(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】プリント回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
H05K3/38 B
(21)【出願番号】P 2018103654
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0148162
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ-セオク
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ガ-ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン-ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン-イ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ユ-リム
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジ-ヒエ
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-61058(JP,A)
【文献】特開2012-182437(JP,A)
【文献】特開2001-15913(JP,A)
【文献】特開2005-53966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に第1回路が埋め込まれた絶縁層と、
前記絶縁層と前記第1回路との間に介在された第1接着層と、
前記絶縁層の上面に形成された第2接着層と、を含み、
前記第2接着層の誘電損失は、前記絶縁層の誘電損失よりも小さく、
前記第1回路
は、側面が前記絶縁層によってカバーされ、上面の粗さ
(Ra)は、0.1μmより小さいプリント回路基板。
【請求項2】
前記第2接着層上に形成される第2回路をさらに含む請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項3】
前記第2回路の下面の粗さ
(Ra)は、0.1μmより小さい請求項2に記載のプリント回路基板。
【請求項4】
前記第1回路と前記第2回路とを接続するために、前記絶縁層、前記第1接着層及び前記第2接着層を貫通するビアをさらに含む請求項3に記載のプリント回路基板。
【請求項5】
前記ビアは,
前記第1回路に接続する第1金属層と、
前記第1金属層上に形成され、前記第2回路に接続する第2金属層と、を含み、
前記第2金属層の溶融点は、前記第1金属層の溶融点よりも低い請求項4に記載のプリント回路基板。
【請求項6】
前記第1接着層及び第2接着層のそれぞれの厚さは、前記絶縁層の厚さよりも薄い請求項1から5のいずれか一項に記載のプリント回路基板。
【請求項7】
前記第1接着層と前記第2接着層とは、互いに離隔している請求項1から6のいずれか一項に記載のプリント回路基板。
【請求項8】
前記第1接着層の厚さは、前記第2接着層の厚さよりも薄い請求項1から7のいずれか一項に記載のプリント回路基板。
【請求項9】
前記第1接着層は、シランカップリングを含む有機薄膜である請求項1から8のいずれか一項に記載のプリント回路基板。
【請求項10】
前記第2接着層は、シリコン系樹脂材で形成される請求項1から9のいずれか一項に記載のプリント回路基板。
【請求項11】
前記第1接着層は、前記絶縁層の下面上に延長する請求項1から10のいずれか一項に記載のプリント回路基板。
【請求項12】
複数の単位層で形成されるプリント回路基板において、
前記複数の単位層のうち、上下に積層される隣接した2つの単位層のそれぞれは、
下面に回路が埋め込まれた絶縁層と、
前記絶縁層と前記回路との間に介在された第1接着層と、
前記絶縁層の上面に形成された第2接着層と、を含み、
前記第2接着層の誘電損失は、前記絶縁層の誘電損失よりも小さく、
前記回路
は、側面が前記絶縁層によってカバーされ、上面の粗さ
(Ra)は、0.1μmより小さいプリント回路基板。
【請求項13】
前記回路の下面の粗さ
(Ra)は、0.1μmより小さい請求項12に記載のプリント回路基板。
【請求項14】
前記複数の単位層のそれぞれは、
前記回路との接続のために前記絶縁層を貫通するビアをさらに含み、
前記ビアは、前記第1接着層及び前記第2接着層を貫通する請求項12または13に記載のプリント回路基板。
【請求項15】
前記ビアは、
前記回路の上面に接続する第1金属層と、
前記第1金属層上に形成される第2金属層と、を含み,
前記第2金属層の溶融点は、前記第1金属層の溶融点よりも低い請求項14に記載のプリント回路基板。
【請求項16】
互いに異なる単位層に形成されたビアは、スタック(stack)構造を形成する請求項14または15に記載のプリント回路基板。
【請求項17】
上部に位置した単位層に形成されている前記第1接着層は、下部に位置した単位層に形成されている前記第2接着層と接触する請求項12から16のいずれか一項に記載のプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板(printed circuit board)に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の発展により、単なる音声送受信を主とした通信サービスから、動画放送、画像電話、ファイル伝送等の様々なマルチメディア応用サービスが増大している。この様々な無線通信サービスの利用の裏面には、使用周波数帯域のバンド多重化やGHz以上の高周波帯域の利用があった。特に、無線通信技術に使用される高周波帯域は60GHz以上が検討されている。これにより、高周波信号の伝送時に発生する信号損失を低減できるプリント回路基板の開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0002112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、信号損失を低減したプリント回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、下面に第1回路が埋め込まれた絶縁層と、上記絶縁層と上記第1回路との間に介在された第1接着層と、上記絶縁層の上面に形成された第2接着層と、を含み、上記第2接着層の誘電損失が上記絶縁層の誘電損失よりも小さく、上記第1回路の上面の粗さは、0.1μmよりも小さいプリント回路基板が提供される。
【0006】
本発明の他の側面によれば、複数の単位層で構成されるプリント回路基板において、上記複数の単位層のうち、上下に積層される隣接した2つの単位層のそれぞれは、下面に回路が埋め込まれた絶縁層と、上記絶縁層と上記回路との間に介在された第1接着層と、上記絶縁層の上面に形成された第2接着層と、を含み、上記第2接着層の誘電損失が上記絶縁層の誘電損失よりも小さく、上記回路の上面粗さは、0.1μmよりも小さいプリント回路基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1a】本発明の実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【
図1b】本発明の実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【
図1c】本発明の実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【
図1d】本発明の実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【
図2】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図9】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図10】本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るプリント回路基板の実施例を添付図面を参照して詳細に説明し、添付図面を参照して説明するに当たって、同一または対応する構成要素には同一の図面符号を付し、これに対する重複説明を省略する。
【0009】
また、以下で使用される「第1」、「第2」等の用語は、同一または対応する構成要素を区別するための識別記号に過ぎず、同一または対応する構成要素が第1、第2等の用語により限定されることはない。
【0010】
また、「結合」とは、各構成要素間の接触関係において、各構成要素が物理的に直接接触する場合のみを意味するものではなく、他の構成が各構成要素の間に介在され、該他の構成に、構成要素がそれぞれ接触している場合まで包括する概念として使用される。
【0011】
図1aから
図1dは、本発明の一実施例に係るプリント回路基板を示す図である。
【0012】
図1aから
図1dを参照すると、本発明の一実施例に係るプリント回路基板は、絶縁層100と、第1接着層120と、第2接着層130と、を含む。
【0013】
絶縁層100は、樹脂等の絶縁物質で組成される資材である。絶縁層100の樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の様々な材料を用いることができる。例えば、絶縁層100には、エポキシ系樹脂またはポリイミドを用いることができる。ここで、エポキシ系樹脂には、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、環型脂肪族系エポキシ樹脂、シリコン系エポキシ樹脂、窒素系エポキシ樹脂、リン系エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
絶縁層100は、上記のエポキシ系樹脂またはポリイミドにガラス繊維(glass cloth)等の繊維補強材が含まれるか、シリカ等の無機フィラー(filler)が含有されたものであることができる。前者の例として、プリプレグ(Prepreg; PPG)があり、後者の例として、ABF(Ajinomoto Build-up Film)等のビルドアップフィルム(build up film)がある。
【0015】
一方、絶縁層100の誘電損失は比較的小さくてもよい。例えば、絶縁層100の誘電正接は、0.004以下であってもよい。ここで、誘電正接とは、信号伝送時に絶縁層100により損失される電力(誘電損失)の度合いを意味する。誘電正接が大きいほど誘電損失が大きい。
【0016】
絶縁層100には、回路110が形成される。回路110は、絶縁層100の一面に形成され、絶縁層100の一面に埋め込まれることができる。回路110が絶縁層100の一面に埋め込まれることは、キャリアを用いて回路110を形成した結果であり得る。
【0017】
回路110は、電気信号を伝達するためにパターン化された伝導体である。回路110には、10GHz以上の周波数を有する電気信号が伝送され得る。回路110は、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)等の金属またはこれらの合金により形成することができる。
【0018】
回路110において、絶縁層100と接触する表面の粗さ(Ra)は、0.1μmよりも小さくてもよい。すなわち、絶縁層100の一面に埋め込まれる回路110の上面及び/または側面の表面粗さ(Ra)は、0.1μmよりも小さくてもよい。また、回路110の下面の表面粗さも0.1μmより小さくてもよい。好ましくは、回路110は表面粗さを有さなくてもよい(Ra=0)。これは、回路110の表面に粗さ処理を施さないという意味を含むことができる。
【0019】
回路110の表面粗さが小さいと、表皮効果(skin effect)を低減することができる。表皮効果は、回路の表面粗さにより大きくなることがあり、この表皮効果は、信号損失を引き起こす。表面粗さが0.1μmより小さい場合は、表面粗さが0.1μm以上である場合に比べて、表皮効果を格段に低減することができ、その結果、信号損失を格段に低減することができる。
【0020】
実験結果から、回路表面に粗さ処理(CZ8101を使用)を行って回路の表面粗さを0.4μmより大きくした場合に比べて、粗さ処理を行わず表面粗さが0.1μm未満である回路の場合が、信号損失が20~30%低減した。
【0021】
絶縁層100は、回路110との接続のために、絶縁層100を貫通するビア140をさらに含むことができる。ビア140は、互いに異なる層に形成された回路110を互いに電気的に接続するものであって、回路110の一部分上に位置することができる。
【0022】
ビア140は、銅(Cu)、錫(Sn)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)等の金属またはこれらの合金で形成可能である。ビア140の溶融点は、回路110の溶融点より低くてもよい。ビア140は、めっきまたは金属ペーストの充填により形成可能である。
【0023】
ビア140の縦断面の形状は様々な形状を有することができ、図面にはビア140の縦断面の形状を四角形に示したが、製造工程に応じて、ビア140の縦断面の形状は逆台形を有することができる。すなわち、ビア140の横断面の面積は、絶縁層100の他面から一面に行くほど小さくなることが可能である。
【0024】
絶縁層100と接する回路110の表面に粗さがほとんどないため、回路110と絶縁層100との密着力の問題を解決するために、第1接着層120が絶縁層100と回路110との間に形成される。すなわち、第1接着層120を介して絶縁層100と回路110とが互いに強く接着できるようになる。
【0025】
第1接着層120により、回路110と絶縁層100との間の剥離強度は、0.5kgf/cmよりも大きくなることができる。
【0026】
第1接着層120は、絶縁層100と回路110とが接する面積に形成される。第1接着層120は、それだけではなく、絶縁層100の一面において絶縁層100と回路110とが接しない部分に延長することができる。ただし、第1回路110の表面において絶縁層100と接しない部分には形成されなくてもよいが、これに限定されない。回路110が絶縁層100の一面に埋め込まれる場合は、第1接着層120は、絶縁層100の一面及び回路110の表面に沿って凸凹に形成され得る。
【0027】
第1接着層120は、有機薄膜であることができる。例えば、第1接着層120は、シランカップリングを含む有機薄膜であってもよい。また、この第1接着層120は、nmの厚さを有することができる。
【0028】
絶縁層100にビア140が形成される場合、ビア140は、第1接着層120を貫通することができる。
【0029】
第2接着層130は、絶縁層100の他面に形成される。第2接着層130は、絶縁層100と他の層に位置した回路との密着力を確保するために必要である。
【0030】
第2接着層130の誘電損失は、絶縁層100の誘電損失よりも小さい。特に、第2接着層130の誘電正接は、絶縁層100の誘電正接よりも小さい。絶縁層100の誘電正接が0.004以下である場合、第2接着層130の誘電正接が0.003であり得る。
【0031】
第2接着層130の誘電正接が絶縁層100の誘電正接よりも小さいので、信号損失を低減することができる。
【0032】
第2接着層130は、シリコン系樹脂材により形成可能であり、第2接着層130は無機フィラーを含有することができる。無機フィラーの種類及び含有量を調整することにより、第2接着層130の誘電正接を絶縁層100の誘電正接よりも小さくすることができる。
【0033】
第2接着層130の厚さは、第1接着層120の厚さより厚く、絶縁層100の厚さより薄くすることができる。第1接着層120と第2接着層130とは、互いに離隔して接しなくてもよい。
【0034】
一方、絶縁層100にビア140が形成される場合、ビア140は、第2接着層130を貫通することができる。
【0035】
図1aを参照すると、本発明の実施例に係るプリント回路基板は、下面に第1回路110aが埋め込まれた絶縁層100と、絶縁層と第1回路110aとの間に介在された第1接着層120と、絶縁層100の上面に形成された第2接着層130と、を含み、第2接着層130上に形成され、第1回路110aに電気的に接続する第2回路110bをさらに含むことができる。
【0036】
また、本発明の実施例に係るプリント回路基板は、ビア140をさらに含み、第1回路110aと第2回路110bとがビア140により接続することができる。
【0037】
ビア140は、絶縁層100を貫通して第1回路110aと第2回路110bとに接続され、第1接着層120と第2接着層130をすべて貫通する。この場合、ビア140の下面が第1回路110aに、上面が第2回路110bに接続される。
【0038】
第1回路110a及び第2回路110bは、上述した回路110と同一である。
【0039】
特に、第1回路110aの上面及び/または側面の表面粗さ(Ra)は、0.1μmより小さく、第2回路110bの下面の表面粗さ(Ra)は、0.1μmより小さくてもよい。第1回路110aの側面の表面粗さも0.1μmより小さくてもよい。第1回路110aの下面の表面粗さも0.1μmより小さくてもよい。
【0040】
第1接着層120を、表面粗さのほとんどない第1回路110aの表面に形成することにより、絶縁層100との密着力を確保することができる。第1接着層120は、絶縁層100の下面上に延長することができる。
【0041】
第2接着層130は、表面粗さのほとんどない第2回路110bと絶縁層100との密着力を確保する役割をするために、絶縁層100と第2回路110bとの間に介在される。
【0042】
第2接着層130の誘電正接は、絶縁層100の誘電正接よりも小さく、これにより、高周波信号が流れる回路110a、110bの周辺の誘電損失を低減することができる。
【0043】
第1接着層120及び第2接着層130のそれぞれの厚さは、絶縁層100の厚さよりも薄く、特に、第1接着層120の厚さは、第2接着層130の厚さよりも薄くてもよく、第1接着層120と第2接着層130とは絶縁層100を隔てて互いに離隔することができる。
【0044】
第1接着層120は、有機薄膜であって、シランカップリングを含むことができ、第2接着層130は、シリコン系列の樹脂材であってもよい。
【0045】
図1bを参照すると、本発明の実施例に係るプリント回路基板に含まれているビア140は、第1金属層141及び第2金属層142を含むことができる。
【0046】
第1金属層141は、第1回路110aに接触及び接続され、第2金属層142は、第1金属層141上に形成されることができる。第2金属層142は、第2回路110bに接触及び接続されることができる。
【0047】
第2金属層142の溶融点は、第1金属層141の溶融点より低くてもよい。例えば、第1金属層141が銅(Cu)を、第2金属層142が錫(Sn)を主成分とすることができる。第1金属層141及び第2金属層142は、めっきまたは金属ペーストの充填により形成可能である。
【0048】
図1c及び
図1dを参照すると、プリント回路基板は複数の単位層(
図9の図面符号10参照)で形成されることができる。複数の単位層のうち、上下に積層される隣接した少なくとも2つの単位層のそれぞれは、一面(例えば、下面)に回路110が形成された絶縁層100と、上記絶縁層100と上記回路110との間に形成された第1接着層120と、上記絶縁層の他面(例えば、上面)に形成された第2接着層130と、を含むことができる。
【0049】
絶縁層100は、樹脂等の絶縁物質で組成される資材である。絶縁層100の樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の様々な材料で構成されることができる。例えば、絶縁層100として、エポキシ系樹脂またはポリイミドを用いることができる。これに関する説明は、上述した通りである。
【0050】
絶縁層100には回路110が形成される。回路110は、絶縁層100の一面に形成され、絶縁層100の一面に埋め込まれることができる。回路110は電気信号を伝達するためにパターン化された伝導体である。回路110は、電気伝導特性を考慮して、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)等の金属またはこれらの合金で形成することができる。
【0051】
回路110の絶縁層100と接する上面及び/または側面の表面粗さ(Ra)は、0.1μmよりも小さくてもよい。好ましくは、回路110の絶縁層100と接する表面には粗さを有さなくてもよい。さらに、回路110の下面の表面粗さも0.1μmよりも小さくてもよい。
【0052】
絶縁層100は、回路110との接続のために、絶縁層100を貫通するビア140をさらに含むことができる。ビア140は、他の単位層に形成された回路110を互いに電気的に接続させるものであり、回路110の一部分上に位置することができる。ビア140も、銅(Cu)、銀(Ag)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)等の金属またはこれらの合金で形成可能であり、めっきまたは金属ペーストの充填により形成可能である。ビア140の溶融点は、回路110の溶融点より低くてもよい。
【0053】
特に、
図1dを参照すると、ビア140は、第1金属層141及び第2金属層142を含むことができる。第1金属層141は、回路110の上面に接触及び接続され、第2金属層142は、第1金属層141上に形成されることができる。第2金属層142は、他の単位層に形成された回路に接触及び接続される。
【0054】
第2金属層142の溶融点は、第1金属層141の溶融点より低くてもよい。例えば、第1金属層141は銅(Cu)を、第2金属層142は錫(Sn)を主成分とすることができる。第1金属層141及び第2金属層142は、めっきまたは金属ペーストの充填により形成可能である。
【0055】
互いに異なる単位層に形成されているビア140は、互いにスタック(stack)構造を形成することができる。スタック構造は、1つのビアを他のビア側に投映(またはビアを、プリント回路基板に平行なある仮想の同一平面上に投映)したとき、互いに重なる構造であり、さらに中心線が垂直に一列に配置され得る。
【0056】
回路110の絶縁層100と接触する上面及び/または側面の表面粗さがほとんどないため、回路110と絶縁層100との密着力の問題を解決するために、第1接着層120が絶縁層100と回路110との間に形成される。すなわち、第1接着層120を介して絶縁層100と回路110とが互いに強く接着することができる。例えば、絶縁層100と回路110との剥離強度は、0.5kgf/cmよりも大きくなることが可能である。
【0057】
第1接着層120は、絶縁層100と回路110とが接する面積(回路110の上面及び/または側面)に形成される。第1接着層120は、それだけでなく、絶縁層100の一面において、絶縁層100と回路110とが接しない部分(絶縁層100の下面)に延長することができる。回路110が絶縁層100の一面に埋め込まれる場合、第1接着層120は、絶縁層100の一面及び回路110の表面に沿って凸凹に形成され得る。
【0058】
第1接着層120は、有機薄膜であることができる。例えば、第1接着層120は、シランカップリングを含む有機薄膜であることができる。また、この第1接着層120は、nmの厚さを有することができる。
【0059】
絶縁層100にビア140が形成される場合、ビア140は第1接着層120を貫通することができる。
【0060】
第2接着層130は、絶縁層100の他面に形成される。第2接着層130は、絶縁層100と他の層に位置している回路110との密着力を確保するために必要である。
【0061】
第2接着層130の誘電損失は、絶縁層100の誘電損失よりも小さい。特に、第2接着層130の誘電正接は、絶縁層100の誘電正接よりも小さい。誘電正接とは、信号伝送時に絶縁層100により損失される電力(誘電損失)の度合いを意味する。誘電正接が大きいほど誘電損失が大きい。
【0062】
第2接着層130の誘電正接が絶縁層100の誘電正接よりも小さいので、信号損失を低減することができる。
【0063】
第2接着層130は、シリコン系樹脂材で形成可能であり、第2接着層130の無機フィラーの含量は、絶縁層100の無機フィラーの含量より大きくてもよい。
【0064】
第2接着層130の厚さは、第1接着層120の厚さより厚く、絶縁層100の厚さより薄くてもよい。
【0065】
1つの単位層内では、第1接着層120と第2接着層130とが互いに離隔して接しなくてもよい。ただし、異なる単位層に位置した第1接着層120と第2接着層130とは互いに接触することができる。ある1つの単位層に形成された第1接着層120は、隣接した他の1つの単位層に形成された第2接着層130と接触することができる。具体的に、上部に位置した単位層に形成されている第1接着層120は、下部に位置した単位層に形成されている上記第2接着層130と接触することができる。
【0066】
一方、絶縁層100にビア140が形成される場合、ビア140は、第2接着層130を貫通することができる。すなわち、ある1つの単位層に形成されたビア140は、上記単位層に形成された第1及び第2接着層120、130を貫通して、隣接した他の1つの単位層に形成されている回路110と接続することができる。
【0067】
図2から
図10は、本発明の実施例に係るプリント回路基板の製造方法を示す図である。
【0068】
図2に示すように、キャリア上に回路110を形成し、有機薄膜等の第1接着層120を形成する。キャリアは、絶縁材C0の両面に厚膜金属箔C1及び薄膜金属箔C2が形成されているものであり、厚膜金属箔C1と薄膜金属箔C2との間には離型剤が介在される。この金属箔C1、C2は、銅で形成してもよい。
【0069】
回路110は、SAP、MSAP、Tenting等様々な方式により形成可能である。
【0070】
第1接着層120は、蒸着またはディッピング(dipping)の方式により形成可能である。回路110が形成された後に第1接着層120を形成するので、第1接着層120は、回路110の露出された表面は勿論、薄膜金属箔C2の表面上にも形成されることができる。
【0071】
図3に示すように、回路110上に絶縁層100が形成される。絶縁層100は、塗布またはシート付着の方式により形成可能である。絶縁層100の厚さは、回路110の厚さより厚くてもよい。
【0072】
図4に示すように、第2接着層130が形成される。第2接着層130は、絶縁層100上に積層されることができる。絶縁層100の厚さが回路110の厚さよりも厚いので、第2接着層130と第1接着層120とは、互いに離隔することができる。
【0073】
図5に示すように、ビア140が形成される。ビア140は、第1接着層120及び第2接着層130を貫通することができる。ビア140は、金属をめっきするか、または金属ペーストを充填することにより形成可能であり、ビア140の溶融点は、回路110の溶融点より低くてもよい。例えば、回路110は銅を、ビア140は錫を主成分とする金属により形成することができる。
【0074】
図6に示すように、第2接着層130上に保護フィルムFが付着される。保護フィルムFは、PETであってもよい。
【0075】
図7及び
図8に示すように、単位層10は、保護フィルムFが付着された状態にキャリアから分離される。保護フィルムFは、キャリアから単位層10が分離されるときに単位層10を保護する。
【0076】
図8に示された単位層10は、同じ方式により複数形成されることができる。
【0077】
図9及び
図10では、複数の単位層10の仮付け後に、300℃以上の高温環境下で一括積層される。最上部に、最外層回路210及び最外層絶縁層200が形成された層20を位置し、複数の単位層10を一括積層することができる。最外層絶縁層200にも、必要によって第1接着層(図示せず)を形成することができ、この場合は、最外層絶縁層200と最外層回路210との間に第1接着層を介在することができ、特に、最外層回路210の側面に第1接着層を形成することができる。
【0078】
以上、本発明の一実施例について説明したが、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれるものといえよう。
【符号の説明】
【0079】
100、200 絶縁層
110、210 回路
120 第1接着層
130 第2接着層
140 ビア
F 保護フィルム
10 単位層