(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】超音波レベル計用の導波管
(51)【国際特許分類】
G01F 23/2962 20220101AFI20221122BHJP
【FI】
G01F23/2962
(21)【出願番号】P 2018235915
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 泰治
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204313930(CN,U)
【文献】国際公開第2015/148145(WO,A1)
【文献】特開2015-201825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/2962
G01F 23/284
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波センサが基端側に取り付けられるとともに先端側が液槽内に挿入される導波管であって、
基端から先端に向かって延びる螺旋状の先端側開口縁と、前記螺旋状の先端側開口縁における前記基端及び前記先端を接続する直線状縁部とを有するとともに、前記螺旋状の先端側開口縁が、前記導波管の中心軸に垂直な面に対して傾斜しており、
前記導波管の先端側開口部において前記基端からの距離が最長となる箇所に、前記導波管を径方向から見たときに鋭角を有する部位が設けられている
ことを特徴とする超音波レベル計用の導波管。
【請求項2】
前記鋭角を有する部位は、前記先端側開口部において1箇所のみに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の超音波レベル計用の導波管。
【請求項3】
前記鋭角の角度が10°以上60°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波レベル計用の導波管。
【請求項4】
前記導波管を前記中心軸に沿って切断したときに得られる前記先端側開口部の断面は、先端に行くに従って細くなる形状を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波レベル計用の導波管。
【請求項5】
前記導波管の表面が、撥水性を有する材料からなる層で被覆されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波レベル計用の導波管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液槽内の液面の高さを計測する超音波レベル計に用いられる導波管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波レベル計として、液槽の上部に設置した超音波センサから超音波を液面に向けて照射した後、液面からの反射波を受信することにより、超音波センサから液面までの距離を測定するものが知られている。また、このような方式の超音波レベル計としては、超音波センサが基端側に取り付けられるとともに先端側が液槽内に挿入される導波管を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。このようにすれば、超音波が導波管内を通過するため、超音波の不要な反射が防止され、反射波を効率良く受信することが可能となる。
【0003】
具体的に言うと、特許文献1には、下側(液面側)に行くに従って幅広となる台形状のホーン(導波管)を、超音波式液面計送受波器(超音波センサ)の下面に取り付けた構造が開示されている。特許文献2には、超音波発振子(超音波センサ)に付設された超音波伝播体(導波管)を、端面を下方に向けた状態で液体貯留容器内に配置し、端面が液面に接触した際に端面からの反射波が小さくなることを利用して、液面の高さを算定する技術が開示されている。特許文献3には、導波管の先端部を、槽に収容し、かつ槽に溜めた液状物の液面に臨ませて配置した液面検出装置が開示されている。特許文献4には、超音波ホーンを管の一端に挿入し、管の先端を液体に浸した構造を有する超音波レベル計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-340656号公報(段落[0015]、
図1等)
【文献】特開平7-146168号公報(段落[0008]、
図1等)
【文献】特開平4-343031号公報(段落[0011],[0013],[0017],[0025]、
図4~
図6等)
【文献】特許第2962535号公報(段落[0005],[0019]、
図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、結露等により、導波管の表面に水滴が付着することがある。この場合、付着した水滴は、導波管の表面を伝って下方に流れてくるが、十分に水切れせずに先端側開口縁に溜まってしまう。その結果、超音波センサから照射された超音波は、液面だけでなく、先端側開口縁に溜まった水滴でも反射する可能性があるため、超音波センサが水滴で反射した反射波を受信した際に誤計測となる虞がある。なお、特許文献3には、先端側開口縁にて反射する反射波を分散させて平坦化するために、導波管の先端部を斜めに開口させる技術が開示されている。しかし、先端側開口縁に水滴が溜まってしまうと、水滴は殆ど落下しないため、この場合も、水滴で反射した反射波に起因する誤計測に繋がる虞がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波が水滴で反射することに起因する誤計測を防止することができる超音波レベル計用の導波管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、超音波を送受信する超音波センサが基端側に取り付けられるとともに先端側が液槽内に挿入される導波管であって、基端から先端に向かって延びる螺旋状の先端側開口縁と、前記螺旋状の先端側開口縁における前記基端及び前記先端を接続する直線状縁部とを有するとともに、前記螺旋状の先端側開口縁が、前記導波管の中心軸に垂直な面に対して傾斜しており、前記導波管の先端側開口部において前記基端からの距離が最長となる箇所に、前記導波管を径方向から見たときに鋭角を有する部位が設けられていることを特徴とする超音波レベル計用の導波管をその要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明によると、導波管の先端側開口縁が中心軸に垂直な面に対して傾斜し、導波管の先端側開口部において基端からの距離が最長となる箇所に、鋭角を有する部位が設けられている。このため、結露等によって導波管に水滴が付着したとしても、付着した水滴は、導波管の表面や先端側開口縁を伝って下方に流れ、鋭角を有する部位に溜まることなく、液槽内に貯留されている液体側に落下する。その結果、超音波センサから照射された超音波は、水滴で反射するのではなく、液体の液面で確実に反射するため、超音波が水滴で反射することに起因する誤計測を防止することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記鋭角を有する部位は、前記先端側開口部において1箇所のみに設けられていることをその要旨とする。
【0010】
従って、請求項2に記載の発明によると、導波管の表面や先端側開口縁を伝って流れてきた水滴が、1箇所(鋭角を有する部位)に集中する。その結果、鋭角を有する部位が複数箇所に存在する場合に比べて、鋭角を有する部位に溜まる水滴が速やかに大きく(重く)なるため、水滴を確実に落下させることができる。ゆえに、超音波の水滴での反射をより確実に防止できるため、超音波レベル計による計測精度が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記鋭角の角度が10°以上60°以下であることをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項3に記載の発明によると、鋭角の角度を60°以下とすることにより、鋭角を有する部位が細くなるため、鋭角を有する部位に溜まる水滴を落下させやすくなる。また、鋭角の角度を10°以上とすることにより、鋭角を有する部位の幅が確保されるため、鋭角を有する部位の強度が確保される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記導波管を前記中心軸に沿って切断したときに得られる前記先端側開口部の断面は、先端に行くに従って細くなる形状を有していることをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項4に記載の発明によると、導波管の表面を伝って下方に流れてきた水滴が、先端側開口縁に止まることなく流れやすくなる。ゆえに、超音波の水滴での反射をより確実に防止できるため、超音波レベル計による計測精度が向上する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記導波管の表面が、撥水性を有する材料からなる層で被覆されていることをその要旨とする。
【0016】
従って、請求項5に記載の発明によると、撥水性を有する材料からなる層により、導波管に付着した水滴が、付着したままそこに止まらずに容易に下方に流れるようになる。よって、超音波の水滴での反射をより確実に防止できるため、超音波レベル計による計測精度が向上する。なお、撥水性を有する材料としては、例えば、撥水性を有する樹脂材料、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、請求項1~5に記載の発明によると、結露等によって導波管に水滴が付着した場合であっても、液面の高さを正確に計測することが可能な超音波レベル計用の導波管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の超音波レベル計及び液槽を示す概略構成図。
【
図3】
図2とは別の方向から見たときの導波管を示す側面図。
【
図5】導波管を中心軸に沿って切断したときに得られる先端側開口部の断面を示す図。
【
図6】(a)は、比較例1の導波管及び超音波波形を示すグラフ、(b)は、比較例2の導波管及び超音波波形を示すグラフ、(c)は、比較例3の導波管及び超音波波形を示すグラフ、(d)は、実施例の導波管及び超音波波形を示すグラフ。
【
図8】他の実施形態における導波管を示す要部側面図。
【
図9】他の実施形態において、導波管を中心軸に沿って切断したときに得られる先端側開口部の断面を示す図。
【
図10】他の実施形態において、導波管を中心軸に沿って切断したときに得られる先端側開口部の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態の超音波レベル計20は、液体A1(本実施形態では水)を貯留するコンクリート製の液槽11に取り付けられて使用される。本実施形態の超音波レベル計20は、液槽11内の液体A1に超音波W1を照射することにより、液体A1の液面A2の高さを検出する装置である。なお、液槽11は、略直方体状に形成されており、天井部12、底部13、及び、互いに対向する一対の側壁14を有している。天井部12の中央部における外側面(
図1では上面)上には、凸部15が突設されている。さらに、天井部12の中央部には、凸部15及び天井部12を貫通する取付孔部16が設けられている。
【0021】
図2,
図3に示されるように、超音波レベル計20用の導波管21は、内径及び外径が一定となる略円筒状の単管であり、内周面21a及び外周面21b(表面)を有している。また、導波管21は、基端22側(
図1~
図3では上端側)及び先端23側(
図1~
図3では下端側)において開口している。さらに、
図1~
図4に示されるように、導波管21の基端22側にはフランジ24が形成されている。そして、フランジ24の外周部には、8個のネジ孔25が設けられている。各ネジ孔25は、導波管21の中心軸L1を基準として等角度(45°)間隔で配置されている。そして、取付孔部16内に導波管21を挿入した状態で、各ネジ孔25にネジ26を挿通し、挿通したネジ26の先端部を凸部15に螺着させる。その結果、導波管21が、フランジ24を介して液槽11に固定される。
【0022】
また、導波管21の基端22側には、超音波W1を送受信する超音波センサ31が取り付けられている。具体的に言うと、超音波センサ31は、円柱状をなしており、導波管21内に挿入されている。そして、超音波センサ31は、導波管21内において、外周面32が導波管21の内周面21aに密着し、かつ正面33が導波管21の基端22と面一となるように配置されている。また、
図4に示されるように、超音波センサ31の正面33の略中央部には、表示器34が配設されている。表示器34には、液面A2で反射した超音波W1(
図1に示す反射波W2)の波形が表示されるようになっている。
【0023】
そして、
図1に示されるように、超音波センサ31には、超音波発振器41及び超音波受信器42が電気的に接続されている。超音波発振器41は、超音波センサ31に対して発振信号を出力して、超音波センサ31を駆動させるようになっている。その結果、超音波センサ31は、超音波W1を液槽11内の液体A1に向けて照射(送信)する。また、超音波受信器42には、超音波センサ31で受信した超音波W1(反射波W2)を示す電気信号が入力されるようになっている。
【0024】
図1~
図3に示されるように、導波管21の先端23側は、液槽11内に挿入されており、天井部12から下方に突出している。導波管21の先端側開口縁51は、基端52から先端53に向かって螺旋状(スパイラル状)に延びている。詳述すると、先端側開口縁51は、導波管21を径方向から見たときに、導波管21の中心軸L1に垂直な面S1に対して傾斜している。面S1に対する先端側開口縁51の傾斜角度θ1は、基端52から先端53に亘って一定の大きさとなっており、具体的には10°以上60°以下(本実施形態では45°)となっている。さらに、基端52及び先端53は、導波管21の中心軸L1に沿って直線状に延びる縁部54を介して接続されている。なお、先端側開口縁51の先端53は、導波管21の先端23と同一箇所に位置している。また、
図5に示されるように、導波管21を中心軸L1に沿って切断したときに得られる先端側開口部55の断面は、基端22から先端23まで同一の幅となる形状を有している。言い換えると、先端側開口部55は、基端22から先端23に亘って同一の厚さを有している。
【0025】
そして、
図2,
図3に示されるように、導波管21の先端側開口部55において、導波管21の基端22からの距離が最長となる箇所、即ち、先端側開口縁51の先端53が位置する箇所には、導波管21を径方向から見たときに鋭角を有する部位56が設けられている。鋭角を有する部位56は、先端側開口縁51と縁部54との接続部分を含む部位であり、先端側開口縁51と縁部54とがなす角が鋭角となっている。即ち、鋭角を有する部位56は、先端側開口部55において1箇所のみに設けられている。なお、鋭角の角度θ2は、10°以上60°以下(本実施形態では45°)となっている。
【0026】
次に、超音波レベル計20の電気的構成について説明する。
【0027】
図1に示されるように、超音波レベル計20は、装置全体を統括的に制御する制御装置61を備えている。制御装置61は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のコンピュータにより構成されている。制御装置61のROMには、超音波センサ31から液槽11の底面までの距離を示すデータがあらかじめ記憶されている。制御装置61のCPUは、超音波発振器41及び超音波受信器42に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。また、CPUには表示器34が電気的に接続されている。
【0028】
次に、超音波レベル計20を用いて液面A2の高さを検出する方法を説明する。
【0029】
まず、液槽11内に液体A1を溜めた後、超音波レベル計20の電源(図示略)をオンする。このとき、制御装置61のCPUは、超音波発振器41から超音波センサ31に対して発振信号を出力させる制御を行い、超音波センサ31を駆動させる。その結果、超音波センサ31から液体A1に向けて超音波W1が照射(送信)される。そして、超音波W1が液体A1に到達すると、超音波W1は、液面A2で反射して反射波W2となり、上方に向かって伝播して超音波センサ31に受信される。その後、超音波センサ31が受信した超音波W1(反射波W2)は、電気信号に変換され、超音波受信器42を介してCPUに入力される。
【0030】
また、CPUは、超音波センサ31が超音波W1を送信してから反射波W2を受信するまでの時間を計測する。そして、CPUは、計測した時間に対して音速を乗算した後、その乗算結果に対してさらに1/2を乗算する。その結果、超音波センサ31から液面A2までの距離が算出される。さらに、CPUは、算出された超音波センサ31から液面A2までの距離と、ROMに記憶されている超音波センサ31から液槽11の底面までの距離との差を算出する。その結果、液槽11内にある液体A1の液面A2の高さが検出される。その後、作業者が電源をオフすると、制御装置61により超音波発振器41及び超音波受信器42が停止し、超音波W1の送信及び反射波W2の受信が終了する。
【0031】
次に、導波管の評価方法及びその結果を説明する。
【0032】
1.実験方法
まず、測定用サンプルを次のように準備した。先端側開口縁が螺旋状をなす導波管(スパイラル単管)、即ち、本実施形態の導波管21と同じ導波管71(
図6(d)参照)を準備し、これを実施例とした。一方、先端側開口縁が管の中心軸に対して垂直となる導波管72(
図6(a)参照)を準備し、これを比較例1とした。また、先端側開口縁が中心軸に垂直な面に対して所定角度(ここでは45°)だけ傾斜した導波管73(斜形単管;
図6(b)参照)を準備し、これを比較例2とした。さらに、先端側開口縁が中心軸に垂直な面に対して所定角度だけ傾斜し、かつ先端側開口縁に水滴74が付着した導波管75(斜形単管;
図6(c)参照)を準備し、これを比較例3とした。
【0033】
次に、各測定用サンプル(実施例、比較例1~3)に対して超音波試験を行った。具体的には、まず、実施例及び比較例1~3の導波管内の基端側に超音波センサを挿入した後、導波管の先端側を
図1に示す液槽11内に挿入した。次に、液槽11内に貯留されている液体の液面に向けて超音波センサから超音波を照射した。さらに、超音波センサが受信した超音波の波形を表示器34に表示した。以上の結果を
図6に示す。
【0034】
2.実験結果及び考察
図6のグラフは、実施例及び比較例1~3のそれぞれにおける超音波の波形を示している。どの測定用サンプルにおいても、超音波は、大小の差こそあれ、先端側開口縁で反射するが、先端側開口縁が管の中心軸に対して垂直となる比較例1では、超音波が、先端側開口縁において結構大きく反射することが確認された。この場合、超音波センサは、液面で反射した超音波(反射波)だけでなく、先端側開口縁で反射した超音波も受信しやすくなる。その結果、超音波センサが超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間を正確に計測できず、液面の高さを正確に算出できない可能性があることが分かった。
【0035】
なお、斜形単管である比較例2では、先端側開口縁で反射した超音波が徐々に出力されるため、先端側開口縁で反射した超音波の山が小さくなり、先端側開口縁付近での超音波の波形が比較例1と比べてある程度平坦化されることが確認された。しかしながら、同じく斜形単管であるものの、先端側開口縁に水滴が付着した比較例3では、超音波が水滴で反射しやすくなり、超音波が先端側開口縁付近で2度大きく反射することが確認された。この場合、超音波センサは、液面で反射した超音波(反射波)だけでなく、先端側開口縁で反射した超音波も受信しやすくなる。その結果、超音波センサが超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間を正確に計測できず、液面の高さを正確に算出できない可能性があることが分かった。
【0036】
一方、スパイラル単管である実施例では、先端側開口縁の形成領域の中心軸に沿った長さL2が、比較例2,3における長さL1よりも長くなるため、先端側開口縁で反射する不要な超音波の山がさらに小さくなり、先端側開口縁付近での超音波の波形が比較例2,3よりもさらに平坦化されることが確認された。また、先端側開口縁に水滴が付着したとしても、水滴はすぐに先端から落下することも確認された。この場合、超音波センサは、超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間を正確に計測できるため、液面の高さを正確に算出できることが分かった。
【0037】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0038】
(1)本実施形態の超音波レベル計20では、導波管21の先端側開口縁51が中心軸L1に垂直な面S1に対して傾斜し、導波管21の先端側開口部55において基端22からの距離が最長となる箇所に、鋭角を有する部位56が設けられている。このため、結露等によって導波管21に水滴が付着したとしても、付着した水滴は、導波管21の外周面21bや先端側開口縁51を伝って下方に流れ、鋭角を有する部位56に溜まることなく液体A1側に落下する。その結果、超音波センサ31から照射された超音波W1は、水滴で反射するのではなく、液体A1の液面A2で確実に反射するため、超音波W1が水滴で反射することに起因する液面A2の誤計測を防止することができる。
【0039】
(2)本実施形態の導波管21は、先端側開口縁51が螺旋状に延びており、中心軸L1に垂直な面S1に対する先端側開口縁51の傾斜角度θ1が一定の大きさ(45°)となっている。よって、導波管21を形成する際には、例えば旋盤等を用いて円管を回転させた状態で、バイトを円管に当てながら回転軸方向に一定速度で移動させるだけで、螺旋状の先端側開口縁51を形成することができる。このため、導波管21の形成が容易になる。
【0040】
(3)本実施形態の超音波レベル計20は、超音波センサ31が導波管21の内部に挿入され、超音波W1が導波管21内を液面A2に向かって伝播する構成である。その結果、超音波W1の拡散が少なくなるため、超音波センサ31は、効率良く反射波W2を受信することができる。ゆえに、超音波センサ31として小型のセンサを用いたとしても、確実に計測を行うことができる。また、本実施形態では、超音波W1の送信及び受信を1つの超音波センサ31で行うため、超音波W1の送信を行う超音波センサと超音波W1の受信を行う超音波センサとを別々に設ける場合に比べて、超音波センサの取付部位を小さくすることができる。
【0041】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0042】
・上記実施形態の導波管21では、先端側開口縁51を螺旋状にすることにより、導波管21の先端側開口部55に鋭角を有する部位56が形成されていた。しかし、
図7の導波管81に示されるように、中心軸L2に垂直な面S2に対して先端側開口縁82を傾斜させ、先端側開口縁82において基端83からの距離が最長となる箇所に針84を取り付けることにより、鋭角を有する部位85を形成してもよい。なお、鋭角を有する部位85は、棒状部材や突起等の他の部材によって形成されていてもよい。また、針84は、導波管21に対して一体形成されたものであってもよいし、導波管21とは別体のものであってもよい。
【0043】
・上記実施形態の導波管21では、鋭角を有する部位56が先端側開口部55において1箇所のみに設けられていた。しかし、鋭角を有する部位は、先端側開口部55において複数箇所に設けられていてもよい。例えば、
図8の導波管111に示されるように、導波管111の周方向に沿って凹部112及び凸部113を交互に形成することにより、鋭角を有する部位114(凸部113)を、先端側開口部115の複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、導波管21を中心軸L1に沿って切断したときに得られる先端側開口部55の断面が、基端22から先端23まで同一の幅となる形状を有していた。しかし、
図9に示されるように、導波管91を中心軸L1に沿って切断したときに得られる先端側開口部92の断面は、先端93に行くに従って細くなる形状を有していてもよい。言い換えると、先端側開口部55は、先端93に行くに従って厚さが小さくなる形状を有していてもよい。このようにすれば、導波管91の外周面94(表面)を伝って下方に流れてきた水滴が、先端側開口縁95に止まることなく流れやすくなる。ゆえに、超音波W1の水滴での反射をより確実に防止できるため、超音波レベル計20による計測精度が向上する。
【0045】
・上記実施形態において、導波管21の外周面21bを、撥水性を有する材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)からなる層101(
図10参照)で被覆してもよい。このようにすれば、層101により、導波管21に付着した水滴が容易に落下するようになる。よって、超音波W1の水滴での反射をより確実に防止できるため、超音波レベル計20による計測精度が向上する。なお、層101は、外周面21bに加えて、内周面21aや先端側開口縁51を被覆するものであってもよい。
【0046】
・上記実施形態の導波管21は、円筒状をなしていたが、矩形筒状、楕円筒状、三角筒状等の他の筒状をなしていてもよい。
【0047】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0048】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記導波管が、外径が一定となる筒状の単管であることを特徴とする超音波レベル計用の導波管。
【0049】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記鋭角を有する部位は、前記先端側開口部において複数箇所に設けられていることを特徴とする超音波レベル計用の導波管。
【符号の説明】
【0050】
11…液槽
20…超音波レベル計
21,81,91,111…導波管
21b,94…導波管の表面としての外周面
22,83…導波管の基端
23…導波管の先端
31…超音波センサ
51,82,95…先端側開口縁
55,92,115…先端側開口部
56,85,114…鋭角を有する部位
93…先端側開口部の先端
101…撥水性を有する材料からなる層
L1,L2…中心軸
S1,S2…中心軸に垂直な面
W1…超音波
θ2…鋭角の角度