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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-21
(45)【発行日】2022-11-30
(54)【発明の名称】高品質グラフェンの連続製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/186 20170101AFI20221122BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20221122BHJP
【FI】
C01B32/186
C01B32/194
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017054079
(22)【出願日】2017-03-21
(65)【公開番号】P2017171570
(43)【公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-02-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/310,350
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/457,763
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】アヴェティク・ハルテュンヤン
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】原 和秀
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-14484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/012220(US,A1)
【文献】Tereza M. Paronyan et al.,Formation of Ripples in Graphene as a Result of Interfacial Instabilities,ACS Nano,2011年,5(12),pp.9619-9627,DOI: 10.1021/nn202972f
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B32/182-32/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンを含むフィルムを調製する連続的方法であって、
金属基板を提供する段階と、
複数の加熱要素および1つまたは複数のガス供給部品を備える処理チャンバ内に前記金属基板を連続的に進入させて通過させる段階と、
前記金属基板の上面を非接触で加熱して前記金属基板の上面上に溶融金属層を形成し、前記金属基板の前記上面とは反対の面を固体に維持するように、前記金属基板の前記上面とは反対の面を非接触で加熱する段階と、
前記溶融金属層に炭素源ガスを接触させて前記金属基板の上面の前記溶融金属層を実質的に被覆するグラフェン含有層を形成する段階と、
前記溶融金属層を固化させる段階と、
前記グラフェン含有層を有する前記金属基板を前記処理チャンバから取り出す段階と、
前記グラフェン含有層を分離してグラフェンを含有するフィルムを形成する段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記金属基板が金属箔または金属フィルムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理チャンバが、
前記複数の加熱要素を備える予熱領域と、
前記1つまたは複数のガス供給部品を備える処理領域と、
冷却領域と、
を備え、
前記金属基板が前記予熱領域を通過する間に前記溶融金属層が形成され、前記処理領域において前記溶融金属層が前記炭素源ガスと接触し、前記冷却領域において前記溶融金属層が固化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属基板が巻出ロールから前記処理チャンバ内へと進行する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グラフェン含有層を含む前記金属基板が、前記処理チャンバから出た後に、巻取ロール上に巻き取られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の加熱要素が少なくとも2つの加熱要素を含み、前記1つまたは複数のガス供給部品が少なくとも2つのガス供給部品を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の加熱要素が、前記金属基板の上面を加熱する第1の加熱要素と、前記金属基板の底面を加熱する第2の加熱要素とを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属基板が銅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭素源ガスが、メタン、エチレン、アセチレン、エタノール、ベンゼン、メタノール、炭素系ポリマー、ナノ炭素材料、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属基板が金属箔を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記金属箔が略20から30μmの間の厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶融金属層が略200から800nmの間の厚さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶融金属層は、
溶質マランゴニ数
【数1】
が臨界数(M=80)より小さくなるような厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記金属基板が金属フィルムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記金属フィルムが、前記金属基板とは異なる第2の基板上に堆積される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の加熱要素が、前記金属基板の上面の融点から略50℃以内まで前記金属基板の上面を加熱する、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の加熱要素および/または前記第2の加熱要素が赤外線ヒーターを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の加熱要素が、略1050℃±30℃の温度まで前記金属基板の上面を加熱する、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の加熱要素が、前記金属基板の底面の融点未満の温度まで前記金属基板の底面を加熱する、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の加熱要素が、略1050℃未満の温度まで前記金属基板の底面を加熱する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる、2016年3月18日に出願された「Method for Continuous Production of High Quality Graphene」と題する米国仮出願第62/310,350号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、金属基板を使用して高品質グラフェンフィルムを製造するための連続的な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
原子スケールで二次元六方格子を形成する炭素の同素体であるグラフェンは、その優れた電気的、機械的、および化学的特性のため、フレキシブルエレクトロニクスにおける応用に有用となってきた。グラフェンの実用的応用を実現するために、遷移金属表面上での化学気相成長(CVD)などの大規模な製造方法が急速に調査されてきた。特に、銅は、典型的な成長温度での低い炭素溶解度のために有力な触媒基板となっている。
【0004】
しかしながら、厳密に二次元のグラフェン系は、しばしば熱力学的に不安定であり、しばしば、第3方向の摂動を通してのみ存在することが観察されてきた。これらの第3方向の変動は、「リップル」など、グラフェンシート表面に乱れたトポグラフィーをもたらす。グラフェンリップルは、(a)二次元層または膜の熱力学的安定性の問題、(b)金属基板とグラフェンとの間の熱膨張率の違い、および/または(c)金属基板上の粒界の存在に関連し得ると考えられている。グラフェン表面トポグラフィーは、その機械的、電子的、磁気的、および化学的特性に大きな影響を及ぼすため、リップルの形成を理解および制御することがその優れた特性を活用するために重要である。
【0005】
グラフェンシートを調製するための連続的製造方法(炭素含有蒸気が銅箔などの水平基板上で反応するロールトゥロール法など)は、製造コストを劇的に低減させる一方で、そのような方法はしばしば、成長したグラフェン表面上に不要なしわまたはリップルをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、製造コストおよび不要な表面トポグラフィーの両方を低減させる一方で、高品質かつ高表面積のグラフェンを製造する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一般的に、グラフェンを含むフィルムの調製であって、1つまたは複数の加熱要素および1つまたは複数のガス供給部品を備える処理チャンバ内に金属基板を配置する段階と、金属基板を加熱して金属基板の第1の表面上に溶融金属層を形成する段階であって、第1の表面が上面である、段階と、溶融金属層に炭化水素を含むガスなどの炭素源ガスを接触させて金属基板の第1の表面の溶融金属層を実質的に被覆するグラフェン含有層を形成する段階と、溶融金属層を固化させる段階と、任意で、グラフェン含有層を分離してグラフェンを含むフィルムを形成する段階と、を含む調製に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の態様による処理チャンバの例を示す。
図2】溶融上部層を有さない銅箔基板上のグラフェン粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図3】溶融上部層を有する銅箔基板上のグラフェン粒子のSEM画像を示す。
図4】本開示の態様による処理チャンバの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、一般的に、金属基板の表面上にグラフェンフィルムを製造する連続方法に関する。いくつかの態様によると、方法は、ロールトゥロールシステムを含む。本明細書で使用する「ロールトゥロール」処理とは、金属箔などの可撓性金属のロールを使用した連続製造方法を指す。本開示はさらに、これらの方法を実行するための装置に関する。
【0010】
いくつかの態様によると、本開示の方法は、処理チャンバに金属基板を配置する段階を含み得る。いくつかの態様によると、金属基板は平面を有し、金属基板はシートであり得る。金属基板は、1つまたは複数の金属を含む。本開示によると、有用であり得る金属の例は、銅、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、アルミニウム、ならびにそれらの合金および/または混合物を含む。いくつかの態様によると、処理チャンバに金属基板(例えば、金属箔または金属フィルム)を通過させることによって、金属基板が処理チャンバ内に配置され得る。
【0011】
例えば、金属基板は、金属箔を含み得る。いくつかの態様によると、金属箔は、略1から100μmの間、好ましくは略1から50μmの間、より好ましくは略10から40μmの間、最も好ましくは略20から30μmの間の厚さを有し得る。いくつかの態様によると、金属箔は、略25μmの厚さを有し得る。
【0012】
いくつかの態様によると、金属基板は、金属フィルムを含み得る。金属フィルムには、任意で、第2基板が設けられ得る。例えば、金属フィルムは、第2基板の1つまたは複数の表面上に堆積され得る。いくつかの態様によると、第2基板は、半金属および/またはその酸化物、例えば、Siおよび/またはSiOを含み得る。いくつかの態様によると、金属フィルムは、略100から1000nmの間、好ましくは略100から800nmの間、より好ましくは略200から600nmの間、最も好ましくは略300から500nmの間の厚さを有し得る。
【0013】
いくつかの態様によると、金属基板は、処理チャンバ内を連続的に通過する。
【0014】
いくつかの態様によると、処理チャンバは、例えば、処理チャンバ内に基板を通過させるように構成された1つまたは複数のロールを備え得る。例えば、処理チャンバは、1つまたは複数の巻出ロール、1つまたは複数のガイドロール、および/または1つまたは複数の巻取ロールを備え得る。いくつかの態様によると、巻出ロールは、そこから基板が繰り出され、かつ/または基板の張力を調節するロールであり得る。いくつかの態様によると、ガイドロールは、処理チャンバを通してフィルムを輸送し得る。例えば、いくつかの態様によると、チャンバは、巻出ロールの近位に位置する第1のガイドロールと、巻取ロールの近位に位置する第2のガイドロールとを備えてよく、ガイドロールの一方または両方は、例えば駆動源によって回転駆動され得る。いくつかの態様によると、巻取ロールは、グラフェンが基板の上に形成された後、かつ/または処理チャンバを通過した後に、基板が巻き取られるロールであり得る。
【0015】
いくつかの態様によると、処理チャンバは、1つまたは複数の加熱要素と、1つまたは複数のガス供給部品とを備える。いくつかの実施形態では、処理チャンバは、不活性雰囲気を含み得る。処理チャンバ内で使用するための不活性ガスの例は、アルゴン、ヘリウム、窒素、これらの混合物、および当分野で知られる任意の不活性ガスまたはガス混合物を含む。
【0016】
本明細書で使用する用語「加熱要素」は、熱を生成することができるあらゆる要素を指す。いくつかの態様によると、処理チャンバは、金属基板が処理チャンバを通過する間に金属基板の1面のみまたは1面より多くの表面に熱を供給する加熱要素を備え得る。いくつかの態様によると、処理チャンバは、少なくとも2つの加熱要素を備え得、1つまたは複数の第1の加熱要素が金属基板の第1の表面に熱を供給し、1つまたは複数の第2の加熱要素が金属基板の底面などの第2の表面に熱を供給する。例えば、1つまたは複数の第1の加熱要素は、基板の上面に熱を供給するように金属基板の上部に配置され、1つまたは複数の第2の加熱要素は、基板の底面に熱を供給するように金属基板の下部に配置され得る。いくつかの態様によると、2つまたはそれより多くの加熱要素は、加熱要素の各々が別々に制御され得るように別箇の制御装置を備え得る。例えば、加熱要素の各々は、加熱要素によって供給される熱を制御する制御装置および/または加熱要素の位置、たとえば基板に対する加熱要素の位置を制御する制御装置を備え得る。いくつかの態様によると、1つまたは複数の加熱要素は、同一の制御装置を使用して制御され得る。例えば、1つまたは複数の第1の加熱要素が第1の制御装置を使用して制御される一方で、1つまたは複数の第2の加熱要素は第2の制御装置を使用して制御され得る。
【0017】
いくつかの態様によると、処理チャンバは、多重の加熱要素および/または多種の加熱要素を備え得る。いくつかの態様によると、加熱要素は、例えば、赤外線ランプを備えるヒーターなどの赤外線ヒーター、および/または例えばレーザーを備えるヒーターなどのレーザーヒーターを含み得る。いくつかの態様によると、加熱要素は、セラミックヒーター、ハロゲンランプ、レーザーまたは類似物、磁場の印加による誘導電流によって加熱する手段、および/または熱伝導によって加熱する手段を含み得る。いくつかの態様によると、加熱要素は、黒鉛加熱要素を含み得る。しかしながら、当然ながら、本開示の態様に従って、制御された熱を供給することができる任意の適当な加熱要素を使用することができる。
【0018】
いくつかの態様によると、本開示の方法は、金属基板が処理チャンバを連続的に通過する間に該基板を加熱する段階を含み得る。例えば、図1に示すように、回転駆動ガイドロール(9および10)を使用して、巻出ロール(8)から1つまたは複数の加熱要素(3)をその中に備える処理チャンバ(2)に内に、シート状の基板(1)を進入、通過させることができる。いくつかの態様によると、1つまたは複数の加熱要素(3)は、基板が処理チャンバ(2)を通過する間に、基板(1)の上面に制御された熱を供給し得る。いくつかの態様によると、加熱要素(3)は、基板(1)またはその表面の融点と同等またはそれより高温の熱を供給し得る。例えば、加熱要素(3)は、銅の融点より高温の熱、および/または銅基板の表面の融点より高温の熱を供給し得る。いくつかの態様によると、基板にグラフェンが形成された後、基板は、巻取ロール(11)上に巻き取られ得る。
【0019】
当然ながら、1つまたは複数の加熱要素によって基板の上面に供給される熱は、使用する基板の融点および/または使用する基板の表面融点に依存し得る。本明細書において使用する用語「融点」は、一定の圧力で固体が液体となる温度を指す。いくつかの態様によると、基板の表面は、そのバルクの融点より低い温度で溶融し得、基板に含まれる金属および/または合金および/またはその混合物の融点より低い温度で表面を溶融させる。例えば、いくつかの態様によると、表面溶融は、基板に含まれる金属および/または合金および/または混合物の融点よりわずかに低い温度で、略10Åの厚さまで溶融面が拡大し得るように起こり得る。いくつかの態様によると、基板表面の融点は、基板の結晶方位に少なくとも部分的に依存し得る。
【0020】
いくつかの態様によると、加熱要素によって基板の上面に供給される熱は、加熱要素による熱の出力量および/または加熱要素と基板の上面との間の距離を変えることによって変化し得る。いくつかの態様によると、1つまたは複数の加熱要素によって基板の上面に供給される熱は、基板および/もしくは基板表面の融点とほぼ同じ温度、または基板および/もしくは基板表面の融点からある範囲内まで基板表面を加熱し得る。例えば、加熱要素によって基板の上面に供給される熱は、基板および/または基板表面の融点から略50℃以内、好ましくは略40℃以内、より好ましくは略30℃以内、より好ましくは略20℃以内、より好ましくは略10℃以内、最も好ましくは略5℃以内まで基板を加熱し得る。
【0021】
いくつかの態様によると、基板および/または基板表面の融点は、1つまたは複数の因子に依存し得る。例えば、基板および/または基板表面の融点は、特定の処理条件(例えば、処理チャンバ内の雰囲気の組成、圧力および/または密度)、ならびに/または基板に含まれる金属および/もしくは合金および/もしくは混合物に少なくとも部分的に依存し得る。本開示のいくつかの態様によると、基板および/または基板表面の融点は、基板に含まれる金属および/または合金および/または混合物の本来の融点とは異なり得る。
【0022】
いくつかの態様によると、処理チャンバの雰囲気は、所定の圧力を有し得る。例えば、いくつかの態様によると、圧力は、略10-8atmから100atmの間、任意で略10-7atmから50atmの間、任意で略10-7atmから20atmの間とすることができる。いくつかの態様によると、圧力は、略0.0084atmとすることができる。
【0023】
いくつかの態様によると、処理チャンバの雰囲気は、特定のガス組成を含み得る。例えば、いくつかの態様によると、雰囲気は不活性ガスを含み得る。本明細書おいて使用される用語「不活性」は、化学的に反応性を有さない物質を指す。例えば、雰囲気は、基板とも炭素源ガスとも反応しない不活性ガスを含み得る。いくつかの態様によると、雰囲気は、不活性でないガスを付加的にまたは代替的に含み得る。処理チャンバの雰囲気に含まれ得るガスの例は、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素およびそれらの混合物を含むがそれらに限定されない。
【0024】
本開示のいくつかの態様によると、加熱要素は、基板の上面が溶融するように基板の上面に制御された熱を供給することができ、それにより基板の上面上の任意の粒界、傷および/またはその他の欠陥が少なくとも部分的に平滑化される。いくつかの態様によると、加熱要素は、略970℃±30℃および/または1050℃±30℃および/または1100℃±30℃の温度で熱を出力し、かつ/またはそれらの温度まで基板の上面を加熱し得る。いくつかの態様によると、加熱要素は、略527℃、627℃、727℃、997℃、1017℃、1027℃、または1037℃の温度で熱を出力し、かつ/またはそれらの温度まで基板の上面を加熱し得る。
【0025】
いくつかの態様によると、金属基板が処理チャンバを通過する間に、金属基板の第1の表面上に溶融金属層が形成され得、第1の表面は上面である。例えば、基板の表面が加熱要素によって供給される熱にさらされる間に、金属基板の上層が溶融して溶融金属層を形成し得る。いくつかの態様によると、溶融量は、得られる溶融金属層が所定の厚さを有するように制御される。溶融金属層の厚さは、例えば、加熱要素によって供給される熱、加熱要素と基板との間の距離、および/または基板が処理チャンバを通過する速度を調節することによって制御され得る。
【0026】
いくつかの態様によると、金属基板の第2の表面、たとえば金属基板の底面または金属基板の対向する表面の温度を制御するために、少なくとも1つの追加の加熱要素が設けられ得る。例えば、処理チャンバは、基板の下部に、1つまたは複数の第2の加熱要素を備えてよく、第2の加熱要素は、基板の底面の温度が基板および/または基板表面の融点より低く維持されるように熱を供給し得る。つまり、第2の加熱要素は、第1の加熱要素よりも少ない熱を基板に供給し得る。例えば、第1の加熱要素の熱の出力量は、第2の加熱要素の熱の出力量より大きくてよく、かつ/または第1の加熱要素と基板の上面との間の距離は、第2の加熱要素と基板の底面との間の距離よりも小さくてよい。別の実施例では、第1の加熱要素の熱の出力量は第2の加熱要素の熱の出力量と等しく、一方で第1の加熱要素と基板の上面との間の距離は第2の加熱要素と基板の底面との間の距離よりも小さくてよい。この場合も、第2の加熱要素は、基板に第1の加熱要素よりも少ない熱を供給し得る。
【0027】
本明細書に記載されているように、いくつかの態様によると、基板および/または基板表面の融点は、1つまたは複数の因子に依存し得る。いくつかの態様によると、第2の加熱要素は、第2の基板の表面温度を略1050℃未満の温度に制御し得る。いくつかの態様によると、加熱要素は、略970℃±30℃および/または1050℃±30℃および/または1100℃±30℃の温度の熱を出力し、かつ/または基板の第2の表面をこれらの温度まで加熱し得る。いくつかの態様によると、加熱要素は、略527℃、627℃、727℃、997℃、1017℃、1027℃または1037℃の温度の熱を出力し、かつ/または基板の第2の表面をこれらの温度まで加熱し得る。いくつかの態様によると、基板の第2の表面は溶融せず、つまり基板が処理チャンバを通過する間に基板の1つの表面上のみに溶融金属層が形成される。
【0028】
いくつかの態様によると、第2の加熱要素によって基板の底面に供給される熱は、第2の加熱要素の熱の出力量、および/または第2の加熱要素と基板の底面との間の距離を変えることによって変化させることができる。いくつかの態様によると、第2の加熱要素によって基板の底面に供給される熱は、1つまたは複数のスペーサまたは第2の加熱要素と基板の底面との間の部品の存在に少なくとも部分的に依存し得る。
【0029】
例えば、図4に示すように、処理チャンバは、基板(16)の少なくとも一部がスペーサによって第2の加熱要素(20)から分離されるように、基板(16)の少なくとも一部の下に固体スペーサ(17)を備え得る。いくつかの態様によると、スペーサは、固体台または足場を含み得る。いくつかの態様によると、スペーサは、加熱要素によって供給される熱の一部またはすべてを伝達し得る。いくつかの態様によると、処理チャンバは、少なくとも1つの温度センサ、例えば、熱電対を備え得る。例えば、処理チャンバは、第1の加熱要素(18)および第2の加熱要素(20)にそれぞれ面する基板(16)の表面の温度を測定するために、第1の熱電対(15)と、第2の熱電対(14)とを備え得る。
【0030】
いくつかの態様によると、方法は、1つまたは複数の溶融金属層に炭素源ガスを接触させる段階を含む。いくつかの態様によると、炭素源ガスは、炭化水素を含むガスである。炭素源ガスは、処理チャンバ内に収められた1つまたは複数のガス供給部品を使用して供給され得る。1つまたは複数のガス供給部品とは、ガス(例えば、1つまたは複数の炭化水素を含むガスなどの炭素源ガス)を供給することができ、かつ/または金属基板の溶融金属層上にガスを堆積させることが可能な任意の機構を指す。
【0031】
いくつかの態様によると、基板の表面上に炭素源ガスを堆積させる段階は、化学気相堆積(CVD)を使用して実現され得る。処理チャンバ内で使用する炭素源ガスの例は、メタン、エチレン、アセチレン、エタノール、ベンゼン、メタノール、一酸化炭素、二酸化炭素、炭素系ポリマー、ナノ炭素材料、それらの混合物および/または当分野で知られている任意のその他のガスもしくはガス混合物を含む。いくつかの態様によると、溶融金属層に炭素源ガスを接触させることにより、グラフェン含有層の形成が可能となる。いくつかの態様によると、グラフェン含有層は、炭素源ガスと接触する溶融金属層の表面の部分を実質的に被覆するかまたは完全に被覆する。「実質的に被覆する」とは、表面の表面積の50%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超、さらに好ましくは90%超、さらに好ましくは95%超が被覆されることを意味する。いくつかの態様では、表面は、完全に(略100%)被覆される。例えば、図1に示すように、処理チャンバは、CVDによって基板の表面上にグラフェンを形成することができる炭化水素ガスを放出する1つまたは複数のガス供給部品(4)を備え得る。図1に示すように、いくつかの態様によると、1つまたは複数のガス供給部品(4)は、基板の第1の表面、すなわちその上に溶融金属層が形成された基板の表面に炭化水素ガスを供給し得る。
【0032】
炭素源ガスに加えて、1つまたは複数のガス供給部品は、1つまたは複数の第2のガスを供給し得る。処理チャンバにおいて使用する第2のガスの例は、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素、およびそれらの混合物を含む。例えば、1つまたは複数のガス供給部品は、処理チャンバに炭素源ガスとともに輸送ガスとして1つまたは複数の第2のガスを供給し得る。代替的にまたは付加的に、1つまたは複数の第2のガスは、炭素源ガスが処理チャンバに供給される前および/または供給された後に供給され得る。いくつかの態様によると、1つまたは複数の第2のガスは、炭素源ガスを供給するために使用するガス供給部品とは異なるガス供給部品によって処理チャンバに供給され得る。例えば、処理チャンバは、1つまたは複数の第2のガスを処理チャンバに供給する1つまたは複数の第2のガス供給部品を備え得る。
【0033】
いくつかの態様によると、ガス供給部品および/または第2のガス供給部品は、それぞれのガスを一定の流量で供給し得、流量は各ガスで同一であるかまたは異なり得る。例えば、いくつかの態様によると、窒素ガスは、略200sccmの流量で供給され得、アルゴンガスは略600sccmの流量で供給され得、水素ガスは略40sccmの流量で供給され得、メタンは略10sccmの流量で供給され得る。いくつかの態様によると、処理チャンバへの炭素源ガスおよび/または1つまたは複数の第2のガスの流量は、一定の流量比となるように選択され得る。例えば、窒素ガスとアルゴンガスと水素ガスとメタンの流量比は、略20:60:40:1であり得る。
【0034】
ガス供給部品および/または第2のガス供給部品は、1つまたは複数の加熱要素が基板に熱を供給すると同時にそれぞれのガスを放出するように設計され得る。代替的または付加的に、1つまたは複数の加熱要素は、ガス供給部品および/または第2のガス供給部品からガスを導入する前に熱を供給し得る。例えば、処理チャンバは、本明細書に記載されているように、所望の厚さを有する溶融金属層を形成するために1つまたは複数の加熱要素が金属基板に熱を供給する予熱領域を備え得る。基板は、次いで、ガス供給部品および/または第2のガス供給部品および/または1つまたは複数の追加の加熱要素を備える処理チャンバの処理領域へと続き得る。代替的または付加的に、予熱領域は、1つまたは複数の第2のガスを供給するための1つまたは複数の第2のガス供給部品を備え得る。例えば、いくつかの態様によると、予熱領域は、処理チャンバに水素ガスを提供する1つまたは複数の第2のガス供給部品を備える一方で、処理領域は、アルゴン、ヘリウムおよび/または窒素を含む輸送ガスとともに炭素源ガスを供給する1つまたは複数のガス供給部品を備え得る。
【0035】
いくつかの態様によると、本開示の方法は、基板の溶融金属層上に直接均一なグラフェンの層を直接合成することを可能にする。例えば、図1に示すように、固体基板(5)は、1つの表面上に溶融金属層(6)を含み得、その上にグラフェンの均一な層(7)が形成される。いくつかの好ましい実施形態では、この直接合成は、例えば、固体多結晶銅を使用した場合に見られる粒界を低減し、かつ/または取り除く。いくつかの態様によると、したがって、結果として得られるグラフェン層は、均一な核形成分布および低いグラフェン核形成密度を有する。
【0036】
いくつかの態様によると、基板は、所定の速度で処理チャンバを通過し得る。例えば、基板は、所望のグラフェン成長量を提供する速度で処理チャンバを通過し得る。例えば、速度は、一定の成長時間を提供するように(すなわち基板が炭素源ガスと一定の時間接触する)選択され得る。いくつかの態様によると、速度は、略30分の成長時間、任意で略20分の成長時間、任意で略10分の成長時間、任意で略5分の成長時間を提供するように選択され得る。所望のグラフェン成長量を提供するために必要な成長時間は、特定の処理条件(例えば、処理チャンバ内雰囲気の組成、圧力および/または密度)および/または基板に含まれる特定の金属および/または合金および/またはそれらの混合物に少なくとも部分的に依存し得ることを理解すべきである。
【0037】
いくつかの態様によると、1つまたは複数の加熱要素によって供給される熱および/または基板が処理チャンバを通過する速度は、所定の溶融金属層厚さを実現するように選択され得る。溶融金属層は、例えば、基板の厚さに対応する所定の厚さを有し得る。例えば、いくつかの態様によると、基板が略25μmの厚さを有する場合(例えば略25μmの厚さを有する銅または銅合金箔)、所定の溶融金属層厚さは、略100から1000nmの間、好ましくは略200から800nmの間、より好ましくは略300から700nmの間、最も好ましくは略450から550nmの間であり得る。いくつかの態様によると、所定の溶融金属層厚さは、基板が処理チャンバの予熱領域から出る前に達成され得、かつ/または処理チャンバの処理領域内で維持され得る。
【0038】
いくつかの態様によると、所定の溶融金属層厚さは、ベナール‐マランゴニ対流に関連する臨界マランゴニ数に対応し得る。特に、溶融金属は、表面張力の変動由来の溶質的または熱的不安定性を示し得、これは例えばベナール‐マランゴニ対流によって説明され得る。いくつかの態様によると、溶融金属層の厚さは、表面溶融金属‐炭素系の溶質マランゴニ数が臨界数より小さくなるように選択することができ、
【0039】
【数1】
【0040】
その場合、溶融層における対流が防止され、ゆえに溶融層の表面上の多孔性リップルの形成が防止される。本明細書中で使用される「溶質マランゴニ数」とは、以下を指す:
【0041】
【数2】
【0042】
式中、γは溶質表面張力係数、Δcは溶融物にわたる濃度勾配であり(Δc=cLG-cSLであり、cSLは固体‐液体界面でのバルク濃度であり、cLGは液体‐気体界面での濃度である)、dは溶融金属層の厚さ、Dは液体中の分子拡散率、μは動粘性係数である。
【0043】
この式によると、γすなわち溶質表面張力係数は、以下のように表すことができる:
【0044】
【数3】
【0045】
これは表面張力によって以下のように定義される:
【0046】
【数4】
【0047】
式中、
【0048】
【数5】
【0049】
は液体‐気体界面での過剰溶質濃度であり、およびσおよびcは正の基準値である。基準定常状態では、流体は一定の過剰溶質濃度cで静止しており、安定状態のバルク濃度cは、c=cSL-βで与えられ、式中、cSLは固体‐液体界面でのバルク濃度であり、βはバルク濃度勾配であって、溶質の流れが固体から液体である場合に正であり溶質が気相から吸収している場合には負である。正の値の場合、溶質表面張力係数は、以下の通り表すことができる:
【0050】
【数6】
【0051】
いくつかの態様によると、溶融金属層厚さは、例えばベナール‐マランゴニ対流によって説明されるように、溶融金属層と炭素層との間の表面張力の変動が最小化されるように選択され得る。この場合、その表面上に吸着質を有する金属の液体層を使用した場合に典型的に見られる溶質的または熱的不安定性に基づくドメインおよび/またはセルの形成が低減され得る。
【0052】
いくつかの態様によると、グラフェン含有層の形成後、溶融金属層は固化され得る。いくつかの態様によると、本開示の方法は、処理チャンバの外で溶融金属層が固化するように、グラフェン層がその上に形成された金属基板のシートを処理チャンバから出す段階を含む。例えば、処理チャンバにおいて金属基板のシートが加熱要素からの熱にそれ以上さらされないときに、基板は、その上の溶融層が固化されるように冷却され得る。いくつかの態様によると、溶融金属層は、基板が処理チャンバから出た後に固化され得る。いくつかの態様によると、溶融金属層は、処理チャンバ内部、例えば、処理チャンバの冷却領域で冷却され得、その結果、基板が処理チャンバから出る前に固化され得る。
【0053】
いくつかの態様によると、本開示の方法は、グラフェン含有層を残りの金属基板から分離する段階を含み得る。いくつかの態様によると、グラフェン含有層は、溶融金属層および残りの金属基板から分離される。グラフェン含有層は、当分野において知られる任意の手段を使用して分離または取り除かれ得る。例えば、下部の金属基板(固化した溶融層を含む)は、高品質、均一、大面積のグラフェンを含有する層を生成するために、化学エッチング、電気化学エッチング、および/または機械的除去法を使用して取り除かれ得る。
【0054】
本開示はまた、上記方法を実施するための装置に関する。例えば、本開示の装置は、入口と、少なくとも1つの加熱要素と、少なくとも1つのガス供給部品と、出口とを含む処理チャンバを備え得、該装置は金属基板のシートまたはフィルムがその中を通過できるように構成される。
【0055】
本明細書に開示された態様は、先に概略が説明された例示的態様とあわせて説明されるが、公知であるかまたは現在予測しないもしくはし得ないにかかわらず、多様な代替、修正、変更、改良、および/または実質的に同等のものもまた当業者に明らかとなり得る。したがって、上記の例示的態様は、例示を意図するものであり、限定的なものではない。本開示の精神および範囲を逸脱することなく多様な変更がなされ得る。したがって、本開示は、あらゆる公知のまたは後に開発される代替、修正、変更、改良、および/または実質的に同等のものを包含することを意図する。
【0056】
したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示される態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に一致する全範囲を許容することを意図するものである。ここで、単数の要素に対する記載は、明確に記載されていない限り、「1つおよび1つのみ」を意味することを意図するものではなく、むしろ「1つまたは複数の」を意味するものである。当業者に公知のまたは後に知られる本明細書に記載された多様な態様の要素の構造的および機能的等価物は、参照により本明細書に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることが意図される。さらに、特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本明細書中のいかなる開示も公衆に献呈することを意図するものではない。「のための手段」という用語を使用して明確に記載されていない限り、いかなる特許請求の範囲の要素もミーンズ・プラス・ファンクションと解釈されるべきものではない。
【0057】
さらに、「実施例」という用語は、本明細書において、実施例、実例、または例示としての役割を果たすことを意味するものとして使用される。本明細書に「実施例」として記載された態様は、必ずしもその他の態様より好ましいまたは有利であるものと解釈されるものではない。明確に記載されていない限り、「いくつかの」という用語は、1つまたは複数を指す。「A、BまたはCの少なくとも1つ」、「A、BおよびCの少なくとも1つ」および「A、B、Cまたはそれらの組み合わせ」などの組み合わせは、A、Bおよび/またはCの任意の組み合わせを含み、複数のA,複数のB、または複数のCを含み得る。特に、「A、BまたはCの少なくとも1つ」、「A、BおよびCの少なくとも1つ」および「A、B、Cまたはそれらの組み合わせ」などの組み合わせは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCであってよく、これらの組み合わせは、1つまたは複数の要素またはA、BもしくはCの要素を含み得る。特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本明細書中のいかなる開示も公衆に献呈することを意図するものではない。
【0058】
以下の実施例は、本発明を作成および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されたものであり、発明者が発明として見なすものの範囲を制限することを意図するものでなく、以下の実験が実施した実験のすべてを表すことを意図するものでもない。使用した数値(例えば量、寸法など)に関して正確さを保証するよう努めたが、実験誤差および偏差が考慮されるべきである。
【0059】
特に、基板の上面および下面をある温度まで加熱するコールドウォールCVD(すなわち、基板は加熱されるがCVDチャンバの壁は冷却されるCVD法)を使用して15μm厚の銅箔基板上にグラフェンを成長させる工程を比較するために、以下の実施例(例1および2)を実施した。処理は、別々に制御することができる2つのグラファイトヒーターを基板の上部と下部に1つずつ備えるAixtron Black Magic CVDシステムを使用して実施した。2つの処理は、500mbar(375torr)の圧力、3000sccmのAr、500sccmのH、500sccmのN(システム冷却用)のガス流量を使用して実施した。銅箔基板は、石英セパレータを使用して下部ヒーターから分離した。両方の実施例において、基板は10分間加熱し、その後炭素源として10sccmの流量のメタンガスフローを当てた。
【0060】
[例1]
Aixtron Black Magic CVDシステムに銅箔基板を配置した。上部ヒーターは1100℃の一定温度で維持し、下部ヒーターは、1150℃の一定温度で維持した。基板の上面および下面温度は、それぞれ基板表面と上部および下部ヒーターとの間の距離を変えることによって制御した。基板の上面は、980℃(すなわち、銅表面が溶融しない従来の方法で使用される温度)の温度まで加熱され、底面は1150℃未満の温度で維持された。基板の底面は、石英スペーサによって下部ヒーターから分離したため、基板の下部層もまた溶融しなかった。
【0061】
基板の上面上にグラフェンが成長し、図2に示すように、SEMを使用して、得られたグラフェンの層を可視化した。図2は、グラフェン層が小さな粒子(12)を含むことを示し、基板表面上に粒界が存在する(すなわち粗い基板表面)ことを示唆している。
【0062】
[例2]
Aixtron Black Magic CVDシステムに銅箔基板を配置した。上部ヒーターは1100℃の一定温度で維持し、下部ヒーターは、1150℃の一定温度で維持した。基板の上面および下面温度は、それぞれ基板表面と上部および下部ヒーターとの間の距離を変えることによって制御した。基板の上面は、1050℃の温度まで加熱され、底面は1150℃未満の温度で維持された。基板の底面は、石英スペーサによって下部ヒーターから分離したため、基板の下部層は溶融しなかった。
【0063】
基板の上面上にグラフェンが成長し、図3に示すように、SEMを使用して得られたグラフェンの層を可視化した。図3は、グラフェン層が、実施例1に示されたものより大きな粒子(13)を含むことを示し、銅基板の表面が溶融したため、より滑らかであることを示唆している。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
2 処理チャンバ
3 加熱要素
4 ガス供給部品
5 基板
6 溶融金属層
7 グラフェン含有層
8 巻出ロール
9、10 ガイドロール
11 巻取ロール
図1
図2
図3
図4