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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】アルミナ繊維集合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4209 20120101AFI20221122BHJP
   D04H 1/46 20120101ALI20221122BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
D04H1/4209
D04H1/46
D01F9/08 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021090327
(22)【出願日】2021-05-28
(62)【分割の表示】P 2018527575の分割
【原出願日】2017-07-07
(65)【公開番号】P2021121701
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2016136958
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522123566
【氏名又は名称】マフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐介
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/010379(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115814(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/003276(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/168089(WO,A1)
【文献】特開2007-332531(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069589(WO,A1)
【文献】特開2002-356380(JP,A)
【文献】特開2006-307376(JP,A)
【文献】特開2002-302856(JP,A)
【文献】特開平08-091908(JP,A)
【文献】特開2011-231774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F9/08
D04H1/00-18/04
F01N3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ短繊維からなるニードリング処理されたアルミナ繊維集合体であって、
該アルミナ短繊維の平均繊維径が6.0μm以上10.0μm以下であり、該アルミナ短繊維の比表面積が0.2m/g以上1.0m/g以下であり、
かつ、該アルミナ繊維集合体の高温サイクル開放側面圧残存率(%)が45%以上であり、
該アルミナ繊維集合体の水中嵩密度が1.40×10-2g/ml以上2.00×10-2g/ml以下であり、
前記アルミナ短繊維の繊維径が10.0μmを超える繊維の割合が本数基準で2.7%以下であることを特徴とするニードリング処理されたアルミナ繊維集合体。
【請求項2】
前記アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6.0μm以上である、請求項1に記載のアルミナ繊維集合体。
【請求項3】
前記アルミナ短繊維の全細孔容積が2.5×10-3ml/g以下である、請求項1又は2に記載のアルミナ繊維集合体。
【請求項4】
前記アルミナ短繊維の平均単繊維引張強度が1.20×10MPa以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のアルミナ繊維集合体。
【請求項5】
前記アルミナ短繊維の化学組成がアルミナ70質量%以上75質量%以下、かつシリカ25質量%以上30質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のアルミナ繊維集合体。
【請求項6】
前記アルミナ繊維集合体のムライト化率が5.0%以下である請求項1~のいずれか1項に記載のアルミナ繊維集合体。
【請求項7】
前記ニードリング処理により生じたニードル痕を有する請求項1~のいずれか1項に記載のアルミナ繊維集合体。
【請求項8】
自動車用排ガス洗浄装置のクッション材用である、請求項1~7のいずれか1項に記載のアルミナ繊維集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ繊維集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックファイバーに代表される無機繊維成形体は、工業用断熱材、耐火材、パッキン材などの高温の状態に暴露される用途に用いられてきた。近年では、自動車用排ガス洗浄装置用のクッション材(触媒把持材)、即ち、触媒担持体を金属ケーシングに収容する際に、触媒担持体に巻回され、触媒担持体と金属ケーシングの間に介装される排ガス洗浄用マットとしてアルミナ繊維集合体が用いられている。
【0003】
アルミナ短繊維の繊維径をx(μm)としたとき、xの対数正規分布における自然対数値lnxがln3未満である割合が2%以下であり、且つ、該繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6.0μm以下であるアルミナ繊維集合体が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-120560号公報
【0005】
特許文献1に記載の無機繊維集合体では、繊維径が大きくなると剛直で折れやすく、繊維自体の緻密性が悪くなりやすいためアルミナ繊維集合体の断熱性、クッション性等の産業上有用な諸特性が低下する傾向があることが判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アルミナ短繊維の平均繊維径が大きく、アルミナ短繊維が飛散しにくく、しかも触媒コンバータ用把持材などに十分使用することができるアルミナ繊維集合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、アルミナ繊維集合体における繊維径の範囲制御及び単繊維強度などの繊維物性向上について鋭意検討を重ねた結果、特定の材料、製造条件により、所望の平均繊維径であり、且つ、機械的強度が高いアルミナ短繊維を得られるとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、以下に存する。
【0009】
[1] アルミナ短繊維からなるニードリング処理されたアルミナ繊維集合体であって、該アルミナ短繊維の平均繊維径が6.0μm以上10.0μm以下であり、該アルミナ短繊維の比表面積が0.2m/g以上1.0m/g以下であり、かつ、該アルミナ繊維集合体の高温サイクル開放側面圧残存率(%)が45%以上であることを特徴とするニードリング処理されたアルミナ繊維集合体。
【0010】
[2] 前記アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6.0μm以上である、[1]に記載のアルミナ繊維集合体。
【0011】
[3] 前記アルミナ短繊維の繊維径が10.0μmを超える繊維の割合が本数基準で5.0%以下である、[1]又は[2]に記載のアルミナ繊維集合体。
【0012】
[4] 前記アルミナ短繊維の全細孔容積が2.5×10-3ml/g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のアルミナ繊維集合体。
【0013】
[5] 前記アルミナ短繊維の平均単繊維引張強度が1.20×10MPa以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のアルミナ繊維集合体。
【0014】
[6] 前記アルミナ短繊維の化学組成がアルミナ70質量%以上75質量%以下、かつシリカ25質量%以上30質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のアルミナ繊維集合体。
【0015】
[7] 該アルミナ繊維集合体の水中嵩比重が1.40×10-2g/ml以上2.00×10-2g/ml以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のアルミナ繊維集合体。
【0016】
[8] 前記アルミナ繊維集合体のムライト化率が5.0%以下である[1]~[7]のいずれかに記載のアルミナ繊維集合体。
【0017】
[9] 前記ニードリング処理により生じたニードル痕を有する[1]~[8]のいずれかに記載のアルミナ繊維集合体。
【0018】
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のアルミナ短繊維からなるアルミナ繊維集合体を製造する方法であって、
アルミナ源、シリカ源、紡糸助剤及び水を含有する紡糸液を調製する紡糸液調製工程、該紡糸液を細孔より大気中に押出し、乾燥することによりアルミナ繊維前駆体の集合体を得る紡糸工程、該アルミナ繊維前駆体の集合体をニードリング処理するニードリング工程、及びニードリング処理された該アルミナ繊維前駆体の集合体を焼成する焼成工程を有し、該シリカ源は、動的光散乱法によって測定される、平均粒子径分布のモード径が20nm以上60nm以下かつ該粒子径分布の標準偏差が20nm以上35nm以下のシリカゾルであり、該紡糸助剤は、重合度の加重平均が2.0×10以上3.0×10以下であり、ケン化度の加重平均が85.0以上95.0以下のポリビニルアルコールであり、該紡糸液のB型粘度計による25℃での粘度が5.0×10mPa・s以上1.5×10mPa・s以下であるアルミナ繊維集合体の製造方法。
【0019】
[11] 前記紡糸助剤が、少なくとも、重合度1.8×10以上2.4×10以下かつケン化度85.0以上92.0未満のポリビニルアルコールAと、重合度2.2×10以上3.0×10以下、かつケン化度92.0以上99.5以下であるポリビニルアルコールBとを含み、
該ポリビニルアルコールAとポリビニルアルコールBとの質量比率が9~5:1~5であり、該ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBにおける重合度の加重平均が2.0×10以上3.0×10以下であり、該ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBにおけるケン化度の加重平均が85.0以上95.0以下である、[10]に記載のアルミナ繊維集合体の製造方法。
【0020】
[12] 前記焼成工程の最高焼成温度が1000℃以上1300℃以下であり、最高焼成温度までの昇温速度が40℃/分以下である、[10]又は[11]に記載のアルミナ繊維集合体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
アルミナ短繊維からなるニードリング処理されたアルミナ繊維集合体においては、平均繊維径6.0μm以上の場合、平均繊維径が太いため、アルミナ短繊維にしなやかさがなくなり折れやすく、また単位質量あたりの本数が減少するため、アルミナ繊維集合体のサイクル面圧の値が低いものとなるが、平均粒子径分布のモード径が20nm以上60nm以下かつ該粒子径分布の標準偏差が20nm以上35nm以下のシリカゾルをケン化度と重合度が特定の範囲の水溶性高分子を紡糸助剤として用いることで、単繊維及び繊維集合体の物性を向上させることができる。
【0022】
本発明によって提供されるアルミナ繊維集合体は、比表面積値が小さく緻密性が高いアルミナ短繊維からなるアルミナ繊維集合体であるため、平均繊維径が6.0μm以上と比較的大きくても、該アルミナ短繊維集合体の高温サイクル面圧残存率が高く維持される。従って、アルミナ繊維集合体は、触媒用把持材などとして使用された場合に高い性能が発現される。かかる本発明のアルミナ繊維集合体のアルミナ短繊維は、平均繊維径が6.0μm以上と大きいために、ハンドリングの際に繊維の飛散が少なく、取り扱い性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のアルミナ繊維集合体のアルミナ短繊維の平均繊維径は、6.0μm以上10.0μm以下であり、特に好ましくは、6.0μm以上8.0μm以下である。アルミナ短繊維の平均繊維径が上記範囲内に有ることで、剛直で折れやすい繊維の割合が少なくなる点で好ましい。
【0024】
また、剛直で折れやすい繊維の割合が少なくなる点で、該アルミナ短繊維の繊維径が10.0μmを超える繊維(但し該繊維は、融着した繊維を含まないものとする。)の割合が本数基準で5.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることが特に好ましい。平均繊維径の測定方法は、測定サンプルであるアルミナ繊維集合体0.2~0.5gを40mmΦの金型に入れ、油圧プレス機により10kNの荷重を2回繰り返し与えることで測定サンプルを粉砕する。該粉砕サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)撮影する(倍率1000~3000の範囲で適宜選択する)。該SEM写真から、ノギス又は直定規で0.1mm単位まで測りとる。そして、任意に合計300本の繊維径を測定する。次式により平均繊維径を測定する。この際、計算値は小数点以下2ケタを四捨五入して小数点以下1桁で表示する。
繊維径(μm)=(測定値)/(観察倍率)×1000
平均繊維径(μm)=300点の繊維径の合計値/300
【0025】
アルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径からその標準誤差の2倍値を引いた値が6.0μm以上であることは、欧州委員会の制定する化学物質等の有害性分類に関する規則または指令において、繊維径ベースの発がん性分類除外規定に適用され、発がん性を有する3.0μm未満の繊維を含まないと判断されるため、安全性の点から好ましい。
【0026】
European Chemicals Bureau (ECB)のTesting Method には、ECB/TM/1(00)rev2のDRAFT-4に鉱物繊維の長さ加重幾何平均径について、次の式に近似されることが記載されている。本発明のアルミナ短繊維の繊維径の長さ加重幾何平均径とは、次の(1)式により算出する値を表わす。
【0027】
LWGMD=EXP((ΣInD)/n ) …(1)
ECB/TM/1(00)rev2のDRAFT-4の記載に沿って、次式(a)~(d)より算出された「長さ加重幾何平均径-2×標準誤差」は6.0μm以上10.0μm以下、特に6.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。
【0028】
【数1】
【0029】
本発明で用いられるアルミナ短繊維の比表面積は、0.2m/g以上1.0m/g以下であり、より好ましくは、0.2m/g以上0.9m/g以下、特に好ましくは、0.2m/g以上0.8m/g以下である。アルミナ短繊維の比表面積が上記範囲内にあると、繊維の緻密性が高く、壊れにくいため、マットにした際の物理的特性が優れたものとなる。
【0030】
本発明で用いられるアルミナ短繊維の全細孔容積は、特段の制限はないが、通常2.0×10-4ml/g以上2.5×10-3ml/g以下であり、好ましくは2.0×10-4ml/g以上2.2×10-3ml/g以下、特に好ましくは2.0×10-4ml/g以上1.9×10-3ml/g以下である。
【0031】
アルミナ短繊維の全細孔容積が上記範囲内にあると、繊維の緻密性が高く、壊れにくいため、マットにした際の物理的特性が優れたものとなる。全細孔容積の測定方法は、吸着側及び脱離側吸着等温線を用いて、BJH法解析により測定する。
【0032】
本発明で用いられるアルミナ短繊維の平均単繊維引張強度は、特段の制限はないが、通常1.20×10MPa以上であり、好ましくは1.30×10MPa以上、特に好ましくは1.40×10MPa以上である。アルミナ短繊維の平均単繊維引張強度が上記範囲内にあると、繊維が壊れにくいため、マットにした際の物理的特性が優れたものとなる。
【0033】
本発明で用いられるアルミナ短繊維の繊維長は、特段の制限はないが、1mm以上1000mm以下、好ましくは30mm以上800mm以下である。アルミナ短繊維の繊維長が上記範囲内にあると、繊維同士の絡み合いが増え、アルミナ繊維集合体の強度が高くなる。
【0034】
本発明で用いられるアルミナ繊維集合体の水中嵩比重は、通常1.40×10-2g/ml以上2.00×10-2g/ml以下であり、好ましくは、1.40×10-2g/ml以上1.95×10-2g/ml、特に好ましくは、1.40×10-2g/ml以上1.90×10-2g/ml以下である。アルミナ短繊維の水中嵩比重が上記範囲内にあると、繊維が壊れにくく、マット状にした際の物理的特性が優れたものとなる。
【0035】
本発明のアルミナ繊維集合体のアルミナ繊維のムライト化率(アルミナ繊維中のムライト(3Al・2SiO)の割合)は、特段の制限はないが、5.0%以下が繊維強度が低下しにくく、面圧低下が抑えられる点で好ましい。ムライト化率の測定方法は後述の通りである。
【0036】
本発明のニードリング処理されたアルミナ繊維集合体の高温サイクル開放側面圧残存率は45%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上である。高温サイクル開放側面圧残存率が上記範囲内にあることにより、触媒用把持材の特性が向上する。
【0037】
本発明のニードリング処理されたアルミナ繊維集合体の高温サイクル圧縮側面圧残存率は67%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは72%以上である。高温サイクル開放側面圧残存率が上記範囲内にあることにより、触媒用把持材の特性が向上する。
【0038】
ここで、開放側面圧とは、アルミナ繊維集合体を圧縮する際に一番圧縮率が低い時の面圧をいう。また、圧縮側面圧とは、アルミナ繊維集合体を圧縮する際に一番圧縮率が高い時の面圧をいう。
【0039】
高温サイクル開放側面圧(保持率)及び圧縮側面圧(保持率)の測定方法は後述の通りである。この測定方法では、アルミナ繊維集合体をGBD(嵩密度)=0.38g/cmで30分間圧縮した後、上下のプレートを600℃まで昇温し、GBD=0.33g/cm(開放側)から0.38g/cm(圧縮側)まで圧縮することを800回繰り返す。
【0040】
600℃における第1回目の開放側面圧値(GBD=0.33g/cm)は通常60kPa以上150kPa以下、好ましくは70kPa以上140kPa以下、特に好ましくは80kPa以上135kPa以下である。
【0041】
また、600℃における第800回目の開放側面圧値(GBD=0.33g/cm)は通常25kPa以上、好ましくは30kPa以上、より好ましくは40kPa以上、特に好ましくは50kPa以上である。上限については、特段の制限はないが、通常600℃における第1回目の開放側面圧値(GBD=0.33g/cm)以下である。
【0042】
600℃における第1回目の圧縮側面圧値(GBD=0.38g/cm)は通常250kPa以上500kPa以下、好ましくは300kPa以上480kPa以下、特に好ましくは350kPa以上470kPa以下である。
【0043】
また、600℃における第800回目の圧縮側面圧値(GBD=0.38g/cm)は通常240kPa以上、好ましくは250kPa以上、より好ましくは260kPa以上、特に好ましくは265kPa以上である。上限については、特段の制限はないが、通常600℃における第1回目の圧縮側面圧値(GBD=0.38g/cm)以下である。
【0044】
本発明のニードリング処理されたアルミナ繊維集合体の25℃におけるサイクル開放側面圧残存率は、特段の制限はないが、58%以上であり、より好ましくは60%以上、特に好ましくは62%以上である。アルミナ繊維集合体の25℃におけるサイクル開放側面圧残存率が上記範囲内にあると、触媒用把持材の特性が向上する。
【0045】
本発明のニードリング処理されたアルミナ繊維集合体の25℃におけるサイクル圧縮側面圧残存率は60%以上であり、好ましくは66%以上、より好ましくは72%以上である。サイクル圧縮側面圧残存率が上記範囲内にあることにより、触媒用把持材の特性が向上する。
【0046】
25℃におけるサイクル開放側面圧(保持率)の測定方法は後述の通りである。この測定方法では、温度条件を25℃にし、アルミナ繊維集合体をGBD(嵩密度)=0.33g/cm(開放側)から0.38g/cm(圧縮側)まで圧縮することを20回繰り返すが、25℃における第1回目の開放側面圧値(GBD=0.33g/cm)は通常100kPa以上250kPa以下、好ましくは120kPa以上230kPa以下である。また、25℃における第20回目の開放側面圧値(GBD=0.33g/cm)は通常50kPa以上、好ましくは60kPa以上である。
【0047】
アルミナ繊維集合体はニードルパンチを用いて、ニードリング処理されたアルミナ繊維集合体であることが、アルミナ繊維集合体の剥離強度を上げると共に、該アルミナ繊維集合体のサイクル面圧保持率を向上することができる点で好ましい。このニードリング処理により、アルミナ繊維集合体にはニードル痕が残る。
【0048】
ニードリング処理を行う場合、アルミナ繊維集合体表面の単位面積当たりのニードル痕の数(ニードル痕密度)は、通常1個/cm以上、好ましくは5個/cm以上、特に好ましくは8個/cm以上であり、通常150個/cm以下、好ましくは100個/cm以下、特に好ましくは80個/cm以下である。ニードル痕密度を上記範囲内にすることにより、ニードリング処理されたアルミナ繊維集合体の剥離強度を上げると共に、室温(例えば25℃)及び高温(例えば600℃)におけるサイクル面圧保持率を向上させることができる。
【0049】
本発明のアルミナ繊維集合体の製造方法では、次の(1)~(4)の工程によりアルミナ繊維集合体を製造する。
(1) アルミナ源、シリカ源、紡糸助剤及び水を含有する紡糸液を得る紡糸液調製工程
(2) 該紡糸液を細孔より大気中に押出し、乾燥することでアルミナ繊維前駆体の集合体を得る紡糸工程
(3) 該アルミナ繊維前駆体の集合体にニードリング処理を行うニードリング工程
(4) 該ニードリング処理されたアルミナ繊維前駆体を焼成する焼成工程
【0050】
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程では、例えばアルミナ源とシリカ源を、最終的なアルミナ質繊維が所望する化学組成となるようにアルミナ成分とシリカ成分の比に混ぜ、さらに紡糸助剤を配合して均一に混合してから減圧濃縮するのが好ましい。
【0051】
アルミナ源としては、塩基性塩化アルミニウム(Al(OH)3-xCl)を使用することが好ましい。例えば、塩酸または塩化アルミニウム水溶液に金属アルミニウムを溶解させることにより調製することができる。上記の化学式におけるxの値は、通常0.45~0.54、好ましくは0.50~0.53である。
【0052】
シリカ源としては、シリカゾルを使用する。このシリカゾルは動的光散乱法によって測定される粒子径分布のモード径(最頻粒子径)が20nm以上60nm以下かつ該粒子径分布の標準偏差が20nm以上35nm以下のシリカゾルを使用する。
【0053】
なかでも、粒子径分布のモード径として、好ましくは25nm以上60nm以下、特に好ましくは30nm以上60nm以下である。
【0054】
また、粒子径分布の標準偏差として、好ましくは20nm以上32nm以下、特に好ましくは22nm以上28nm以下である。
【0055】
上記粒子径分布のモード径及び標準偏差を有するシリカゾルは、紡糸及び低温での乾燥におけるシリカゾルの拡散において、様々な粒径を有することによりシリカゾルの拡散が不均一となり、繊維中心から一定距離で偏在すること無く、結果シリカゾルが均一に存在することにより、結果として高温での耐久性に優れる。シリカゾルの粒子径分布の測定方法は次の通りである。
【0056】
測定に必要量のシリカゾルを最終濃度が0.5%となるように濃度0.002Nの塩酸で希釈して25℃にした後、動的光散乱装置(例えば、大塚電子社製ELS-Z)にて測定する。
【0057】
なお、シリカ源の一部として、テトラエチルシリケートや水溶性シロキサン誘導体などの水溶性珪素化合物を使用してもよい。
【0058】
紡糸液中のアルミニウム(Al)と珪素(Si)の比がAlとSiOの質量比に換算(酸化物換算)して、通常99:1~65:35、好ましくは90:10~68:32、より好ましくは75:25~70:30であることが好ましい。紡糸液中の塩基性塩化アルミニウムのアルミニウム濃度は150~190g/Lであることが好ましい。
【0059】
紡糸助剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリアクリルアミドの少なくとも1種の水溶性高分子化合物が好ましく、特に好ましくはポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールとしては、重合度の加重平均が2.0×10以上3.0×10以下でかつ、ケン化度の加重平均が85.0以上95.0以下であり、または、重合度1.8×10以上2.4×10以下、かつケン化度85.0以上92.0未満のポリビニルアルコールA及び重合度2.2×10以上3.0×10以下、かつケン化度92.0以上99.5以下であるポリビニルアルコールBを含み、該ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBの質量比率が9~5:1~5であり、該ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBにおける重合度の加重平均が2.0×10以上3.0×10以下であり、かつ該ポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBにおけるケン化度の加重平均が85.0以上95.0以下であることが所望の繊維径且つ強い繊維を製造できる点で好ましい。
【0060】
上記のポリビニルアルコールにおける重合度の加重平均とは、単一の場合には該ポリビニルアルコールの重合度と等しく、複数のポリビニルアルコールの混合物の場合には、各重合度にポリビニルアルコール全体における各割合を乗じたものを各ポリビニルアルコール全て足したものである。
【0061】
上記のポリビニルアルコールにおけるケン化度の加重平均とは、単一の場合には該ポリビニルアルコールのケン化度と等しく、複数のポリビニルアルコールの混合物の場合には、各ケン化度にポリビニルアルコール全体における各割合を乗じたものを各ポリビニルアルコール全て足したものである。
【0062】
ポリビニルアルコールの重合度及びケン化度は、JIS K 6726に準じて測定する。
【0063】
紡糸液中における紡糸助剤の割合は、通常アルミナ成分とシリカ成分の固形分の合計100質量%に対して5質量%以上15質量%以下であることが所望の繊維径且つ強い繊維を製造できる点で好ましい。
【0064】
紡糸液のB型粘度計による25℃での粘度は、5.0×10mPa・s以上1.5×10mPa・s以下、好ましくは6.0×10mPa・s以上1.2×10mPa・s以下である。紡糸液の粘度を上記範囲にすることにより、繊維径が過度に小さく強度の低い繊維になる可能性が抑制され、また、ポンプによる紡糸液の移送が困難にならない点で好ましい。
【0065】
紡糸液のB型粘度計による25℃での粘度は、B型粘度計(例えば、東機産業製(TVB-10M 粘度計、ロータ TM3 (半径12.7mm、厚み1.7mm)、回転速度12rpm)で測定する。
【0066】
[紡糸工程]
紡糸工程は好ましくは、高速の紡糸気流中に紡糸液を供給するブローイング法によって行われ、これにより長さが数十mm~数百mmのアルミナ短繊維前駆体の集合体が得られる。上記の紡糸の際に使用する紡糸ノズルの構造は、特に制限はないが、例えば、特許第2602460号公報に記載されているような、エアーノズルより吹き出される空気流と紡糸液供給ノズルより押し出される紡糸液流とは並行流となり、しかも、空気の並行流は充分に整流されて紡糸液と接触する構造のものが好ましい。この場合、紡糸ノズルの直径は通常0.1~0.5mmであり、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量は、通常0.1~120ml/h、好ましくは0.3~50ml/hであり、エアーノズルからのスリットあたりのガス流速は通常40~200m/sである。また、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量のばらつきは通常±5%以内、好ましくは±2%以内であり、エアノズルからのスリットあたりのガス流速のばらつきは通常±15%以内、好ましくは±8%以内である。かかる液、ガス流速をより精密に制御できることは、繊維径分布をよりシャープにするための極めて重要な要因となっているものと考えられる。
【0067】
かかる液流速の精密な制御を行うには、液を供給するポンプ自体の微細な脈動を制御することと、紡糸ノズル間の流量ばらつきをなくし紡糸ノズル1本当たりの流量が一定となるようにすることの2つが重要である。まず、液を供給するポンプの微細な脈動を抑制する方法としては、三連ダイヤフラム型のように複数のシリンダーを位相をずらして作動させることにより脈動を抑制する方式のポンプを採用したり、回転容積式一軸偏心ネジポンプのように長円形の断面のらせん状に穴の作られたパイプの中に偏心した、らせん状に屈曲した円断面のローターが回転し、流体を軸方向に移送するモーノポンプ型がある。一方、紡糸ノズル間の流量ばらつきは、紡糸液注入口に近いノズルほど吐出圧力(背圧)が高くなるために生じる。流量ばらつきをなくす方法としては、紡糸ノズル手前の液流路中にステンレス製ウール状材料を充填し紡糸ノズルの背圧を均一化することなどが挙げられる。また、かかるガス流速の精密な制御を行うには、ガスを供給するコンプレッサーの微細な脈動を抑制することと、エアーノズルの吐出圧力(背圧)を均一化することの2つが重要である。まず、ガスを供給するコンプレッサーの微細な脈動を抑制する方法としては、コンプレッサーとエアーノズルの間にレシーバータンクを設置してガス流量のぶれを緩和するバッファーとして作用させる方法がある。一方、エアーノズルの吐出圧のぶれは、スリット状エアーノズルの中央部においてガス注入口からの距離が近いためにガス流速が早く、スリット状エアーノズルの両端部においてはガス注入口からの距離が遠いためにガス流速が遅くなることに起因して生じる。エアーノズルの吐出圧を均一化する方法としては、ガス流路中に導入板(邪魔板)等を組み込むことや、エアーノズルのスリット間隔に分布を持たせ、ガス流速の早い部位はスリット間隔を狭くすることなどが挙げられる。
【0068】
また、上記のような紡糸ノズルによれば、紡糸液供給ノズルより押し出される紡糸液は、スプレー状(霧状)となることなく充分に延伸され、繊維相互で融着し難いので、紡糸条件を最適化することにより、繊維径分布の狭い均一なアルミナ繊維前駆体を得ることができる。
【0069】
更に、紡糸に際しては、先ず、水分の蒸発や紡糸液の分解が抑制された条件下において、紡糸液から充分に延伸された繊維が形成され、次いで、この繊維が速やかに乾燥されることが好ましい。そのためには、紡糸液から繊維が形成されて繊維捕集器に到達するまでの過程において、雰囲気を水分の蒸発を抑制する状態から水分の蒸発を促進する状態に変化させることが好ましい。そのため、紡糸液が気流と接触を開始する付近の相対湿度を通常20%以上、好ましくは30%以上とする。相対湿度の上限としては、特に制限はない。また、紡糸液が気流と接触を開始する付近の温度条件としては通常50℃以下、好ましくは0℃以上35℃以下、更に好ましくは5以上30℃以下とする。また、繊維捕集器付近の気流の相対湿度は35%未満、中でも30%以下とするのが好ましい。また、繊維捕集器付近の気流の温度は通常30℃以上55℃以下、中でも35℃以上50℃以下とする。
【0070】
紡糸液から充分に延伸された繊維が形成されるべき段階で雰囲気の温度が高すぎる場合は、水分の急激な蒸発その他により、充分に延伸された繊維が形成し難く、また、形成された繊維に欠陥が生じて最終的に取得される無機酸化物繊維が脆弱化する。アルミナ短繊維前駆体の集合体は、紡糸気流に対して略直角となるように金網製の無端ベルトを設置し、無端ベルトを回転させつつ、これにアルミナ短繊維前駆体を含む紡糸気流を衝突させる構造の集積装置により連続シート(薄層シート)として回収することができる。
【0071】
薄層シートは、連続的に引出して折畳み装置に送り、所定の幅に折り畳んで積み重ねつつ、折り畳み方向に対し直角方向に連続的に移動させることにより積層シートにすることが出来る。これにより、薄層シートの内側に配置されるため、積層シートの目付量がシート全体に亘って均一となる。上記の折畳み装置としては、特開2000-80547号公報に記載のものを使用することができる。
【0072】
[ニードリング工程]
ニードリング工程では、アルミナ短繊維前駆体の集合体(積層シート)にニードリングを施すことにより、厚さ方向にも配向された機械的強度の大きいアルミナ繊維集合体(アルミナ繊維ニードルブランケットという場合がある)とする。
【0073】
ニードリングの打数は、焼成後のアルミナ繊維集合体表面の単位面積あたりにして、通常1打/cm以上150打/cm以下であり、好ましくは5以上100打/cm以下であり、特に好ましくは8以上80打/cm以下である。ニードリング処理によって生じたニードル痕では、複雑に絡み合った繊維が積層方向に配向されており、アルミナ繊維集合体の積層方向の強化を図ることができ、結果として該アルミナ繊維集合体の高温サイクル面圧残存率(%)が45%以上となる点で好ましい。
【0074】
[焼成工程]
焼成工程では、上記ニードリング処理されたアルミナ短繊維前駆体の集合体を空気雰囲気中で焼成する。焼成温度は、通常500℃以上、好ましくは700℃以上1400℃以下の温度で行う。焼成温度が500℃未満の場合は結晶化が不十分なため強度の小さい脆弱なアルミナ繊維しか得られず、焼成温度が1400℃を越える場合は繊維の結晶の粒成長が進行して強度の小さい脆弱なアルミナ繊維しか得られない。好ましくは、焼成工程の最高焼成温度が1000℃以上1300℃以下であり、最高焼成温度までの昇温速度が40℃/分以下であり、より好ましくは30℃/分以下、さらに好ましくは20℃/分以下であり、一方、1℃/分以上が好ましく、より好ましくは3℃/分以上、さらに好ましくは5℃/分以上であり、上記焼成工程を上記条件とすることで、緻密な繊維構造を維持しつつ、高生産性を確保できる点で好ましい。
【0075】
上記紡糸液を紡糸及び焼成することにより製造されたアルミナ短繊維の化学組成は、通常アルミナ65質量%以上99質量%以下、かつシリカ1質量%以上35質量%以下であり、好ましくはアルミナ68質量%以上90質量%以下、かつシリカ10質量%以上32質量%以下、特に好ましくはアルミナ70質量%以上75質量%以下、かつシリカ25質量%以上30質量%以下である。アルミナ短繊維の化学組成が上記範囲内にあることで、アルミナ粒子の粗大化が起こりにくく、緻密な構造になりやすい点で好ましい。
【実施例
【0076】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
以下の実施例及び比較例において、アルミナ短繊維の平均繊維径分布その他の物性値、特性値の測定は次に示す方法で行った。
【0078】
[平均繊維径]
測定サンプルとしてアルミナ繊維集合体0.2~0.5gに荷重10kN/mを2回繰り返し与えることで測定サンプルを粉砕した。粉砕サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率1000~3000の範囲で適宜選択しながら撮影した。該SEM写真から、ノギス又は直定規で0.1mm単位で量り取る。そして、任意に合計300本の繊維径を測定し、次式により平均繊維径を算出した。この際、計算値は小数点以下2ケタを四捨五入して小数点以下1桁とした。また、合計300本に対して、繊維径が10.0μmを超える繊維の割合(%)を本数基準で算出した(但し該繊維は、融着した繊維を含まないものとする。)。
繊維径(μm)=(測定値)/(観察倍率)×1000
平均繊維径(μm)=300点の繊維径の合計値/300
(長さ加重幾何平均径-2×標準誤差)
長さ加重幾何平均径は前記(1)式で定義される。
【0079】
長さ加重幾何平均径-2×標準誤差は前記式(a)~(d)により算出した。
【0080】
[シリカゾル粒子径分布]
測定サンプル(SiO濃度20.5%溶液、10ml)を濃度0.002Nの塩酸で40倍に希釈して25℃にした後の希釈溶液5ml(最終濃度 0.5%)を、動的光散乱装置(大塚電子社製ELS-Z)により、以下の測定条件で、シリカゾル粒子径分布を測定した。得られたシリカゾル粒子径分布からモード径及び標準偏差を算出した。
[測定条件]
Correlation Method : T.D
Correlation Channel: 440
Angle(°) : 165.0
Incident Filter(%) : 10.12%
積算回数 : 70
【0081】
[平均単繊維引張強度]
サンプルであるアルミナ繊維一本を、1mm角のダイヤモンド基板上に載せ、島津製作所製微小圧縮試験機 MCTM-500にて、直径50μmの平面圧子を用いて、該アルミナ繊維一本あたりの破壊荷重を測定した。次式に従って破壊荷重より単繊維引張強度を求め、10点の単繊維引張強度の平均値を算出して、平均単繊維引張強度とした。
【0082】
[単繊維引張強度]=2・[破断強度]/([円周率]・[繊維径]・[繊維長])
【0083】
[比表面積・全細孔容積]
測定サンプル1gを乳鉢にて粉砕し、150℃、真空下で3時間減圧加熱処理を行った後、カンタークローム社製・オートソーブ3Bにて、液体窒素温度下で吸着等温線(吸着ガス:窒素)を測定した。得られた吸着側等温線を用いて、BET多点法解析を実施し比表面積を、また得られた吸着側及び脱離側吸着等温線を用いて、BJH法解析により全細孔分布を求めた。
【0084】
[25℃におけるサイクル面圧残存率]
温度条件を25℃にし、アルミナ繊維集合体をGBD(嵩密度)=0.33g/cmから0.38g/cmまで圧縮することを20回繰り返した。その際、第1回目のGBD=0.33g/cmでの面圧値と第20回目のGBD=0.33g/cmでの面圧値を測定し、以下の式より面圧の劣化度合いの指標となる面圧残存率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0085】
[25℃におけるサイクル面圧残存率(%)]=[第20回目の面圧値(GBD=0.33g/cm)]/[第1回目の面圧値(GBD=0.33g/cm)]×100
【0086】
[高温サイクル面圧残存率]
高温サイクル面圧の測定方法は、アルミナ繊維集合体をGBD(嵩密度)=0.38g/cmで30分間圧縮した後、上下のプレートを昇温速度15℃/分で600℃まで昇温し、GBD=0.33g/cm(開放側)から0.38g/cm(圧縮側)まで圧縮することを800回繰り返した。その際、第1回目のGBD=0.33g/cm(開放側)又は0.38g/cm(圧縮側)での面圧値と第800回目のGBD=0.33g/cm(開放側)又は0.38g/cm(圧縮側)での面圧値を測定し、以下の式より、面圧の劣化度合いの指標となる高温サイクル面圧残存率(%)を求めた。
[高温サイクル開放側面圧残存率(%)]=[第800回目の面圧値(GBD=0.33g/cm)]/[第1回目の面圧値(GBD=0.33g/cm)]×100
[高温サイクル圧縮側面圧残存率(%)]=[第800回目の面圧値(GBD=0.38g/cm)]/[第1回目の面圧値(GBD=0.38g/cm)]×100
【0087】
[水中嵩比重]
アルミナ繊維集合体を50mm角に打ち抜き、質量が5.0±0.03gになるように複数枚重ねて調整する。幅50mm角、厚み4mmの金型に入れ、プレス機で10kNの荷重を10分間かける。圧縮後、上記サンプルを5~10mm角程度に裂き、こぼれないように1Lのビーカーに水温23度のイオン交換水400mlと共に入れた。撹拌速度1000rpmにて10分間撹拌・解繊したのち、1Lメスシリンダーへ移した。その際、内壁や撹拌羽についた付着繊維をイオン交換水で洗い落しながら回収し、イオン交換水の総量を500mlとした。
【0088】
メスシリンダーの口を手で押え、7~8回反転・撹拌して繊維を分散させた後、15分間静置した。繊維スラリーの高さを5ml単位で読み取り、下記式より、水中嵩比重を求めた。
【0089】
水中嵩比重(g/ml)=マット質量/繊維の高さの読み値
【0090】
[ムライト化率]
測定サンプルを乳鉢にて粉砕し、X線回折装置(例えばRIGAKU社製)で感電圧30kv、感電流40mA、4°/分の速度で測定し、ムライトのピーク2θ=26.3°の高さhを読み取った。また、同じ条件でムライト標準物質(例えばNIST Alpha Quartz)を測定し、2θ=26.3°のピーク高hを読み取る。このときのムライト化率は以下の式で表す値となる。
【0091】
ムライト化率(%)=h/h×100
【0092】
<参考例1>
[紡糸液の調整工程]
先ず、アルミニウム濃度が163g/Lの塩基性塩化アルミニウムの水溶液1.0L当たり、モード径43nm(標準偏差24nm)、濃度20.5質量%のシリカゾル溶液0.496L、10質量%ポリビニルアルコール(重合度2400、ケン化度88.0)水溶液0.257Lを添加して混合した後、減圧濃縮し、紡糸液を得た。紡糸液の粘度は7.1×10mPa・s(25℃におけるB型粘度計(東機産業製(形式TVB-10M粘度計、ロータTM3(半径12.7mm、厚み1.67mm)回転速度12rpm))による測定、以下の実施例について同様)による測定値)であった。
【0093】
[紡糸工程]
上記の紡糸液をブローイング法で紡糸し、アルミナ繊維前駆体を得た。なお、紡糸ノズルとしては、特許第2602460号公報図6に記載されたものと同様の構造の紡糸ノズルを使用し、製造条件等は特許第2602460号に準じて実施した。
【0094】
[焼成工程]
上記のアルミナ繊維前駆体を、1200℃までの昇温速度を5℃/分、1200℃で30分間空気中で焼成し、アルミナ繊維集積体を得た。得られたアルミナ繊維集積体の評価を表1に示す。
【0095】
<参考例2>
参考例1において、10質量%ポリビニルアルコール(重合度2400、ケン化度88.0)水溶液の代わりに、ポリビニルアルコールA(重合度2100、ケン化度88.0)及びポリビニルアルコールB(重合度2600、ケン化度97.6)を比率8:2で混合し、ポリビニルアルコールとして10質量%の水溶液(重合度の加重平均2200、ケン化度の加重平均89.9)を同量添加して混合した後、減圧濃縮し得られた紡糸液の粘度が8.2×10mPa・sであること以外は、参考例1と同様にしてアルミナ繊維集積体を得た。得られたアルミナ繊維集積体の評価を表1に示す。
【0096】
<参考例3>
参考例1において、モード径43nm(標準偏差24nm)、濃度20.5質量%のシリカゾル溶液0.490Lの代わりに、シリカゾルのモード径22nm(標準偏差8nm)、濃度10.5%のシリカゾル0.957Lを添加し、減圧濃縮し得られた紡糸液の粘度が6.7×10mPa・sであり、ゲル状であったこと以外は、参考例1と同様にアルミナ繊維集積体を得た。得られたアルミナ繊維集積体の評価を表1に示す。
【0097】
<参考例4>
参考例1において、10質量%ポリビニルアルコール(重合度2400、ケン化度88.0)の代わりに、10質量%ポリビニルアルコール(重合度1700、ケン化度88.0)を同量添加して混合した後、減圧濃縮し得られた紡糸液の粘度が2.7×10mPa・sであった以外は、参考例1と同様にアルミナ繊維集積体を得た。得られたアルミナ繊維集積体の評価を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
<実施例1>
[紡糸液の調製工程]
参考例1と同様に、アルミニウム濃度が163g/Lの塩基性塩化アルミニウムの水溶液1.0L当たり20.5質量%シリカゾル溶液0.490L、10.5質量%ポリビニルアルコール(重合度2100、ケン化度88.0)水溶液0.243Lを添加して混合した後、減圧濃縮し、紡糸液を得た。紡糸液の濃度は8.0×10mPa・sであった。
【0100】
[紡糸工程]
次に、上記の紡糸液をブローイング法で紡糸した。紡糸ノズルとしては、特許第2602460号公報図6に記載されたものと同様の構造の紡糸ノズルを使用した。また、繊維捕集に際しては、高速気流に並行流で乾燥した165℃の温風(温度30℃、相対湿度40%の大気を加温)をスクリーンに導入することにより、繊維捕集器付近の空気流を温度45℃、相対湿度30%以下に調整した。そして、紡糸気流に対して略直角となる様に金網製の無端ベルトを設置し、無端ベルトを回転させつつ、これにアルミナ短繊維前駆体を含む紡糸気流を含む紡糸気流を衝突させる構造の集積装置により連続シート(薄層シート)として回収した。
【0101】
[積層工程]
集積装置より回収された薄層シートは、連続的に引出して折畳み装置に送り、所定の幅に折り畳んで積み重ねつつ、折り畳み方向に対して直角方向に連続的に移動させることにより積層シートにした。上記の折畳み装置としては、特開2000―80547号公報に記載されたものと同様の構造の折畳み装置を使用した。
【0102】
[ニードリング・焼成工程]
上記の積層シート(アルミナ短繊維前駆体の集合体)にニードリングを施した後、800℃までの昇温速度を16℃/分、1200℃で30分間空気中で焼成し、アルミナ繊維集合体を得た。上記のニードリングはニードルパンチング機械により、焼成後のアルミナ繊維集合体におけるニードル痕密度が5~30回/cmとなるようにパンチングを行い、ニードリング処理されたアルミナ繊維集合体(アルミナ繊維ニードルブランケット)を得た。得られたアルミナ繊維ニードルブランケットの評価を表2に示す。
【0103】
<実施例2>
実施例1において、10.5質量%ポリビニルアルコール(重合度2100、ケン化度88.0)水溶液0.243Lの代わりに、参考例2に記載のポリビニルアルコールA及びポリビニルアルコールBを含む水溶液を調整し、該水溶液0.258Lを添加し、減圧濃縮後の紡糸液の粘度が6.5×10mPa・sであったこと以外は、実施例1と同様にアルミナ繊維ニードルブランケットを得た。得られたアルミナ繊維ニードルブランケットの評価を表2に示す。
【0104】
<比較例1>
比較例1において、特開2005-120560に記載の条件に基づき、実施例1と同様にアルミナ繊維ニードルブランケットを得た。得られたアルミナ繊維ニードルブランケットの評価を表2に示す。なお、シリカゾルは参考例3に記載のものを使用した。
【0105】
【表2】
【0106】
表1,2に示した結果から、本発明のアルミナ繊維集合体では、特定の材料の配合と特定の製造条件を組み合わせることで従来品に比べ、繊維が6.0μmを超えても適度な強度かつ高温での耐久性が改善され、触媒担体把持材として適切な機能を有することが認められた。
【0107】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2016年7月11日付で出願された日本特許出願2016-136958に基づいており、その全体が引用により援用される。