IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-気泡発生装置 図1
  • 特許-気泡発生装置 図2
  • 特許-気泡発生装置 図3
  • 特許-気泡発生装置 図4
  • 特許-気泡発生装置 図5
  • 特許-気泡発生装置 図6
  • 特許-気泡発生装置 図7
  • 特許-気泡発生装置 図8
  • 特許-気泡発生装置 図9
  • 特許-気泡発生装置 図10
  • 特許-気泡発生装置 図11
  • 特許-気泡発生装置 図12
  • 特許-気泡発生装置 図13
  • 特許-気泡発生装置 図14
  • 特許-気泡発生装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/231 20220101AFI20221122BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20221122BHJP
   B01F 25/441 20220101ALI20221122BHJP
   B01F 31/31 20220101ALI20221122BHJP
   B01F 35/51 20220101ALI20221122BHJP
【FI】
B01F23/231
B01F23/2373
B01F25/441
B01F31/31
B01F35/51
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021507171
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009072
(87)【国際公開番号】W WO2020189272
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019053325
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克己
(72)【発明者】
【氏名】小木 良浩
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-087984(JP,A)
【文献】特開2016-209825(JP,A)
【文献】特開2017-176979(JP,A)
【文献】特許第6039139(JP,B1)
【文献】特開2007-253000(JP,A)
【文献】特開2003-093858(JP,A)
【文献】特開2008-093902(JP,A)
【文献】特開平06-023994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動により微細な気泡を液体中に発生させる気泡発生装置であって、
複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する振動板と、
前記振動板を振動させる圧電素子と、
前記振動板を保持し、前記圧電素子の振動を前記振動板に伝える振動体と、を備え、
前記振動体は、前記振動板の前記他方の面に気体を導入するための導入孔を有し、前記振動板を保持する面に対して垂直の面に前記圧電素子が設けられ、
前記振動板を振動させる振動方向には、前記複数の開口部を流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含む、気泡発生装置。
【請求項2】
振動により微細な気泡を液体中に発生させる気泡発生装置であって、
複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する振動板と、
前記振動板を振動させる圧電素子とを備え、
前記振動板の周辺部に対応する位置に前記圧電素子を配置し、
前記振動板の周辺部から中央部までの範囲に前記複数の開口部を設け、前記振動板の面内において中央部から周辺部の方向に拡がりまたは周辺部から中央部の方向に縮むように、前記振動板を前記圧電素子の駆動で振動させる、気泡発生装置。
【請求項3】
振動により微細な気泡を液体中に発生させる気泡発生装置であって、
複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する振動板と、
前記振動板を振動させる圧電素子とを備え、
前記振動板の周辺部に対応する位置に複数の前記圧電素子を配置し、
前記振動板の周辺部から中央部までの範囲に前記複数の開口部を設け、前記複数の開口部を形成した前記振動板の面内でねじるように、前記振動板を複数の前記圧電素子の駆動で振動させる、気泡発生装置。
【請求項4】
前記振動板を振動させる振動方向には、前記複数の開口部を流れる気体の方向に対して垂直方向の振動成分を少なくとも含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の気泡発生装置。
【請求項5】
前記振動板は、ガラス板で形成されている、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の気泡発生装置。
【請求項6】
前記振動板は、孔径が1μm~20μmの前記開口部を、孔径の10倍以上の間隔で複数形成してある、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の気泡発生装置。
【請求項7】
前記開口部の形状は、前記液体槽の液体と接する前記一方の面の孔径に比べ、気体と接する前記他方の面の孔径が大きいテーパ形状である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細な気泡を使って水質浄化、排水処理、魚の養殖などが行なわれており、微細な気泡が様々な分野で利用されている。そのため、微細な気泡を発生する気泡発生装置が開発されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の気泡発生装置では、圧電素子を利用して微細な気泡を発生させている。この気泡発生装置では、屈曲振動する振動板の中央部での上下振動を利用して、振動板に形成した細孔で発生した気泡を振動で引きちぎり微細化している。そのため、この気泡発生装置は、振動板に形成した細孔を流れる空気の方向と、振動板の振動方向とが平行であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6108526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細孔に流れる空気は、振動板と液体との界面で気泡となり液体中を上昇することになる。細孔を流れる空気の方向と、振動板の振動方向とが平行である場合、振動板の表面に発生した気泡が、細孔から押し出される直噴流の流れに乗って一気に上昇し、水槽の水面で大気中に放散されることになる。そのため、特許文献1に記載の気泡発生装置では、発生させた気泡を液体中に長く浮遊させることができず、液体中に残留する微細な気泡の量が少なくなる問題があった。
【0006】
そこで、本開示の目的は、液体中に残留する微細な気泡の量を増加させることができる気泡発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係る気泡発生装置は、振動により微細な気泡を液体中に発生させる気泡発生装置であって、複数の開口部が形成され、一方の面が液体槽の液体と接し、他方の面が気体と接する振動板と、振動板を振動させる圧電素子と、振動板を保持し、圧電素子の振動を振動板に伝える振動体と、を備え、振動体は、振動板の他方の面に気体を導入するための導入孔を有し、振動板を保持する面に対して垂直の面に圧電素子が設けられ、振動板を振動させる振動方向には、複数の開口部を流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、振動板を振動させる振動方向には、複数の開口部を流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含むため、液体中に残留する微細な気泡の量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態1に係る気泡発生装置が用いられる水質浄化装置の概略図である。
図2】本実施の形態1に係る気泡発生装置の振動体の概略図である。
図3】本実施の形態1に係る気泡発生装置の振動体の部分断面図である。
図4】本実施の形態1に係る気泡発生装置の振動体の振動状態を示す図である。
図5】本実施の形態1に係る振動板の平面図である。
図6】本実施の形態1に係る振動板に形成した開口部の断面図である。
図7】本実施の形態2に係る気泡発生装置が用いられる水質浄化装置の概略図である。
図8】本実施の形態2に係る気泡発生装置の振動体の斜視図である。
図9】本実施の形態2に係る気泡発生装置の振動体の振動状態を示す図である。
図10】本実施の形態3に係る気泡発生装置が用いられる水質浄化装置の概略図である。
図11】本実施の形態3に係る気泡発生装置の振動体の概略図である。
図12】本実施の形態3に係る気泡発生装置の振動体の振動状態を示す図である。
図13】本実施の形態4に係る気泡発生装置が用いられる水質浄化装置の概略図である。
図14】本実施の形態4に係る気泡発生装置の振動体等の分解斜視図である。
図15】本実施の形態4に係る気泡発生装置の振動板の振動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下に、本実施の形態1に係る気泡発生装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
まず、図1は、本実施の形態1に係る気泡発生装置1が用いられる水質浄化装置100の概略図である。図1に示す気泡発生装置1は、例えば水槽(液体槽)10の底部に設けられ、水槽10の水に微細な気泡を発生させる水質浄化装置100に用いられる。なお、気泡発生装置1の用途は、水質浄化装置100に限定されず、排水処理装置、魚の養殖用水槽などの様々な用途に適用することができる。
【0012】
気泡発生装置1は、振動板2と、振動体3と、圧電素子4と、保持部5と、支持部6とを備えている。気泡発生装置1は、水槽10の底部の一部に開けた孔に保持部5に保持された振動体3を設けている。振動体3と保持部5との境界部分は封止してあり、保持部5の内部空間と水槽10の水とを完全分離してある。保持部5の内部空間には、振動体3の側面に圧電素子4が設けられているので、圧電素子4の電気配線等が液体に浸かることを防止できる。
【0013】
振動体3には、空気を通すための導入孔3dが設けられてあり、導入孔3dの一端が保持部5の内部空間側に設けられている。保持部5は、支持部6上に設けられている。支持部6には、導入孔6aが設けてあり、導入孔6aから保持部5の内部空間に空気が送り込まれる。導入孔6aから保持部5の内部空間に送り込まれた空気は、振動体3の導入孔3dを通って第1の端部3aおよび第2の端部3bに設けた振動板2に至る。
【0014】
気泡発生装置1では、振動体3の側面に設けた圧電素子4で振動板2および振動体3を振動させることで、導入孔3dを通って送り込まれた空気を振動板2に形成した複数の細孔(開口部)から微細な気泡として発生させている。気泡発生装置1では、図1に示す方向に背圧(例えば、0.08atm~0.12atm(8~12kPa)程度)を加えることで、導入孔3dを介して振動板2に形成した複数の細孔に空気を供給している。
【0015】
振動板2は、ガラス板で形成されている。振動板2をガラス板で形成する場合、例えば、波長が200nm~380nmの紫外光および深紫外光を透過させるガラス板で形成してもよい。紫外光および深紫外光を透過させるガラス板で形成することで、振動板2の他方の面側から水槽10の水に対して紫外光を発する光源を設け、オゾン生成による殺菌と紫外光照射による殺菌とを兼用させることができる。なお、ガラス板には、石英ガラスや、組成がコントロールされ深紫外線の透過度を向上させた疑似石英合成ガラスなどが用いられる。なお、振動板2は、金属板で形成してもよく、ガラス以外に他の材質(例えば、金属、樹脂など)で形成してもよい。
【0016】
振動板2は、複数の細孔が形成され、一方の面が水槽10の水(液体)と接し、他方の面が振動体3の第1の端部3aまたは第2の端部3bと接している。気泡発生装置1では、振動体3に設けた導入孔3dを通った空気を第1の端部3aおよび第2の端部3bから振動板2の細孔を通って水槽10の水に送り込むことで微細な気泡を発生させている。
【0017】
気泡発生装置1では、圧電素子4で振動板2および振動体3を振動させている。図2は、本実施の形態1に係る気泡発生装置1の振動体3の概略図である。図2(a)は、振動体3の斜視図、図2(b)は、振動体3の側面図、図2(c)は、振動体3の平面図である。図3は、本実施の形態1に係る気泡発生装置1の振動体3の部分断面図である。
【0018】
振動体3は、第1の端部3aと、第1の端部3aとは反対側の第2の端部3bとを有する。振動体3は、円板形状の第1の端部3aと第2の端部3bと柱形状の部分3cで連結した形状である。第2の端部3bは、柱形状の部分3cの長辺方向において、第1の端部3aと反対側に位置している。
【0019】
第1の端部3aおよび第2の端部3bが、振動板2にそれぞれ連結されている。すなわち、振動板2の細孔が、第1の端部3a側の導入孔3dおよび第2の端部3b側の導入孔3dと連結されている。第2の端部3bが、導入孔3dは、振動体3の柱形状の部分3cにも設けられている。
【0020】
振動体3は本実施の形態では、アルミ合金からなる。もっとも、アルミ合金に代えて、ステンレスなど他の金属材料が用いられてもよい。好ましくは、アルミ合金やステンレスなどの剛性の高い金属が望ましい。
【0021】
振動体3は、円柱の第1の端部3aおよび第2の端部3bを残し、中央部分を柱形状に削った形状である。そのため、振動体3は、第1の端部3a、第2の端部3bおよび柱形状の部分3cが同じ材料により一体に構成されている。なお、振動体3は、柱形状の部分3cに、別部材としての第1の端部3aおよび第2の端部3bが接合され、柱形状の部分3cと、第1の端部3aおよび第2の端部3bとが別部材で構成されていてもよい。
【0022】
振動体3の柱形状の部分3cには、圧電素子4が固定されている。圧電素子4は、圧電体と、圧電体の両面に設けられた電極とを有する。圧電体は、厚み方向に、すなわち振動体3の第1の端部3aおよび第2の端部3bの平面と平行方向に分極されている。圧電体は、圧電セラミックスなどの圧電体からなる。
【0023】
圧電素子4が振動体3の柱形状の部分3cに接合されている構造で圧電素子4を屈曲振動モードで駆動することにより、振動板2および振動体3を屈曲振動する振動体を構成している。なお、圧電素子4は、例えば、幅が8mm、長さが16mm、厚みが1mmである。また、圧電素子4は、例えば、電圧が50Vpp~70Vpp、デューティ比50%の矩形波形の動作条件で駆動される。
【0024】
気泡発生装置1では、この圧電素子4における屈曲振動モードでの駆動が、振動板2および振動体3を振動させて微細な気泡を発生させている。圧電素子4の電極には、図示していないコントローラの信号が供給され、当該信号に基づいて圧電素子4が駆動される。
【0025】
なお、圧電素子4は、柱形状の部分3cの一面に一つ設けると説明したが、これに限定されない。圧電素子4は、例えば、柱形状の部分3cの一面に複数設けた構成でもよい。
【0026】
次に、気泡発生装置1での振動板2および振動体3の振動について詳しく説明する。図4は、本実施の形態1に係る気泡発生装置の振動体の振動状態を示す図である。図4には、気泡発生装置1の振動体3の振動についてシミュレーションした結果の変位が示されている。
【0027】
図4に示す振動体3では、柱形状の部分3cに圧電素子4が設けられている。この圧電素子4の電極間に交流電界を印加することで、圧電素子4を屈曲振動モードで駆動して振動体3を屈曲振動させる。この屈曲振動の変位により、振動体3の第1の端部3aおよび第2の端部3bに設けた振動板2が図中左右方向(振動方向)に変位する。一方、振動板2に形成した複数の細孔を流れる気体の方向は図中上下方向であり、圧電素子4の駆動で振動する振動板2の振動方向と異なっている。
【0028】
気泡発生装置1では、図4に示すように振動板2を振動させる振動方向が、複数の細孔を流れる気体の方向に対して垂直方向となる振動成分を含んでいる。そのため、気泡発生装置1では、振動板2の表面に発生した気泡が、細孔から押し出される直噴流の流れに対して影響を受け難く、気泡が一気に上昇して水槽10の水面で大気中に放散されることを防止できる。また、気泡発生装置1では、発生させた気泡を水槽10の水中に長く浮遊させることができ、水中に残留する微細な気泡の量を多くすることができる。
【0029】
特に、振動板2を振動させる振動方向が、複数の細孔を流れる気体の方向に対して垂直方向であれば、細孔から押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響をより受け難くすることができる。なお、気泡発生装置1は、図4に示すように振動板2を振動させる振動方向が、複数の細孔を流れる気体の方向に対して垂直方向である場合に限られず、振動板2の振動方向と、複数の細孔を流れる気体の方向とを異ならせて垂直方向となる振動成分を少なくとも含むのであれば、細孔から押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難くできればよい。
【0030】
振動板2には、複数の細孔が形成されている。図5は、本実施の形態に係る振動板の平面図である。図5に示す振動板2は、直径14mmのガラス板2aの中央部に設けた5mm×5mmの領域に複数の細孔2bが形成されている。振動板2は、例えば、細孔2bの孔径を10μm、細孔2bの間隔を0.25mmにした場合、5mm×5mmの領域に441個の細孔2bを形成することができる。なお、図5では、ガラス板2aに複数の細孔2bが形成されていることをイメージし易くするため、細孔2bの孔径および細孔2bの間隔が実際のスケールとは異なっている。
【0031】
振動板2に設けられる細孔2bは、液体と接する側の面での孔径が1μm~20μmである。当該細孔2bから導入された空気により、水槽10の水に約10倍の径の微細な気泡が発生する。細孔2bは、孔径の10倍以上の間隔で複数形成されているので、1つの細孔2bから発生した微細な気泡が隣の細孔2bから発生した微細な気泡とつながることを防止して独立した微細な気泡を発生させる性能を向上させている。
【0032】
ガラス板2aに複数の細孔2bを形成するための方法として、例えば、レーザと液相エッティングとを組み合わせた方法がある。具体的に、この方法では、ガラス板2aにレーザを照射することにより、レーザエネルギーでガラス板2aに組成変性を起こさせ、その部分を液体フッ化物系のエッティング材などで侵食させて複数の細孔2bを形成している。
【0033】
図6は、本実施の形態に係る振動板に形成した細孔(開口部)2bの断面図である。図6に示すように、ガラス板2aに形成される細孔2bの形状は、図中下側の面の孔径に比べ、上側の面の孔径が大きいテーパ形状である。孔径の小さい面を水槽10の水と接する面に、孔径の大きい面を気体と接する面にして振動板2を配置することで、細孔2bで発生する微細な気泡の径をより小さくすることができる。もちろん、孔径の大きい面を水槽10の水と接する面に、孔径の小さい面を気体と接する面にして振動板2を配置してもよい。
【0034】
振動板2にガラス板2aを使用した場合、金属板を利用する場合と比較して、液体への金属イオンの溶出による液体汚染を防ぐことができるメリットがある。また、金属板に細孔を形成した場合、金属の腐食防止のためにメッキを行う必要がある。液体への金属イオンの溶出を防止するには、貴金属を用いる必要がある。そのため、細孔を形成した金属板を貴金属でメッキを行うと、振動板のコストが高価になる。
【0035】
以上のように、本実施の形態1に係る気泡発生装置1は、振動により微細な気泡を液体中に発生させる気泡発生装置である。気泡発生装置1は、複数の細孔2b(開口部)が形成され、一方の面が水槽10の水(液体)と接し、他方の面が気体と接する振動板2と、振動板2を振動させる圧電素子4とを備えている。振動板2を振動させる振動方向には、複数の細孔2bを流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含む。
【0036】
これにより、気泡発生装置1は、振動板を振動させる振動方向には、複数の細孔2bを流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含むため、細孔2bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難く、液体中に残留する微細な気泡の量を増加させることができる。
【0037】
圧電素子4を屈曲振動モードで駆動し、圧電素子4の駆動で振動する振動板2の振動方向には、複数の細孔2bを流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含む。これにより、気泡発生装置1は、屈曲振動モードで圧電素子4を駆動し、液体中に残留する微細な気泡の量を増加させることができる。
【0038】
振動板2を振動させる振動方向には、複数の細孔2bを流れる気体の方向に対して垂直方向の振動成分を少なくとも含むものであればよい。これにより、細孔から押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響をより受け難くすることができ、液体中に残留する微細な気泡の量をより増加させることができる。
【0039】
また、振動板2は、ガラス板で形成されてもよい。これにより、気泡発生装置1は、水槽10の水(液体)への金属イオンの溶出による液体汚染を防ぐことができる。
【0040】
また、振動板2は、液体と接する側の面での孔径が1μm~20μmの細孔2bを、孔径の10倍以上の間隔で複数形成してもよい。これにより、気泡発生装置1は、1つの細孔2bから発生した微細な気泡200が隣の細孔2bから発生した微細な気泡200とつながることを防止でき、独立した微細な気泡200を発生させることができる。
【0041】
さらに、細孔2bの形状は、水槽10の水(液体)と接する一方の面の孔径に比べ、気体と接する他方の面の孔径が大きいテーパ形状であってもよい。これにより、気泡発生装置1は、細孔2bで発生する微細な気泡200の径をより小さくすることができる。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態1では、振動板2を振動させる振動方向に、複数の細孔2bを流れる気体の方向と異なる方向が少なくとも含まれるように、水槽10の水中に設けた保持部5で振動体3を保持する構成について説明した。本実施の形態2では、保持部を設けることなく、振動板を振動させる振動方向に、複数の細孔を流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含ませる構成について説明する。
【0043】
図7は、本実施の形態2に係る気泡発生装置1aが用いられる水質浄化装置110の概略図である。なお、本実施の形態2に係る水質浄化装置110は、図1に示す実施の形態1に係る水質浄化装置100の構成と同じで構成について同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0044】
図7に示す気泡発生装置1aは、例えば水槽(液体槽)10の底部に設けられ、水槽10の水に微細な気泡を発生させる水質浄化装置110に用いられる。なお、気泡発生装置1aの用途は、水質浄化装置110に限定されず、排水処理装置、魚の養殖用水槽などの様々な用途に適用することができる。
【0045】
気泡発生装置1aは、振動板2と、振動体30と、圧電素子4とを備えている。振動体30は、H字(音叉)の形状をしており、水槽10の底部の一部に開けた孔に保持され、振動体30の一部が水槽10の水側(液体側)に配置されている。振動体30と水槽10の底部との境界部分は封止してあり、水槽10の外側(気体側)にある振動体30の部分と水槽10の水とを完全分離してある。水槽10の外側にある振動体30の部分には、圧電素子4が設けられているので、圧電素子4の電気配線等が液体に浸かることを防止できる。
【0046】
振動体30には、空気を通すための導入孔30dが設けられてあり、導入孔30dの一端が水槽10の水側に、導入孔30dの他端が水槽10の外側にそれぞれ設けられている。導入孔30dの他端から送り込まれた空気は、導入孔30dを通って振動体30の一端(水槽10の水側)に設けた振動板2に至る。
【0047】
気泡発生装置1aでは、水槽10の外側にある振動体30の側面に設けた圧電素子4で振動板2および振動体30を振動させることで、導入孔30dを通って送り込まれた空気を振動板2に形成した複数の細孔(開口部)から微細な気泡として発生させている。気泡発生装置1aでは、図7に示す方向に背圧(例えば、0.08atm~0.12atm(8~12kPa)程度)を加えることで、導入孔30dを介して振動板2に形成した複数の細孔に空気を供給している。
【0048】
気泡発生装置1aでは、圧電素子4で振動板2および振動体30を振動させている。図8は、本実施の形態2に係る気泡発生装置1aの振動体30の斜視図である。
【0049】
振動体30は、柱形状の部分30aと、柱形状の部分30aとは平行に配置されている柱形状の部分30bとを有する。振動体30は、柱形状の部分30aと柱形状の部分30bとの中央部を連結部分30cで連結したH字の形状である。柱形状の部分30aおよび柱形状の部分30bの一端(水槽10の水側)には、振動板2がそれぞれ設けられている。なお、柱形状の部分30aおよび柱形状の部分30bの一端の形状が矩形であるため、振動板2の外形も矩形であるが、図5で示したようにガラス板2aに複数の細孔2bが形成されている。
【0050】
振動体30は本実施の形態では、アルミ合金からなる。もっとも、アルミ合金に代えて、ステンレスなど他の金属材料が用いられてもよい。好ましくは、アルミ合金やステンレスなどの剛性の高い金属が望ましい。
【0051】
振動体30は、柱形状の部分30aと柱形状の部分30bとの中央部を連結部分30cで連結したH字(音叉)の形状である。そのため、振動体30は、柱形状の部分30a、柱形状の部分30bおよび連結部分30cが同じ材料により一体に構成されている。なお、振動体30は、連結部分30cに、別部材としての柱形状の部分30aおよび柱形状の部分30bが接合され、連結部分30cと、柱形状の部分30aおよび柱形状の部分30bとが別部材で構成されていてもよい。
【0052】
次に、気泡発生装置1aでの振動板2および振動体30の振動について詳しく説明する。図9は、本実施の形態2に係る気泡発生装置1aの振動体30の振動状態を示す図である。図9には、気泡発生装置1aの振動体30の振動についてシミュレーションした結果の変位が示されている。
【0053】
図9に示す振動体30では、柱形状の部分30aおよび柱形状の部分30bに圧電素子4が設けられている。この圧電素子4の電極間に交流電界を印加することで、圧電素子4を屈曲振動モードで駆動して振動体30を屈曲振動させる。この屈曲振動の変位により、振動体30の第1の端部3aおよび第2の端部3bに設けた振動板2が図中矢印方向(振動方向)に変位する。一方、振動板2に形成した複数の細孔2bを流れる気体の方向は図中上下方向であり、圧電素子4の駆動で振動する振動板2の振動方向と異なっている。
【0054】
気泡発生装置1aでは、図9に示すように振動板2を振動させる振動方向が、複数の細孔2bを流れる気体の方向に対して垂直方向となっている。そのため、気泡発生装置1aでは、振動板2の表面に発生した気泡が、細孔2bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難く、気泡が一気に上昇して水槽10の水面で大気中に放散されることを防止できる。また、気泡発生装置1aでは、発生させた気泡を水槽10の水中に長く浮遊させることができ、水中に残留する微細な気泡の量を多くすることができる。
【0055】
特に、振動板2を振動させる振動方向が、複数の細孔2bを流れる気体の方向に対して垂直方向であれば、細孔2bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響をより受け難くすることができる。なお、気泡発生装置1aは、図9に示すように振動板2を振動させる振動方向が、複数の細孔2bを流れる気体の方向に対して垂直方向である場合に限られず、振動板2の振動方向と、複数の細孔2bを流れる気体の方向とを異ならせて垂直方向となる振動成分を少なくとも含むのであれば、細孔2bから押し出される直噴流の流れに気泡が対して影響を受け難くできればよい。
【0056】
以上のように、本実施の形態2に係る気泡発生装置1aは、圧電素子4を屈曲振動モードで駆動し、圧電素子4の駆動で振動する振動板2の振動方向には、複数の細孔2bを流れる気体の方向と異なる方向を少なくとも含む。これにより、気泡発生装置1aは、複数の細孔2bを流れる気体の方向と、振動板2を振動させる振動方向とを異ならせ、細孔2bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難くさせることができる。
【0057】
(実施の形態3)
実施の形態1では、圧電素子4を屈曲振動モードで駆動して振動体3を屈曲振動させる構成について説明した。本実施の形態3では、圧電素子を屈曲振動モード以外で駆動して振動体を振動させる構成について説明する。
【0058】
図10は、本実施の形態3に係る気泡発生装置1bが用いられる水質浄化装置120の概略図である。なお、本実施の形態3に係る水質浄化装置120は、図1に示す実施の形態1に係る水質浄化装置100の構成と同じで構成について同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0059】
気泡発生装置1bは、振動板21と、振動体31と、圧電素子41と、保持部51と、支持部6とを備えている。気泡発生装置1bは、水槽10の底部の一部に開けた孔に保持部51に保持された振動板21を設けている。振動板21と保持部51との境界部分は封止してあり、保持部51の内部空間と水槽10の水とを完全分離してある。保持部51の内部空間には、振動板21の下面に圧電素子41が設けられているので、圧電素子41の電気配線等が液体に浸かることを防止できる。
【0060】
振動板21の下面に圧電素子41を挟んで振動体31が設けられている。振動体31には、空気を通すための導入孔31dが設けられてあり、導入孔31dの一端が水槽10の外側(気体側)に設けられている。保持部51は、支持部6上に設けられている。支持部6には、導入孔6aが設けてあり、導入孔6aから導入孔31dに空気が送り込まれる。導入孔6aから送り込まれた空気は、振動体31の導入孔31dを通って振動板21に至る。
【0061】
気泡発生装置1bでは、振動体31の外周端に設けた圧電素子41で振動板21および振動体31を振動させることで、導入孔31dを通って送り込まれた空気を振動板21に形成した複数の細孔(開口部)から微細な気泡として発生させている。気泡発生装置1bでは、図10に示す方向に背圧(例えば、0.08atm~0.12atm(8~12kPa)程度)を加えることで、導入孔31dを介して振動板21に形成した複数の細孔に空気を供給している。
【0062】
振動板21は、複数の細孔が圧電素子41を配置した位置近傍に形成され、一方の面が水槽10の水(液体)と接し、他方の面が圧電素子41と接している。気泡発生装置1bでは、振動体31に設けた導入孔31dを通った空気を振動板21の細孔を通って水槽10の水に送り込むことで微細な気泡を発生させている。
【0063】
気泡発生装置1bでは、圧電素子41で振動板21および振動体31を振動させている。図11は、本実施の形態3に係る気泡発生装置1bの振動体31の概略図である。図11(a)は、振動体31の部分断面図、図11(b)は、振動体31の側面図である。
【0064】
振動体31は、中心部に導入孔31dに設けたドーナツ状の板で、外周端部にリング状の圧電素子41に連結されている。さらに、圧電素子41は、振動体31と連結した反対側の面で振動板21に連結されている。
【0065】
振動体31は本実施の形態では、アルミ合金からなる。もっとも、アルミ合金に代えて、ステンレスなど他の金属材料が用いられてもよい。好ましくは、アルミ合金やステンレスなどの剛性の高い金属が望ましい。
【0066】
圧電素子41は、圧電体と、圧電体の両面に設けられた電極とを有する。圧電体は、厚み方向に、すなわち振動体31と振動板21とを重ねる方向に分極されている。圧電体は、圧電セラミックスなどの圧電体からなる。
【0067】
圧電素子41が振動体31の外周端部に連結されている構造で圧電素子41を拡がり振動モードで駆動することにより、振動板21および振動体31を拡がり振動する振動体を構成している。圧電素子41では、圧電セラミックスの機械的共振を利用し、その共振周波数(例えば、100kHz~数MHz)によって薄い角板または円板の面方向に拡がる拡がり振動モードで駆動することができる。
【0068】
気泡発生装置1bでは、この圧電素子41における拡がり振動モードでの駆動が、振動板21および振動体31を振動させて微細な気泡を発生させている。圧電素子41の電極には、図示していないコントローラの信号が供給され、当該信号に基づいて圧電素子41が駆動される。
【0069】
なお、圧電素子41は、リング状の圧電素子を振動体31の一面に一つ設けると説明したが、これに限定されない。圧電素子41は、例えば、振動体31の一面に複数の圧電素子をリング状に並べて設けた構成でもよい。
【0070】
次に、気泡発生装置1bの振動板21および振動体31の振動について詳しく説明する。図12は、本実施の形態3に係る気泡発生装置1bの振動体31の振動状態を示す図である。図12には、気泡発生装置1bの振動体31の振動についてシミュレーションした結果の変位方向が示されている。
【0071】
図12に示す振動体31では、振動体31の外周端部に圧電素子41が設けられている。なお、振動板21には、図5で示した振動板2とは異なり、複数の細孔21bを中央部ではなく圧電素子41を配置した位置近傍に形成している。振動板21の中央部ではなく外周端部と中央部との間(振動板21の周辺部から中央部までの範囲)に複数の細孔21bを配置することで、圧電素子41による拡がり振動の大きい位置に配置することができる。振動板21に形成される複数の細孔21bも、図6で示したような細孔2bが形成されている。
【0072】
この圧電素子41の電極間に交流電界を印加することで、圧電素子41を拡がり振動モードで駆動して振動板21を拡がり振動させる。この拡がり振動の変位により、振動板21の中心から外周に向かう図中矢印方向(振動方向)に変位する。一方、振動板21に形成した複数の細孔21bを流れる気体の方向は図中上下方向(振動板21の面に対して垂直方向)であり、圧電素子41の駆動で振動する振動板21の振動方向と異なっている。
【0073】
気泡発生装置1bでは、図12に示すように振動板21を振動させる振動方向が、複数の細孔21bを流れる気体の方向に対して垂直方向となっている。そのため、気泡発生装置1bでは、振動板21の表面に発生した気泡が、細孔21bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難く、気泡が一気に上昇して水槽10の水面で大気中に放散されることを防止できる。また、気泡発生装置1bでは、発生させた気泡を水槽10の水中に長く浮遊させることができ、水中に残留する微細な気泡の量を多くすることができる。
【0074】
特に、振動板21を振動させる振動方向が、複数の細孔21bを流れる気体の方向に対して垂直方向であれば、細孔21bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響をより受け難くすることができる。なお、気泡発生装置1bは、図12に示すように振動板21を振動させる振動方向が、複数の細孔21bを流れる気体の方向に対して垂直方向である場合に限られず、振動板21の振動方向と、複数の細孔21bを流れる気体の方向とを異ならせて垂直方向となる振動成分を少なくとも含むのであれば、細孔から押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難くできればよい。なお、圧電素子41を拡がり振動モードで駆動し、振動板21に高次モードの屈曲振動が生じた場合、振動板21を振動させる振動方向の振動成分には、垂直方向の拡がり振動成分以外に、平行方向の屈曲振動成分を含むことがある。しかし、平行方向の屈曲振動成分が、垂直方向の拡がり振動成分に対してわずかであれば、直噴流の流れに対する気泡の影響は小さい。
【0075】
以上のように、本実施の形態3に係る気泡発生装置1bは、圧電素子41を拡がり振動モードで駆動し、振動板21の周辺部から中央部までの範囲に複数の細孔21bを設け、振動板21の周辺部を圧電素子41の駆動で振動させる。これにより、気泡発生装置1bは、拡がり振動モードで圧電素子41を駆動し、複数の細孔21bを流れる気体の方向と、振動板21を振動させる振動方向とを異ならせ、細孔21bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難くさせることができる。
【0076】
(実施の形態4)
実施の形態1では、圧電素子4を屈曲振動モードで駆動して振動体3を屈曲振動させる構成について説明した。本実施の形態4では、振動体を屈曲振動以外で振動させる構成について説明する。
【0077】
図13は、本実施の形態4に係る気泡発生装置1cが用いられる水質浄化装置130の概略図である。なお、本実施の形態4に係る水質浄化装置130は、図1に示す実施の形態1に係る水質浄化装置100の構成と同じで構成について同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0078】
気泡発生装置1cは、振動板22と、振動体32と、圧電素子42と、保持部52a,52bと、支持部62を備えている。気泡発生装置1cは、水槽10の底部の一部に開けた孔に保持部52aに保持された振動体32を設けている。振動体32と保持部52aとの境界部分は封止してあり、保持部52aよりも下側の空間と水槽10の水とを完全分離してある。保持部52aよりも下側の空間には、圧電素子42が設けられているので、圧電素子42の電気配線等が液体に浸かることを防止できる。
【0079】
保持部52aの上面に振動体32を挟んで振動板22が設けられている。振動体32は、筒体で空気を通すことができる。保持部52bは、支持部62上に設けられ、圧電素子42を挟んで保持部52aと連結している。保持部52aおよび保持部52bは、中央部に開口部を有している。支持部62は、筒体で空気を通すことができ、保持部52aおよび保持部52bを介して振動体32と連結することで振動板22に空気が送り込まれる。
【0080】
気泡発生装置1cでは、振動体32の外周端に設けた圧電素子42で振動板22および振動体32を振動させることで、支持部62および振動体32を通って送り込まれた空気を振動板22に形成した複数の細孔(開口部)から微細な気泡として発生させている。気泡発生装置1cでは、図13に示す方向に背圧(例えば、0.08atm~0.12atm(8~12kPa)程度)を加えることで、支持部62および振動体32を介して振動板22に形成した複数の細孔に空気を供給している。
【0081】
振動板22は、複数の細孔が振動板22の中央部ではなく外周端部と中央部との間に形成され、一方の面が水槽10の水(液体)と接し、他方の面が振動体32と接している。
【0082】
図14は、本実施の形態4に係る気泡発生装置1cの振動体等の分解斜視図である。振動体32は、筒体で、両端につば部を設けた形状である。振動体32は、保持部52aを介して圧電素子42と連結している。圧電素子42は、保持部52aの開口部に沿って複数の圧電素子が配置されている。圧電素子42は、保持部52bを介して支持部62に連結されている。
【0083】
振動体32は本実施の形態では、アルミ合金からなる。もっとも、アルミ合金に代えて、ステンレスなど他の金属材料が用いられてもよい。好ましくは、アルミ合金やステンレスなどの剛性の高い金属が望ましい。
【0084】
圧電素子42は、圧電体と、圧電体の両面に設けられた電極とを有する。圧電体は、厚み方向の分極を使用せず、図14に示す矢印方向のように圧電体の長さ方向に対して平行に分極されている。圧電体は、圧電セラミックスなどの圧電体からなる。
【0085】
圧電素子42は、振動板22の周辺部に対応する位置に複数の圧電素子を配置し、各々の圧電素子を長さ方向に振動させることで、振動板22の面内でねじるように振動させる。
【0086】
気泡発生装置1cでは、この圧電素子42における駆動により、振動板22を面内でねじるように振動させて微細な気泡を発生させている。圧電素子42の電極には、図示していないコントローラの信号が供給され、当該信号に基づいて圧電素子42が駆動される。
【0087】
次に、気泡発生装置1cの振動板22の振動について詳しく説明する。図15は、本実施の形態4に係る気泡発生装置1cの振動板22の振動状態を示す図である。図15には、気泡発生装置1cの振動板22の振動についてシミュレーションした結果の変位方向が示されている。
【0088】
図15に示す振動体32では、振動体32の外周端部に対応する位置に圧電素子42が設けられている。なお、振動板22には、図5で示した振動板2とは異なり、複数の細孔22bを中央部ではなく圧電素子42を配置した位置近傍に形成している。振動板22の中央部ではなく外周端部と中央部との間(振動板22の周辺部から中央部までの範囲)に複数の細孔22bを配置することで、圧電素子42によるねじり振動の大きい位置に配置することができる。振動板22に形成される複数の細孔22bも、図6で示したような細孔2bが形成されている。
【0089】
この圧電素子42の電極間に交流電界を印加することで、圧電素子42の駆動により振動板22をねじり振動させる。このねじり振動の変位により、振動板22の中央部よりも外周部の方が大きい図中矢印方向(振動方向)の変位となる。一方、振動板22に形成した複数の細孔22bを流れる気体の方向は図中上下方向(振動板22の面に対して垂直方向)であり、圧電素子42の駆動で振動する振動板22の振動方向と異なっている。
【0090】
気泡発生装置1cでは、図15に示すように振動板22を振動させる振動方向が、複数の細孔22bを流れる気体の方向に対して垂直方向となっている。そのため、気泡発生装置1cでは、振動板22の表面に発生した気泡が、細孔22bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難く、気泡が一気に上昇して水槽10の水面で大気中に放散されることを防止できる。また、気泡発生装置1cでは、発生させた気泡を水槽10の水中に長く浮遊させることができ、水中に残留する微細な気泡の量を多くすることができる。
【0091】
特に、振動板22を振動させる振動方向が、複数の細孔22bを流れる気体の方向に対して垂直方向であれば、細孔22bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響をより受け難くすることができる。なお、気泡発生装置1cは、図15に示すように振動板22を振動させる振動方向が、複数の細孔22bを流れる気体の方向に対して垂直方向である場合に限られず、振動板22の振動方向と、複数の細孔22bを流れる気体の方向とを異ならせて垂直方向となる振動成分を少なくとも含むのであれば、細孔から押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難くできればよい。
【0092】
以上のように、本実施の形態4に係る気泡発生装置1cは、振動板22の周辺部に対応する位置に複数の圧電素子42を配置し、振動板22の周辺部から中央部までの範囲に複数の細孔22bを設けている。気泡発生装置1cは、複数の細孔22bを形成した振動板22の面内でねじるように、振動板22を複数の圧電素子42の駆動で振動させる。これにより、気泡発生装置1cは、ねじり振動で振動板22を振動させて、複数の細孔22bを流れる気体の方向と、振動板22を振動させる振動方向とを異ならせ、細孔22bから押し出される直噴流の流れに対して気泡が影響を受け難くさせることができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1,1a~1c 気泡発生装置、2,21,22 振動板、2a ガラス板、2b,21b,22b 細孔、3,30,31,32 振動体、4,41,42 圧電素子、10 水槽、100,110,120,130 水質浄化装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15