(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20221122BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20221122BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20221122BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01F27/32 103
H01F17/00 Z
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/28 K
(21)【出願番号】P 2021528189
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023261
(87)【国際公開番号】W WO2020255889
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019115432
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 秀
(72)【発明者】
【氏名】上山 博也
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-260144(JP,A)
【文献】特開2009-088212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/32
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタであって、
絶縁材料からなる筐体と、
前記筐体の内部に設けられたコニカルコイルと、を備え、
前記コニカルコイルは、螺旋状に巻回されたコイル導体によって形成されており、
前記コニカルコイルの巻き径は、連続的に拡大しており、
前記コイル導体は、矩形形状の断面を有しており、
前記コイル導体の巻き軸方向で隣り合う部分は、前記コニカルコイルの巻き軸方向からみたときに、前記コイル導体の一部が互いに重複するように配置されており、
前記筐体の前記絶縁材料は、前記コイル導体の周囲に隙間なく配置されているインダクタ。
【請求項2】
前記コイル導体の前記断面は、前記コニカルコイルの巻き径方向の寸法が前記コニカルコイルの巻き軸方向の寸法よりも大きい形状に形成されている請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記コニカルコイルの巻き径方向の内側には、前記筐体の前記絶縁材料よりも透磁率が高い磁性材料からなるコアが配置され、
前記コアと前記コイル導体とは、少なくとも一部が接触している請求項1または2に記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コニカルコイルを備えたインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コイル状の導体を備えた各種のインダクタが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1には、絶縁筺体内に巻き線を収容してコニカルコイルを構成したインダクタが開示されている。特許文献2には、グリーンシートにテ―パ状の穴を形成し、その内壁にコイル状の導体を形成してコニカルコイルを構成したインダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-190814号公報
【文献】特開平9-148135号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたインダクタでは、巻き線の断面が円形であり、パッケージの高さ方向への体積効率(導体充填密度)が低い。これに加え、巻き線は、筐体に形成された渦巻き状の穴に収容されている。このとき、絶縁体の筺体を形成するために、コイルの軸方向で隣り合う2つの穴の間には、十分な厚みの絶縁体を設ける必要がある。このため、インダクタが大きくなる傾向がある。
【0005】
また、特許文献2に記載されたインダクタは、テーパ状の穴に沿ってコイル状の導体が形成される。従って、巻き軸方向にコイル状導体を重ねることができないため、巻き軸方向と直交する径方向の寸法が大きくなってしまう。また、段差のある穴を開け、その側壁面に内部導体を追加するため、巻き径の微細化が難しい。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、体積効率が高く、小型化が可能なインダクタを提供することにある。
【0007】
本発明の一実施形態は、インダクタであって、絶縁材料からなる筐体と、前記筐体の内部に設けられたコニカルコイルと、を備え、前記コニカルコイルは、螺旋状に巻回されたコイル導体によって形成されており、前記コニカルコイルの巻き径は、連続的に拡大しており、前記コイル導体は、矩形形状の断面を有しており、前記コイル導体の巻き軸方向で隣り合う部分は、前記コニカルコイルの巻き軸方向からみたときに、前記コイル導体の一部が互いに重複するように配置されており、前記筐体の前記絶縁材料は、前記コイル導体の周囲には隙間なく配置されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、体積効率を高めることができると共に、インダクタを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるインダクタを示す斜視図である。
【
図3】インダクタを
図2中の矢示III-III方向からみた断面図である。
【
図4】
図3中のA部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態によるインダクタを示す正面図である。
【
図6】インダクタを
図5中の矢示VI-VI方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態によるインダクタを、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1ないし
図4は本発明の第1の実施形態によるインダクタ1を示している。インダクタ1は、筐体2と、コニカルコイル3とを備えている。
【0012】
筐体2は、例えばセラミックス材料のような絶縁材料iによって形成されている。筐体2の絶縁材料iは、磁性材料でもよく、非磁性材料でもよい。筐体2は、例えば直方体形状に形成されている。筐体2は、互いに対面する第1主面2Aと第2主面2Bとを有している。筐体2は、直方体形状に限らず、例えば円柱形状でもよい。
【0013】
コニカルコイル3は、筐体2の内部に設けられている。
図3に示すように、コニカルコイル3は、巻き軸Oを中心として螺旋状に巻回されたコイル導体4によって形成されている。コイル導体4は、導電性材料として例えば導電性金属材料によって形成されている。コイル導体4は、細長い帯状に形成されている。筐体2の第1主面2Aおよび第2主面2Bと直交する方向が巻き軸方向となるように、コイル導体4は、螺旋状に巻回されている。コイル導体4は、円錐形状に巻回されたコイル部4Aと、コイル部4Aの第1端部に接続された電極接続部4Bと、コイル部4Aの第2端部に接続された電極接続部4Cと、を備えている。コイル導体4のコイル部4Aは、巻き軸方向に向けて複数回(例えば7回)巻回されている。コイル部4Aは、1巻き目の部分T
1から7巻き目の部分T
7までが連続的に繋がっている。コイル導体4の第1端部は、コニカルコイル3の径方向外側に位置して、コニカルコイル3の外径側端部になっている。コイル導体4の第1端部は、筐体2の第1主面2Aに近い位置に配置され、電極接続部4Bとなっている。コイル導体4の第2端部は、コニカルコイル3の径方向内側に位置して、コニカルコイル3の内径側端部になっている。コイル導体4の第2端部は、筐体2の第2主面2Bに近い位置に配置され、電極接続部4Cとなっている。
【0014】
図3および
図4に示すように、コイル導体4の断面Sは、矩形形状となっている。コイル導体4の断面Sは、コニカルコイル3の径方向の寸法L1がコニカルコイル3の軸方向の寸法L2よりも大きい形状に形成されている。このため、コイル導体4の断面Sのアスペクト比は、1よりも大きい値(例えば10程度)に設定されている。
【0015】
コニカルコイル3の巻き径は、第2主面2Bから第1主面2Aに近付くに従って、連続的に拡大している。例えばコイル導体4の1巻き目の部分T1の巻き径Φ1よりも2巻き目の部分T2の巻き径Φ2の方が大きくなっている。この点は、2巻き目以降でも同様である(Φ1<Φ2<…<Φ7)。コニカルコイル3の巻き軸方向から見たときに、コイル導体4が重複するように配置されている。巻き軸方向で平面視した場合、例えばコイル導体4の1巻き目の部分T1と2巻き目の部分T2とは、その一部が互いに重複している。この点は、2巻き目以降でも同様である。即ち、コイル導体4のうち巻き軸方向で隣り合う部分は、その一部が互いに重複している。筐体2の絶縁材料iは、コイル導体4の周囲に隙間なく配置されている。
【0016】
第1外部電極5は、筐体2に設けられコイル導体4の第1端部(電極接続部4B)に接続されている。第1外部電極5は、導電性材料として例えば導電性金属材料によって形成されている。第1外部電極5は、筐体2の第1主面2Aに配置されている。
【0017】
第2外部電極6は、筐体2に設けられコイル導体4の第2端部(電極接続部4C)に接続されている。第2外部電極6は、導電性材料として例えば導電性金属材料によって形成されている。第2外部電極6は、筐体2の第2主面2Bに配置されている。第1外部電極5と第2外部電極6は、互いに離間して配置されている。
【0018】
本発明の第1の実施形態によるインダクタ1は、以上のような構成を有している。インダクタ1は、以下の3工程を含む製造方法を用いて製造される。
【0019】
第1工程では、セラミック粒子と有機バインダと溶剤からなる絶縁体インクと、金属粒子と有機バインダと溶剤からなる導体インクとをインクジェット方式により吐出し、各インク中の溶媒の揮発乾燥を繰り返す。このとき、例えば巻き軸方向に沿って、セラミック粒子および金属粒子からなる層を1層ずつ積層する。これにより、セラミック粒子と金属粒子と有機成分からなる成形体を形成する。なお、成形体は、コニカルコイル3の巻き軸方向に沿って積層する必要はなく、コニカルコイル3の径方向に沿って積層してもよい。
【0020】
第2工程(脱脂工程)では、第1工程で形成された成形体の有機成分を除去する。第3工程(焼成工程)では、第2工程で有機成分が除去された成形体を加熱し、絶縁体および導体を同時に焼結させる。これにより、コニカルコイル3が内蔵された筐体2が形成される。
【0021】
その後、筐体2に第1外部電極5および第2外部電極6を取り付ける。これにより、インダクタ1が完成する。このとき、第1外部電極5は、筐体2の第1主面2Aに位置して、コニカルコイル3の第1端部(電極接続部4B)に電気的に接続される。第2外部電極6は、筐体2の第2主面2Bに位置して、コニカルコイル3の第2端部(電極接続部4C)に電気的に接続される。
【0022】
かくして、本実施形態によるインダクタ1では、コイル導体4は矩形形状の断面Sを有している。このため、巻き軸方向で隣り合うコイル導体4間の間隔寸法を小さくすることができる。これにより、巻き軸方向に対して隣り合うコイル導体4間の絶縁材料iの厚みを小さくすることができ、巻き軸方向に対して筐体2内にコイル導体4を密に配置することができる。この結果、筐体2に対するコイル導体4の割合を増やすことができるから、インダクタ1の体積効率(導体充填密度)が高くなり、インダクタ1を小型化することができる。
【0023】
また、コイル導体4の巻き軸方向で隣り合う部分は、コニカルコイル3の巻き軸方向からみたときに、コイル導体4の一部が互いに重複するように配置されている。このため、コイル導体が重複しない場合に比べて、コニカルコイル3の巻き径方向に対する筐体2の外径寸法を小さくすることができ、インダクタ1を小型化することができる。これに加え、コニカルコイル3の巻き径寸法を小さくすることができるから、コニカルコイル3の小径部(電極接続部4Cに近い部分)におけるインダクタンス値を低下させることができる。
【0024】
さらに、コイル導体4の断面Sは、コニカルコイル3の巻き径方向の寸法L1がコニカルコイル3の巻き軸方向の寸法L2よりも大きい形状に形成されている。即ち、コイル導体4の断面Sは、矩形のアスペクト比が1より大きくなっている。このため、コイル導体4の厚み(巻き軸方向の寸法L2)を減少させることによって、内部応力を減少させることができる。このため、例えば成形体を焼成して筐体2を形成する場合でも、焼成時の筐体2の反りや割れを抑制することができる。
【0025】
次に、
図5および
図6を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の特徴は、コニカルコイルの巻き径方向の内側には、筐体の絶縁材料よりも透磁率が高い磁性材料からなるコアが配置され、コアとコイル導体とは、少なくとも一部が接触していることにある。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0026】
第2の実施の形態によるインダクタ11は、第1の実施形態と同様に、筐体12と、コニカルコイル3とを備えている。
【0027】
筐体12は、例えばセラミックス材料のような絶縁材料i1によって形成されている。筐体12の絶縁材料i1は、磁性材料でもよく、非磁性材料でもよい。筐体12は、例えば直方体形状に形成されている。筐体12は、互いに対面する第1主面12Aと第2主面12Bとを有している。
【0028】
但し、筐体12には、コニカルコイル3の巻き径方向の内側に位置して、円錐形状の凹部13が形成されている。この点で、第2の実施形態による筐体12は、第1の実施形態による筐体2とは異なる。凹部13の径方向寸法は、コニカルコイル3の形状に対応して、第1主面12A側で大きく、第2主面12Bに近付くに従って小さくなっている。凹部13は、第1主面12Aに開口している。凹部13の側壁面には、コニカルコイル3のコイル導体4が露出している。
【0029】
コア14は、筐体12に凹部13に充填されている。コア14は、絶縁材料i2からなり、凹部13に対応して円錐形状に形成されている。コア14は、筐体12の絶縁材料i1よりも透磁率が高い磁性材料によって形成されている。コア14とコイル導体4とは、少なくとも一部が接触している。具体的には、コア14の外周面がコイル導体4の内周部分と接触している。コア14は、筐体12と一緒に焼成してもよく、筐体12の焼成した後に充填されてもよい。
【0030】
かくして、このように構成された第2の実施形態のインダクタ11でも、体積効率を高めることができると共に、インダクタ11を小型化することができる。例えば、特許文献1に記載されたインダクタは、巻き線の周囲に隙間が形成されているから、隙間によって巻き線の径方向寸法が大きくなる傾向がある。また、コアに銅線を巻回するタイプのインダクタでも、コアの強度を確保するために、径方向寸法が大きくなる傾向がある。これに対し、第2の実施形態では、コア14とコイル導体4とが接触している。これに加え、コア14は、筐体12と一緒に形成してもよく、筐体12の形成後に筐体12の凹部13に挿入してもよい。このため、コア14の剛性を高める必要がなく、コニカルコイル3の径方向寸法を小さくすることができる。また、コアに銅線を巻くタイプのインダクタに比べて、製造が容易で、磁性材料に対するコイル導体4の位置精度を高めることができる。
【0031】
なお、前記各実施形態では、コイル導体4の断面Sは、コニカルコイル3の巻き径方向の寸法L1がコニカルコイル3の巻き軸方向の寸法L2よりも大きい形状に形成されている。本発明はこれに限らず、コイル導体4の断面Sは、コニカルコイル3の巻き径方向の寸法L1とコニカルコイル3の巻き軸方向の寸法L2とが略同じ形状に形成されてもよい。
【0032】
前記各実施形態では、コイル導体4は、巻き数が7回のものを例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、コイル導体4の巻き数は、2回以上で6回以下でもよく、8回以上でもよい。
【0033】
次に、上記実施形態に含まれるインダクタとして、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0034】
第1の態様としては、インダクタであって、絶縁材料からなる筐体と、前記筐体の内部に設けられたコニカルコイルと、を備え、前記コニカルコイルは、螺旋状に巻回されたコイル導体によって形成されており、前記コニカルコイルの巻き径は、連続的に拡大しており、前記コイル導体は、矩形形状の断面を有しており、前記コイル導体の巻き軸方向で隣り合う部分は、前記コニカルコイルの巻き軸方向からみたときに、前記コイル導体の一部が互いに重複するように配置されており、前記筐体の前記絶縁材料は、前記コイル導体の周囲に隙間なく配置されている。
【0035】
このとき、コイル導体の断面が矩形形状になっている。このため、巻き軸方向で隣り合うコイル導体間の間隔寸法を小さくすることができる。これにより、巻き軸方向に対して隣り合うコイル導体間の絶縁材料の厚みを小さくすることができ、巻き軸方向に対して筐体内にコイル導体を密に配置することができる。この結果、筐体に対するコイル導体の割合を増やすことができるから、インダクタの体積効率(導体充填密度)が高くなり、インダクタを小型化することができる。
【0036】
また、コニカルコイルの巻き軸方向からみたときに、コイル導体が重複するように配置されている。このため、コニカルコイルの巻き径方向に対する筐体の外径寸法を小さくすることができ、インダクタを小型化することができる。これに加え、コニカルコイルの巻き径寸法を小さくすることができるから、コニカルコイルの小径部におけるインダクタンス値を低下させることができる。
【0037】
第2の態様としては、第1の態様において、前記コイル導体の前記断面は、前記コニカルコイルの巻き径方向の寸法が前記コニカルコイルの巻き軸方向の寸法よりも大きい形状に形成されている。
【0038】
このため、コイル導体の厚みを減少させることによって、内部応力を減少させることができる。このため、例えば成形体を焼成して筐体を形成する場合でも、焼成時の筐体の反りや割れを抑制することができる。
【0039】
第3の態様としては、第1または第2の態様において、前記コニカルコイルの巻き径方向の内側には、前記筐体の前記絶縁材料よりも透磁率が高い磁性材料からなるコアが配置され、前記コアと前記コイル導体とは、少なくとも一部が接触している。
【0040】
これにより、コニカルコイルの径方向寸法を小さくすることができる。また、コアに銅線を巻くタイプのインダクタに比べて、製造が容易で、磁性材料に対するコイル導体の位置精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1,11 インダクタ
2,12 筐体
3 コニカルコイル
4 コイル導体
5 第1外部電極
6 第2外部電極
14 コア