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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20221122BHJP
   B66B 17/20 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B66B1/18 N
B66B1/18 E
B66B17/20 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022085403
(22)【出願日】2022-05-25
【審査請求日】2022-05-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 一樹
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特許第7024053(JP,B1)
【文献】特開2013-59856(JP,A)
【文献】特開2007-137650(JP,A)
【文献】特開2017-88392(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105035897(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110313872(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-20/00
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃用のロボットが複数の階に移動可能なエレベーターシステムであって、
前記複数の階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第1時間測定部と、
前記第1時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、前記ロボットの行先階を前記複数の階の中から決定するロボット制御部と、
複数のかごと、
前記複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第2時間測定部と、
前記第2時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、前記ロボット制御部が決定した前記行先階に応答するための割当かごを前記複数のかごの中から決定する運行制御部と、
を備えたエレベーターシステム。
【請求項2】
第1基準時間を記憶する記憶部を更に備え、
前記運行制御部は、前記第2時間測定部によって測定された経過時間が前記第1基準時間以上であるかごが存在すれば、当該かごを優先して前記割当かごに決定する請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの利用者の人数を測定する人数測定部と、
基準人数を記憶する記憶部と、
を更に備え、
前記運行制御部は、前記人数測定部によって測定された人数が前記基準人数以上であるかごが存在すれば、当該かごを優先して前記割当かごに決定する請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
清掃用のロボットが複数の階に移動可能なエレベーターシステムであって、
前記複数の階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第1時間測定部と、
前記第1時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、前記ロボットの行先階を前記複数の階の中から決定するロボット制御部と、
複数のかごと、
前記複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの利用者の人数を測定する人数測定部と、
前記人数測定部によって測定された人数に基づいて、前記ロボット制御部が決定した前記行先階に応答するための割当かごを前記複数のかごの中から決定する運行制御部と、
を備えたエレベーターシステム。
【請求項5】
基準人数を記憶する記憶部を更に備え、
前記運行制御部は、前記人数測定部によって測定された人数が前記基準人数以上であるかごが存在すれば、当該かごを優先して前記割当かごに決定する請求項4に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
第2基準時間を記憶する記憶部を更に備え、
前記ロボット制御部は、前記第1時間測定部によって測定された経過時間が前記第2基準時間以上である階が存在すれば、当該階を優先して前記行先階に決定する請求項1から請求項5の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
第3基準時間を記憶する記憶部を更に備え、
前記ロボット制御部は、前記ロボットが現在いる階から移動した時の乗車時間が前記第3基準時間以上である階が存在すれば、当該階を優先して前記行先階に決定する請求項1から請求項5の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項8】
前記ロボットが前記割当かごに乗る際に前記割当かごは無人であり、
前記運行制御部は、前記ロボットが前記割当かごに乗った後、前記行先階に前記割当かごが到着するまで前記割当かごを他の呼びの要求に応答させない請求項1から請求項5の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーターの制御システムが記載されている。特許文献1に記載されたシステムは、複数のかごを備える。当該システムでは、清掃用のロボットからのかごの呼び出し信号に対して、予め特定されたかごが応答する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-147675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシステムでは、清掃用のロボットの作業スケジュールが予め設定されている。また、当該システムでは、清掃用のロボットからのかごの呼び出し信号に対して、予め特定されたかごが応答する。このため、ロボットによる清掃を効率的に行うことができないといった問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、清掃用のロボットを用いた効率的な清掃管理を行うことができるエレベーターシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターシステムは、清掃用のロボットが複数の階に移動可能なエレベーターシステムである。本システムは、複数の階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第1時間測定部と、第1時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、ロボットの行先階を複数の階の中から決定するロボット制御部と、複数のかごと、複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第2時間測定部と、第2時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、ロボット制御部が決定した行先階に応答するための割当かごを複数のかごの中から決定する運行制御部と、を備える。
【0007】
本開示に係るエレベーターシステムは、清掃用のロボットが複数の階に移動可能なエレベーターシステムである。本システムは、複数の階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第1時間測定部と、第1時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、ロボットの行先階を複数の階の中から決定するロボット制御部と、複数のかごと、複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの利用者の人数を測定する人数測定部と、人数測定部によって測定された人数に基づいて、ロボット制御部が決定した行先階に応答するための割当かごを複数のかごの中から決定する運行制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るエレベーターシステムによれば、清掃用のロボットを用いた効率的な清掃管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1におけるエレベーターシステムの例を示す図である。
図2】実施の形態1におけるエレベーターシステムの動作例を示すフローチャートである。
図3】ロボット制御部の動作例を示すフローチャートである。
図4】運行制御部の動作例を示すフローチャートである。
図5】エレベーターシステムのハードウェア資源の例を示す図である。
図6】エレベーターシステムのハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベーターシステム1の例を示す図である。エレベーターシステム1は、複数のかご2を備える。以下においては、エレベーターシステム1が3台のかご2を備える例について説明する。例えば、エレベーターシステム1は、A号機のかご2、B号機のかご2、及びC号機のかご2を備える。なお、エレベーターシステム1は、2台のかご2しか備えていなくても良い。エレベーターシステム1は、4台以上のかご2を備えても良い。
【0012】
各かご2は、建物内の複数の階に停止する。図1は、かご2が1階から9階のそれぞれの階に停止する例を示す。利用者は、かご2に乗って所望の階に移動することができる。
【0013】
エレベーターシステム1は、清掃用のロボット3を備える。図1は、最も簡単な例として、エレベーターシステム1が1台のロボット3を備える例を示す。エレベーターシステム1は、複数のロボット3を備えても良い。ロボット3は、かご2に乗って建物内の各階に移動することができる。本実施の形態に示す例では、ロボット3は、かご2に乗って1階から9階のそれぞれの階に移動することができる。
【0014】
ロボット3は、各階において、床の清掃及び乗場の清掃を行う。一例として、乗場の清掃には、操作盤の消毒、並びに床及び手摺からのごみの除去等が含まれる。操作盤は、釦式の装置であっても良いし、タッチパネル式の装置であっても良い。また、ロボット3は、かご2に乗っている時にそのかご2の清掃を行う。
【0015】
エレベーターシステム1は、記憶部10、運行制御部11、ロボット制御部12、時間測定部13、時間測定部14、及び人数測定部15を更に備える。
【0016】
運行制御部11は、利用者からの呼びの要求を受け付ける。また、運行制御部11は、ロボット3のための呼びの要求を受け付ける。呼びの要求には、出発階の情報と行先階の情報とが含まれる。運行制御部11は、受け付けた要求に応答するかご2を、エレベーターシステム1に備えられた複数のかご2の中から決定する。以下においては、呼びの要求に応答するかご2、即ち当該要求に対して割り当てられたかご2を割当かごともいう。
【0017】
利用者からの呼びの要求は、利用者が乗場に設けられた操作盤を操作することによって行われる。利用者からの呼びの要求は、利用者が所持する携帯端末から行われても良い。運行制御部11は、利用者からの呼びの要求を受け付けると、システム全体の効率が悪化することがないように当該要求に対する割当かごを決定する。運行制御部11による割当かごの決定は、当該利用者の行先階、各かご2の現在位置及び移動方向、並びに既登録の呼び等に基づいて行われる。
【0018】
一方、ロボット3のための呼びの要求は、ロボット制御部12によって行われる。運行制御部11がロボット3のための呼びの要求を受け付けた時の動作については後述する。
【0019】
ロボット制御部12は、ロボット3に関する制御を行う。例えば、ロボット制御部12は、ロボット3に対して清掃指示を行う。ロボット3は、ロボット制御部12からの清掃指示に基づいて、かご2の清掃及び各階の清掃を行う。
【0020】
また、ロボット制御部12は、ロボット3がかご2に乗って行先階に移動するための呼びの要求を行う。運行制御部11は、ロボット制御部12によって行われた呼びの要求に対して割当かごを決定する。運行制御部11が割当かごを決定すると、ロボット制御部12は、ロボット3が当該割当かごに乗って行先階に移動するための動作指示を行う。ロボット3は、ロボット制御部12からの動作指示に基づいて、かご2に乗降する。
【0021】
このように、ロボット3は、ロボット制御部12からの指示を受けることにより、建物内を自律的に移動し、清掃作業を行う。
【0022】
記憶部10に、運行制御部11がロボット制御部12からの呼びの要求に対して割当かごを決定するために必要な情報が記憶される。また、記憶部10に、ロボット制御部12が呼びの要求を行うために必要な情報、即ちロボット3の行先階を決定するために必要な情報が記憶される。表1は、記憶部10に記憶された情報の例を示す。
【0023】
【表1】
【0024】
基準時間t1は、かご2の清掃を行うための基準となる時間間隔を示す。例えば、清掃が行われていない時間が基準時間t1以上続いているかご2の清掃が優先的に行われる。即ち、30分以上清掃が行われていないかご2が存在すれば、そのかご2の清掃が優先して行われる。
【0025】
基準人数n1は、かご2の清掃を行うための基準となる利用者の累積人数を示す。例えば、清掃が行われていない間に利用した人の数が基準人数n1以上であるかご2の清掃が優先的に行われる。即ち、最後の清掃が行われてからの利用者の数が10人以上であるかご2が存在すれば、そのかご2の清掃が優先して行われる。
【0026】
基準時間t2は、各階の清掃を行うための基準となる時間間隔を示す。例えば、清掃が行われていない時間が基準時間t2以上続いている階の清掃が優先的に行われる。即ち、2時間以上清掃が行われていない階が存在すれば、その階の清掃が優先して行われる。
【0027】
基準時間t3は、ロボット3がかご2の清掃を行う際に掛かる時間を示す。表1に示す例であれば、ロボット3は、10秒でかご2の清掃を行う。
【0028】
基準時間t1、基準人数n1、基準時間t2、及び基準時間t3は予め設定される。
【0029】
時間測定部13は、ロボット3が移動可能な階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する。図1に示す例では、時間測定部13は、1階から9階のそれぞれの階について、ロボット3による清掃が最後に行われてからの経過時間を測定する。図1は、1階から9階のそれぞれの階に対応して時間測定部13が備えられる例を示す。時間測定部13が経過時間を測定する方法は、どのような方法であっても良い。
【0030】
時間測定部14は、エレベーターシステム1に備えられたかご2のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する。本実施の形態に示す例では、時間測定部14は、3台のかご2のそれぞれについて、ロボット3による清掃が最後に行われてからの経過時間を測定する。図1は、かご2のそれぞれに対応して時間測定部14が備えられる例を示す。時間測定部14が経過時間を測定する方法は、どのような方法であっても良い。
【0031】
人数測定部15は、エレベーターシステム1に備えられたかご2のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの利用者の人数を測定する。本実施の形態に示す例では、人数測定部15は、3台のかご2のそれぞれについて、ロボット3による最後の清掃が行われた後に乗車した利用者の数を測定する。図1は、かご2のそれぞれに対応して人数測定部15が備えられる例を示す。
【0032】
人数測定部15が人数を測定する方法は、どのような方法であっても良い。例えば、人数測定部15は、かご2に設けられたカメラからの画像或いはセンサからの信号に基づいて、人数の測定を行う。人数測定部15は、利用者からの呼びの要求に基づいて、人数の測定を行っても良い。かかる場合、当該要求に人数の情報が含まれる。人数測定部15は、登録された呼びの回数に基づいて、人数の測定を行っても良い。
【0033】
次に、図2から図4も参照し、本エレベーターシステム1の動作について説明する。図2は、実施の形態1におけるエレベーターシステム1の動作例を示すフローチャートである。以下においては、ロボット3によって1階の清掃が行われた直後の動作について、詳しく説明する。
【0034】
ロボット3による1階の清掃が完了すると、エレベーターシステム1では、ロボット3の次の行先階を決定するための処理が開始される(S101)。ロボット3の次の行先階は、ロボット3が次に清掃を行う階である。ロボット3の行先階の決定は、ロボット制御部12によって行われる。
【0035】
図3は、ロボット制御部12の動作例を示すフローチャートである。図3は、S101で行われる一連の処理を示す。基本的に、ロボット制御部12は、時間測定部13によって測定された経過時間に基づいて、ロボット3が移動可能な複数の階の中からロボット3の次の行先階を決定する。
【0036】
本実施の形態に示す例では、ロボット制御部12は、条件に応じてリストL1を更新することにより、ロボット3の行先階を決定する。先ず、ロボット制御部12は、ロボット3の行先階の候補として、ロボット3が移動可能な全ての階をリストL1に追加する(S201)。即ち、S201におけるリストL1は、[1F、2F、3F、4F、5F、6F、7F、8F、9F]となる。
【0037】
次に、ロボット制御部12は、リストL1に含まれる階を、前回清掃が行われてからの経過時間が長い順に並べ替える(S202)。ロボット制御部12は、時間測定部13によって測定された経過時間に基づいて、S202における並べ替えを行う。表2は、時間測定部13によって測定された経過時間の例を示す。
【0038】
【表2】
【0039】
ロボット3による1階の清掃が終了した直後に表2に示すような測定結果が得られていれば、S202におけるリストL1は、[2F、9F、8F、6F、4F、5F、3F、7F、1F]となる。
【0040】
次に、ロボット制御部12は、基準時間t2以上清掃されていない階が存在するか否かを判定する(S203)。S203における判定は、時間測定部13によって測定された経過時間に基づいて行われる。表1に示す例では、基準時間t2は2時間である。表2に示す例では、時間測定部13によって測定された2階の経過時間は2時間30分である。時間測定部13によって測定された9階の経過時間は2時間である。したがって、S203ではYesと判定される。
【0041】
ロボット制御部12は、S203でYesと判定すると、時間測定部13によって測定された経過時間が基準時間t2より短い階をリストL1から除外する。即ち、ロボット制御部12は、時間測定部13によって測定された経過時間が基準時間t2以上である階のみをリストL1に残す(S204)。したがって、S204におけるリストL1は、[2F、9F]となる。
【0042】
なお、ロボット制御部12は、S203でNoと判定するとリストL1を更新しない。
【0043】
次に、ロボット制御部12は、リストL1に残っている階の中に、ロボット3がかご2に乗って移動した場合に乗車時間が基準時間t3以上となる階が存在するか否かを判定する(S205)。表3は、ロボット3が1階からかご2に乗って移動した時の乗車時間の例を示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表1に示す例では、基準時間t3は10秒である。表3に示す例では、ロボット3が1階から5階以上の何れかの階に移動する場合に、乗車時間が10秒よりも長くなる。リストL1には9階が含まれているため、S205ではYesと判定される。
【0046】
ロボット制御部12は、S205でYesと判定すると、ロボット3がかご2に乗って移動した場合に乗車時間が基準時間t3より短くなる階をリストL1から除外する。即ち、ロボット制御部12は、ロボット3がかご2に乗っている時間が基準時間t3以上となる階のみをリストL1に残す(S206)。したがって、S206におけるリストL1は[9F]となる。
【0047】
なお、ロボット制御部12は、S205でNoと判定するとリストL1を更新しない。
【0048】
ロボット制御部12は、リストL1の先頭に載っている階をロボット3の行先階に決定する(S207)。即ち、ロボット制御部12は、9階をロボット3の行先階に決定する。ロボット制御部12は、S207でロボット3の行先階を決定すると、当該行先階に基づく呼びの要求を運行制御部11に出力する。
【0049】
S101でロボット3の行先階が決定すると、エレベーターシステム1では、割当かごを決定するための処理が開始される(S102)。割当かごは、ロボット制御部12が決定した行先階に応答するためのかご2である。割当かごの決定は、運行制御部11によって行われる。
【0050】
図4は、運行制御部11の動作例を示すフローチャートである。図4は、S102で行われる一連の処理を示す。基本的に、運行制御部11は、時間測定部14によって測定された経過時間に基づいて、エレベーターシステム1に備えられた複数のかご2の中から割当かごを決定する。
【0051】
本実施の形態に示す例では、運行制御部11は、条件に応じてリストL2を更新することにより、割当かごを決定する。先ず、運行制御部11は、割当かごの候補として、エレベーターシステム1に備えられた全てのかご2をリストL2に追加する(S301)。即ち、S301におけるリストL2は、[A、B、C]となる。リストL2の[A]はA号機のかご2を、[B]はB号機のかご2を、[C]はC号機のかご2を示す。
【0052】
次に、運行制御部11は、リストL2に含まれるかご2を、前回清掃が行われてからの経過時間が長い順に並べ替える(S302)。運行制御部11は、時間測定部14によって測定された経過時間に基づいて、S302における並べ替えを行う。表4は、時間測定部14によって測定された経過時間の例を示す。
【0053】
【表4】
【0054】
ロボット3による1階の清掃が終了した直後に表4に示すような測定結果が得られていれば、S302におけるリストL2は、[B、C、A]となる。
【0055】
次に、運行制御部11は、基準時間t1以上清掃されていないかご2が存在するか否かを判定する(S303)。S303における判定は、時間測定部14によって測定された経過時間に基づいて行われる。表1に示す例では、基準時間t1は30分である。表4に示す例では、時間測定部14によって測定されたB号機のかご2の経過時間は50分である。時間測定部14によって測定されたC号機のかご2の経過時間は30分である。したがって、S303ではYesと判定される。
【0056】
運行制御部11は、S303でYesと判定すると、時間測定部14によって測定された経過時間が基準時間t1より短いかご2をリストL2から除外する。即ち、運行制御部11は、時間測定部14によって測定された経過時間が基準時間t1以上であるかご2のみをリストL2に残す(S304)。したがって、S304におけるリストL2は、[B、C]となる。
【0057】
なお、運行制御部11は、S303でNoと判定するとリストL2を更新しない。
【0058】
次に、運行制御部11は、リストL2に残っているかご2の中に、前回清掃が行われてから基準人数n1以上の人が利用したかご2が存在するか否かを判定する(S305)。S305における判定は、人数測定部15によって測定された人数に基づいて行われる。表5は、人数測定部15によって測定された人数の例を示す。
【0059】
【表5】
【0060】
表1に示す例では、基準人数n1は10人である。表5に示す例では、最後の清掃が行われた後にB号機のかご2に乗った人の数は18人である。したがって、S305ではYesと判定される。
【0061】
運行制御部11は、S305でYesと判定すると、人数測定部15によって測定された人数が基準人数n1より少ないかご2をリストL2から除外する。即ち、運行制御部11は、人数測定部15によって測定された人数が基準人数n1以上であるかご2のみをリストL2に残す(S306)。したがって、S306におけるリストL2は、[B]となる。
【0062】
なお、運行制御部11は、S305でNoと判定するとリストL2を更新しない。
【0063】
次に、運行制御部11は、リストL2に残っているかご2の中に、ロボット3の乗車区間において利用者による呼びの要求に応答しないかご2が存在するか否かを判定する(S307)。表6は、ロボット3の乗車区間における利用者への割当状況の例を示す。
【0064】
【表6】
【0065】
表6に示す例では、B号機のかご2は、ロボット3の乗車区間、即ち1階から9階に向かう区間において、利用者による呼びの要求に応答する。したがって、S307ではNoと判定される。運行制御部11は、S307でNoと判定するとリストL2を更新しない。このため、リストL2は[B]のままである。
【0066】
一方、運行制御部11は、S307でYesと判定すると、ロボット3の乗車区間において利用者による呼びの要求に応答するかご2をリストL2から除外する。即ち、運行制御部11は、ロボット3の乗車区間において利用者による呼びの要求に応答しないかご2のみをリストL2に残す(S308)。
【0067】
運行制御部11は、S309において、リストL2の先頭に載っているかご2を、ロボット3が乗るための割当かごに決定する(S309)。即ち、運行制御部11は、B号機のかご2を割当かごに決定する。
【0068】
S309で割当かごが決定すると、エレベーターシステム1では、割当かごの応答とロボット3による清掃のための処理が開始される。当該処理において、割当かごの制御は運行制御部11によって行われる。ロボット3の制御は、ロボット制御部12によって行われる。
【0069】
具体的には、割当かご、即ちB号機のかご2が出発階の乗場に到着したか否かがロボット制御部12によって判定される(S103)。運行制御部11は、ロボット3がかご2に乗っている時にそのかご2に利用者が乗ってしまうことがないように、先ず、利用者からの全ての要求に割当かごを応答させる。その後、運行制御部11は、ロボット制御部12からの要求に割当かごを応答させる。割当かごが出発階、即ち1階の乗場に到着すると、S103でYesと判定される。
【0070】
ロボット3は、1階の清掃が終了すると、1階の乗場で割当かごの到着を待つ。割当かごが1階に到着すると、ロボット3は割当かごに乗る(S104)。1階で割当かごから降りる利用者がいれば、ロボット3は、全ての利用者が割当かごから降りるのを待つ。S104でロボット3が割当かごに乗る際に、割当かごは無人である。運行制御部11は、ロボット3が割当かごに乗った後、行先階、即ち9階に割当かごが到着するまで割当かごを他の呼びの要求に応答させない。これにより、ロボット3と利用者が割当かごに同乗してしまうことを防止する。
【0071】
ロボット3は、割当かごに乗ると、ドアが完全に閉まってから割当かごの清掃を行う(S105)。ロボット3は、割当かごが9階に到着する前に清掃が終了すれば、ドアの前で待機する。
【0072】
その後、割当かごが行先階、即ち次の清掃を行う階に到着したか否かが判定される(S106)。上述したように、運行制御部11は、1階でロボット3を割当かごに乗せた後、9階に割当かごを直行させる。割当かごが9階の乗場に到着すると、S106でYesと判定される。割当かごが9階に到着すると、ロボット3は割当かごから降りる(S107)。ロボット3は、割当かごから降りると、降りた階の清掃を開始する(S108)。
【0073】
ロボット3による9階の清掃が完了すると、上述した処理と同様の処理が再び行われる。即ち、ロボット3が次に清掃する階が決定され、ロボット3が当該階に行くための割当かごが決定される。これにより、ロボット3によって、割当かごの清掃と当該階の清掃とが行われる。
【0074】
エレベーターシステム1では、時間測定部13によって測定された経過時間に基づいて、ロボット3の行先階が決定される。また、時間測定部14によって測定された経過時間に基づいて、当該行先階に応答するための割当かごが決定される。したがって、エレベーターシステム1であれば、清掃用のロボット3を用いた効率的な清掃管理を行うことができる。
【0075】
本実施の形態に示す例では、時間測定部13によって測定された経過時間が基準時間t2以上である階が存在すれば、当該階がリストL1に残される。即ち、ロボット制御部12は、当該階を優先してロボット3の行先階に決定する。したがって、最後の清掃から基準時間t2以上清掃が行われていない階を優先してロボット3に清掃させることができる。
【0076】
本実施の形態に示す例では、ロボット3が現在いる階からかご2に乗って移動した時の乗車時間が基準時間t3以上である階が存在すれば、当該階がリストL1に残される。即ち、ロボット制御部12は、当該階を優先してロボット3の行先階に決定する。したがって、ロボット3は、かご2に乗って移動している時にかご2の清掃を終わらせることができる。
【0077】
本実施の形態に示す例では、時間測定部14によって測定された経過時間が基準時間t1以上であるかご2が存在すれば、当該かご2がリストL2に残される。即ち、運行制御部11は、当該かご2を優先して、ロボット3が乗るための割当かごに決定する。したがって、最後の清掃から基準時間t1以上清掃が行われていないかご2を優先してロボット3に清掃させることができる。
【0078】
本実施の形態に示す例では、人数測定部15によって測定された人数が基準人数n1以上であるかご2が存在すれば、当該かご2がリストL2に残される。即ち、運行制御部11は、当該かご2を優先して、ロボット3が乗るための割当かごに決定する。したがって、最後の清掃から基準人数n1以上の人が利用したかご2を優先してロボット3に清掃させることができる。
【0079】
エレベーターシステム1では、ロボット3によって各階の清掃を行う時間が予め決められていても良い。かかる場合は、ロボット3が清掃を行うためにある階に到着したタイミングで、その次の行先階が決定され、当該次の行先階に行くための割当かごが決定されても良い。ロボット3は到着した階での清掃が完了すると、乗場で待つことなく、予約した割当かごに乗って次の行先階に移動することができる。
【0080】
本実施の形態では、エレベーターシステム1が1台のロボット3を備える例について説明した。エレベーターシステム1が複数のロボット3を備える場合は、各ロボット3に対して図2から図4に示す動作が行われる。かかる場合は、表2に示す経過時間、表4に示す経過時間、及び表5に示す乗車時間といった情報は、全てのロボット3に共通で利用できる。また、エレベーターシステム1が複数のロボット3を備える場合は、利用者とロボット3との乗り合わせだけでなく、ロボット3同士の乗り合わせが回避されるように、割当かごが決定されても良い。
【0081】
本実施の形態では、表3に示す乗車時間が予め設定されている例について説明した。表3に示す乗車時間に関しては、その時の状況に応じて算出された値が採用されても良い。
【0082】
本実施の形態において、図3は、ロボット3の行先階を決定するための好適な動作フローを示す。他の例として、ロボット制御部12は、S203に示す判定処理を実施しなくても良い。ロボット制御部12は、S205に示す判定処理を実施しなくても良い。
【0083】
本実施の形態において、図4は、割当かごを決定するための好適な動作フローを示す。他の例として、運行制御部11は、S303に示す判定処理を実施しなくても良い。運行制御部11は、S305に示す判定処理を実施しなくても良い。運行制御部11は、S307に示す判定処理を実施しなくても良い。
【0084】
また、運行制御部11は、割当かごの決定において、システム全体の効率が悪化することがないように、利用者の待ち時間及びロボット3の待ち時間等も考慮しても良い。
【0085】
本実施の形態では、運行制御部11が、時間測定部14によって測定された経過時間に基づいて、エレベーターシステム1に備えられた複数のかご2の中から割当かごを決定する例について説明した。他の例として、運行制御部11は、人数測定部15によって測定された人数に基づいて、エレベーターシステム1に備えられた複数のかご2の中から割当かごを決定しても良い。
【0086】
かかる場合、運行制御部11は、S302において、リストL2に含まれるかご2を、前回清掃が行われてからの利用者の累計人数が多い順に並べ替える。ロボット3による1階の清掃が終了した直後に表5に示すような測定結果が得られていれば、S302におけるリストL2は、[B、A、C]となる。その後、運行制御部11は、S303以降に示す処理を必要に応じて行えば良い。
【0087】
エレベーターシステム1が備える一部の機能は、建物内のサーバ或いは建物外のサーバに備えられても良い。一例として、運行制御部11は、エレベーターの制御盤に備えられる。ロボット制御部12は、エレベーターの制御盤とは異なる装置であるサーバに備えられる。かかる場合、制御盤とサーバとの通信は、建物内の特定のネットワークを用いて行われても良いし、インターネット等を用いて行われても良い。
【0088】
図5は、エレベーターシステム1のハードウェア資源の例を示す図である。エレベーターシステム1は、ハードウェア資源として、プロセッサ21とメモリ22とを含む処理回路20を備える。処理回路20に複数のプロセッサ21が含まれても良い。処理回路20に複数のメモリ22が含まれても良い。
【0089】
本実施の形態において、符号10~15に示す各部は、エレベーターシステム1が有する機能を示す。記憶部10の機能は、メモリ22によって実現される。符号11~15に示す各部の機能は、プログラムとして記述されたソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現できる。当該プログラムは、メモリ22に記憶される。エレベーターシステム1は、メモリ22に記憶されたプログラムをプロセッサ21(コンピュータ)によって実行することにより、符号11~15に示す各部の機能を実現する。
【0090】
プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、或いはDSPともいわれる。メモリ22として、半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、或いはDVDを採用しても良い。採用可能な半導体メモリには、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、及びEEPROM等が含まれる。
【0091】
図6は、エレベーターシステム1のハードウェア資源の他の例を示す図である。図6に示す例では、エレベーターシステム1は、プロセッサ21、メモリ22、及び専用ハードウェア23を含む処理回路20を備える。図6は、エレベーターシステム1が有する機能の一部を専用ハードウェア23によって実現する例を示す。エレベーターシステム1が有する機能の全部を専用ハードウェア23によって実現しても良い。専用ハードウェア23として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0092】
以下に、本開示に含まれ得る態様の例について、付記として明記する。
【0093】
[付記1]
清掃用のロボットが複数の階に移動可能なエレベーターシステムであって、
前記複数の階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第1時間測定部と、
前記第1時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、前記ロボットの行先階を前記複数の階の中から決定するロボット制御部と、
複数のかごと、
前記複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第2時間測定部と、
前記第2時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、前記ロボット制御部が決定した前記行先階に応答するための割当かごを前記複数のかごの中から決定する運行制御部と、
を備えたエレベーターシステム。
[付記2]
第1基準時間を記憶する記憶部を更に備え、
前記運行制御部は、前記第2時間測定部によって測定された経過時間が前記第1基準時間以上であるかごが存在すれば、当該かごを優先して前記割当かごに決定する付記1に記載のエレベーターシステム。
[付記3]
前記複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの利用者の人数を測定する人数測定部と、
基準人数を記憶する記憶部と、
を更に備え、
前記運行制御部は、前記人数測定部によって測定された人数が前記基準人数以上であるかごが存在すれば、当該かごを優先して前記割当かごに決定する付記1又は付記2に記載のエレベーターシステム。
[付記4]
清掃用のロボットが複数の階に移動可能なエレベーターシステムであって、
前記複数の階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する第1時間測定部と、
前記第1時間測定部によって測定された経過時間に基づいて、前記ロボットの行先階を前記複数の階の中から決定するロボット制御部と、
複数のかごと、
前記複数のかごのそれぞれについて、前回清掃が行われてからの利用者の人数を測定する人数測定部と、
前記人数測定部によって測定された人数に基づいて、前記ロボット制御部が決定した前記行先階に応答するための割当かごを前記複数のかごの中から決定する運行制御部と、
を備えたエレベーターシステム。
[付記5]
基準人数を記憶する記憶部を更に備え、
前記運行制御部は、前記人数測定部によって測定された人数が前記基準人数以上であるかごが存在すれば、当該かごを優先して前記割当かごに決定する付記4に記載のエレベーターシステム。
[付記6]
第2基準時間を記憶する記憶部を更に備え、
前記ロボット制御部は、前記第1時間測定部によって測定された経過時間が前記第2基準時間以上である階が存在すれば、当該階を優先して前記行先階に決定する付記1から付記5の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
[付記7]
第3基準時間を記憶する記憶部を更に備え、
前記ロボット制御部は、前記ロボットが現在いる階から移動した時の乗車時間が前記第3基準時間以上である階が存在すれば、当該階を優先して前記行先階に決定する付記1から付記6の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
[付記8]
前記ロボットが前記割当かごに乗る際に前記割当かごは無人であり、
前記運行制御部は、前記ロボットが前記割当かごに乗った後、前記行先階に前記割当かごが到着するまで前記割当かごを他の呼びの要求に応答させない付記1から付記7の何れか一項に記載のエレベーターシステム。
【符号の説明】
【0094】
1 エレベーターシステム
2 かご
3 ロボット
10 記憶部
11 運行制御部
12 ロボット制御部
13 時間測定部
14 時間測定部
15 人数測定部
20 処理回路
21 プロセッサ
22 メモリ
23 専用ハードウェア
【要約】
【課題】清掃用のロボットを用いた効率的な清掃管理を行うことができるエレベーターシステムを提供する。
【解決手段】エレベーターシステム1は、時間測定部13、ロボット制御部12、複数のかご2、時間測定部14、及び運行制御部11を備える。時間測定部13は、複数の階のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する。ロボット制御部12は、ロボット3の行先階を複数の階の中から決定する。時間測定部14は、複数のかご2のそれぞれについて、前回清掃が行われてからの経過時間を測定する。運行制御部11は、ロボット制御部12が決定した行先階に応答するための割当かごを複数のかご2の中から決定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6