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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】予測装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20221122BHJP
【FI】
G06Q10/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022542780
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2022011921
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2021077442
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝浩
【審査官】新里 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126718(JP,A)
【文献】特開平05-173602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列データの変化を予測する予測装置であって、
前記時系列データを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された前記時系列データと、予測モデルとに基づき、前記時系列データが変化した後の変化後データを予測するプロセッサとを備え、
前記予測モデルは、第1モデルと第2モデルとを含む複数のモデルを用いて生成されており
前記第1モデルは、前記第2モデルよりも、第1予測区間における前記変化後データの予測に適しており、
前記第2モデルは、前記第1モデルよりも、前記第1予測区間の後の第2予測区間における前記変化後データの予測に適しており、
前記プロセッサは、
前記時系列データと、前記予測モデルとに基づき、前記第1予測区間と前記第2予測区間との間の区間における前記変化後データを予測し、
前記変化後データが閾値に到達すると予測される到達予測時刻を出力する、予測装置。
【請求項2】
時系列データの変化を予測する予測装置であって、
前記時系列データを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された前記時系列データと、予測モデルとに基づき、前記時系列データが変化した後の変化後データを予測するプロセッサとを備え、
前記予測モデルは、第1モデルと第2モデルとを含む複数のモデルを用いて生成されており
前記第1モデルは、前記第2モデルよりも、第1予測区間における前記変化後データの予測に適しており、
前記第2モデルは、前記第1モデルよりも、前記第1予測区間の後の第2予測区間における前記変化後データの予測に適しており、
前記プロセッサは、
前記時系列データと、前記予測モデルとに基づき、前記第1予測区間と前記第2予測区間との間の区間における前記変化後データを予測し、
前記変化後データを予測した予測時点から、前記変化後データが閾値に到達すると予測される到達予測時刻に達するまでの到達予測時間を出力する、予測装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
第1予測時点において、前記変化後データが前記閾値に到達すると予測される第1到達予測時刻を算出し、
前記第1予測時点よりも後の第2予測時点において、前記変化後データが前記閾値に到達すると予測される第2到達予測時刻を算出し、
前記第1到達予測時刻と前記第2到達予測時刻との間の時間が所定時間以上である場合に、前記到達予測時刻が変化したことを特定するための信号を出力する、請求項1または請求項2に記載の予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、時系列データの変化を予測する予測装置、予測方法、および予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時間の経過に伴って変化するデータ(以下、「時系列データ」とも称する。)を予測する技術が公知である。特開2016-126718号公報(特許文献1)は、過去の時系列データを時間区間ごとに解析することで、未来における時系列データの変化を予測する予測装置を開示する。特許文献1に開示された予測装置は、一の時間区間における過去の時系列データの解析結果に基づき一のカーネル関数を選択し、選択したカーネル関数をサポートベクトル回帰に適用させることで、一の時間区間以降の時系列データの変化を予測するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-126718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された予測装置は、解析対象となった一の時間区間に対して一のカーネル関数を選択するように構成されているため、選択したカーネル関数が対応可能な予測区間については時系列データの変化を精度よく予測することができる。しかしながら、予測装置は、選択したカーネル関数が対応可能な範囲を超える長さの予測区間については解析結果を考慮することができないため、長時間に亘って時系列データの変化を精度よく予測することができないおそれがあった。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、長時間に亘って時系列データの変化を精度よく予測する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う予測装置は、時系列データを記憶するメモリと、メモリに記憶された時系列データと、予測モデルとに基づき、時系列データが変化した後の変化後データを予測するプロセッサとを備える。予測モデルは、第1モデルと、第2モデルとを含む。第1モデルは、第2モデルよりも、第1予測区間における変化後データの予測に適している。第2モデルは、第1モデルよりも、第1予測区間の後の第2予測区間における変化後データの予測に適している。プロセッサは、時系列データと、予測モデルとに基づき、第1予測区間と第2予測区間との間の区間における変化後データを予測する。
【0007】
本開示の他の局面に従う予測方法は、時系列データを記憶する記憶ステップと、記憶ステップによって記憶された時系列データと、予測モデルとに基づき、時系列データが変化した後の変化後データを予測する予測ステップとを含む。予測モデルは、第1モデルと、第2モデルとを含む。第1モデルは、第2モデルよりも、第1予測区間における変化後データの予測に適している。第2モデルは、第1モデルよりも、第1予測区間の後の第2予測区間における変化後データの予測に適している。予測ステップは、時系列データと、予測モデルとに基づき、第1予測区間と第2予測区間との間の区間における変化後データを予測するステップを含む。
【0008】
本開示の他の局面に従う予測プログラムは、コンピュータに、時系列データを記憶する記憶ステップと、記憶ステップによって記憶された時系列データと、予測モデルとに基づき、時系列データが変化した後の変化後データを予測する予測ステップとを実行させる。予測モデルは、第1モデルと、第2モデルとを含む。第1モデルは、第2モデルよりも、第1予測区間における変化後データの予測に適している。第2モデルは、第1モデルよりも、第1予測区間の後の第2予測区間における変化後データの予測に適している。予測ステップは、時系列データと、予測モデルとに基づき、第1予測区間と第2予測区間との間の区間における変化後データを予測するステップを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の予測装置、予測方法、および予測プログラムによれば、第1予測区間における時系列データの変化後データの予測に適した第1モデルと、第1予測区間よりも後の第2予測区間における時系列データの変化後データの予測に適した第2モデルと含む予測モデルを用いて、第1予測区間と第2予測区間との間の区間における変化後データを予測することができる。これにより、本開示の予測装置、予測方法、および予測プログラムは、第1モデルを用いて第1予測区間における時系列データの変化を予測することに限らず、第1モデルと第2モデルとを含む予測モデルを用いて第1予測区間と第2予測区間との間の区間における時系列データの変化も予測することができるため、長時間に亘って時系列データの変化を精度よく予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る予測装置の適用例を説明するための図である。
図2】実施の形態1に係る予測装置の構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る予測装置が予測する時系列データの変化を示す図である。
図4】実施の形態1に係る予測装置の処理のタイミングを説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る予測装置において第1モデルのパラメータ調整を説明するための図である。
図6】実施の形態1に係る予測装置において第2モデルのパラメータ調整を説明するための図である。
図7】実施の形態1に係る予測装置におけるディスプレイの表示態様を示す図である。
図8】実施の形態1に係る予測装置の制御装置が実行する処理に関するフローチャートである。
図9】実施の形態1に係る予測装置の制御装置が実行する別の処理に関するフローチャートである。
図10】実施の形態2に係る予測装置の構成を示す図である。
図11】実施の形態3に係る予測装置の処理のタイミングを説明するための図である。
図12】実施の形態4に係る予測装置が予測する時系列データの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
図1図9を参照しながら、実施の形態1に係る予測装置1について説明する。
【0013】
(適用例)
図1は、実施の形態1に係る予測装置1の適用例を説明するための図である。実施の形態1に係る予測装置1は、取得した過去の時系列データを解析することで、未来における時系列データの変化を予測する。時系列データとは、たとえば一のセンサなどの同一ソースから時系列で得られた複数のデータを時系列の順に並べたデータ群を意味する。
【0014】
たとえば、図1に示されるように、室内空間20において窓21およびドア22が閉じられた状態で複数人が会議を行った場合、室内空間20における二酸化炭素(以下、「CO2」(carbon dioxide)とも称する。)の濃度が上昇し得る。閉じられた室内空間20でCO2濃度が増大することを避けるためには、定期的に窓21またはドア22を開けることでCO2を外部に排出することが必要である。
【0015】
そこで、実施の形態1に係る予測装置1は、時間の経過に伴って変化する室内空間20のCO2濃度を解析することで、未来においてCO2濃度が変化した後のCO2濃度(以下、「変化後データ」とも称する。)を予測する。さらに、予測装置1は、変化後データが閾値に到達すると予測される到達予測時刻と、予測時点(予測時刻)から到達予測時刻に達するまでの到達予測時間とを算出し、算出した到達予測時刻および到達予測時間のうちの少なくとも1つを予測装置1のユーザ(この例では会議を行っている人)に通知する。予測時点(予測時刻)は、変化後データの予測を開始する時点(時刻)から予測結果を算出するまでの時点(時刻)までの少なくとも1つの時点(時刻)である。
【0016】
具体的には、予測装置1は、後述する図2に示されるようにセンサ14を備える。センサ14は、室内空間20におけるCO2濃度を定期的に測定する。予測装置1は、センサ14によって取得されたCO2濃度の変化を解析することで、未来においてCO2濃度が変化した後の変化後データを予測し、予測結果に基づいて換気をすべき到達予測時刻と、予測時点から到達予測時刻に達するまでの到達予測時間を算出する。予測装置1は、算出した到達予測時刻および到達予測時間のうちの少なくとも1つをユーザに通知するための画像をディスプレイ15に表示させたり、算出した到達予測時刻および到達予測時間のうちの少なくとも1つをユーザに通知するための音をスピーカ16から出力させたりする。
【0017】
これにより、予測装置1は、室内空間20におけるCO2濃度の変化を予測した結果を用いて、適切なタイミングでユーザに換気を促すことができる。よって、ユーザは、閉じられた室内空間20でCO2濃度が増大する前に、換気を行うことができる。
【0018】
なお、予測装置1が予測する「変化後データ」は、CO2濃度に限らず、湿度および温度など、時間の経過に伴って変化する他のデータであってもよい。センサ14は、CO2濃度に限らず、湿度および温度など、時間の経過に伴って変化する他のデータを測定してもよい。
【0019】
(予測装置の構成)
図2は、実施の形態1に係る予測装置1の構成を示す図である。図2に示されるように、予測装置1は、プロセッサ11と、メモリ18と、記憶装置12と、センサ14と、出力装置17とを備える。
【0020】
プロセッサ11は、コンピュータの一例であり、各種のプログラムに従って各種の処理を実行する演算主体である。制御装置11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、およびMPU(Multi Processing Unit)のうちの少なくとも1つを備える。なお、プロセッサ11は、演算回路(Processing Circuitry)で構成されていてもよい。
【0021】
メモリ18は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを備える。メモリ18は、センサ14によって取得された時系列データ123を一時的に記憶する。時系列データ123は、プロセッサ11が変化後CO2濃度を予測する際に用いられる。
【0022】
記憶装置12は、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを備える。記憶装置12は、制御装置11によって実行される予測プログラム121、プロセッサ11が参照する演算用データ122、およびセンサ14によって取得された時系列データ123など、各種のプログラムおよびデータを格納する。ユーザは、プロセッサ11、記憶装置12、および出力装置17を一体化したコンピュータまたはサーバ装置を使用することで、時系列データの変化を予測するが可能である。
【0023】
予測プログラム121は、プロセッサ11の機能部である生成部11Aおよび予測部11Bの処理手順(図8および図9に示す処理フロー)が規定されたプログラムを含む。演算用データ122は、予測プログラム121に従った処理を実行するときに用いられるデータであり、変化後データを予測する予測モデルを生成するためのデータ(たとえば、後述する第1モデル、第2モデル、および接合関数に関するデータなど)を含む。
【0024】
なお、予測装置1は、予測プログラム121および演算用データ122を予め記憶装置12に格納していてもよいし、データ通信によって、図示しないサーバ装置から予測プログラム121および演算用データ122を取得してもよい。また、プロセッサ11が予測モデルを生成する場合に限らず、予測装置1は、準備していた予測モデルを予め記憶装置12に格納していてもよい。さらに、図10を用いて後述するように、予測装置1は、メディア読取装置13をさらに備えてもよい。そして、予測装置1は、メディア読取装置13によって記憶媒体であるリムーバブルディスク5を受け入れて、リムーバブルディスク5から予測プログラム121、演算用データ122、および予測モデルを取得してもよい。
【0025】
センサ14は、CO2濃度、湿度、および温度など、時間の経過に伴って変化する時系列データを測定し、取得した時系列データを記憶装置12に出力する。記憶装置12は、センサ14から取得した時系列データを時系列データ123として記憶する。また、プロセッサ11が変化後データを予測する際には、時系列データ123がメモリ18に一時的に記憶される。なお、予測装置1は、1つのセンサ14に限らず、複数のセンサを備えていてもよい。この場合、複数のセンサの各々は、互いに異なる種類の時系列データを測定してもよい。たとえば、複数のセンサのうち、第1センサは時系列データとしてCO2濃度を検知し、第2センサは時系列データとして湿度を検知し、第3センサは時系列データとして温度を検知してもよい。この場合、予測装置1は、第1センサ、第2センサ、および第3センサの各々で取得された時系列データに基づき、各時系列データの変化を予測してもよい。さらに、複数のセンサの各々は、他のセンサと同じ種類の時系列データを測定してもよい。たとえば、複数のセンサのうち、第1センサおよび第2センサの各々は時系列データとしてCO2濃度を検知し、第3センサは時系列データとして温度を検知してもよい。この場合、予測装置1は、第1センサおよび第2センサの各々で取得されたCO2濃度の時系列データに基づき、CO2濃度の変化を予測し、第3センサで取得された温度に基づき、温度変化を予測してもよい。
【0026】
出力装置17は、ディスプレイ15およびスピーカ16の各々と有線または無線で接続されている。出力装置17は、制御装置11によって算出された時系列データの変化の予測結果を示すデータをディスプレイ15およびスピーカ16のうちの少なくとも1つに出力する。
【0027】
ディスプレイ15は、出力装置17から取得したデータに基づき、プロセッサ11によって算出された時系列データの変化の予測結果に基づく画像など、各種の画像を表示する。
【0028】
スピーカ16は、出力装置17から取得したデータに基づき、プロセッサ11によって算出された時系列データの変化の予測結果に基づく音など、各種の音を出力する。
【0029】
なお、ディスプレイ15およびスピーカ16は、予測装置1と別の構成であることに限らない。予測装置1は、ディスプレイ15およびスピーカ16のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。さらに、図1の例では、ディスプレイ15およびスピーカ16が室内空間20に設置されているが、ディスプレイ15およびスピーカ16は、在室者であるユーザが所有する携帯端末またはパーソナルコンピュータ(PC)が備える構成であってもよい。たとえば、予測装置1は、近距離無線通信などによってユーザが所有する携帯端末またはPCに予測結果を出力し、携帯端末またはPCは、予測装置1から取得した予測結果を、自身(携帯端末またはPC)のディスプレイ15またはスピーカ16によってユーザに通知してもよい。
【0030】
このように構成された予測装置1は、センサ14によって取得された時系列データ123を記憶装置12またはメモリ18に記憶し、記憶装置12またはメモリ18に記憶された時系列データ123に基づき、プロセッサ11によって未来において時系列データが変化した後の変化後データを予測する。そして、予測装置1は、ディスプレイ15およびスピーカ16のうちの少なくとも1つを用いて、予測結果に基づく情報をユーザに通知する。
【0031】
プロセッサ11は、記憶装置12に記憶された予測プログラム121を実行するとともに、適宜、演算用データ122を用いた演算を行うことで、上述したような一連の処理を実現する。より具体的には、プロセッサ11は、主な機能部として、生成部11Aと、予測部11Bとを備える。
【0032】
生成部11Aは、変化データを予測するための予測モデルを生成する。予測モデルは、経過時間と時間の経過に伴って変化するデータとの関係を表す関数(数式)によって定義される。予測装置1による時系列データの変化の予測対象となる区間(予測区間)は、第1予測区間と、第1予測区間よりも後の第2予測区間とを含む。生成部11Aは、第1予測区間における変化後データの予測に適した第1モデルと、第2予測区間における変化後データの予測に適した第2モデルとを接合する(足し合わせる)ことで、1つの予測モデルを生成する。ここで、「適したモデル」とは、いくつかのモデルのうち、実際の時系列データを最も精度よく再現するモデルを意味する。すなわち、「適したモデル」とは、実際に取得される予測区間におけるCO2濃度と、予測した予測区間における変化後CO2濃度(変化後データ)との差を最も小さくすることができるモデルのことである。第1モデルは、第2モデルよりも第1予測区間における変化後データの予測に適しており、第1予測区間における実際の時系列データを第2モデルよりも精度よく再現することができる。第2モデルは、第1モデルよりも第2予測区間における変化後データの予測に適しており、第2予測区間における実際の時系列データを第1モデルよりも精度よく再現することができる。
【0033】
予測部11Bは、生成部11Aによって生成された予測モデルを用いて変化後データを予測する。予測部11Bによって得られた予測結果に基づく情報は、出力装置17によってディスプレイ15またはスピーカ16に出力される。
【0034】
なお、予測装置1が備えるプロセッサ11、メモリ18、記憶装置12、および出力装置17などの各構成の機能は、センサ14内に設けられていてもよい。すなわち、エッジコンピュータの形態で、センサ14が予測装置1として、プロセッサ11、メモリ18、記憶装置12、および出力装置17などの各構成を備えていてもよい。
【0035】
(予測装置による時系列データの変化の予測の具体例)
図3図6を参照しながら、予測装置1による時系列データの変化の予測について説明する。図3は、実施の形態1に係る予測装置1が予測する時系列データの変化を示す図である。
【0036】
図3においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとったCO2濃度の時系列データが示されている。予測装置1によって未来の時系列データの変化を予測する時点をt0であるとして、t0よりも後の未来のタイミングがt1、t2、t3、およびt4で表されている。
【0037】
予測装置1の予測区間のうち、t0からt1までの区間が第1予測区間、t4以降の区間が第2予測区間で表されている。つまり、第1予測区間は、予測装置1による予測時点t0からみて、第2予測区間よりも近い未来の区間である。第2予測区間は、予測装置1による予測時点t0からみて、第1予測区間よりも遠い未来の区間である。
【0038】
t0からt4以降にわたってセンサ14によって実際に取得されたCO2濃度の実測値は、グラフAで表される。グラフAを参照すると、t0からt1までの近い未来の第1予測区間においては時間変化に対して時系列データの変化が概ね線形で表され、t4以降の遠い未来の第2予測区間においては時間変化に対して時系列データの変化が非線形で表される。
【0039】
第1予測区間における時系列データの変化の予測には、第1モデルが適している。第1モデルは、経過時間と時間の経過に伴って変化するデータとの関係を表す関数(数式)によって定義される。第1モデルの関数は、時間変化に対する変化が線形で表される時系列データを予測することに適している。
【0040】
たとえば、第1モデルを用いて時系列データの変化を予測した結果は、グラフG1で表されている。近い未来の第1予測区間においては、グラフG1は、実測値のグラフAと近似するように線形で表され、グラフAと概ね一致する。一方、遠い未来の第2予測区間においては、グラフG1は、実測値のグラフAと離れる傾向にある。
【0041】
第2予測区間における時系列データの変化の予測には、第2モデルが適している。第2モデルは、経過時間と時間の経過に伴って変化するデータとの関係を表す関数(数式)によって定義される。第2モデルの関数は、時間変化に対する変化が非線形で表される時系列データを予測することに適している。
【0042】
たとえば、第2モデルを用いて時系列データの変化を予測した結果は、グラフG2で表されている。遠い未来の第2予測区間においては、グラフG2は、実測値のグラフAと近似するように非線形で表され、グラフAと概ね一致する。一方、近い未来の第1予測区間においては、グラフG2は、実測値のグラフAと離れる傾向にある。
【0043】
予測装置1は、このような特性を有する第1モデルと第2モデルとを接合することで、t0において、t0以降の未来における時系列データの変化を予測するための予測モデルを生成する。予測モデルを用いて時系列データの変化を予測した結果は、グラフG0で表される。グラフG0は、第1予測区間および第2予測区間のいずれにおいても実測値のグラフAと概ね一致する。
【0044】
図4は、実施の形態1に係る予測装置1の処理のタイミングを説明するための図である。図4においては、センサ14によって実行される処理のタイミングと、制御装置11によって実行される処理のタイミングとが示されている。
【0045】
図4に示されるように、センサ14がt10からt11までの時間にわたって時系列データを取得すると、制御装置11がt11以降で時系列データ(t10からt11までの時系列データ)に基づき予測モデルを生成するとともに、生成した予測モデルを用いてt11以降の時系列データの変化を予測する。
【0046】
センサ14がt11からt12までの時間にわたって時系列データを取得すると、制御装置11がt12以降で時系列データ(t11からt12までの時系列データ)に基づき予測モデルを生成するとともに、生成した予測モデルを用いてt12以降の時系列データの変化を予測する。
【0047】
センサ14がt12からt13までの時間にわたって時系列データを取得すると、制御装置11がt13以降で時系列データ(t12からt13までの時系列データ)に基づき予測モデルを生成するとともに、生成した予測モデルを用いてt13以降の時系列データの変化を予測する。
【0048】
このように、予測装置1は、予め決められた時間区間ごとに定期的に、センサ14によって取得された時系列データに基づき予測モデルを生成し、時系列データの取得対象となった時間区間以降の予測区間について、予測モデルを用いて時系列データの変化を予測する。予測装置1は、このような処理を時間区間ごとに繰り返し実行する。
【0049】
予測モデルを生成する処理は、前処理を実行するステップと、複数のモデルを選択するステップと、接合関数を選択するステップと、パラメータを調整するステップと、接合関数を用いて予測モデルを生成するステップとを含む。
【0050】
具体的には、図4に示されるように、プロセッサ11は、センサ14から時系列データを取得すると、最初に時系列データに対して前処理を実行する。たとえば、プロセッサ11は、前処理として、時系列データにおいて欠損しているデータの補間、時系列データに含まれる複数のデータのうちの他のデータから大きく外れたデータ(外れ値)の除去、時系列データに現れたノイズの除去、および関数(演算子)を用いた変換などを実行する。プロセッサ11は、取得した時系列データの特性に応じた前処理を実行することで、取得した時系列データを、予測モデルの生成に適したデータに変換する。
【0051】
なお、前処理に含まれるノイズの除去としては、移動平均法、状態空間モデルを用いた平滑化、およびローパスフィルタなどが挙げられる。前処理に含まれる関数(演算子)を用いた変換としては、フーリエ変換、主成分分析を用いた特徴量の圧縮変換などが挙げられる。
【0052】
プロセッサ11は、センサ14から取得した時系列データに対して上述したような前処理を実行することで、ノイズの影響を受けることなく高精度な予測を行うことができる。一方、プロセッサ11は、センサ14から取得した時系列データをそのまま用いて高精度の予測ができる場合には、上述したような前処理の工程を除いて、センサ14から取得した時系列データを直接用いて予測モデルを生成してもよい。
【0053】
プロセッサ11は、前処理を実行した後、予測モデルを生成するために用いる複数のモデルを選択する。たとえば、図3に示す例では、プロセッサ11は、グラフG1で表される第1予測区間における予測に適した第1モデルと、グラフG2で表される第2予測区間における予測に適した第2モデルとを選択する。なお、第1モデルおよび第2モデルを含む複数のモデルに関するデータは、記憶装置12に格納された演算用データ122に含まれる。
【0054】
第1モデルは、下記の式(1)で表される線形の関数(数式)を含む。すなわち、第1モデルは、時間変化に対する時系列データの変化が線形で表される線形モデルである。
【0055】
【数1】
【0056】
式(1)において、aは、傾きを表すパラメータである。bは、切片を表すパラメータである。
【0057】
第2モデルは、下記の式(2)で表される非線形の関数(数式)を含む。すなわち、第2モデルは、時間変化に対する時系列データの変化が非線形で表される非線形モデルである。
【0058】
【数2】
【0059】
式(2)において、Cは、ある時刻t=0における室内空間20のCO2濃度を表すパラメータである。Gは、室内空間20において発生したCO2の発生量を表すパラメータである。Qは、室内空間20から排出されたCO2の換気量を表すパラメータである。Vは、室内空間20の体積を表すパラメータである。
【0060】
なお、プロセッサ11は、第1モデルおよび第2モデルの各々として、予め決めておいたモデルを選択してもよい。たとえば、予測装置1の設計者は、事前に取得した時系列データを解析することで予め決めたモデルX(たとえば、式(1)で表されるモデル)を、第1予測区間に適した第1モデルとして記憶装置12に記憶させてもよい。さらに、予測装置1の設計者は、事前に取得した時系列データを解析することで予め決めたモデルY(たとえば、式(2)で表されるモデル)を、第2予測区間に適した第2モデルとして記憶装置12に記憶させてもよい。そして、プロセッサ11は、予測モデルを生成するときに、記憶装置12に記憶されたモデルXを第1モデルとして選択し、記憶装置12に記憶されたモデルYを第2モデルとして選択してもよい。
【0061】
あるいは、プロセッサ11は、第1モデルおよび第2モデルの各々に対応するモデルを予め決めることなく、取得した時系列データを解析した結果に基づき、複数種類のモデルの中から、第1モデルおよび第2モデルの各々に対応するモデルを選択してもよい。たとえば、予測装置1の設計者は、複数種類のモデルを記憶装置12に記憶させてもよい。そして、プロセッサ11は、予測モデルを生成するときに、取得した時系列データを解析し、解析結果に基づき、第1モデルとして記憶装置12に記憶された複数種類のモデルのうちの少なくとも1つを選択し、第2モデルとして記憶装置12に記憶された複数種類のモデルのうちの少なくとも1つを選択してもよい。なお、プロセッサ11は、第1モデルとして選択したモデルと異なるモデルを第2モデルとして選択すればよい。
【0062】
図4に示されるように、プロセッサ11は、複数のモデルを選択した後、選択した複数のモデルを接合するための接合関数を選択する。なお、接合関数に関するデータは、記憶装置12に格納された演算用データ122に含まれる。
【0063】
図3に示す例では、プロセッサ11は、下記の式(3)で表される双曲線関数を接合関数として選択する。
【0064】
【数3】
【0065】
式(3)において、C(t)は、式(1)で表される第1モデルの関数である。CNL(t)は、式(2)で表される第2モデルの関数である。
【0066】
プロセッサ11は、第1モデルと第2モデルとを接合するときに、第1モデルと第2モデルとの間で重み付けを行う。式(3)において、αおよびTは、第1モデルと第2モデルとを接合するときの重み付けに関するパラメータである。「重み付けに関するパラメータ」とは、第1モデルによって得られる値と、第2モデルによって得られる値とのうち、いずれの値を優先的に使用するかを決めるものである。式(3)においては、時刻tが時刻T0になるまではCL(t)の値がCNL(t)の値よりも優先的に使用されるように、CL(t)に対しては、CNL(t)よりも大きい値が掛け算される。
【0067】
具体的には、図3に示すように、αは、第1モデルから第2モデルへとモデルが切り替わることに要する時間を表すパラメータである。αが小さければ小さいほど、第1モデルから第2モデルへとモデルが切り替わる時間が短くなる。αが大きければ大きいほど、第1モデルから第2モデルへとモデルが切り替わる時間が長くなる。
【0068】
は、第1モデルから第2モデルへとモデルが切り替わる時間における中間地点の時刻を表すパラメータである。Tが小さければ小さいほど、予測時点t0からモデルが切り替わるまでの時間が短くなる。Tが大きければ大きいほど、予測時点t0からモデルが切り替わるまでの時間が長くなる。
【0069】
なお、プロセッサ11は、接合関数を予め決めておき、予め決めておいた接合関数を選択してもよい。たとえば、予測装置1の設計者は、事前に取得した時系列データを解析することで予め決めた接合関数(たとえば、式(3)で表される双曲線関数)を、記憶装置12に記憶させてもよい。そして、プロセッサ11は、予測モデルを生成するときに、記憶装置12に記憶された接合関数を選択してもよい。
【0070】
あるいは、プロセッサ11は、接合関数を予め決めることなく、取得した時系列データを解析した結果に基づき、複数種類の接合関数の中から、採用する接合関数を選択してもよい。たとえば、予測装置1の設計者は、接合関数A~接合関数Eといったような複数種類の接合関数を記憶装置12に記憶させてもよい。そして、プロセッサ11は、予測モデルを生成するときに、取得した時系列データを解析し、解析結果に基づき、記憶装置12に記憶された複数種類の接合関数のうちの少なくとも1つを選択してもよい。
【0071】
図4に示されるように、プロセッサ11は、接合関数を選択した後、パラメータを調整する。たとえば、図3に示す例では、プロセッサ11は、式(1)で表される第1モデルのパラメータ(a,b)を調整する。プロセッサ11は、式(2)で表される第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)を調整する。プロセッサ11は、式(3)で表される接合関数のパラメータ(α,T)を調整する。
【0072】
なお、プロセッサ11は、接合関数および複数のモデルの各々におけるパラメータの全てを調整してもよいし、接合関数および複数のモデルのうちの少なくとも1つにおけるパラメータを調整してもよい。たとえば、実施の形態1において、予測装置1の設計者は、事前に取得した時系列データを解析することで接合関数のパラメータ(α,T)の値を予め決めている。具体的には、予測装置1の設計者は、αの値として1000秒、Tの値として600秒を、記憶装置12に予め記憶させている。そして、プロセッサ11は、記憶装置12に記憶されたαおよびTの値を接合関数のパラメータとして用いるように構成されている。
【0073】
図5は、実施の形態1に係る予測装置1において第1モデルのパラメータ調整を説明するための図である。
【0074】
図5においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとったCO2濃度の時系列データが示されている。プロセッサ11は、公知の最小二乗法を用いることで、式(1)で表される第1モデルのパラメータ(a,b)を決定する。
【0075】
具体的には、図5に示されるように、プロセッサ11は、センサ14から取得した過去の時系列データの中から、直近の所定個数のデータを抽出する。プロセッサ11は、抽出した複数のデータに基づき最小二乗法を用いることで、第1モデルのパラメータ(a,b)を算出する。
【0076】
なお、図4に示す例において予測時点がt11である場合、プロセッサ11によって抽出される所定個数のデータは、t10からt11までの時間にわたって取得された時系列データのうち、予測時点t11に限りなく近いタイミングで取得されたデータを含む。
【0077】
図6は、実施の形態1に係る予測装置1において第2モデルのパラメータ調整を説明するための図である。
【0078】
図6においては、縦軸にCO2濃度、横軸に時間をとったCO2濃度の時系列データが示されている。プロセッサ11は、公知の連立方程式の演算を用いることで、式(2)で表される第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)を決定する。
【0079】
具体的には、図6に示されるように、プロセッサ11は、センサ14から取得した過去の時系列データの中から、特定個数のデータを抽出する。プロセッサ11は、抽出した複数のデータを、時系列に従って複数の区間ごとに分割する。プロセッサ11は、各区間に属する複数のデータの平均CO2濃度および平均時間を算出する。
【0080】
たとえば、プロセッサ11は、1つ目の区間に属する複数のデータに基づき、平均CO2濃度としてC1を算出するとともに、平均時間としてC1に対応するt21を算出する。プロセッサ11は、2つ目の区間に属する複数のデータに基づき、平均CO2濃度としてC2を算出するとともに、平均時間としてC2に対応するt22を算出する。プロセッサ11は、3つ目の区間に属する複数のデータに基づき、平均CO2濃度としてC3を算出するとともに、平均時間としてC3に対応するt23を算出する。さらに、プロセッサ11は、1つ目の区間に属する複数のデータの平均時間t21と、2つ目の区間に属する複数のデータの平均時間t22との差Δtを算出する。プロセッサ11は、2つ目の区間に属する複数のデータの平均時間t22と、3つ目の区間に属する複数のデータの平均時間t23との差Δt’を算出する。
【0081】
ここで、式(2)は、下記の式(4)のように表され得る。
【0082】
【数4】
【0083】
プロセッサ11は、式(4)と、上述したC1、C2、C3、Δt、およびΔt’とを用いることで、下記の連立方程式(5)を立てることができる。
【0084】
【数5】
【0085】
なお、プロセッサ11は、式(4)と、上述したC1、C2、C3、Δt、およびΔt’とを用いることで、下記の連立方程式(6)を立ててもよい。
【0086】
【数6】
【0087】
プロセッサ11は、連立方程式(5)または連立方程式(6)を解くことで、第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)を算出する。
【0088】
図4に示されるように、プロセッサ11は、パラメータを調整した後、接合関数を用いて複数のモデルを接合することで、予測モデルを生成する。たとえば、図3に示す例では、プロセッサ11は、グラフG1で表される第1予測区間における予測に適した第1モデルと、グラフG2で表される第2予測区間における予測に適した第2モデルとを、式(3)で表される双曲線関数を用いて接合することで、グラフG0で表される予測モデルを生成する。このとき、プロセッサ11は、第1モデルのパラメータ(a,b)と、第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)と、重み付けに関するパラメータ(α,T)とに対して、パラメータ調整によって決定した値を適用する。
【0089】
なお、第2モデルのパラメータにおけるCに関しては、各パラメータを調整した後、予測モデルを生成する直前のCO2濃度の値に置き換えることで、最新の状況を反映した値を予測することもできる。
【0090】
予測装置1は、上述したようなステップを経て生成した予測モデルを用いることで、センサ14によって実際に取得されるCO2濃度の実測値と概ね一致するように、時系列データの変化を予測することができる。
【0091】
なお、プロセッサ11は、第1モデルおよび第2モデルの各々におけるパラメータを調整してもよいし、第1モデルおよび第2モデルのうちの少なくとも1つのパラメータを調整してもよい。たとえば、プロセッサ11は、第1モデルのパラメータ(a,b)を調整する一方で、第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)を予め決めておいてもよい。あるいは、プロセッサ11は、第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)を調整する一方で、第1モデルのパラメータ(a,b)を予め決めておいてもよい。
【0092】
(ディスプレイの表示態様)
図7は、実施の形態1に係る予測装置1におけるディスプレイ15の表示態様を示す図である。プロセッサ11は、出力装置17によって予測結果をディスプレイ15に出力することで、予測結果に基づく画像をディスプレイ15に表示させる。
【0093】
たとえば、図1の例の場合、図7に示されるように、ディスプレイ15は、室内空間20におけるCO2濃度に関する画像を表示する。ディスプレイ15に表示された画面は、室内空間20における現在のCO2濃度を示すアイコン151と、室内空間20におけるCO2濃度の変化を示すグラフ152と、室内空間20の換気が必要となるまでの残り時間(到達予測時間)を示すアイコン153と、スピーカ16による予測結果の音声通知を有効にするためのアイコン154とを含む。
【0094】
なお、ユーザは、アイコン154をタッチ操作することで、音声通知を有効または無効に設定してもよいし、図示しないマウスなどのツールを用いてアイコン154を操作することで、音声通知を有効または無効に設定してもよい。
【0095】
図4を用いて説明したように、予測装置1は、予め決められた時間区間ごとに定期的に予測モデルを生成し、生成した予測モデルを用いて室内空間20におけるCO2濃度の変化を予測することで、室内空間20の換気が必要となるまでの残り時間を算出する。そして、予測装置1は、算出した残り時間をアイコン153によってユーザに通知する。
【0096】
このように、予測装置1は、変化後データを予測した予測時点から、変化後データが閾値に到達すると予測される到達予測時刻に達するまでの到達予測時間をディスプレイ15に出力する。なお、予測装置1は、到達予測時間に限らず、到達予測時刻をディスプレイ15に出力してもよい。
【0097】
さらに、予測装置1は、第1予測時点において未来の時間ごとの変化後データを予測し、当該変化後データが閾値に到達すると予測される第1到達予測時刻を算出し、その後、第1予測時点よりも後の第2予測時点において再び未来の時間ごとの変化後データを予測し、当該変化後データが閾値に到達すると予測される第2到達予測時刻を算出してもよい。そして、予測装置1は、第1到達予測時刻と第2到達予測時刻との間の時間が所定時間以上である場合に、第1予測時点において算出した到達予測時刻が変化したことを特定するための信号を出力してもよい。たとえば、予測装置1は、到達予測時刻が変化したことを特定するための信号をディスプレイ15に出力することで、到達予測時刻が変化したことをディスプレイ15によってユーザに通知してもよい。なお、上述した「閾値」は、換気が必要とされる指標値であり、たとえば、後述する第4閾値に対応する。
【0098】
これにより、予測装置1は、室内空間20でCO2濃度が増大する前にユーザに換気を促すことができる。
【0099】
(予測装置による処理)
図8は、実施の形態1に係る予測装置1のプロセッサ11が実行する処理に関するフローチャートである。プロセッサ11は、記憶装置12に格納された予測プログラム121を実行することで、図8に示すフローチャートの処理を定期的に実行する。なお、図中のS2~S8は、プロセッサ11の生成部11Aの処理に対応する。図中のS9およびS10は、プロセッサ11の予測部11Bの処理に対応する。図中において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0100】
図8に示されるように、プロセッサ11は、所定時間分の時系列データを取得したか否かを判定する(S1)。たとえば、図4に示すように、予測時点がt11である場合、プロセッサ11は、t10からt11までの時間にわたって時系列データを取得したか否かを判定する。プロセッサ11は、所定時間分の時系列データを取得していない場合(S1でNO)、本処理を終了する。
【0101】
一方、プロセッサ11は、所定時間分の時系列データを取得した場合(S1でYES)、予測モデルを生成するための処理に移行する。具体的には、最初に、プロセッサ11は、前処理を実行する(S2)。
【0102】
プロセッサ11は、複数のモデルを選択する(S3)。たとえば、プロセッサ11は、第1モデルとして式(1)で表される線形モデルを選択し、第2モデルとして式(2)で表される非線形モデルを選択する。
【0103】
プロセッサ11は、選択した複数のモデルを接合するための接合関数を選択する(S4)。たとえば、プロセッサ11は、接合関数として式(3)で表される双曲線関数を選択する。
【0104】
プロセッサ11は、第1モデルのパラメータを算出する(S5)。たとえば、プロセッサ11は、式(1)で表される第1モデルのパラメータ(a,b)を算出する。なお、図5で説明したように、第1モデルのパラメータ(a,b)は、最小二乗法を用いて算出され得る。
【0105】
プロセッサ11は、第2モデルのパラメータを算出する(S6)。たとえば、プロセッサ11は、式(2)で表される第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)を算出する。なお、図6で説明したように、第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)は、連立方程式の演算を用いて算出され得る。
【0106】
プロセッサ11は、重み付けに関するパラメータを算出する(S7)。たとえば、プロセッサ11は、式(3)で表される双曲線関数のパラメータ(α,T)を算出する。なお、上述したように、重み付けに関するパラメータ(α,T)は、予測装置1の設計者によって予め決められているため、プロセッサ11は、記憶装置12に予め記憶されたαおよびTの値を重み付けに関するパラメータとして用いる。
【0107】
プロセッサ11は、接合関数を用いて複数のモデルを接合することで、予測モデルを生成する(S8)。たとえば、プロセッサ11は、式(1)で表される第1モデルと、式(2)で表される第2モデルとを、式(3)で表される双曲線関数を用いて接合することで、予測モデルを生成する。このとき、プロセッサ11は、第1モデルのパラメータ(a,b)と、第2モデルのパラメータ(C,G/Q,Q/V)と、重み付けに関するパラメータ(α,T)とに対して、パラメータ調整によって決定した値を適用する。
【0108】
プロセッサ11は、予測モデルを生成した後、生成した予測モデルを用いて時系列データの変化を予測するための処理に移行する。具体的には、プロセッサ11は、予測モデルを用いて予測値を算出する(S9)。たとえば、プロセッサ11は、図3に示すように、現時点がt0である場合、第1予測区間および第2予測区間を含む予測区間における変化後データの値(予測値)を算出する。なお、プロセッサ11は、予測区間において得られる全ての時系列データの予測値を算出してもよいし、予測区間において得られる全ての時系列データの予測値のうちの一部の予測値のみを算出してもよい。
【0109】
プロセッサ11は、算出した予測値を含む予測結果をディスプレイ15およびスピーカ16のうちの少なくとも1つに出力する(S10)。その後、プロセッサ11は、本処理を終了する。
【0110】
次に、図9を参照しながら、予測装置1が実行する別の処理について説明する。図9は、実施の形態1に係る予測装置1のプロセッサ11が実行する別の処理に関するフローチャートである。以下では、図9に示す処理について、図8に示す処理と異なる部分のみを説明する。予測装置1は、図8に示す処理を実行するように構成されてもよいし、図9に示す処理を実行するように構成されてもよい。
【0111】
プロセッサ11は、記憶装置12に格納された予測プログラム121を実行することで、図9に示すフローチャートの処理を定期的に実行する。図中において、「S」は「STEP」の略称として用いられる。
【0112】
図9に示されるように、プロセッサ11は、S1~S4の処理を実行し、さらに、S5で第1モデルのパラメータを算出した後、S11の処理を実行する。S11の処理では、プロセッサ11は、時系列データがどのように変化しているのかをおおよそ判定する。プロセッサ11は、ここでは0以下の値を示す第1閾値と、0以上の値を示す第2閾値とを用い、傾きaが第1閾値以上でありかつ第2閾値以下であれば、時系列データが定常状態であると判断し、予測関数の生成および予測を行うことなく本処理フローを終了することで、不要な計算を省略することができる。
【0113】
具体的には、プロセッサ11は、算出したパラメータのうち、傾きaが第1閾値以上でありかつ第2閾値以下であるか否かを判定する(S11)。たとえば、第1閾値が0以下の値である場合において傾きaが第1閾値未満である場合、すなわち傾きaがマイナスの値をとる場合は、式(1)で表される線形モデルのグラフは時間の経過に伴って右下がりとなる。この場合、時間の経過に伴って時系列データが減少する。たとえば、第2閾値が0以上の値である場合において傾きaが第2閾値を超えている場合、すなわち傾きaがプラスの値をとる場合は、式(1)で表される線形モデルのグラフは時間の経過に伴って右上がりとなる。この場合、時間の経過に伴って時系列データが増加する。
【0114】
プロセッサ11は、傾きaが第1閾値以上でありかつ第2閾値以下である場合(S11でYES)、すなわち式(1)で表される線形モデルのグラフが定常状態であれば、本処理を終了する。
【0115】
一方、プロセッサ11は、傾きaが第1閾値未満であるか、または、第2閾値を超える場合(S11でNO)、S6~S8の処理を実行することで予測モデルを生成する。
【0116】
次に、プロセッサ11は、S9で予測モデルを用いて予測値を算出した後、S12の処理を実行する。S12以降の処理において、プロセッサ11は、算出した予測値を用いて、時系列データが基準値に達するまでの所要時間(到達予測時間)を算出することができる。時系列データとしてCO2濃度を用いた例について説明する。たとえば、換気によってCO2濃度が徐々に減少している場合、プロセッサ11は、十分換気できたとされる指標値である第3閾値に予測値が達するまでの予測到達時間を算出する。CO2濃度が増加している場合、プロセッサ11は、換気が必要とされる指標値である第4閾値に予測値が達するまでの予測到達時間を算出する。プロセッサ11は、これらの予測到達時間を算出し、出力することで、ユーザは換気終了、もしくは換気が必要となるまであとどれくらいの時間を要するのかを知ることができる。第3閾値および第4閾値としては、各国の法令によって定められた値または指標値、ユーザが指定する値などを用いることができる。
【0117】
具体的には、プロセッサ11は、傾きaが第1閾値未満でありかつ予測値が第3閾値未満であるか、または、傾きaが第2閾値を超えかつ予測値が第4閾値を超えるか否かを判定する(S12)。すなわち、プロセッサ11は、時間の経過に伴って時系列データが減少しかつ予測値が第3閾値未満であるか、または、時間の経過に伴って時系列データが増加しかつ予測値が第4閾値を超えるか否かを判定する。
【0118】
プロセッサ11は、時間の経過に伴って時系列データが減少しかつ予測値が第3閾値未満でない場合(S12でNO)、たとえば、換気中にCO2濃度が減少しているが、そのペースで換気を進めても予測値が第3閾値にまで達する見込みがない場合は、本処理を終了する。または、プロセッサ11は、時間の経過に伴って時系列データが増加しかつ予測値が第4閾値以上でない場合(S12でNO)、たとえば、CO2濃度が増加しているが、換気が必要な基準値(第4閾値)にまで予測値が達しないと予想する場合は、本処理を終了する。
【0119】
一方、プロセッサ11は、時間の経過に伴って時系列データが減少しかつ予測値の一部が第3閾値未満である場合(S12でYES)、たとえば、換気中にCO2濃度が減少していき、換気が十分であると判断される第3閾値を下回ると予測した場合、S13の処理に移行する。S13の処理において、プロセッサ11は、時間の経過に伴って減少している時系列データの予測値が第3閾値未満となるときの到達予測時刻を算出する。または、プロセッサ11は、時間の経過に伴って時系列データが増加しかつ予測値の一部が第4閾値を超える場合(S12でYES)、たとえば、CO2濃度が増加し、換気が必要であると判断される第4閾値を上回ると予測した場合、S13の処理に移行する。S13の処理において、プロセッサ11は、時間の経過に伴って増加している時系列データの予測値が第4閾値を超えるときの到達予測時刻を算出する。
【0120】
プロセッサ11は、予測時点から到達予測時刻までの到達予測時間を算出し(S14)、算出した到達予測時間を含む予測結果をディスプレイ15およびスピーカ16のうちの少なくとも1つに出力する(S10)。たとえば、プロセッサ11は、S13の処理において算出した到達予測時刻に基づく画像を表示するための信号をディスプレイ15に出力する。あるいは、プロセッサ11は、S14の処理において算出した到達予測時間に基づく画像(たとえば、図7のアイコン153の画像)を表示するための信号をディスプレイ15に出力する。さらに、プロセッサ11は、アイコン154によってスピーカ16による音声通知が有効に設定されている場合、S13の処理において算出した到達予測時刻に基づく音声の信号またはS14の処理において算出した到達予測時間に基づく音声の信号をスピーカ16に出力する。その後、プロセッサ11は、本処理を終了する。
【0121】
なお、プロセッサ11は、時間の経過に伴って減少している時系列データの予測値が第3閾値未満となるときの到達予測時刻を算出した場合、室内空間20におけるCO2濃度が低下しているため、換気を終了することができるまでの到達予測時刻および到達予測時間の少なくとも1つをディスプレイ15およびスピーカ16によって通知すればよい。一方、プロセッサ11は、時間の経過に伴って増加している時系列データの予測値が第4閾値を超えるときの到達予測時刻を算出した場合、室内空間20におけるCO2濃度が上昇しているため、換気を行う必要があるCO2濃度に達するまでの到達予測時刻および到達予測時間の少なくとも1つをディスプレイ15およびスピーカ16によって通知すればよい。
【0122】
以上のように、実施の形態1に係る予測装置1は、第1予測区間における予測に適した式(1)で表される第1モデルと、第1予測区間よりも後の第2予測区間における予測に適した式(2)で表される第2モデルとを、式(3)で表される双曲線関数を用いて接合することで予測モデルを生成し、生成した予測モデルを用いて時系列データの変化を予測する。
【0123】
ここで、図3の例を参照すると、予測装置1は、第1モデルのみを用いて時系列データの変化を予測した場合は、グラフG1で表されるように、近い未来の第1予測区間については実測値と同じような値を予測することができるが、遠い未来の第2予測区間については実測値と同じような値を予測することは難しい。また、予測装置1は、第2モデルのみを用いて時系列データの変化を予測した場合は、グラフG2で表されるように、遠い未来の第2予測区間については実測値と同じような値を予測することができるが、近い未来の第1予測区間については実測値と同じような値を予測することは難しい。
【0124】
しかしながら、実施の形態1に係る予測装置1は、第1モデルを用いて第1予測区間における時系列データの変化を予測することに限らず、第2モデルを用いて第1予測区間よりも後の第2予測区間における時系列データの変化も予測することができるため、長時間に亘って時系列データの変化を精度よく予測することができる。
【0125】
さらに、予測装置1は、第1モデルと第2モデルとを接合することで生成した予測モデルを用いることで、第1予測区間と第2予測区間との間の予測区間においては、第1モデルと第2モデルとの両方の予測結果を反映した予測結果を得ることができる。
【0126】
予測装置1は、第1モデルと第2モデルとを接合するときに、第1モデルと第2モデルとの間で重み付けを行う。
【0127】
これにより、予測装置1は、第1モデルを用いて予測を行う期間と、第2モデルを用いて予測を行う期間とを、重み付けによって調整することができる。さらに、予測装置1は、第1予測区間と第2予測区間との間の予測区間においては、重み付けによって調整された比率で第1モデルと第2モデルとの両方の予測結果を反映した予測結果を得ることができる。
【0128】
予測装置1は、センサ14によって取得された過去の時系列データに基づき、第1モデルおよび第2モデルのうちの少なくとも1つのパラメータを調整する。
【0129】
これにより、予測装置1は、時系列データの変化に適合するパラメータの値を用いて精度の高い予測を行うことができる。
【0130】
予測装置1は、予測結果に基づく画像をディスプレイ15に表示したり、予測結果に基づく音をスピーカ16から出力したりする。
【0131】
これにより、予測装置1は、予測結果に基づく情報(たとえば、室内空間20の換気が必要となるまでの残り時間)をユーザに通知することができる。しかも、予測装置1は、長時間に亘って時系列データの変化を精度よく予測することができるため、近い未来の第1予測区間に限らず、遠い未来の第2予測区間における予測結果を用いてユーザに通知することができる。したがって、ユーザは、たとえば、室内空間20の換気が必要となるまでの残り時間を、余裕をもって知ることができる。
【0132】
[実施の形態2]
図10を参照しながら、実施の形態2に係る予測装置100について説明する。図10は、実施の形態2に係る予測装置100の構成を示す図である。以下では、実施の形態2に係る予測装置100について、実施の形態1に係る予測装置1と異なる部分のみを説明する。
【0133】
図10に示されるように、時系列データの変化を予測する予測システム1000は、サーバ装置としての機能を有する予測装置100と、モニタリング装置200と、通知装置300とを備える。
【0134】
予測装置100は、メディア読取装置13を備える。メディア読取装置13は、記憶媒体であるリムーバブルディスク5を受け入れて、リムーバブルディスク5に格納されている各種のプログラムおよびデータを読み取ったり、記憶装置12に格納されている各種のプログラムおよびデータをリムーバブルディスク5に出力したりする。
【0135】
たとえば、メディア読取装置13は、リムーバブルディスク5に格納されている予測プログラム121および演算用データ122を取得し、取得した予測プログラム121および演算用データ122を記憶装置12に出力する。記憶装置12は、メディア読取装置13から取得した予測プログラム121および演算用データ122を記憶する。上述したとおり、予測装置100においても、メディア読取装置13を用いることなく、記憶装置12に予め記憶されている各種のプログラムおよびデータを使用したり、ネットワークからダウンロードした各種のプログラムおよびデータを使用したりしてもよい。
【0136】
予測装置100は、通信装置110をさらに備える。通信装置110は、出力装置の一例であり、ネットワーク500を介した通信によって、モニタリング装置200および通知装置300の各々との間でデータを送受信するように構成されている。
【0137】
モニタリング装置200は、通信装置210と、第1センサ214Aと、第2センサ214Bとを備える。
【0138】
通信装置210は、ネットワーク500を介した通信によって、予測装置100との間でデータを送受信するように構成されている。
【0139】
第1センサ214Aおよび第2センサ214Bの各々は、CO2濃度、湿度、および温度など、時間の経過に伴って変化する時系列データを測定する。なお、第1センサ214Aは、第2センサ214Bと同じ種類の時系列データを測定してもよいし、第2センサ214Bと異なる種類の時系列データを測定してもよい。もちろん、モニタリング装置200は、第1センサ214Aのみを用いて時系列データを測定してもよい。
【0140】
通知装置300は、通信装置310と、ディスプレイ315と、スピーカ316とを備える。
【0141】
通信装置310は、ネットワーク500を介した通信によって、予測装置100との間でデータを送受信するように構成されている。
【0142】
ディスプレイ315は、予測装置100から取得した時系列データの変化の予測結果に基づく画像など、各種の画像を表示する。
【0143】
スピーカ316は、予測装置100から取得した時系列データの変化の予測結果に基づく音など、各種の音を出力する。
【0144】
このように構成された予測システム1000においては、モニタリング装置200は、第1センサ214Aおよび第2センサ214Bの各々によって得られた時系列データを、通信装置210によって予測装置100に送信する。予測装置100は、予測プログラム121を実行することで、モニタリング装置200から取得した時系列データに基づき時系列データの変化を予測し、予測結果に基づくデータを通信装置110によって通知装置300に送信する。通知装置300は、予測装置100から取得した予測結果に基づき、ディスプレイ315およびスピーカ316のうちの少なくとも1つによって予測結果に基づく情報をユーザに通知する。
【0145】
以上のように、実施の形態2に係る予測装置100は、モニタリング装置200によって取得された時系列データに基づき時系列データの変化を予測し、予測結果に基づくデータを通知装置300に出力する。これにより、ユーザは、センサ、ディスプレイ、およびスピーカとは別の場所に予測装置100を設置しながら、時系列データの変化の予測結果を得ることができる。たとえば、予測装置100は、室内空間20に設置されたセンサ、ディスプレイ、およびスピーカとは別の場所で、クラウドコンピューティングの態様で存在することができる。
【0146】
なお、予測システム1000は、複数のモニタリング装置200を備え、複数のモニタリング装置200を予測装置100に接続させてもよい。さらに、予測システム1000は、モニタリング装置200と通知装置300とを一体化した装置を備えてもよい。モニタリング装置200と通知装置300とが一体化することで、通信装置を共有できることから、予測システム1000の小型化およびコストダウンを図ることができる。
【0147】
予測システム1000は、たとえば社内LAN(Local Area Network)など、閉じられたネットワークを用いて構成されてもよく、このようにすれば、社内の環境管理を社内のみで実施する環境構築が可能である。
【0148】
[実施の形態3]
図11を参照しながら、実施の形態3に係る予測装置について説明する。図11は、実施の形態3に係る予測装置の処理のタイミングを説明するための図である。以下では、実施の形態3に係る予測装置について、実施の形態1に係る予測装置1と異なる部分のみを説明する。
【0149】
図11に示されるように、実施の形態3に係る予測装置においては、プロセッサ11は、一の時間区間における時系列データに基づき時系列データの変化を予測した後、次の時間区間における時系列データに基づき時系列データの変化を予測する。このとき、プロセッサ11は、一の時間区間における時系列データと、次の時間区間における時系列データとで、一部のデータを重複させてもよい。
【0150】
たとえば、センサ14がt30からt33までの時間にわたって時系列データを取得すると、プロセッサ11がt33以降で時系列データ(t30からt33までの時系列データ)に基づき予測モデルを生成するとともに、生成した予測モデルを用いてt33以降の時系列データの変化を予測する。
【0151】
センサ14がt31からt34までの時間にわたって時系列データを取得すると、プロセッサ11がt34以降で時系列データ(t31からt34までの時系列データ)に基づき予測モデルを生成するとともに、生成した予測モデルを用いてt34以降の時系列データの変化を予測する。
【0152】
センサ14がt32からt35までの時間にわたって時系列データを取得すると、プロセッサ11がt35以降で時系列データ(t32からt35までの時系列データ)に基づき予測モデルを生成するとともに、生成した予測モデルを用いてt35以降の時系列データの変化を予測する。
【0153】
上述した例において、t30からt33までの時系列データは、t31からt34までの時系列データおよびt32からt35までの時系列データの各々と一部のデータが重複する。
【0154】
このように、実施の形態3に係る予測装置は、時系列データの変化を予測するときに、前回の予測に用いた時系列データと一部重複したデータを含む時系列データを用いるため、時系列データの変化を予測するために必要となる過去の時系列データの量を十分に確保しながらも、より短いサイクルで時系列データの変化を予測することができる。
【0155】
なお、t30からt33までの時系列データを取得するセンサ、t31からt34までの時系列データを取得するセンサ、およびt32からt35までの時系列データを取得するセンサの各々は、互いに異なるセンサであってもよい。
【0156】
さらに、図11に示されるように、実施の形態3に係る予測装置において、制御装置11は、予測モデルを生成した後、生成した予測モデルの精度を確認するための処理を実行してもよい。そして、プロセッサ11は、重み付けに関するパラメータ(α,T)を調整してもよい。
【0157】
具体的には、プロセッサ11は、下記の式(7)で表される関数(距離関数)を用いて予測モデルの精度を確認することで、重み付けに関するパラメータ(α,T)を調整する。
【0158】
【数7】
【0159】
式(7)において、C(t)は、時刻tにおける実測値を示す関数である。なお、C(t)は、前処理を実行した後の補正実測値を示す関数であってもよい。C(t)は、予測モデルの関数(たとえば、双曲線関数)である。
【0160】
プロセッサ11は、式(7)で表される関数の和Fが最小となるようなパラメータ(α,T)の値を算出し、算出した値を予測モデルの関数に適用することで、予測モデルを最適化することができる。
【0161】
このように、プロセッサ11は、第1モデルと第2モデルとを接合するときの重み付けに関するパラメータ(α,T)を調整することで、時系列データの変化に応じて精度の高い予測を行うことができる。
【0162】
なお、プロセッサ11は、距離関数を用いて予測モデルによる予測値と実測値とを比較する際、ユーグリット距離およびマンハッタン距離など、公知の距離関数を用いてもよい。さらに、プロセッサ11は、公知のカルマンフィルタを用いて予測モデルによる予測値と実測値とを比較してもよい。
【0163】
[実施の形態4]
図12を参照しながら、実施の形態4に係る予測装置について説明する。図12は、実施の形態4に係る予測装置が予測する時系列データの変化を示す図である。以下では、実施の形態4に係る予測装置について、実施の形態1に係る予測装置1と異なる部分のみを説明する。
【0164】
実施の形態4に係る予測装置は、近い未来の第1予測区間における予測に適した第1モデルと、遠い未来の第2予測区間における予測に適した第2モデルとに加えて、第1予測区間と第2予測区間との間の第3予測区間における予測に適した第3モデルを選択する。第3モデルは、第1モデルおよび第2モデルよりも、第3予測区間における変化後データの予測に適している。予測装置は、第1モデルと、第2モデルと、第3モデルとを接合することで、予測モデルを生成する。
【0165】
このように、実施の形態4に係る予測装置は、第1予測区間における予測に適した第1モデルと、第1予測区間よりも後の第2予測区間における予測に適した第2モデルと、第1予測区間と第2予測区間との間の第3予測区間における予測に適した第3モデルとを、接合関数を用いて接合することで予測モデルを生成し、生成した予測モデルを用いて時系列データの変化を予測する。これにより、予測装置は、第1モデルを用いて第1予測区間における時系列データの変化を予測することに限らず、第2モデルまたは第3モデルを用いて第1予測区間よりも後の予測区間における時系列データの変化も予測することができるため、長時間に亘って時系列データの変化を精度よく予測することができる。
【0166】
なお、予測装置1は、3つ以上のモデルを用いて予測モデルを生成する場合、下記の式を用いて予測モデルを生成してもよい。
【0167】
たとえば、予測装置1は、下記の式(8)を用いて第1モデルと第2モデルとを接合する。
【0168】
【数8】
【0169】
さらに、予測装置1は、下記の式(9)を用いることで、式(8)で生成されるモデルに対して第3モデルを接合する。
【0170】
【数9】
【0171】
予測装置1は、式(8)および式(9)を用いて説明したような計算を、下記の式(10)に従ってモデルの数に相当するN回繰り返す。
【0172】
【数10】
【0173】
式(10)をまとめると、下記の式(11)が得られる。
【0174】
【数11】
【0175】
ここで、式(11)においては、下記の式(12)~式(14)が成立している。
【0176】
【数12】
【0177】
【数13】
【0178】
【数14】
【0179】
なお、式(11)に含まれる関数のうち、下記式(15)で表される関数は、第1予測区間における予測に適した第1モデルに限らない。時系列で複数のモデルを並べた場合に、最も時間の早い予測区間に対応するモデルを下記式(15)で表される関数に適用すればよい。
【0180】
【数15】
【0181】
なお、第1モデル、第2モデル、および第3モデルといったような、予測モデルを生成する際に用いる複数のモデルの各々には、入力(たとえば時刻)に対して出力(たとえばCO2濃度)を算出することができる公知のモデルを用いることができる。たとえば、複数のモデルの各々は、ニューラルネットワークを用いたモデル、サポートベクター回帰を用いたモデル、ロジスティック回帰を用いたモデル、線形回帰を用いたモデル、状態空間モデル、ガウス過程回帰を用いたモデル、および自己回帰を用いたモデルのうち、少なくとも1つであってもよい。
【0182】
一般的に、予測に要する計算量と予測精度とはトレードオフの関係にある。すなわち、長時間にわたって予測精度が高い予測モデルを生成する場合、計算量が増大する傾向にある。これに対して、実施の形態に係る予測装置1のように、計算量が小さいが予測可能な時間が短い複数のモデルを、複数の予測区間ごとに選択し、それらを接合して1つの予測モデルを生成すれば、計算量が増大することを抑えながら、長時間に亘って時系列データの変化を精度よく予測することができる。
【0183】
以上、複数の実施の形態および変形例について説明したが、これらの複数の実施の形態および変形例の各々における特徴は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0184】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0185】
1,100 予測装置、5 リムーバブルディスク、11 プロセッサ、11A 生成部、11B 予測部、12 記憶装置、13 メディア読取装置、14 センサ、15,315 ディスプレイ、16,316 スピーカ、17 出力装置、18 メモリ、20 室内空間、21 窓、22 ドア、110,210,310 通信装置、121 予測プログラム、122 演算用データ、123 時系列データ、151,153,154 アイコン、152 グラフ、200 モニタリング装置、214A 第1センサ、214B 第2センサ、300 通知装置、500 ネットワーク、1000 予測システム。
【要約】
予測装置(1)は、時系列データを記憶するメモリ(18)と、メモリ(18)に記憶された時系列データと、予測モデルとに基づき、時系列データが変化した後の変化後データを予測するプロセッサ(11)とを備える。予測モデルは、第1モデルと、第2モデルとを含む。第1モデルは、第2モデルよりも、第1予測区間における変化後データの予測に適している。第2モデルは、第1モデルよりも、第1予測区間の後の第2予測区間における変化後データの予測に適している。プロセッサ(11)は、時系列データと、予測モデルとに基づき、第1予測区間と第2予測区間との間の区間における変化後データを予測する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12