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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20221122BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L27/06 311B
H01L27/088 331E
H01L29/91 D
H01L29/06 301F
H01L27/088 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018135260
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2020013899
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良一
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068650(JP,A)
【文献】特開2006-237651(JP,A)
【文献】特開2007-335474(JP,A)
【文献】特開2007-053314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 29/861
H01L 29/06
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する支持基板上に絶縁層を介在して活性層が形成された基板の前記活性層に配設され、アノード領域とカソード領域とのpn接合ダイオードを含んで構成される保護素子と、
前記カソード領域と前記支持基板とを電気的に接続する接続手段と、
前記基板上に配設され、前記カソード領域に電気的に接続された外部端子と、
前記支持基板と電気的に接続され、前記基板を搭載するダイパッド又は配線基板と、
前記外部端子にワイヤを介して電気的に接続されたリードと、を備え、
前記接続手段は、前記リードと前記ダイパッド又は前記配線基板とを電気的に接続する経路を含んで構成されている、半導体装置。
【請求項2】
導電性を有する支持基板上に絶縁層を介在して活性層が形成された基板の前記活性層に配設され、アノード領域とカソード領域とのpn接合ダイオードを含んで構成される保護素子と、
前記カソード領域と前記支持基板とを電気的に接続する接続手段と、
を備え、
前記接続手段は、
前記活性層の表面から前記支持基板へ至るトレンチと、
前記トレンチの側壁に配設された絶縁体と、
前記トレンチ内部に前記絶縁体を介して埋設された導電体と、を備え、
前記カソード領域と前記支持基板とを前記導電体を介して電気的に接続している、半導体装置。
【請求項3】
前記接続手段は、前記支持基板の前記pn接合ダイオードに対向する領域の少なくとも一部と前記カソード領域とを電気的に接続している、又は前記支持基板の前記pn接合ダイオードの近傍の一部と前記カソード領域とを電気的に接続している請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記活性層の前記保護素子とは別の領域に、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体型容量のいずれかの半導体素子が配設されている請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に保護素子を備えた半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、SOI(Silicon On Insulator)基板を採用した半導体装置が開示されている。SOI基板は、シリコン基板と、シリコン基板上の埋込み酸化膜と、埋込み酸化膜上のp型活性層とを積層して形成されている。p型活性層にはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。
ここで、一般的に、SOI基板のシリコン基板は電位が印加されていないフローティング状態とされているか、又はシリコン基板にはグランド電位が印加されている。
【0003】
ところで、SOI基板のp型活性層に保護素子として高耐圧構造のpn接合ダイオードを形成する場合には、p型活性層の不純物密度を低く設定し、pn接合部の接合耐圧を高める必要がある。しかしながら、p型活性層の不純物密度が変化すると、pn接合ダイオード以外の他の素子、具体的にはMOSFETの閾値電圧(Vth)等が変化し、素子の特性に変動が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4354876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、他の素子の特性に影響を及ぼすことがなく、保護素子の耐圧を向上させることができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1実施態様に係る半導体装置は、導電性を有する支持基板上に絶縁層を介在して活性層が形成された基板の活性層に配設され、アノード領域とカソード領域とのpn接合ダイオードを含んで構成される保護素子と、カソード領域と支持基板とを電気的に接続する接続手段と、を備えている。
【0007】
第1実施態様に係る半導体装置は、基板に保護素子を備える。基板は、導電性を有する支持基板と、この支持基板上の絶縁層と、絶縁層上の活性層とを有する。保護素子は、活性層に配設され、アノード領域とカソード領域とのpn接合ダイオードを含んで構成される。
【0008】
ここで、半導体装置は更に接続手段を備える。接続手段はカソード領域と支持基板とを電気的に接続する。仮に、カソード領域に正のサージ電圧が印加されると、このサージ電圧は支持基板にも印加される。基板は支持基板、絶縁層及び活性層によるフィールドプレート構造を構築する。支持基板にサージ電圧が印加されると、フィールドプレート効果によりアノード領域とカソード領域とのpn接合部に形成される空乏層を広げてpn接合部に生じる電界が緩和される。このため、活性層の不純物密度を低く設定することなく、pn接合ダイオードの接合耐圧を向上させることができる。
【0009】
本発明の第2実施態様に係る半導体装置では、第1実施態様に係る半導体装置において、接続手段は、支持基板のpn接合ダイオードに対向する領域の少なくとも一部とカソード領域とを電気的に接続している、又は支持基板のpn接合ダイオードの近傍の一部とカソード領域とを電気的に接続している。
【0010】
第2実施態様に係る半導体装置によれば、接続手段は、支持基板のpn接合ダイオードに対向する領域の少なくとも一部とカソード領域とを電気的に接続する構成とされる。また、接続手段は、支持基板のpn接合ダイオードの近傍の一部とカソード領域とを電気的に接続する構成とされる。
このため、仮に、サージ電圧がカソード領域に印加されると、支持基板のpn接合ダイオードに対向する領域又はその近傍に即座にサージ電圧が印加されるので、pn接合部に生じる電界を即座に緩和してpn接合ダイオードの接合耐圧を向上させることができる。
【0011】
本発明の第3実施態様に係る半導体装置では、第1実施態様又は第2実施態様に係る半導体装置において、活性層の保護素子とは別の領域に、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体型容量のいずれかの半導体素子が配設されている。
【0012】
第3実施態様に係る半導体装置によれば、活性層の保護素子とは別の領域に、半導体素子が配設される。半導体素子は、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体型容量の少なくともいずれかである。そして、活性層の不純物密度を低く設定することなく、pn接合ダイオードの接合耐圧を向上させることができるので、半導体素子の特性を変動させることがなくなる。
【0013】
本発明の第4実施態様に係る半導体装置では、第1実施態様~第3実施態様のいずれか1つに係る半導体装置において、基板上に配設され、カソード領域に電気的に接続された外部端子と、支持基板と電気的に接続され、基板を搭載するダイパッド又は配線基板と、外部端子にワイヤを介して電気的に接続されたリードと、を備え、接続手段は、リードとダイパッド又は配線基板とを電気的に接続する経路を含んで構成されている。
【0014】
第4実施態様に係る半導体装置は、外部端子と、ダイパッド又は配線基板と、リードとを更に備える。外部端子は、基板上に配設され、カソード領域に電気的に接続される。ダイパッド又は配線基板は、基板を搭載し、基板の支持基板に電気的に接続される。リードはワイヤを介して外部端子に電気的に接続される。ここで、接続手段は、リードとダイパッド又は配線基板とを電気的に接続する経路を含んで構成される。
このため、仮に、サージ電圧がリードからワイヤ及び外部端子を介してカソード領域に印加されると、リードからダイパッド又は配線基板を介して支持基板にサージ電圧を印加させることができる。従って、pn接合ダイオードのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現することができる。
【0015】
本発明の第5実施態様に係る半導体装置は、第1実施態様~第3実施態様のいずれか1つに係る半導体装置において、接続手段は、活性層の表面から支持基板へ至るトレンチと、トレンチの側壁に配設された絶縁体と、トレンチ内部に絶縁体を介して埋設された導電体と、を備え、カソード領域と支持基板とを導電体を介して電気的に接続している。
【0016】
第5実施態様に係る半導体装置では、接続手段は、トレンチと、絶縁体と、導電体とを備える。トレンチは、活性層の表面から支持基板へ至る構成とされている。絶縁体は、トレンチの側壁に配設される。導電体は、トレンチ内部に絶縁体を介して埋設される。ここで、カソード領域は導電体を介して支持基板に電気的に接続される。
このため、仮に、サージ電圧がカソード領域に印加されると、トレンチに埋設された導電体を介して支持基板に簡易にサージ電圧を印加させることができる。従って、pn接合ダイオードのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、他の素子の特性に影響を及ぼすことがなく、保護素子の耐圧を向上させることができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施の形態に係る半導体装置の要部を拡大して概略的に示す縦断面構造図である。
図2】第1実施の形態に係る半導体装置のパッケージング構造を示す断面図である。
図3】本発明の第2実施の形態に係る半導体装置の要部を拡大して概略的に示す図1に対応する縦断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施の形態]
以下、図1及び図2を用いて、本発明の第1実施の形態に係る半導体装置について説明する。
【0020】
(半導体装置1の基板断面構造)
図1に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1は基板(半導体ペレット又は半導体チップ)2を主体に構成されている。基板2の主面部には保護素子としてのpn接合ダイオードD(以下、単に「ダイオードD」という。)が配設され、ダイオードDは逆方向接続において外部端子BPに電気的に接続されている。
【0021】
基板2にはSOI基板が使用されている。すなわち、基板2は、導電性を有する支持基板20と、支持基板20上に形成された絶縁層21と、絶縁層21上に形成された活性層22とを順次積層した構造とされている。
【0022】
支持基板20は、ここでは、シリコン単結晶基板により形成され、低不純物密度のp型に設定されている。なお、支持基板20は、中不純物密度又は高不純物密度のp型に設定されてもよく、又はn型に設定されてもよい。
絶縁層21は、埋込み酸化膜(BOX:Buried Oxide)として形成され、具体的にはシリコン酸化膜により形成されている。絶縁層21は、例えば、イオン注入法を用いて、支持基板20の内部に酸素を注入し、支持基板20内部のシリコンを部分的に酸化させることにより形成されている。
活性層22は、ここでは支持基板20と同様にシリコン単結晶層により形成され、低不純物密度のp型に設定されている。活性層22は、支持基板20の表面層の一部を用いて形成され、絶縁層21が形成されることによってこの絶縁層21を境として支持基板20と区画(電気的に分離)されている。活性層22には、ダイオードDが配設されると共に、ダイオードD以外であって回路を構築する半導体素子が配設されている。
【0023】
特に限定されるものではないが、ここでは、半導体素子として、絶縁ゲート型電界効果トランジスタTr(IGFET:Insulated Gate Field Effect Transistor。以下、単に「トランジスタTr」という。)が配設されている。ここで、IGFETとは、MOSFET、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)のいずれも含む意味において使用されている。
【0024】
ダイオードD、トランジスタTrのそれぞれの間において、活性層22の主面上には素子分離領域3が配設されている。素子分離領域3は、ここでは活性層22の表面を選択的に酸化したシリコン酸化膜により形成されている。素子分離領域3は、ダイオードDとトランジスタTrとの間等、素子間を電気的に分離する構成とされている。
【0025】
ダイオードDは、アノード領域としてのp型活性層22と、カソード領域としてのn型半導体領域4とのpn接合部に構成されている。n型半導体領域4は、活性層22の表面から内部へn型不純物をイオン注入法又は固相拡散法を用いて導入し、n型不純物を活性化することにより形成されている。n型半導体領域4の不純物密度は活性層22の不純物密度よりも高く設定されている。
アノード領域としての活性層22の主面部には、活性層22と同一導電型のp型半導体領域5が配設されている。p型半導体領域5はn型半導体領域4の不純物密度よりも高い不純物密度に設定されている。p型半導体領域5が配設されることにより、アノード領域としての活性層22とそれに電気的に接続される配線(図2に示される配線12)との接触抵抗を小さくすることができる。
【0026】
トランジスタTrは、素子分離領域3に周囲を囲まれた領域内において、活性層22の主面部に配設されている。トランジスタTrは、チャネル形成領域として使用される活性層22と、ソース領域及びドレイン領域としての一対の主電極を形成するn型半導体領域8と、ゲート絶縁膜6と、ゲート電極7とを含んで構成されている。
一対のn型半導体領域8は、活性層22の主面部においてゲート幅方向へ離間して配設されている。n型半導体領域8は、p型半導体領域5とは反対導電型であるが、p型半導体領域5と同程度の不純物密度に設定されている。活性層22において一対のn型半導体領域8間はチャネル形成領域として使用されている。
ゲート絶縁膜6は活性層22の主面上において一対のn型半導体領域8間に少なくとも形成されている。ゲート絶縁膜6として、シリコン酸化膜の単層膜、又はシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを積層した複合膜を使用することができる。
ゲート電極7はゲート絶縁膜6上に配設されている。ゲート電極7には、例えば、不純物が導入されて低抵抗値に調整されたシリコン多結晶膜の単層膜、又はシリコン多結晶膜上に高融点金属膜や高融点金属シリサイド膜を積層した複合膜を使用することができる。
このように構成されるトランジスタTrはnチャネル導電型に設定されている。なお、本実施の形態では、活性層22に図示省略のpチャネル導電型トランジスタが配設されており、相補型トランジスタ(complementary transistor)が構築されている。
【0027】
(半導体装置1のパッケージング構造)
図1では省略されているが、図2に示されるように、基板2上には、第1層目のパッシベーション膜10、第1層目の配線12、第2層目のパッシベーション膜13、第2層目の配線15、第3層目のパッシベーション膜16のそれぞれが順次配設されている。本実施の形態において、半導体装置1は、配線12及び配線15を含む2層配線構造を採用しているが、単層配線構造又は3層以上の配線構造が採用されてもよい。
【0028】
第1層目のパッシベーション膜10は、ダイオードD上及び図1に示されるトランジスタTr上を含み、素子分離領域3上に形成されている。パッシベーション膜10として、シリコン酸化膜若しくはシリコン窒化膜の単層膜、又はそれらの複合膜が使用されている。パッシベーション膜10は、ダイオードD、トランジスタTr等と第1層目の配線12との電気的な分離を主目的として形成されている。
【0029】
第1層目の配線12は、パッシベーション膜10上に所定の配線パターンを持って配設されている。ダイオードDのカソード領域としてのn型半導体領域4には、パッシベーション膜10に膜厚方向へ貫通して形成された接続孔11を通して配線12の一端部が接続されている。この配線12の他端部はパッシベーション膜10上に延設されている。
また、ダイオードDのアノード領域としてのp型半導体領域5には、他の配線12の一端部が接続孔11を通して接続されている。この他の配線12の他端部は、図示省略の回路に接続されている。
配線12には、例えば、銅(Cu)、シリコン(Si)が添加されたアルミニウム合金膜が使用されている。
【0030】
第2層目のパッシベーション膜13は、配線12上を含んでパッシベーション膜10上に形成されている。パッシベーション膜13は例えばパッシベーション膜10と同様の材料により形成されている。
【0031】
第2層目の配線15は、パッシベーション膜13上に所定の配線パターンを持って配設されている。配線15の一端部は、パッシベーション膜13に膜厚方向へ貫通して形成された接続孔14を通してn型半導体領域4に接続された配線12の他端部に接続されている。配線15の他端部は外部端子BPとして構成されている。この外部端子BPの上面は、配線15上を含むパッシベーション膜13上に配設された第3層目のパッシベーション膜(ファイナルパッシベーション膜)16に膜厚方向へ貫通して形成されたボンディング開口17内において露出されている。
パッシベーション膜13、パッシベーション膜16のそれぞれは例えばパッシベーション膜10と同様の材料により形成されている。また、配線15は配線12と同様の材料により形成されている。
【0032】
ここで、半導体装置1は、図2に示されるように、リード30と、基板2と、ボンディングワイヤ36と、樹脂封止体38とを更に備えている。詳しく説明すると、リード30は、ダイパッド(タブ)31と、インナーリード32と、アウターリード33とを含んで構成されている。
【0033】
ダイパッド31上には接合材35を介して基板2が接合されている。基板2の支持基板20の裏面はダイパッド31の上面に対向して配置されている。接合材35には例えば銀(Ag)ペーストが使用されている。つまり、ダイパッド31は支持基板20に電気的に接続されている。
インナーリード32は、ダイパッド31の板面方向であって、このダイパッド31の周囲に配列されている。インナーリード32は樹脂封止体38の内部に配設されている。インナーリード32のダイパッド31側の一端部は、ボンディングワイヤ36を介して、基板2の外部端子BP(配線15)に電気的に接続されている。
そして、アウターリード33は、インナーリード32の他端部に一体に形成され、樹脂封止体38の外部に導出されている。図示を省略するが、アウターリード33は、半導体装置1を実装基板へ実装する構造に対応させて、端子挿入型や表面実装型のリード形状に成形されている。
【0034】
ダイパッド31、インナーリード32及びアウターリード33は、図示省略のリードフレームから成形され、かつ、切断されて形成されている。リード30として、例えば鉄-ニッケル(Fe-Ni)合金、銅(Cu)合金等の板材が使用されている。さらに、リード30の接合領域やボンディング領域となる表面上には金(Au)めっきやニッケル(Ni)めっきが施され、ボンダビリティが向上されている。
また、ボンディングワイヤ36には例えばAuワイヤが使用されている。
【0035】
樹脂封止体38は、エポキシ系樹脂材料を用いて、レジンモールド法により成形されている。
【0036】
(ダイオードDのカソード領域と支持基板20との接続構造)
図1に概略的に示されるように、半導体装置1は、保護素子としてのダイオードDのカソード領域であるn型半導体領域4と基板2の支持基板20とを電気的に接続する接続手段(接続構造)10を更に備えている。
【0037】
図2を用いて詳しく説明すると、本実施の形態における接続手段50は、配線12と、配線15と、ボンディングワイヤ36と、接合材35と、ダイパッド31と、ボンディングワイヤ37とを含んで構成されている。すなわち、接続手段50は、インナーリード32からボンディングワイヤ36、外部端子BP、配線15及び配線12を通してn型半導体領域4へ信号を流す信号経路と、インナーリード32をボンディングワイヤ37、ダイパッド31及び接合材35を介して支持基板20に短絡させる短絡経路とを備えている。ボンディングワイヤ37は、インナーリード32とダイパッド31との間を電気的に接続し、ボンディングワイヤ36と同様の材料により形成されている。
このような接続手段50を備えることにより、アウターリード33から外部端子BPを通してダイオードDのカソード領域へ正のサージ電圧が印加される(入力される)と、同様の正のサージ電圧がダイパッド31を通して支持基板20へ印加される。
【0038】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る半導体装置1は、図1に示されるように、基板2にダイオードDを含んで構成される保護素子を備える。基板2は、導電性を有する支持基板20と、この支持基板20上の絶縁層21と、絶縁層21上の活性層22とを有する。ダイオードDは、活性層22に配設され、アノード領域及びカソード領域を含んで構成される。少し詳しく説明すると、アノード領域はp型活性層22により構成され、カソード領域は活性層22の主面部に形成されたn型半導体領域4により構成される。
【0039】
ここで、半導体装置1は更に接続手段50を備える。接続手段50はダイオードDのカソード領域と基板2の支持基板20とを電気的に接続する。
仮に、ダイオードDのカソード領域に正のサージ電圧が印加されると、このサージ電圧は支持基板20にも印加される。基板2は支持基板20、絶縁層21及び活性層22によるフィールドプレート構造を構築する。支持基板20にサージ電圧が印加されると、フィールドプレート効果により活性層22に電界効果が発生し、アノード領域とカソード領域とのpn接合部に形成される空乏層を広げてpn接合部に生じる電界が緩和される。このため、活性層22の不純物密度を低く設定することなく、ダイオードDの接合耐圧を向上させることができる。
【0040】
従って、トランジスタTrにおいて、活性層22の不純物密度を低く設定する必要がないので、閾値電圧の変動、寄生容量の変動等、特性に影響を及ぼすことなく、保護素子のサージ電圧に対する耐圧を向上させることができる。
表現を代えると、SOI構造を有する基板2を利用して、ダイオードDのカソード領域と支持基板20とを電気的に短絡させる簡易な構成により、フィールドプレート構造を簡単に構築することができる。すなわち、あえて、半導体装置1の製造プロセスを増加して、活性層22の表面側にフィールドプレート構造を構築せずに、ダイオードDの耐圧を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る半導体装置1では、図2に示されるように、接続手段50は、カソード領域(n型半導体領域4)と、支持基板20のダイオードDに対向する領域とを電気的に接続する構成とされる。
表現を代えれば、ダイオードDの特にアノード領域とカソード領域とのpn接合部に対向する領域において、少なくとも支持基板20がカソード領域と短絡されていればよい。特に、支持基板20が低不純物密度に設定されている場合には、支持基板20のシート抵抗値が高くなるので、ダイオードDに近い領域において支持基板20にサージ電圧が印加されることが好ましい。
このように構成される半導体装置1によれば、ダイオードDのカソード領域に例えば正のサージ電圧が印加されると、支持基板20のダイオードDに対向する領域に即座にサージ電圧が印加される。このため、ダイオードDのpn接合部に生じる電界を即座に緩和してダイオードDの接合耐圧を向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施の形態に係る半導体装置1では、図1に示されるように、基板2の活性層22のダイオードDとは別の領域にトランジスタTrが配設される。そして、活性層22の不純物密度を低く設定することなく、ダイオードDの接合耐圧を向上させることができるので、トランジスタTrの特性を変動させることがなくなる。
なお、トランジスタTr以外の半導体素子として、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体(MIS:Metal Insulator Semiconductor)型容量の少なくとも1つが配設される場合にも、半導体素子の特性の変動を抑制することができる。
例えば、バイポーラトランジスタでは、活性層22の不純物密度を低く設定する必要がないので、動作領域に付加される寄生容量の変動がない。また、拡散抵抗は例えばn型半導体領域により形成され、拡散抵抗と活性層22とのpn接合部に発生する空乏層の広がりを抑制することができるので、拡散抵抗に付加される寄生容量の変動がない。さらに、MIS型容量では、空乏層の広がりを抑制することができるので、容量に付加される寄生容量の変動がない。
【0043】
また、本実施の形態に係る半導体装置1は、図2に示されるように、外部端子BP(配線15)と、ダイパッド31と、リード30とを更に備える。外部端子BPは、基板2上に配設され、ダイオードDのカソード領域(n型半導体領域4)に電気的に接続される。ダイパッド31は、基板2を搭載し、基板2の支持基板20に電気的に接続される。リード30はボンディングワイヤ36を介して外部端子BPに電気的に接続される。ここで、接続手段50は、リード30とダイパッド31とを電気的に接続する構成とされる。
このため、仮に、正のサージ電圧がリード30からボンディングワイヤ36及び外部端子BPを介して(信号経路を通して)カソード領域に印加されると、リード30からダイパッド31を介して(短絡経路を通して)支持基板20に簡易に正のサージ電圧を印加させることができる。従って、ダイオードDのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現することができる。
【0044】
なお、図2に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1では、リード30のダイパッド31上に基板2が接合されているが、ダイパッド31に代えて配線基板が使用され、配線基板上に基板2が接合されてもよい。勿論、配線基板の少なくともダイオードDに対向する領域には、支持基板20に電気的に接続される配線が配設されている。
【0045】
[第2実施の形態]
図3を用いて、本発明の第2実施の形態に係る半導体装置について説明する。なお、本実施の形態において、第1実施の形態に係る半導体装置1の構成要素と同一、又は実質的に同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
本実施の形態に係る半導体装置1は、第1実施の形態に係る半導体装置1の接続手段50に代えて、図3に示される接続手段52を備えている。接続手段52は、ダイオードDの近傍に、このダイオードDの一部又は全ての周囲を取り囲んで配設されている。接続手段52は、トレンチ45と、絶縁体46と、導電体47とを含んで構成されている。
【0047】
トレンチ45は、基板2の活性層22の主面から活性層22及び絶縁層21を厚さ方向に貫通し、支持基板20の表面に至る止め穴又は溝として形成されている。半導体装置1の製造プロセスでは、リアクティブイオンエッチング(RIE)等の異方性エッチングにより簡易にトレンチ45を形成することができる。
絶縁体46は、トレンチ45の側壁に形成され、例えばシリコン酸化膜により形成されている。このシリコン酸化膜は、例えば化学的気相析出(CVD)法を用いて形成することができる。
導電体47は、トレンチ45の内部に絶縁体46を介して埋設されている。導電体47として、例えば、不純物が導入されて低抵抗値に調整されたシリコン多結晶膜が使用されている。製造プロセスにおいて、シリコン多結晶膜は、例えばCVD法を用いて、トレンチ45内部を埋設しつつ、活性層22上が平坦になるまで堆積される。そして、トレンチ45の内部が完全に埋設されつつ、活性層22上に一定の配線としての厚さを残してシリコン多結晶膜の表面が平坦化される。平坦化には、エッチング法、ケミカルメカニカルポリシング(CMP)法を使用することができる。
【0048】
導電体47の一部は、活性層22の主面上に形成されたパッシベーション膜40に形成された接続孔(符号省略)を通して、ダイオードDのカソード領域としてのn型半導体領域に接続されている。
【0049】
なお、接続手段52は、ダイオードDの周囲を完全に取り囲んで配設される場合には、トレンチアイソレーションと呼ばれる素子分離領域を構築する。
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る半導体装置1では、図3に示されるように、接続手段52は、トレンチ45と、絶縁体46と、導電体47とを備える。トレンチ45は、活性層22の表面から支持基板20へ至る構成とされている。絶縁体46は、トレンチ45の側壁に配設される。導電体47は、トレンチ45の内部に絶縁体46を介して埋設される。ここで、ダイオードDのカソード領域は導電体47を介して支持基板20に電気的に接続される。
このため、仮に、正のサージ電圧がカソード領域に印加されると、トレンチ45に埋設された導電体47を介して支持基板20に簡易にサージ電圧を印加させることができる。従って、トランジスタTrの特性を変動させることがなく、ダイオードDのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現することができる。
【0050】
なお、接続手段52において、トレンチ45に埋設された導電体47は、第1実施の形態に係る半導体装置1において説明した図2に示される第1層目の配線12を通して、ダイオードDのカソード領域(n型半導体領域4)に電気的に接続してもよい。
【0051】
[上記実施の形態の補足説明]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、例えば下記の通り変形可能である。
本発明は、半導体装置の基板において、支持基板はシリコン単結晶基板に限定されるものではなく、導電性を有していればよいので、例えば金属基板や化合物半導体基板を使用してもよい。
また、本発明は、保護素子として、pn接合ダイオードを含む、IGFET、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗のいずれかであってもよい。具体的には、IGFETの一方の主電極と活性層とのpn接合部にダイオードが形成されている。バイポーラトランジスタでは、エミッタ領域又はコレクタ領域とベース領域(活性層)とのpn接合部にダイオードが形成されている。拡散抵抗では、拡散抵抗と活性層とのpn接合部にダイオードが形成されている。
さらに、本発明は、2以上の素子、例えばダイオードとIGFETとを組み合わせて、又は拡散抵抗とIGFETとを組み合わせて保護素子を構築してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…半導体装置、2…基板、20…支持基板、21…絶縁層、22…活性層、4、8…n型半導体領域、5…p型半導体領域、6…ゲート絶縁膜、7…ゲート電極、50、52…接続手段、12、15…配線、30…リード、31…ダイパッド、32…インナーリード、35…接合材、36、37…ボンディングワイヤ、38…樹脂封止体、45…トレンチ、46…絶縁体、47…導電体、BP…外部端子、D…ダイオード(pn接合ダイオード)、Tr…トランジスタ(半導体素子)。
図1
図2
図3