(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】運転制御システム
(51)【国際特許分類】
B60P 9/00 20060101AFI20221122BHJP
B62D 53/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B60P9/00
B62D53/00 Z
(21)【出願番号】P 2021528106
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2020022659
(87)【国際公開番号】W WO2020261973
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019118572
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】香月 良夫
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-230903(JP,A)
【文献】特開2017-019596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 9/00
B62D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両における
運搬対象物を検知する計測部と、
前記計測部の計測データに基づいて前記運搬車両に積載された運搬対象物の姿勢を取得し、時間に対する前記姿勢の変化に基づいて前記運搬対象物の荷崩れを判定する荷崩れ判定部とを備え
、
前記運搬車両は、前記計測部が設けられたトレーラヘッドと、当該トレーラヘッドに連結されるとともに前記運搬対象物が積載された荷台とを備え、
前記判定部は、前記運搬車両の旋回における前記トレーラヘッドと前記運搬対象物との連結角によって前記計測部が取得した計測データをより補正することで前記運搬対象物の姿勢の変化を検出する運転制御システム。
【請求項2】
前記計測部は、
レーザ光を走査して前記
トレーラヘッドと周囲物体との距離を計測する請求項1記載の運転制御システム。
【請求項3】
前記荷崩れ判定部は、前記運搬対象物の外形形状における連続した直線状の複数の計測点の集合を、前記運搬対象物の姿勢の基準とする請求項2記載の運転制御システム。
【請求項4】
前記計測部は、前記
トレーラヘッドの上部に設置されている請求項1~3のいずれか一項に記載の運転制御システム。
【請求項5】
前記計測部は、前記
トレーラヘッドの左右端にそれぞれ設置されている請求項1~3のいずれか一項に記載の運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転制御システムに関する。
本願は、2019年6月26日に、日本国に出願された特願2019-118572号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷物(運搬対象物)が載置された状態で移動する搬送車が開示されている。このような搬送車においては、荷物の落下を防止・検出するため、荷崩れ検出センサを用いて、載置部に載置される荷物の荷崩れを検出している。特許文献1における荷崩れ検出センサは、棒状の接触センサであり、荷物に接触した状態で配置されている。また、特許文献1の搬送車には、荷崩れ検出センサとは別に、搬送車の周囲に出現する障害物を検出する障害物センサが設けられている。特許文献2には、特許文献1の障害物センサに相当する超音波センサに加えて、荷物(トレイ)の有無を検知するトレイ有無センサを備える自律移動式無人運搬車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2012-158445号公報
【文献】日本国特開2014-186693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、トラック等の大型運搬車両を用いた自律走行が検討されている。このような自律走行車両においては、運転者が乗車しないため、荷崩れを認識することができない。したがって、荷崩れを自動で検出することが必要となる。しかしながら、特許文献1に示される搬送車の構成は、障害物センサに加えて、新たに荷崩れ検出センサを設ける必要があり、構成が複雑である。同様のことが、特許文献2に対しても言える。
【0005】
本開示は、上述する事情に鑑みてなされ、運搬車両において簡易な構成で荷崩れを判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の運転制御システムに係る第1の態様は、運搬車両における障害物を検知する計測部と、前記計測部の計測データに基づいて前記運搬車両に積載された運搬対象物の姿勢を取得し、時間に対する前記姿勢の変化に基づいて前記運搬対象物の荷崩れを判定する荷崩れ判定部とを備える。
【0007】
本開示の運転制御システムに係る第2の態様は、上記第1の態様において、前記計測部は、前記運搬車両に搭載され、レーザ光を走査して前記運搬車両と周囲物体との距離を計測する。
【0008】
本開示の運転制御システムに係る第3の態様は、上記第2の態様において、前記荷崩れ判定部は、前記運搬対象物の外形形状における連続した直線状の複数の計測点の集合を、前記運搬対象物の姿勢の基準とする。
【0009】
本開示の運転制御システムに係る第4の態様は、上記第1~3のいずれかの態様において、前記計測部は、前記運搬車両の上部に設置されている。
【0010】
本開示の運転制御システムに係る第5の態様は、上記第1~3のいずれかの態様において、前記計測部は、前記運搬車両の左右端にそれぞれ設置されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、荷崩れ判定部により、障害物を検知する計測部の計測データに基づいて、簡易な構成で運搬対象物の荷崩れを判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る運転制御システムを含む模式図である。
【
図2】運搬車両における距離センサの取り付け位置を示す模式図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る運転制御システムの荷崩れ判定手順を説明するフローチャートである。
【
図4】運搬車両における距離センサの取り付け位置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係る運転制御システムSを、図面を用いて説明する。
【0014】
本開示の一実施形態に係る運転制御システムS(運転制御システム)は、運搬対象物(例えば、運搬対象物C)を目的の場所に運搬する又はその運搬を支援するシステムである。本開示の運転制御システムSは、運搬対象物Cを運搬している運搬車両Tの自律走行を行うシステムである。なお、この運搬車両Tは、トレーラヘッドHと、トレーラヘッドHに連結された荷台Nとを含む構造とされている。運搬車両Tは、無人でも有人でも良いが、以下の説明では、運搬車両Tが無人運搬車両である場合を想定している。荷台N上には、運搬対象物Cが積載されている。
【0015】
本実施形態に係る運転制御システムSは、
図1に示すように、距離センサ1(計測手段、又は計測部)、形状認識部2、姿勢記憶部3、荷崩れ判定部4(荷崩れ判定手段)及び表示部5を有している。なお、形状認識部2、姿勢記憶部3及び荷崩れ判定部4は、演算装置Pの一機能として構成されている。この演算装置Pは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)といったメモリ、外部の機器との信号のやり取りを行う入出力装置等から構成されたコンピュータである。演算装置Pの一例としては、運搬車両Tに搭載され、内燃機関、電動機、変速機等、又はこれらの組合せを制御するECU(Electric Control Unit)がある。よって、コンピュータ、又はその一例であるECUにより実行されるアルゴリズムとして、形状認識部2、姿勢記憶部3、荷崩れ判定部4の機能が実現されても良い。なお、形状認識部2、姿勢記憶部3、荷崩れ判定部4のそれぞれが、CPU、RAMやROMといったメモリ、外部の機器との信号のやり取りを行う入出力装置等から構成されたコンピュータであっても良い。この場合、形状認識部2、姿勢記憶部3、荷崩れ判定部4に備わったそれぞれのコンピュータにより実行されるアルゴリズムとして、形状認識部2、姿勢記憶部3、荷崩れ判定部4の機能が実現されても良い。
【0016】
距離センサ1は、例えば運搬車両T(車両)のトレーラヘッドHに対して、
図1及び
図2に示すように、上部に設けられている。このような距離センサ1は、レーザ光をパルス状に対象物に照射し、対象物からの反射光が距離センサ1に到達するまでの時間を測定することにより、対象物までの距離を検知可能な装置である。なお、進行方向前側に取り付けられる距離センサ1は、運搬車両Tの前方及び後方を含む領域を走査可能であり、運搬車両Tの前方を含む運搬車両Tの周囲に存在し、運搬車両Tの運行の障害となり得る障害物Rとの距離を計測することで障害物Rの検知も可能である。障害物Rとは、例えば、電柱、トンネルの面壁、踏切や駐車場の遮断機、中央分離帯、駐車している他の車両、走行中の他の車両、工事中の路面に一時的に設置されるガード等が想定される。距離センサ1は、例えば、2次元又は3次元のLRF(Laser Range Finder)や2次元又は3次元のLIDAR(LightDetection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)である。また、この距離センサ1は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)に用いられるセンサのデータを応用してもよい。このような距離センサ1が距離を計測する対象を、まとめて、周囲物体と呼んでも良い。即ち、周囲物体には、障害物R、運搬対象物C、荷台N、地面G(路面)などが含まれる。
【0017】
形状認識部2は、距離センサ1から取得した計測データに基づいて、データ点群から、外形形状を識別する。ここで、計測データとは、例えば、距離センサ1が測定する対象物までの距離を示すデータである。このデータを可視化すると、対象物の表面にパルス状のレーザ光が照射されることで距離センサ1との距離が計測された対象物の表面上の点である計測点が、点として対象物上に複数表示される。この複数の点を、データ点群と呼ぶ。形状認識部2は、取得したデータ点群に基づいて高さが近い連続した計測点同士をグループ(集合)化し、物体の外形形状として識別する。なお、形状認識部2は、運搬対象物Cの形状のみではなく、進行方向における障害物Rとなり得る物体の外形形状の検出についても行うことが可能である。よって、形状認識部2は、障害物検知センサを兼ねている。なお、距離センサ1と演算装置Pとは、相互に信号のやり取りを行うことができるように、電気的、及び/又は電子的に接続されている。
【0018】
姿勢記憶部3は、形状認識部2において識別された計測点のグループを時間別(フレーム別)に記憶している。また、姿勢記憶部3は、進行方向における物体の外形形状についても、同様に記憶している。
【0019】
荷崩れ判定部4は、姿勢記憶部3に記憶された計測点のグループにおいて、グループの形状が直線状であるか否かを判定する。そして、荷崩れ判定部4は、直線状の計測点のグループを、運搬対象物Cの姿勢の判定基準として、荷崩れの判定に使用する。即ち、荷崩れ判定部4は、直線状の計測点のグループを使用して、現在のフレームにおけるグループの姿勢と、1つ前のフレーム(以前又は過去のフレーム)における高さ位置が近い計測点のグループの姿勢とを比較し、姿勢の差が閾値以上である場合に、荷崩れであると判定する。
【0020】
表示部5は、例えば、無人運搬車両の走行を管理する中央管制設備等において設けられるモニタであり、荷崩れと判定された場合に、警告等の表示が行われる。なお、運搬車両Tに作業者が乗車する場合には、運転席のフロントガラスまたは車載モニタ等にも警告表示を行ってもよい。なお、中央管制設備等とは、無人運搬車両において、例えば、荷崩れの有無のような運転状況を、監視者が常時監視可能な設備をいう。中央管制設備等から無人運搬車両に対して、必要に応じて、停止等の指示を送信しても良い。また、中央管制設備等では、複数の無人運搬車両を同時に監視しても良い。
【0021】
このような運転制御システムSにおける荷崩れ判定のフローを、
図3を参照して説明する。
距離センサ1において、運搬対象物Cの計測点の点群までの距離が計測される(ステップS1)。
そして、形状認識部2において、取得した点群の鉛直方向の高さを比較し、距離が近く、かつ点群の高さが近い(すなわち、距離及び高さの差が所定値以下)の計測点をグループ化する(ステップS2)。
【0022】
そして、姿勢記憶部3は、形状認識部2においてグループ化された計測点を記憶する(ステップS3)。さらに、荷崩れ判定部4は、現在のフレームにおけるグループが直線状であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において、判定がNOの場合、すなわち、グループが直線状でない場合には、荷崩れ判定を行わない。
【0023】
ステップS4において、判定がYESの場合、すなわち、グループが直線状である場合には、荷崩れ判定部4は、現在のフレームにおける計測点のグループ(G1)の姿勢と、姿勢記憶部3に記憶された1つ前のフレームにおいて、現在のフレームにおける計測点のグループ(G1)と位置が近い計測点のグループ(G2)の姿勢との差が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において、判定がYESの場合、すなわち、姿勢の差が閾値以上である場合には、荷崩れが発生したと判定し、表示部5において警告表示を行う(ステップS6)。また、ステップS5において判定がNOの場合、すなわち、姿勢の差が閾値未満である場合には、荷崩れしていないと判定する。
【0024】
なお、運搬車両Tが旋回する場合等において、トレーラヘッドHと運搬対象物Cとの連結角が変化する場合がある。このような場合には、運搬車両Tに設けられた連結角を計測するセンサ(例えば角度センサ)から、トレーラヘッドHと運搬対象物Cとの連結角の値を取得し、距離センサ1が取得した計測データを連結角により補正することで、運搬対象物Cの姿勢の変化を検出することが可能である。
【0025】
本実施形態によれば、障害物検知センサを兼ねている距離センサ1を用いて、運搬対象物Cの姿勢を検出し、荷崩れ判定部4により荷崩れを判定することが可能である。これにより、障害物検知センサとは別に荷崩れ検出センサを設けることなく、簡易な構成で運搬対象物Cの荷崩れの判定が可能である。簡易な構成で運搬対象物Cの荷崩れの判定が可能であることにより、運転制御システムSに搭載される演算装置Pの処理能力を低く抑えることができたり、演算装置Pの処理速度を上げたりすることが可能となる。そのため、運搬対象物Cを運搬している運搬車両Tの自律走行の実現に貢献することができるので、コンピュータ関連技術の改善となる。
【0026】
本実施形態によれば、運搬対象物Cの外形形状における連続した直線状の複数の計測点のグループを運搬対象物Cの姿勢の基準として用いている。これにより、フレーム同士の比較が容易であり、荷崩れの判定を容易に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、距離センサ1は、運搬車両Tの上部に取り付けられているため、進行方向前方と進行方向後方との双方について死角を低減することができる。そのため、進行方向前方の障害物R及び進行方向後方の運搬対象物Cの計測が可能である。
【0028】
なお、本開示は上記実施形態に限定されず、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態においては、荷崩れが発生した場合には、表示部5に警告表示を行うとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、荷崩れが発生した場合には、中央管制設備等から運搬車両Tの走行を停止する処理を行ってもよい。この処理は、中央管制設備等にいる監視者が人為的に行っても良いし、中央管制設備等が自動的に行っても良い。
【0029】
(2)上記実施形態においては、計測部としてLiDARを用いて距離を計測したが、本開示はこれに限定されない。例えば、計測部として、全方位カメラや、広角のレーダ等を用いてもよい。
【0030】
(3)また、距離センサ1は、複数設けられてもよい。例えば、距離センサ1は、
図4に示すように、運搬車両T’の進行方向に直交する方向(左右方向)において、トレーラヘッドH’の左右端に2カ所に設けられても良い。この場合、上記2か所の距離センサ1による計測点を比較して運搬対象物Cの姿勢を検出することが可能である。この場合、距離センサ1の死角が低減されることにより、距離センサ1の測定範囲が広がるのみならず、2か所の距離センサ1による計測点を比較して運搬対象物Cの姿勢を検出するため、より広範にわたり、かつ正確に運搬対象物Cの姿勢を検出することが可能である。
【0031】
(4)上記実施形態においては、運転制御システムSは、無人運搬車両の自律運転を支援するシステムとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、有人運搬車両の運転者に運転支援情報を提供するシステムとしてもよい。この場合、運搬車両Tの運転者が視認可能なモニタや、フロントガラス上に荷崩れ警告情報を表示する。
【0032】
(5)なお、上記実施形態においては、荷崩れ発生を判定するとしたが、運搬対象物Cの姿勢の変化の閾値を小さくすることにより、運搬対象物Cがバランスを崩しつつある状態を検出することができる。こうすることで、運搬対象物Cの荷崩れの発生を予報したり、将来、荷崩れに成長する可能性のあるずれが発生した段階で警告を発したりすることも可能である。
【0033】
(6)上記実施形態においては、荷崩れの警告情報を表示部へと表示したが、本開示はこれに限定されない。荷崩れの警告情報は、音声として無人運搬車両の管理者または有人運搬車両の運転者へと報知してもよい。
【0034】
(7)上記実施形態では、
図2に表示されるように、運搬対象物Cが1個の場合を想定したが、これに限定されず、運搬対象物Cが複数個であっても、荷崩れの判定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示の運転制御システムによれば、荷崩れ判定部により、障害物を検知する計測部の計測データに基づいて、簡易な構成で運搬対象物の荷崩れを判定することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 距離センサ
2 形状認識部
3 姿勢記憶部
4 判定部
5 表示部
C 運搬対象物
S 運転制御システム