から発生された音波の周波数変化に伴う音圧変化を示すものである。
【0052】
図6の破線領域Bに示すように、0Hz~400Hzの範囲にある低周波数領域において、本実施形態に係る車両用計器1から発生された音波の音圧が、従来車両用計器から発生される音波の音圧よりも大幅に増幅されたことは、明らかである。また、図6の破線領域Cに示すように、発音体8の基本吹鳴周波数(例えば、1.9kHz)の付近領域において、本実施形態に係る車両用計器1から発生された音波の音圧が、従来車両用計器から発生される音波の音圧よりも大幅(約20dB)に増幅されたことは、明らかである。
【0053】
このように、本実施形態に係る車両用計器1によれば、従来車両用計器に比べ、低周波数領域における音圧や発音体8の基本吹鳴周波数における音圧を大幅に増幅することができる。
【0054】
(本実施形態の効果)
このように構成される、本実施形態に係る車両用計器1は、文字板2と、文字板2の背面側に設けられるものであって、その背面側に音波を発生する発音体8が実装されるとともに発音体8の領域外に貫通孔61が形成される回路基板6と、回路基板6の背面側に設けられるものであって、発音体8を収容する発音体収容部56と、貫通孔61と対応する位置に設けられる空洞部57と、発音体収容部56及び空洞部57を連通する音搬送経路58とを有するケース5と備え、音搬送経路58は、回路基板6の延在する方向に沿って設けられるように、発音体収容部56から空洞部57へ向かうに従って次第に拡径するホーン形状であるものである。これにより、発音体収容部56、空洞部57及び音搬送経路58をケースに設けることで、従来のように、伝音路や伝音筒を発音体8の周辺に設ける必要がなく、部品や回路基板6の配線パターンのレイアウトに制限が少なくなり、設計の自由度が向上される。また、音搬送経路58は、回路基板6の延在する方向に沿って設けられるので、従来のように、発音体8の放音孔81から発生された音波をリヤカバーや伝音筒に反射させてから、車両用計器1の前面側に伝播する必要がなく、音波が発音体収容部56から音搬送経路58を介して空洞部57に搬送されてから回路基板6の貫通孔61を通して車両用計器1の正面側へ伝播することで、車両用計器1全体の厚みを十分に抑えることができる。さらに、音搬送経路58は、発音体収容部56から空洞部57へ向かうに従って次第に拡径するホーン形状であるので、低周波数領域や基本吹鳴周波数における音圧を増幅することができる。以上のことから、本実施形態によれば、設計の自由度が高く、全体の薄型化が図られるとともに低周波数領域や基本吹鳴周波数における音圧を増幅することが可能な車両用計器1を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る車両用計器1では、空洞部57は、発音体収容部56と隣接するように設けられ、音搬送経路58は、数回折り返すように蛇行したバックロードホーン形状であるものである。これにより、発音体収容部56及び空洞部57は、隣接して設けられたとしても、発音体収容部56及び空洞部57の周辺スペースを音搬送経路58として有効に活用することができ、これにより、音搬送経路58の省スペース化及びバックロードホーン化を実現することができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る車両用計器1では、空洞部57を構成する壁部571の他の一部571bは、発音体収容部56を構成する壁部561として兼用されるものである。これにより、発音体収容部56及び空洞部57は、隣接して設けられたとしても、発音体収容部56を構成する壁部561と空洞部57を構成する壁部571との間に間隙を設けることなく、ケース5の成形を簡単に行うことができるので、ケース5を成形するための金型を簡易に設計することができ、ケース5の製造コストを削減することができる。
【0057】
そして、本実施形態に係る車両用計器1では、発音体収容部56を構成する壁部561の一部561a及び空洞部57を構成する壁部571の一部571aは、音搬送経路58を構成する壁部581として兼用されるものである。これにより、音搬送経路58を構成する壁部581を別途設けることなく、音搬送経路58の省スペース化を実現することができるとともに、ケース5の成形をより簡単に行うことができるので、ケース5を成形するための金型を簡易に設計することができ、ケース5の製造コストを削減することができる。
【0058】
なお、本実施形態に係る車両用計器1では、空洞部57を構成する壁部571は、貫通孔61を構成する回路基板6の縁部の背面側と密着されるように設けられるものである。これにより、壁部571と貫通孔61(回路基板6の縁部)との間の間隙をなくすことで、当該間隙から音波が伝播されることを確実に防止することができるので、低周波数領域における音圧の低下を有効に抑制することができる。
【0059】
くわえて、本実施形態に係る車両用計器1では、発音体収容部56、空洞部57及び音搬送経路58のそれぞれを構成する壁部561、571、581は、回路基板6の背面側と密着されるように設けられるものである。これにより、壁部561、571、581と回路基板6との間の間隙をなくすことで、間隙から音波が伝播されることを確実に防止することができるので、低周波数領域における音圧の低下を有効に抑制することができる。
【0060】
かつ、本実施形態に係る車両用計器1では、発音体収容部56には、発音体収容部56とケース5の外部とを連通するための開口563が形成されるものである。これにより、発音体8の放音孔81から発生された音波は、音搬送経路58及び空洞部57を介して車両用計器1の正面側へ伝播するだけではなく、開口563を介しても、ケース5の外部である車室内空間へ伝播することができ、車両用計器1からの音波がより聞こえやすくなる。
【0061】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
(変形例)
つぎに、図7を参照しながら音搬送経路58の変形例を詳細に説明する。
図7は、音搬送経路58の変形例の概略図である。
【0063】
上記実施形態では、発音体収容部56には、ケース5の外部と連通するための開口563が形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、このような開口563が形成されなくてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、音搬送経路58は、バックロードホーン形状をなしているが、これに限定されるものではなく、例えば、図7に示すように、通常のホーン形状をなしてもよく、この場合、発音体収容部56と空洞部57とは、大きく離間して配置されることが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1 車両用計器
2 文字板
21 目盛り
22 数字
23 文字
3 指針
4 保護カバー
41 透明カバー
42 見返し板
5 ケース
51 ケース本体
52 周壁
53 係止孔
54 確認孔
541 壁部
541a 一部(壁部)
55 駆動体収容部
551 壁部
551a 一部(壁部)
56 発音体収容部
561 壁部
561a 一部(壁部)
562 切り欠き
563 開口
57 空洞部
571 壁部
571a 一部(壁部)
571b 他の一部(壁部)
572 切り欠き
58 音搬送経路
581 壁部
582 一端(音搬送経路)
583 他端(音搬送経路)
584 第1折り返し部
585 第2折り返し部
586 第3折り返し部
6 回路基板
61 貫通孔
7 駆動体(ムーブメント)
71 回転軸
8 発音体
81 放音孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7