(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】保持治具
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20221122BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221122BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01G13/00 351B
C09J11/04
C09J183/04
(21)【出願番号】P 2018205847
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】初見 俊明
(72)【発明者】
【氏名】栗原 孝幸
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特許第5936230(JP,B2)
【文献】特開2015-077783(JP,A)
【文献】特開2008-307816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/10
H01G 4/14-4/22
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の表面に設けられた粘着層とを有してなり、
前記粘着層が、シリコーンゴムからなり、前記粘着層の表面におけるスキューネスRskが0より小さ
く、前記粘着層の表面における負荷長さ率Rmr(50%)が、50%以上65%以下である保持治具。
【請求項2】
前記粘着層の表面におけるコア部の負荷長さ率Mr1が、6%以上10%以下である請求項1記載の保持治具。
【請求項3】
前記粘着層の表面における凹凸の平均間隔Smが、4μm以上8μm以下である請求項1
又は2記載の保持治具。
【請求項4】
前記粘着層のシリコーンゴムが、シリカ粒子を含む請求項1から
3いずれか1項記載の保持治具。
【請求項5】
前記シリカ粒子の平均二次粒子径が、1μm以上5μm以下である請求項
4記載の保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等を保持する粘着層を有する保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
積層コンデンサなどのチップ型電子部品の端面に外部電極を形成する場合、粘着層を有する電子部品保持具の該粘着層に電子部品を保持して実施する方法が広く知られている。この方法は、まず、電子部品の一方の端面を電子部品保持具の粘着層に保持させた状態で、他方の端面に導電ペーストを付着及び乾燥して第一の電極を形成し、次に、この電子部品保持具よりも強い粘着力を有する粘着面を有する別の電子部品保持具に第一の電極を保持させて電子部品を移し替えた後、一方の端面に第二の電極を形成し、最後に、電子部品保持具から電子部品が取り外すというものである。
【0003】
電子部品の取り外し方として、例えば、特許文献1に、ブレードの先端を粘着層に押圧して凹ませた状態で、ブレードを粘着層表面方向に沿って粘着層に対して相対的に移動させて電子部品を粘着層から掻き取るように脱離させる方法が開示されている。このような方法においては、粘着層は、電子部品を所定の粘着力で保持しつつ、容易に脱離させることが必要である。脱離を容易にした保持治具として、例えば、特許文献2に、基板と、基板の表面に設けられ、最大粗さRyが1.0~6.0μmであり、粘着力が1~60g/mm2であり、かつ、硬度が5~50である粘着層とを備えた保持治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-077772号公報
【文献】特許第5936230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載のような粘着層を備えた保持治具においては、粘着層に粘着した電子部品をブレードで押圧させて相対的に移動させる作業を繰り返すことにより、摩耗によって徐々に粘着層の粘着力が低下し、電子部品を保持し難くなる。粘着力が低下すると、電子部品を倒立させて保持することが困難となり、電子部品が傾いて電極が所望の位置に形成されない、又は電子部品が落下するという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品等を粘着力で保持する粘着層を備えた保持治具において、粘着層の耐摩耗性が向上した保持治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、粘着層が所定の表面状態を有することによって、耐摩耗性が向上することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、基板と、基板の表面に設けられた粘着層とを有してなり、粘着層が、シリコーンゴムからなり、粘着層の表面におけるスキューネスRskが0より小さい保持治具である。
【0007】
粘着層の表面におけるコア部の負荷長さ率Mr1は、6%以上10%以下であることが好ましい。
【0008】
粘着層の表面における切断レベル50%における負荷長さ率Rmr(50%)は、50%以上65%以下であることが好ましい。
【0009】
粘着層の表面における凹凸の平均間隔Smは、4μm以上8μm以下であることが好ましい。
【0010】
粘着層のシリコーンゴムは、シリカ粒子を含むことが好ましい。
【0011】
シリカ粒子の平均二次粒子径は、1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粘着層を備えた保持治具において、粘着層の耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の保持治具の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の保持治具を備えた取扱治具を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の保持治具を備えた一組の保持治具を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の保持治具を備えた被粘着物保持装置を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の保持治具を備える被粘着物保持装置を用いて電子部品に電極を形成する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
なお、本発明の保持治具に粘着保持される被粘着物として、例えば、電子部品及びその電子部品に用いられる各種部材が挙げられる。電子部品として、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ、FPC(フレキシブルプリント回路基板)等が挙げられる。
【0015】
[保持治具]
本発明の保持治具10は、
図1に示すように、基板11と、基板11の表面に設けられた粘着層12とを有してなる。粘着層12はシリコーンゴムからなり、粘着層12の表面12aにおけるスキューネスRskは0より小さい値を示す。
本発明の保持治具10の使用方法については、詳細は後述するが、本発明の保持治具10に、被粘着物、例えば電子部品を粘着保持するには、粘着層12の表面12aに被粘着物を押圧して粘着させて保持する。一方、本発明の保持治具10に粘着保持された電子部品を取り外すには、粘着層12の表面12aを脱離具で押圧しながら、保持治具10に対して相対的に動かして、脱離具20を粘着層12の表面12aと電子部品20との間に侵入させて、電子部品を掻き取るように脱離させる。
【0016】
(基板)
基板11は、
図1に示すように、後述する粘着層12を支持する。本実施形態における基板11は、矩形状の盤状体である。基板11は、平滑な表面を有していればよく、粘着層12を支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態、例えば、矩形状、円形、楕円形、多角形であってよい。また、基板11は、
図1に示すように、その端縁近傍が粘着層12の端縁から突出するように、粘着層12よりも大きな寸法を有する盤状薄葉体に形成されていてもよく、基板11は粘着層12とほぼ同じ寸法の方形を成す盤状薄葉体に形成されていてもよい。
【0017】
基板11は、粘着層12を支持可能な材料で形成されていればよく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム、又は樹脂板等を挙げることができる。さらに、基板11はシート状物を複数積層してなる積層体とすることもできる。
【0018】
(粘着層)
粘着層12は、被粘着物の一平面に接して多数の被粘着物を粘着により保持することができるように設計されている。粘着層12は、例えば、後述する粘着力を有する粘着性材料又は粘着性材料の硬化物で形成されており、表面全体が被粘着物を粘着保持可能な粘着層12の表面12aになっている。
【0019】
粘着層12の表面12aは、被粘着物の表面に接触して被粘着物を粘着保持するから被粘着物を粘着保持することのできる粘着力を有している。具体的には、粘着層12の粘着力は、通常、1~60g/mm2であること好ましく、7~60g/mm2であることがより好ましい。粘着層12の粘着力は下記「信越ポリマー法」によって測定された値である。
【0020】
(信越ポリマー法)
粘着層12を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET-1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP-50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意し、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に粘着層12を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。
次いで、20mm/minの速度で粘着層12の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここでは、所定の荷重を25g/mm2に設定する。次いで、180mm/minの速度で接触子を被測定部位から引き離し、このときにデジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる算術平均値を粘着層12の粘着力とする。
【0021】
(スキューネスRsk)
粘着層12の表面12aにおけるスキューネスRskは0より小さい。スキューネスRskが0より小さいことによって、耐摩耗性が向上された表面12aとなる。
ここで、スキューネスRskとは、表面粗さの強弱を表すパラメータの一つであり、平均線を中心としたときの山部と谷部の対称性(凹凸の歪度)を意味し、以下の式(1)で表される。
【0022】
スキューネスRskが0より大きいと、凹凸は平均線に対して下側に偏っており、0より小さいと凹凸は平均線に対して上側に偏っている。0より小さいと、表面12aにおいて平坦な面の割合が大きいため、ブレードが押圧されて移動することによって生じる摩擦の影響を受けにくい。よって、スキューネスRskが0より小さい粘着層を有する保持具は、耐摩耗性が向上していると考えられる。
スキューネスRskは、-0.500以上0未満であることがより好ましく、-0.450以上-0.100以下であることさらに好ましい。
表面12aにおけるスキューネスRskは、粘着層12の表面12aが被粘着物を粘着保持していない状態であって、JIS B0601-2001に記載された測定方法に従って測定される。
【0023】
(コア部の負荷長さ率Mr1)
粘着層12の表面12aにおけるコア部の負荷長さ率Mr1は、6%以上10%以下であることが好ましい。コア部の負荷長さ率Mr1は、凹凸の山部が測定面積に占める割合を意味する。したがって、コア部の負荷長さ率Mr1が6%以上10%以下であることは、凸部が少なく平坦部の割合が多いことを示しており、上記範囲であることにより、ブレード等の摩擦によって摩耗したとしても表面の凹凸の変化量が少なく、粘着層12の粘着力の低下が小さい。したがって、粘着層の耐摩耗性が向上する。
表面12aにおけるコア部の負荷長さ率Mr1は、粘着層12の表面12aが被粘着物を粘着保持していない状態であって、JIS B0671-2に記載された測定方法に従って測定される。
【0024】
(負荷長さ率Rmr(50%))
負荷長さ率Rmr(50%)は、切断レベル50%において、輪郭曲線要素の負荷長さMl(50)の評価長さlnに対する比率を意味し、以下の式(2)で表される。式(2)中、cは切断レベルを示す。
【0025】
負荷長さ率Rmr(50%)は、50%以上65%以下であることが好ましく、52%以上60%以下がより好ましい。負荷長さ率Rmr(50%)が50%以上65%以下であることにより、粘着層12の表面12aにおける耐摩耗性を向上することができる。表面凹凸の高さ50%以内に実際のゴムが半数以上あり上側に偏った状態になっていることになり、耐摩耗性が向上する。
表面12aにおける負荷長さ率Rmr(50%)は、粘着層12の表面12aが被粘着物を粘着保持していない状態であって、JIS B0601-2001に記載された測定方法に従って測定される。
【0026】
(凹凸の平均間隔Sm)
凹凸の平均間隔Smは、基準長さにおいて、輪郭曲線要素の長さXsの平均を表し、以下の式(3)で表される。
【0027】
表面12aにおける凹凸の平均間隔Smが4μm以上8μm以下であると、表面12aの凹凸における山部分と山部分(又は、谷部分と谷部分)との間隔が所望の間隔になるので山部分の弾性変形による粘着層12の表面12aの平坦性がより一層高くなり、耐摩耗性が向上する。
表面12aにおける凹凸の平均間隔Smは、粘着層12の表面12aが被粘着物を粘着保持していない状態であって、JIS B0601-1994に記載された測定方法に従って測定される。このとき、カットオフ波長は0.8mm、評価長さは2.4mm、カットオフ種別はガウシアン、少なくとも3点における算術平均値である。粘着層12の表面12aの凹凸の平均間隔Smは後述する方法等によって調整することができる。
【0028】
粘着層12はスキューネスRsk、コア部の負荷長さ率Mr1、負荷長さ率Rmr(50%)、凹凸の平均間隔Smは、それぞれは次の方法で調整できる。例えば、粘着層12の粘着層12の表面12aを公知の粗面化処理、例えば、サンドブラスト処理等で表面処理する方法、公知の粗面化処理で表面処理されたキャビティ内面を有する成形金型を用いて粘着層12を成形する方法、粘着層12又は粘着層12を形成する粘着性材料に粒状物を含有させる方法等が挙げられる。
【0029】
本発明の保持治具10における粘着層12は、粒状物を含む粘着性を示すゴム又は樹脂からなる。
表面粗面化方法に用いる粒状物は、粒子であればその形状、材質等は特に限定されず、例えば、公知の粒子状充填剤等が挙げられる。粒状物として、例えば、シリカ系充填材等の無機充填剤が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカ、沈降シリカ、シリカゲル等の湿式法により合成されたシリカ粒子を挙げることができる。これらの中でも、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好ましい。
【0030】
粒状物は、平均二次粒子径が1~4.5μmであることが好ましく、1~3.5μmであることがより好ましく、1~2.5μmであることが特に好ましい。平均二次粒子径の測定方法は二次粒子径d50(レーザー法)に準拠する。粒状物は、粘着層12中にほぼ均一に分散して、スキューネスRsk、コア部の負荷長さ率Mr1、負荷長さ率Rmr(50%)、凹凸の平均間隔Smのうち少なくともスキューネスRskを上記範囲に調整できる。
【0031】
粒状物は、シリカ系充填材であるか否かを問わず、粘着層12中にほぼ均一に分散して、スキューネスRsk、コア部の負荷長さ率Mr1及び負荷長さ率Rmr(50%)のうち少なくともスキューネスRskを本発明の範囲に調整できる点で、粘着層12を形成するゴム又は樹脂100質量部に対して、1~12質量部の割合で粘着層12に含有されていることが好ましく、1~10質量部の割合で粘着層12に含有されているのが更に好ましく、2~8質量部の割合で粘着層12に含有されていることが特に好ましい。なお、この粒状物を粘着層12に含有させるには粘着層12を形成する粘着性材料に粒状物を添加させる方法等が挙げられる。
【0032】
粘着層12は、その粘着層12の表面12aの硬度(JIS K6253[デュロメータA])が5~50であることが好ましく、30~50であることがより好ましい。粘着層12の表面12aが上記硬度の範囲内にあると、粘着層12の表面12aに被粘着物を押圧して粘着保持させるときに、粘着層12の表面12a、特にその凹凸の凸部分が容易に弾性変形して粘着層12の表面12aがより一層平坦化され、被粘着物の接触面がより強固に密着されるうえ、被粘着物の損傷及び破損等を防止できる。なお、粘着層12の硬度は粒状物の含有量等によって調整することができる。
【0033】
粘着層12は、0.05~5mm程度の厚さを有するのが好ましい。この粘着層12の厚さが0.05mm未満であると、粘着層12の機械的強度が低下し、粘着層12の耐久性が十分でないことがあり、一方、5mmを越えると、粘着層12が弾性変形しやすくなり、被粘着物を粘着層12から容易に取り外すことができなくなることがある。
【0034】
粘着層12は、接着剤層若しくはプライマー層によって、粘着層12の粘着力によって、又は、固定具等によって、基板11の表面に固定されていればよく、保持治具10において、粘着層12は接着剤層若しくはプライマー層を介して基板11の表面に固定されている。
【0035】
粘着層12は、粘着力を発揮することのできる粘着性材料又は粘着性材料の硬化物で形成されていればよく、粘着材料として、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物等が挙げられる。中でも、シリコーンゴム及び/又はシリコーンゴムを含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物が好ましい。付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物としては、例えば、特開2008-091659号公報に記載の、シリコーン生ゴム(a)と架橋成分(b)と粘着力向上剤(c)と触媒(d)とシリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物としては、例えば、特開2008-091659号公報に記載の、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とシリカ系充填材(e)と有機過酸化物(f)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。粘着性材料は適宜の条件で硬化される。
【0036】
[取扱治具]
次に、本発明の保持治具を備えた取扱治具について
図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、取扱治具30は、保持治具10と、保持治具10における粘着層12の表面12aに沿って相対的に移動して粘着保持された被粘着物を脱離させる脱離具20とを備えている。取扱治具30は、例えば、複数の被粘着物を、製造、搬送、収納又は検査等するために、一旦粘着保持し、その後、粘着保持された被粘着物を取り外すときに使用される。
【0037】
取扱治具30における脱離具20は、保持治具10における粘着層12の表面12aに沿って保持治具に対して相対的に移動して、この保持治具に粘着保持された被粘着物を脱離させることができる形態を有していればよい。脱離具20は、粘着層12の表面12aを押圧した状態で、保持治具10を脱離具20に対して相対的に移動させることによって、粘着層12と被粘着物との間に侵入させて、被粘着物を粘着層12から離脱させる。
脱離具20として、例えば、先端に向かってその厚みが薄くなるように形成されたブレードが好ましい。
【0038】
脱離具20を構成する材料は特に限定されず、ステンレスなどの金属、あるいはMCナイロンなどの合成樹脂により構成することができる。保持治具10を移動させることによって、脱離具20が粘着層12の表面12a上を移動して、被粘着物を掻き取るようにしてもよく、脱離具20に連結された駆動装置(不図示)によって、脱離具20が、粘着層の表面12a上を移動して被粘着物を掻き取るようにしてもよい。
また、脱離具20の先端の下方には、粘着層12から脱離され、落下した被粘着物を納められるように被粘着物を回収する被粘着物回収容器(不図示)が配置されていてもよい。
【0039】
取扱治具30を用いて被粘着物を取扱う取扱方法の一例(以下、一取扱方法と称することがある)を、取扱治具30を例にして、説明する。この一取扱方法は、被粘着物を保持治具10における粘着層12の粘着層12の表面12aに押圧して粘着保持させる保持工程と、被粘着物が粘着保持された保持治具10の粘着層12の表面12aに沿って脱離具20を相対的に移動させて被粘着物を取り外す脱離工程を有する。
【0040】
保持工程は、被粘着物を粘着層12の粘着層12の表面12aに押圧して粘着保持させる工程である。取扱治具30の保持治具10に被粘着物を起立状態に保持するには、粘着層12上に複数の被粘着物を起立状態で所定のパターンに配列し、その底面を保持治具10における粘着層12の表面12aに押圧する。そうすると、被粘着物の底面が粘着層12の表面12aに圧接して、粘着層12の表面12aの凹凸の凸部分が弾性変形して粘着層12の表面12aが平坦化され、粘着性表面の粘着力で複数の被粘着物が粘着層12に粘着保持される。被粘着物をこのようにして粘着保持する方法として、例えば特開2008-091659号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0041】
この一取扱方法において、保持治具10に粘着保持された被粘着物を取り外すには、脱離具20を、保持治具10の粘着層12の表面12aに傾斜させて押圧し、被粘着物と粘着層の間に脱離具20を挿入して、表面12aに沿って相対的に移動させて、被粘着物20を掻き取るようにして取り外すことができる。
【0042】
このように、本発明の保持治具及びその保持治具を備えた取扱治具は、多数の被粘着物を良好に粘着保持できるうえ、掻き取りによって被粘着物を脱離させる場合でも、粘着層の耐摩耗性が高いため、繰り返し使用による粘着力が低下することがなく、歩留まり高く、高品質の被処理物を得ることができる。
【0043】
取扱治具30は、保持治具10及び脱離具20を備えてなるが、この発明において、取扱治具は、これら以外の部材又は要素、例えば、被粘着物の収納部材、脱離具の駆動手段、また、特開2008-091659号公報に記載された立設配置板、及び、立設配置板の配設孔に挿入された被粘着物を第1保持治具に向けて押圧するプレス板等を備えていてもよい。
【0044】
[一組の保持治具]
次に、一組の保持治具について
図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、一組の保持治具40は、第1基板11Aと第1基板11Aの表面に設けられた第1粘着層12Aを備えてなる第1保持治具10Aと、第2基板11Bと第2基板11Bの表面に設けられた第2粘着層12Bを備えてなる第2保持治具10Bとを備える。第2保持治具10Bにおける第2粘着層12Bは、第1粘着層12Aの粘着力よりも大きな粘着力を有している。
【0045】
第1保持治具10A及び第2保持治具10Bにおいて、第1粘着層12Aと第2粘着層12Bとは、被粘着物を粘着保持することができる粘着力、通常、1~60g/mm2の粘着力(「信越ポリマー法」による)を有していることがよく、7~60g/mm2の粘着力を有していることがよい。
第1粘着層12A及び第2粘着層12Bの粘着力に差があることにより、第1保持治具10Aにおける第1粘着層12Aから第2保持治具10Bにおける第2粘着層12Bに被粘着物を移し替えることができる。第1粘着層12Aから第2粘着層12Bに被粘着物を脱落することなくスムーズに移し替えることができる点で、第1粘着層12Aと第2粘着層12Bとの粘着力(「信越ポリマー法」による)の差は15~43g/mm2であることが好ましく、18~35g/mm2であることがより好ましく、20~30g/mm2であることが特に好ましい。第1粘着層12A及び12Bの粘着力は粘着力向上剤の含有量及び粒状物の含有量等によって調整することができる。
【0046】
本発明の一組の保持治具40において、第1保持治具及10A及び第2保持治具10Bのうち一方が、本発明の保持治具であってもよく、第1保持治具10A及び第2保持治具10Bの双方が本発明の保持治具であってもよい。
また、第1粘着層12Aと第2粘着層12Bとは同一の粘着性材料によって形成されていても、異なる粘着性材料によって形成されていてもよい。
またさらに、一組の保持治具40において第1保持治具10A及び第2保持治具10Bは、粘着力以外は基本的に同様に構成されていてもよい。
【0047】
本発明の一組の保持治具40は、例えば、複数の被粘着物の両端部に順次所定の処理を施して被粘着物を製造等するために、一方の保持治具に粘着保持した被粘着物を他方の保持治具に移し替えた後、移し替えた被粘着物を取り外すときに、好適に使用される。
【0048】
一組の保持治具40においては、第1保持治具10Aと第2保持治具10Bとを備えているが、この発明において、一組の保持治具40は、第1保持治具10A及び第2保持治具10Bに加えて、他の部材又は要素、例えば、第3保持治具、前記脱離具等を備えていてもよい。
【0049】
[被粘着物保持装置]
本発明の保持治具を用いた被粘着物保持装置について
図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、被粘着物保持装置50は、第1保持治具10A及び第2保持治具10Bを含む一組の保持治具を備え、被粘着物を粘着保持すると共に第1保持治具10Aから第2保持治具10Bに被粘着物を移し替えることのできる装置である。被粘着物保持装置50が備える一組の保持治具は一組の保持治具40と同様に構成されている。
【0050】
図4に示されるように、被粘着物保持装置50は、第1保持治具10Aと第2保持治具10Bとが、第1粘着層12Aと第2粘着層12Bとが相対向するように配置可能に成っている。これにより、第1保持治具10Aに粘着保持された被粘着物を、例えば、起立状態を維持したままに、第2保持治具10Bに移し替えることができる。このような第1粘着層12Aと第2粘着層12Bとの配置は機械的構成からなる変位手段により実現されてもよく、手動により実現されてもよい。
【0051】
図4に示されるように、第1保持治具10Aは、基板11Aにおける第1粘着層12Aが形成されていない表面側が、保持治具変位手段52から下方に延在する支持アーム53の先端に設けられた支持部材54に固定され、保持治具変位手段52に支持されている。
【0052】
この保持治具変位手段52は、軌条51に取り付けられ、この軌条51に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に支持アーム53を上下方向に運動可能に構成されている。したがって、この保持治具変位手段52に支持された第1保持治具10Aは保持治具変位手段52によって水平方向及び上下方向に自在に移動可能となっている。
【0053】
さらに、この保持治具変位手段52は、軌条51を中心軸にして軸回りに回転可能に構成されている。保持治具変位手段52がこのように回転可能であると、第1保持治具10Aの状態を、被粘着物を第1粘着層12Aにより懸垂保持する状態、及び、被粘着物を第1粘着層12Aにより立設保持する状態にすることができる。
【0054】
また、
図4に示すように、第2保持治具10Bは、第2基板11Bにおける第2粘着層12Bが形成されていない表面側が、保持治具変位手段56から上方に延在する保持治具変位手段57の先端に設けられた支持部材58に固定され、保持治具変位手段56に支持されている。
【0055】
この保持治具変位手段56は、軌条51とほぼ直交する軌条55に取り付けられ、基本に保持治具変位手段52と同様に形成されている。したがって、この保持治具変位手段56に支持された第2保持治具10Bは保持治具変位手段56によって水平方向及び上下方向に自在に移動可能とされ、かつ、軌条55を中心軸にして軸回りに回転可能になっている。
【0056】
保持治具変位手段52及び保持治具変位手段56における運動機構は、特に限定されず、例えば、駆動力を発生する駆動手段、例えば、モータと、このモータの出力を軌条51又は55、及び、支持アーム53又は57に伝達する伝達手段、例えば、歯車、ワイヤー等とを備えた運動機構が挙げられる。この運動機構は、通常のパソコン等によって、制御しても、手動で制御してもよい。
【0057】
被粘着物保持装置50は、軌条51と軌条55が交差する位置近傍で、第1保持治具10Aと第2保持治具10Bとが、第1粘着層12Aと第2粘着層12Bとが相対向するように配置可能になっている。これにより、第1保持治具10Aに粘着保持された被粘着物を第2保持治具10Bに移し替えることができる。
【0058】
次に、被粘着物保持装置50を用いて電子部品の一つであるチップコンデンサ本体に電極を形成してチップコンデンサを製造する方法について
図5を参照しながら説明し、併せてこの被粘着物保持装置50の作用について説明する。
図5に示すように、チップコンデンサ本体61は、四角柱体を成し、チップコンデンサ本体61の両端部それぞれに電極62及び63が形成されてなる。
【0059】
被粘着物保持装置50を用いてチップコンデンサ本体61に電極62を形成するには、まず、
図5(a)に示すように、第1粘着層12Aにチップコンデンサ本体61を粘着保持する。具体的には、保持治具変位手段52を、軌条51を中心軸にして軸回りに回転させて第1保持治具10Aを第1粘着層12Aが上方になるように配置して、例えば前記したように、立設配置板を用いてチップコンデンサ本体61を第1粘着層12Aに押圧する。そうすると、チップコンデンサ本体61によって第1粘着層12Aが弾性変形して平坦化され、チップコンデンサ本体61が第1粘着層12Aに粘着保持される。
【0060】
このようにしてチップコンデンサ本体61を粘着保持した後に、保持治具変位手段52を、軌条51を中心軸にして軸回りに回転させると、第1粘着層12Aに多数のチップコンデンサ本体61が懸垂保持された状態になる。次いで、保持治具変位手段52(
図4参照)を軌条51(
図4参照)に沿って水平方向に運動させて懸垂保持された多数のチップコンデンサ本体61を導電ペースト浴(不図示)の上方に水平移動させ、支持アーム53を下方向に運動させてチップコンデンサ本体61の下端部を導電ペースト浴に浸漬させる。しばらくの後に支持アーム53を上方向に運動させて、チップコンデンサ本体61に塗布された導電ペーストを乾燥させる。そうすると、
図5(b)に示すように、第1粘着層12Aに懸垂保持された各チップコンデンサ本体61の下端部にほぼ均等な大きさの電極62が形成される。このとき、チップコンデンサ本体61は、第1粘着層12Aに粘着保持されているから、導電ペーストに浸漬中及び導電ペーストから引上げるときに、第1粘着層12Aから脱落することも、傾斜することもない。
【0061】
次いで、保持治具変位手段52を軌条51に沿って水平方向に運動させて第2保持治具10Bの上方に第1保持治具10Aを水平移動させ、
図5(c)に示すように、支持アーム53を下方向に運動させて第1保持治具10Aを第2保持治具10Bに向かって降下させる。第1保持治具10Aをさらに降下させて、第1保持治具10Aに粘着保持されたチップコンデンサ本体61の下端部を第2保持治具10Bの第2粘着層12Bに圧接させる。そうすると、チップコンデンサ本体61によって第2粘着層12Bが弾性変形して平坦化され、第1粘着層12Aよりも大きな粘着力を発揮するから、第1粘着層12Aに粘着保持されていたチップコンデンサ本体61は大きな粘着力で第2粘着層12Bに粘着される。次いで、支持アーム53を上方向に運動させて第1保持治具10Aを上昇させると、第2粘着層12Bは所望の粘着力を発現していると共に、第1粘着層12Aとの粘着力よりも大きな粘着力を有しているから、チップコンデンサ本体61は電極62を介して第2粘着層12Bに強固に粘着されており、第1保持治具10Aにおける第1粘着層12Aにチップコンデンサ本体61がほとんど残存することなく離脱する。このようにして、第1保持治具10Aから第2保持治具10Bに多数のチップコンデンサ本体61を脱落することも転倒することもなく移し替えることができる。
【0062】
次いで、保持治具変位手段56(
図4参照)を、軌条15(
図4参照)を中心軸にして軸回りに回転させ、第2保持治具10Bにチップコンデンサ本体61が懸垂保持された状態にされる。その後、前記と同様にして懸垂保持されたチップコンデンサ本体61の下端部に導電ペーストを塗布して乾燥させて電極63を形成する。
【0063】
このようにして第2保持治具10Bの第2粘着層12Bには、
図5(d)に示すように、チップコンデンサ本体61それぞれの両端部にほぼ均等な大きさの電極62及び63が形成されてなるチップコンデンサ60が懸垂された状態で粘着保持されている。
【0064】
最後に、
図5(e)に示すように、取扱装置30を用いて、第2保持治具10Bの第2粘着層12Bの表面12aに、脱離具20を押圧して、保持治具10Bと相対的に移動させることによって、脱離具20を第2粘着層12Aとチップコンデンサ60との間に挿入させて、チップコンデンサ60を順次掻き取る。
【0065】
このように、本発明の保持治具を備えた被粘着物保持装置50を用いることにより、多数の被粘着物を一挙に起立状態で一方の保持治具に所望のように粘着保持することができると共に、被粘着物を一方の保持治具から他方の保持治具に移し替える際に、被粘着物が一方の保持治具に取り残され、転倒することを効果的に防止して、多数の被粘着物を一方の保持治具から他方の保持治具に起立状態を維持したままに移し替えることができる。この被粘着物保持装置50を用いれば、被粘着物を生産性よく製造することができる。
【0066】
また、本発明の保持治具は、耐摩耗性に優れるため、
図5(e)に示す掻き取り工程が繰り返されても粘着力が弱まることがなく、電子部品等を良好に粘着させて起立状態で保持するため、歩留まり良く、高品質な電子部品を製造することが可能である。
【0067】
基板11及び粘着層12は、電子部品等の製造に適した形状であればよく、被粘着物の形状、被粘着物保持装置の形状、製造工程、作業性等に応じて、任意の形状とされる。例えば、保持治具は、正方形、長方形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等の板状体が挙げられる。また、基板11における粘着層12が形成されない一方の面側は、平面形状であっても、半円筒体等の立体形状であってもよい。
【0068】
保持治具10は矩形状の盤状体である基板11を備えているが、この発明において、保持治具は、粘着層の一部に支持部材が形成されてもよい。また、この支持部材は粘着層と共に屈曲性を有する材料で形成されていてもよい。
【0069】
被粘着物保持装置50においては、第1保持治具10Aと第2保持治具10Bとを備えているが、この発明において、被粘着物保持装置は、第1保持治具10A及び第2保持治具10Bに加えて、他の部材又は要素、例えば、第3保持治具、前記脱離具等を備えていてもよい。
【0070】
さらに、被粘着物保持装置50においては、軌条11と軌条15とがほぼ直角に交差するように配設されているが、この発明において、軌条と軌条とは略平行に配設されていてもよい。
【0071】
また、被粘着物保持装置50においては、保持治具変位手段52及び56は軌条51及び55を中心軸にして軸回りに回転可能に構成されているが、これらの保持治具変位手段は回転不能に構成されてもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
ステンレス鋼板(SUS304製、厚さ0.5mm)から一辺の長さが120mmである正方形の盤状体を切り出した。この盤状体における一方の表面をアセトンで脱脂処理した後、シリコーンゴム接着用プライマー(商品名「X-33-156-20」、信越化学工業株式会社製)を粘着層形成領域(一辺の長さが110mmの正方形、この正方形の中心と盤状体の中心とは一致している)に適量塗布して、23℃の環境中で乾燥し、プライマー層(厚さ3μm)を形成した。このようにして基板を作製した。
【0074】
粘着層12を形成する粘着性材料として下記組成を有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物を準備した。
・シリコーン生ゴム(a)と架橋成分(b)と粘着力向上剤(c)と触媒(d)とを含有するシリコーンゴム組成物(商品名「X-34-632 A/B」、信越化学工業株式会社製) 100質量部
・シリカ(平均二次粒子径2μm) 2質量部
【0075】
作製した基板を金型に収納して、その粘着層形成領域上に形成されたキャビティ(一辺の長さが110mm、厚さ0.8mmの直方体)に、準備した付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物を注入し、120℃、10MPaの条件下、トランスファー成形し、次いで、200℃、4時間の条件下、さらに硬化させて、基板の表面に粘着層を形成して保持治具を製造した。
【0076】
(実施例2)
シリカ添加量を4質量部にした以外は実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
【0077】
(実施例3)
シリカ添加量を6質量部にした以外は実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
【0078】
(実施例4)
シリカ添加量を8質量部にした以外は実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
【0079】
(比較例1)
シリカの添加量を0質量部としたこと以外は実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
【0080】
(比較例2)
平均二次粒子径が6μmのシリカを用い、添加量を2質量部としたこと以外は実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
【0081】
(比較例3)
平均二次粒子径が6μmのシリカを用い、添加量を4質量部としたこと以外は実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
【0082】
(比較例4)
平均二次粒子径が6μmのシリカを用い、添加量を8質量部としたこと以外は実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
【0083】
[評価]
各実施例及び各比較例でそれぞれ製造した保持治具における粘着層の表面における、スキューネスRsk、コア部の負荷長さ率Mr1、負荷長さ率Rmr(50%)、凹凸の平均間隔Sm、硬度、引張強さ、引裂強さ、粘着力及び耐摩耗性を測定した。
【0084】
(表面粗さ)
スキューネスRsk、及び負荷長さ率Rmr(50)は、JISB0601:2001に準じ、コア部の負荷長さ率Mr1はJISB0671-2に準じ、凹凸の平均間隔SmはJISB0601:1994に準じて測定した。測定は、レーザーマイクロスコープV8700(株式会社キーエンス製)で、測定長を280μmとした。測定値として、測定数N=5の平均値を使用した。
【0085】
(ゴム物性)
ゴム硬度は、デュロメータAを用い、JIS K 6253-3に準じて測定した。
引張強さ及び引裂強さは、JIS K 6251に準じて測定した。
【0086】
(粘着力)
上記「信越ポリマー法」で測定した。
【0087】
(耐摩耗性試験)
粘着層の耐摩耗性試験は、JIS K 7204に準じて、テーバー摩耗試験機(商品名「No101 テーバー式アブレーション テスター」、株式会社安田精機製作所製)を用いて、以下の条件にて、1000回転、3000回転及び5000回転での摩耗量の質量測定を行った。なお、1サンプル終了時に砥石の研磨を実施した。
砥石:CS-17
加点速度:60rpm
荷重:4.9N
【0088】
評価結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
表1に示すように、粘着層の表面のスキューネスRskが0より小さい本発明の保持治具は、摩耗量が比較例に比べて格段に少ないことがわかる。
【符号の説明】
【0091】
10、10A、10B 保持治具
11、11A、11B 基板
12、12A、12B 粘着層
12a 粘着層の表面
20 脱離具
30 取扱治具
40 一組の保持治具
50 被粘着物保持装置
51、55 軌条
52、56 保持治具変位手段
53、57 支持アーム
54、58 支持部材
57 保持治具変位手段
60 チップコンデンサ
61 チップコンデンサ本体
62、63 電極